07/07/05 12:40:45 vujHYq8T
少し居眠りをしてしまったようだ。
すっかり外は暗くなってしまった。
銀様を鞄に寝かせようと立ち上がり、抱えた時だった。
血を連想させるような、それでいて穏やかな、久しぶりに見る色。
銀様の瞳。
目をつぶって座っていた銀様が俺の目の前で、口元にかすかな微笑を浮かべてこちらを観ている。
「貴方の寝顔を見るのは初めてかもね」
銀様が俺の呆気にとられている顔をみて話す。
「貴方が眠っている間にお父様が直してくれたみたいなの、
まったく…何度も私を直してくれるなら私がアリスでいいんじゃないかしら」
また永い時を過ごすことになったわぁ。と続けた。
「銀様、今度は一緒にずっと居てくれる?」
「無理ね」
銀様がゆっくりと椅子から降りて、俺の膝の上に座ってきた。
「絶対にお別れはあるのよ。そうねぇ…貴方が壊れるまで居てあげないこともないわぁ」
イタズラっぽい笑みを浮かべて俺の顔を見上げる銀様をそっと抱きしめた。
「ちょっ、ちょっとぉ…なにするのよぉ」
今思うとこうやって銀様に触れるのは初めてかもしれない。
戸惑った表情を浮かべる銀様も嫌がってはいない様なので、もうちょっとだけ抱きしめていよう。
俺が壊れるのはいつになるのか、想像できないほど永いかもしれない、短いかもしれない。
ただ、今はもうすこしだけ、もうすこしだけこうしていよう。
「ねぇ、見て」
銀様が窓の外を俺に見るように促す。
そこにはいつか見た星空よりも、もっと透明にはっきりと見えるほど星が輝いていた。
でも何故か俺には滲んで見えた。