07/07/27 16:23:22 EuqPVoA2
・・・・・・ナンバーズの姿は他人事じゃない。左腕の痛みに耐えかね、正気を失えばああいったモノになる。
いや、その怖れは左腕がある限り有り続けるだろう。この腕は私を殺す悪夢の具現だ。
だが。
そこまで判っていて、ここまで残したのは何の為だったのか。
――切り落としてしまえばいい。
そう思いながらここまで残した理由は一つだけ。
この腕は使われる為に有り続け、あの人は必要だから私に残した。
まだまだ詰めが甘い、とあの人は言った。 あんたの体が何でできてようと関係ない、と親友は言ってくれた。
「うん――それで充分だ」
贖いはここに。
自分の無力が、多くの命を犠牲にした。
譲れないモノは変わらず、その為に在り続ける。
鋼の罰に力を篭める。
生きるか死ぬか。
立ち向かうための深呼吸をして、引き裂くように左拳を――
瞬間。世界が崩壊した。
「 あ」
――消える。
体は初めから敗れていても、心だけは負けるものかと食いしばっていた、その心が消える。
拳を握るどころか指先さえ動かない。
左眼が潰れた。風鳴りが鼓膜を破る。薄れていく意識と視界。その、中で
ありえない、幻を見た。
立っている。この風の中であの人が立っている。
立って、向こう側へ行こうとしている。
――当然のように。
風に白いリボンを靡かせ、鋼の風に圧される事なく、前へ。
白い魔導師は私など眼中にない。わずかに振り向いた貌は厳しく、この風に飲まれようとする私に何の関心もない。
彼女にとって、この結果は判りきった事だった。スバル・ナカジマではこの風には逆らえない。
自分をごまかし、身に余る幸せを抱いた娘に未来などないと判っていた。
彼女の言葉は正しい。積み重ねたた嘘が私自身を裁くだろう。
だというのに彼女の背中は。
「――ついて これる?」
蔑みながら、信じるように。
私の到達を、待っていた。
「 ――ついてこれるか、じゃない」
視界が燃える。何も感じなかった拳にありったけの熱を注ぎ込む。
手足は、大剣を振るうかの如く風を切り、
「なのはさんこそこそ、しっかりついてこい――!」
渾身の力を篭めて、白い背中をを突破した。