07/09/03 23:39:08 pW+BFxTD
「キョン!大発見よ!」
教室だというのに大声で叫ぶハルヒ。そんな近くで大声出さなくたって聞こえてる。
「何落ち着いてるのよ!あんたも喜びなさい!ああもう我慢できないちょっと行ってくるわ!」
何が大発見だったのか明かさないままハルヒは教室を飛び出して行ってしまった。
やれやれ。
「キョン、お前も大変だな」
ハルヒがいなくなったのを見計らったかのように谷口と国木田がやってきた。
国木田はともかく谷口はハルヒを苦手にしている気がする。
「あんなのが得意なのはお前くらいだよ。人がせっかく忠告してやったのに聞きやしないんだからな」
「俺は目をつけられただけだ。得意なわけないだろうが」
「はいはい。そういうことにしとくよ」
ここで俺が憤慨するのは正当な権利であるよう思われる。
「キョンは先生か保父さんになれそうだよね」
「そうだよなあの涼宮を調教…じゃなかった、人に慣らしたんだもんな」
「それほとんど意味変わってないだろ。それに俺が常日頃どれだけ苦労してると思ってんだ」
「いいじゃねえか。一応美人なのは間違いないんだし、あれだけの女が彼女なら安いもんだろ」
さてどうしても訂正させなけりゃいけない点が一つあるな。
「二人ともお似合いなのね」
さて言うぞ、と言う瞬間にいつのまにか聞き耳を立てていたらしい阪中が割ってはいる。
「そうだね、中学の時と違ってキョンから行動してるみたいだし」
盛大な勘違いをしてるねこの女顔。どう見たって俺が巻き込まれてるというのに。
だがこの会話につられたのかクラス中から声が飛ぶ。
「やっぱ付き合ってたのか」「キョンくんと付き合うようになってから涼宮さん柔らかくなったもんね」
憶測に過ぎない事柄に対して無責任な発言が右往左往する。
「俺とハルヒはそんなんじゃ…」
「『ハルヒ』だって~」「涼宮を名前で呼ぶって時点で俺には真似できないな」
いらいらする。勝手なこと言いやがって。
「じゃあどんな関係なんだよ」
「…ただの友達だ」
「そんなわけないだろ。だってあんだけいちゃいちゃしといて」
イライラする。俺とハルヒのことを何も知らないくせに。
言い返そうとしたとき教室のドアが勢いよく開かれた。
「あーもう!何よあれ、とんだ見掛け倒しね」
ハルヒがずかずかと入ってくる。
俺の周りに集まっていた人だかりを一睨み。あっという間にギャラリーは消えた。
「キョン!こんなとこで油売ってる場合じゃないわ」
そう言って俺の手を引いて歩き出す。
クラスの奴らは「やっぱり」みたいな顔で見ていた。
「で、なんかあったの?」
廊下で立ち止まったハルヒはそう切り出した。連れ出したのはお前のほうだろうが。
「あんたがヘンな顔してたから連れ出してあげたんじゃない」
俺の頬をつねるハルヒ。
「そんなに嫌なことあったの?」
自分の顔がほぐれるのを自覚する。
「いや、あいつらが勝手に俺たちの関係がどうのとか言っててな、なんだか気に食わなかったんだ」
「他人がどう思おうが別にいいじゃない」
…まったくだ。他人がどうだろうが俺たちは俺たちでしかない。トートロジーにしたって質が悪い。
それに、お前ならそう言うと思ってた。
「そうか、あいつら俺たちが付き合ってると思ってるぜ」
「な!?」
いきりたって教室に殴りこもうとするハルヒ。
「気にしないんじゃなかったのか?」
腕を掴んで振り向かせる。
「…はぁ、しょうがないわね」
怒っているハルヒの頬をむにっとつまむ。
「あにひゅんのひょ!」
つままれたまましゃべるとは器用な奴。「お返しだ」と言ってその場から逃げる。
追ってくるハルヒの気配を背中に感じつつ思う。俺たちはまだそんな関係じゃない。まだ、な。