07/07/18 15:41:17 wsw9V0qb
>>581
素ん晴らしいSSだった。
クイズブログ経由でここのSSはいつも見させてもらっているけど、
いままで見たSSの中でも5本の指に入る。
ありがとうございました。
651:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/18 15:48:12 WZYw0UQ2
検索したらあのサイトだったか
捕捉とかされてるんだな凄い
652:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/18 16:11:10 Ork2I9AH
うは、SS投下しようかと思ったら神作が来てた
>>581 凄すぎます!
それでも挫けずに投下
かなり見劣りすると思いますが
枯れ木み山の賑わいってことで
↓↓↓
653:1
07/07/18 16:14:03 Ork2I9AH
『敗因』
「なんか佐々木さんと一緒にご飯食べるの久しぶりだねー」
向かいに座った岡本さんが嬉しそうに言った。
「そう?」
「そうだよ。最近はいつもキョンと一緒じゃない。一学期の頃はよく一緒に食べてたのに
さー。あーあ、やっぱり友情は愛情に勝てないのかな」
ため息混じりに言うが、本気で言っているわけではなさそうだ。苦笑で応える。
今は昼時、誰もが少人数のグループを作り、お弁当なりパンなり思い思いの食事を楽し
んでいる。かく言う私も岡本さんを含む女子三人と机を合わせ、自分のお弁当をつまんで
いるところだ。
「今日は何で一緒じゃないの?」
誰と、が抜けているが充分文脈から補える。平々凡々としたわりに奇妙なあだ名を持つ、
あの友人のことだろう。
「お弁当を忘れたんだって。購買でパンを買って、ついでにパン派の人たちと外で食べて
くるって言ってたかな」
「おー、さすが細かく押さえてるね」
そう言うと三人でキャイキャイと嬉しそうにはしゃいだ。
うーん、参ったな。どうもこういう空気は慣れない。彼女たちとの会話も楽しいんだけ
ど、やっぱりキョンと取りとめも無い話をつらつらと話しているほうが性に合っている。
……それも女としてどうか、とは思うのだけどね。
それから進路の話、昨日のテレビの話、芸能人の話など話題を転々としながら食事は続
いた。余分な解説は必要とせず、余計な解釈もいらない普通の会話だ。たまにはこういう
のもいいものだとは思うけど、どこか物足りない気もする。今の話題の中にもツッコミ所
はたくさんあったのだ。これがキョンとの会話だったら、すぐさま指摘して解説して、反
論してくる彼を論破して、よく解ってないのに解った振りをする彼をからかうことができ
るのに。
そんなことを考えながら少しぼうっとしてしまったのか、
「あ、佐々木さん、今あいつのこと考えてるでしょ~」
ものの見事に看破されてしまった。これが女の勘という奴だろうか。
「まあ、否定はできない、かな。ちょっとニュアンスに違いがあると思うけど……」
「も~、ぞっこんだなぁ。ささっきーは~」
後半の部分は都合よく無視されてしまった。
あとそのささっきーって何? もしかして私のことかしら。
「毎日宿題見せたりしてるし、お弁当のおかずも分けたげてるし。ささっきーって意外と
尽くすタイプ?」
「そこはほら、惚れたが負けってやつだよ。解るなー、私」
「うそつけ!」
私の疑問をよそに、彼女たちは別の方向に突き進んでいく。
まずい。何か空気が変わってきている。変なあだ名も固定化されてきているし、話題を
変えないと―
「それで、佐々木さんはあれのどんなとこが好きなの?」
たちまちに三人分の好奇に満ちた視線が注がれる。はあ、遅かったか。
キョンをあれ呼ばわりするのは、まあ置いとくとして、いい加減この手の話にも疲れて
きた。皆はどうして飽きないのだろう。
654:2
07/07/18 16:15:16 Ork2I9AH
「別にキョンとはそんな関係じゃないよ」
苦笑しながらそう答えた。
いつもどおりの答え。もう何十回と繰り返してきた、私の答え。
好きかと聞かれたらそれは好きだろう。彼は大切な友人だ。自分のまだ短い人生を振り
返っても、彼ほど親しくなれた人はいない。多分これからもできないだろう。
けれど異性として、すなわち恋人として好きかと問われれば、否定しかできない。
何故なら解らないから。
今までにそこまで進んだことが無かったから。
今までに人に恋したことが無かったから。
「彼はただの友達だもの」
私は自分が見たものしか信じない。体感したことしか信じられない。
だから感じたことの無い恋愛感情なんて、そんなもの信じることができない。
あるかないかも解らない恋より、今確かにある友情のほうが大事だ。
未知の領域に踏み込んで壊れるくらいなら、今のままでいい。
悲恋に終わるくらいなら、今のままがいい。
初恋の相手に据えてみるには、彼は大切になりすぎてしまった。
とはいえ、こんな返答では到底納得してもらえないだろう。この手の話題に対する同年
代の女子たちの粘り強さは尋常じゃないものがある。休み時間終了まであと二十分か、今
日の昼休みは潰れたかも。
ところが、彼女たちの反応は予想とはまるで異なり、
「だよねー!ありえないよね、やっぱり!」
「ないない!絶対無いって!あはははは!」
「ささっきーならあんなのよりもっと上狙えるもんねー!」
「え?あの……、へ?」
自分でも解るくらい素っ頓狂な声が出てしまった。多分顔のほうもそれに付随するもの
になっているだろう。……なんだろう、これは。話題が流れてくれてありがたいのだが、
釈然としないものが残る。
「大体、キョンってなんか面白みが無いのよねー」
「そうそう、こう普通すぎるっていうかさ」
「個性ないよね。いつもぼけーっとしてるし」
「それに頭悪いしねー。三連続赤点とかありえないっしょ」
「スポーツはどうだっけ?」
「この前のサッカーでずっこけてたよ」
「うわ、それじゃいいとこなしじゃん」
「ちょ、ちょっと待って!」
本人がいなことをいいことに、彼女たちは散々ないいざまだ。そこまで言うことはない
だろう。だんだんと腹の底からムカムカとしたものがこみ上げてきた。
655:3
07/07/18 16:17:05 Ork2I9AH
「確かに、一見するとキョンは個性に欠けたように見えるけどそんなことはないよ。会話
の最中に入れてくる相槌やツッコミは絶妙だし、聞き上手ということに関しては、この学
校内に彼の右に出る人はいないんじゃないかな。
性格は確かに怠惰なものだけど、そんな手のかかるところが逆にかわいいっていうか、
母性本能をくすぐることもあるし。
それに学校の成績なんて所詮要領のよさじゃない。そんなもので頭の良さは計れないよ。
実際いつもの会話からすると、キョンって物分りもいいし飲み込みも早いし、なんだかん
だで記憶力もいいのよ。この間なんて、前もって何も言ってなかったのに私の誕生日覚え
ててくれて、プレゼントくれたし。よくわかんないぬいぐるみだったけど。
あと、サッカーで転んでたのは敵の卑怯なチャージが原因であって、キョンに落ち度は
ないの。むしろ、怪我の痛みをこらえてプレイを続けるさまは男らしいかったと思うな。
そもそもキョンのいいところって言うのは――」
よっぽど頭にきていたのだろうか、そこまで一気にまくし立てたところで、ようやく私
は周りの状況に気が付いた。
目の前三人はにやにやした笑いを顔に浮かべており、その他のクラスメイトも何事かと
視線を送っている。
これはもしかして……はめられた? 私、ひっかかっちゃった?
「なるほどねぇ~。そんなところに惚れたってわけかぁ~」
「いや、ちが……そうじゃなくて」
「ささっきーってば普段は完璧優等生なのに、あいつのことになると隙だらけになるんだ
よねー。好きだけに隙ができるってわけね」
「だから! 今のはそういうのじゃなくて!」
「で? 続きは? そもそもキョンのいいところってのは?」
「し、知らない! もう知らない!!」
顔を背けてお弁当をかきこむ。精一杯抵抗の意を示すが、彼女たちの追及は止まない。
くう、何でこんなことに。それもこれもみんなキョンが悪いんだ!キョンが普段からし
っかりしていたら、私があんなにフォローすることもなかったのに!大体キョンはいつも、
「おい佐々木、そんなに一気に食ったら体に悪いぞ」
「!!」
気がつかないうちにキョンが背後に立っていた。い、いつの間に。
驚愕と動揺から思わず噴出しそうになるのをすんでのところでこらえる。すると今度は
逆に充分に噛み砕いてなかった唐揚げを飲み込んでしまった。
「ぐ、う。かはっ!か」
「ほらみろ。よく噛んで食べないからだ。ほら、これ飲め」
一体誰のせいでこんな苦しい思いをしているのか、とうとうと語って聞かせたいところ
だが、喉が詰まってはそれもできない。キョンが差し出したのは紙パック入りのジュース、
到底唐揚げには合いそうにないけれど、四の五の言ってはいられない。ストローに口をつ
けると、そのまま一気に飲み下した。
「はあ、はあ。あ、ありがとうキョン。責任の所在はともかくとして、今の善意には感謝
の言葉を述べさせてもらうよ」
「なんだよ、俺のせいだってのか? 普通に声をかけただけじゃねえか。なあ?」
そういってキョンは岡本さんに同意を求めた。ところが彼女はぽかんと口を開けてキョ
ンの手元をみている。他の二人も同様に、いやどころかクラスにいるほぼ全員がキョンの
手元に視線を送っていた。
656:4
07/07/18 16:19:01 Ork2I9AH
不審に思い、その手元を見るが何も変わったところはない。私がさっき飲んで返した紙
パックのジュースがあるだけだ。
……待って。紙パック? 紙パックということは当然飲み口にはストローが挿さってい
る。私もさっきそこから飲んだのだから。ところでキョンは私が喉を詰まらせてすぐにジ
ュースを差し出した。ストローの袋をあけ、伸ばし、パックに挿すにはあまりにも短い時
間だ。すなわちストローはすでにパックに挿さった状態だったということで、それはつま
りすでにキョンが口を……いやいやいや! その考えは危険だ。パックにストローが挿さ
っているということと、キョンが口をつけているということはイコールではない。たまた
まストローを挿した状態で持ち歩いたり、これから飲むところだった可能性もある。充分
ある。むしろ高いくらいだ。
「何を真剣な顔して考え込んでるんだ、お前は?」
キョンはのんきな顔をして返したジュースをチューチュー吸っていた。
……キミってやつは。
こっちの気持ちも知らないで、キョンは相変わらずとぼけた顔を向けている。あの顔は
本当に何も考えていない。私が苦しがっていたから助けた、それだけのことなんだ、彼に
とっては。
まったく。自然と顔が緩むのが解る。
まったく、適わないなキミには。
解りにくいけど個性があって、成績は悪いけど変なところで頭はよくて、時々手がかかって、時々かっこよくて、そしていつだって優しい。
さっき言いかけたキョンのいい所、それはこの優しさだ。拒むことを忘れさせるような、
何の抵抗もなくするりと入ってくる自然な善意。
私は今まで人間は皆利己的な生物だと考えていた。自己犠牲の精神にしても、無償の愛
にしても、それは目に見える利益がないだけで結局は「相手を助けたい」という自分の欲
求に従っているだけなのだと。誰もが自分の欲望のために行動する、つまりは偽善者なの
だと思っていた。
けれどキョンは違った。彼の優しさは打算も計算も、欲望すらもなかった。本当に何も
考えず、ただ相手が困っているというだけで当然のように彼は手を差し伸べる。自然体の
善意、それはもはや情景反射のようなものだった。
彼に出会い、彼の優しさに触れ、私は考えを変えた。
私の世界は変わった。彼が変えてくれた。
「はぁ、別になんでもないよ。大したことじゃない」
「そうか? なんか悩みがあるのなら相談にのるぞ?」
そう言いながらも、まだジュースを飲んでいる。悩みの種はそれだというのに。やれや
れ、これは岡本さんたちにまた色々言われそうだな。
ため息混じりに苦笑して、私はその一番大切な友人を見た。
私の世界を変えたキョン。私の大好きなキョン。
願わくは、その鈍感さをもう少し何とかして欲しいと思う。
fin
657:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/18 16:24:08 Ork2I9AH
以上です。お目汚し失礼しました。
前回はキャラを出しすぎて、佐々木が薄れた感があるので
今回は少なめにして佐々木視点で書いてます。
そもそもなんで佐々木がキョンごときに惚れるのか、
本編のセリフから推測(妄想)してみました。
658:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/18 16:32:03 yztwPo70
GJ!
659:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/18 16:45:14 68JfXmkS
GJ!
660:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/18 16:55:16 EBGpHHmu
>>657
GJ
2つ目を読みながら思わずニヤけてしまった
661:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/18 17:23:24 eclIZJC6
ん?なんか画面にニヤニヤした顔が映ってるんだが
662:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/18 17:24:17 PD24IBzG
>>656
全俺が感動した!(´・ω・`)
663:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/18 17:52:23 YcVBn7Wh
>>661
すまん。どうやらそれは私の顔らしい。
664:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/18 18:13:00 SDgPDIqi
定期あげ
665:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/18 18:35:30 xnyVZnkI
GJ!
>>663
おかしいな、まだ俺は書き込んでいないはずだが
666:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/18 18:36:38 ts2APnKs
適わないと情景が気になったけど、とても良かった。メシ前なのに満腹
667:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/18 18:44:11 EfZP7xar
GJ
アニメ見てたのに
いつの間にかこっちに集中してたぜ
668:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/18 19:06:05 2KJYOOtv
>>657
キョンごときってww
お前はキョンと佐々木好きの俺を敵に回したw
でもSSはおもしろかったよ
GJ!
669:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/18 19:16:17 t5FCm57n
GJ!
この後別れが待っている二人に涙
投下します。既出ならすまん。
Lost my music 佐々木Ver
星空見上げ 僕らだけの 光探して
君は今どこで 誰といるのだろう
楽しくしてた頃思うと寂しくなって
二人通った道 一人きりで歩く
大好きな君が遠い 遠すぎて切なくなるよ
明日目が覚めてもまだ この思い変わらない Good night!
I still I still I love you!
I'm waiting waiting forever
I still I still I love you
止まらないのさ
記憶の淵で君がくれた 思い出のOne day
僕が選んだこの 道に悔いはないけど
変わらないよと いつまでもと 笑いあった日々
あのときの言葉も 今は時の彼方
大好きな君の笑顔 今も記憶の中に
いつかまた君と二人 語り合える日夢見て
I lost I lost I lost you!
You're making making my music
I lost I lost I lost you!
もう逢えないの?
大好きな君が遠い 遠すぎて切なくなるよ
明日目が覚めてもまだ この思い変わらない Good night!
大好きな君の笑顔 今も記憶の中に
いつかまた君と二人 語り合える日夢見て
I still I still I love you!
I'm waiting waiting forever
I still I still I love you
止まらないのさ
I still I still I love you!
I'm waiting waiting forever
I still I still I love you
また逢えるよね? ね!!
670:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/18 19:18:55 lD+5xslt
>>660>>663>>665
ふんっ、どうやら僕の異時限同位体がいるようだな
671:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/18 19:23:35 2ULxy3Ys
>>657
(゚Д゚)ウマー
佐々木の憂鬱ってのが存在したらそれに載ってそうなエピソードですなあ。
672:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/18 19:25:35 2KJYOOtv
>>669
これは切ない…
この曲とFirst-goodbyeはもう佐々木の歌だな
673:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/18 19:38:52 AGrNykNr
橘「天が呼ぶ地が呼ぶ人が呼ぶッ!」
佐「こっちに来て☆ってキョンを呼ぶー」
藤「・・・やりたくないって言ったのにぃー・・・」
九「――意外にノッてる――未来人―――」
佐「いつか成る真の佐々木団を夢み」
橘「欲しがりません勝つまではぁーッ!」
藤「我ら、4人揃って!」
九「――アンチSОS団戦隊――」
全「「「「佐・・・
涼「誰、そいつら」
キ「・・・し、知らん。断じて知らん」
なんというかその、ごめんなさい。
674:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/18 20:09:00 EfZP7xar
URLリンク(jp.youtube.com)
突然だけどこの曲佐々木にぴったりだと思うんだ
675:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/18 20:09:52 Y0t8TrE5
>>668
「で? 続きは? そもそもキョンと佐々木のいいところってのは?」
676:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/18 20:10:57 EfZP7xar
すまん、ミスった、上のはブラクラ
URLリンク(jp.youtube.com)
677:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/18 20:11:54 SDgPDIqi
定期あげ
678:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/18 20:17:54 kuDJlpT7
>>676
おいwww
679:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/18 20:28:15 AiSacVwj
>>419,422,423
*'``・* 。
| `*。
,。∩ * もうどうにでもな~れ
+ (´・ω・`) *。+゚
`*。 ヽ、 つ *゚*
`・+。*・' ゚⊃ +゚
☆ ∪~ 。*゚
`・+。*・ ゚
URLリンク(akm.cx)
ネタ作ってる間に流れが神懸ってたorz
どの作品もGJで、逃げようかと思いました^^;
680:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/18 20:44:35 2KJYOOtv
>>679
おお!やっぱ上手いな!
GJ!
ただちょっとカオスw
681:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/18 20:56:23 lD+5xslt
佐々木とくーちゃんかわいいよ
きょこたんはひぐらしのレナかと思ってしまったw
あと佐々木の母親は娘とキャラ違い杉ww
682:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/18 21:44:57 YcVBn7Wh
「キョンさんは協力……してくれますよね?」
「ま、待て橘。その手にある物は何だ!?」
「あはっ、あはは、あはははははははははははははははっ! アハーハー!」
683:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/18 21:59:48 2KJYOOtv
なんという鉈女…
684:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/18 22:39:17 72viDxX4
>>679
Q 佐々木に『よ!今日もいい天気だな!』と挨拶したくなっちゃうのは仕様ですか?
A 仕様です
眠かったのにGJ過ぎて一瞬で目が覚めちゃった…
てへっ☆
685:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/18 22:45:43 yhJWEOkn
このSSブームに便乗して長編SSを落とします。
686:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/18 22:47:36 3H4nE9KL
じゃあ全裸で待機しとく!
687:1
07/07/18 22:48:29 yhJWEOkn
5月のゴールデンウィークも終わり、いよいよ本格的に新年度が始まる気配に包まれる。
6月には休日がないというのが、何か国家的な秘密組織の嫌がらせに感じられるね。
今年は例年と比べて暖かいようで、まだ5月だというのに半そでで歩きたいくらいの暑さだ。
早朝強制ハイキングも1年経つともうずいぶん慣れたもんであり、これはもはや俺にとってはありきたりの日常の1ページと化している。
そのハイキングコースを踏破して、教室に入る。
これもまた、俺にとってはありきたりの光景だ。
教室の窓際、ザ・セカンドベストポジションの後ろに座る我らが団長、涼宮ハルヒ。
いつも俺よりも早く学校に来ているあいつに挨拶をして、俺の学校生活は始まる。
そう、いつも通りのありきたりの学校生活が始まるはずだった―
「よぉ、ハルヒ。」
鞄を机に置いて、椅子に腰掛がてら後ろを向いて軽く挨拶をする。
いつも通りに。
そして思えば、ここから全てがおかしかった―
一瞬ハルヒは面食らったような表情で目を丸くした後、すぐに眼光するどく、唇を尖らせ、不機嫌極まった声でこうのたまった。
「何よ。なれなれしく声かけないでよ。」
今度は俺が面食らう番だ。
いくらこいつが機嫌が悪くても、ここ最近はこんな対応を取られたことはない。
「何だよ、朝の挨拶しちゃ悪いのかよ。」
精一杯の皮肉を込めて言ってやった。
まったく、機嫌が悪いのはかまわんが、朝から俺に八つ当たりするなよ。
しかし、帰ってきた返答は俺の予想を大きく裏切るものだった。
「違うわよ。気安く名前で呼ぶなっていってんのよ。」
そう言って、ますます眼光鋭く俺をにらみつける。
なんだよ、全く。
それじゃ、まるで一年前みたいじゃないか―
さわらぬ神に祟りなし、だ。
今日一日はこいつのことは放っておこう。
「悪かったな。」
そうつぶやいて俺は前を向き直った。
なんか、こうやって相手にされないと、こう落ち着かないな。
って、ちくしょう、ハルヒとの朝の会話がそこまで俺の日常生活に当たり前のように組み込まれていたのか。
なんか、改めて驚愕の事実を押し付けられ愕然とする思いだ。
そう嘆息しながら、頬杖をつく俺に本当の意味での驚愕の事実が突きつけられたのは、それから間もなくのことであった。
688:2
07/07/18 22:50:34 yhJWEOkn
「おはよう、キョン。」
「おう、おはよう。」
そう、挨拶を返した直後に不思議な違和感が残った。
聞きなれたイントネーションだが、何かが違う。
俺にそうやって挨拶するのは、国木田か谷口くらいなものだ。
しかし、今の声はそれらよりも明らかに高い。
そして、全くの初見ではなく、俺にとってはどこか聞き慣れた声。
誰だ―
「どうしたのだい?そんなに目を丸くして。あぁ、ご心配なく。僕の風邪はもうほぼ完治したから大丈夫だよ。」
さっ―
「佐々木?」
そう俺は間の抜けた声を上げていた。
隣の席では、佐々木が席について鞄をフックにかける動作をしていた。
少し苦笑いに近い笑みを浮かべながら、
「そんなに僕が学校に来たのが不思議かい?
しかし、キミには僕はインフルエンザでもなく、ただの風邪であるとちゃんと告げたと思うのだが。
だとしたら、一般常識的に3日間の自宅療養は風邪の完治には十分なものであり、別段僕が今日登校していることに対してなんら驚愕すべき点はないと思うのだがね。」
そう苦笑いしながら俺に語りかけると、大丈夫だとでも言わんばかりに右手のひらをくるっとまわした。
違う、そうじゃないんだ―
そうじゃない。
なぜ、お前がここにいるんだっていうことだよ。
689:3
07/07/18 22:51:39 yhJWEOkn
「すまない、キョン。質問の言質が僕には取れないのだが。
これは一週間前の席替えで決まった僕の席順であり、キミもその場にいたはずだし、何よりそれから数日はこの席順で授業を受けていたと僕は記憶している。」
そこまで、しゃべると佐々木はふと気づいたように、俺の顔を覗き込んだ。
よく光る二つの双眸が俺を見ている。
違う、そんなことじゃない。
俺が訊きたいのはそんなことじゃ―
目の前の景色がチリチリする。
まるで、行き先のわからない電車に間違えて乗ってしまったみたいだ。
俺は今どこにいる?
そしてどこへ行こうとしている?
そんな俺の表情を佐々木は見つめている。
「大丈夫かい、キョン。ずいぶんと顔色が優れていないようだが。それに、その汗はあまりよくないものと見受けられる。」
心配そうな声で俺にそう優しく語り掛けてきた。
なぜか、そんなことだが、少し落ち着くことが出来た。
「いや、なんでもない。なんでもないよ。」
俺はこれと似た経験をしている。
あれは忘れもしない、12月の話だ。
現状は全く把握できないが、あの状況と酷似しているのは事実だ。
そのときの教訓。
こういう場合は無理に行動を起こさず周りに合わるほうがいい。
でないと、得られる協力も得られなくなるかもしれんしな。
「すこし、暑さでぼーっとしてしまってるだけだ。大丈夫だ。」
そう精一杯の引きつり笑いを見せる。
「しかし、その汗の量は。熱があるのではないかい?まさか、僕の風邪が―」
そういいながら佐々木は俺の額に手を伸ばしてきた。
反射的にその腕を掴んでしまう。
リアルなやわらかい感触。
間違いない、これが夢である可能性は消えた。
「大丈夫。少し暖かくなったから、つい、走って学校に来てしまっただけだ。大丈夫だ。」
そういいながら右手で佐々木を制し、もう席に着けとジェスチャーを送る。
我ながらへったくそなウソだ。
佐々木は納得いかない表情で俺を見ていたが、始業のベルを聞くとおとなしく席に着いた。
「気分が悪くなったら、いつでも言ってくれたまえ。」
そう、言い残して。
690:4
07/07/18 22:52:42 yhJWEOkn
こういうときに授業があるのは幸いだ。
誰にも話しかけられることなく、考えを巡らせられる。
いったい何が起こっているのか、今自分がどこに、どのような世界にいるのか―
それを把握するのが第一だ。
どうすればいいだろうか。
やはりここで頼りになるのはあいつしかいない。
文芸部の部室の椅子にずっと座りながら読書しっぱなしの、宇宙人製アンドロイド、長門有希。
この状況を打破できる可能性があるのはあいつしかいない。
『前のとき』も結果的にはあいつに助けられたんだ。
よし、昼休みになり次第、文芸部室に行こう。
そう、心に硬く決意を固めると、少し気分が楽になった。
そうなると、善は急げ、だ。
さっさと授業が終わってしまうことを切に願う次第である。
そう思って、やっと黒板を見上げたとき、また奇妙な感覚にとらわれた。
見たことがあるぞ―
いや、そうじゃない。
俺の記憶にある授業の内容はこれじゃない。
違うんだよ。
だって、この授業は1年のときに受けたものじゃないか。
ってことは、まさか―
気がつけば、大学出たての女性英語教師がおびえるような目で俺を見ている。
クラスメイトも全員だ。
「えっ。」
やばい、気がつけば俺は立ち上がっていた。
まずい、目立つような行動は避けると誓ったばかりなのに。
どうする―
「すみません。彼は朝から気分が悪かったみたいなので、私保健室に連れて行ってきます。」
そう言うが早いか、俺の手は隣に座っていた女子に引かれていた。
「あっ、佐々木?」
「早く保健室に行こう。今日の君は明らかにおかしい。」
そう言いながら、俺の手を引きずいずいと教室の出口へ向かっていく。
この佐々木の細い体のどこにそんな力があるのだろうか。
それとも、俺の体から力が抜けていたせいなのか。
とにかく俺は佐々木に引かれるままに歩いていった。
廊下に出る間際に、教室の中を振り返った。
クラスの全員が口をぽかーんとしていやがる。
ハルヒも含めて。
691:5
07/07/18 22:53:45 yhJWEOkn
「なぁ、佐々木。」
佐々木に腕を引かれながら、俺はそう呼びかけた。
「なんだい、キョン。」
佐々木は振り返ることなく、短く切り返してきた。
先を歩く佐々木の髪が歩くたびにサラサラとゆれている。
間の抜けまくった質問だが、ここまでくれば、もうかまわないだろう。
十分すぎるほど俺は変だと思われている。
「いったい今日は何年何月何日だ?」
あぁ、もう恥ずかしかったさ。
振り返った佐々木の目にはもはや憐れみすら浮かんでいた。
そして、佐々木から告げられた日時はやはり俺の危惧していたとおりだった。
ちょうど一年前、ハルヒの奴があの馬鹿げた団を結成した、あの5月に俺はいる。
普通の人間なら卒倒して、本当に熱が出てもおかしくない状況だったわけだが、
いかんせん1年間でたらめ極まりない現実を送ってきた俺には、この手の事件には耐性がついてしまっているようで、
熱が出るなんてこともなく、平熱そのものだった。
「平熱です。」
そう告げると、体温計を保健の先生に返した。
「熱はないみたいだけど、本当に大丈夫かい。」
俺のすぐ隣に立つ佐々木が心配そうに俺を覗き込んでいる。
保健室に着いた時点で、もう大丈夫だから帰ってくれていい、と言ったのだが、心配だ、と言い張って佐々木は俺の検温に付き添っていた。
そういえば、こいつの不安そうな顔なんてほとんど見たことがなかったな。
「あぁ。少し、なんつうか疲れたというかしんどいけどな。」
出来うることなら、家に帰って布団でもかぶって現実逃避したい。
あぁ、なんで俺ばかりこんな目に。
「今日は学校を早退するといい。キミの荷物は次の休み時間にここまで持ってくるから、それまで待っていてくれたまえ。」
悪いがそうはいかない。
昼休みに文芸部室へ行くというのは、今の俺にとって何よりも重要な予定なのだ。
一刻も早く、そうしなければ、本当に熱を出して寝込んでしまう。
「大丈夫だ。すこし、疲れているだけだから。少し休むだけで治るよ。」
佐々木は、キミの体調はキミが一番よくわかっているだろうし、としぶしぶ納得して教室に戻った。
はぁ、しかし、今日俺は朝からいったい何回大丈夫と言ったのだか。
692:6
07/07/18 22:54:52 yhJWEOkn
とりあえず保健室のベッドに横になる。
ここで状況を整理しよう。
今俺のいる世界と今まで俺のいた世界の違い。
わかっている限りでは、ここは1年前の世界であり、前回とはちがってハルヒがどっか別のクラスにいるということもない。
朝倉涼子はいないようだが、代わりに佐々木が俺の隣にいる。
この程度か。
くそ、状況を判断する材料が少なすぎる。
早くこの現状を把握しないと。
早く長門に会わないと―
そんなことを考えているうちに気がつけば眠っていたようだった。
誰かに揺り起こされて目が覚めた。
すいません、ついつい寝こけてしまい―
って、目を開けるとそこには、ハルヒがいた。
「やっと起きたわね。」
「何の用だ?」
ベッドの上半身を起こす。
ハルヒは腰に手を当てて仁王立ちで俺を見下ろしている。
いつものあの輝かんばかりの笑顔―
とまではいかないが、それでもガソリンを満タンに充填した光をその瞳は放っていた。
「ねぇ、あんた。」
獲物を見つけたかのような笑顔。
ただでさえ、いろいろと厄介なのに、これ以上何を引き起こそうっていうんだ。
「今日のあんたの振る舞い、明らかにおかしいわ。そう、まるでこう異世界から迷い込んできたみたいに。」
得意満面な笑顔。
唾を飛ばすな、まったく。
あぁ、残念ながらそのとおりだよ。
「あたしの目はごまかせないわよ。あなたきっとなにか、不思議な目にあったわね。
そう、たとえば宇宙人に誘拐されたとか、いきなり超能力に目覚めて混乱していたとか、実は自分は未来から来たということに気づいたとか!」
宇宙人には誘拐されたというより、改変された世界に放り込まれたって感じだな、前回は。
あと、それ以外はお前の身の回りの人物で説明できるよ。
百ワットの笑顔で俺を見つめるハルヒ。
まるで、ヒーローショーでサインをねだられているような気分だ。
ただ、着ぐるみの種明かしにはまだ早い。
「なんでそんなことに興味があるんだ。」
適当にすっとぼけてやる。
「だってわがSOS団はそういった不思議を求めているんだから!」
頼むから、保健室でそんな大声を出さないでくれ。
ってSOS団?
「おい、ちょっと待て、SOS団?あるのか、今この学校に?」
「何よ、知らないの?まぁ、ビラ配りは途中で邪魔されちゃったからね。」
そう、思い出し憤慨をするハルヒ。
あのバニー姿でやったあれか。
「SOS団のメンバーはどうなっている?長門や朝比奈さんや古泉もちゃんといるのか?」
「何よ、ちゃんと知ってるじゃないの、私たちのこと。だったら変なこと聞かないでよ。いや、でも変なほうがいいか。」
お前の価値観なんか知るか。
そうか、SOS団のメンバーは同じなのか。
いや、違う。
肝心なことがおかしい。
そうだよ―
「なぁ、ハルヒ。俺はSOS団のメンバーじゃないのか?」
「はぁ!?」
目を丸くして固まるハルヒ。
あぁ、名前で呼んでしまったな。
しかし、当のご本人様にはそんな些細なことはどうでもよかったらしく、
「やっぱりあんた何かおかしいわよ。
何?宇宙人が私たちの組織に送り込んできたスパイに改造でもされたの?自分がSOS団メンバーだと洗脳するような手術を受けて!」
目がキラキラしてきやがった。
同じ改造されるなら何か特殊な能力でも付けてほしいよ。
憎らしいほど今は何も出来ない自分の平凡さが身にしみる。
693:7
07/07/18 22:55:54 yhJWEOkn
「変わった組み合わせだね。」
入り口のほうから声がした。
佐々木がこちらを見て立っている。
心なしか少し声がとげとげしくないか?
「昼休みでお腹が空いただろうと思って、キミの鞄を持ってきたのだが、僕はお邪魔だったかな?」
「いや、別にそういうことはない。」
「そうかい?」
佐々木は手に持った鞄を俺に手渡した。
「本当はキミの昼食だけ持ってくればよかったんだろうが、人の鞄に許可なく手を突っ込むというのはモラルに欠ける行為に思えてね。鞄ごと持ってきたというわけだ。」
「そうか、わざわざありがとう。」
昼休みか、長門のところへ行こうと思っていたんだが、この状況じゃな。
まぁ、長門がこの学校にいるということがわかったし、放課後でも問題あるまい。
少し安心した。
「涼宮さんは彼に何の用があったのかな?」
今度は佐々木はハルヒの方へ向き直り問いかけた。
「別に。大した話じゃないわ。」
ハルヒはくるっと背を翻すと、お得意の右手を払ってどうでもいいというポーズを取った。
「そう?正直、あなたが彼の見舞いに来るなんて、意外だったから。」
見慣れたはずの佐々木の笑顔。
しかし、なんだ、この背筋が凍るような恐怖感は。
「ちょっと訊きたいことがあっただけよ。ほんじゃね。」
そう言うが早いかハルヒはサッと保健室から出て行った。
佐々木は俺のほうへ向き直り
「涼宮さんとはどんな話をしていたんだい?」
どんなって―
「俺の改造人間疑惑について。」
2秒ほど間をおいて
「まったく、彼女は。本当にそういうのが好きだね。」
そう言うとあきれ返るようにため息をついた。
694:8
07/07/18 22:56:56 yhJWEOkn
せっかく佐々木が弁当を届けてくれたので、ありがたくそれを賞味させていただこう。
しかしながら、保健室で弁当を食うというのも何か変な感じだな。
そんなことを思いながら弁当を広げていると、佐々木が俺の隣にチョコンと座った。
「?」
訝しがる俺の横で、佐々木は自分の弁当をテーブルに置き、包みを解いた。
「ん?あぁ、一人で昼食では寂しいだろうと思ってね。」
俺の視線に気づいた佐々木はそう答えた。
こいつが隣にいる昼飯は中学時代を思い出させる。
実は気が滅入ってすこし食欲が失せていたのだが、佐々木が隣にいるおかげで気分が落ち着いた。
「キミの様子がおかしいのを面白がってわざわざ保健室まで来るとは。まったく、なんとも形容しがたい人物だね、彼女は。」
と独り言のようにしゃべりながら箸を動かす。
ハルヒの奇矯な振る舞いは、俺にとってはもう慣れてしまったことなので、なんとも思わないがね。
「でも、彼女がクラスでまともに会話をするのは何の因果か、キミだけか。まったく、実にキミは人から好かれ―人に話しかけられやすい体質をしているよ。」
俺自身望んだわけではないけどな。
「しかし、涼宮さんではないが、今日のキミの振る舞いは実に奇妙だ。宇宙人に改造されたとは思わないまでも、まるで、こう白昼夢の中にいるようだよ。」
卵焼きを箸で口に運びながら、目だけを俺のほうへ向けて佐々木はそう言った。
「あまり気にしないでくれ。なんというか、こう…そういう気分だったんだ。」
最低な言い訳だが、俺にはこの状況を一切の齟齬なく伝える語彙力はない。
「そうかい。まぁ、そうやって世界の見方を変えようとすることは悪くはないと思うが。ただ、もう少し、スマートな方法を取ってもらいたいものだね。」
そして、佐々木は喉の奥からくっくっと笑い声を上げた。
「ところで、これからどうするのかね。顔色はずいぶんよくなったようだが。早退する?それとも教室に戻るかい?」
昼休みの校庭の喧騒が俺を追い立てているような気がした。
695:9
07/07/18 22:57:58 yhJWEOkn
結局、俺は教室に戻った。
正直、クラスの連中から向けられる奇異の視線は痛くて仕方なかったが、放課後文芸部室を訪問するという最優先課題があるため仕方がない。
保健室でももうこれ以上寝かせてはくれないだろうしな。
谷口のアホがうれしそうに近づいてくる。
「お、うらやましいねえ。かわいい彼女が保健室まで連れて行ってくれて、あげくお弁当まで届けてくれるなんて。」
「だって佐々木さんはわざわざ、もっとレベルが上の高校へ行けたのに、先生と両親の反対を押し切ってキョンにあわせて北高に来たくらいだからねー。」
国木田が余計なフォローを入れる。
うるさい。
悪いが、お前にかまっている余裕はないんだ。
「あー、つれないねー。俺も早く彼女作りてー。」
両手を挙げてあきれ返るようなしぐさをして谷口のアホは離れていった。
国木田もなんともいえない笑みを浮かべながら谷口についていく。
まったく。
お前だけはいっぺんくらい性格を変えられろ。
佐々木も何か言い返してやれ。
そう佐々木のほうへアイコンタクトを送る、しかし
「ん?まぁ、いつものことだ。気にする必要はないだろう。」
とあっさり笑い飛ばされてしまった。
まぁ、こんなことで今は神経を使っている場合ではないな。
席について、気がついたように後ろを振り返ってみる。
やはり、あいつの姿はない。
また、休み時間ぎりぎりまでどこかをほっつき歩いているな。
あいつだけは本当に変わらないな。
696:10
07/07/18 23:00:08 yhJWEOkn
6時間目の授業も滞りなく終わった。
最後のHRを終えて、教室がざわめきだす。
さてと、俺もこちらの世界での長門と朝比奈さんとついでに古泉の顔でも拝みに行くか。
そう思って、立ち上がろうとした俺の背中を後ろから叩く奴がいた。
涼宮ハルヒ。
俺が振り返ると「わかっているでしょ?」と言わんばかりににやっと笑った。
わかっているよ、こっちだって一刻も早く助けを求めに文芸部室に行かねばないんでね。
ただし、お前に助けを求めるわけではないけどな。
それからハルヒは何かを言いかけたが、ちらりと右隣を見ると、左手を軽く上げてさっさと教室を出て行った。
ハルヒの視線の先で佐々木がこちらの様子を見ていた。
「いつのまにか随分と親睦を深めたみたいではないか、キョン。」
そう皮肉に包まれた笑顔を俺に向ける。
何が言いたいんだ。
そんな俺の心情を察したのか、その皮肉の色合いはすぐに和らぎ、
「さてと、それじゃあ帰ろうか、キョン。」
鞄を担ぎ上げた佐々木が俺の目を見つめている。
「悪い。今日は寄るところがある。」
何かうまい嘘でもついてごまかしたいような衝動に駆られたが、別に佐々木相手に隠すようなやましいことをしているわけではない。
けど、なんで佐々木に見つめられてこんなにうしろめたい気分になるんだ。
「わかった。では、また明日。じゃあね。」
数秒ほど間をおいて、佐々木はそう挨拶すると俺より先に教室を出て行った。
なぜかこの小さなウソが、今日一番俺の心に重くのしかかった。
697:11
07/07/18 23:01:32 yhJWEOkn
歩きなれた旧校舎への道を歩く。
むかつくくらいにいつもと同じだ。
文芸部室の扉の前に立ち、ドアノブに手をかける。
おそらくハルヒがあの時言いかけた言葉は―
「やっぱり来たわね!」
ドアをあけるとハルヒが脳内核融合でも起こしているのではないか、と見間違わんばかりの笑顔で俺を出迎えた。
本当に用があるのはお前じゃないんだけどな…
部室内を見渡す。
長門はいつもの位置で時間が止まったかのように読書中。
メイド服姿の朝比奈さんが、「わ、お客さんですかー。」とかわいいらしい声を上げながら、ぱたぱたとお茶を入れる準備をしている。
古泉の奴は目が合うとむかつくくらいにさわやかなスマイルで会釈をした。
さて、果たしてこの部屋にいるメンバーがどれだけ俺の知っているSOS団なのか…
「で、なに?わがSOS団にやってきたということは当然不思議なネタを持ってきたんでしょ?宇宙人にさらわれた、実は自分が未来からやってきた未来人とか、自分の超能力者に気づいたとか!もったいぶらずに早く教えなさい。」
ハルヒ、お前にこんなことを言うだけ無駄だと思うが、敢えて言わせてもらう。
空気を読んでくれ。
それと今の俺はお前のご注文の中では異世界人に近い。
しかし―
冷静に考えればこれはネタフリとして悪くない。
そう、このSOS団の正体を確かめるんだ。
「さすが、ハルヒ。そうなんだ。俺がここへ来たのは、今朝自分の正体を知ってしまったからなんだ。」
ハルヒの瞳孔が獲物を見つけた猫のように広がる。
心なしか古泉のスマイルが若干硬くなった気がする。
「実は俺は未来から送り込まれてきた未来人であるということに今朝気がついたんだ。そして―」
「そして?」
「そこにいる朝比奈さんも俺と同じ未来からやってきた未来人だ。」
そして朝比奈さんを指差す。
お茶を入れようとポットに手をかけた朝比奈さんの表情がみるみる変わっていく。
驚愕の度合いが臨界値を超えてしまったようで、震えながら今にも泣き出しそうな目で俺を見ている。
古泉の野郎は一瞬険しい表情を見せたような気がしたが、すぐにいつものスマイルに戻った。
不気味なくらいに安定したスマイルに。
長門は―
まぁ、今の長門の表情の変化を読み取るのは俺には無理な話だ。
ハルヒの奴はぽかーんとしていやがる。
しかし、今の反応でわかった。
古泉や長門にはカマをかけてもこっちの思惑には乗ってくれないだろう。
だとすれば、この人しかいない。
純真無垢なこの人を騙すような真似をするのは心が痛むが、仕方が無い。
許してください、朝比奈さん。
けど今ので、大体わかりましたよ。
さて、この微妙な空気をどうするか―
698:12
07/07/18 23:02:48 yhJWEOkn
「なんていうのは、うそピョンだ。」
我ながら最低ここに極まれり。
その瞬間世界が停止したかと思った。
ハルヒの奴は開いた口からさらにもう一段階あごを落としたが、すぐに気を取り直し、
「ちょっと、なんなのよ、それ!」
唇をすねたペリカン状にし、俺を鋭い目でにらみつける。
「冗談だよ、ただの。」
「私は忙しくて仕方が無いっていうのに、そんなしょうもない冗談を言いにわざわざ来たわけ?」
わざわざ俺の登場を待っていたお前のどこらへんがどう忙しいのか、400字以内で説明してくれ。
「みくるちゃん!こんなアホにお茶なんて淹れる必要ないわよ!」
ポットに手をかけたまま固まっていた朝比奈さんにハルヒの一喝が飛ぶ。
朝比奈さんは正気に戻ったように、「は、はい。」と返事をするとお盆を抱えて後ろに下がった。
「まったく、ほんっとくだらない。今朝からあれはこのしょうもない冗談の前フリだったわけ?」
拗ねまくるハルヒ。
こっちも冗談だったらどれだけうれしいことかね。
「あ、わかった!」
「…なにがわかったんだ?」
「ふふーん、そういうことね。」
拗ねていたかと思うと、一転不敵な笑みを浮かべてあごに手を当てていやがる。
「何だって言うんだ?」
「あんた、みくるちゃんとお近づきになりたくてあんなしょうもない冗談をいったんでしょ!
あ、それとも有希かしら?あの子もちょっと変わってるけどマニアックなファンがいそうだわ!」
おい、何、脳内妄想を繰り広げていやがる。
「けど、あんたもねー、有希やみくるちゃんとお近づきになりたいっていうのはわかるけど、あんたにはちゃんとした彼女がいるでしょ?
そういうモラルのない恋愛は団長として断じて許せないわ。」
腰に手を当てて、どうだ、と言わんばかりに俺を不遜ににらみつける。
「悪いが、俺には彼女なんていない。」
「何言ってんの。あんたが佐々木さんと付き合っていることくらい私だって知っているのよ。それをすっとぼけてごまかそうなんていやらしい。」
「それは誤解だ。」
「何が、誤解よ。そうやって、ごまかせると思っているの?
ちゃんと、佐々木さんっていう立派な彼女がいるくせに、それでみくるちゃんや有希に手を出そうっていうんだから、ほんっとあんたって最低。人間のクズね。」
「だから違うって言っているだろ。」
「しつこいわね。この期に及んでまだ言い逃れするの!」
今朝から色々あったせいだろうか、ハルヒの軽蔑しきった目で見られた俺は一瞬で頭に血が上ってしまった。
「断じて違う!」
気がつけば自分でも信じられないくらいの大声で叫んでいた。
俺の迫力にハルヒも思わずたじろいでしまったようだった。
部室内に静寂が訪れる。
そして、その静寂を破ったのは意外な人物の声だった。
699:13
07/07/18 23:04:11 yhJWEOkn
「それは何が違うって言う意味かな?」
聞き慣れた声が俺の背後からした。
まるでナイフを後ろから突き立てられたように、俺はあわてて振り返る。
佐々木―
佐々木が両手に鞄を持って、俺が開けっ放しにしたドアのところに立っていた。
「佐々木…」
「キミの事が心配で様子を見に来ただけで、盗み聞きするつもりはなかったんだが。」
目を伏せたまま。
深海に沈んでいくような錯覚すら与える重い声だ。
「キミがそこにいる女子たちを目当てで涼宮さんに近づいたことを否定しているのか、それとも僕と恋愛関係にあることを否定しているのかは僕にはわからない。」
少し間を置くと、佐々木はその大きな瞳で俺を捕らえた。
「でも、もし後者を否定しようとしていたなら、確かに僕たちはそういう誤解を受けてきたわけで、それは僕も認めるところだ。けど―」
佐々木の瞳に今まで見たことのない表情が浮かんでいた。
「そんなに力強く否定しなくてもいいじゃないか」
空虚な笑み。
胸が痛む。
心に突き刺さる。
返す言葉が見当たらない。
どう返せばよかったんだ?
佐々木はそのまま身を翻すと、廊下を走って去っていった。
うつむいたあいつの横顔は前髪に隠れて、その表情を伺うことはできなかった。
700:14
07/07/18 23:05:24 yhJWEOkn
俺はその場にアホみたいに突っ立っていた。
完全に思考停止。
気がつけば、元の世界に戻ることなんてどうでもよくなるくらいに。
「あたしさ。」
ハルヒが重たそうに口を開いた。
「最初はあんたをSOS団に誘おうと思っていたのよ。あの英語の時間に思いついたときに。」
顔をあさっての方向へ向けながらハルヒの独白が始まった。
「で、それからあんたを連れ出してやろうと思った瞬間に、佐々木さんがこっちを見ているのに気がついたの。
なんていうか、こう、あたしまで切なくなるような目で。だから、結局わたしはあんたを誘わなかったのよ。」
そんなこと初耳だよ。
この世界では。
「あんたは馬鹿みたいに鈍感だから気づいていないかもしれないけどね。」
お前にだけは言われたくないよ。
「後で佐々木さんに謝っといて。悪かったって。」
「自分で言えよ。」
「うるさいわね。わたしの言うことにはちゃんと従いなさい、キョン。」
この世界へ来てハルヒにはじめて名前を呼ばれた。
結局のところ、俺は長門に助けを求めるような気分にとてもなれず、そのまま部室を出た。
佐々木はどこへ行ったんだろう。
そのまま家へ帰ったのだろうか。
気がつけば、そんなことばかりを考えていた。
「あの、キョンくん、でいいのかな。」
廊下を一人歩く俺を甘い声が呼び止めた。
「朝比奈さん。」
メイド服の上級生は肩で息をしている。
走って俺を追いかけてきてくれたみたいだ。
「あの、その、あの佐々木さんって女の子とはちゃんと仲直りしてくださいね。え、と、なんていうか、その…」
「わかっていますよ。俺もあいつとこのままなんていやですし。」
それは偽らざる俺の本心だ。
「はい。」
そうやって微笑みかける俺に応えるように、朝比奈さんも微笑んでくれた。
「あ!え、え~と。あのわたしが未来人っていうのは、その…」
あぁ、あなたにとってはそっちが本題ですよね。
「あぁ、それですか。それはですね…」
「それは?」
「禁則事項です。」
そう言って、俺は人差し指を口に当てた。
701:15
07/07/18 23:06:41 yhJWEOkn
部室から校門までの道で佐々木らしき影を見ることはなかった。
本来なら、走ってでも追いつくべきなのだろうが、今の俺にはあいつにかける言葉が思い当たらない。
重たい足取りで帰路に着く。
ちょうど家の前くらいの道で予想通りあいつが待ち構えていた。
「よう。待たせたか?」
「まるで僕がここであなたを待っていることを知っていたような言い草ですね。」
そいつは爽やかスマイルのまま右手で髪をかき上げる。
お前の行動なんてワンパターンだしな。
「で、俺に色々と聞きたいことがあると思うが、疲れてるんで手短に頼む、古泉。」
「わかりました。まず、取り急ぎ僕が確認しなくてはならないのはあなたの正体です。」
「ハルヒに近づく人間の身辺調査は『機関』とやらがやっているんじゃなかったのか?」
「よくご存知ですね。確かにあなたは我々の調査では涼宮さんと全く関係のない普通の人間、のはずでした。」
「過去形ってことは何だ、今は違うっていうのか。たとえば能力を発揮する場所を限られた超能力者になってしまったとか。」
古泉はふっふっ、と笑うと
「いえ、あなたは僕たちの仲間ではありません。長門さんに確認をとったところ、未来から来たわけでもない、この時代のただの何の変哲もない普通の人間であるとのことでした。」
長門のお墨付きなら間違いないな。
「そうか。んで、何がご不満だ?」
「だからこそです。あなたが我々『機関』や未来人、もしくはそれに対立するような組織と接触した形跡が全くない。
にも拘らず、我々の正体について、ひいては涼宮ハルヒの能力についてもよくご存知のようだ。
あなたはせいぜい涼宮さんがまだ少し好感を持っている程度の人物に過ぎない。
それが我々には納得できないのです。」
まぁ、それらについては体験学習させていただいたしな。
「実はそれは俺にも納得できない事態なんだ。」
「と、いうと?」
「そうだな。俺はお前にとっては一年先の未来から来た異世界人といったところか。」
古泉は額に手を当ててあきれ返るようなしぐさをすると、
「一見冗談のように聞こえますが、けど納得はできる答えですね。」
そういうことだ。
また、俺について新しい情報が入ったら教えてくれ。
「わかりました。特に問題もないようですし、今のところはあなたの説明を信じることにしましょう。」
新川さんや、森さん、多丸兄弟にもよろしく言っといてくれ。
古泉は前髪を軽く指ではねると、爽やかスマイルのまま
「伝えておきましょう。では。」
702:16
07/07/18 23:07:47 yhJWEOkn
「あぁ、そうだ。一つ訊きたいんだが。」
「なんでしょう?」
「佐々木は…いや、なんでもない。」
「あなたのお友達、でいいんですよね、あなたの言葉を信じるならば。」
その回りくどい表現は何が言いたいんだ。
「彼女は普通の人間ですよ。それこそごくありきたりの。」
「そうか。」
なぜか俺は少し安心した。
橘京子や自称藤原が出てくる心配はなさそうだな。
「ええ。」
古泉はにこやかに相槌を打つ。
「そういえば、相変わらず不思議探索という名の市内散策はやっているのか?」
「ええ。涼宮さんの気が向けば。」
「そうか。あいつは相変わらずくじ引きでグループ分けをしているのか?」
「いえ?我々は4人一緒に行動していますよ。」
「そうか。」
703:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/18 23:08:12 2KJYOOtv
支援
704:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/18 23:08:44 68JfXmkS
支援
705:17
07/07/18 23:09:01 yhJWEOkn
疲れ果てた。
一日がここまで長く感じられるとは。
家の玄関を開けると、一足先に家に帰っていた妹がうれしそうに駆け寄ってくる。
「キョンくん、おかえりー。」
ただいま。
っていうかお前はこの世界でも俺をそう呼んでいるのだな。
「ご飯出来てるよー。」
「わりぃ。今日は疲れているから少し部屋で休んでから食うよ。」
正直、妹の相手をする体力も精神力も残っていない。
「ふーん。」
お前は悩み事がなさそうでいいな、妹よ。
「ところで、お前。」
「何?」
「佐々木って知っているか?」
何気なく聞いた質問の答えは意外なものだった。
「佐々木って?佐々木のおねえちゃん?当たり前だよー。よくうちに遊びに来るもん。」
キョンくんなんか変だよ、という妹の声を無視して質問を続ける。
「あいつはよくうちに来るのか?」
「うん。キョンくんの勉強が心配だからって、勉強を教えに。あと、キョンくんが問題集を解いている間暇だからって、たまにお母さんの晩御飯の用意も手伝ったりしてるよ。それで晩御飯も一緒に食べるの。」
相変わらず俺はあいつに心配ばかりかけているのか。
いや、それ以前にこれじゃ本当に付き合っているみたいじゃないか。
「お母さんがキョンくんのお嫁さんの心配はこれでいらないわーって喜んでいるよ。」
母親と佐々木が並んで台所に立って料理しているところを想像した。
俺の文句などを言いながら、二人で笑いあって料理している姿を。
それで、佐々木と一緒に晩飯を食っている俺の姿を。
「で、晩御飯を食べたら、キョンくんが佐々木のおねえちゃんを自転車でおうちまで送っていくのー。」
俺には知りうるはずもなかった。
あいつがどんな顔で俺に勉強を教えてくれているのか。
あいつがどんな顔で母親と一緒に晩飯の支度をしているのか。
あいつがどんな顔で俺たちと食卓を共にしているのか。
そのとき俺はあいつにどんな言葉をかけているんだ。
自転車で送っていく間、あいつがどんな表情をしているんだ。
俺たちはどんなことを話しているんだ―
そう、俺には知りうるはずもなかった。
今のこの「俺」には。
706:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/18 23:09:06 rAxvS0Ic
支援
707:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/18 23:10:01 68JfXmkS
支援
708:18
07/07/18 23:10:07 yhJWEOkn
暗い部屋のベッドに腰掛ける。
そして俺は考えを巡らせていた。
この世界は以前の場合とは違って、ほとんど全てが俺の知っている世界と同じだ。
唯一の例外は佐々木、俺の中学校のクラスメイトが同じ教室にいることだけ。
あの時佐々木はどんな気持ちでいたのだろうか。
今の俺にはわからない。
この世界でのあいつとの思い出を俺は何一つ共有していないのだから。
そう思った刹那、今朝の国木田の言葉が頭に浮かんだ。
―佐々木さんはキョンと一緒にいたいから北高に来た。
確かに、そんなことを言っていたはずだ。
ベッドから跳ね上がり、俺は部屋の電気を点ける。
そして、机の上のアルバムを開いた。
ここにはあるはずだ。
この「俺」の知らないもう一人の「俺」の記憶が。
中学の卒業式の写真―
しかめっ面か笑っているのかよくわからない表情をしている俺の隣で、卒業証書を持った佐々木が笑っている。
あいつのこんなにいい笑顔、俺は見たことはなかった。
そして、次のページには、入学式。
北高の制服を着た俺と、セーラー服姿の佐々木が桜並木を背景に写っていた。
両手を後ろに組んで、少し胸を張ったあいつは年相応に幼く見えた。
そんなに嬉しそうな顔をするんじゃねえよ―
胸が締め付けられる。
俺のいた世界で、佐々木が県外の私立高校へ行くと告げたとき、あいつは何を思っていたのだろうか。
そういえば俺のいた世界であいつがどんな制服を着ていたのかすら知らなかったな。
机の上に無造作に置かれたホッチキスで留めたレポート用紙の束が目に入った。
見覚えのある字で、『中間テスト対策』と書いてある。
テストに出そうな問題と、そのチェックポイントを丁寧に色ペンで書き込んであった。
俺なんかのために、ね―
お前がどんな気持ちで、どれだけの想いで、俺と同じ高校を選んで、俺なんかの面倒を見てくれたかなんて、まるで知らないっていうのに。
お前が教えてくれた勉強も、お前の作ってくれた晩飯の味も知らないんだよ、俺は―
709:19
07/07/18 23:11:12 yhJWEOkn
ベッドの上にうなだれるように倒れこむ。
蛍光灯が憎らしいくらいに白い光を放っている。
もしも、この世界にいる俺と今の俺が入れ替わってしまったっていうなら、早く元いた場所に帰らないといけない。
俺自身のためにも、佐々木のためにも。
携帯電話を開く。
俺の予想が正しければ、そこにあいつの番号があるはずだ。
電話帳の中身を確認する。
そこにハルヒや朝比奈さんや古泉の番号は登録されていない。
長門の家には電話はつながるだろうか。
いや、今は長門を頼るべきではない。
俺が今やるべきことを俺自身がやらなくてはいけない。
携帯の着信履歴を開く。
携帯のディスプレイは佐々木の番号を表示している。
けど、コールをかける勇気が俺には出なかった。
俺はあいつの知っている俺とは違う。
俺は、この世界の俺があいつとつくってきた思い出を何も知らない。
会ってどうするっていうんだ。
どうしたらいいんだ。
710:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/18 23:13:35 68JfXmkS
支援
711:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/18 23:14:34 rAxvS0Ic
支援
712:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/18 23:18:54 lD+5xslt
支援する意味があるのかわからないが一応支援
713:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/18 23:21:29 68JfXmkS
>>712
支援は連続投稿規制を避けるために必要なのですよ
714:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/18 23:25:05 pjq1bG42
そうかなら大いに支援しようの団SOS団だ!!
715:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/18 23:27:20 rAxvS0Ic
この 間 は ソレになってしまったのでわ
716:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/18 23:27:23 lD+5xslt
成る程
あり?
支援してるのにもしかして引っ掛かったか?
717:20
07/07/18 23:28:04 L3ElLzp9
握り締めた携帯を開く。
漠然とした期待と不安が頭をよぎる。
受信メールボックス。
そこに昨日届いた佐々木からのメールが入っていた。
―
From: 佐々木携帯
Subject: Re:風邪
風邪は大丈夫。インフルエンザではないようです。だ
いぶ楽になってきたから明日には学校に行けると思い
ます。キミの家を訪問した夜に熱が出たので、キミに
も風邪がうつっていないかが心配です。まだ夜は冷え
るから体には気をつけて。じゃあ、明日学校で。
―
馬鹿野郎。
自分が風邪引いているくせに、俺の心配なんかすんなよ―
俺はお前との思い出なんて何も知らないのに。
携帯を持つ手が震える。
携帯のディスプレイに表示された文字が滲む。
今日の部室での俺の言葉をあいつはどんな気持ちで聞いていたんだろうか。
あいつをどれだけ傷つけたんだろうか。
もしも、俺が元の世界に帰れなかったとしても、せめてあのときのあの言葉だけは取り消させてくれ。
なぁ、悪戯好きの神様―
718:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/18 23:28:36 ts2APnKs
924スレッドじゃダメなスレ内規制だっけ?
719:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/18 23:28:40 rAxvS0Ic
支援
720:21
07/07/18 23:29:07 L3ElLzp9
コール音が5回ほど鳴る。
ガチャ、と静かに電話のつながった音がした。
受話器越しに聞こえる沈黙―
「佐々木か。」
重たい口を開いた。
沈黙がどうしようもなく痛い。
携帯を握る手に汗で滑る感触がする。
「あぁ。」
一呼吸置いて短くそう切り替えされた。
「佐々木、少し話をしたいことがあるんだ。今からでも、その、会って話せないか。
電話じゃなくて、お前と直接話がしたいんだ。」
また、沈黙。
勘弁してくれ、まるで心が削られるようだ。
「もう、夜7時を過ぎるところなのだが。」
「非常識なのは十分承知だ。それについては俺も謝る。けど、俺はお前と今すぐ話さなきゃならない。話が…したい。」
俺の一人きりの部屋で俺の呼吸音だけが聞こえる。
「わかった。君の家の近くの角のコンビニと言えばわかるだろうか。そこで、待ち合わせよう。」
「キョンくんご飯はー?」
「悪い、急用が入った。少し出てくる。」
そう妹に告げて、俺は家を飛び出した。
自転車にまたがり指定の待ち合わせ場所に向かう。
夜の空気は少し肌寒かった。
コンビニの明かり。
無機質に清潔な店内は、まるで俺を拒絶しているような気がした。
駐輪場で待つことにした。
佐々木はまだ来ていないようだ。
晩飯を食い損ねたな。
…佐々木の作った晩飯ってどんな味がするんだろうな。
この世界の俺が少しうらやましく思えた。
俺にもこんな風になっていた可能性があったのか。
この世界の俺は佐々木のことをどう思っていたんだろうか。
その答えはわかっている。
この俺も、こっちの世界の俺も、俺は俺だから。
721:22
07/07/18 23:30:13 L3ElLzp9
「やぁ、キョン。」
背後から声がした。
振り返る、普段より少しだけ遠い距離に佐々木は立っていた。
「佐々木、すまないな。こんな夜中に呼び出してしまって。」
「…こんなところで立ち話もなんだし、場所を移さないか。」
近くに公園がある、そう言って佐々木は先に歩き出した。
後を追う俺の足取りは少し重い。
不安と期待と緊張と。
自分の中で、佐々木の存在が大きく変わっていることを改めて、認識していた。
この微妙な距離がもどかしい。
でも、触れられない。
あのころ佐々木は俺の自転車の後ろで何を思っていたのだろう。
住宅街にある小さな公園。
俺たちは何気なくブランコに腰掛けた。
佐々木は小さくブランコを揺らしている。
その振動にあわせて揺れる前髪の奥の瞳は、ただ静かに地面を見ていた。
その唇、透き通るような白い頬、そしてその瞳に思わず見とれてしまう。
俺の視線に気づいたのか、佐々木と目が合ってしまった。
なぜか目を逸らしてしまう。
何か話さないと―
「その、今日はいろいろすまなかった。」
佐々木は再び視線を地面に落とす。
「いろいろって?」
「朝からお前の世話になったこと。そして、今日の放課後のこと。」
沈黙。
佐々木のブランコを揺らす音が止まる。
「僕の方こそ取り乱してしまってすまない。」
「それとあのメール、心配してくれてありがとうな。」
「当然の事だよ。僕にとっては。」
街頭と月明かりが俺たちを照らしている。
「なぁ、佐々木。もしも―
もしも俺がお前の知らない世界から来た全くの別人だって言ったらどうする?」
「―――納得は出来る、けど理解は出来ないというところかな。」
「鼻で笑われるかと思ったよ。」
「キミは鈍感だけれども誠実だからね。僕はキミの言葉を疑ったことはない。」
初めて、佐々木が俺のほうを向いた。
明るいやわらかい光のような柔和な笑顔。
「それに、僕はキミと話していて、いや、キミと一緒にいて楽しいから。だから、僕にとってどこの世界から来たキョンでも、キョンだよ。」
佐々木の一言で救われた気がした。
佐々木はこの世界でも俺を見つけてくれた。
そうだった、俺は俺なんだ。
722:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/18 23:30:41 pjq1bG42
wktkSOS団
723:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/18 23:30:45 2KJYOOtv
佐々木…
支援
724:23
07/07/18 23:31:16 L3ElLzp9
「馬鹿馬鹿しいことを訊いてすまなかったな。なんか、おかげで安心できたよ。」
「そうかい。なら、僕も別世界から来たキミに、お返しに馬鹿馬鹿しいことを訊いてもいいかな。」
佐々木の瞳の中に、やわらかく俺が捕らわれる。
その白い喉元の呼吸が少し荒くなった気がした。
俺はその瞳に吸い込まれるように、ただ静かに向き合う。
「もしも―
もしも、僕が本当にキミの彼女になりたい、と言ったらキミはどうする?」
「―もしも、もしも俺がイエスと答えたらお前はどうする?」
佐々木は喉の奥でくっくっと笑い声を上げた。
「…その答えが返ってくるとは思っていなかったから、何も考えていなかったな。」
「じゃあ、今すぐ考えてくれ。」
くしゃくしゃの佐々木の顔。
笑っているのか、泣いているのか、はっきりしてくれよ。
「佐々木、俺の彼女になってくれないか。」
今度は「もしも」は付けない。
佐々木は頷くように頭を下げると、そのまま俺に額を押し付けるようにもたれかかってきた。
俺は佐々木を倒れないように抱きしめる。
本当に、こんな小さな距離だったんだ―
俺と佐々木の間は。
そして、こんな小さな距離を飛び越える勇気がなかったんだ。
佐々木の体温が伝わってくる。
「ずっと好きだった。」
あいつの鼓動が歌を歌う。
俺はそのまま子守唄に包まれるように、ただ抱きしめているだけだった。
どれくらいの時間そうしていたのか、俺にはわからないが、やがて佐々木は顔を上げた。
あの間、必死に泣き止もうとしていたんだろう。
泣きはらした目で俺を見る。
「こんな顔を見られるのはいやだけど、こうしないと君の顔が見えないからね。」
平穏で優しい空間。
俺は答える代わりに、あいつの唇に自分の唇を近づけた。
ただどうしようもなく。
いっそこのまま深海にでも沈んでしまえばいい。
もしも、そこに俺たちしかいないのなら―
それでいい。
725:24
07/07/18 23:32:18 L3ElLzp9
そして、突然に、一瞬にして方向感覚がなくなる。
気がつけば地面に背中が当たっていた。
そして、俺は目をゆっくりと開けた。
わかっている、わかっているよ。
それが夢だったってことくらい。
時刻は午前2時を指していた。
カレンダーを見る。
今日はあれから1年後の日付。
帰ってきた、みたいだな。
ただ、俺の流した涙の跡だけは、はっきりと残っていた。
アルバムを開いてみる。
そこにはあの写真はなかった。
また、現実という名の夢を見ていたんだな。
そして、俺は一体誰の夢を見ていたのだろう。
ほんの少しだけ掛け違えたボタン。
「人の夢と書いて儚いというんだよ、キョン。」
そういえば、いつかお前は笑いながら俺にそう言ったことがあったよな。
『もしも』
726:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/18 23:32:23 s5bhB5Fj
支援
727:725
07/07/18 23:33:42 L3ElLzp9
神SSに刺激されて、長く書きすぎた。
くそ長い長編にお付き合いいただきありがとう。
さるってる間の支援ありがとう。
728:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/18 23:35:10 P90qeAIW
とてつもなくGJ!
729:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/18 23:36:53 /YC0r1nW
最高だぜ泣きたいよGJ!
730:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/18 23:37:09 pjq1bG42
このスレは神の溜まり場か?はげしくGJ!!
731:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/18 23:39:39 2KJYOOtv
GJ!
まさかの夢オチか
なんていうか佐々木が北高に来てたらこうなってたのかもしれないとか
考えただけでもう感慨深くなるな…
なんて切ないんだ…
732:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/18 23:45:00 lD+5xslt
何でこのスレのSSはレベルが高いんだと(ry
佐々木の言葉がなんか深いなぁ…
とにかくGJ
733:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/18 23:48:29 ts2APnKs
ラブレター騒動で抜けた腰がまた抜けたよ いいもの読めて幸せだ~
734:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/18 23:51:54 Vkgmmu8a
全俺が泣いた GJ!!
735:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/18 23:53:27 R3K7CN/z
佐々木スレ 再 起 動
736:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/18 23:54:38 u9Pf70uj
すげえ。ひたすらにGJ。
737:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 00:04:37 GL6XwYAB
佐々木を扱うだけで、SSの知性レベルが上がるんじゃね?
儚さと聡明さが滲み出ていてGJ。
738:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 00:24:51 +DjTYtzI
>>727
うるとらすーぱーGJ!
佐々木スレは、超サイコー!
739:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 00:32:19 8g70f/ol
寝る前にいいもの見せてもらったぜ
GJ!
740:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 01:07:40 89yutajA
力強くGJと叫ばせてもらう(´;ω;`)b
741:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 01:24:58 8CJqPNfS
GJ!!
なんか今日はみんなよすぎて、
SS投稿してみようかと思ってたけど、
とてもじゃないけど出来ないな……
また今度する事にします。
742:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 01:55:11 vPISui6O
>>741
今日でいいと思う
743:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 02:07:00 zE1Rhobu
明日がまた来るかどうかは分からないんだぜ?
744:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 02:25:10 vPISui6O
>>743
が いい事言った
745:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 02:31:38 tIR8xv41
>>743
まったく同感、ここ二日はすごいな。連休効果かしらん。
746:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 03:07:07 htoJKS4l
ハルヒの力が、元々佐々木のものだとしたら、
”消失”の世界は長門により改変された世界ではなく
佐々木の力がハルヒにコピーされていない世界。
747:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 03:51:11 P68KFp8t
今からテスト勉強しよーと思い起きたがなんだこの神SSは?
この時間に切なくなるのは辛いが、なんか頑張れる気がする!
ありがとう。
748:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 04:03:28 tIR8xv41
車輪の唄
二月の朝は寒い。世界は凍り付いており、口は煙突みたいに真っ白な煙をもくもくとはき出した。
俺はそんな中、ふたり乗りの自転車をとばしていた。風を切り裂く自転車、寒風に凍り付く顔、
そして背中にはかすかなぬくもり。 佐々木の体温が告げるぬくもりを俺は感じていた。
「しかし、キョン。こんな朝早くからすまないね」
いい。俺が勝手にやっていることだ。
「まさか、キミが僕の家の前で待っててくれるなんてね。今日帰宅したら両親になんと言おうかな?」
別に、どうでもいいだろ、お前は今日の試験のことだけ気にしてろよ。お前を駅まで運ぶのは
俺の日課みたいなものだ。ましてや今日はお前の第一志望の受験日ではないか。お前には
いろいろ世話になったからな。せめてもの恩返しだよ。
「ふぅむ、持つべき物は友情、だね」
佐々木は何かを確かめるように、そう言った。
気合いを入れてペダルを踏み込む。赤いママチャリは重量オーバーにギシギシと悲鳴を上げる。
線路沿いの上り坂を佐々木を乗せて駆け上がる。いつものラストスパート。
「さぁ、気合いだよ、キョン。もうちょっと、あと少し」
いつものように、佐々木は俺を応援する。今日は俺がお前を応援しに来たんだがな。
だが、その声に励まされて、自転車は俺たちふたりを坂の上に押し上げる。
いきなり視界に広がる街には、動くものはほとんど見あたらない。正面の空は朝焼け、オレンジ
の空と紫に彩られた雲が俺たちを迎えた。
「街はまだ寝ている。あの朝日は僕たちのために昇る」
あ、ああ。芝居がかった佐々木のセリフへに生返事を返し、俺は乱れた呼吸を整えていた。
なぜだろう。朝日が染みた。いつもより、多めの汗が流れた。
券売機で、佐々木が買う切符を見ていた。往復するだけで小遣いが結構な割合で吹き飛ぶような
遠くの街まで、佐々木はこれから毎日、通っていく。その金額がこれから俺たちの間に開く距離だ。
改札口で、佐々木は振り返った。
「送ってくれてありがとう。助かったよ」
そういって、右手を差し出す。その手をそっと握った。
「大丈夫。お前はきっと受かるよ」
どうしようもなく、こんなことしか言えない自分がもどかしい。
「うん、ありがとう」
そう言って、佐々木は手を離した。そして、もう振り返ることはなかった。
動き出す街を見ながら、身を切るような風の中、自転車を走らせる。
佐々木を乗せた電車が追い抜いていく。
自転車が電車を追い越せるはずもない。それでも俺は走らせていた。
なぜなのだろう。俺は佐々木が泣いているような気がしていたのだ。
あいつはこれからもっと遠くに行くだろう。
俺のような凡人ではたどり着けないような場所にああいう優秀な人間は進んでいく、
進んでいくことを求められるのだ。
「すまないな、佐々木」
俺はひとりつぶやいた。
自転車の車輪が答えるようにギシリと鳴った。
というわけで、BumpofChickenで『車輪の唄』でした。
749:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 04:35:29 0nWpIoX1
一体なんなんだこの神スレはw
佐々木スレpart14は、俺にとって忘れられないスレになった。
>>727
長編力作お疲れさま。凄いエネルギー持ってるな。
たった1本のメールで1年のブランクを埋めるくだりが、
ふたりの信頼関係をよく表していて素晴らしいです。
>>748
『巨人の歌』と『もしも』の両SSを呼んだ後だと、
佐々木の本心と現実とのギャップが余計に切なくなる。
中学卒業間際のふたりは本当にこんな感じだったのかも。
750:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 06:22:19 fWIjiaJY
定期あげ
751:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 07:46:59 /BfI1XX9
聡明だけど薄幸そう
そしてあのことば使い
なにげに大正時代の香りがするよ
752:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 10:49:57 8CJqPNfS
「やぁキョン。」
突然俺は後ろから声をかけられた。
なんだ佐々木か。
「この前はずいぶんと迷惑をかけてしまったね。
本当に申し訳なく思っているよ。」
確かにあれは大変だったな。迷惑もこうむったが、それは佐々木のせいではないさ。
「そういってもらうとこちらも気が楽になるよ。
どうだいキョン?もしも時間が有るのなら、一緒に歩かないかい?」
お前の方からそんなことを言い出すなんて珍しいな。
悪戯を考えた子供のような顔をしてそんなことを訊いてくる。
分かった。一緒に歩かせてもらおう。
時間?勿論十分に有るさ。
「そうかい……くく……相変わらずだね君は。」
馬鹿にされている気がそこはかとなくするが……
高校生にだって休息は健全な学生生活を謳歌するためにも必要なのさ。
「その辺りが変わっていないといっているんだよ。キョン?」
まぁ良いだろう?細かい事は気にせず。
それとも、誘ったのは俺をからかうためか?
「そんなことはないさ。ただたまには一緒にお茶でも飲んでみようともってね。
さっき歩かないかと言ったがね、この先においしいコーヒーを出す店が新しく出来たんだ。
そこに君を誘ってみようと思ったんだよ。」
なるほどな。それは一度飲んでみたいものだな。
佐々木は行ってみたのか?
「残念ながらまだそのお店のコーヒーを味わう事はできていないんだ。
なかなか敷居の高い感じのお店でね。白状しよう。
一人で入るのは少し気後れがしてしまってね。
それで君をこうやって誘ってみているのだよ。」
少し恥ずかしそうに、そう言って佐々木は笑った。
そういうわけなら、
何か裏があるんじゃないかと思う必要がなくなって心置きなく飲む事が出来るよ。
「では行こうか」
そういって俺達は歩き始めた。
753:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 10:51:12 8CJqPNfS
そのまま15分ほど俺達はそれぞれの学校の話をしながら、
歩き続けた。
ちょうど信号が赤になったので横断歩道の前で俺達は立ち止まっていた。
この道路は最近まで2車線しかなかったのだが、
最近になって4車線になった道路で結構交通量がある。
そんなことを考えながら、
さっきから俺のほうを向いて話している佐々木の方を向いた。
その時俺はあることに気がついた。
俺達のほんの少し先を走っている黒のセダンのドライバーが舟を漕いでいる事に―
そう思ったとき、そのドライバーがハンドル操作を誤ったのだろう。
そのセダンは俺達の方へと突っ込んできた。
「佐々木―!!」
俺はとっさに佐々木を突き飛ばした。
だが、その反動で俺は逆に動けなくなってしまい、
次の瞬間俺の視界は迫るセダンでいっぱいになった―
754:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 10:52:32 8CJqPNfS
初め私には何が起こったのか分からなかった。
いつもの様に彼に話していたら突然彼に突き飛ばされてしまった。
そして、突き飛ばされ倒れてしまった後、
ドン!!ガン!!と言う音に前を向くと、
黒い乗用車が近くの店の壁面にフロントをぶつけて止まっていた。
だが、そんなことよりも、私を突き飛ばした彼がありえないほど遠くにいた。
なぜ彼はあんなところに突然いるのだろうか?
私は目の前で起こった事が分からず、
ただ呆然としてしまっていた。
(そうだ……彼のところに行かなきゃ)
ようやく少し理解が追いついてきてそう思い彼へと近づいていった。
遠くで見ていると気がつかなかったが、
近づいていってみると、
彼の下に血だまりが広がっているのが分かった。
私はその非現実的な光景にどこか呆然と彼の元へ歩いていった。
「おい!キョン!!大丈夫か!!??」
ようやく彼の元へたどり着きそうになった時に、
視界の端から二人の少年が駆け出してきた。
「キョン!キョン!!聞こえるか!!!聞こえたらこの手を握れ!!!!」
少年の一人が彼の名前を叫びながら、
手を握っている。
「くそ!!駄目だ出血が多すぎる!!!脈も弱い。国木田!周囲の安全確保を頼む。」
そう言った後少年の一人は私の方を指差して119番に連絡をするように言った。
(119番……何番に連絡すれば良いんだ……!!)
とっさの事にどうしようもなく思考が空回りする。
そうしている間にも、私に指示を与えた少年はベルトを使い、
腕の出血を抑えたあと、気道を確保して、内臓に損傷がないか触診をしたり、
適切な処置を取っている。
ようやく私が119番通報をしようとしたとき、
もう救急車やパトカーのサイレンが聞こえ始めていた。
どうやら誰かが通報をしてくれたらしい―
755:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 10:53:59 8CJqPNfS
3時間後私は病院の待合室にいた。
彼の手術はまだ行われている。
彼の両親や彼を助けてくれた彼の友人らしい人も一緒にいる。
「佐々木さん……きっとキョンは大丈夫だよ。」
助けてくれた少年の一人が私に声をかけてきた。
どこかで見た事がある気がする。
「あ、ひょっとして覚えてないかな?国木田だよ。」
そうだ。国木田くんだ。
中学の頃彼と一緒のクラスだった時に同じクラスだった。
「久方ぶりだね……」
私は精神的に参ってしまっていたのでそれしか言う事が出来なかった。
私はそんなことよりも、彼の事が気になって仕方がなかった。
そんな私の事を分かってくれたのか、
国木田君は何も言わずに一度私に微笑むと、
もう一人の友達のところへと歩いていった。
その少年もどうやら彼のことをすごく心配しているようだった。
756:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 10:55:23 8CJqPNfS
8時間後ようやく手術中のランプが消えた。
どうやら手術が終わったらしい。
医者が出てきて一命をとりとめたことを私達に伝えると、
空気が緩むのが分かった。
しかし医者によると予断を許さない状態らしい。
一命は取り留めたものの脳に後遺症が残ったり、
このまま目覚めない可能性もあるそうだ。
私はベッドに横になっている彼の姿を見て、
そういった医者の事を思い出していた。
私の何ができるだろうか……?
実際事故の現場にいても全く何もできなかった私に。
私には世界を変える力があるらしい。
今まで私はそんなものは入らないと思っていた。
しかし、今私は彼が助かるならどんな事でも受け入れるつもりでいた。
(どうか……どうか……彼を助けてください……!!)
そう祈ったとき、
私は自分自身の閉鎖空間の中にいた。
私自身は来た事がなかったが、
話には何度も聞いていたので動揺する事はなかった。
そして何よりもそこには彼がいた。
しかし、地面に倒れて動かないでいる。
恐怖に駆られながら私は彼の元に駆け寄り彼をゆすった。
「ん……」
そういって彼は目を覚ました。
どうやらただ単に眠っていてらしい。
(良かった……)
そう思って彼に話しかけた。
「佐々木か……どうしたんだ……ここは……閉鎖空間か……?」
そう彼は言った
「分からない。気がついたらここに僕はいた」
私は彼を助けて欲しいと思ったらここに居た。
詳しくその事を話すと、彼はあっけらかんとこういった。
「じゃあ、ここを出たらもう助かってるのかもな。」
私は彼のそのあっけらかんとした口調に思わず呆然としてしまった。
くっくく……
思わずそんな笑いがのどの置くから出てきてしまう。
全く彼らしい。
「ありがとな佐々木。わざわざ俺のために力を使ってくれて。」
『彼以外になんて使うつもりはない』
とでもいえたらこの気持ちは解決したのかもしれないが、
先ほどの彼の言葉に影響されてか、
私は意地っ張りな自分を出してしまった。
「保健室のお返しだよ。僕と君はこれで貸し借り無しだ。」
「保健室……?」
彼はしばらく悩んでいたようだが、
ややあって、とにかくありがとうといった。
彼は覚えていないのかもしれないな。
少し残念だが仕方ない。
そしてこの夢の空間ももう終わりのようだ。
この空間での事は彼はきっと覚えていないだろう。
なんとなくそんな気がした―
757:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 10:56:24 8CJqPNfS
私は病院の廊下で目を覚ました。
彼は一般の病室に移ったようだ。
何とか面会も出来そうだ。
私は彼の面会に行く事にした。
彼は病室のベットの上で眠っている。
なんとなく彼はすぐ目を覚ます気がした。
彼に肩に手をかけようとしたその時、
病室の扉が勢いよく開かれた―
758:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 10:57:49 8CJqPNfS
「キョン―!!」
涼宮さんたちだった。
どうやらようやく連絡が行ったらしい。
全く間が悪いな……少しそう思ったが、私は後を涼宮さんたちに任せて出て行こうと思った。
彼が目覚めたときにいるのは、
廊下で眠っている二人の少年でも、
私でもなく彼女達だと思ったから。
最後に彼女達に「もうすぐ目覚めると思うよ。」
とだけは言って戸に手をかけた。
「どういう意味よ!?」
涼宮さんたちが聞いてきたが、私にもそういう感覚がすると言うだけで、
具体的な理由はないのだから説明のしようもない。
ちょうどその時彼が目を覚ます気配がした。
大慌てで戸をあけて出ようとする。
長門さんに手をつかまれた。
「大規模な情報フレアが観測された。
その発信源は貴方。貴方は彼を治すように情報を改変した。
私は貴方に感謝している」
彼女はそういって私の方を見た。
彼女が手を離してくれないから、彼が目を覚ましてしまった。
「キョン!!何度心配をかけるつもり!?罰として……罰として……」
「佐々木……怪我はないか?」
彼は涼宮さんの話すのを差し置いて、第一声でそういった。
自分の怪我じゃなく私なんかの怪我を聞いてきたのだ。
本当に嬉しさで涙が出そうになってきた。
(もう……ばか……そんなのだから……もう……)
長門さんが手を離してくれたので、
大丈夫とだけ伝えて、部屋を出た。
目から落ちる涙を隠すために―
(ありがとう……心配してくれて。大好きだよ。キョン。君の役に立てたのかな?)
759:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 10:59:45 8CJqPNfS
以上です。名作達の後に申し訳ありませんでした。
本当はもう少し続く予定だったのですが、途中で力尽きてしまいました。
すみません。
760:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 11:25:20 sOO1hydX
URLリンク(www10.atwiki.jp)
こんなん作ってみたけどどお?
761:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 11:38:44 iKFibDuk
>>759
感動した…
GJ!
>>760
今の保管庫よりはいいと思うな
更新率も今よりは良くなりそう
762:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 12:23:24 d3HDj2AJ
>>759
いい仕事してますねぇ
763:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 12:46:12 ZZVy6IiU
>>760
いいと思う
小ネタは載せない感じ?
764:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 12:52:06 tqPDEnGi
>>759
あなたは神ですか?
GJ!
765:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 14:18:25 CE3O7a4Z
なぜ『佐々木14スレ』は豊作なのか?
【仮説】
佐々木‘14’スレ
↓
佐々木‘十四’スレ
↓
‘十’に横線を足して‘キ’
↓
佐々木‘キ四’スレ
↓
佐々木‘キョン’スレ
…そうゆうことだ。
766:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 14:20:43 CE3O7a4Z
>>765
>
767:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 14:22:27 PcfFMH47
>>759
前後にもうちっと話が欲しかったかな。
そうじゃないと、佐々木が切なすぎるぜ・・・!
768:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 14:24:31 CE3O7a4Z
なぜ佐々木は豊乳でないのか?
【仮説】
佐々木
↓
SASAKI
S 凄く小さくて
A 赤ちゃんみたいな胸だけど
S さりげなく
A 当てても
K キョンには気付かれないから
I いっぱいギュゥって出来ちゃうんだ
…ごめんね
769:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 14:56:52 +DjTYtzI
>>759
凄くよかったです。
770:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 15:07:55 gA+3Nw3Z
どらまん。 - 「ゲゲゲの鬼太郎」次回予告で最近猫娘が積極的にアプローチしているのに鬼太郎が華麗にスルーしている件
URLリンク(d.hatena.ne.jp)
………、最近の商用作品の男主人公は親しい女の子のアプローチをスルーせねばならないッ!!
とかいう決まりごとでもあるのかねえ…
いや鬼太郎はなんだ、いままで親しい人を失ってきたり妖怪同士のタブーだとかそんなものを考慮して
『敢えて』スルーしているのだろうけれど、キョンは無意識スルーだからねぇ…一番やりづらいんだよ
ハルヒ「ねんがんの キョンをてにいれたわよ!」
そう かんけいないね
ニア殺してでも うばいとる
ゆずってくれ たのむ!!
771:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 17:46:39 iKFibDuk
>>765
なるほど
>>768
なるほど
萌えるw
772:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 18:48:37 Oofk+LY9
今日は人がいないなぁ。
ここで何故佐々木がここまで人気があるかを勝手に考察。
1.男相手に男言葉、女相手に女言葉。
このわかりやすいまでに「相手に合わせてキャラを変える」という彼女の
習慣が、日ごろ「ああなんで俺は素の自分でいられないのか」と悩む
青少年のハートをがっちりときゃっち。
2.知性
古泉も知性だけなら負けはせぬ。長門もハルヒもそれは同じ。
だけれども、前者は男子、後者二人はいわば規格外。
もっともいやみったらしくないのは佐々木であると。
3.むくわれぬ恋
原作では確定されていないとて、このスレでは佐々木の恋心は周知の事実。
そしてハルヒがいる以上、けしてその恋はむくわれぬ。
その切ない境遇は万人の心を捕らえてはなさぬ。
つくづく思うことは、ハルヒや長門に関しては人は「憧れ」を抱き、
佐々木に関しては人は「シンパシー」を抱く。
ある意味もっとも「普通」のキャラ、そんな佐々木に幸あれよ。
チラ裏で失礼しました。
773:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 19:04:09 UMSHRD2y
>>770
な なにをする きさまらー!
774:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 19:07:28 8cxPsIVT
あーでも確かに俺片思い好きだわ
775:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 19:14:36 rZCBlfeL
非常に感動的なSSが続いて、なんかキョンがフラクラに見えなくなってきた。
これはいけません。
てなわけで俗悪「その他」を気にせずスレ消費。てりゃ。
佐々木さん台風は苦手の巻
佐々木「ねえキョン。今度の週末、台風直撃の時に、両親がそろって不在なんだ。
柄にもなく心細くてね。非常に申し訳ないんだが、不測の事態に備えて、
我が家に来てくれないだろうか」
キョン「いいぜ。ウチなら親父がいるし。なにより妹がはしゃぎまわって煩くてかなわないんだ」
佐々木「ああ、助かるよキョン」
橘「佐々木さん、妙にウキウキしてますね。何かいいことありましたか?」
佐々木「ううん。何でもないよ♪」
九曜「--その、本は、……料理本--」
佐々木「いや、週末は台風で家に閉じ込められそうだから、ちょっと手料理でも練習してみようかと思って♪」
橘「さすがなのです佐々木さん」
キョン「おーい佐々木、来たぞー。開けてくれ」
佐々木「や、やあキョン。待ってたよ、すまないね。もう雨も本降りのようだ。
シャワーでも浴びてゆっくりしてくれたまえ。ご足労いただいた分、
ちょっと豪華な料理でも献上してさしあげるよ♪」
キョン「いやー男手は多い方がいいと思ってな。国木田と、あとウチのクラスの谷口もつれてきたんだ」
谷口「HAHAHA始めまして」
国木田「……キョン、君絶対選択を誤ったと思うよ」
佐々木「……………………」
橘「佐々木さーん! なんで閉鎖空間で風速80キロの大嵐が吹き荒れてるんですかー」
776:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 19:20:24 /BfI1XX9
>>772 シンパシーを抱く を パンジーを抱く と誤読したおれに幸あれ
777:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 19:24:15 tqPDEnGi
>>775
最近のSSによるキョンに対しての高評価が一気に元通りになったぜw
778:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 19:26:15 8cxPsIVT
>>775
佐々木「中継の橘さん、どうぞー」
779:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 19:35:25 EeYyoEUf
チビモン
⊂_⊂_ヽ
(( ・∀・)<ハルヒって何?
(( ⊃ ⊃
⊂(__)_)
ウパモン
(\/ ̄\/)
( ( ´ ∀ ` ) ) <たぶんこういう話の漫画だよ↓
(/\_/\)
世界は300X年、世の中はマッチョであふれかえっていた、しかしマッチョはプロテインを求めて殺しあった。
そんなマッチョたちの暴走を阻止するためにオーキド博士に作られた、サイボーグマッチョ009その名も「ハルヒ」
780:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 19:36:36 6mJ/eAnk
いやバカ二人も空気嫁よとw
お前らは早く帰れオーラ浴びながら食う飯は美味くないだろ、いやいやまじで
781:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 19:43:37 l7zG5qHU
>>770
あんま関係なくて悪いんだけど選択肢の隣にあるニアってなんなのかな?
他のスレでも時々見るんだけど、矢印?
782:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 19:50:54 ZZVy6IiU
>>781
FFとかの指の形したカーソルあるだろ、あれだよ
ニア←のほかには
rア←こんなのもあるでよ
783:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 19:52:36 ltEukIMP
>>781
正解かどうかわからんけど、
人差し指で指してる右手に俺は見えるのでそれかなと思っている
784:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 19:53:35 oVCMudly
>>775
キョンは相変わらず佐々木のことがわかってないww
WAWAWAはアホだけど国木田はよく分かっていらっしゃるw
785:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 19:54:58 ltEukIMP
やっぱ指なのか
それはそうと、数日振りにきたら、神SSがたくさん来てるな
(・∀・)カンドウシタ!!
786:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 20:07:21 SUPl+lYv
僕のことが 好きになる スキにな~る~
……ダメかな?
, -‐- 、. ,. ‐-ー- 、
,'. / ト、 ヽ ノ / ヽ
. i. ((从ソ 从〉 ノハハハハハ !
l. (|┳ ┳i!l !|─ ─ ,iリ)!
. ハNiヘ.''' ヮ''ノハ!.∩ ’ 、 - ,ノル´ ……?
⊂)"ー'゙.!ニア∪ 〈}゙|†'|´{'> 俺は別に お前を嫌いじゃないが
/ュュュュゝ i´T `i
〈__八_,〉 〈_,八__〉
787:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 20:13:02 WrIHlSRn
風速80「キロ」ってヤバスギだろ
788:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 20:14:24 oVCMudly
>>786
キョンに意味が伝わってないw
佐々木かわいいよ佐々木
789:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 20:32:22 UMSHRD2y
>>787
マジレスすると、
「風速80キロ=秒速約22メートル」
ギリギリ台風とは呼べないなww
790:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 20:45:14 9MwpKZRa
でも「嫌いじゃない」だけで割りとご満悦な佐々木さん。
791:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 21:00:00 GSrgp85/
235 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/19(木) 19:39:36 ID:XQ9Vmk0o
驚愕だったら二日くらい前から紗羅とかで流れてる
内容飛び飛びだけど
はっきり言ってつまんなかった
236 名前:名無しさん@ピンキー[sage] 投稿日:2007/07/19(木) 19:41:47 ID:XQ9Vmk0o
途中で送信しちゃったぜ
つまんないから新刊として出せないのかなあとか、勘ぐりたくなる
取り敢えず佐々木が思いっきり黒くて橘は悲惨に可愛かった
792:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 21:02:59 ZZVy6IiU
>>790
佐々木「キョンのいいとこ、ひとつめーっけ!」
793:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 21:06:37 iKFibDuk
>>791
橘は可愛いって言ってるとこが釣りくせえw
>>792
なんというアホの子…w
794:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 21:08:14 zVfEWy69
>>775
佐々木「お茶です」(茶葉の缶を置く)
谷口「ああ、こりゃオイシイ さすが高級茶葉だ!」
国木田「やっぱり僕らは帰ったほうがいいんじゃないかな」
795:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 21:15:13 ZZVy6IiU
>>775
佐々木「まぁ、せっかく来たんだしお茶漬けでもどうです?」
国木田「……せっかくだけど(ry」
谷口「いただきます!」
国木田「た、谷口…(駄目だこいつ……早くなんとかしないと)」
796:760
07/07/19 21:28:13 L1Umlfer
ただいまwiki保管庫の更新をしているのものですが、SSがあまりにも多すぎて苦労しております。
ということで、今までの奴で先にこれだけはさっさと保守しておけ!ってなSSがあったらそれを優先的に保管しようと思っております。
というわけで、お気に入りSSのタイトルを教えてくれ。
あと、part10-12のログがあったらうpしてもらえるとうれしい。
797:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 21:32:33 Y0TYe5i8
>>795
佐々木は京都人だったのかw
798:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 21:35:55 fWIjiaJY
定期あげ
799:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 21:51:45 y1snbnGC
>>789
亀マジレスすると「風速」は毎秒単位なのでそれは間違い
純粋に「大気の流れが毎秒80000メートル移動する」と言う事になる
800:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 21:55:40 5HDY2bvu
>>799
きょこたんが吹っ飛んで行く……。
801:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 22:03:01 ZZVy6IiU
>>796
つURLリンク(www.vipper.net)
part12 989までしかないが。。。
802:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 22:08:21 KlkTnxx3
太陽系を軽く脱出するな
803:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 22:10:01 HWLIIt4y
>800
地球脱出速度の約7倍。
宇宙のお星様に…
804:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 22:14:11 5HDY2bvu
見えるかい? あれが「きょこ座」だよ……。
805:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 22:16:37 VoFcRQVo
>>796
せっかくだから他の人のためにもDAT詰め合わせをうp
Part1~13まで
URLリンク(www.uploda.net)
806:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 22:29:31 o6yXNld1
Wikiにdut置くとこ作るのもいいかも?
807:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 22:33:32 ZZVy6IiU
10~12見っけた
つURLリンク(www.vipper.net)
808:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 22:37:17 ZZVy6IiU
リロードしてなかった・・・orz
>>805
乙です
809:760
07/07/19 22:57:44 sOO1hydX
>>801
>>805
>>807
サンクス!
810:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 22:58:00 VqfSYTVb
今は過去ログ作業中?
調子に乗ってまたSS書いてきたのですが
投下しても大丈夫ですか?
811:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 22:59:38 ZZVy6IiU
>>810
おk
812:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 23:00:27 UMSHRD2y
>>799
やはり秒速80キロだったか。これは失礼。
>>804
‥‥あの人はね‥‥星になったのよ。
813:名無しさん@お腹いっぱい。
07/07/19 23:01:21 VqfSYTVb
それでは失礼して
最近は切ない系が多いので
熱いものを書いてみました
↓↓↓
814:1
07/07/19 23:02:23 VqfSYTVb
春の柔らかな日差しも終わり、暖かさが暑さに変わり始めた初夏の週末、俺たちSOS
団は例によって不思議探索へと繰り出していた。以前は二人か三人のチームに分かれてい
たが、春頃に起きたハルヒの気まぐれによりくじ引き制度は廃止され、五人全員で固まっ
て行動している。
ハルヒは一人ずんずん進んでは、路地裏を覗いたりゴミ箱をひっくり返したりそこらへ
んの隙間に棒を突っ込んだりしている。あいも変わらず元気な奴だ。朝比奈さんは時々ハ
ルヒにいじられながらも献身的についていき、愛くるしい笑顔を振りまいている。ああ、
見ているだけで疲れが吹き飛ぶようだ。長門は着かず離れずぼんやりとついてきているが、
時折書店を見つけては意味深な視線を送ってくる。本はこの前買ったでしょ、またにしな
さい。で、あとは、ああ、古泉ね。なんかそこらへんにいるよ。どうでもいいけど。
「さすがにその扱いは傷つくのですが……」
うるさい。さっき一人で逆ナンされやがって。お前は全国のもてない男の敵だ。
「逆ナンの一つや二つ、あなたに比べれば可愛いものだと思いますが」
俺のどこに比較される要素があるってんだ。確かにナイフで刺されるような修羅場は経
験済みだがな、あれはまた別の話だろ。
「ええ、それはまったく別の話です」
「キョン! 古泉くん! 何してんの、次行くわよ!」
声のしたほうを仰ぎ見ると、ハルヒははるか遠くで腕を振り回して叫んでいる。
いつの間にそんな所まで行ったんだよ。やれやれ、古泉曰く落ち着いたとは言ってもそ
の行動力は衰えることを知らないな。
そんなことを思いつつ、急かされるままに早足で足を進めていると、通りの向こうに知
った後姿を発見した。あまり見慣れない私服姿だが、あの髪型には見覚えがある。そもそ
もあいつの後姿を俺が見間違えるはずがない。中学からの友人の、
「佐々木、だよな……?」
だが、それでも俺は一瞬それが佐々木かどうかわからなかった。格好云々の話じゃない。
その挙動が普段の佐々木からかけ離れたものだったからだ。
佐々木はあたりをきょろきょろと見回しながら、ふらふらと歩を進めていた。それは誰
かを探しているというよりも、逆に誰かから逃げているようだ。心なしか顔も青ざめてい
る。それほど長い付き合いではないが、佐々木のあんな様子を俺は見たことが無かった。
「おい、佐々木」
「きゃあ!」
思わず近づきながら声をかけると、佐々木は悲鳴をあげて二三歩飛びすさった。その顔
にはおびえの色が濃く浮かび、体は縮こまり震えている。目にはうっすら涙が溜まってす
らいる。普段からは想像もできない、俺の知らない佐々木がそこにいた。
「しっかりしろ。俺だ」
落ち着かせるため、できるだけ優しい声を出すよう心掛ける。
「キョ、キョン……。キミ、か……」
「お、おい! 佐々木!」
俺のことを認識したとたん、佐々木は力が抜けたようにその場にへたり込んでしまった。
慌ててそばに駆け寄り顔を覗き込むと、遠目で見たよりもはるかにその顔色は悪く、全身
も初夏には不釣合いなほどの汗をかいている。
「いやすまない。キミの顔を見たら安心して、腰が抜けてしまったようだ。くっくっ、み
っともないところを見せてしまったね」
いつもの笑い方にもまるで力が無い。無理をして笑っているのがばればれだ。
「どうしました? 具合でも悪いのですか?」
異常に気が付いたのか、古泉が駆け足で近づいてくる。その後ろにはハルヒ達もいる。
その姿を見て俺は安心感を覚えると同時に、これはただ事では済まないだろうと予感した。
815:2
07/07/19 23:03:31 VqfSYTVb
「ストーカーに狙われてる!?」
場所を移した喫茶店で佐々木の口から語られた真相は、しかし俺の予想を大きく上回っ
ていた。同席しているハルヒ達もあまりのことに絶句している。
「ああ、ここ二週間ほどずっとなんだ。はじめは朝下駄箱に手紙が入れてあるだけだった
のだけど、そのうち家のほうにも手紙や電話がかかってくるようになって……。最近では
付け回されている気配があるんだ」
ミルクティーを飲んで落ち着いたのか、佐々木の顔色はだいぶ良くなっている。それで
もまだ本調子ではないのは、その疲れた表情からうかがい知れる。
「だったら、何で一人歩きなんかしてるんだよ。余計危ないじゃないか」
「……家にいるとね、電話が鳴り止まないんだよ。線を抜こうかとも考えたんだけど、そ
したら今度は直接来るんじゃないかって思えて……」
言いつつ佐々木はうつむいた。こうしてみると、以前より少しやつれたように見える。
何よりいつもとは比べ物にならないその様子から、佐々木がどれだけ疲弊しきっているの
かが解る。
「それに、それにね。外に出たら……もしかしたらキョンに会えるんじゃないかって、そ
う思って……。くっくっ、まったくどうかしているよね? この広い街中で僕とキミが出
会う確立なんて、」
「けどこうして会えたな」
佐々木の言葉に割り込む。
それ以上自虐の言葉を言わせないために。
「もう大丈夫だ」
できるだけ力を込めて、できるだけ優しさを込めて言った。
少しでもこいつの傷を包み込むために。
「あ―」
そして佐々木は泣いた。あの佐々木が。人前で涙どころか、感情を出すことさえよしと
しない佐々木が大粒の涙をこぼしながら、俺にしがみついて泣いた。
ぎりっ。自分の奥歯が軋むのが解る。硬く握り締めた拳は爪が食い込み、痛みの電気信
号に脳へ送ってくる。
だが、そんなものはどうだっていい。俺ならいくら傷ついたってかまわねえよ。だがな、
こいつを傷つけることだけは許さねえ。それだけは絶対に許せねえ。
拳をほどいて、いまだ泣きじゃくる友人の頭を撫でた。小さく震えるそれは、か弱い女
の子の頭だった。
「許せないわね……」
今まで黙っていたハルヒが口を開いた。その声には強い怒りが込められ、その眼光は鋭
く尖っていく。いつもの烈火のような怒りではなく、静かな、しかし凄まじい怒りだ。
「たった今、そのクソストーカーをSOS団の敵と認定したわ。これより私達の持ちうる
全戦力をもってこれを排除する、文句無いわね」
団員一人一人の顔を見ながら、力強く宣言した。
古泉が頷く。その目には常に無い剣呑な光が宿っている。
朝比奈さんが頷く。その拳の震えはいつものおびえとは違うものだ。
長門が頷く。このときばかりはきっと俺じゃなくてもこいつの気持ちが解るだろう。
俺が頷く。ああ、是非も無えよ。佐々木を泣かすような奴はたとえ大統領だろうとぶち
のめしてやる。
816:3
07/07/19 23:04:58 VqfSYTVb
それから俺達は作戦を練るためさらに場所を移すことにした。
やってきたのは我らがSOS団本部こと文芸部室。ここなら佐々木の泣き顔を人前にさ
らすこともないし、不審者が侵入したらすぐにわかる。なにより作戦は本部で練るものな
のだとハルヒは力説していた。
「はいどうぞ」
朝比奈さんが入れた紅茶の香りが部屋を満たす。柔らかな香りに包まれて、興奮してい
た心も平静を取り戻してきた。
気概がそがれる気もするが、今は佐々木を落ち着けることが最優先だ。何より、ちょっ
とやそっとのことでは今の俺達の怒りは収まらない。
「キョン、その……さっきはすまない。情けないところを見せて……」
まだ力はないが、さっきよりはずいぶんとマシな声で佐々木がおずおずと言ってきた。
流石は朝比奈さんの紅茶だ。喫茶店のものとは威力が違う。
「さっき……なんのことだ? 小泉、お前心当たりあるか?」
「いえ、何のことでしょう。特に思い当たりませんね」
古泉と一緒にすっとぼけてみる。
ここら辺の察しのよさは頼りになる。
「……ありがとう」
そんな俺達の様子を見て佐々木は静かに笑った。
これもさっきとは違う、本当の笑顔だ。
「うん。どうやらだいぶ回復してきたみたいね。それじゃ、そろそろ作戦会議を始めよう
かしら。佐々木さんには少し質問したいんだけど、大丈夫?」
ハルヒが気遣わしげに聞いてくる。今まで静かにしていたのも、こいつなりに気を遣っ
てのことなのだろう。
「ええ、大丈夫。始めて」
「それじゃ、まずいきなりなんだけど、佐々木さんはストーカーについて心当たりある?」
「……いいえ、ないわ」
ストーカーという単語に一瞬身を強張らせたが、すぐに持ち直ししっかりと受け答える。
「本当に? 例えば、付き合っていた相手とか、告白されて振った相手とかは?」
佐々木の様子を見て、大丈夫そうと踏んだのだろう。ハルヒが質問を重ねる。
「今まで誰かと付き合ったことはないし……。高校に入って告白されたことは何度かある
けど、全部その場で断ってきたし、最近はそういうのもなかったわ。今の高校には親しい
異性もいないし……」
佐々木はちらちらと俺を伺いながら答えた。やはりまだ不安が残るのだろうか。
安心しろ。ハルヒも古泉も長門も朝比奈さんも信頼できる。俺が保証するよ。
「……。まあ、そんな感じで」
「……。ええ、そんな感じね」
佐々木とハルヒはため息をついて締めくくった。
くそ、交際関係からはホシの特定はできないか。
817:4
07/07/19 23:06:24 VqfSYTVb
「うーん。以前振った相手が付きまとうにしては、タイムラグがあるわね」
「そうとも限りませんよ。病気の潜伏期間のように、水面下に溜め込んだコンプレックス
が今になって現れたのかもしれません」
確かに古泉の言うことにも一理あるが、それだと相手を特定することなんて不可能じゃ
ないか。それこそ高校に限らず、今までに出会った男全部が対象になってしまう。
「どころか、もしかしたら佐々木さんが出会っていると認識していない場合もあります。
道端ですれ違っただけで一目惚れし、妄想に取り付かれてストーキングに及ぶというケー
スもありますから」
「つまり、ホシの素性を挙げて直接叩くってのは無理ってことか。となると……」
そういいながらも次の言葉が続かず、沈黙する。
他の皆も同様で、いい作戦が思い浮かばないようだ。
いや、逆か。いい作戦はあるんだ。単純で最も効果的な、誰もがまず思いつく作戦が。
けれどそれは、
「僕が囮になろう」
「!」
佐々木はさも名案だろう、というようにこちらを見返しながら言った。
「僕が囮になる。これが今打てる手の中で最も簡単で効率的だと思うよ」
「いや、けどそれは……」
そんなことさせるわけにはいかない。
お前さっきまであんなに震えてたじゃないか。
「気遣いありがとう。けど僕の問題を解決するのに僕だけ何もしないというわけにもいか
ないだろう。確かに、確かにとても怖いけれど、でも」
佐々木は俺の目を見た。その目の中には、恐怖や不安の色が浮かんでいるが、その奥に
不思議な光が見える。俺を引き込む、あの佐々木の目の光だ。
「守ってくれるんだろう?」
俺は何と答えていいか解らず、思わずハルヒのほうを向きそうになった。
けれど寸でのところで踏みとどまる。
佐々木は俺に聞いているんだ。
だったら、俺が答えなければならない。
そして俺が答えるなら、その答えは決まっている。
「もちろんだ」
その後の会議によって、流石に夜間の囮作戦は危険すぎるということになり、作戦決行
日は翌日の日曜に回され、佐々木は万が一に備え、今晩は長門の家に泊まることになった。
ハルヒは二人だけでは心配だから自分も泊まると言い張り、強引に長門の部屋に上がり
こんでいる。心配しなくても、長門のそばにいれば地球上のどこよりも安全だよ。
「本当にすまない。何から何まで世話になって」
「気にするな。困ったときはお互い様だろ。それに中学時代に受けた俺の恩はまだまだこ
んなもんじゃ返し足りねえよ」
それだけ言うと申し訳なさそうにしていた佐々木の顔も幾分か晴れたようだ。
「それじゃあな。今日は疲れたろうから早く寝ろよ。ハルヒがうるさいかもしれんが」
「大丈夫さ。今の家に比べたらこっちのほうが何倍も安心できる。久々に落ち着いて眠れ
そうだよ。それに―」
佐々木は俺のほうを向くと、いつもとは違う女の子のような笑顔で言った。
「今日はいい夢が見れそうだ」