07/08/12 22:04:27 +t0q8mB7
子供の頃、両親が交わすワインの話しが気になり
かれんは、じいやに質問した
「坂本、ワインってなぁに?どんな味がするの?」
「ワインは、大人用の飲み物でございます。かれん様
親との触れ合いが極端に少なく、家族揃っての食事が
待ち遠しいイベントの一つであった かれんにとって
それは、簡単には見過ごせない話題だった
かれんが、お酒に興味を持ったことを察した母は
時に甘くなる坂本に飲まさぬよう忠告する
「えー。わたしも飲みたい!どんな味がするのかな…ワイン
飲み物、そのものには興味が無かった
ただ、親との繋がりを持ち続けたいだけだった
「わたしも、お父様やお母様といっしょに飲んでみたいなぁ
趣味の域を越えつつある演奏会と仕事で、両親は
以前に増して留守がちになった。かれんの寂しさを
何とか紛らわせはしないかと案ずる坂本
「かれん様。今回だけは特別にご用意致しました
「わぁ!ありがとう!
「くれぐれも、お父様とお母様には…
「わかってる!坂本がいなくなると困るもの
かれんの目の前で、両親が愛用するワイングラスに注がれる
紫色の液体。ただのグレープジュース。しかし、かれんにとって
家族を感じさせてくれる幸せの飲み物だった
「…おいしい。坂本、ワイン。とっても、おいしいんだね!
「それは、よろしゅうございました
親の仕草を見真似て口に含むと叫んだ。微笑む坂本
それがワインでは無いことに気が付いていたかどうか
今となっては記憶していない。どうでもいいことだった
以来、かれんはグレープジュースが大好きになった