【涼宮ハルヒ】佐々木とくっくっ part8【変な女】 at ANICHARA2
【涼宮ハルヒ】佐々木とくっくっ part8【変な女】 - 暇つぶし2ch35:Von der Jugend (2)
07/05/15 21:40:55 s/u6LPHY
「少し変わった曲でね。交響曲だが男女の声楽を伴う。歌詞はドイツ語だが、元の
テキストは李白らの中国の詩なんだ」

それのどこが変わり者なのか、クラシック音楽の知識の乏しい俺にはもちろん全く
もってわからないのだが、この変わり者の佐々木が言うほどだからよほどの変わり
者に相違あるまい。

「国語は不得意で、漢文はさらに不得手だ。そもそも日本語ではないからな。それ
に、ドイツ語なんかで歌われても、英語すら覚束ない俺にはわからんぜ?」
「心配しなさんなって。プログラムノートに解説と対訳があるだろう」

入り口でやたら大量のチラシの束を渡されて、何だこれはと思っていたところ、一
番上の小冊子が本日のお品書きだった。そうこうするうちに場内に鐘の音がして、
客席が静まりかえると、左右の扉からオーケストラの登場。音合わせが終わると、
やがて指揮者が現れて、初めて客席から拍手が起こる。このあたりの作法は、小学
校の授業でオーケストラ教室というのを見に行ったときに仕込まれたので何となく
わかる。要は周囲に合わせるという事だ、と俺は理解している。

一瞬、これまでに聴いたことのないような静寂が訪れたあと、突然の角笛のような
雄叫びで演奏が始まった。度肝を抜く序盤が過ぎると、男の歌手が朗々と歌い始め
る。ちょっと顔が怖いのだが、その顔は俺を笑わせようとしてるのか、あんた。さ
らに解説によれば、これは飲んだくれの歌なのである。まあまあ割と、面白いんじ
ゃないか? その次の曲では女の歌手が歌い、やや物憂げである。その後は男と女
の歌手が交互に、青春を謳歌したり、少女たちが池のまわりで踊ったり、やはり飲
んだくれたり、というような歌を歌う。右隣の佐々木を見ると、何やら眼を輝かせ
ており非常に楽しそうだ。一体何がそこまで楽しいのか俺には量りかねるものがあ
るが、この横顔を見られるのなら、それはそれでいいではないかという気がしてく
る。いつの間にか、佐々木の左手は俺の右手につながれていた。

最後の楽章で様相が一変した。だし抜けにこの世の終わりみたいな寂しげなメロデ
ィーが鳴ったあと、アルトが歌いだしたのは今生のお別れの歌である。しかもこの
曲だけやけに長い。十分程過ぎたあたりからか、さすがに耐えられなくなって、俺
は睡魔に負けを認めた。次の瞬間、満場の拍手で俺は目を覚ました。横の佐々木は
心底満足そうにステージに拍手を送っている。

「まあ概ね予想はしていたけど、いびきをかかれないで良かったよ」

終演後に立ち寄ったレストランで、やはり佐々木は喉の奥で笑った。だが気分を害
したわけではなさそうなので、俺としては安堵する。

「なあ、何であの曲なんだ?」
「そうだね…何というか、僕には人の一生の縮図のように思えるんだよね。飲んだ
くれたり、物憂げだったり、青春を謳歌したり、池のまわりで踊ったり、やはり飲
んだくれたり、という。まあイメージは古典的だけど、ともかくも世界は美しい、
という感じかな。でも最後には、友達との別れが来てしまう。ちょうど、キミが寝
てしまったところだけどね」

―友よ、君が居れば、この美しい夕焼けを一緒に味わいたいと望むのだが
―君はどこにいるのか? 僕はここで、ひとり待つ

―友は憂いに満ちた声で答える。この世に幸せはなかったと

「ともあれ大地に再び春は来て、世界は産み直される。新しく産まれた別の世界に
も、飲んだくれたり池のまわりで踊ったりがあるだろ、っていうね」

ふーん。深遠だね。まあ俺としては、世界がどうとかよりも、そうやって楽しげに
語るお前の顔を眺めているだけで満足なんだけど。


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