【涼宮ハルヒ】佐々木とくっくっ Part6【鎖骨】at ANICHARA2
【涼宮ハルヒ】佐々木とくっくっ Part6【鎖骨】 - 暇つぶし2ch362:夏祭り 5/5
07/05/06 21:12:37 FL9efRct
「……もう、いないな。この人ゴミだ、見つけるのも難しいだろう。お礼を言いそびれてしまっ
たな。何かの機会にでも、また会えればいいんだけど」
 いや、まぁ、そうだな。何となくいつかまた出会うような、そんな気がしていた。これはあ
くまでも偶然、あるべきではなかった出会いだ。なぜだか、そう感じた。
「もう、祭りという気分でもないな。帰ろうか、キョン」
 ああ、そうだな。送っていくよ。
「そんな、悪いよ」
 いいだろ、さっきは守りきれなかったからな。夜道は危険だ。
「……うん、ありがとう」


 ちりんちりんとベルを鳴らしながら、佐々木の家までの家路を急ぐ。
「しかし、散々なオチだったなぁ」
 荷台に腰掛けている佐々木に声を掛ける。
「うむ、ナンパされる経験はあれが初めてではないが、祭りとなるとまた違うものなのだな」
 やっぱ、ナンパとかされるのか。
「い、いや、それで付き合ったことなぞないぞ。ほら私は喋りがこんなだからな。大概の場合
はすぐに向こうから離れてくれるんだ。まれに面白がる者もいるが、そう言った場合は丁重に、
きっちりと断わることにしている。今日のように絡まれたのは初めてだ」
 いや~、まさか、ちょっと目を離した途端に、こんなことになってようとはな。初お祭りデート
のイベントにしちゃドラマチックに過ぎるっての。
「くつくつ、まったくだ。僕はもっとゆったりとした方がよい。ああいう忙しくて煩いのはね、好かない」
 夏の夜の匂いがする道をふたり乗りで、走った。
「ああ、キョン、キミ、ちょっと止めてくれないか」
 どうした? なんかあったか。請われるままに自転車を止めた。そこは、俺と佐々木の家の
途中、言われるままに走っていた土手のサイクリングロード。
「お好み焼きを食べてしまおう」
 ああ、そう言えばカゴに入れっぱなしだった。もう、冷めてるからな。たぶん、不味いぞ。
「いざ、食べる前にそう言うことを言うかな、キミは」
 根が正直なもんで、な。それに、お前の口から、それを指摘されると、俺が傷つく。
あの修羅場の中で守りきった最後の食い物だからな。
「ふふっ、そうだったね」
 お好み焼きのパックを開けて、ふたりで一膳の箸を使って、もそもそと粉っぽいお好み焼き
を食べた。
「いやいや、冷めてしまっているのは残念だが、それほど悪くはないんじゃないのかな?」
 そうか、お前がこういうジャンクな食べ物が好きだったとは意外だったな。
「ふふ、本当に、悪くないな。こういう食べ物も…あ」
 その時だ。ドーン、と地響きにも似た音と共に、花火が打ち上げられた。遠くの夜空に大輪
の花が咲いた。
「綺麗だな」
 どちらからと言うこともなく、ふたりの感想は同時に口から漏れた。
 どちらかともなく、顔を見合わせて、笑った。なんとなく、そう、なんとなくいい気分だった。
さっきまで抱えていたささくれ立った気持ちが、風の中でほどけていく、そんな感じだ。
「僕は、そのこう言う時、こういう場所で何を言ったらいいのか、よくわからない。だけど、
だから、気持ちに正直に言うよ。キョン、キミとこういう美しさを、風景を共有できて、
僕は……嬉しい。さっきはありがとう。僕を守ってくれて」
 ちょっと強く吹いた風の中、溶けるように、佐々木がそう囁いた。なんだろう、急に恥ずか
しくなってきた。そう囁いた佐々木が静かで、そしてそう、とても儚げで、消えてしまいそう
に見えたからなのだろうか。だから、普段より真面目に、言った。
「ああ、俺も嬉しいよ。この風景、この感情、このお好み焼きの味、俺は忘れない。たぶん、
いや、決して」


 もうすぐ、夏休みだ。
 今年の夏は、中学生活、最後の夏はどんな風に過ぎていくのだろうか。
 そんなことを考えながら。


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