【涼宮ハルヒ】佐々木とくっくっくっ part2at ANICHARA2
【涼宮ハルヒ】佐々木とくっくっくっ part2 - 暇つぶし2ch906:名無しさん@お腹いっぱい。
07/04/16 03:07:52 OBsTqGTb
>>892
いいね、ずいぶんと昔の春の日を思い出したよ。

>>895
そうだね、佐々木とキョンの話は、良くも悪くも
終わってしまった昔の話なんだ。


 うららかな春の午後、俺はちょっとした買い物帰りに、なんとはなしに土手を散歩していた。
一年に二度目の満開を終えたソメイヨシノは、緑の葉を目立たせ始めており、時折おくれて
落ちる花びらが桜の季節がもう終わろうとしていることを主張していた。
「やぁ、キョン。散歩かい」
 呼ぶ声に振り向くと、佐々木が自転車から降りた所だった。
「奇遇だね。すこし、同行してもいいかな? 今日は、何となく散歩を
するにはとてもよい気候だからね」
 そう言う佐々木の自転車のカゴには大きめのトートバックが詰められていた、
予備校の帰りか?
「ご明察だ。なかなかの推理力だね、キョン」
 そういって、佐々木は咽奥で名状しがたい音を立てた。
「そろそろ、桜も見納めだろうと思ってね、足を伸ばしてみたんだ。キミに出会
えたのは僥倖だった。桜を一人で見るのもオツな物だが、気の合う友人と散歩
するのはそれ以上によいものだ。それが一年以上ぶりに再会した親友である
場合は特に」
 まぁ、確かにな。そぞろ歩きも悪くはないが、お前の講釈をBGMにするのも
悪くはない。
「キミの同意が得られて、僕も嬉しいよ」
 桜並木を見上げながら、ふたりで歩く。午後の陽光が川面を輝かせていた。
佐々木との共通の話題はそう多くはない。時勢の話、気候の話、経済の話を
過ぎて、話題は中学三年の時の思い出話に移っていた。
 佐々木との最大の接点は学習塾であったから、話は自然と、受験期の春の
話、そして卒業式前後の話になっていた。
「僕が思うに……」
 沈黙を破り、佐々木は前置きから話し始めた。最初jは回りくどい話し方をする
ヤツだなと思っていたが、佐々木と付き合ううちに、これが癖なのだということに
気がついた。佐々木は引用をよく使うヤツだったから、自分の意見を言う時は、
こんな風にこれが自分の意見であるということを示してから入るのだ。
「……あの頃の僕たちは、恋なんか必要としていなかった。ああ、今は
どうなのか、なんて野暮なツッコミはなしにしてくれたまえ」
 まぁコイツが今でも、精神病の一種なんて言っているであろうことは想像に難くない。
瞬間的に同じことをいうアヒル口を思い出したが、即座に意識から消し去る。
「いま、振り返って見たならば、中学三年の春の日、僕は病を患っていたのだな」
 風邪でも引いてたのか?
「ひどいなキョン」
 佐々木はそう言って、小鳩のようにのどの奥で、くくくと音を立てた。
「キミがそんなヤツだから、そしてそれがとても自然だったから、僕は
あれが“恋”だなんて、気がつかなかったのだ」
 ……もしかして俺は、今かなり貴重な体験をしているのか。
「そうだね、キョン。貴重な体験であってくれると嬉しい」
 そう言って、佐々木は視線を合わせてきた。春の川面のような輝く
瞳は、中学生でも高校生でもなかったあの春の日を思い出させた。
「振り返って思い出すと、とても輝かしい日々だった。そんな風に感じられる。
そんな関係というのは、とても、素敵なことなのだろうね」
 ああ、受験生に戻りたいとはまったく持って思わないが、お前と歩いた夜の道
は悪くはなかった。本当に、悪くなかった。
「ああ、いい返事だキョン。キミのそう言う所は、とてもいい。そうとても」
 そう言って、佐々木は長い睫毛を伏せた。散る桜が佐々木の顔に陰を落とす。
ああ、なるほど。そうなのか。
「……ん、すまないキョン、何か言ったかい」
 いいや。なに、ファウスト博士の気持ちがわかったのさ。


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