あの作品のキャラがルイズに召喚されました part85at ANICHARA
あの作品のキャラがルイズに召喚されました part85 - 暇つぶし2ch2:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 06:09:41 lCov8mOn
>>1

3:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 06:38:58 /XIKyVgh
王大人「>>1乙確認」

4:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 06:56:07 /3OA9ZgN
>1 乙

5:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 06:58:40 doj/orJy
>>1

6:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 07:27:30 RTGn9W+b
>>1乙式高次物質化能力

コンプレックスのせいで
アリカ(ガルデローベ入学済・コーラルGEM)から蒼天の青玉を、
ラキシスから旦那様とお揃いのドラゴンドロップを、
ナルトから綱手に貰ったお守りを、
ベルリッツ家のお嬢様から金剛石の指輪と真珠の指輪を、

奪って自分のものにしようとするDQNなルイズが見たいwww全部高価な宝石だし、やりかねん。

7:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 08:06:51 MMsGfXPz
>>1
>>6
それはもはや泥棒じゃあないか

8:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 08:19:22 RTGn9W+b
>>7
「使い魔のものはご主人様のものよ!平民のくせにこんな高価な宝石を持っていてもいいと思ってるの?」

そして、アリカはマテリアライズ、ラキシスは女神の力を、ナルトは螺旋丸、お嬢様はエンペルトを繰り出す。

9:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 08:42:29 bLjbh/XT
めでたしめでたし。さ、次いってみよー!

10:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 09:39:53 1fwVLLPf
>>7
宝石好きなヴェルダンデがごっくん!
ジャイアントモールの尻穴に手を突っ込み「早く出しなさいよ~」と
悲鳴を上げるルイズは、その姿を見た同級生達から妙な誤解をされ・・・

11:罪深い使い魔
07/11/21 09:51:16 x8Ki0JR6
>>1

そしてこんな時間ですが、外出する前に投下したいと思います
予約がなければ10:00から投下開始します

12:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 09:54:07 d2M9oWuq
>>10
ひぎぃ!これはひどいド変態趣味

ド変態支援

13:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 09:58:21 3vutVPv7
なんて言うか変態の上にドがついて、さらにTHEもつきそうな変態っぷりだなw

14:罪深い使い魔
07/11/21 10:01:07 x8Ki0JR6
それでは投下開始します



何よ、この使い魔。
最近はいい子にしてたから、ご褒美に剣買ってあげたのに。
私の偉大さを見せつけてやったのに。
剣持った途端にこの有様?
平民のくせにゴーレムに立ち向かう?
バカじゃないの?
バカよバカ。
バカバカバカ。
本当にバカ。


剣なんか、渡すんじゃなかった。



翌日、トリステイン魔法学院は上を下への大騒ぎとなっていた。
賊の侵入。鉄壁だったはずの宝物庫の破壊。厳重に守られていた秘宝の強奪。
さらにそれらをやってのけたのは、巷を賑わすメイジの盗賊『土くれ』のフーケ。
まさに学院創設以来、屈指の大事件であり、同時に、過去に例を見ない大失態でもあった。

「土くれのフーケ! 貴族たちの財宝を荒らし回っているという盗賊か!」
魔法学院にまで手を出しおって! 随分とナメられたもんじゃないか!」
「衛兵は一体何をしていたんだね?」

今は学院の全教師が学院長室に集まり、緊急の会議を行っている。
事件を未然に防げなかった原因を究明し、責任の所在を明らかにしようと言うのである。
ただしこの場に部屋の主、オールド・オスマンはいない。到着が遅れている。

「衛兵など当てにならん! 所詮は平民ではないか! それより当直の貴族は誰だったんだね!」

集まった教師の一人、シュヴルーズ女史の体が震える。
昨晩―フーケ襲撃時の当直は彼女だった。
しかし彼女は昨晩当直の任に就いていない。率直に言えばサボっていた。
事件が起こっていた時もぐっすりと眠り、すべてを知ったのは翌朝になってからだった。

「ミセス・シュヴルーズ! 当直は貴方なのではありませんか!」
「も、申し訳ありません……」
「泣いたって、お宝は戻ってはこないのですぞ! それとも貴方、『風車の鎧』を弁償できるのですかな!」
「わたくし、家を建てたばかりで……」

オスマンを欠いた中で、教師達の意見は固まろうとしていた。
泣き崩れるシュヴルーズを人身御供にして、この事件を収めようというものだ。
すべての責任がシュヴルーズにあるというわけではないが、今のところもっとも罪が重く、そして弱いのは彼女なのだ。

「これこれ。女性を苛めるものではない」

しかし、ここでシュヴルーズにとっての幸運が舞い込む。遅れてきたオスマンである。
教師達はシュヴルーズを庇うオスマンに噛みついたが、オスマンはこれをにべもなく散らした。
そして全員に問う。

「この中でまともに当直をしたことのある教師は何人おられるのかな?」

15:罪深い使い魔
07/11/21 10:03:26 x8Ki0JR6
これには誰も言葉を発しない。それが現実だった。
なんのことはない、先の会議は結局、皆が責任逃れをしたくてやっていたことなのだ。
原因の究明など本当はどうでもいい。ただ、自分に累が及ばないように事件を収拾したいだけだった。
大人らしい保身的な対応だが、この場においてそれは憚るべき非建設的な議論で、かつ無駄な争いである。

オスマンはこの事件の責任が全員―オスマンも含めて―にあると断言し、
その上で事件を解決するべきだと結論づける。
常の飄々とした態度からは想像もつかない采配ぶりに、内心で舌を巻いている者も多かった。

「……で、犯行の現場を見ていたのは誰だね?」

オスマンの問いに、教師コルベールが一歩進み出て説明する。

「使い魔を通して見ていた生徒が数名。ですが夜目の利く使い魔ではなかったらしく、
詳しい情報は得られませんでした。そのため、フーケを直接目撃した者は……」

コルベールは後ろを見る。

「彼女達だけです」

その視線の先にいるのは学院の生徒達。
先の教師達のやり取りを、白けた目で見つめていたキュルケ・フォン・ツェルプストーに、相変わらず無表情のタバサ。
そして―目を充血させ、目元には泣きはらした痕を残しているルイズ・ド・ラ・ヴァリエールの三人だった。



……ここはどこだ?

達哉は見知らぬ街で一人、呆然と立ちつくしていた。
なぜ自分がこんな場所にいるのか。それを思い出そうとしても思考に靄がかかってしまい、判然としない。
達哉はどうしていいかわからず、とりあえず適当に街を歩き回った。

寂しい街だった。あちらこちらに破壊の跡が見られ、人はおろか犬猫や小鳥すらいない。
通りに並ぶ店は半分以上がシャッターを下ろし、残りは荒らされたのか、店内の商品が散乱している。
電車は線路の途中で停車し、車道には乗り捨てられた車が列をなしている。
街の惨状は、昔映画で見たゴーストタウンそのものだった。
そんな街を、達哉は黙々と歩き続ける。

誰かいないのか。
ここはどこなんだ。
なぜ俺はこんな場所に……

―戯言はよせ。今さら忘れたなどとは言わせんぞ。

突如、声が聞こえた。それは遠くから反響しているようでもあり、耳元で囁かれているようでもある。
どこかで聞いた声。しかし、どこで聞いたのかが思い出せない。

16:罪深い使い魔
07/11/21 10:05:58 x8Ki0JR6
「……誰だ?」
―私がわからんか? まあいい。それよりもお前、そこで何をしている?

別に何も。ただ歩いていただけだ。そう答えようとしたその時、視界が暗転する。
そして気がついてみると、達哉はトリステイン魔法学院の中庭にいた。そこはルイズに召喚された場所。
驚く達哉に、声は呆れたような口調で答えた。

―そこがお前の帰るべき場所か?

言われて、達哉ははっとする。頭の中の靄が消えて、思考がクリアになる。
……そうだった。俺には帰る場所がある。なにがなんでも、帰らなければいけないんだ。
ついさっきまで歩いていた場所―『向こう側』に。

―わかっているならば、なぜそんな場所で油を売っている。帰りたくはないのか?
「……そんなことは、ない」

一瞬の迷いを、声は聞き逃さなかった。
声は嘲笑した。

―私に隠し事は無意味だ。お前は『向こう側』に帰りたくない。帰って、独りになるのが怖いのだ。

達哉は息を呑んだ。

―帰る方法を探すフリをして、その世界に留まる理由を探していたな?
「違う……」
―主人の言うことに従うのも、寝食の見返りではない。誰かに自分を認めて欲しかったのだろう?
「違う」
―人前で『力』を隠してきたのも、面倒を避けるためではない。『平民』として、その世界に受け入れて欲しかったからだ。
「違う!」

声を必死で否定する。しかし、その一方で達哉は疑念を拭えない。
本当に違うのか? 俺は心のどこかで、この世界に甘えているんじゃないのか?
『向こう側』の景色を忘れていたのが、その何よりの証拠ではないのか!?
達哉の葛藤を他所に、声は怒りの感情を滲ませる。

―あくまで自分の非を認めないつもりか、卑しい人間め。私に隠し事は無意味だと言ったはずだぞ!

またしても視界が切り替わる。
しかし、今度はどこの風景も出てこない。一面の闇が、達哉を飲み込んだ。

―罪を認めろ! 罰を受けろ! 自分が『罪深い存在』だということを忘れるな!!
「うるさい……」
―その世界に留まり続ける限り、お前は生きているだけで罪なのだ!
「やめろ……」
―恥を知れ愚か者!!
「……ッ!」

17:罪深い使い魔
07/11/21 10:08:07 x8Ki0JR6
「黙れッ!!」
「きゃあ!?」

耐えきれなくなった達哉が叫んだのと同時に、女性の悲鳴が上がった。
……なんだ今のは?
困惑しながらも達哉は、その声に妙な既視感を感じる。
なんだか、前にもこんなことがあったような……

「タツヤさん!」
「……シエスタ?」

先ほどの悲鳴の正体は彼女だったらしい。シエスタがこちらを見ていた。
なぜか目元に涙が滲ませ、ほっとした表情で。

「よかった……目が覚めたんですね」
「……ああ」

わけがわからず、曖昧に返事をする達哉。
しかし一部の疑問はすぐに氷解した。見回すとそこは学院の医務室。
達哉は、医務室のベッドで横になっていたのだ。

俺は寝ていたのか。
すると、今のは夢―夢?
俺はどんな夢を見ていた?

寝ていた体を起こし、額に手を当てる。記憶を辿ってみても、すでに断片すら思い出せない。
いい夢ではなかった気がするが、覚えていないというのも、それはそれで後味が悪い。

「大丈夫ですか?」

顔を曇らせる達哉に、シエスタは気遣うように声をかける。

「あんなことがあったばかりですもの。気を落ち着けるために、もう少し休んでいた方がいいですよ」
「あんなこと……?」
「ゴーレムに襲われるなんて、本当に災難だとしか……。
怪我はメイジの方々が治療をしてくださいましたけど、恐怖心はそう簡単に薄れるものではありませんから」

ゴーレム……!
シエスタの言葉を皮切りに、達哉の記憶が急速に蘇っていく。

「シエスタ!」
「はい?」
「あれから何があったのか、教えてくれ!」

18:罪深い使い魔
07/11/21 10:10:12 x8Ki0JR6
達哉はシエスタから、ゴーレムが現れてから今に至るまでの、大まかな経緯を聞いた。

ゴーレムが学院を襲ったのは昨夜。今は翌日の昼前で、事件からすでに半日近くが経過している。
達哉を倒したゴーレム使いのメイジは『土くれ』のフーケ。最近城下町で話題になっている盗賊だった。
フーケは学院の宝を盗んだ後学院の外に出、現在まで行方をくらましている。

「……ッ!」

それらの情報を耳に入れ、達哉は歯噛みした。
半日もあればいくらでも逃げられる。もうこの近くにいない可能性は高い。
フーケには、聞き出さなければならないことがあるというのに……

「あの……それで……」

おずおずと、シエスタは言葉を続ける。

「タツヤさんのご主人様―ヴァリエール嬢が」
「……ルイズがどうした?」
「先ほどまでここでタツヤさんを看病していたのですが、今しがたここを出て行かれました。
フーケの目撃者ということで、学院の方々が話を聞きたいと―タツヤさん?」

達哉は呆気にとられた顔でシエスタを見つめた。
ルイズが看病?
それに……目撃?



「ふうむ……」

オスマンは神妙な顔つきで自分の髭を撫でる。
残念なことに、三人の証言からもフーケの正体に関わるような有力な情報は得られなかった。
彼女らが見たのは黒ずくめのローブに身を包んだ謎の人物のみ。相変わらず年齢も性別も不明なまま。
わかったことと言えば、逃走したフーケをタバサの使い魔が追跡した結果、
ゴーレムは学院の城壁を乗り越えた後すぐに崩れてしまい、フーケもそこで見失ったということくらいだった。
これではまったく足取りがつかめない。

「後を追おうにも、手がかりナシというわけか……」

さて、どう出るか。オスマンが思案を始めたその時、部屋の扉が勢いよく開かれた。

「遅れて申し訳ありません」

やってきたのはオスマンの秘書、ミス・ロングビルだった。
本来ならこのような場合、常にオスマンの側についていなければならない彼女はどういうわけか、
朝から行方をくらませていた。皆は早速そのことを問い詰めようとするが、ロングビルは
平然とした顔であっさりと言葉を返す。

「重ねてお詫びいたします。実は朝から、調査をしておりまして」
「調査?」
「そうですわ。今朝方、起きたら大騒ぎじゃありませんか。そして、宝物庫はあの有様。
おまけに、壁にはフーケを名乗る者のメッセージ! すぐにこれが、国中の貴族を震え上がらせている
噂の大怪盗の仕業と知り、私は今の今までフーケに関する情報を集めておりました」

一気にまくし立てるロングビルに、場がどよめく。教師達が責任のなすりつけ合いをしている間、
一介の秘書に過ぎないロングビルが、早々に学院のために奔走していたと言うのだから無理もない。
オスマンもこれには驚きを隠せなかった。

19:罪深い使い魔
07/11/21 10:12:38 x8Ki0JR6
「仕事が早いの。ミス・ロングビル」
「それで、結果は!?」

興奮したコルベールが後に続く。

「はい。フーケの居所がわかりました」

これには部屋の中にいたほぼ全員が仰天した。例外はロングビル自身と、タバサのみである。

「近在の農民に聞き込んだところ、近くの森の廃屋に入っていった黒ずくめのローブの男を見たそうです。
おそらく、彼はフーケで、廃屋はフーケの隠れ家ではないかと」

黒ずくめのローブ、という単語にルイズはピクリと反応する。血走った目にさらに熱がこもる。
一方で、オスマンの目も鋭くなった。

「そこは近いのかね?」
「はい。徒歩で半日。馬で四時間といったところでしょうか」
「すぐに王室に報告しましょう! 王室衛士隊に頼んで、兵隊を差し向けてもらわなくては!」

コルベールが叫ぶ。他の教師達もこれに同意しかけたが、それよりもオスマンが怒号を発するのが早かった。

「馬鹿者! 王室なんぞに知らせている間にフーケは逃げてしまうわ!
大体、身にかかる火の粉を己で払えぬようで、何が貴族じゃ! 魔法学院の宝が盗まれた!
これは魔法学院の間題じゃ! 当然我らで解決する!」

重要なのは宝ではない。盗まれた秘宝『風車の鎧』は、所詮はオスマンの私物。
なくなって懐が痛むのはオスマン一人だけである。しかし『こと』はそれだけでは収まらない。
学院を守る屈強な衛兵、優秀なメイジを謳う教師陣、そんな教師達の下で日々腕を磨く、若く有望な貴族の子弟。
今回の事件は、彼らすべての信用を完全に失墜させる。
最早プライドだけの問題ではない。このまま事件を放置すれば学院は軽視され、
入学を希望する貴族の減少を招きかねない。卒業した貴族の信用にも関わるだろう。
押し寄せる問題はそれこそ山のようだった。

フーケは秘宝と共に、学院の『名誉』を奪って行った。
それだけは、なんとしても学院の手で取り返さなければならない。
この期に及んで外部に頼ってしまえば、『名誉』は永遠に戻ってはこないのだ。

「フーケの捜索隊を編成する。我と思う者は、杖を掲げよ」

厳粛な響きで以て、オスマンはその場にいた全員に声をかける。
しかし、誰も杖を掲げない。教師達は皆尻込みをしていた。
これにはオスマンも呆れる。

「おらんのか? おや? どうした! フーケを捕まえて、名をあげようと思う貴族はおらんのか!」

それでも、誰も動かない。彼らは皆トライアングル以上の優秀なメイジだが、
優秀なメイジ=優秀な戦士というわけではない。
ここで杖を掲げるような気骨があれば、昨夜の内にゴーレムに戦いを挑んでいる。
つまりはそれが答え。平民には決して見せない、彼らの実態だった。

軽い失望を覚えたオスマンがさらに声をかけようとしたその時、さっと一本の杖が掲げられる。
と言っても、それは教師達の中からではない。シュヴルーズはその人物を見て驚きの声を上げた。

「ミス・ヴァリエール!」

20:罪深い使い魔
07/11/21 10:14:56 x8Ki0JR6
杖を掲げたのはルイズだった。
ルイズは睨みつけるような目で杖と、その場にいた全員を見据えている。

「何をしているのです! あなたは生徒ではありませんか! ここは教師に任せて……」
「誰も掲げないじゃないですか!!」

ルイズの体が震える。恐怖からではない。彼女にとっては非常に馴染みの深い感情、怒りによってだ。
ただし、その密度はこれまで誰も見たことがないほどに煮詰まっている。
憤怒に彩られた表情は、元の顔の造形が秀逸であるだけに余計に恐ろしいものとなっていた。

「私はフーケに……使い魔を傷つけられました」

ルイズは内面の激情を押し殺し、形のいい唇から淡々と言葉を紡いだ。

「使い魔の負った傷は私の傷も同然です。私は、私を傷つけたあの盗賊を絶対に許しません。
必ずや、この手でフーケを捕らえてご覧に入れます!」
「しかしだね、ミス・ヴァリエール。君の魔法は―」

『ゼロ』を知る教師の一人が声をかける。ルイズはその教師に目を向けた。

「……ならば先生が行かれるのですか? 昨夜フーケを取り逃がした先生が?」
「いや、それは……」
「私の使い魔がゴーレムと戦っている間、先生は一体何をしていらしたんですか?
ベッドの中で震えていたのですか!?」
「な―!?」

教師の顔が引きつる。

「盗賊に怯えるなんて、それでも貴族ですか!? 先生方がフーケを捕らえていれば、今頃は……!」
「ミス・ヴァリエール!」

さらに言葉を続けようとしたルイズを、オスマンが制した。

「それ以上は言うでない。教えを請う身で教師に説教なぞ垂れてはいかんぞ」
「……はい。申し訳ありませんでした」

ルイズはうなだれる。先の発言内容は本来なら厳罰ものだったが、オスマンの後に続く者はいない。
ルイズ自身の報告から、彼女の使い魔が今どうなっているかは全員が聞いていた。

「しかし、君の言うことももっともじゃ。結果としてワシらは、本来の職務を
使い魔に肩代わりさせてしまった。そのことに関しては、後で君の使い魔に礼を述べねばならん」

オスマンはふっと笑う。

「……君はよい使い魔に巡り会えた。これは大変な幸運なんじゃぞ?」
「……お褒めに預かり、身に余る光栄と存じます」

ここでようやくルイズは笑顔を見せた。儚い笑顔だが、オスマンはそれを見て満足した。
そして厳かに告げる。

「ミス・ヴァリエール。君は生徒、つまり学院の人間であり、フーケを追う明確な理由と意志を持っておる。
よって捜索隊への参加を許可しよう。しかし貴族たる者、一度吐いた言葉は必ずや実現せねばならんぞ?」

ルイズは頷いた。

21:罪深い使い魔
07/11/21 10:17:16 x8Ki0JR6
「さて、他に有志はおらんかね? まさか生徒一人に行かせるつもりではなかろうな?」

オスマンの声に、今度はすぐに杖が掲げられた。ただし、またしても予想外の方向から。

「君もかね、ミス・ツェルプストー」
「ヴァリエール一人に手柄は譲れませんわ」

仕方がない、といった調子でキュルケは掲げた杖をひらひらと振ってみせる。
そんなキュルケに呼応するように、もう一本杖が掲げられる。

「タバサ。あんたはいいのよ。関係ないんだから」
「心配」

タバサはこともなげに言う。その姿を見て、キュルケとルイズは自然と笑顔になった。
オスマンも楽しげに笑う。

「では、君達に頼むとしようかの」
「オールド・オスマン! わたしは反対です! 生徒達をそんな危険に晒すわけには!」
「では、君が行くかね? ミセス・シュヴルーズ」
「い、いえ……、わたしは体調がすぐれませんので……」

やれやれ、とオスマンは肩をすくめた。

「……彼女達は敵を見ている。その上、ミス・タバサは若くしてシュヴァリエの称号を持つ騎士だと聞いておるが?」

『シュヴァリエ』。それは王室から与えられる『騎士』の称号である。爵位としては最下級に位置するが、
純粋な実力や功績のみを評価されて与えられるため、下手な称号よりも敬意を払われる。
そんな称号がタバサの年齢で与えられるのは非常に稀である。異常と言ってもいい。
もちろん周囲は驚いたが、それを受けてもタバサは「だからどうした」と言わんばかりに超然としていた。
彼女は他人の評価を気にしない。

「また、ミス・ツェルプストーはゲルマニアの優秀な軍人を数多く輩出した家系の出で、
彼女自身も優秀な『火』のメイジであると記憶している」

キュルケは得意げに髪をかきあげた。

「そしてミス・ヴァリエール。公爵家に名を連ねる君の気高き血筋と魂、期待しておるぞ。
遠慮はいらん。盗人風情にその意地を見せつけてやるのじゃ」
「はい!」

ルイズは力強く答えた。

「魔法学院は、諸君らの努力と貴族の義務に期待する」

オスマンの言葉にルイズ、タバサ、キュルケの三人は真顔になる。
それからさっと姿勢を正して直立すると「杖にかけて!」と同時に唱和した。
最後にスカートの裾をつまみ、恭しく礼をする。
この瞬間、生徒のみによって構成された『土くれ』のフーケ捜索隊は、正式に学院より認可された。

22:罪深い使い魔
07/11/21 10:19:57 x8Ki0JR6
予想外の形で今後の方策は確定し、会議は終了した。
皆は解散し、今部屋に残っているのはオスマンとコルベールのみである。
コルベールはオスマンに疑問を投げかけた。

「本気ですか、オールド・オスマン。生徒達だけに盗賊の捕縛をまかせるなどと……」
「では君も参加するかね?」
「わ、私は……」

戸惑いを見せるコルベールにオスマンはほっほっ、と笑ってみせる。
コルベールが杖を掲げなかった理由をオスマンは知っていた。

「よい。今回は君の助けも必要なかろうて」

自信満々にオスマンは言うが、コルベールの表情は晴れない。

「しかしフーケはあの『ガンダールヴ』を下したのですぞ。それも未だに意識を取り戻さないほどに―」
「その『ガンダールヴ』というのは」

オスマンは部屋の扉を見やる。

「先ほどドアの外で聞き耳を立てていた者のことかね?」

コルベールははっとして扉を振り返る。
もちろんそこには誰もいない。少なくとも『今』は。

「心配はいらんよ、ミスタ・コルベール。シュヴァリエを含むトライアングルメイジが二人と、『ガンダールヴ』。
そして『ガンダールヴ』を召喚せしめたメイジの編成で負けはない」

オスマンは笑みを深める。

「なりは子供でも、この捜索隊は当学院の切り札(ジョーカー)じゃ。
フーケのやつには、せいぜい粟を食ってもらおうかの」



投下は以上です
これにて今日はお暇させていただきます

23:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 10:23:41 UeEJrEXr
乙ー

24:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 10:28:10 UkaCWweT
GJ

25:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 10:35:03 nNUc5KAt
GJ!
たっちゃん今回良いとこなしだなw
次回に期待してます!

26:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 10:38:10 g87Wk8YS
「アテナよ…これは一体どういうことだ?」
ルイズがクレイトスさんを召喚してしまったら凄いことになるな
ギーシュのワルキューレやフーケのゴーレムにCSアタック決めたり
勢い余ってルイズやキュルケに対してもCSアタックをですね…

27:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 11:04:35 aeMKuUGT
あ-管制塔管制塔。
今現在滑走路空いておりますか?
クリアならばランディグの許可願います


28:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 11:04:51 d2M9oWuq
クレイトスさん…キュルケの夜這いイベントで先に達して「チッ…」とか言われてみてぇw

29:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 11:10:26 aeMKuUGT
予約ないなら投下しちゃいますよ-?
五分後くらいに

30:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 11:12:16 d2M9oWuq
かもんかもーん

31:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 11:14:16 6/yxSJxI
問題ない。ゴーだ。オーバー

32:ゼロの女帝  第三話
07/11/21 11:17:16 aeMKuUGT
「あ・・・あの・・・ミズヴァリエ-ル・・・」
「なんて顔してんのよ!決闘するのはあんたじゃなくてあたしなんだから」
「で・・・でも・・・あの・・・」
「だ-いじょ-ぶよ!たかがドットメイジ程度の邪魔する奴は指先ひとつでダウンよ!」
「でも・・・」
「気にすんなっつってんのよ!
 平民如きが貴族様の心配しようなんて一万年と二千年早いわ!
 とりあえずクックベリ-パイでも焼いて待ってなさい」

食堂を飛び出し、見えないところまで来て誰も居ないのを確認してから、ルイズは真っ青な顔で壁に縋り付く。
シエスタに言った言葉は嘘だ。
現状の、魔力と扱える適性の数のみで評価するシステムでは確かにギ-シュは無能と呼ばれても仕方がない。
しかし彼は、それをカバ-すべく己の魔法を徹底的に練りこんだ。
深夜裏庭で鍛錬を続ける彼の姿を窓から幾度となく見かけたルイズは、彼の努力を知っている。
その結果、ドット程度の魔力でありながら瞬時に六体ものゴ-レムを作り出し、完璧に制御可能なまでになった。
白鳥は水面下で必死に漕ぐ足を他者に見せる事無く泳ぐように、彼は己の鍛錬を他人には決して見せない。
恐らくモンモランシーにも。
だから判る
自分は勝てない

決闘に負けるのは別に怖くない
「負ける」という事実が怖い
これまで徹底的に他人と関わる事を、そして争い事を避けて来た
他人と関われば自分が無能と思い知らされるから
自分の心が折れてしまうから
 
 
だから      だけど           でも
 
 
今から逃げる・・・・馬鹿言っちゃあいけない
それはシエスタを、マルトーを・・・切り捨てるという事だから
笑うことを知ってしまった自分はもう・・・ひとりぼっちには耐えられない

 
でも        だって       だから       それでも

 
懊悩していた自分を、唐突に暖かいモノが包み込む。
「セ・・・ト・・・・?」
「大丈夫よ、ルイズちゃん」



「落ち着いた?」
冷えた果汁水を飲み干したルイズは瀬戸に問う。
「あたし・・・・どうすればいいんだろ・・・」
「だからね、大丈夫なのよルイズちゃん。
 あたしは多少人を使う仕事をしてた。
 だから判るの。目の前に居る人が何が出来るか何が出来ないか。
 ルイズちゃん、あたしはね・・・人に出来ない事をしろって言ったことは一度もないわ」
生命の限界までぎりぎり振り絞って、やっとのことでかろうじて出来ることをしろって言った事はあるけどな。
「だから、ギ-シュちゃんが強いのも判る」
「ならなんで!」
「だから     ルイズちゃんも出来る事をやればいいのよ。
 出来ない事をしろ、なんて言ってないんだから」

33:ゼロの女帝
07/11/21 11:19:53 aeMKuUGT
ちと短いですが、今回はこの辺で
ちなみに「ギ-シュのゴ-レムは七体だ」というツッコミが入るだろうということであらかじめ
 
彼はいざというときに備えて周囲には作り出せるゴ-レムの数を少なく思わせています。
彼の努力を見ていたルイズですら、最大六体だとしか知りません

34:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 11:20:01 4nNWB2Sj
支援

35:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 11:24:22 4nNWB2Sj
支援したつもりが終わってたGJ!
>>33
突っ込まれてもあえて何も言わずに決闘で書いたほうがよかったんじゃあ……

36:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 11:37:05 QPvcaBG3
GJ
>35
ここだと、そういう設定違いにはうるさいからな
後になって真実を明かして驚かせる、なんてことするとこらえ性の無いのが集中砲火に来るから先に明かした方がいいと思う。

37:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 12:29:13 udAn7dDU
>>36
読者として「ここ間違ってるぞ」と思っていながら読み進めて、
実は作者の手のひらの上で踊らされていると知った時の悔しさと嬉しさ。
自分が本を読むのをやめられない要素の一つ。

38:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 14:32:11 BD/1lgFx
使い魔消失事件は上手かった

39:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 17:04:02 oHiDaxfY
罪深い使い魔おつかれ!
さっき読んだ。
次回はロンギヌス・フーケ戦か?
ジョーカーがどうかかわってくるのかも気になる。
アルビオン編だとレコン・キスタの裏でラストバタリオンも出てきそう。

それにしても達哉の報われなさときたら……(涙)
罪世界の人間は罰世界が造られると同時にシンクロして消えたようにも夢の内容ではとれる。
ルイズが達哉の過去を知ったら待遇を改めてくれる……可能性が想像できねえ。

40:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 18:57:48 YLcFNv3/
ガンパレネタでルイズ、シエスタ、キュルケ、タバサ、ギーシュがガンプの誇りを持ってる話を書こうかと思ったけどすでにゼロのガンパレードで似たようなのがやられていたのでやめたよ

41:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 19:11:16 8UKEXscs
フォン・ゼークトの組織論より「利口な怠け者は指揮官に、利口な働き者は参謀に、
無能な怠け者は兵隊に、無能な働き者は銃殺にしろ」
これをゼロ魔にあてはめると、ほとんど魔法使えないのにでしゃばったりえらそうにしている
初期のルイズは銃殺刑だな。

42:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 19:15:02 louO71c9
>>41
無能な働き者は銃殺にするしかない理由
『無能なので間違いを起こすが、無能なので間違いに気づかず
 しかも働き者なので気づかぬまま間違いを幾度も起こすため』

……うん、軍隊だったら即刻軍法会議だ

43:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 19:15:39 YLcFNv3/
確かになあ、初期のキャラの大部分は銃殺刑になるな
逆に銃殺刑にならない奴と言うとタバサとコルベールとオールド・オスマンくらいじゃないか?

44:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 19:21:28 vciJ0zx5
ゼロのインパール作戦

45:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 19:23:47 HObatOVP
>>43
司令官タイプ
オールド・オスマン
参謀タイプ
タバサ、コルベール

他は銃殺だよなぁ・・・

46:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 19:25:00 rgzXyaet
>>44
味方を大量虐殺した無能が戦後、ふんぞり返って生きる話か。

47:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 19:26:56 wISzqYai
>確かになあ、初期のキャラの大部分は銃殺刑になるな

何、初期キャラの大部分がムカつくって?
そこは逆に考えるんだ
そういう連中がルイズの使い魔に影響されて、成長もしくは変化していくのを見れると考えるんだ

まあ、人によっては好みがあるからね
感情の起伏が激しすぎるルイズがお気に召さない人もいれば、男をとっかえひっかえなうえに
ルイズのことを気にかけている割には「ゼロ」連発するキュルケはデリカシーに欠けると嫌う人もいる

48:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 19:26:58 YLcFNv3/
>>45
そこは
指揮官 オールド・オスマン
参謀 コルベール
兵隊 タバサ

だと思うぞ
参謀は確かに少々迷うがコルベールの方が向いてると思う

49:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 19:37:11 q0cc6blA
>>48
タバサは無能じゃないだろ

50:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 19:41:29 louO71c9
『有能な怠け者』→指揮官にすえろ
面倒ごとは他人を利用する。自分が楽をするため、
常に最小限の労力で最大限の効果が出る作戦を立案できる。
有能だから、そういったやりくりは無駄に上手い

『有能な働き者』→指揮官はやらせず、参謀どまりにせよ
なまじ有能で働き者なので他人の能力を信用できず自分で何でもやりたがる。
完璧であろうとして、あらゆる場合に万全に対処できるような戦略的優位の確保 の労を惜しまない。
しかも働き者で完璧主義だから、それら策を考案することに関しては一流

『無能な怠け者』→連絡将校や一般兵ぐらいはできるだろう。
無能なので間違いは犯す。
でも怠け者なので、間違いに気づかずとも繰り返すことはない。

>>48
タバサは少なくとも有能だとおもうがね。
それにこの組織論は結構極論だからなw

51:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 19:45:57 +hL2nBPL
あの、wikiに収録された自分の作品の、誤字を直すのって勝手にやっていいんでしょうか?

52:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 19:46:53 LsUEXoeO
>>51


53:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 19:52:56 YLcFNv3/
ゼロのガンパレード読み直していたらブータとルイズ達がかっこよすぎて惚れたw

54:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 19:57:20 TLUnM+u5
前スレ埋まった



55:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 20:02:23 L9y8E7Jl
1000行かなかったか

56:スレ内BL対象な人
07/11/21 20:04:45 GbKFSPoC
…警告!
目標上空に到達。これより投下を開始する。
嫌な人は、ただちに退避されたし。
繰り返す、ただちに退避されたし…!

57:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 20:05:42 LsUEXoeO
>>56
内容にもよるが避難所のほうがよくないか?

58:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 20:08:29 851JwXpz
避難所だよな、基本的に。

59:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 20:09:30 LsUEXoeO
てか腐ったオナゴは帰れよ

60:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 20:10:38 GbKFSPoC
いや、やばい表現とか作品とのクロスじゃないんですがね。
一応、嫌いな人にはスルーとか、専ブラ使用を通達…ってな感じで。

61:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 20:11:54 nNUc5KAt
テンプレに違反してなかったり避難所向きのようなものだったりしなければいいんじゃん?

紛らわしい事書かないように。

62:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 20:14:29 nNUc5KAt
ちょっと日本語おかしかった。
違反してたり。ね。

63:ゼロの使い魔人:1
07/11/21 20:28:39 GbKFSPoC
…済みません、気を付けます。
…授業が行われる教室の構造は、大学の講義室と凡そ変わりない。
半分に切った擦り鉢の様な石作りの部屋に、階段状にしつらえられた机と椅子が並んでいる。
ルイズと共に龍麻が入室するや、あちこちで笑い声が上る。
笑い声の元を睨みつけつつ、ルイズは席の一つに着くが、龍麻は部屋の最後部の壁際…、部屋全体を見回す位置に立つ。
龍麻が見た限り、生徒連中は全員が大なり小なり、使い魔らしき生物を引き連れていた。
―まあ猫や鴉、大蛇や梟とかはまだしも、例のキュルケが連れていた火トカゲに始まり、コンピューターRPGや
幻想小説にのみ存在し得た筈のクリーチャーが当たり前の様にいる光景には、それなりに
『経験値』を蓄えている龍麻といえど、感心や呆れとは無縁で居られなかった。
(よくもまあ…。此処は本気で何でもアリというか、とんだお化け屋敷だな……)
内心で呟いていると、扉が開き紫色のローブと同色の帽子を被った、教師と思しき中年の女性が現れた。
その際、真意は兎も角シュヴルーズと名乗ったその教師が放った一言が引き金で、
教室中の生徒連中が笑い出し、ルイズと近くにいた男生徒が口喧嘩を初めたが、
彼女は魔法で黙らせると授業に入る。
(…一体、何をやらかしたかは分からんが、俺を召喚び出した事も含めて、露骨に見下されているな、あいつは……)
そのやり取りを見た龍麻は疑問を抱きつつも、手にした情報端末に素早く授業の内容を打ち込んでいく。
―曰く、『火』『水』『土』『風』、そして喪われたとされる『虚無』という、五つに系統される魔法。
『土』の魔法だと、建築や鉱業、農業の殆どが魔法とその成果により、支えられている等……。
(成る程。別段『土』にとどまらず、「こっち」は科学に替わり、社会生活の何もかもが魔法とそれを扱う魔術師に
依存、って事か…。「向こう」とは比較する事自体が間違いだろうが、えらく歪な世界だな…)
そうして、龍麻や生徒連中の前でシュヴルーズ教諭は『土』の魔法の基本という、『錬金』で
いとも簡単そうに教卓の上に置かれた石を、金属へと変えてみせる。
「ゴゴ、ゴールドですか? ミセス・シュヴルーズ!」
「違います。ただの真鍮です。ゴールドを錬金出来るのは『スクウェア』クラスのメイジ
だけです。私はただの…『トライアングル』ですから……』
キュルケとシュヴルーズ教諭の会話を聞きながら、龍麻は驚きを声に出していた。


64:ゼロの使い魔人:2
07/11/21 20:30:49 GbKFSPoC
「話の内容から、「有り」かもとは思ってたが、まさか真物の錬金術にお目に掛かれるとは…!
あいつが見たら驚喜するだろうな、多分……」
『トライアングル』やら『スクウェア』の意味も含め、今夜にでも煩がられない程度に雇い主に質問してみるかと、龍麻が考えている所に。
「それでは、おさらいも兼ねて…ミス・ヴァリエール。あなたにやってもらいましょう」
「え? わたしですか?」
「そうです。ここにある石ころを、望む金属に変えてごらんなさい」
―瞬間。
ざわ…ざわ……。
室内の雰囲気が変わった事を龍麻は気付かされ、その強張った空気の中、キュルケが口を開いた。
「先生。それは、止めといた方がいいと思いますけど……」
「どうしてですか?」
「危険です」
その発言に教室中の生徒が頷いてみせるが、シュヴルーズ教諭は取り合わず、
ルイズに『錬金』を使うよう促し、彼女も真剣な面持ちで教卓の前に立つ。
「ミス・ヴァリエール。錬金したい金属を、強く心に思い浮かべるのです」
杖を構え、呪文の詠唱に掛かるべく目を閉じ、精神を集中させるルイズ。
一方で、他の生徒連中は姿勢を低くして机の陰へと入ったり、耳を塞いで足早に後ろの席へと下がる…と、いった行動を取っている。
「―もしかしなくても、ヤバそうだな…」
流れと雰囲気から、事の剣呑さを感じた龍麻も用心の為、近くの机を盾にしつつ、ルイズの様子を見守る。
―詠唱が終わり、杖を振り下ろした瞬間。
拳大の石ころの表面が一瞬輝き…轟然たる爆発を引き起こした。
教卓は爆砕し、至近にいたルイズらは爆風で吹き飛び、黒板に叩きつけられたり、床に這う。
部屋を満たす煙と破片。悪罵混じりの悲鳴に窓硝子の割れる音。更には部屋にいた使い魔達が好き勝手に暴れ出すわと、収拾が付かない有様である。
生徒達の学び舎は、さながら爆弾テロの現場も同様の惨状を呈していた。
「……。此処はボスニアの南か、北アイルランドやヨハネスブルグなのか…?」
唖然とする龍麻。一方で、
「だから言ったのよ! あいつにやらせるなって!」
「もう! ヴァリエールは退学にしてくれよ!」
等と、一斉に上がる糾弾の声。
事の当事者たる二名…、床に倒れ伏したシュヴワーズ教諭を余所に、ルイズが立ち上がる。
外傷こそ無いが、髪や服に外套は所々が裂け汚れて、全身埃塗れに煤塗れ。
火事で焼け出された難民もかくやな格好である。


65:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 20:31:34 bLjbh/XT
ひーちゃん支援そして魔人氏の投下終了10分後くらいに投下予約。

66:ゼロの使い魔人:3
07/11/21 20:33:00 GbKFSPoC
「―無事だったか。柔弱(やわ)そうで案外、タフな奴だな」
龍麻が呟く中、ルイズは顔や服の汚れを払いつつ、普段と変わらぬ声で言う。
「ちょっと失敗みたいね」
「ちょっとじゃないだろ! ゼロのルイズ!」
「いつだって成功確率、殆どゼロじゃないかよ!」
「いい加減にしろよな! ほんとに!」
「反省がないぞ、反省が!!」
が、言い終わるが早いが、声量・数共に、数倍する生徒らのブーイングの前に掻き消される事になる。
(―成る程。『ゼロ』ってのはそう言う意味だったのか。しかし…この件の後始末は俺ら、なんだろうな……)
―程無くして、騒ぎを聞き付けて来た他の教師達により、シュヴワーズ教諭は医務室へと担ぎ込まれ、
他の生徒達には昼迄の自習が言い渡された。
そして、騒ぎの張本人たるルイズ本人には、ペナルティとして魔法を使わず(元々使えないが)に、部屋の後始末と修繕が命じられる事となる。
恨みがましい視線と罵声にイヤミを投げ付けながら、生徒連中と教師達が教室を後にすると、
残った二人…は荒れた室内を見回すと、それぞれの表情で溜め息をついたり、以後の段取りを立てたりする。
「…取り合えずは、だ。着替えて来たらどうだ? で、帰りにバケツに水を汲んで持って来てくれたら、その分早く終わるんだけどな」
ちら、とルイズの格好を見やって龍麻はそう声を掛けると、早速仕事に取り掛かる。
―割れた硝子を掃き集め、元教卓な破片や壊れた机に椅子等と纏めて室外に出す。
暫くして、着替えを済まし戻って来たルイズが(以外にも)バケツを持って来てくれた事に礼を言うと、また次の作業に移る。
元来、龍麻は嫌な事から先に片付ける主義であり、本質的には勤勉を尊び、怠惰や手抜きを嫌う。
ルイズから場所を聞くと、倉庫から予備の机や教卓を運び入れ、所定の位置へと据え付けていく。
「…もう、わかったでしょ」
かたや、嫌々といった動きと表情で、机の汚れを拭くルイズがふと口を開いた。
「話は後だ。口より手を動かさないと、終わらないぞ」
「うるさいわね! 今だって、何にも考えてないような顔して、あんたも内心じゃわたしをバカにしてるんでしょう…!?
ええ、そうよ。あんたが気にして、キュルケや他のクラスメイトが言った通り、わたしは魔法が使えない、成功しない、『ゼロ』のルイズよ!!」
突然の癇癪にも、手を止めず、振り向かずに応じる。
「勝手に決め付けるない」


67:ゼロの使い魔人:4
07/11/21 20:35:42 GbKFSPoC
「ふんだ! 口では何とだって言えるわよ!」
床か机を蹴り付けたらしき音と同時に、憎まれ口が飛んでくる。
「そう思うのは勝手だが…、大体、何を根拠に俺もそうだと、決め付けて掛かるんだ?」
言った所で水掛け論にしかならんと思いつつも、応じる。
「また、白々しい事を! いつも、誰も彼もそうだったわよ!! みんな、わたしのした事を見た後で、
白い目で見て笑うのよ! 貴族なのに、メイジなら誰でも出来る事、初歩のコモン・マジックさえ出来ない、半端者の『ゼロ』だって!
わたしだって…、わたしだって好きで爆発させてる訳でも無いし、失敗したい訳じゃないわ…!!」
「なら尚の事、一緒にするな。失敗したといっても、まだ取返しが利かん事は無いだろ。捨て鉢に成るのはまだ早い。
俺はお前が何者だろうが、含む様な所は無いし、他人を下に見て、自分が優れてると思いたがってる輩なぞほっとけばいい」
そう言っても、まだ棘の有る視線が無形の針となってこちらに突き立てられるのを感じ、龍麻はルイズの方へと振り向く。
両者の身長差は30cm以上あるのだが、ルイズは両手を固く握り締め、
唇を一文字に引き絞った、険の有り過ぎる表情で睨み上げて来る。
「…何よ。言いたい事があるなら、言ってごらんなさいよ! 使い魔風情が何をさえずるか、聞いてあげようじゃない」
「俺は魔術師じゃ無いし、この世界の事はまるで分からん。だからお前の抱えた問題だって解決は元より、
助言一つ出来んが…経験上、これだけは断言出来る。《力》の有無で、人間の有り様や値打ちは決まりはしない、ってな」
ルイズの顔を真っ正面から見据え、言い切る。
「…『信じろ』なんぞと、図々しい事は言わない。俺は、原因や理由次第では失敗した奴に怒りはするが、
それを盾にして相手を一方的に謗り、辱める様な真似はしない。この一件にしても、怒る様な事では無いし
『ゼロ』だ何だの、俺には関係無い。お前が、俺の中の仁義や良心に背いたり、どう考えても間違った事を手を染めない限り、
此処にいる間はお前の手伝いと外敵が現れた時はそれを追い払うのが仕事だし、今はそれをこなすだけだ」
一息に吐き出した後、背を向けて掃除を再開する。
「…悪い。随分勝手というか只、一方的に言いたてただけだったな。聞き流してくれていい」
―何の《力》を持たずとも、己の信じる所を貫き徹して、理不尽や現実に立ち向かった者がいた。

68:ゼロの使い魔人:5
07/11/21 20:38:23 GbKFSPoC
酷い逆境や業を抱え、あるいは自分の無力を嘆く事はあっても尚、『護りたい』と
いう想いを一心に抱いて、前を見続けて歩く事を諦めなかった者も、男女問わずいた。
(いや、特別な《力》で無くたっていい。小さくとも他人からの吹聴や外圧を撥ね除けるだけの、
『何か』を自分自身の裡から見出だせりゃ、こいつも変わっていけるとは思うんだが…。こればっかりは、
他人がどうこう出来る訳でも無いしなあ…)
再び、床や壁の汚れを雑巾で拭き清めながら、龍麻は思案する。
「………」
龍麻からルイズの表情は窺えないし、黙り込んだままだが、それでも彼女が先程迄振り撒いていた癇気が僅かながらも、下がったのが感じられた。
…駄菓子菓子。会ったばかり、しかも第一印象とそこからのやり取りも加え、両者の関係は確認する迄も無く最悪に近い訳で。
そんな人間から何か言われた所で、古くは物心付いた頃からだろう鬱積した澱みや、激情等が抑まる筈も無く。
「…取り敢えず、あんたの言い分はわかったわ。随分と言いたい放題、無礼勝手な駄犬だけど、
ご主人様を立てるって事ぐらいは弁えているようね」
そんな、不機嫌さに満ちた声が背後から響いて来る。
「…で、何が言いたいんだお前?」
「簡単よ。残った場所の掃除、全部あんたがやりなさい。わたしの手伝いをするのが、あんたの仕事でしょ?
何か間違ってる?」
当然の様に言い放ち、雑巾を放り出すと、ルイズは出入り口へと足早に向かう。
「って、お前は何処へ行くんだ?」
「食堂よ。そろそろお昼の時間だし、午後からの授業の用意もあるもの。
…いい? わたしがいないからって、さぼるんじゃないわよ?」
等と、腰に手を当てながら念入りに釘を刺す。
「あっそ。行くならどうぞ。この程度なら、一人でも手は回るしな」
「ええ。そうさせて貰うわ。終わったら、知らせに来なさい。終わる迄、ご飯ぬきね」
(…言うと思った)
踵を返し、教室を出て行くルイズを見送ると、龍麻はバケツに汚れた雑巾を浸す。
そこから暫し、時は流れ……。
「ふう…」
昼を告げる鐘の音が室内に谺するのを聴きつつ、教室内を見回す龍麻。
床や壁、黒板に机迄もが輝く程に…とはいかないが、ルイズかやらかした爆発事故直前に近い状態にはなっていた。
「この待遇も、“積悪の報い”って奴かもなぁ……」
慨嘆を洩らしながら、掃除用具一式を元の場所に戻し終えて、龍麻は事の次第を報告すべく、教室を後にした。

69:書いた人
07/11/21 20:43:09 GbKFSPoC
…投下終了です。
今迄、言いそこねてましたが、形だけでも支援してくれた方には感謝してます。
では次の方、いらっしゃったらどうぞー。

70:仮面のツカイマガイ ご奉仕その1 1/3
07/11/21 20:54:15 bLjbh/XT
んでは遠慮なく。そろそろ行かせてもらいまーす。
----------------------------
ご奉仕 その1

 それは彼が現在のご主人―
 巨乳で頭の弱い剣道少女と出会う少し前の物語。
 貧乳で無能な魔法使い少女の許で働いていた頃の物語……。

 今度ばかりは失敗するわけにはいかない。
 決意を新たに、ルイズは召喚の呪文を唱え始める。
 すでにクラスメイトたちは皆使い魔を召喚し終えていて、大小様々玉石混淆であるが、皆己の使い魔を得ている。
 いけすかないゲルマニアの女、キュルケに至ってはサラマンダーなどという大物を手にしているのだ。
 ここで、ここでなんとかキュルケに負けないような使い魔を得て、「ゼロのルイズ」という不名誉な二つ名を返上しなくては。
 そう思えばこそ、詠唱にも力が入る。オリジナルの呪文を混ぜてしまうほどに。

「―我が導きに答えなさい!」
 呪文を唱え終え、杖を振り下ろした瞬間。
 ―いつものように爆発が起きた。
 煙が晴れ―そして、
「ヌウ……ここはどこだ?」
 場の空気が一瞬にして凍りつく。
 爆煙の中から現れたのは一人の男だった。

 背の高さは推定でも優に200サントを越えるだろう。小柄なルイズからすればまさに見上げるほどである。
 剥き出しになった二の腕はルイズの胴ほども太い。鋼のようなその筋肉は見せ掛けではないことが一目でわかる。
 ボサボサの髪は長く背中まで届いていて、まるでそれ自体が一つの生き物であるかのように蠢く。
 大きな口から覗く歯は不釣合いなほど白く、そして鮫のようにギザギザと尖っている。
 その瞳には、内に潜む凶暴さが滲み出てくるような鋭さがある。
 野卑ていると言えばそれまでだが、それよりむしろ野生的と評したくなるような独特の気配が全体から漂ってくる。
 龍や鳥といったまともな使い魔である以前に、まともな人間であるかも怪しい。
 平民か貴族かどうかとかいう、それ以前の問題だった。
 だがそれはいい(本当はよくないけれど)そこまでははいい。問題なのはその男の服装であった。

 黒い血を落としたような漆黒のスカート。悪魔のマントが如く禍々しく翻るエプロン。
 顔の半分を覆いつくす仮面と一体化したヘッドドレス。
 細部こそ大きく違えど、それは学院の食堂で、実家の屋敷で、王宮の廊下で、ルイズが幾度となく目にしてきた存在。
 そう、紛れも無く『それ』は……。


 メイドだった。


「な、な……何なのよアンタはああああああ!?」 
 ルイズの疑問は当然のこと。およそ目の前に居る物体がまともな使い魔であるとは思えない。
 男はそんなルイズの叫びに動じもせず、不敵に笑う。禍々しい笑みが異様なほど似合っている。
「ククク……。そこの小五月蝿い桃髪小娘よ、人に名を尋ねるときは己から名乗るのが礼儀。
俺の名を知りたくばまずは貴様から名乗るのが筋だろう?」
「むっ……」
 道理ではある。たとえ相手が一目でわかる変態であっても、こうまで言われて名乗らないのは貴族の名折れ。

「ル……ルイズよ。ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ!」
 男の迫力に圧されぬよう気力を振り絞り、精一杯無い胸を張ってルイズは名乗る。
 そんなルイズの態度に、男は『ホウ……』と幾分感心したように息を漏らす。
「ルイズか。なるほど、その名乗りぶり、ただの小娘ではないと見た。
なればこそ、このメイドガイが名乗るに相応しい。
―では改めて初めましてだ! 俺の名はメイドガイ……。メイドガイ、コガラシ!」

71:仮面のツカイマガイ ご奉仕その1 2/3
07/11/21 20:55:42 bLjbh/XT
 大仰に手を振りかざし、拳に力をこめ、全身で言葉そのものを表現するように、
 男―メイドガイ・コガラシは名乗りを上げる。
 一方名乗られたルイズはというと……。
「め、めいどがい?」
 目を点にして呆然とする。この男が何を言っているのか全く理解できない。

「メイドガイって、メ、メイドのメイドガイ?」
「他に何がある」
「もしかして、アンタ……メイドなの?」
「如何にも。俺こそメイドの中のメイド、メイドガイ・コガラシ!」

(いや、そんな……)
 ここに来てルイズの混乱は頂点に達する。
(メイド? メイドって何?)
 既にゲシュタルトは崩壊寸前。ルイズの中でメイドという言葉の意味は完全に破壊されつつある。
 そうだ、目を瞑ってメイドという言葉を思い浮かべて。
 メイドメイドメイド。メイドという言葉からイメージを思い浮かべる。

 質素なドレス、
 清潔なエプロン、
 ささやかなお洒落のヘッドピース、
 温かな笑顔、
 可愛いらしい少女。
 うん、それこそがメイド。そうよルイズ、
 目を開けて前を見なさい。そこにいるのは可憐な少女―。


「ククク……。どうした小娘、白昼夢でも見ているのか?」


「いやあああああああああ!?」
 牡臭いドレス、
 装甲のようなエプロン、
 怪しい仮面付きヘッドピース、
 禍々しい笑い声、
 むさ苦しい男。
 およそメイドという言葉とは正反対な物体が鎮座している。
 イメージとのギャップが激しいだけに、ルイズはさらなるダメージを被ってしまった。

「ムウ……。何やら良くないものでも見たかのようなリアクション。精神衛生には気をつけるがいいぞ、小娘。
しかしそんなことよりここは何処だ? 何やら見慣れぬ景色ではあるが」
「こ、ここはトリステイン魔法学院だよ、その……メイドガイくん?」
 あまりのショックに廃人になりつつあるルイズを見かねて、弱々しげにコルベールが口を挟む。

「トリステインだと? 聞いたことの無い場所だな。それで貴様、何故俺がそのトリステインにいるのだ?」
「ハッ!? そ、そうよ! あんたを呼び出したのはこの私よ!」
 ようやく正気に戻ったルイズが叫ぶ。
 呼び出した、という言葉にコガラシは怪訝そうな顔を浮かべる。

「呼び出した? ……そう言えばここに来る途中何やら光のようなものが見えたが」
「それはきっとサモン・サーヴァントの光よ。使い魔はそうやって呼び出されるのよ」
「ホウ、使い魔だと? 貴様ごときが? この俺を? 
クハハハ! このメイドガイを従えるつもりとは、こいつはとんだ身の程知らずも居たものだ!」

72:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 20:56:25 FCb+Ug4C
よりにもよってそいつかよ支援w

73:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 20:56:48 9PnY0omp
メイドガイ出たー!! 支援

74:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 20:56:54 TW3/aTPf
乙。

空行いれたら?
ものすごく読みにくい。

75:仮面のツカイマガイ ご奉仕その1 3/3
07/11/21 20:57:05 bLjbh/XT
 ちゃんちゃら可笑しいとばかりに、大笑するコガラシ。
「……っ、あんたねぇ!」
 余りの無礼さにルイズは一瞬言葉を失い、そしてすぐさま怒鳴り返そうとする。
 だがそれをコガラシは「慌てるな」と制する。

「だが、数多あるであろう使い魔の中から選りにも選ってこのメイドガイを呼び出すとは、小娘ながらなかなかの運の良さ!
そしてさらに貴様にとって幸いなことに、このメイドガイは只今フリーの身……。
小うるさいあのドジメイドもいない今、貴様がどうしてもというのであればご奉仕してやらなくもないぞ?」
「お、お断りよ! あ、あんたみたいなへ、へへへ変態を使い魔にできるわけないじゃない!」

 嫌だ。絶対嫌だ。自分の理想の使い魔は竜やグリフォンのような幻獣か、さもなきゃもっと可愛い動物なのだ。
 まちがってもこんな変態ではない。
「だ、だがミスヴァリエール。
一度使い魔(なのか!?と己に問う)を呼び出してしまった以上、契約を行わないことはできないんだ。
もし契約を拒否するというのなら退学処分になってしまうが……」
 コルベールが困ったように言う。
 さすがに「文句を言わずコレと契約しろ!」と強くは言えないようだった。

「そ、そんな……」
 無慈悲なコルベールの言葉に、ルイズは愕然とする。
 そんなルイズの顔をわざわざしゃがんで下から覗き込み、これ以上ないというほど憎らしくコガラシは笑う。
「ククク……どうやらそういうことらしいな。さぁどうする小娘? 貴様の道は二つに一つ。
俺を拒んで大人しく退学処分を受けるか、それともこのメイドガイにご奉仕されるかだ!」

 退学or変態のご主人様。二つの単語がグルグルとルイズの脳内で回る。
 馬鹿にする級友たち。両親の失望。姉の叱咤。姉の励まし。いけすかないキュルケ。自分を友と見てくれるアンリエッタ様。
 それらいくつもの言葉を経て。わずかに、極わずかに天秤が揺らぐ。
 小さな、だがそれは確実にルイズの人生に決定的な楔を打ち込む揺らぎであった。

「わ……わかったわよ! 契約すればいいんでしょう!? 契約すれば!」
 どうにでもなれ、とばかりに叫び。早口で契約の呪文を唱え、頭突きをするようにキスをする。
 さようならファーストキス。こんにちわ変態のご主人様。
 コガラシは「小娘の接吻ごときがどうだというのだ?」という態度でそれを受ける。
 キスを受けたコガラシの左手にルーンが浮かぶ。
 付け加えるならばそのルーンはちょっとした珍しいものであるのだが、誰もそんなことには気づいていない。
 コガラシを直視するのが難しいからだ。いろいろな意味で。

「―良かろう。貴様はたった今から我がご主人だ!」
 そして……大波乱を含んだ使い魔契約の儀式は終了した。


「さ、さっさと帰ろうぜ!」「ルイズ、おまえはそいつと歩いて来いよな!―なるべくゆっくり!」
 使い魔を従えた級友たちは口々にルイズを馬鹿にして去っていく。
 だが彼らの足はどこか急ぎ気味で、ルイズから逃げるようでもある。
 さもありなん、本日この学院の生徒たちが呼び出した数々の使い魔たち。
 それらの中で一番インパクトのあるものを呼び出したのは、誰あろう彼女。
 ゼロのルイズその人であることは誰の目にも明らかだった。
「…………」
 無言で呆然と立ち尽くすルイズ。そんなルイズを見下ろし、コガラシは「クククク……」と不敵に笑う。
「さぁ、どうご奉仕してやろうか?」


 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール 16歳―
 ハルケギニアに渦巻く全ての陰謀を打ち砕き、メイドガイ・コガラシから解放されるまであとXXXX日……。

                           (続く!)

76:ツカイマガイの者
07/11/21 20:59:09 bLjbh/XT
投下終了。というわけで、『仮面のメイドガイ』よりメイドガイ・コガラシです。
ギャグ系作品ってえのは、ちゃんと1話1話オチつけれて便利な反面難しい。
ではまたいずれ、メイドガイの華麗なるご奉仕の数々をお楽しみください。


[追記]
しまった、またハルケギニアって書いちまったorz ハルキゲニア、だよね?

77:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 21:00:02 GbKFSPoC
間に合うか…?
さあ、支援。

78:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 21:01:02 8ZJ2A1b8
>>76
GJ!
ここからが本当の地獄だ・・・ゴクリ

ついでに突っ込むとハルケギニアであっとるがなw

79:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 21:02:09 louO71c9
乙&GJ!

これは使い魔のルーンとは別に語るのもはばかられるwwwww

80:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 21:02:24 9PnY0omp
メイドガイの人GJ!
ああ、可哀想なルイズが又一人……。
後、ハルケギニアであってるよ。

81:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 21:02:49 J2rsu/M8
>>76

作者もゲシュタルト崩壊起こしとるがな

82:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 21:04:37 bLjbh/XT
あああああ。ちゃうねん。俺もハルケギニアが正解やって知ってねん……。
でも自分の書いたのがハルキゲニアに見えたんや。
そんでさらに訂正する時に間違えたんや……。

83:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 21:06:12 louO71c9
ゲシュタルト崩壊するよな、こういう長い固有名詞はw

84:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 21:06:17 ahtkAVjm
>>82
ドジっ子乙&GJ

85:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 21:08:12 L5xelq0l
ルイズも哀れだが
こいつに使われるだろうデルフも不憫だw

86:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 21:09:19 2ZUyuLH7
よりにもよってメイドガイかwww
ゲシュタルト崩壊と共にGJ!

87:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 21:10:58 HVFLq/bS
フツーの人はハルケギニアにいないのかしら……

88:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 21:11:31 louO71c9
ていうか、キュルケはこいつに欲情できるのか……?

89:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 21:12:09 m9sMaa7U
>>82
ハルキゲニアを変換するとハルケギニアになるように辞書登録しておけば安定するよ


90:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 21:13:27 L9y8E7Jl
>88
キュルケは男の器量を見いだす女だぜ
コガラシの器量を考えれば答えは自ずと出てくる

91:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 21:17:03 Sxco4gbQ
人の話を聞かないのと暴走癖さえなければ、
普通に万能なイイオトコだと思うけどなー、メイド・ガイ。

男なのにメイド服着てる事に関しては、最早違和感を感じて無い自分が居るw

92:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 21:18:24 RZv8sc7T
クロス先を考えるためにゼロ魔の魔法に関する世界観を煮詰めてみたら
属性…火・水・風・土・虚無
火・土→太陽 水・風→月 太陽+月=星 星≒虚無
四属性…各属性に対応する要素の操作 虚無…四属性よりさらに細分化された要素の操作
虚無が分化→四属性…太極(虚無)が分化→四象(四属性)
四象(四属性)→陽:太陽(火・土) 陰:月(水・風)→太極:星
ゼロ魔的にもOKだしCCSの設定的にも問題なし!
クロウ=リードは世界間移動を可能とするモコナ・モドキの製作に関わってるから封印の鍵や書に
世界間移動時に守護者や書・鍵・カードを主に随行させる機能を持たせてるかも!

と結論が出たんでカードキャプターさくらの木之本桜を全カード(漫画版のみ+アニメ版のみ+映画版含む)+守護者二匹とともに召喚させようと思ったが

…どう動かしたもんだかさっぱり思いつかないんだ。すまん

まぁカード使ったら「精霊を召喚した!?」って驚かれるしケロちゃんやユエさんに対してもびっくりされるわけだが。

93:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 21:18:44 yH+UDAIP
メイドガイGJ!
人の話を聞いて暴走しないメイドガイなどメイドガイではない!

94:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 21:18:59 L5xelq0l
まあ今までこのスレ召喚された連中の中では大分まともなほうだもんな

95:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 21:20:25 KwYv8h70
>>76

逆だ逆
ハルキゲニアは大昔の生き物だよ

ハルキゲニア(Hallucigenia)は、古生代カンブリア紀に地球の海に生息して
いた、バージェス動物群に属する生物。名前は「幻覚」から由来する。
(Wiki参照)

96:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 21:21:31 FCb+Ug4C
性格はアレだがメイドとしての性能は最上級だからなぁ。

むしろシエスタさんやコックの仕事がなくなりそうで不安だw

97:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 21:32:30 QHayhC57
投下よろしいですか?

98:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 21:35:52 W7a/UQ/+
支援するぜ

99:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 21:36:47 1s3KmcDG
誰かしらワクワク

100:虚無の使い魔だよ!ドクロちゃん!
07/11/21 21:38:23 QHayhC57
投下します

僕の名前はギーシュ・グラモン。
自慢じゃないが、成績優秀、眉目秀麗、完全無欠で将来有望な学園生徒なのだよ。
さあ、僕を殴って!(もっと)
そんな僕の唯一の悩みといったらこの溢れ出る魅力。
僕は何もしていないのに遠乗りに誘われたりするのだよ。全く困った物だよね。
でも、いまではまったくそんな気にならないんだ。
何故なら、僕の部屋にはとても奇妙な使い魔が住み着いたから。

今日も僕は、自分の部屋にノックをせずに入ってしまった。
少し前まで一人部屋だったのだからしょうがないよね。
そして、部屋の中では僕より少し年下ぐらいの女の子が服を着替えていたのさ。
しかも、素敵な物体が見えるアングルで。
僕は絶句した。
「……いやああああああ!!」
「ドクロちゃん、キミ結構大きいん、うわあああああ……」
僕の叫びは、少女の突き出したトゲトゲの付いた鋼鉄バットで中断された。
彼女が、僕の左脇腹から右上腕にかけて振り抜いたからさ。
〈じゅばあああ!!〉という音がして僕の内臓や右腕が飛び散る。
そして僕の上半身(といっても、頭と左腕と右肩しかないけど)が後ろに倒れて転がったのだよ。
彼女はとても恥ずかしがりやのようだね。
「きゃ、ごめんなさぁいギーシュ君!」
彼女は可愛らしい声で言う。そして鋼鉄のバットをくるくると回しだしたのさ。


101:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 21:39:45 cdfjoVpE
gyaaaaa!!!
またとんでもないのが支援!

102:虚無の使い魔だよ!ドクロちゃん!
07/11/21 21:40:24 QHayhC57


ぴぴるぴるぴるぴぴるぴー♪


赤黒い僕の肉塊は、キラキラした魔法をまといながら、元に戻っていく。
僕は治ったお腹を触りながら言う。
「いきなり撲殺するなんて、酷いじゃないか!」
ドクロちゃんは、ほっぺを膨らませる。
「いきなり部屋に入ってくるギーシュ君が悪いんだよッ!」
僕はため息をついた。

実は彼女、未来からやってきた天使なのだよ。
名前はドクロちゃん。
召喚した時に彼女は言った。
「ギーシュ君、キミはこれから虚無に目覚めるんだよ。虚無は危険なんだよ、人がいっぱい死ぬんだから。だからボクは天界から来たんだよ!」
僕は驚いた。
「ほ、本当なのかい?」
ドクロちゃんは僕を見ずに。
「きっと目覚めるよ……多分」と言った。
なんてことだ。僕のほうを見れもしないなんて……なんて重い話なんだ。
少し(きっと)(多分)に引っ掛かりを感じるけど。
「だから、これから魔法を勉強したり、使ったらダメ!」
と、言われたのだった。

―これはヒストリー、虚無のヒストリー。(二回言う意味は無し)
僕とドクロちゃんの日常を描いた愛と涙と血みどろの物語。

ちなみに同級生の皆は普通に使い魔を召喚した。ただし、ゼロのルイズは平民を召喚したようだね。
まったく、虚無は辛いよ。

次回予告
昼食中に僕が落とした物は……パンツ?
何で! 何でパンツなの!!
次回
決闘だよ!ドクロちゃん!
ぴぴるぴるぴるぴぴるぴー♪


103:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 21:40:24 bLjbh/XT
支援だよ!ドクロちゃん

104:虚無の使い魔だよ!ドクロちゃん!
07/11/21 21:42:49 QHayhC57
投下終了。多分全四回位で終わります。(ギーシュの命的に)
支援ありがとうございました。

105:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 21:44:45 8ZJ2A1b8
なんという人違い・・・このギーシュは間違いなく不幸(生的な意味で)

106:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 21:45:36 L5xelq0l
ギーシュが虚無持ちなのにルイズはゼロのままかw

107:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 21:52:17 80qWan+O
またすごいのが来たな…
ギーシュの将来に幸あらんことを…

108:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 21:52:50 louO71c9
>>106
>「きっと目覚めるよ……多分」
>多分

109:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 21:54:11 +afjoh8e
違う!属性:虚無なんて生易しいものでドクロちゃんがくるはずがない!
きっと、属性:木工ボンドとか属性:蟹とかなんだ!?

110:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 21:58:36 2ZUyuLH7
じゃあ属性:ダイオウグソクムシで

111:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 22:05:45 nNUc5KAt
頭の中が虚無じゃね?

あ、なんか誰かきた。

112:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 22:11:38 q0LMIqqC
そこで属性:ハルキゲニアですよ

113:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 22:16:36 iyq8gZ3t
ちなみに俺の属性は巨乳です。

114:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 22:17:02 80qWan+O
いや、属性:ヤムチャだろ

115:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 22:17:09 TNuRQTOx
>メイドガイ・コガラシから解放されるまであとXXXX日

最短で3年位……三日で限界をむかえそうな・・・

116:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 22:24:02 80qWan+O
先程『男はつらいよ』からフーテンの寅さんこと
車寅次郎を召喚という電波を受信したんだが
どうすればいいんだろう?


117:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 22:30:10 aozMeIc6
燃える!お兄さんからポキール星人召喚とかを考えてしまった
あんまり覚えてないけど価値観がほぼ逆だったから
ルイズの仕打ちで逆に喜ぶんじゃないかな

118:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 22:34:09 z9kxdx0T
CIC聞こえるか?
スレに到着したばかりで現状の確認ができない
こちらはSS投下の用意は完了している
指示を請う

119:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 22:35:36 80qWan+O
聞こえた
いつでもいけるぜ支援

120:ゼロの悪魔召喚師
07/11/21 22:38:00 z9kxdx0T
ゼロの悪魔召喚師  第五話
<流星>
「へくちっ!!」


さむっ、自分のくしゃみで目が覚めた
いくらなんでも、春先だからだって毛布一枚なしってのは無理がある
ベットを見るとご主人様は暖かそうに布団に包まって穏やかな寝息を立てている
この自称ご主人様は寝る前の会話でも無理やりなこと言ってたしなぁ…アイテムも持ってかれたし…
呪殺系とかメギド系のアイテム出したり銃だけじゃなくて剣もあるとか悪魔を召喚できるとか言わなくてよかった、本っっっ当に良かった
悪魔とかうかつにも口走った時は、思わず服直す振りして下向いちゃったよ、俺
ん、何か寝言を言ってるな?
「これで最後よ!ツェルプストー」
間違いなく相手を殺す時の台詞だよな…
幸せそうな顔で不穏当な寝言を言っているこの少女はDARK-CHAOS系か?
「のろいの木馬まだ余ってたよな…世界平和のためにも使っておくか…?」
馬鹿な事言ってないで寝なおそうかとも思ったが、ひとつ思いついて外に向かう

時間は夜明け前、まだ月が二つ空に輝いている
ある意味都合がいい、COMPを起動させる
月が二つあるこの世界では仲魔たちにどんな影響があるか分からない、最悪俺自身に襲い掛かってくるかもしれない
それは俺自身の死活問題に関わるし、何より生死を共にした仲魔を殺したくない
最悪すぐさま戻せばいいだけだ

……SUMMON……
……シルフ……

COMP最大の特色
悪魔召喚という不安定、不確実な事象をプログラム上の仮想空間によって召喚できるようになるシステム
悪魔召喚に必要な召喚呪文、触媒、魔法陣、儀式を必要としない
その上儀式の形式上時間の経過が必要であっても、仮想空間ゆえに時間が経過した空間を作り上げることにより瞬時に召喚を可能とする
ただし悪魔は意識体の為「こちらの世界」でその力を十分に発揮させるには、マグネタイトを触媒として肉体を構成し実体化させる必要がある
マグネタイトの消費量のことをCP(抗体ポイント)といい、これが多い悪魔ほど巨大な力を持つ
十分なマグネタイトが無いと悪魔は自身の肉体を維持できず矮小化、最悪スライム化するのだ
また仲魔は奴隷ではない、必ず代償を要求してくる
それが魔貨と呼ばれる魔界の通貨だ
彼らには分割や後払いなど通用しない、どんなに親しくしていても決して「向こうの世界」から出てこない
召喚時に支払われる魔貨、体を構成させるマグネタイト、この二つのどちらかが欠けても悪魔を使役することはできない


121:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 22:38:46 PLMdGm/S
こちらCIC、全兵装使用自由、全兵装使用自由。
好きにやれ!

122:ゼロの悪魔召喚師
07/11/21 22:39:18 z9kxdx0T
「お呼びでしょうか?召喚師さま」
風が集まり丁度1メートル位の大きさの美しい少女の形をとる
普通の少女と違うのは、背中に4枚の羽を生やしていることと空に浮かんでいること
そして常に彼女を中心にしてそよ風が吹いていることだろう
少なくとも見た目では異常は見当たらない
「…?どうしたのですか…?」
怪訝にこちらの顔色を伺ってくる
「調子はどうだ?ここはノモスどころか魔界ですらないんだ」
そう言うとシルフは目をつぶり思案顔になっている
自身の体のことをより深く感じているらしい
「特に私には問題はありません」
こちらを安心させるように笑顔を浮かべる
その答えを聞いて安堵の息を吐く
「ただし周囲のエーテル濃度はノモスよりかなり濃いです。また月の魔力も大きいです」
「エーテル濃度?」
「マグネタイトの元、ベクトルを持たない力です」
さっぱりわからん
「消費マグネタイトが少なくなると思えばいいです。詳しいことがお知りになりたいのでしたら、魔法などに詳しい仲魔を呼び出すことをお勧めします」
「悪魔にとってすごしやすいところと言うわけか」
これで安心だな
「とりあえずこの建物周囲の把握を頼む、それとほかの人間や生き物に見つかるなよ」
「わかりました」
愛らしい微笑を浮かべたまま、風を纏い飛んでいく
それを見送りながらひとりごちる
「あいつ、あんなに速かったかな?」

とりあえず部屋に戻り洗濯物を持ってくる
そして今度はサキュバスを呼び出す、別に大人の時間というわけじゃない
腰まである艶やかな金髪、体の線のハッキリする赤いレオタード、男にとって理想と言える体、健康的な肢体、それらに劣ることのない美しい顔
そんな悩ましげな美女が投げキスと共に登場する
「私と夜を楽しみたいのですか?」
妖艶な笑みを浮かべながら話しかけるものの、手にしてる洗濯物を見てがっかりする
「はぁ~~、洗濯なのお~~まぁ魔界にいたときはメイド兼護衛でしたけどね~~」
「そういうな、機会があれば相手してもらうさ」
ため息をつきながら拗ねているサキュバスの頭をなでながら答えてやる、いい匂いがあたりに広がる
「お前はここのエーテル濃度や月の魔力の影響は受けないのか?」
「ん~~、私は召喚師と契約してるから、そんなに強い影響は受けませんよ。もともと意識体だから~~、契約を否定することは自分を否定するのと同じだし。えっとお~~魔界でも契約してれば満月でも命令を聞くでしょ~~」
なるほどな、そう考えたことは無かったけど
そうこうしていると、シルフが戻ってきた
「この建物の周囲の確認を終えました」
「洗濯するから~~水場への案内よろしくね~~」

123:ゼロの悪魔召喚師
07/11/21 22:42:30 z9kxdx0T
水場でサキュバスが洗濯をしつつ、シルフが風を飛ばして周囲に何か来ないか警戒しながら、今の状況の説明を聞いている
「そんなことがあるんですね」「信じられないわね~~」「俺も信じたくない」
俺は溜息と共に答えながら、改めて仲魔の様子を観察する
サキュバスはメイド服風の格好になっている、服もマグネタイトで構成されてるからな
仕事に応じて着替えてるのだ、流石は女性系悪魔だ
もちろん洗濯といっても手を使うわけでなく魔法で水を竜巻のようにして、そこに洗濯物を投げ込んでいる
「終わったわよ~~」「わかりました」
水竜巻から飛ばされた洗濯物は今度はシルフの作った風でグルグル回される
「どうぞ召喚師さま」
シルフの風で乾かされた洗濯物が畳まれながら手元に飛んでくる
「二人ともご苦労様、とりあえずここで使い魔しながら情報を集めようかと思うんだがお前たちはどう思う?」
「確かな情報が集まるまではそれがいいと思いますが……」
「あの娘ねぇ~~、情報を集めるなら私があの娘の中に入ったほうがいいきがするわぁ~~」
「それはまずいな、このルーンでこっちの言葉が話せるんだ。それに俺の格好はここだと目立つんだ、余計な事はしないでおこう」
「しばらくは従順に従って、帰還の手段をみつけたら即座に実行魔界に戻る。それで……」
シルフがこちらを手で制止し声を上げる
「召喚師さま、小型の竜がこちらに向かってきます」
「あら~~残念ね~~もっとおしゃべりしようとしてたのに~~」
本当に残念そうだ、ノモスと変わらない反応に安心するな
「どうなさいますか?」
二人ともこちらの指示を待つ
「二人とも戻って、召喚できる事自体知られたくは無いからな」
「はい、お気をつけて」「わかったわ~~死んじゃだめよ~~」


そんなに危険な場所だとは誰も言ってなかったんだけどな
そう思っていると竜が目の前に下りてくる
確かに竜族にしては小型だな、それともノモスのほうが巨大すぎるのかな
きゅいきゅい啼きながらあたりを見渡している、こちらに攻撃する意思はないないようだな

124:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 22:43:15 tlvV6DR/
しえn

125:ゼロの悪魔召喚師
07/11/21 22:44:20 z9kxdx0T

……TALKモード……

『風の精霊がいたと思ったけど、人間しかいないのね』
『ここには俺しかいないよ』
『何で竜の言葉が話せるのね!?』
竜が驚き、頭をこちらに向けてくる
『それはひ、み、つ、です』
笑いながら答える
『意地悪なのね!』
ばさばさと羽を動かす、魔獣たちの羽ばたきほどではないな
『君だって名前も知らない人間に秘密を教えたりしないだろう?』
『むーー』あ、むくれてる
対応の仕方が幼いな、幼生なのか?
『冗談だよ、俺の名前は流星さ』
『シルフィはシルフィードっていうのね』
『シルフィード?風の精霊と同じ名前だな』
返答が気に入ったのか全身で喜びを表現する
『そうなの!シルフィの名前お姉様がつけてくれたの!るーるーるー』
『シルフィも使い魔なのかい?』
『「も」って言うことは流星も?』
『ああ、そうだよ』
『凄いのね、人間の使い魔なんて見たことないのね』
ああ、人間だけじゃなく使い魔にまで物珍しがられるとは…
流石に泣きたくなって来たぞ
シルフィは楽しそうにこっちの様子を興味深く見ている
『おしゃべりしたらお腹減ったのねー、まだ朝ごはんまで時間が有るのにー』
『俺もだ、近くに川でもないか?あれば魚でもとるんだが』
下手したら朝飯自体がないかもしれない、俺の場合
『ある、ある!連れて行くからシルフィにもわけて、わけて』
笑いながら洗濯物をかかげ『洗濯物をご主人様の部屋においてきたらね』
シルフィは体を低くし『背中に乗ってー、飛べば直ぐなのねー』

シルフィードの背中に乗って、ルイズの部屋の窓から侵入する
洗濯物をテーブルの上に置き、また空の旅へと戻る
『流石に寒いな』
『すぐに着くのねー』
シルフィードが高度を落とす
『ここなのねー』
『寒すぎて風邪を引くから、薪になりそうな木を頼む。魚ならすぐに取っておくから』
『わかったのねー』
そういうとすばやく上空へ上がるシルフィード、こっちも魚を獲るか
マハジオストーンを取り出し、川へ投げる
電撃が川の中を流れ、大量の魚が浮かび上がる。
裸足になって川に入り魚を集めてると、後ろからドズンと重い物が高いところから落下した音がする
振り向くと枯れた古木が一本川辺に鎮座していました、その上に得意げなシルフィード
『これがシルフィの力なのねー』
『凄いな、シルフィ』
いろんな意味でおでれーた
『魚もいっぱいなのねー』
マハラギストーンで古木に火をつけ、暖を取る
その焚き火の周りには、枝で作った即席の串に魚が刺してありいい匂いを放っている
俺は魚の焼き加減を見ながら、シルフィードから「お姉様」の話を聞かされた
俺は魚を食べながら、シルフィードから「お姉様」の話を聞かされた
俺は帰りの空で、シルフィードから「お姉様」の話を聞かされた
俺は「お姉様」をちょっぴり恨んだ

126:MtL
07/11/21 22:44:51 RXGJW3d6
支援!

しつつ、投下予約しますー。

127:ゼロの悪魔召喚師
07/11/21 22:45:42 z9kxdx0T
そして寮の前で降ろしてもらい
『また、一緒にご飯食べておしゃべりするのねー』
『ああ、食べ物に困ったら頼むよ』
俺は笑顔で手を振りながら、「お姉様」をちょびっと恨んだ
シルフィードはそういうと空へと上がり、旋回をして見せてから消えていった
さて、ご主人様を起こしに行きますかね
ご主人様の部屋の前で赤毛の少女が立っている
「おや、貴女様はどちら様で?」
「そういう彼方は?」
「申し遅れました。私はルイズ様にお使えする使い魔の流星と申します。今後ともよろしく」
「私はキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーよ、あっはっはっは、ほんとに人間なのね」
「有名になっているようですね」
あんまり目立ちたくないんだがな
「そりゃ、ゼロのルイズだもの」
「ゼロのルイズ?」
とりあえず、ご主人が有名な人間という事と俺が目立っているという事だけはわかった
「まぁ、知りたいなら本人から聞きなさいね」
「知りたい事はほかにあるんですが、よろしいでしょうか?」
「私と付き合いたいのならお断りよ。平民の使い魔に興味はないわ」
自信ありげに笑ってるけど、サキュバスやラミアに比べたらまだまだだよ、おじょうちゃん
「そういうことではなく、何故、ご主人様の部屋の前に?」
「そ、それは……」
なんだかんだ言いつつ、ご主人を気にかけているということか……
俺は笑いながらおじょうちゃんに
「これからもご主人様をよろしくお願いします」
「私なりのやり方でよければね」
ため息をつきながら答えるおじょうちゃん
そのとき部屋の中から叫び声とドタバタという騒音が聞こえてきた
今度は俺がため息をつき、おじょうちゃんは笑いながら
「「がんばれ、使い魔生活」」
同じ言葉を放っていた

128:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 22:45:52 38MOBhfh
支援

129:マイケル・J・ホックス
07/11/21 22:45:57 QUdxqEEJ
ゼロのマーチー

マーチーはギーシュと決闘をする事になり、
決闘当日。

「どどど、どうしようルイズ」
「しっかりしなさいよ」

「おい、使い魔はいるか?時間だぜ?」
マリコルヌが呼びに来たが、マーチーはあわてているので
ストーブに躓いてしまう。

そしてストーブの蓋を見て、何かをひらめくマーチー。
(これならいけるかもしれない)

広場には公開死刑だと期待して大勢の貴族の子弟が集まっていたが、マーチーは遅れてやってくる。

「やぁ、ギーシュやっぱりやめないか?」
「怖いのか?腰抜けのマーチー」
「腰抜け」
「ひゅーひゅー」
ギーシュとその金魚の糞が挑発するが、マーチーはいたってクールである。

「そんな気は無いね!」

ボゴン
マーチーは青銅人形に殴られ数メートル飛ばされた
「ギーシュ卑怯だぞ!」
さすがにワルキューレで不意打ちをしたのを卑怯に思ったのか一人の観客が非難するが、ギーシュは意に介さない。

130:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 22:46:05 a2M8D0T5
今憑いているガーディアンや車椅子の紳士が気になる支援

131:ゼロの悪魔召喚師
07/11/21 22:48:06 z9kxdx0T
CIC
残弾ゼロ!支援機に感謝!
RTB!

132:MtL
07/11/21 22:52:35 RXGJW3d6
ええと……>>129さんが投下を始めてしまったようなのですが、どうすれば良いんですかね…?

133:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 22:53:07 QUdxqEEJ
ゼロのマーチー

「おやおや、もうKOかい?」
ニヤニヤしながら杖を片手にマーチーに近づき、体をひっくり返すのに杖でつつくギーシュ。
もはや貴族というよりDQNである

むくり
「!」
バコン
マーチーの必殺フックがテンプルにヒットする
「うぐぅ、この!」
ギーシュが力を込めてマーチーを殴るが、ゴキリといやな音がして手首が曲がる。

「あ、あいつストーブの蓋をよろいにしてるぜ!」
「な、なんてかしこさだ!」

「こ、この!」
ひるむギーシュをストーブの蓋で殴り飛ばすと、ちょうどベルダンデの糞の山に顔から突っ込む。

「こら!お前たち何勝手にケンカしているんだ!」
オスマンが鏡で見ていたのか怒ってすっ飛んできて、
結局ギーシュの負けということで勝負はついた。

「ま、マーチー!燃料が出来上がったぞ!ほら見てくれ!」
コルベールが何やら光る液体の入ったビンを嬉しそうに見せるが、マーチーは青ざめ動悸が激しくなるのであった。

次の日、マーチーはデロリアンに乗り込むと元の世界へと
出発するのであった。
 To Be Continue...

134:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 22:53:41 nNUc5KAt
投下予告もなしに投下するやつが悪い。
MTLさんカモン。

135:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 22:54:23 9PnY0omp
>>132
放っといていいと思うよ。
一方的なルール無視をやらかしてるのは>>129なんだし。

136:ゼロの悪魔召喚師
07/11/21 22:54:24 z9kxdx0T
こっちのSSは終わりですので、どぞ&支援

137:MtL
07/11/21 22:54:49 RXGJW3d6
では、11時から投下させて頂きます。

138:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 22:56:25 3HuABH7b
マーチーじゃなくてマーティじゃなかったっけ?

139:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 22:57:43 QUdxqEEJ
ごめんね
ルールとかよく判らなかった
今は反省している

140:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 22:59:22 louO71c9
>>139
反省しなくて良いからカエレ

141:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 22:59:39 ViiOJwq6
>>139
ははは、冗談は休み休みに言って下さいよ
とりあえず半年とは言わんから半月ROMってルール学ぼうな?


そして支援

142:MtL
07/11/21 23:00:21 RXGJW3d6
マジシャン ザ ルイズ (24)女王の召集

行き交う人の群れ、群れ、群れ。群集と言う言葉こそが相応しい光景。
賑わう王都。
それもそのはず、今は国を挙げてのお祭り騒ぎの真っ最中なのである。

数日前の夜のことだ。王都の住民達はすべからく皆、あの月光に照らされた禍々しい浮遊大陸の異様を目撃した。
南方に軍が出払って守りが薄くなったところに、図ったかのようなアルビオン軍の来襲。
王都中に動揺が走り、一時はパニック直前にまで緊張感が高まったほどであった。
しかしそれは、始まりと同様に唐突な終焉を迎えた。
『始祖の光』と呼ばれている謎の光の発現で。
王都中の民達は空を呆然と見上げ、声を失った。
そうしてその光が収まり、夜の闇が再び世界を支配したときには浮遊大陸アルビオンの姿はまるで光に溶かされた霧のように掻き消えていたのだった。

夢まぼろしのような一夜が明けた翌日、国中に王宮からの触れが出された。
そこには始祖ブリミルの加護によりトリステイン王国は神聖アルビオン共和国を退けることに成功した事実と、始祖に指名されたアンリエッタ姫が女王として即位するということが宣言されていた。
また、同時にその触れには翌日、女王の戴冠式と、戦勝パレードが行われることが示されていた。
急な通達に急な祝祭であったが、城下の国民達は王宮の目論見通りに、アルビオンのことなど忘れて喜びに沸いた。

そうして開催されているお祭り騒ぎこそ、今ギーシュとモンモランシーの前で行われている、これまでに無い規模の大祝祭なのであった。
更に、明日の夜には宮廷での舞踏会も開かれることになっているらしい。
まさに上へ下への大騒ぎとはこのことである。



「それにしても、良かったのかしら?」
「ん?何がだい、モンモランシー」
色とりどりに飾られた出店、商人らしき姿の一団が大声を出して呼び込みを行っている。
街を歩く人々は老若男女、その姿は貧者、富豪、平民、貴族と様々だ。
ある者は着飾り、ある者は身分相応の格好をし、またあるものは客寄せの仮装をしている。
そんな人ごみの海を歩く二人の手には小さな旗が握られていた。
旗には百合をかたどったトリステイン王家の紋章が描かれている。
二人はパレードで更新しているアンリエッタを一目見ようと、大通りを目指して歩いているところだった。
同じことを考えているのか、周囲見渡せば同じように旗を持って歩いている者もちらほら見受けられる。
「ルイズのことよ。あのまま置いてきちゃって良かったのかしら」
「うーん。でもほら、積もる話もあるだろうからね。何より家族水入らず二人で話すのを邪魔しちゃ悪いじゃないか」
決してルイズの姉、エレオノールが怖かったので逃げだしたなどとは、口が裂けても言えない。
「そうかしら?」
「そうだよ。帰りにでも何かお土産を買っていってあげれば大丈夫さ」

ただでさえ騒がしく雑多であった人ごみが、ますますその度合いを増してきた。
パレードに近づいている証拠である。
そんな中を歩を進める二人の前を、大柄な男が横切ろうとした。
ギーシュは慌てて足を止めたが、モンモランシーはそのことに気づかずぶつかってしまった。
「きゃっ!」
当然の帰結として弾き飛ばされるモンモランシー。華奢な体がバランスを崩して、白い石畳に尻餅をついた。
「あっ!こら!待ちたまえっ!」
ギーシュが男を呼び止めようと声を上げたが男は立ち止まらず、そのうちその後ろ姿も人の海に消えてしまった。
「いたた……」
「全く酷い奴だ。ほらモンモランシー、掴まって」
転んだモンモランシーに差し伸べられるギーシュの手。
微笑みかけた彼の笑顔が眩しかった。

143:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 23:01:44 nNUc5KAt
支援!

144:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 23:02:15 IkVdZ++v
すられたか?支援

145:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 23:02:30 jr+WuOdA
支援

146:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 23:02:46 VMOuCSjd
悪魔召喚師の人乙~ 顔に出さずに腹の底でいろいろ黒い事考える主人公がいい感じw

そしてMtLの人支援しまっせ~

147:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 23:03:10 bLjbh/XT
支援しようではないか。

148:MtL
07/11/21 23:03:26 RXGJW3d6
ギーシュはモンモランシーの手を優しく握ると、今度は力強く引き起した。
彼女は意外な力強さに驚きを覚えながら立ち上がり、その姿を見て「まるで物語の中の王子様とお姫様みたいだな」と思った。
そしてギーシュの顔を思わずじっと見入ってしまうモンモランシー。

しかしそれも一瞬のこと、すぐさま我に返った。
握ったままだった手を慌てて離し、耳まで真っ赤にさせながら手をパタパタと動かして髪や服を整えた。
自分でも明らかにおかしい挙動をしているのはわかっているのだが、ギーシュのその笑顔や仕草は、思わぬ破壊力で心の城壁を打ち抜いてしまいそうだったのだ。
ありていに言えば―ちょっとときめいてしまったのだ。

(ば、ばばばば!馬鹿じゃないの!?相手はあのギーシュよっ!?ただの幼馴染よ!?)
馬鹿な考えと切って捨てようとする刹那、唐突に思い出されるウェザーライトⅡの艦橋。男らしく舵を握ったギーシュの引き締まった横顔。
そしてその後、自分は顔を近づけギーシュの唇にキ
(あ、あああああああああああああぁぁぁぁ!!??)
危うく掘り起こしかけた記憶を大慌てで埋める。
両手で顔を覆い、そのことは考えないようにした。
(確かに、盛り上がっちゃってそういう気持ちになったこともあったけど!ノーカウント!違うわ、あれは気の迷いよ!)
伏せていた顔を上げて、ちらりとギーシュを見る。
優しく微笑むギーシュ。その姿にモンモランシーの心臓がとくんっ、と鳴った。
(ぁぁぁああああ!?私ってば!私ってば!?)
もしも目の前にベットがあったら全力で潜り込んで手足を振り回していたに違いなかった。

真っ赤になったり真っ青になったり、そしてまた真っ赤になったりするモンモランシーを暖かい目で見守るギーシュ。
まあ、彼にとっては転んだ拍子にちらりと見えた、彼女の可愛らしい下着のことを思い出してニヤニヤしていただけだったのだが。




一方その頃、コルベールはルイズの部屋へと向かっていた。
弱った体のまま、たいした休みも取らずに作業に没頭していたことで、その目元にははっきりとくまができていた。
普段ならしっかりしている足取りもどこかおぼつかない。
そんな状態でもコルベールは生徒の顔を一目見ようと足を動かしているのだった。
愛する生徒の元気な顔を見るまでは一息つけない、それがこの二十年続けてきた『教師』としてのコルベールの生き方なのだ。
コルベールはいつの間にやら目的の部屋を通り過ぎていたことに気づいて慌てて引き返し、ルイズの部屋の前に立った。
部屋の中からは二人の女性の声が聞こえた。
一人は何を言っているのか聞き取れないが、もう一人は「あいだっ!」とか「やめて姉さまっ!」と連呼しているようであった。
「……ふむ」
賑やかな雰囲気に立ち入ることに一瞬の躊躇いを覚えたものの、コルベールはおもむろにドアを三回ノックした。



「あいだだっ!だだだっ!」
一度は開放されたものの、また地雷を踏んだルイズがエレオノールに頬を抓られていると、来客を伝えるコンコンコンというノック音が響いた。
「ほら、ちびルイズ。お客様よ、ヴァリエール家の子女らしく、礼儀正しくお迎えなさい」
ルイズはエレオノールの方を恨みがましい目で見た後、扉の外にいる人物に来訪を歓迎する言葉を伝えた。

コルベールが入室すると、大貴族が使うほど豪華でもないものの、小奇麗に趣味良く整えられた部屋に二人の女性がいた。
その片方、ベットから身を起こしている桃色のブロンドの少女の姿を視界に認めると、コルベールは顔を綻ばせた。
「やあ、ミス・ヴァリエール。加減はどうかな?」


149:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 23:04:07 9PnY0omp
支援

150:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 23:04:17 n8NKqqPg
sien支援

151:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 23:05:01 80qWan+O
もひとつ支援

152:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 23:05:28 IkVdZ++v
《疲労困憊/Exhaustion》支援

153:MtL
07/11/21 23:06:06 RXGJW3d6
「ミスタ・コルベール!」
その姿を見て興奮するルイズを、エレオノールが肩を掴んで抑えた。
「ミスタ・ウルザから無事とは聞いていましたが、お元気……」
そうですね、と続けようとしたルイズの言葉が詰まる。
目の下にはくま、顔色は土気色、心持ち立っている姿もふらふらしているように見える。
その姿がどう見ても元気そう、とは言いがたかったのだ。
「ご、ご無事で何よりです」
「ははは、今まで作業をしていてね。この後はゆっくりと休ませてもらおうと思っているよ」
休めるかは分からないが、とは続けなかった。


「ごきげんよう、コルベール先生」
「やあ、ミス・ヴァリエール。君もお変わりない様子で」
胸が?という言葉が脳裏をよぎるルイズ。
「ええ、コルベール先生は……大分変わられましたね」
頭が?ととっさに連想してしまうルイズ。
「エレオノール姉さま。姉さまはミスタ・コルベールと顔見知りでしたの?」
「ええ、そうよ。こうして顔を合わせるのは久しぶりですけどね」
「いやいや、昔から変わらぬ美しさですぞ」
にこやかな談笑と思いきや、エレオノールは挨拶もそこそこに、鋭く話の核心を突いた。
「それで、コルベール先生。うちの不肖の妹がどうしてあのフネに乗っていたのか、ご説明していただけませんか?」


虚無の使い魔こと、プレインズ・ウォーカーウルザが部屋に入ってきたのは、コルベールがエレオノールの執拗な追求に音を上げかけたそのときだった。
「ああ、ミスタ・ウルザ!良いところに来て下さいました」
先客を気にも留めず、ベッドの横に置かれた椅子に座ろうとしたウルザであったが、コルベールの懇願にも似た声に動きを止めた。
「何ごとかな、ミスタ・コルベール」
「いえ、大した用件ではないのですが……」
その言葉を聞いたエレオノールの目が釣り上がる。
「大したことでは無いとはどういうことですか。うちのルイズが戦争に参加することが大したことが無いと、先生は仰りたいのですか?」
「ああ、いえ、そう言うことでは無く……」
エレオノールに問い詰められるコルベール。先ほどからずっとこの調子である。
さしものコルベールとしても、そろそろ誰かに助け舟を出してもらいたいと思っていた頃合だった。
「ふむ……そちらのお嬢さんは、ミス・ルイズのご家族といったところかな?」
そういったウルザは少し顔を動かして、色眼鏡越しにエレオノールを見やった。
一方、ノックもせずにいきなり入ってきた白髪白髭色眼鏡に見慣れないローブを羽織ったこの老メイジに、エレオノールは困惑の表情を浮かべる。
「ええ。私はこの子の姉でヴァリエール家の長女、エレオノール・ド・ラ・ヴァリエールよ。そういうあなたはどこのどなた様かしら?見たところメイジのようですけれど……」
言葉だけは丁寧に、眼鏡越しの視線は不審者を見るような厳しい目つきでエレオノールが言った。
「私の名はウルザ。こことは陸続きではない『遠い地』より来たる者だ。ミス・ルイズに使い魔として召喚されここにいる」
「……使い魔?」
呆れたような、どこか諦めた表情でエレオノールはベットの上のルイズを見下ろした。
「ルイズ、本当なの?」
「ええっと……その、本当です」
おずおずと答えるルイズ。それを聞いたエレオノールは疲れたように、自分のこめかみをぐりぐりと押して溜息をついた。
「魔法からっきしのあなたが召喚の儀に成功したと言うのは喜ばしい知らせだけど……人間の、しかもメイジの方を召喚するというのは、流石ちびルイズ、一味も二味も違うわね」
「うう……」
ここ数ヶ月、人間的にある程度の成長を遂げているルイズであったが、この姉と母親にだけは頭が上がる気がしなかった。
「とんだご無礼を、わたくしの方からもお詫びいたしますわ。……ええと、ミスタ・ウルザとお呼びすればよろしいのかしら」
「それで結構だ。お嬢さんは……ミス・ヴァリエールでよろしいのかな?」
『お嬢さん』と呼ばれたエレオノール、ルイズはその顔色を恐る恐る伺った。
しかし、激怒しているかに思われたエレオノールは恥ずかしそうにうっすら頬を赤らめているだけだった。
「それではこの子との区別がつきませんわ。エレオノールで結構です」

154:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 23:07:16 nNUc5KAt
しぇん

155:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 23:07:23 IkVdZ++v
まさかこのエレ姉さまはオジコンか支援

156:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 23:07:38 3KmO8giC
支援

>>139
本当に反省してるならもう二度と投下するな

157:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 23:08:31 BD/1lgFx
支援

158:MtL
07/11/21 23:09:16 RXGJW3d6
「ふむ……」
言われたウルザが手を顎に当てて、髭を撫でる。
エレオノールはウルザが手を動かしているその口元から胸にかけ手をじっと見ていた。
「ではミス・エレオノールとお呼びしよう。よろしいかな?」
「ええ。私はそれで構いませんわ」
ルイズとしては姉の様子がどこかおかしい様に感じられたのだが、口出しするのははばかられた。

「それで、ミス・エレオノール。用件とは何ですかな?」
ウルザの質問に、素早くコルベールが声をあげた。
「彼女はミス・ルイズが先の戦いの場に居合わせたことの説明を求めているのです。
 ミス・エレオノール、こちらのミスタ・ウルザは先の戦いにも参加した『例の船』の関係者です」
すかさず要点だけを伝え、自分の役目は終わったとルイズの横、ウルザが立っているのと逆の方へと移動するコルベール。
彼もルイズと同様にこのアカデミーの鬼才には苦手意識があるようだった。
「ミスタ・コルベールが仰った通り、私はここにこの子がどうして戦場にいたのかを問い質しに来たのですわ。
 もしも何かの事故、手違いなどであのフネに乗ったということでしたら、わたくしはこの子をすぐに屋敷にまで連れ帰るよう、父に言いつけられております」
「姉さまっ!?」
それは困る。
自分にどれだけの時間が残されているか分からない。
それをル彼のため、この世界の為に使おうと決めたのだ。
屋敷の中で閉じ込められている余裕は、自分には無いのだ。

そういったルイズの葛藤や決意を無視して、エレオノールは言い放つ。
「お黙りなさい。大体、魔法も使えないあなたが戦場で一体何の役に立つと言うの」
うっ、と言葉に詰まるルイズ。

ルイズは今だ誰にも自分が虚無の系統に目覚めたことを他人に明かしたこと無いのだ。
コルベールやオスマンは、早い段階からウルザの口からそのことが説明されていた為、ルイズ自身が誰かに語る機会は無かったのである。
ゼロのルイズと呼ばれ馬鹿にされ続けてきたルイズだったが、自身が虚無の系統であることを知って以来、以前ほど風評が気になることは無くなっていた。
また、それ以上に自分が虚無の系統であることを吹聴してまわることに強い抵抗を感じていた。
それは『虚無』という選ばれた者の力に、潜在的に恐怖を感じていたかもしれなかった。

暫く顎鬚を撫でていたウルザが手を止めて、口を開いた。
「それは少々困る。彼女は今や『ウェザーライト計画』の要とも言える存在、ミス・ルイズ抜きでこのトリステインがこの先の戦いを続けることは難しいだろう」
いきなり突拍子も無いことを言われて、鳩が豆鉄砲を食らったかのような顔を見せるエレオノール。
ルイズは姉がそんな顔をするのをいつ振りに見ただろうかと思案したが、記憶に霞がかかって思い出すことはできなかった。
妹の視線に気づき、咳払いを一つ。これで調子を整えたエレオノールは、勢い良くウルザに食って掛かった。
「この子が要?魔法も使えない子がどうして王宮の計画らしい『ウェザーライト計画』とやらの要になると言うんですの?
 はっきりとここで説明をしてください」
説明をするまではてこでも動かないと、全身から漂わせる気配が語っていた。

「ミス・ルイズ、君は君の口から自分の魔法について説明するべきだ」
「……え?」
てっきりウルザが説明するとばかり思っていたルイズが、思わず声を漏らす。
「ちびルイズ。あなたもしかして自分の系統に目覚めたの?」
エレオノールにそう問われてルイズはすぐさま答えることができない。
口にして、何かが変わってしまうのが怖かった。
だが、それ以上に家族である姉に、嘘をつくのが嫌だった。

少しだけ躊躇った後、ルイズはその口からはっきりとエレオノールに自分が何に目覚めたのかを伝える覚悟を決めた。

「姉さま。私の系統は……」

息を吸い込み、唾を飲み込んだ。
「虚無です」

159:MtL
07/11/21 23:11:32 RXGJW3d6
それを聞いたエレオノールが、何かの冗談だろうとコルベールとウルザの顔を交互に巡らせた。
そして、二人の真剣な表情に冗談ではないらしいと読み取ると、エレオノールは本日二度目の唖然とした顔を見せた。
「虚無?虚無ですって?そんなもの伝説の中にあるだけじゃない。アカデミーでだって虚無の系統の実在は報告されていないわ!」
声を荒げるエレオノール。しかし、ルイズの表情は真剣そのもので、自分が見たことも無いような『一人前』の顔をしていた。
いつも泣いていたルイズ、自分とカトレアの後ろばかりを歩いていたルイズ。
そのルイズがこんな顔をするようになっていたことに、エレオノールは姉として大きな驚きを感じた。


そのとき、またドアがコンコンとノックされた。
それを聞いて話は終わったとばかりに椅子に腰掛けるウルザ、コルベールは後のことが気になりながらも部屋を退出する旨をルイズに伝える。
ルイズはエレオノールのことが気になりながらも、ドアの外に待つ来客に声をかけて、入ってくるように伝えた。
そうして、ガチャリと音を立てて入ってきたのは歳若い魔法衛視隊の制服を着た騎士だった。
ルイズにとって魔法衛視隊の知り合いと言えば、元グリフォン隊の隊長であった彼のほかに無い。
見覚えの無い顔にきょとんとした顔をするルイズに、騎士は背筋を伸ばし、深く敬礼をした。
「ミス・ルイズ、ミスタ・ウルザ。お二方に手紙を渡すように預かってまいりました」
そういいながら騎士はきびきびとした動作で巻物を差し出す。
それを受け取ったルイズは、中を見て差出人を確認しようとしたが、そこで手が止まる。

そこにある封蝋に押された花押は、王家の紋章。
「!? これってまさか!?」
ルイズが上擦った声を上げるが、青年はきびきびとした声はそのままに、事務的な口調で返答した。
「自分は何も仰せつかっておりません。差出人の確認は中を見れば分かるそうであります」
直立不動の姿勢を崩さない青年。何かを言い含められているのか、その顔は緊張して目線は何も無い宙のただ一点を見ているばかりだった。
「……分かったわ」


青年が退室した後も、無言のまま手紙と封蝋の印章を見つめ続けるルイズ。
退出するつもりだったコルベールも、先ほどまで取り乱していたエレオノールもまた、無言。
ウルザはそれが何であるのか分かっているのか、興味なさそうに備え付けの机の引き出しから本を取り出して、何かを書き込み始めた。

ルイズは恐る恐るといった手つきで手紙を開封した。
手紙の中身、アンリエッタの筆跡で書かれていたそれは、王宮にて明日開かれる予定である軍議への出頭要請だった。



                            国を守る為、戦ってもらわねばなりません。
                                 ――トリステインの女王

160:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 23:11:57 4nNWB2Sj
とりあえずギーシュは俺と視界だけでいいから交換しろ支援

161:MtL
07/11/21 23:13:31 RXGJW3d6
以上で投下終了です。

支援ありがとうございました!

162:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 23:13:47 80qWan+O
>>139
ルールを守るのは人として当然のこと
それが出来ないなら作り手以前に人として失格だ
といっちょまえにほざいてみる

支援

163:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 23:16:40 BD/1lgFx
投下予約。えっと、139さんはもう終わってる……んですよね?
大丈夫そうでしたら25分から投下しようと思います

164:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 23:17:44 IkVdZ++v
乙。ルイズがここで家族にバラせる展開は珍しいな。
だが少ない余命とか戦ってもらわねばなりませんとか待ち受けてる物が悲愴すぎる……。

そして>>163氏を支援かな?

165:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 23:18:06 4nNWB2Sj
GJ!
スゲー!
フレーバーテキストが話にガッチリ噛み合ってる
いいなあ
こういうの書けるようになりたいなあと一度ももの書いた事の無い人間が言ってみる

166:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 23:19:53 9PnY0omp
乙。
ルイズの連想力は異常
つーか口に出してたらどれだけ(主にエレオノールに)酷い目にあわされていた事かw

167:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 23:25:43 80qWan+O
>>163
支援させていただく

168:名無しさん@お腹いっぱい。
07/11/21 23:26:39 BD/1lgFx
 いつもより空が高い日だった。
 トリステイン魔法学院の生徒たち、とりわけ今年度から二年生となる生徒たちは朗らか
だ。入学したての一年生だったころから、上級生の連れ歩く多種多様な使い魔への憧れを
抱いて一年間過ごしてきた。大多数の生徒たちにとって、その日の朝食がとても美味だっ
たことは想像に難くない。
 誰も彼もが頬を赤く染めて、大仰な身振り手振りで自分が召喚することになるだろう使
い魔の姿を語っていた。皆一様に能天気な顔をしている。
 喧しく大広場に集まる生徒たちを窺って、オスマンは息を吐いた。彼ら彼女らの祖父や
祖母、曽祖父や曾祖母がここで学んでいた頃が否応なく思い出される。己が家名に恥じぬ
使い魔を召喚せねばと強く意気込む者、もしもこの一生ものの魔法に失敗してしまったら
と必死に復習する者。昔はそんな生徒が多かった。オスマンはそんな若者たちを、こっそ
りと学院長室から見守るのが好きだった。
 今どきそんな風に、気張る者など居ない。魔法を使える貴族は、平民とは違って楽をす
るのだ。オスマンもそうは思うが、楽をするための魔法に怠慢を持ち込むのは違うと考え
る。それから余談だが、今どき、という言葉を彼はあまり好いてはいなかった。
 自分の若い頃は、誰も彼もが魔法の研鑽に必死だったというのに。オスマンは自分が抱
えた学院の現状を恥ずかしく思った。最近生まれたばかりのこの国の王女様や、その少し
前に生まれたばかりの王妃様なんぞには、この体たらくを見られても一向に構いやしない。
だがもしも、彼なりに信奉する魔法そのものや、その体現である伝説のブリミルを前にし
たら、恥ずかしくて縮こまってしまうかもしれない。
 今のトリステイン魔法学院は、魔法学院として、あまり好ましくはない。
 オスマンはまた息を、今度は露骨な溜息を吐くと、広場の隅で必死に口を動かして、何
度も呪文の復習をする少女に目を動かした。
 桃色の髪が快晴に良く映える少女だった。トリステインの大家、ヴァリエール公爵家の
三女で、ルイズ・フランソワーズという。オスマンはその少女のことを非常によく知って
いて、彼女は学院始まって以来の落ちこぼれだ。
 他の生徒たちの気楽さの一部は、彼女に因るのかもしれない。
 王家に最も近いと言われるヴァリエール公爵の三女で、自分たちとは比べ物にならない
程に魔法の才がない女。ルイズはまさにそれだった。机を共にする誰もが、魔法への慢心
を抱いてしまっても無理はないのだろうか。
 願わくば、結ぶことなくとも、決して今日の日まで研鑽を欠かす事のなかったひたむき
な彼女に素晴らしい使い魔を。
 オスマンは軽く杖を振ると、遠見の鏡を閉じた。広場を映していた鏡面が彼の顔を映す
のを確認し杖を置く。
 そして、広い椅子に深く腰掛け、ゆっくりと背もたれに寄りかかった。彼の皺くちゃの
瞼の裏には、使い魔のねずみが見ている沢山の生徒たちと、今年の召喚の儀を監督する教
師の姿が映っていた。
 
 宴はまろやか・始めに
 「君と鬼の居ぬ間に」
 
 
「あんたってば本当に、見栄っ張りでどうしようもない娘」
 使い魔召喚の儀当日の朝だった。ルイズは顔を洗うよりも先に鏡と向き合って呟いた。
 彼女の毎日は、平坦な毎日だ。魔法学院には沢山の行事があったし、そこに集まった沢
山の貴族の子女たちは皆個性豊かだった。ただ、一年前からルイズの魔法は変わらない。
 感激屋の多い彼らの中に取り残されて、ルイズの感性はとてもフラットに纏まっていた。
尖ってみせることもあったし、隠れて枕を濡らすこともあった。だが、どれも些事だ。
 憤慨と、嘆きを彼女の魔法が代言する。ルイズは唇を噛む。今日の日の意気込みは、諦
念から体をベッドの預けてしまわないための知恵だった。召喚の儀を越えれば何かが変わ
るのか。魔法が成功しなければ何も変わるまい。
「今日もきっと失敗する。明日は昨日より惨めな私が居る。明後日の辛さは明日と変わら
ないかもしれないけれど。
 でも、ちょっと、やだなぁ」
 二年生になっても、良いことはきっと来ないだろう。三年生になったらもっと辛くなる
かもしれない。卒業したらどうだろうか。やはり辛いのだろうか。魔法が使えなければ、
いつまでたっても変わらないのだろうか。
 ルイズの心は諦めを知っている。それが一瞬の油断で、自分の広いとはいえない心の殆
どを占めてしまうことも。きっと、それは仕方のないことなんだろう。
 生まれてから僅か十七年だが、一生この気持ちと付き合って生きていくことを覚悟して


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