07/05/03 12:20:24 4vu+q57A
よっす、かがみん。
不意に名前を呼ばれて、ぎょっとして振り返る。
瀟洒な店内の様子に全く似合っていない、ぶかぶかのトレーナー姿の見知った顔。
あによ、街に出てたんじゃなかったの？
口から出る言葉は、いつもの憎まれ口だった。
ゴールデンウィークは何と言っても混むからね、大多数が出張ってくる午後は避けるものなんだよ。あ、ウィンナーコーヒーで。あとパンケーキセットも。
慣れた様子で注文をすると、こなたはさっさと私の向かい側に腰を下ろして、両手に提げた仰々しい紙袋を隣りに積んだ。
かがみんこそどうしたの、何かえらくおめかししちゃって。あ、ひょっとして、つかさに続いてデート相手見つかったとか？かがみんの彼氏か、うーむ、想像つかないけど、どんなの？やっぱり下僕系？
アンタが普段私をどんな風な目で見てるのかよーーくわかるわね、それ。普通に休日用のおめかししただけよ。
ふーーん、なるほどぉ。
合点がいったのか、ふんふん頷いてるけど、何だろう、すごく誤解されてるような気がする。
あ、それ可愛いね、何て言うんだっけ。
ふと、目を机の脇に落とし、こなたが言う。
アンクレットって言うのよ。アンタも女なんだから、ファッション雑誌ぐらい読んでなさいよ。
んー、かがみんにはツインテールにうさ耳メイドファッションが一番似合うと思ってたからねー。んでも、そういう足輪ファッションって、いいね、先生、ツボですよ、ツボ。
確かに可愛らしいアクセサリーだけど、アンタが言うと何か違う意味に思えてヤだなぁ。
だってさ、何か囚われのお姫様と、束縛の足輪って感じで、背徳的に萌えてこない？
アンタねぇ……
違う方向で喜んでいる友達に、思わず苦笑いが浮かぶ。だけど。
囚われ、か。
案外、間違ってもいないかも。
そっか。
ん、どしたのかがみん？
何でもないわよ。それよか、今日はこれからヒマ？ちょっと付き合ってよ。
んー、今日の午後は戦利品の鑑賞会をうぁ。
紙袋を見やってなにやら言い出すこなたの腕をひっつかんで、コーヒーとパンケーキを持ってきたお皿からレシートだけを引き抜いて会計に向かう。
あぅぅ、私のパンケーキぃ。
今度つかさにもっと美味しいの焼いてもらうから、我慢しなさい。
名残惜しそうに店の方を振り返るこなたの手をぐいぐい引っ張って、雨の上がったアーケードの外へ繰り出す。水溜りに写る、大小さまざまな空を飛び越して、駅へと急ぐ。
ゴールデンウィークは、まだ始まったばかりだ。
end