07/05/23 00:25:27 S6l7AeK6
少し先を歩く橘の後姿を見ていて、その足取りが若干ふら付いているように見えた。
「おい、橘」
「……」
「聞いてんのか?」
「……あ、はい」
「お前もしかして酔ってないだろうな?」
「別に酔ったりなんかしてませんよ? お酒は呑みません……」
そう言って後ろを振り向いた顔が疲れているように見えたのは気のせいではないと一瞬で判った。
「どうかしましたか? 何か顔に付いてたりします?」
「お前……体調悪いのか?」
「どうってことないですよ。大丈夫……です」
大丈夫と言ってはいるが苦しそうにしか見えん。目つきも虚ろに見える。
「お前の家はどこだ。何なら俺が家まで付き添ってやるが」
「結構遠いんですよ……ここからだと距離ありますし」
じゃあどうするしたものか……と思った直後、今現在立っている場所を見回してみて気付いた。
何だかんだで黙々と歩いているうちに、俺の家に比較的近い所まで来ている事に。
「橘、大丈夫か?」
「やっぱり大丈夫……じゃないかもです」
このままここに野放しにするほど俺はまだ落ちぶれちゃいない。
「背負ってやるから、乗れるな?」
黙って頷いた橘は俺の肩に手を掛けた。疲れ気味のこの体には厳しいがそうも言っていられん。
「すいません……お手間掛けさせちゃって」
「昔はこうやって妹の世話を見てやったもんだ」
妹に比べれば軽々と、というわけにも行かなかったが、夜風で冷え切った体には橘の熱った体温がカイロみたいで温かい。
「それと……」
「今は気にしてないから黙ってろ」
然程遠い距離ではなかったが、病人を背負っているため走るわけにもいかん。橘を俺の家で休ませるべく足を進めた。
背負ってから数十分程で家に到着したのだが、無論隠れて連れ込むわけにもいかず、眠気混じりの頭で考えた情けない言い訳で辛うじて
飛び起きてきた両親を納得させたまでは良かった。
橘は居間でしばらく寝かせ休ませた後、明け方にお袋が車で自宅まで送ることになったのだが……
その時に玄関先であれやこれやと騒ぎ立てちまったせいで妹が起きてくるというトラブルに見舞われた。
「その人だーれー? ハルにゃんのお友達ー? キョンくんのカノジョー?」
若干疲れた表情をした橘が俺の方を見つつ、この場合はどうしたらいいんでしょうか?と言いたげな表情を向けた。
「あははは……」
頼むから俺にフォローしてくれ光線を出すんじゃない。
「キョンくん教えてー」
「あ、ああ……俺の……遠い親戚だ」
無論、妹を通してハルヒにこの事が知られてしまい、俺が散々な目に逢ったのは言うまでもない。
了