07/08/31 21:37:22 dvdVmAu6
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ちょっと一休みのつもりが、あまりの心地よさついウトウトしてしまい、
そのまま熟睡まで一気に転がり落ちてしまった。
ぼんやりと意識が覚醒しかけると、やけに柔らかい感触と、
クーラーではない、柔らかな風の快適さが身に沁みる。
「……やあ、キョン。ようやくお目覚めかい」
いつもよりも小さい、ささやくような佐々木の声。
眠っていた子供をやさしく見守る目で、佐々木がくすりと微笑んだ。
膝枕してくれてた上に、俺たちを団扇で扇いでいてくれたのか、すまんな。
俺だけなら、そこらへんに転がしておいてくれてもよかったのに。
「そうもいかないさ。ただ、僕の膝の上は、もう君専用ではないからね」
俺の隣で同じように眠る、俺たちの幼子のあどけない寝顔。
二人ぶんじゃ重かったろう。
「そうでもないさ。いつか思った疑問の答えも出せたしね」
よくわからんことを言うと、俺の細君は、二人の話声で目を覚ましてぐずりだした子を、
やさしく抱き上げてあやし始めた。
しかしまあ、学生自分はよかったね。あの長い夏休みが懐かしいよ。
「君の場合、いつも最後まで宿題を残して大騒ぎだったじゃないかね。
忘れたとは言わせないよ」
まあ、そのたびにおまえに迷惑をおかけしました。タイヘンカンシャしております。
「ま、君ももう若くないし、この時期は体調を崩しやすいからね。
油断しないで頑張ってくれたまえ」
へいへい。特等席で眠らせてもらったからな。せいぜいお前さんたち二人のためにもがんばるよ。
そう応えると、あいつはいつものように、「くっくっ」と喉を鳴らして微笑んだ。
おしまい