07/06/06 11:33:39 bp7U0ljY
「だれかー、どなたかおめぐみくださーい」
都会の人間は冷たいって言うのは本当でした。
わたしは、機関の財政が危機的状況にあるということで
今こうやって雨の中カッパを着て一人お金を集めているところなのです。
でも、世間の風当たりは冷たく
子供達からはからかわれ、おばちゃんたちからは冷ややかな目でみられ
お金なんか全然集まりません。
正直言ってくじけそうでした。
そろそろ時間も夕方を指し示すころになって
身体も冷えてきました。
今日はもう終わろう
そう思ったときでした。
向こうから品のいい男の人と女の人が歩いてくるのが見えたのです。
あ、これはチャンス!
わたしはその二人が近づくのを待ちました。
今思えばこれが間違いだったの。
女の人と男の人、それは我が組織の対抗勢力の一味
森さんと新川さんでした。
見つかっちゃいけない!
そう思ったときにはもう遅かったのです。
森さんと目があってしまいました…。
「おや、雨の中大変ですな」
新川さんがわたしにニコニコと軽く会釈をしました。
う~、子供だと思ってバカにしているのです!
森さんは新川さんの半歩後ろに立って微笑んでいました。
「では我々はこれで」
また紳士的にお礼を述べると歩き出しました。
すれ違い様に森さんが
「フフ、かわいそ♪」
と皮肉たっぷりに言うと新川さんの後にとことこと付いて行きました。
ぶわっ―わたしは腹が立ったのと自分がみじめなのと両方で涙が溢れそうでしたが、必死でこらえました。
でも堪えればこらえるほど涙は溢れてきます。
うぐっ…えぐぅ…なんでわたしだけ……グスッ。
いつだってそう、佐々木さんも九曜さんも…グスッ、全然わたしのヒック、言うこと聞いてくれないし…ズズッ
悲しみの要因は次から次へと溢れるように出てきました。
ソデで涙をぬぐうと目の前に誰かが立っているのが分かりました。
新川さん?うそ、やだ、こんなとこ見られちゃったなんて…
「森が貴女にご無礼をしたようで、これはほんの気持ちでございます。」
なんだろう、小切手?そこには結構な金額が書いてありました。
それとは別に、新川さんは財布から千円札を取り出すと
これは私からのお小遣いですといってわたしに渡してくれました。
新川さんにはわたしくらいのお孫さんがいるらしいのです。
コロンのいい香りがしました。
今日はちょっとだけいい日でした。
by >>986