アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ4at ANICHARA
アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ4 - 暇つぶし2ch255:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/22 18:15:43 p5HigKjS
「ブルァァァァ!!ブルァァァァ!!ベリーメロン!!」(ベリーメロン!!)

256:願望 ◆LXe12sNRSs
07/10/22 20:07:57 budJHMvQ
 私にとって、日常は退屈なものであり、忙しいものでもあり、そして当たり前のものだった。
 小鳥の囀り出す時刻に目覚め、身支度をし、朝食を取り、家を出て、妹や友達と学校に向かう。
 陵桜学園高等部三年生の私にとって、このローテーションは毎日のことだった。

「あ、おはようお姉ちゃん」

 ―ん。おはようつかさ。

 この日も何も変わらない。双子の妹のつかさと家を出て、途中つかさと同じクラスのこなたと合流して、登校する。
 こんな当たり前の一日が、毎日続くんだろうなぁ……などとは思わなかった。登校なんて、学生をやめるまでの限定的な日課だ。
 でも少なくとも、進学か就職が決まり、卒業式で社会へと送り出されるその日までは……こんな呑気な日々が続くんだろうと、確信していた。
 今日だって、何事もなく登校を終えた後は、至って普通の学園生活だ。
 高校三年生ともなれば、受験のムードで授業もいっそう厳しいものになったりするものだが、私の周りはそうでもない。
 チャイムで区切られる授業を四、五個こなし、昼食を取るための休み時間が訪れる。

 ―さて、と。

 私は椅子から腰を持ち上げ、その足で自分のクラスを退室する。
 出席を取るにも、授業を受けるにも、学園生活の大半は、このC組で消化している。
 だけど、お昼だけは別だ。私は昼食を自分のクラスで取ることはしない。
 いや、何も私がクラスから孤立しているというわけではなく、ただ一緒にお昼を食べるに相応しい友達が、別のクラスにいるというだけの理由だ。
 向かった先は、妹のつかさや、親友のこなたやみゆきがいるB組。お隣の教室だ。
 私を下の名前で呼んでくれる友達がいる場所。遠慮や配慮も関係なく、本音で言い合える友達がいる場所。それがこのB組だ。
 高校に入学してからの三度の機会、私はただ一人、必ずみんなのいるクラスとは別のクラスに分けられた。
 恐らく親族関係にあるつかさと同じクラスにするのはまずいとかそういう理由なのだろうが、こなたやみゆきともいつも離れ離れだ。
 先生に嫌われているなんて邪推したこともあったっけ。私はいつもいつも、群れから突き放されたうさざの気持ちでいた。
 自分の在籍するクラスから離れ、仲のいい友達のいるクラスに訪れ、談笑しながらお昼を食べるのだ。
 さすがに三年もこれを続ければ慣れたものだが、クラスを出て、また帰ってくるときの気分は、正直微妙な感じだ。
 よく、こなたはこんな私の様子を見て寂しがりやと言うけれど、その通りだ。本人の前では肯定しないが。
 誰だって、一番居心地のいい空間にいたいものだ。これはたぶん、人間の習性なんだろうと思う。

 ―おーっす……って、あれ?

 いつものように何気ない顔でB組の門を潜るが、私の調子のいい挨拶に返事をする声はなかった。
 それどころか、つかさやこなたやみゆきの姿も見当たらない。それに、なんだか空気がいつもと違う。
 張り詰めているというか、ピリピリしているというか、お昼時というより期末テスト直前のような印象が漂っている。

「―我々は今こそツンデレの真の意味を回復し、この堕落した言語文化に警鐘を鳴らさなければならないのです!」

 教室のを隅を見やると、なにやら数人の生徒が群がり、その中で誰かが叫んでいる。立てよ国民!、とか。
 この声は、えーとたしか……こなたのクラスの、あの男子……谷口? いや違う……まあ、どうでもいいか。
 とはいえ、この雰囲気はただごとではない。私は群集の中を掻い潜り、騒ぎの根源を突き止めようと歩み寄る。
 その中に、私の妹はいた。

 ―つかさ!?

 同級生数人に囲まれ、シャーペンやら消しゴムやらを投げ付けられ、堪えるように縮こまっている小さな影。
 私と同じライトパープルの髪をリボンで止めた子供らしい容姿は、間違いなく妹のつかさのものだった。

 ―ちょ、ちょっと! 何やってんのよアンタたち! やめなさい、やめなさいってば!

 私はつかさを囲っている群集を手で散らし、つかさを包囲から救い出す。
 つかさの髪は埃で汚れ、顔には投げられた物がぶつかったのか、擦り傷が無数にできていた。
 ひどい。私は体感したことのないような怒りに胸を焦がされ、周囲の奴らをキッと睨み付けた。

257:願望 ◆LXe12sNRSs
07/10/22 20:09:10 budJHMvQ
 ―行こう、つかさ。

 無言のままつかさを見つめる気味の悪い連中を撥ね退け、私はつかさをつれてB組の教室を退散した。
 知らなかった。つかさがクラスでいじめられてたなんて……だいたい、こなたやみゆきはどこに行ったのよ。
 あの二人がいたら、つかさもあんなことには……あとで黒井先生にも報告しなくちゃ。

「うぅ、ありがとうお姉ちゃん」

 ―気にしなくていいから。とりあえず、今日のお昼は私のクラスで過ごしましょう。

 私のクラスメイトたちなら、つかさをあんな風に虐げたりはしない。
 とりあえず、つかさを心休まる場所に避難させなきゃ。

「あれ、どうしたの柊ちゃん? 妹さんも一緒?」

 ―あ、峰岸! ちょっとつかさ匿ってて。

 私は自分のクラスに戻ると、クラス内では割と仲がいい峰岸あやのに一旦つかさを預けた。
 峰岸はその柔らかな物腰からも分かるように、誰にでも優しい良識人であり、その上風紀委員だ。
 つかさとも面識があるし、悪いようにはしないだろう。私はその間に、先生にこのことを報告する。
 まさか、あんなドラマの世界で見るようなハードないじめが、隣のクラスで、しかも妹の身に降りかかっているとは思いもよらなかった。
 それだけに私が受けた衝撃は相当なものだったが、いつまでも受け身に回ってはいられない。
 つかさを安心させるために、この問題と真っ向から対立し、打破しなければ。
 だって私は、つかさのお姉ちゃんなんだから。つかさの一番の味方なんだから!

 ……なんて息巻いたけど、私一人でどうこうできる問題でもなく、頼りにしたのは発言力のある教師たちだ。
 しかもその教師は、私の決意を裏切るかのように、職員室から忽然と姿を消していた。
 視聴覚室、音楽室、多目的室、コンピュータ室、校長室まで回ってみるが、教師らしい人物がまったく見かけられない。
 そんな馬鹿な。私は思いつつも、得体の知れぬ不安に駆られ、一度C組に戻ることにした。
 おかしい。いくらなんでも、教師たちが揃ってに学校からいなくなるなんて。
 いや、教師だけではない。こうやって教室へ向かうため廊下や階段を廻っていくが、どういうわけか誰とも擦れ違わない。
 途中、扉の開いた下級生の教室を覗いてみるが、もぬけの殻だった。
 なに? みんな食堂にでも行ってるの? それとも臨時集会の放送でもあった?
 私は訳が分からないまま、3年C組に帰還した。中には、見慣れたクラスメイトが数人で輪を作っている。
 よかった、ここはそのままだ。他の生徒たちはどこに消えたのかと心配したが、とりあえず……あれ?
 私はクラス全体を見回して、ある疑問を抱く。
 お昼時だというのに、誰一人として、机に向かってお弁当を広げていない。
 それどころか、隣のB組とまるで同じように、数人で群がり誰かを囲っている光景が確認できた。
 そして、つかさを預けた峰岸の姿も、峰岸に預けたつかさの姿も、クラス内にはない。
 まさか……と私は顔を青ざめ、できていた群集の中心へと突貫した。

 ―……峰岸! それに日下部も! アンタたち、いったい何やってんのよッ!

 囲いの中心では、友人の日下部みさおが一人の女生徒を羽交い絞めにし、それを峰岸あやのが手に持ったカッターナイフでメッタ刺しにしている姿があった。
 信じられない。そう思いつつも私は、憤怒の表情で二人に詰め寄る。
 日下部が羽交い絞めにしている女生徒というのが……よりもよってつかさだったのだ。

258:願望 ◆LXe12sNRSs
07/10/22 20:10:45 budJHMvQ
「もう帰ってきちゃったの、柊ちゃん? まだ終わってないんだけどな」

 ―なにがよ! B組の連中だけでなく、あんたまでそんなことするとは思わなかった! 今すぐつかさを離し……ちょ、こら!

 私は力ずくで峰岸を押さえようとするが、囲いを作っていた男子生徒数人に、その体を拘束されてしまう。

「あー、ダメダメ柊。そこは黙って見てなくちゃ。あやのは怒らせるとこえぇゾォ」
「もう、みさちゃんたら嘘ばっかり。でも柊ちゃん、終わるまでは邪魔、しないでほしいな」

 普段とまるで遜色ない顔で、峰岸はカッターナイフをつかさに振るい、日下部はそれを容認している。
 何よこいつら……狂ってる。私が今まで友達として接してきた二人は、こんな腐った奴らだったの?
 私は、また怒りに震えた。C組の連中だけじゃない。信頼していたクラスメイトたちも、つかさのいじめに関与していた。
 ううん、これはもう、いじめなんていう生易しいものじゃない。訴えたら勝てるくらいの決定的な犯罪よ。
 つかさの全身は、既にカッターナイフでメッタ刺しにされ穴だらけだ。そこから垂れる血の赤で、制服が染まっている。
 つかさはしきりに、痛い、痛いよ……、と漏らしながら、懸命に痛みに耐えている。
 つかさは弱い子だ。日下部の拘束から逃れることもできなければ、峰岸の猛攻に堪えられるはずもない。
 私が守ってあげなくちゃいけない。私にしか、つかさは救えない。お姉ちゃんである、私にしか。
 私がなんとかしなくちゃ……このままじゃ、つかさが殺されちゃう―!

 ―……こ、の! 離しなさい、離しなさいよー!

 私は渾身の力で男子どもを蹴散らし、自由の身になる。男女間の力の差など、火事場の馬鹿力を発揮すればどうにでもなるものだ。
 いや、あるいは妹を思う気持ちの強さが現れていたのだろう。現に、今の私は死に物狂いの心境だ。
 つかさを捕らえていた日下部にドロップキックを仕掛け、顔面からぶっ飛ばす。
 つかさを傷つけていた峰岸にも、その辺にあった椅子を投げつけ、沈黙させる。
 私はその隙に、傷だらけのつかさを抱えて逃げ出した。

 ―ごめんね、ごめんねつかさ! 私があんたを一人にしなければ……峰岸や日下部が、あんな酷いことするなんて!

「えへへ……おねーちゃん……わたし、穴だらけになっちゃった」

 ―喋らないで! ただでさえ酷い出血なんだから! 今すぐ保健室に……保健室なんかじゃダメだ、病院に行こう!

 もう、こんなところには一分一秒たりともいられない。
 すぐにつかさを病院に連れて行って、その後は警察に行こう。
 お父さんとお母さん、姉さんたちにも電話しなきゃ。みんな怒るかな……つかさも、学校にはいられなくなっちゃうかも。
 ううん、そんなの考えるのはあと! 今は、一刻も早くつかさを安全な場所に―あれ、あそこにいるのは……?

 靴も履き替えないまま校舎を飛び出すと、正門の前に見覚えのある二人組が立っていた。
 まるで私とつかさの到来を待つように、もしくは行く手を阻むかのように。
 ウエーブのかかったピンク色の髪と、眼鏡。金髪の長身に、ジャージ姿。
 親友の高良みゆきと、つかさの担任の黒井先生だった。
 二人とも、学校の中にいないと思ったら、こんなところにいたんだ。
 親友に教師、信頼できる二人を見つけた私は、一瞬だけ安堵して……すぐに、その気持ちを裏切られた。

 正門を抜けようと走る私に向かって、黒井先生が突如、マシンガンのようなものを向けてきたのだ。
 ちょっと、なんで先生がそんなものを―とビックリする間もなく、先生は無数の弾丸を私たちに向けて照射してきた。
 当然、あんな予想外の攻撃に私が反応できるはずもなく、抱えたつかさごと凶弾に倒されてしまった。
 痛い。鉛の弾が何発も何発も体を貫通し、開いた穴から鮮血が零れる。
 でも、今はその程度の痛みに苦しんでいられるような状況ではないのだ。
 つかさは、つかさはどうなったの?

259:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/22 20:12:09 YV6aY3Gx
 

260:願望 ◆LXe12sNRSs
07/10/22 20:13:20 budJHMvQ
「…………お、ねー、ちゃん」

 さっきよりもさらにか細く、私を呼ぶ呻き声が聞こえた。
 すぐそこの血溜まりに、つかさが全身を蜂の巣にして突っ伏していた。
 瞳からはもう、生気が失せていた。卵白のような淀んだ目で、私に助けを訴えている。

 ―……つか、さ。

 私は地べたを這いながらつかさの下に向かい、その手を握ってあげようとした。
 冷静に考えて、あれだけの銃弾を体に浴びた人間が、生きているはずがない―そんな絶望的な観測は全て排除して。
 私はつかさを助けたい一心で、痛みの残る体を動かした。こんなの、つかさの苦しみに比べれば―!

「はい、そこまでー。なんや柊~、無断で早退とは、教師として感心せんでぇ」

 そんな私の思いを踏みにじるかのように、黒井先生は私とつかさの間に壁として立ち塞がった。
 教師だから。つかさの担任だから。そんな先入観が、そもそもの間違いだったんだ。
 この人も……つかさの、敵。私はようやく、遅すぎる現実に気付いた。
 これはもはや、いじめなんていう低俗な問題ではない。この学校には、ううん、この世界には。
 もう、私以外に……つかさの味方は、いないんだ。

 ―……どい、て。つかさ、つかさを……。

「無駄ですよ、かがみさん。なにせ、黒井先生が使っていたのはイスラエル初の国産兵器として知られる有名な短機関銃です。
 全長は47センチとコンパクトですが、重量は約4kgもあるため、その重量のおかげでフルオート射撃中のコントロールが容易です。」
 発射速度は一分に650発とされ、有効射程は200メートル。素人の黒井先生でも、十分人が殺せる兵器なんですよ。
 全弾命中したわけではありませんが、この有様を見て、まだ希望が残っているなど思えないでしょう?」

 そんな風に、いつも博識振りをひけらかしながら、みゆきはつかさの側に歩み寄った。
 その手には、模造品や修学旅行のお土産などではない、本物の日本刀が握られている。
 つかさの生死を確認するかのように、私の見ている目の前で、みゆきはつかさの体を日本刀で小突く。

「とはいえ、念には念を入れたほうがいいですよね」

 そう言って、みゆきは日本刀の切っ先を、力強く振り下ろした。もちろん、眼下のつかさに向けて。
 ひゃあっ、という間の抜けた悲鳴が木霊し、返り血がみゆきの眼鏡を赤く濡らす。
 何回も何回も、あひゃ、ひゃあ、といった声で回数をカウントしながら、つかさがまた傷を付けられていく。
 そこまで力を込めなくてもいいのに、念入りに、何度も、同じところを、執拗に刺し貫いていく。
 腹や腿といった太い部分の肉は削ぎ落とされ、指や耳といった脆弱な箇所は勢いよく弾け飛んだ。
 この光景は……そう、あれだ。スーパーなどでたまにやる、マグロの解体ショーのようだ。

 ―(やめて)

 やはり、みゆきも敵だったのだ。つかさを傷付ける敵。普段はあんなにおっとりしていたのに。
 許せない……憎い……恨めしい……私の心はありとあらゆる憎悪によって支配され、それでもつかさを助け出すことはできない。

 ―(おねがいだから、やめて)

 軋む体を引きずり、懸命に前に進もうとしても、立ち塞がる黒井先生をどけるほどの余力はない。
 すぐそこで助けを呼んでいるのに、私はつかさを助けることができない。
 歯がゆくて、悔しくて、悲しい。なんで、なんでこんなことになってしまったのだろう。

261:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/22 20:13:36 YV6aY3Gx
 

262:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/22 20:14:40 XR3EckQs


263:願望 ◆LXe12sNRSs
07/10/22 20:15:13 budJHMvQ
 ―おねがいだから、もうやめてよぉ……つかさに、これ以上ひどいことしないで……

 私は涙を流しながら、みゆきと黒井先生に懇願した。
 体裁など気にしていられない。つかさを救い出せるのなら、私はどんなことだってする。
 代わりに死ねというのなら死ぬし、奴隷になれというのならどんな言うことだって聞いてみせる。
 だから、おねがい。もうこれ以上、つかさを甚振るのはやめて―。

 ―……あれ?

 祈るように目を瞑って、また開けてみると、もうそこにみゆきと黒井先生の姿はなかった。
 願いが通じたのだろうか。どこに消えてしまったかは分からないが、つかさを傷つける者は、もうここにはいない。

 ―よかった……つかさ、もう大丈夫だよ……つかさ……つかさ?

 私が呼びかけても、つかさは応えてくれなかった。
 いつものように、可愛らしい声を奏でることも。
 無邪気な、小学生のような幼い笑顔を見せることも。
 私をお姉ちゃんと慕い、後ろを忙しなくついてくることも。
 ……もう、永遠にないんだな、と悟った。

 ―……つかさ。

 つかさはもう、体を失っていた。
 みゆきに解体されて、そこにはもう、頭しか残っていなかった。
 仕方がないから、私は頭だけを持って学校から去った。

 ◆ ◆ ◆

 学校を離れて、病院に行ってももう手遅れだと認めた私は、家に帰る気にもなれず、つかさと二人、誰もいない道を歩いていた。
 鞄も置いて、上履きのまま、つかさだけを持って。

 かわいそうなつかさ。
 もう、こなたたちと楽しくお喋りすることも、街で遊び回ることもできないんだ。

「ミコスー」

 そうね、あんた、いつも変なこと口走ってったっけ。
 これからは、私だけが聞いてあげるから。もう私しか、つかさの声は聞こえないから。

「おもち、うにょ~ん」

 おもちね、お正月に食べたね。
 口はまだあるんだから、お正月になったらまた食べようね。

「ちんちん」

 つかさ、犬が好きだったね。
 大丈夫よ、目もまだ付いてるんだから、可愛い犬もいっぱい見れるって。

「くさいねー」

 うん、くさいくさい。
 鼻もまだついてるから、たぶんこの先もずっとくさいわよ。

「アハハー」

 なんだ、体なくなっちゃったけど、できることいっぱいあるじゃない。
 一緒だからね。これからもずっと。なんてったって私たち、双子なんだから。

264:願望 ◆LXe12sNRSs
07/10/22 20:16:36 budJHMvQ
「お姉ちゃん、大好き」

 ―……うん、私も。

 もう、日常は戻ってこないんだろうな、と悲観した。
 でも、辛くはなかった。つかさはここにいるし、私もここにいる。
 なんにも変わらない。私は柊かがみとして、私は柊つかさとして、寿命が訪れるまで永遠に生き続けるんだ。
 うん、いつもどおり。やれるやれる。

「おーい、かがみー」

 あ、見てつかさ。あれ、あの青い髪したちっこいの。
 こなただ。あいつ、学校にいないと思ったら、こんなところでサボってやがったな。
 まったくしょうがないんだから……あ、あそこにいなかったってことは、今のつかさの変わりぶりを見たらビックリしちゃうかな。
 説明するのも面倒だけど、大丈夫よね、あいつ順応性高そうだし。

 ―おっす、こな……!?

 何食わぬ顔で私はこなたと挨拶を交わし、そして、こなたが手に持っていた物を見て戦慄した。
 バレーボール大の黒い球体に、ちょろちょろっと網目の入った紐が付いている。
 紐の先端には、バチバチと音を鳴らす、赤くて熱いアレが灯っていた。

 ―こなた、あんた何持って―!

「ああ、これ? ホラ、漫画とかでよく出てくるじゃん。ボン○ーマンとかが持ってる爆弾」

 簡潔に説明して、こなたはそれを私のほうに放り投げた。伸びていた導火線は、既に先端の火によって燃え尽きようとしている。
 そして、私のすぐ側で爆発が起こった。爆竹レベルじゃない、家も吹っ飛ぶくらいの大爆発だ。
 私は天高く吹き飛び、体を煤だらけにしながら地上に落下した。
 ……なんか、踏んだり蹴ったりだな、私。学校にいなかったからって、勘違いしちゃった。
 こなたも、峰岸や日下部、みゆきや黒井先生と一緒ってことか。ははっ……。

 ―つかさ、やっぱり、あんたの味方はもう、お姉ちゃんだけしかいないみたい……あれ、つかさ?

 冷笑しながら、私はつかさに語りかけようとして―手元にあったつかさが消えていることに気付いた。
 おかしい。さっきまで確かにこの腕の中にあったのに、なくなっている。いったいどうして。

 ―つかさ? つかさ? ねぇ、どこにいるの? 隠れてないで、出てきて……?

「やだなぁ、かがみん。つかさなら、さっきの爆発で跡形もなく吹き飛んじゃったよ」

 つかさを探す私に、こなたがそんなふざけたこと言うが、今は冗談に構っていられる状況じゃない。
 つかさにはもう、私しかいないんだ。私が目を離した隙に、また誰かに虐められるかもしれない。
 守ってあげなくちゃ。私が、私がつかさを守ってあげなくちゃならないんだ。

265:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/22 20:17:14 XR3EckQs


266:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/22 20:17:57 YV6aY3Gx
 

267:願望 ◆LXe12sNRSs
07/10/22 20:18:26 budJHMvQ
 ―ねぇどこ!? どこにいるのよつかさ! 一人でいたら危ないのよ!? だから早く出てきて!

「かがみ~、だから、つかさはもういないんだよ。これは殺し合いなんだよ? 殺された人にはもう会えないんだよ」

 ―うるさい! あんたは少し黙れ!

 邪魔するこなたを一喝し、私はつかさを探す。
 何もない、焼け爛れた道。地面の土も、そこから生える草も、何もかもが焼けていた。
 ……どういうこと? 隠れるとこなんて、ないよ。つかさ、どこに隠れてるの?
 分からない。誰か、教えてよ。誰かが隠しているの? ねぇ、つかさはどこにいったの?
 つかさ、つかさ、つかさぁ……姿を見せてよ、もう一度声を聞かせてよ、お姉ちゃんって、呼んでよ……。

 ―……どうして、どうしてつかさばっかり、こんな目に遭わなきゃいけないの?

 いくら探しても、つかさは見つからない。
 気が付くと、私は捜索の手を休め、虚空に向かってそんな問いかけをしていた。

 ―あの子が何か悪いことした? してないわよね? 殺し合いっていうんなら、つかさじゃなく私を殺せばいいじゃない……!

 つかさは、至って普通の女の子だった。特筆して変わったところなど何もない。
 なのにどうして、みんなから、世界から虐げられなければならなかったのか。私にはそれが分からない。

「えー、だってかがみ」

 呆然と立ち尽くす私に、こなたが答えてくれた。

「殺しても、死なないじゃん」

 そう、現実を突きつけて―
 ―私の意識は、そこで途絶えた。


 ◇ ◇ ◇



268:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/22 20:19:06 XR3EckQs


269:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/22 20:19:15 YV6aY3Gx
 

270:願望 ◆LXe12sNRSs
07/10/22 20:20:16 budJHMvQ
 遠くから、深くから、声が零れ落ちてくる。

「これはおまえらが望んだ知識だ。その知識から作り出したのがあの薬だ。
 作ったのは俺で、与えたのも俺だから、知識から作り出した、というのは少し語弊があるな。まあいい」
「知らないわよ」

 即答で返した。
 気づけば、真っ黒な自分が、対となるように正面に立っている。
 そこから、さらなる声が零れる。まるで洞窟の中を渡るように、声は反響した。

「あれを飲んだ者は不老不死になる。不老ということはつまり歳を取らず、不死ということはつまり死なないということだ」
「それは知ってる」

 また、即答で返した。
 真っ黒な自分の輪郭が、波を立てる海面のように揺れる。
 そこから零れる声はどこか虚ろで、だが確かな質感を持った遠雷のようにも聞こえる。

「最初に欲したのは、船上の錬金術師だったな。おまえとは縁もゆかりもない奴らだ。それを言うなら俺はもっと無関係だが、まあいい」
「知ったことか」

 戯言のように捌き、適当に流した。
 ふと、真っ黒な自分が、鏡の中の存在だと気付く。
 虚ろな声は構わず、零れてくる。まるで煽るような口ぶりで。

「感想など千差万別だからな。おまえがどう思うかは分からん。だがもしおまえが不死に飽き、死にたいと思ったら。
 他に薬を飲んだ奴を捜せ。捜し出し、そいつの右手をおまえの頭に乗せて、『食いたい』と願ってもらえ。
 それだけでおまえはそいつに吸収され、生涯を終えるだろう。
 右手から吸収するのに『食う』とはやはり語弊があるが、こんなものは言葉遊びの範疇だ。まあいい」
「知ってるわよ。あんたなんかに教えてもらうまでもなく、全部書いてあった」

 寂寥と悲哀が込められた即答。そこに、僅かな憤怒が混じった。
 真っ黒な自分が、自分と同じ存在のようで、まるで違うことに気付く。
 虚ろだった声に突然、感情の火が入る。僅かな憤怒が、燃え広がっていくように。

271:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/22 20:21:35 YV6aY3Gx
 

272:願望 ◆LXe12sNRSs
07/10/22 20:22:09 budJHMvQ
「おまえは望んだ。不死となり、己の願望を果たすことを。だが、今はどうなんだ?」
「……」

 答えに詰まった。さらなる問いへの予感がして、戸惑う。
 真っ黒な自分、その正体は人が理解できるものではない。
 声は、熱く強く降りかかる。

「どう、するんだ?」
「……」

 答えられない。既に用意されていた答えを、今は見失っていた。
 真っ黒な自分が、それを映す鏡が、近づいてくる。
 いつしかその声は、眼前から発せられている。

「どう、したい?」
「……」

 重なるほど近くに感じるそれに、答えられない。
 真っ黒な自分の奥の奥、闇の広がる空間へと、視線が注がれる。
 乾くように脅すように、それは声をぶつけてくる。

「まあいい。おまえはあの錬金術師どもとは違うようだからな。せいぜい、愉しみながら見物させてもらおう―」
「私、は―」

 放送が始まって、悪魔との対話は唐突に終わった。
 これは夢のようなもので、柊かがみの記憶になど残りはしない。
 だが、その心境の急変だけは、痛いほどに感じ取られた。


 ◇ ◇ ◇



273:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/22 20:23:26 IUOjSrSz
 

274:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/22 20:23:31 Io+uGQAO


275:願望 ◆LXe12sNRSs
07/10/22 20:23:57 budJHMvQ
 第一回目となる放送が終わっても、柊かがみに然したる変化は見られなかった。
 右の耳で聞いた声も、途端に左の耳から抜け落ちてしまう。
 ただ一言、柊つかさの名前が呼ばれたことだけは頭に残っていて、他のことに関しては考えようとしなかった。

「ねぇ、つかさ。聞いてくれる? お姉ちゃんさ、なんだか疲れちゃった」

 泡沫の悪夢で、つかさはかがみの前から跡形もなく消えてしまった。
 けれども舞い戻った現実には、こうしてつかさと呼べる存在がまだ残っている。
 血塗れになった軍用ナイフで切り出し、こうやって抱きしめ易くした、つかさの首から上部分が。

「つかさの仇を取りたいって一心であんなもの飲んじゃったけどさ、今はちょっと後悔してるんだ。
 あれを飲んだら、不老不死になっちゃうんだって。死にたくても死ねないの。成長したくても、一生子供のままだし。
 周りのみんながお婆ちゃんになって、寿命で天国に旅立っても、私はずーっとこのまんま。
 優勝したら、つかさを生き返らせるついでに元に戻してもらえるかなーとも思ったけど、都合よすぎだよね」

 しっかりとした声調で語りかけ、しっかりとした力でそれを抱き、しっかりとした足取りで南へ向かう。
 妹の首を胸に抱くかがみの表情は、とても穏やかなものだった。

「それに、何が一番後悔してるかって言うとね。私の独り善がりな復讐心のせいで、つかさをこんなにしちゃったってこと。
 お姉ちゃんなんだから、妹から目を背けようとしちゃいけなかったんだ。なのに私は……ダメだよね。
 今さら許してもらおうとは思わないけどさ、もう、同じ過ちは繰り返さないから。
 これからはずっと一緒。私とつかさは、永遠に一緒。私、もう死ねないから……比喩とかじゃなくて、本当に永遠」

 優しく、その頭を撫でる。
 どこかの偉大な哲学者は、双子は感覚を共有した本当の意味での一心同体だ、と言った。
 かがみとつかさは性格や容姿こそそこまで似たものではなかったが、それでも、確かに二人は同じ存在だった。
 片方が傷つけば、こうやって片方が守ってあげる。そうやって、いつも二人で一緒に。

「……うん。これからは、ずーっと一緒。私、どう足掻いたってつかさと同じところにはいけないだろうからさ。
 せめてこうして、つかさを守りながら、永遠を生きれればいいな、って思うんだ」

 別の不死者に食われたとしても、それはつかさが味わったような死ではない。
 仮につかさが天国にいるとして、かがみはそこには辿り着けない。行き着く先は、他の不死者の腹の中だ。
 いくら疲れたからといって、そんなところに行くのは御免だ。ならいっそ、このまま永遠に、姉としての勤めを果たそう。

「じゃあ、お休みつかさ。私、もう二度とあんたを離さないから」

 そして、かがみはつかさを抱いたまま海に飛び込んだ。
 誰にも侵されず、誰にも邪魔されない、二人だけの空間。
 たとえ死ねなくても、死ねないからこそ、海は二人だけが存在できる絶対の領域となる。
 今のかがみに、復讐心なんていうちっぽけなカケラは残っていなかった。
 ただ、つかさと二人でいられたら、それで満足だったのだ。

276:願望 ◆LXe12sNRSs
07/10/22 20:25:36 budJHMvQ
【B-2とC-2の境目辺り・水中/一日目/朝】
【柊かがみ@らき☆すた】
[状態]:不死者、全身水浸し
[装備]:つかさの首
[道具]:なし
[思考]
1:このまま、つかさと永遠に一緒……
[備考]:
※第一放送を聴きましたが、つかさの名前が呼ばれたということ以外は覚えていません。
※不死者であるため、このまま溺れて死ぬことはないかと思われます。本人に泳ぐという意思はないため、どこかに流れ着く可能性もあります。
※軍用ナイフ、防弾チョッキ、UZI(9mm.パラベラム弾:0/50)、ローラーブーツ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
 支給品一式(水入りペットボトル×1消費)、レーダー、かがみの靴は、B-2観覧車前(つかさの遺体が置かれていた場所)に放置。

277:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/22 20:35:00 CvanNGD8
586 :名無しセカンド:2007/10/20(土) 14:34:37 ID:NaCpcX/20
乙!
○Dボゥイ(18)
○相羽シンヤ (18)
……嘘はよくないねぇ。
587 :名無しセカンド:2007/10/20(土) 14:37:30 ID:jvYbIvlIO

ヨーコってあのけしからんばでぃーで14だったのか……
588 :名無しセカンド:2007/10/20(土) 14:39:08 ID:z3s5.xQc0
ヴァッシュって100歳超えてなかったけ?
589 :名無しセカンド:2007/10/20(土) 14:50:46 ID:Qpj569As0
年齢……どこも違和感あり過ぎるw
590 :名無しセカンド:2007/10/20(土) 15:13:58 ID:3sm6oo320
乙。
ついでにウルフウッドも十代じゃなかったっけ?
591 :名無しセカンド:2007/10/20(土) 15:30:01 ID:om9ZUMqo0
乙。
ジンは下手すりゃ自分よりずっと年下の相手におねーさんって言ってる事になるのかwww
>>590
アニメのウルフウッドは見た目相応の年齢の筈だぜ。
592 :名無しセカンド:2007/10/20(土) 15:53:02 ID:pHMU0Bg60
良い子の皆、今年で25になるラッドお兄さんをおじさん呼ばわりしないようにね!
593 :名無しセカンド:2007/10/20(土) 15:54:21 ID:Qpj569As0
>>592
それ死亡フラグだからw
594 :名無しセカンド:2007/10/20(土) 16:16:03 ID:CIhw6Hh60
>>588
余裕でこえてる つーか人間じゃないしな
595 :名無しセカンド:2007/10/20(土) 16:33:28 ID:EKRX/L6.0
>>592
パズーに死亡フラグが立ちました


278:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/22 20:36:54 CvanNGD8
596 :名無しセカンド:2007/10/20(土) 16:41:16 ID:5SJwRa0sO
ヴァッシュは百数十歳、チェスに次いでかなりの高齢者
597 :名無しセカンド:2007/10/20(土) 17:00:02 ID:lL.3F.PY0
いや、V様は実質1000歳以上だ
石になってるときも意識あるから換算してよいはず
これを除くと最高齢はラセン王かな
598 :名無しセカンド:2007/10/20(土) 17:20:18 ID:Qpj569As0
>>597
あ、本当だ。螺旋王1000歳近くってwikiに書いてあった。
つかV様、最高齢の威厳全くないなw
599 : ◆NQAY0IOGHk:2007/10/20(土) 17:37:55 ID:C37TaTgs0
さて資料スレに参加時期を確定しているもの(状態表の備考で書かれているものだけ)だけ上げたが
ヒューズの参戦時期が決まってないのは以外だった
ビバップ勢のスルーッぷりはすごいな
あとたいていの死者は参戦時期関係なくなるけどスバルは要注意かな(剣持に自身の世界のこと言ってるから)
あと、タイトルの隣に書いてあるのは私見の参加時期の重要度です
600 :名無しセカンド:2007/10/20(土) 17:46:48 ID:Qpj569As0
◆NQAY0IOGHk氏、乙です!!
ハガレン関係が3人ともヒューズ基準なのにワロタ
ビバップ勢は全員不詳なのが違和感ないw
601 : ◆NQAY0IOGHk:2007/10/20(土) 18:35:57 ID:C37TaTgs0
>>599 ぎゃーー
なぜスバルだっ 死んでねえよ
スザクだよ ちょっとk(r
602 :名無しセカンド:2007/10/20(土) 18:46:36 ID:m1m8lK5Y0
こっちで聞いた方がいいみたいだから聞いてみる。
ふと思った。読子ってスパイク助けるときに紙技を使わなかったんだろうか?
使っていてもはやてが気づかなかったでいいとは思うけど。
もし、はやてが読子を異能の使い手だと知れば協力を呼びかけそうな気がする。
っていうかはやてって、スパイクや読子のことを両方とも一般人だと勘違いしている?
603 :名無しセカンド:2007/10/20(土) 19:00:33 ID:C37TaTgs0
普通に手で助けたんじゃない、トリモチ取るだけだし
後話も行き先と名前だけ聞いただけみたいだし一般人と勘違いしてると思う
銃も出してないし
604 :名無しセカンド:2007/10/20(土) 19:16:26 ID:Qpj569As0
読子さんお人好しだからなあ……


279:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/22 20:38:45 CvanNGD8
605 :名無しセカンド:2007/10/20(土) 19:18:38 ID:XEzIxGhk0
hs氏投下乙
さてこの三人はどんな喜劇を繰り広げるやらwww
606 :名無しセカンド:2007/10/20(土) 20:38:47 ID:LCs/k4vs0
放送後の予約開始は今晩0:00~でおk?
607 :名無しセカンド:2007/10/20(土) 20:46:11 ID:om9ZUMqo0
>>606
AZ氏の投下が終わってからでいいんじゃね?
そりゃま、土日の間に予約合戦しといた方がいいのかもしれないけど、まだ予約されてる放送前のキャラが居るんだし。
608 :名無しセカンド:2007/10/20(土) 20:55:55 ID:LCs/k4vs0
今予約中の人が月曜の3時ごろまでの猶予ってことは火曜の0:00~あたりになるのかな?
609 :名無しセカンド:2007/10/20(土) 21:01:47 ID:m1m8lK5Y0
AZ氏に進行具合を聞きたい。
とりあえず、いきなり月曜0時からとかに決まって揉めたくない。
610 :名無しセカンド:2007/10/20(土) 21:13:34 ID:5qylKu66O
予約期限にしたがって火曜0時に賛成
個人の投下タイミング如何で変動するのは勘弁
611 : ◆AZWNjKqIBQ:2007/10/20(土) 21:14:52 ID:j0lizY0k0
心配させて申し訳ない。
早ければ明日の午前中、遅くとも明日中に投下できる予定だ。
自分のが投下 > 放送投下 > (日)の00:00から予約開始でいけるはず。
612 :名無しセカンド:2007/10/20(土) 21:26:01 ID:om9ZUMqo0
>>611
ご苦労様ッス。
予約合戦は明日の0時からか……オラ何だかワクワクしてきたぞw
613 :名無しセカンド:2007/10/20(土) 21:41:27 ID:Qpj569As0
>>611
乙です。
オラも両方楽しみぃ~
614 : ◆ZJTBOvEGT.:2007/10/20(土) 22:02:56 ID:p5d9mesM0
V様の身体の位置を間違って表記していたことに今頃になって気づきました。
V様の身体は古墳付近に放置されたまま、分離した頭だけでカミナを追いかけたので、
身体の現在位置は『D-8』です。
迷惑をかけ倒しで申し訳ありません…
615 :名無しセカンド:2007/10/21(日) 07:59:04 ID:v71RIS2c0
投下乙。エリオの状態が放送でキャロの名前聞くどころじゃなさそうだ
616 :名無しセカンド:2007/10/21(日) 08:00:46 ID:U7wBJ4uE0
投下乙
ホークアイに良い銃持たせたら面白そうだな
ランサーの好感度もアップ
617 : ◆oRFbZD5WiQ:2007/10/21(日) 09:21:51 ID:NYnco3gU0
投下乙。リザ、うまい事躱したなぁ。攻撃も、色々と危ない無能大佐も。
でも、北上すればお師匠さまやシンヤにぶち当たる可能性も……リザもパズーも頑張れ。
さて、バイトの前に放送を投下致します。
618 : ◆oRFbZD5WiQ:2007/10/21(日) 09:30:13 ID:NYnco3gU0
投下完了。
ここ一週間、忙しくなるために予約合戦には参加できませんが、道は作ったつもりです。
他の書き手の皆さん、予約合戦、頑張ってください。陰ながら応援しています。

280:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/22 20:39:54 CvanNGD8
621 :名無しセカンド:2007/10/21(日) 17:00:01 ID:XCz2fQlE0
投下乙です!
もちろん準備万端だとも、兄弟。
622 : ◆AZWNjKqIBQ:2007/10/21(日) 18:50:59 ID:sxh..PqQ0
MAPです。
URLリンク(blogimg.goo.ne.jp)
623 :名無しセカンド:2007/10/21(日) 19:16:36 ID:xvB.cdIE0
乙であります!
624 :名無しセカンド:2007/10/21(日) 20:01:06 ID:EXdy24ms0
乙です!
625 :名無しセカンド:2007/10/21(日) 20:09:13 ID:UJviCTuo0
>>622
MAP乙です
しかし今夜予約だけどヘタクソが人気組とか予約参加挑戦してみてもいいんだろうか…
やっぱり上手い人に譲るために自重したほうがいいのかな
626 :名無しセカンド:2007/10/21(日) 20:16:56 ID:aWbuKxaE0
そんなことはない。ネタがいいと思えば予約。
拍手喝采なら自身がつく。ヘマしてもいい経験になる。
627 :名無しセカンド:2007/10/21(日) 20:17:35 ID:aWbuKxaE0
自身って何? 自信だよ。
あと、MAP乙。
628 :名無しセカンド:2007/10/21(日) 21:16:22 ID:Wor0.OHw0
MAP乙です
2ndからの新人としては禁止エリアは初
なんか俺アニロワに参加してるって実感が湧いてきたぞヒャッホウ!
629 :名無しセカンド:2007/10/21(日) 23:28:45 ID:G/1Y.2po0
あと三十分で予約開始か
wktkするなぁ
630 :名無しセカンド:2007/10/22(月) 20:30:40 ID:9g23xhLE0
◆LXe12sNRSs氏、投下乙です。
よくこんなイカれた話書けますねあんた鬼だー!
かがみが余りにもカワイソス。 この後どうなんのかな
631 :名無しセカンド:2007/10/22(月) 20:32:44 ID:HzQnqpA.0
投下乙。1stに続いて首ちょんぱきたー!

281:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/22 20:45:56 HyIrzW5y
>>280
ちょwwwww
一言だけ言わせてくれ

>2ndからの新人としては禁止エリアは初
>なんか俺アニロワに参加してるって実感が湧いてきたぞヒャッホウ!


なにこいつ

282:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/22 21:11:30 Xv9GcK+f
バトロワごときに人生すべてをかけた
ホームラン級のバカの戯言であります

283:ブックドラフト  ◆5VEHREaaO2
07/10/23 12:26:02 8t/JGVCw


『それでは―存分に、殺し合え』


舞台中にロージェノムの宣告が響き渡る中、結城奈緒とギルガメッシュは図書室の中で机を前にして椅子に座っていた。
死者の名が淡々とつづられる中、奈緒の心中はいたって冷静だった。
別に死者が出たことに喜ぶわけでもないが、別に生きていてほしいと思う人間もおらず、知人でもない以上は
テレビで8歳児が刃物で刺殺された、などと報道された程度の関心しか持っていなかった。

「で、どうするよ金ピカ?」

奈緒は禁止エリアを書き込んだ地図から目を離し、ギルガメッシュにこれからの方針を聞く。
彼女としてはギルガメッシュの顔色を窺うのははなはだ不本意ではあったが、
こうでもしなければギルガメッシュがへそを曲げてしまうため、決して面にはださないがしぶしぶ窺うしかない。
奈緒に問いかけられたギルガメッシュはそんな彼女の心中など知らず、怒りの表情を浮かべていた。

「金ピカ?」

奈緒はギルガメッシュの怒りの表情を見て動揺する。
なぜ怒っているのか、知り合いの名前でも呼ばれたのか? それにしては違うような気がする。
疑問に思った奈緒は追求することにした。

「なんであんた怒ってるの?」

奈緒の問いかけにギルガメッシュは怒りの表情を崩さずに答える。

「ふん。螺旋王とやらが、この世の全てを自分のものだと勘違いしていることに怒りを覚えただけだ」

ギルガメッシュは、聞くだけならば義憤に駆られていると思われる発言をした。
だが奈緒はそうとは思えずさらに追求する。

「で、俺の物だから手前が手を出すなと」

奈緒は聞く者が聞けば侮蔑とも取れる発言をした。

「うむ、その通り」

だがギルガメッシュは奈緒の想像通りの答えを返す。
奈緒はやっぱりと思い、感性の違う無益な話題を打ち切ることにする。

284:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/23 12:27:54 dYtShVUy
 

285:ブックドラフト  ◆5VEHREaaO2
07/10/23 12:27:56 8t/JGVCw
さてどう打ち切ろうか。オーソドックスに別の話題に持っていくのが適当だろう。

「ふーん、そうなんだ」
「分かったなら、早く本を読め」

本を読むなど疲れるというのに、金ぴかはこちらの気持ちなど無視して催促してくる。
未だこなしたノルマは隣にある本の山から考えれば十分の一程度、後の事を考えれば気が重たくなってくる。
とっとと話題を切り替えて、徐々に本から意識を逸らそう。
とりあえず、支給品の話題に移してみる。

「本ねえ。本なんて支給品だけでこりごりなのに」

故に何気なく話題を振ってみる。

「……本だと?」

繭をわずかに動かしギルガメッシュが聞き返してくる。
食いついたと確信し、奈緒は話を続ける。

「そう本。っていってもタイトル不明で六角形の絵が描いてあって、開かない煮ても焼いても食えそうにない本。
 いっそのこと全員の詳細でも書いた本でもくれればいいのに」

もし読子・リードマンが学校に立ち寄っていれば、奈緒の持つ本のタイトルが全てを見通す眼の書だと判明しただろうが、
彼女は学校には寄らず東の方へと進んでいたが故にタイトルは分からずじまいである。
だが、大英図書館にとっては重要物品である本も、奈緒にとってはただのガラクタにしか過ぎない。
精々話の種にするぐらいだ。

「私の支給品は全部役に立たないものばかり。あんたの方はどうだったの」

本に手配書に眼帯と、自分の道具は全部役に立たぬものばかりである。
だが、この王様は剣以外にも何か支給されているかもしれない。
もしそれが自分に扱えるものであれば、言いくるめて手に入れてしまえばいい。
そんな魂胆で奈緒はギルガメッシュに問う。

「いや、役に立つやも知れぬものだ」

ギルガメッシュの返答に奈緒は心の中でガッツポーズを決め、どうやって手に入れようかと頭を働かせる。
だが彼女の思案はすぐに破られることとなる。

「我の支給品も本だ。調度いい、これらも検分してもらうとするか」

そう言いながらギルガメッシュは袋に手をかけた。
ギルガメッシュの発言と動作から自分から地雷を踏んだかと奈緒は後悔する。また本なのかと。
だが、彼女が踏んだのは地雷ではなく原爆だった。

「むっ!?」

ギルガメッシュの表情が余裕のあるものから、まるでラーメンに振りかけてた湖沼の瓶の蓋が外れた表情に変化する。
開いたデイパッグの口が彼の意に反し、下を向いた。
そして、悲劇が起きた。
質量保存の法則を無視して入っていた大量の何かが開放されてしまった。
奈緒の目にはそれは色とりどりの四角い何かに見えた。
いや、何かではない。それは日常生活でよく見知ったものであり、今の今まで目にしていたもの。
すなわち、本である。

「なっ!? うわ!? ワップ!?」

突然襲い掛かってきた本の津波に、奈緒の体は覆いつくされ見えなくなる。
が、本の津波は奈緒の体を飲み込んだだけでは飽き足らず、部屋中を覆いつくし、
扉を破り廊下まで本の海を作り、すぐ側にある階段までも本の山としてしまった。

286:ブックドラフト  ◆5VEHREaaO2
07/10/23 12:29:37 8t/JGVCw


  □ □ □


この本の津波には正式名称がある。俗に言うブックドラフトである。
ブックドラフト、それは全国全世界の本好き達がもっとも恐れる災害だ。
バックドラフトというという火災現場で起きる現象がある。
室内など密閉された空間で火災が生じ、不完全燃焼が生じて火の勢いが衰え一酸化炭素という可燃性のガスが溜まった状態の時に、
窓やドアを開くなどして急激に酸素が取り込まれると爆発を引き起こすという、原理的には中学校の科目、「水素爆発」と似た現象だ。
ブックドラフトとはこのバックドラフトをもじった名称である。
このブックドラフトがバックドラフトと異なる点は、単純に火が本と置き換わっていることだけである。
だがその脅威は火災現場のバックドラフトと変わることは無い。
ブックドラフトは睡眠を取る前に、寝所に本を貯め置き本の山をつくり、朝目覚めて何らかの拍子にその本を崩して怪我を追うという小さなものから。
ビルの中にある書店であまりにも本を店内に詰めすぎたために、ビルが本の重みに耐え切れず崩壊するという大きなものまで危険度は大きく変化する。
一般的なビブリオマニアの家でも、読書用、保存用、陳列用、愛玩用、入浴用、放置用、試食用、投擲用、訓練用、切抜用と
用途ごとに本を買ってしまったために整理が追いつかずにブックドラフトが起き、人が埋まってしまうこともある。


その一例としてこんな話がある。


あるところに、シェスカという眼鏡を掛けた女のビブリオマニアがいた。
彼女は大の本好きで、一度読んだ本の内容を決して忘れずに覚えておくほど集中して読み、
司書の仕事の最中でも本を読みすぎたためにクビになってしまうほどに本に意識がいってしまう、本の虫であった。
彼女は司書の仕事をクビになった後も、自宅にある大量の蔵書を読みふけっていた。
あるとき、そんな彼女に悲劇が訪れた。本の探索中に起こったブックドラフトである。
彼女の体は頭上より降りかかった本に押しつぶされ、しばらくの間は身動きができずに生死の境を彷徨うことになったのだ。
幸いにして、とある訪問者達に救助されたために一命は取り留めたが、
もし一時間も救助が遅れていれば、一人のビブリオマニアがブックドラフトで命を落とすことになったのは想像に難くなかった。

そして、その災害を引き起こした本達がギルガメッシュの最後の支給品であった。
もっともデイパッグから吐き出された量は、シェスカの蔵書の半分程度ではあったが。

287:ブックドラフト  ◆5VEHREaaO2
07/10/23 12:30:47 8t/JGVCw

  □ □ □


奈緒が目を見開くと、闇の中であった。
光すら射さない暗闇の中だ。ここがあの世なのだろうか?
いや、体の節々が悲鳴を上げ圧迫感があるので、おそらくあの世ではないのだろう。確信などないが。

「ったく」

悪態を付きながら、奈緒は暗闇から脱出するために体を動かそうとした。
だが、指がかすかに動くだけで身動き一つできなかった。
一瞬金縛りかと思ったが、即座に否定する。
記憶をたどればなぜ身動きできないかなど簡単に分かる。
自分の体は大量の本に覆われており、それゆえに身動きなどできず何も見えないのだ。

「金ピカー。生きてるー?」

奈緒はギルガメッシュに呼びかける。
死んでいるとは思ってはいない。が、とっとと助け出してほしい。
ああ、こうしている間にも頭に血が昇ってくる。
重力が反転しているか、自分の体が犬神家状態のどちらかなのだろう。

「どうした、蜘蛛女?」

ギルガメッシュの声が聞こえてきた。声の調子からしてどうやら無事らしい。

「あんたは埋まってないの?」
「たわけ。貴様のような間抜けな真似をするわけがなかろう」

一瞬、頭の血管がはちきれそうになる。
お前の所為だろうが!?
と奈緒は叫びたかったが、噴火一歩手前で踏みとどまる。
ここで怒ってギルガメッシュのへそを曲げてはいけない。
腕の稼働域が制限され、下手をすれば二次災害が起こる可能性がある以上は
なんとかこいつにひっぱりだして貰いたい。

「ねえ、掘り出してくれない?」
「なぜ我がそんなことをしなければならんのだ」



288:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/23 12:33:24 1IEQgkrz


289:ブックドラフト  ◆5VEHREaaO2
07/10/23 12:33:41 8t/JGVCw



【H-2 学校二階・図書室 一日目 朝】
【結城奈緒@舞-HiME】
[状態]:健康、眼帯を外したい、逆さまに本の山に埋もれて身動きできない。
[装備]:衝撃のアルベルトのアイパッチ@ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日
[道具]:支給品一式、パニッシャー@トライガン、全てを見通す眼の書@R.O.D(シリーズ)
[思考]
基本思考:面倒なのであまり戦いたくない。ヤバくなったら真面目にやる。
1:本の山から抜け出したい。
2:とりあえず金ぴかと一緒に行動する
3:攻撃してくる人間を殺すのに躊躇いは無い
4:藤乃にはあまり会いたくない
※本の中の「金色の王様」=ギルガメッシュだとまだ気付いていません。


【ギルガメッシュ@Fate/stay night】
[状態]:健康
[装備]:巳六@舞-HiME 黄金の鎧@Fate/stay night
[道具]:支給品一式、シェスカの全蔵書(1/2)@鋼の錬金術師
[思考]
基本思考:打倒、螺旋王ロージェノム。【乖離剣エア】【天の鎖】【王の財宝】の入手。
1:蜘蛛女が自力で這い出してくるのを待つ
2:異世界の情報を集めておく。
3:散らばった本は蜘蛛女に全て片付けさせる
4:宝具、それに順ずる道具を集める
5:目障りな雑種は叩き切る
6:エレメントに興味
※学校の図書館には様々な異世界の歴史を記した本があります。
(ただしどれだけ関係ない話があるか、どこまで詳細かは不明。
 少なくとも参加者の名前や能力については述べられていない。
 また1stガンダム~ガンダム00まで全黒歴史を紹介するなど、関係ない情報も相当数紛れている)
※主催者による監視を警戒しています
※ギルガメッシュの最後の支給品は『シェスカの全蔵書@鋼の錬金術師』です。



290:ブックドラフト  ◆5VEHREaaO2
07/10/23 12:35:07 8t/JGVCw
  □ □ □



言峰綺礼は放送を聞き終わった後、学校の校門を潜っていた。
放送の内容など、彼にとってはそうたいして重要なものではなかった。
故になんの同様も驚愕もなく南下し、目に付いた学校へと入ることにしたのだ。
そして、言峰はグラウンドの中央に入った時に気づいた。
日が昇る中では判別しにくいが、二階の一室には明かりがついている。
どうやら学校のあの部屋には誰かがいるらしい。
はたして敵なのか、味方なのか。正義を信じる者なのか、悪行の限りを尽くす者なのか。
いずれにしても興味は尽きない。
とりあえず接触しようと考え、校内へと入る。

「出迎えは無しか?」

言峰は上履き入れが幾つも並ぶ玄関に立ち、そう呟く。
周りを見ても人っ子一人見当たらない。見た限りではトラップを仕掛けられている形跡もない。
となればおそらくは、上にいるのは素人か、腕に自信のある強者ということになる。

「まさかあいつというわけでもあるまい」

黄金のサーヴァントを思い浮かべながら、さらに校内へと足を踏み入れる。


291:ブックドラフト  ◆5VEHREaaO2
07/10/23 12:36:07 8t/JGVCw
無論靴を脱ぐわけでもないので廊下が土で汚れるが気にするはずもない。
目指すは二階、すぐ側の階段を昇った場所にある一室。
その部屋に誰かがいるはずだ。
言峰は階段を慎重に昇り二階へと進み、角を曲がる。
罠が仕掛けられていないかも彼は確認はするが、見当たらなかったため廊下を進む。
そして、照明の付いている一室の数歩手前で止まり、視線を泳がしある一点でとまる。
彼の視線の先には図書室のプレートがあった。図書室の中からは誰かの話し声が聞こえる。
まちがいなくこの部屋には誰かいる。

言峰綺礼がそう確信した瞬間、図書室の扉が轟音と共にはじけ色とりどりの津波が襲ってきた。

「なっ!?」

言峰は突然の廊下を埋め尽くす本の津波に対応できず、逃げ場などあるわけでもなくあっさりと飲み込まれる。
圧倒的な自然の摂理の前では、高い身体能力を持つ彼でも無力に等しい。

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」

彼の体は本の津波に流され、廊下のあちこちにぶつかりつつ廊下を駆け巡り、階段を通り一階へと押しやられる。
が、このまま黙って本の津波になすがままにされる言峰綺礼ではなかった。
一階と二階の中間地点に差し掛かった直後に本の一冊を蹴り、そのまま数m後ろに飛翔、
空中で宙返りを決めつつ体勢を整え、冷たい廊下へと鮮やかに着地する。

「いったいなんだ?」

今だ本の津波を起こす廊下を尻目に、言峰はそう呟くものの敵地に踏み込んでしまったことを理解していた。
魔術なのか魔法なのか単純な罠なのか、どういった種かは分からないが相手は自分の襲来を察知し先制攻撃を仕掛けてきたのだ。
警告もなしにこのような真似をする以上、殺し合いに乗った人物であろうことは間違いない。
しかも攻撃方法や発動のタイミングから、トラップの扱いに熟知していると考えたほうがいい。
もしかしたら校内にも見落としたトラップがあるのかもしれない。
そうなれば、これ以上後手にまわるのはまずい。まだこの状況にまだ満足していないのだ、死んでしまうつもりは毛頭ない。
ならば、戦って生き延びるしかない。
言峰綺礼は槍をデイパッグの中から取り出し、天井に向かって構えた。
狙うは頭上にあるはずの図書室。そこに敵がいる可能性がある。
ならばこの槍の力で天井を突き破り、奇襲を仕掛けるのが最善策のはずだ。
相手からすれば下方から予想外の攻撃となる。
そう考え、言峰綺礼は槍を握り締める手に力を入れた。



292:ブックドラフト  ◆5VEHREaaO2
07/10/23 12:37:26 8t/JGVCw


【H-2 学校一階・図書室の真下 一日目 朝】
【言峰綺礼@Fate/stay night】
[状態]:体のあちこちをぶつけたが特に問題なし、左手にトリモチがへばりついてます
[装備]:ストラーダ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
[道具]:荷物一式
[思考]
基本:観察者としての姿勢を崩さない。苦しみを観察し、検分し、愉悦とする。
1:攻撃をしてきた参加者を制圧する。
2:そのために天井を貫いた上での先制攻撃。
3:シータに会えばパズーの伝言を伝える。
※制限に気付いています。
※衛宮士郎にアゾット剣で胸を貫かれ、泥の中に落ちた後からの参戦。


[備考]:H-2学校の図書室でブックドラフトが発生しました。
    図書室及び図書室周辺の廊下と階段付近は大量の本に埋め尽くされています。

293:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/23 12:51:17 JD2r0ORO
3386 :やってられない名無しさん:2007/10/22(月) 00:34:11 ID:???O
即投下はゼロか
3387 :やってられない名無しさん:2007/10/22(月) 00:39:17 ID:???0
ま、意外と予約自体も少なかったかな。
かぶったのも二人だけだったし。
3388 :やってられない名無しさん:2007/10/22(月) 00:44:59 ID:???0
たしかに、もっと放送後書いてるひとはいると思ったが
即投下がないのは寂しいぜ
3389 :やってられない名無しさん:2007/10/22(月) 00:47:04 ID:???0
>>3383
多少寄り道させたり、キャラの思考に介入して移動先をちょっと変えたりできますよ。
 多分。
3390 :やってられない名無しさん:2007/10/22(月) 00:48:38 ID:???0
また週末近づけば予約が増えますかね。
3391 :やってられない名無しさん:2007/10/22(月) 01:04:11 ID:???0
アニロワの予約合戦はすげえな
一秒差で没とかどんだけ~
すでに完成してる作品が没ってのはマジご愁傷様って感じだな
3392 :やってられない名無しさん:2007/10/22(月) 01:15:39 ID:???0
よくわからないけど、3週間で第一放送突破って早いのかな
3393 :やってられない名無しさん:2007/10/22(月) 01:17:29 ID:???O
はやいがな
3394 :やってられない名無しさん:2007/10/22(月) 01:29:38 ID:???0
早すぎるだろうにw
3395 :やってられない名無しさん:2007/10/22(月) 09:40:56 ID:???0
3週間ではない。
1ヶ月以上は掛かってるハズ。
だが早い。
3396 :やってられない名無しさん:2007/10/22(月) 16:31:28 ID:???0
というか00:00:00ぴったりに投下できる腕に驚愕だ。
あの面子と1000取り合戦やっても勝てる気がしねえw


294:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/23 12:53:03 JD2r0ORO
3397 :やってられない名無しさん:2007/10/22(月) 17:24:28 ID:???0
>>3396
ニュー速とかVIPで練習すればいつかは取れるさ
3398 :やってられない名無しさん:2007/10/22(月) 17:26:02 ID:???O
予約合戦も一段落したし
さあ、ハイエナの時間が始まるぜ
3399 :やってられない名無しさん:2007/10/22(月) 18:13:04 ID:???0
>>3398
おいおい、ハイエナなんて言い方が悪いなw
残り物には福があるんだぜ?
3400 :やってられない名無しさん:2007/10/22(月) 19:30:42 ID:???0
さらに笑いながら角を曲がれば福二倍だね!
3401 :やってられない名無しさん:2007/10/22(月) 20:16:40 ID:???0
ウォーズマン理論だね!
3402 :やってられない名無しさん:2007/10/22(月) 20:45:35 ID:???0
く、あれ程の文章力を以ってしてもつかさが持ちネタしゃべってると
条件反射的に吹き出してしまう。ニコDの見すぎだ…。
3403 :やってられない名無しさん:2007/10/22(月) 20:49:49 ID:???0
>>3402
逆に胃がきりきりして感想かけねえ。
3404 :やってられない名無しさん:2007/10/22(月) 21:27:35 ID:???0
つい感想ぶっちゃけすぎた。あははははは……
ちょい後悔。
3405 :やってられない名無しさん:2007/10/22(月) 21:49:57 ID:???0
多少の毒はスパイスさ。
3406 :やってられない名無しさん:2007/10/22(月) 22:00:35 ID:???0
あれ読んでから、ほかの話の伏線の怖さが桁違いだぜ……
どうなるんだ放送後……
3407 :やってられない名無しさん:2007/10/22(月) 22:05:06 ID:???0
流れ的に不死者はかなりタフになるな、こりゃ
これまでの展開でも既にタフだけど
3408 :やってられない名無しさん:2007/10/22(月) 22:08:28 ID:???0
不死者をどうやって殺そうか、考えるやつがいるわけだぜ……
面白くなってきた


295:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/23 12:54:03 JD2r0ORO
3409 :やってられない名無しさん:2007/10/22(月) 22:09:54 ID:???0
腹刺されたり急所こそは外してるとはいえ機関銃の弾受けたり腹刺されたり首絞められたりしてるもんな
つーか今の所ポロロッカ王子、SS書かれる度に普通なら死んでるダメージ受けてるじゃねーかw
3410 :やってられない名無しさん:2007/10/22(月) 22:15:49 ID:???0
どう殺すかをぶっとばしてかがみがロワを生き残っていたらを妄想している俺異端
……どうやってもハッピーではありませんが御褒美で(ry
3411 :やってられない名無しさん:2007/10/22(月) 22:18:00 ID:???0
かがみへのご褒美:ハイパーゼクター
これで時を巻き戻すんだ!
3412 :やってられない名無しさん:2007/10/22(月) 22:23:01 ID:???0
バイツァダストを使うんだ!
3413 :やってられない名無しさん:2007/10/22(月) 22:23:57 ID:???0
実際、死んだはずの人間が参加してるわけだしな
タイムベントも可能だろう
3414 :やってられない名無しさん:2007/10/22(月) 22:30:30 ID:???0
……リアルで忙しいときに限ってネタが浮かんできやがる…
しかもそんな時に限って書きたいキャラに予約がどんどん入ってきやがる…
チクショウ!!あと一週間立ったら覚えてろよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!
たまには毒吐きらしく毒を。どっちかってと誤爆スレ向きだったかも
3415 :やってられない名無しさん:2007/10/22(月) 22:36:06 ID:???0
>>3414
かまわんぜ……いくらでも叫ぶがいい。
予約は俺がもらった!!!
3416 :やってられない名無しさん:2007/10/23(火) 00:26:20 ID:???0
今日はもうなしか、いや昨日?
どっちでもいいか。LX氏の作品にみんな尻込みしているのだろうか?
3417 :やってられない名無しさん:2007/10/23(火) 01:01:59 ID:???0
ごめん予約してから書き始めたから素直に木曜までまってくれ
と思った書き手、挙手ノシ
3418 :やってられない名無しさん:2007/10/23(火) 01:03:44 ID:???0
何か…ヴィラル、普通に返り討ちされそうでかわいそう


296:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/23 12:55:04 JD2r0ORO
3419 :やってられない名無しさん:2007/10/23(火) 01:06:39 ID:???0
会長が男相手に手加減するはずが無いよな……
そんでなっきー逃げろ、その男は危険だ
3420 :やってられない名無しさん:2007/10/23(火) 01:30:30 ID:???0
今の予約中三人死ぬと予想しておこう
3421 :やってられない名無しさん:2007/10/23(火) 01:38:50 ID:???0
毎回やられてるのに何故か生き残るマーダー、というジャンルを開拓するかもしれない
ガチでやったら間合いにも入れないだろうし
3422 :やってられない名無しさん:2007/10/23(火) 01:39:40 ID:???0
伸びるしなあの薙刀。
つか、会長のエレメントは半端なチャイルドより強いし。
3423 :やってられない名無しさん:2007/10/23(火) 01:46:25 ID:???0
会長に迫力勝負で負けなかったら
たいしたやつだと認めてやっていいと思う
3424 :やってられない名無しさん:2007/10/23(火) 09:12:35 ID:???0
しかし、重火器とかの実用的な支給品が少ない……
折角不明支給品が沢山あったのに、気が付いたらどんどんハズレ支給品で埋められてってるし。
不明で残しといた意味なかったなー
3425 :やってられない名無しさん:2007/10/23(火) 09:20:11 ID:???0
最大で支給品は246出せるのに未だに現実出典の銃は10個しか出ていないんだぜ
どちらにしろ空いた支給品あったら銃ぶち込む予定ではあったけど
3426 :やってられない名無しさん:2007/10/23(火) 09:27:50 ID:???0
警察署で銃器調達が可能かもしれない。
ということで、あるキャラの目的地を警察署に設定した私。
3427 :やってられない名無しさん:2007/10/23(火) 09:50:38 ID:???0
ミー君ならガラクタから簡単な火器を作れるんじゃないか
3428 :やってられない名無しさん:2007/10/23(火) 09:56:46 ID:???0
>>3425
各作品から銃火器がいくつかでてるから、そこそこ充分だとは思う。
3429 :やってられない名無しさん:2007/10/23(火) 10:25:52 ID:???0
そういや、普段から銃火器に馴染んでる人も結構多いね
3430 :やってられない名無しさん:2007/10/23(火) 10:44:28 ID:???0
今ってまだ不明支給品ってあったっけ?
もういい加減に、不明支給品を出オチの使い捨てにするのは止めて頂きたいところだが。
私感で申し訳ないが、クロちゃん系の支給品は無駄な出オチが多いと思ったよ。
文鎮とか、目玉とか……etc
3431 :やってられない名無しさん:2007/10/23(火) 10:48:25 ID:???0
だが、ボン太くんやらフルメタやらのらきすた系列はデオチにしかならない罠。
せめて読子さんの手に渡れば活躍できるんだけどなぁ。
3432 :やってられない名無しさん:2007/10/23(火) 10:52:50 ID:???0
後半にハズレ支給品が化ける展開もあるにはあるんだが……。
まぁぶっちゃけどう考えても化ける要素が無いものが多い。それどころかそこら辺で調達出来そうなものとか。
作品を代表するようなハズレ支給品は除いた話だけど。
3433 :やってられない名無しさん:2007/10/23(火) 10:56:55 ID:???0
当たり入れてもズガンだからみんなびびってるんだよ。
3434 :やってられない名無しさん:2007/10/23(火) 11:06:24 ID:???0
なんでアタリとハズレしか思いつかないんだよ!
3435 :やってられない名無しさん:2007/10/23(火) 11:42:53 ID:???O
当たりでもハズレでもないのってなんだよ?

297:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/23 12:58:24 JD2r0ORO
抜き出して見るとほとんど同じ香具師がずっと話してるように見えるな

298:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/23 14:31:45 /38bT8Q8
そりゃもう

299:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/24 06:17:23 QFq1X5a7
したらばでやってろ馬鹿

300:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/24 09:08:45 SNu+g9NW
アニロワ3rd始めようぜ

301:何が彼女を壊したか? ◆lbhhgwAtQE
07/10/24 17:52:15 F5CQ08Ey
放送は6時丁度、支給された時計の長身と秒針がぴったり頂点で重なり合ったその時に始まった。
時計を片手に放送を待っていた明智は、螺旋王が時間に極めて正確に放送を開始したことに感心しながら、それを聞く。

放送にて、螺旋王が告げた情報の中で重要な事項は2つ。
一つは、立ち入りが禁止されるエリア3箇所。
そしてもう一つは、この6時間の間に命を散らした死者の名前。

「海上、市街地、山間部……なるほど。バランスよくってところですか」
禁止エリアに関して言えば、施設を含まないエリアが指定されていた。
殺し合いもまだ序盤であり、早々に参加者に爆死されても興ざめということで、人が集まりにくいであろう場所を意図的に選んだのだろう。
―明智は、そう推理する。
「しかし、注意に越したことはありませんね。うっかり禁止エリアに足を入れてズガンなんてことになったら、金田一君や剣持警部に腹を抱えて笑われてしまいますし」
明智はそう呟くと、彼ら二人が抱腹絶倒している姿を思い浮かべ、苦笑する。
幸いなことに、放送で告げられた名前の中に、彼ら二人の名前は無かった。
まだ、あの下品な笑いを見る機会は残っているようだ。
……しかし。
「9人……か」
それでも、この6時間の間に9人の人間が死んだ、と放送は告げた。
9人全員が自殺や事故死をしている可能性は極めて低く、かといって同じ人間が全員を殺したともいえない。
つまり、この舞台にはロイ・マスタングのように殺し合いに乗った参加者が確実に複数存在しているという事だ。
死亡者一人につき、殺害者がそれぞれ一人いるとするならば最低でも9人。
そして殺し合いに乗っているもののまだ誰も殺せていない参加者が同じ数だけ存在すると仮定すると倍の18人。
18人……それが、現状から明智が考えた、6時までの段階で殺人を犯した、犯そうと目論む者の人数だった。
しかし、これだけでは終らない。
この放送によって、心変わりする人物も出てくるだろう、と明智は考える。
主催者は言った。優勝すれば、その者が望むことを何でも叶えてやることにする。と
ならば、こう考えるものも出てくるだろう。

―優勝して、死者を蘇生してもらうしかない。

非常に短絡的で非現実的な考えだが、親しい人物を失い精神が不安定な状態にある者ならば、それにすがる可能性は大いにある。
詳細名簿を見れば、今回兄妹や友人を失った事を知ることになる参加者が複数いることが分かる。
そんな彼らのうちの何割かが先述のような理由で殺し合いに改めて乗ったのだとしたら――
「20人強……全体の4分の1は殺し合いに乗ってると考えるべき、といったところですか」
その中にはあの焔の錬金術師ロイ・マスタングも当然含まれている。
彼もまた、友人であるというエドワード・エルリックの死を知って、残った仲間を守るべく改めて殺し合いに乗ったことだろう。
「やはり護身の為の道具が欲しいところですね……」
マスタングの錬金術のように、参加者の中には自分のいた世界での科学技術からは考えられないような能力を持った人間が多くいるようだ。
この前のヨットハーバーの時のように毎度都合のいい場所で彼らと出会えるわけではない。
もし今、丸腰の自分にそんな殺し合いに乗った能力者が襲い掛かってきたとしたら……。
そう考えれば考えるほど、明智は手元が寂しく感じてきた。
そして、その寂しさを紛らわすように彼は腰に差していた白い銃を手にする。
「せめて、これが使えれば、どれだけ良かったことか……」
『申し訳ありません』
愚痴を垂れていても仕方ない、そう思い明智は銃を腰に差しなおし、立ち上がろうとした。
……が、その時彼は耳にしたのだ。男性の明瞭な声を、それも極めて近距離で。
「…………………………え? 今、どこから……」
『こちらです。あなたの手にしている銃からです』
声に言われるままに明智は腰に差そうとしていた銃を目にする。
「まさか……音声機能がついているとでも?」
『そうです。私はクロスミラージュ。インテリジェントデバイスとして生み出された存在です』
明智は質問に答える手元の銃に呆然とするしかなかった。

(……銃が喋る? これも錬金術の力なのだろうか?)

302:何が彼女を壊したか? ◆lbhhgwAtQE
07/10/24 17:53:31 F5CQ08Ey


放送は午前6時丁度に行われた。
だが、そのようなことは時計をはじめとした支給品を一切合財手放したティアナが知る由も無かった。
彼女は放送が始まってもなお、無我夢中で走り続けた。
しかし……

―キャロ・ル・ルシエ

死亡者を読み上げる中で呼ばれたその名前を聞いた瞬間、彼女はぴたりと立ち止まった。
そして、その場に膝を突いて崩れる。
「キャロ…………キャロ…………!」
キャロの死。
それは、彼女の目の前で起きた出来事であり、目を背けたかったことだった。
だが、それは放送が告げるように事実であり、決して逃れようの無いことであった。
「ごめんね…………守れなくってごめんね…………」
地に手をつき、ティアナは涙を零しながら項垂れる。
彼女の脳裏に浮かぶのは、元気だった頃の彼女。
ともに訓練をして汗をかき、ともにシャワーを浴びながら歓談し、ともに食事をしながら笑いあい――
しかし、もうキャロはいない。
彼女は頭を撃ち抜かれ、その後原形を止めないほどに頭部を破壊されたのだ。
それも自分の目の前で。
楽しかった頃の記憶を上書きするように、その時の記憶が彼女の脳をどす黒く塗りつぶしてゆく。
「……うっ! ぐ……ぐ……げ、げえぇぇぇ!!!」
そして、そんな記憶の上書きに拒絶反応を起したのか、彼女は反射的に嘔吐した。
最初の嘔吐で胃の中の物をあらかた吐き出した彼女の口から零れるのは、今や透明な胃液のみ。
その胃液の酸っぱさに反応すると、ティアナは起き上がる。
そうだ、いつまでも下を向いている場合ではない。
キャロのような犠牲者を六課から出さないためにはどうしたらいいのか?
つい先ほど決めたではないか。
六課の仲間以外は“敵”なのだ。
例えどんな善人面していようと、どんな小さい子供であろうと。赤の他人の腹の底など理解できないものなのだ。
殺し合いの場において、仲間を殺そうとする敵がいたら、殺さなければならない。
そう、知らない参加者はみんな殺していけばいいのだ。
“敵”を殺し尽くしたら、その後は、どうしたらいいかは分からない。
だが、今彼女に出来るのはそれだけなのだ。やるしかなかった。
「待っててね、スバル、エリオ、八神部隊長、シャマルさん……私が……私が全部片付けるから!」
虚ろな瞳に歪んだ決意を浮かべ、彼女は走り出す。

そうして、彼女が走っていった先にあったもの。
それが、モノレールの駅であり――


303:何が彼女を壊したか? ◆lbhhgwAtQE
07/10/24 17:54:39 F5CQ08Ey


クロスミラージュは考えていた。
主の元を離れた自分を手にした見ず知らずの男が殺し合いに乗らない、信用に足る人物であるのかどうかを。
信用に足る人物ならば、自分もこの状況を打破するべく知恵を貸すなりして協力したいが、もしそうでなかった場合は、自分を人殺しの道具として悪用されてしまう可能性がある。
だから沈黙を守り、ただの撃てない拳銃のふりをしていた。
こうして沈黙している間に、男が信用にたるかどうか調べる為に。
そうして沈黙すること6時間。
今までの男の様子を観察した結果、彼が殺し合いに乗らないことを確認したクロスミラージュは、ついに言葉を発した。

―これが、あの時の博物館での出来事の顛末だった。

「つまり、私はあなたに認められたと」
『そういうことになります』
「それは実に光栄なことです。ありがとうございます」
そんな会話をしながら、彼……もとい彼“ら”は歩いていた。
目指すはモノレールの駅。
乗るにしろ、乗らないにしろ、一度運行状況を把握しておいたほうが後々の為になる。
そう考え、彼らは駅に向かっていたのだ。
「ところで、クロスミラージュ君。君に質問があるのですが」
『何ですか。Mr.明智』
「君は先ほど、自分を魔法を補助する為の道具だといっていましたが……その魔法というのはどういったものか説明できますか?」
『はい。少し長くなるとは思いますが―』
錬金術といい魔法といい、自分からすれば、それこそフィクションの産物のような力を持つ人間が沢山いる。
そして、自分はそういった力にもいずれ対抗しなければならないかもしれない。
対抗するには、その力がどのような原理の元に働いているのか。
それを知る必要があり、明智はそのような意図の下クロスミラージュから説明を受けることにしたのだ。
『―と、いうことなのですが……分かりましたか?』
「ふむ……つまり、自身というコンピュータの中で詠唱というコマンド入力をすることによって、魔法というプログラムを起動させる……といった形態なんですよね。
 そして、あなたはその詠唱を簡略化する、いわばショートカットコマンドを持った道具である、と」
『理解が早くて嬉しい限りです』
元々プログラミングにも精通していた明智は、それを理解するように魔法という存在を理解した。
どうやら、クロスミラージュの知る“魔法”は、自分の知る物理や数学の世界の延長線上にあり、随分と体系化された技術のようだ。
……が、それは同時に、その魔法という技術が、ある日突然使えるようになるものではなく、魔力という媒介と一定の修練がなければ使えないということも意味している。
「どうやら、私には使いこなせないようですね」
『申し訳ありません……』
「いえ、あなたが謝る様な事ではありませんよ。魔法について理解できただけでも収穫が―と、喋っている間に到着したようですね」
クロスミラージュとの会話の途中。
彼らはようやく目的地であるモノレール駅にたどり着いたのだった。

304:何が彼女を壊したか? ◆lbhhgwAtQE
07/10/24 17:56:09 F5CQ08Ey
明智達がたどり着いた『出石(でいし)駅』は、地上部から伸びる階段の先にある中二階部分に駅舎が、さらにそこから階段を昇った2階部分にホームがあるという様式だった。
モノレールを通す軌道は一本、単線であり、待機線はない。
全ての駅を同じ構造と仮定するなら、ここでは一編成のモノレールを終点に着くたびに折り返させながら運行しているものと考えられる。
「実に効率の悪い運行をするのですね、螺旋王。これでは赤字確定ですよ?」
ホームに立ち、軌道を観察する明智は、盗聴しているだろう螺旋王に向かって愚痴をこぼしてみる。
それに意味が無いと分かっていながらも。
そして、次に彼はホームの看板にあった時刻表を眺める。
「ふむ……7時丁度到着の20分出発ですか」
『直に到着するという事ですね』
モノレールの到着はそう遠くないらしい。
ちなみにモノレールが進む方向は、D-1方面。
水族館やらドーム球場といったアミューズメント施設が近くにはあるようだ。
『市街の中心から離れた場所に向かうようですが、どうするのですか? Mr.明智』
「確かに中心街から離れた場所に向かうことになりそうですが……あの博物館に興味深い事実があったように、あちらの施設にも何か隠されている可能性があります。行ってみる価値はあるかもしれませんよ?」
『そう言われて見ると、その判断にも一理あります』
「どちらにせよ、まだ到着までいくらか時間があります。それまでに駅舎の内部をもう少し調べてみるとしましょう」
時計を見れば、まだ10分強の猶予がある。
その間、ただ何もせずに待っているというのも時間の無駄だと明智は判断し、階段を下っていった。

中二階にある駅舎フロアは電灯が灯っていない為に薄暗く、そして極めて簡素な作りになっていた。
ホームへ続く階段、地上へ下りるための階段、自動券売機、自動改札、トイレ、そして駅員の詰所。
そこにあるのは大まかに分けて、6つの設備、フロアしかなかった。
そして、その6つのうち、券売機と自動改札はホームに上がる前に電源が入っていないのか、作動していないことを確認してある。
よって、明智が次に調べたとしたのは……
「……ふむ。さすがに武器らしい武器が置いてあるわけありません、か」
明智は詰所のドアを開き、中を調べていった。
しかし、そこには事務用品や帳簿のようなものしかなく、有益そうなものといえばモノレールの運行状況を示した表、ダイヤグラムがあったくらいだった。
それを見るに、モノレールは明智の予想通り、一編成の折り返し運転によって運行されているようだ。
明智はいつか役に立つかもしれないと考え、それを詰所の隅にあったコピー機で複写してデイパックにしまうと、部屋を出ようとする。
するとその時、彼は物音を耳にすることになる。
それはドアの向こう、地上部に繋がる階段の方向から聞こえてくる声で……

305:何が彼女を壊したか? ◆lbhhgwAtQE
07/10/24 17:57:44 F5CQ08Ey


ティアナがモノレールの駅の階段を上っていったのはただの気紛れだった。
あえて理由をつけるならば、「そこに駅があったから」と言うべきだろうか。
とにかく、そんなわけで彼女は今、駅舎のフロアにたどり着いたのだ。
「…………」
だが、先述の通り彼女は当てもなくここにやってきたわけで、駅に来て何かをしようと思っていたわけでもない。
故に彼女はただ、何もせずにただ立ち尽くすだけだった。
しかし、そんな時だった。
「おはようございます」
突如、左前方にあったドアが開いたかと思うと、眼鏡を掛けた長身の男性が姿を現した。
男は、ティアナと同じフロアに立つと、ドアを閉め、こちらに微笑みかけてきた。
「あなたはティアナ・ランスターさんですね?」
「……!?」
「あぁ、すみません。まだ自己紹介してませんでしたね。私は日本の警視庁刑事部捜査第一課の明智という者で―」
男は自己紹介を続けるが、それはティアナの耳には届いていなかった。
彼女の脳裏では、何故この男が自分の名前を知っているのかという疑問が渦巻いていた。
自分はこの男に会ったことも無ければ、雑誌やテレビで見かけたこともない。
正真正銘の初対面のはず。

なのに、何故知っているのか?
誰かから伝え聞いた?
その“誰か”とは?
……決まってるじゃないか。自分を知っている“誰か”とは“六課の仲間”だ。
そして、この場にその仲間がいないということは、つまりこの男は六課の仲間から情報を聞きだした後、卑劣にも殺害したに決まっているわけで……。

「―というわけで、あなたに戦意がないのであれば、是非協力して……」
「うっさい……」
「……え?」
「うっさいって言ってるでしょ!!!」
叫ぶと同時にティアナはチャージしていた魔力を解放、複数の光弾を男目掛けて放った。
だが、それは男が間一髪で回避したために、男の代わりに駅舎の壁に直撃する。
すると、壁は轟音を立てて崩れてゆく。―非殺傷設定など、遠の昔に解除していたのだ。
「突然どうしたのですか? 私にあなたを攻撃する意志は―」
「うるさいうるさい! うるさいうるさいうるさい!! そんな言葉に騙されるものか! お前達は……全員敵なんだ!!」
男目掛けて、再度光弾を発射するも、それはまたしても壁を抉るだけに終わる。
「―だったら!」
ティアナは光弾を生み出すと、今度は軌道を大きく上方に変更して発射する。
すると、弾は男の真上にあった案内板を支えるポールを直撃、天井との接点を失った案内板は真下の男を襲うことになり―
「くっ―」
回避運動を行う隙を彼女は見逃していなかった。
「シュート!!!」
今度こそ当たれ! そんな意志を乗せて光弾は男へとまっすぐに突き進む。
しかし、男は今度は屈むことでその直撃を免れた。
ただし、彼の肩を弾のひとつが掠めたようだったが。
「チィッ!」
精製した魔力弾は、今ので弾切れだ。
ティアナは目の前の男に角の影へと隠れるチャンスを与えてしまった。

……だが、これで終ったわけではない。
駅の唯一の出口である階段前は自分が押さえている。
ホームに逃げるにしても、上り階段へ向かうには自分の前へと一度姿を見せなくてはならない。
ならば、ティアナはそこを突くまで。
彼女は冷静にそのような考えに落ち着くと、再度魔力弾を精製し始めた。

306:何が彼女を壊したか? ◆lbhhgwAtQE
07/10/24 17:59:03 F5CQ08Ey


ティアナが階段前で待ち構えている頃。

「やれやれ……参りましたね」
弾が掠め、血が流れる左肩を押さえながら明智は、その端正な顔に焦りの表情を見せる。
「あなたの言う魔法というものが、我々の知る銃火器に近い存在であることを身をもって痛感しましたよ」
『一体どういうことなのでしょうか……。何故マスターが……』
クロスミラージュは動揺しているような声を発する。
無理もない。
いくつもの作戦で行動をともにしてきた彼にとって、今のティアナの様子は信じられないほど変わっていたのだから。

―詰所で物音を聞いた時。
誰かが近づいてくることを察知した明智は、改札横の窓からティアナが近づいてきたのを確認した。
そしてその事実をクロスミラージュが知ると、彼は「ティアナと合流してみてはどうか?」と提案してきた。
クロスミラージュは知っていたのだ。
彼女が決して殺し合いに乗るような人間ではなく、生真面目で明智と同じような正義感を持ったパートナーである、と。

だが、行動の結果からすると、そのクロスミラージュの思惑は見事に外れたことになる。
彼女は、明智の話を遮って突如として攻撃してきたのだ。それも非殺傷設定を解除した状態で。
『何故このようなことに……』
「元から殺人狂や疑心暗鬼に駆られやすい性格でなかったとするなら、原因は恐らく……キャロ・ル・ルシエの死でしょうね」
放送で呼ばれた中にいた一人、キャロ・ル・ルシエ。
詳細名簿によれば、ティアナと彼女は、同じ職場の仲間らしい。
互いにまだ子供、しかも同性とくれば、恐らくはそれなりに親しかったのだろう。
そのような人物が死亡したとなれば、彼が博物館で危惧していたような“心変わり”を起しても何ら違和感は無い。
「よくよく見てみれば、彼女の衣服には血痕が多数付着していましたし……私としたことが油断していましたね」
『いいえ、私がマスターの様子を十分に観察する前に、顔を出そうと言ったのがそもそもの原因で……』
「クロスミラージュ君、今はそのようなことを延々と言っている場合ではなさそうですよ」
隠れた影から、ティアナのいるほうを覗く明智。
すると、そこには無数の魔力弾を空中に浮かせ、階段前に陣取る彼女の姿がありありと見えた。
「まずは、この状況をどうにかしないと……」
下に逃げるにも上に逃げるにも、ティアナの前へと飛び出なくてはいけない状況下。
あの魔力弾の弾幕を単純に掻い潜るのは困難だろう。
―といって、いつまでもここに留まっているわけにもいかない。
ならばどうすればいいのか。

……明智はその脳をフルに回転させながら考えていた。

307:何が彼女を壊したか? ◆lbhhgwAtQE
07/10/24 18:00:44 F5CQ08Ey


隠れる明智と、構えるティアナ。
二人の間で続いた膠着状態を最初に破ったのは、明智の方だった。
「ティアナさん、聞こえますか?」
壁に身を隠したまま、明智はティアナに聞こえるような声で尋ねる。
だが、彼女はそんな彼の問いには反応しない。
いや、聞こえてはいるのだが、無視しているのであった。
敵の言葉に耳を貸す必要などないのだから。
「もう一度言いますが、私にはあなたを殺そうとする意志はありません」
ティアナはそれでも返事をしない。
「出来れば、あなたもその物騒な弾丸を収めてくれると嬉しいのですが……無理ですかね―と、おっと!」
問いかけながら角から顔を出した明智目掛けて、ティアナは魔力弾を数発撃ちこむ。
だが、結果は相変わらず壁を抉るだけ。
すると、壁の向こうに隠れた明智は再度ティアナに質問をぶつけてきた。
「では、一つだけ質問を。……何故あなたはこのようなことを? このようなこと、あなたの友達や上司は望んでいるのですか?」
「―!!」
「聞き及んだところによると、あなた達は向こうの世界では治安維持の為に働いていたとのこと。そんなあなたが何故このような殺し合いに乗ってしまったのですか?」
その言葉を聞いて、ティアナの頭には血が上ってゆく。
何故こんなことにしているかだと?
決まってるではないか。
自分達六課の仲間を、見ず知らずの“敵”から守るためだ。
キャロのような悲劇はもう繰り返してはいけない。
だから、自分が人を殺したり出来ないであろうスバルやエリオに成り代わって、参加者を殺そうと決意したのだ。
それだというのに、あの男は……!
「それと、私はあなたの相棒であるクロスm―」
「何も分かってないくせに……私達のこと何も知らないくせに……そんな言葉に誰が乗せられるものかっっ!!!」
明智の言葉を遮りティアナは、魔力弾を一気に明智の隠れている場所に撃ち込む。
今度は今までのような直線軌道の弾丸ではない。
自分の遺志である程度のコントロールが出来る誘導弾だ。
誘導する先は勿論、男の来ていたスーツが見え隠れする角の向こう。すると―
「ぐあぁぁぁぁ!!!!」
弾がその向こうに消えて間もなく、男の叫び声が聞こえてきた。
先ほどまで、余裕を持ったいけすかない喋り方をしていた男の声だ。
今まで真っ直ぐにしか飛んでいなかった弾が突然曲がって、しかも大量にやってきたのだから、ひとたまりも無いだろう。
「やった……のよね?」
ティアナは、男の被弾を確認するために奥へと進んでゆく。
すると、そこには確かに穴が空き、焼き爛れたスーツの上着があったのだが…………
「―!?」
ティアナの目の前にはスーツの残骸はあれども、それを着ていた人間の方がいなかった。
あるのは、黒焦げの上着と横倒しになった同じく黒焦げの背の高い観葉植物のみ。
このとき、ティアナがもし六課の普段の教導の時のように冷静であれば、これが囮であり、すぐ傍にこれを仕掛けた張本人がいることに気付いていたであろう。
だが、今の興奮した状態のティアナにそのような判断は下せなかったようで……背後の存在に気付くのも一歩遅かった。
「……な、は、離して!!」
「ここで離してしまうほど私も愚かではないのでね」
気付けばティアナはうつ伏せに押し倒され、両腕を後ろに捻りあげられていた。
「こ、殺してやる!! あんたなんかにあんたなんかに殺されてる場合じゃないのよ!!」
「うぉっと……やはり訓練を受けているだけありますね……。しかし、私も今のあなたを野放しになど出来ません。……少し頭を冷やしてもらいましょうか!」
「―ぐぁっ!」
首筋に鈍い痛みを感じると同時に、ティアナの意識は深い闇に包まれていった。
そして、彼女は意識を完全に失う直前、懐かしい声を耳にすることになる。
『申……あ……せん、……ター……』

―あ……れ? この声……って……クロ……スミラー………………

308:何が彼女を壊したか? ◆lbhhgwAtQE
07/10/24 18:02:21 F5CQ08Ey


「とりあえず……今はこれでいいでしょう」
何とかティアナを取り押さえることに成功した明智は、少女が完全に意識を失ったことを確認して、大きく息を吐いた。
「次に目を覚ました時は少しは冷静になってくれているといいのですが……」
『マスター……』
「今はそっとしておきましょう。それよりも……」
明智は立ち上がると、焼き爛れた上着の元まで歩き、それを拾い上げる。
「直撃なら今頃、私がこのスーツの穴のある場所に穴をあけていたわけですか……。事前に貴方に誘導弾の事を聞いておいて本当に良かった」
『マスターなら、あの状況で誘導弾を使わないはずがなかったですから……』
ティアナを説得しようとしていたあの時。
彼はクロスミラージュから、ティアナの砲撃魔法について簡単に説明を受けていた。
もし、彼女が本気ならば、そろそろ誘導弾が発射されてもおかしくない、と。
そのような忠告を受けていたからこそ、彼は観葉植物の木をスーツを組み合わせる事でダミー人形を作ることを思いついた。
角から見え隠れする位置にそのようなダミーがあれば、誘導弾の目標もそちらに定めるだろういう見込みだったのだが、どうやらそれは的中したようだった。
「せっかくの上着が台無しになったのは切ないですが、今回はまぁ仕方のなかったということで―」
明智は焼けた布切れと化した上着をその場に置くと、再びティアナの元に。
そして彼は、彼女を抱きかかえた。
『マスターをどうするつもりで?』
「このまま放置しておくのも男として恥ずべきことですしね、詰所で寝かせてあげようかと」

詰所には丁度いい具合に、人を寝かせられるサイズのソファがあった。
明智はそこに彼女を寝かせると、今度はどこからか荷造り用のナイロンロープを持ってくる。
『Mr.明智。まさかあなた、特殊な趣味が……』
「違います。あのような出来事がありましたから、一応の処置ですよ。起きてすぐに私の顔を見て暴れだされたら、それはそれで困りますし」
『ということはつまり、あなたはマスターが起きるまで、付き添うと?』
「そういうことになりますね。女性を放置しておけるほど私も腐ってはいません」
目の前で眠る少女は、ふとした衝撃で心にひびが入り、そのひびが大きくなることで暴走を始めたに過ぎたに違いない。
犯罪を芸術と見る高遠や、最初から仲間を守ると決意してゲームに乗ったロイとは違う。
だからこそ、まだ救えるかもしれない。まだ正気に戻ってくれるかもしれない。
警察とは、犯罪者を取り締まるだけの組織ではない。
犯罪を犯した者に更生させるための機会を与える組織なのだ。
そんな組織に属する明智だったからこそ、ティアナには立ち直ってほしいと思っていた。
だが、ここには明智と思いを同じにする―いや、明智以上にそれを願うものがいた。
『Mr.明智。ここは私に任せてもらえないでしょうか?』
クロスミラージュは、ティアナの両手を拘束しようとしていた明智を呼びとめ、そんな提案をしてきた。
当然、明智は驚いたようにクロスミラージュの方を振り返る。
「いえ、任せるとは言っても、あなたには手がないですからロープを縛るという行為が―」
『そうではありません。私に任せてもらいたいのは―マスターの説得です』
作業を続けようとしていた明智の手が止まる。
『あなたは非常に聡明だ。ここで時間を潰しているよりも、他の施設を回ったり、あなたと同じ意志を持つ仲間を探したほうが有益なはずです』
「しかし、私があなたを放置してこの場を離れてしまっては、もしもの時に……」
『私を信じてください。私がマスターを……絶対に説得してみせます』
語気を強くしてクロスミラージュは主張する。
今まで常に冷静であった彼がそこまで言うのであれば……と、明智は考える。
確かに、彼女が目を覚ました時、自分を気絶させた張本人が目の前にいては錯乱状態を再度陥るかもしれない。
説得をするなら、彼女が信じているパートナーの方が適しているはずだ。
ただし、もし説得に失敗した場合は、ティアナは得物を手に入れた状態で殺戮の舞台に舞い戻ることになる。

クロスミラージュに任せるか、それともやはり自分が残留するか。

明智が考えた末に出した結論は――

309:何が彼女を壊したか? ◆lbhhgwAtQE
07/10/24 18:04:20 F5CQ08Ey
「ほぅ、車両自体は立派なものですね」
ホームに待機しているモノレールを眺めながら、明智は呟く。
単線かつ一両編成の折り返し運転という環境から、質素な車両を想像していた彼にとって、目の前にあった車両は外観も内装も意外なほどに綺麗に見えたのだ。
ただし、「らせん号」と書かれたネームプレートだけはいただけなかったが。
「―と、こうして眺めている場合ではありませんでしたね」
時計を見れば、時間は7時20分になろうとしている。
明智は車内に足を踏み入れ、出発を待つ。
そして、それから間もなく発車ベルがホームに鳴り響き、ドアが閉まるとモノレールはゆっくりと北上を始めた。
窓を覗けば出石駅がどんどん遠ざかっていく。
明智は、その駅を見ながら、そこに残していった仲間の無事を祈った

(……後は任せましたよ、クロスミラージュ君)





明智がモノレールに乗り北上を始めた頃。
クロスミラージュは詰所のデスクの上にいた。
そしてそのデスクの傍では、ティアナがソファに眠っている。
そう、結論から言えば、彼は明智に説得を任されたのだ。

―「では、ティアナさんの説得は任せます。私はひとまずモノレールでD-1へと向かってみようと思います」
―「しかし、特に何もなければ、10時50分発の便でこちらに戻ってくるつもりです。彼女のことも気がかりですし」
―「ではまた後ほど。それまでの間、彼女をお願いしますよ、クロスミラージュ君」

人ではない、道具に過ぎない自分を彼は信用してくれた。
ならば、クロスミラージュもそんな明智の信頼に応えなくてはならない。
自分はティアナのパートナーだ。
壊れた彼女を元の少し厳しいところもあるが根は優しい彼女に戻すのは、当然の義務だ。
「う、うぅん…………」
依然、深い眠りについたままのティアナ。
彼女の壊れた心は、本当に直せるのだろうか?

それは、誰にも分からない。

310:何が彼女を壊したか? ◆lbhhgwAtQE
07/10/24 18:06:44 F5CQ08Ey
【C-4・モノレール車内/一日目・朝】
【明智健吾@金田一少年の事件簿】
[状態]:若干疲労、右肩に裂傷、服も乾いてきた頃(上着喪失)
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、ジャン・ハボックの煙草(残り16本)@鋼の錬金術師、参加者詳細名簿、予備カートリッジ8
    ダイヤグラムのコピー
[思考]
基本思考:犯罪芸術家「高遠遙一」の確保。ゲームからの脱出。
1:ゲームに乗っていない人間を探しつつ施設を回る。
2:D-1駅に到着次第、付近を調査(水族館かドーム球場を回りたい)
3:D-1駅から10:50発のモノレールに乗ってD-4駅へと戻り、クロスミラージュと合流。
4:金田一、剣持を探す。
5:明日の正午以降に博物館の先に進む。信頼できる人物にはこのことを伝える。

[備考]
※参戦時期はアニメ最終回(怪奇サーカスの殺人)後
※リリカルなのはの世界の魔法の原理について把握しました。

【D-4・D-4駅駅員詰所/一日目・朝】
【ティアナ・ランスター@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
[状態]:精神崩壊、血塗れ、気絶
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
1:…………
2:スバル、エリオ、はやてが危険に晒される前に他の参加者を皆殺しにする。
3:映画館近辺には戻りたくない。が、あの二人(ジェットとチェス)はいつか殺す。
[備考]
※キャロ殺害の真犯人はジェット、帽子の少年(チェス)はグル、と思い込んでいます。
 これはキャロのバラバラ遺体を見たショックにより齎された突発的な発想であり、この結果に結びつけることで、辛うじて自己を保っています。
 この事実が否定されたとき、さらなる精神崩壊を引き起こす恐れがあります。
※銃器に対するトラウマはまだ若干残っていますが、相手に対する殺意が強ければなんとか握れるものと思われます。
※冷静さを多少欠けていますが、戦闘を行うことは十分可能なようです。
※説得をクロスミラージュに一任している為に、手足は拘束されずに済みました。


[全体備考]
※D-4駅には戦闘の痕跡が残っており、明智の上着が放置されています。
※「クロスミラージュ@魔法少女リリカルなのはStrikerS(カートリッジ4/4) x2」が詰所のテーブルに置かれています。

311:三つの心が一つにならない  ◆DNdG5hiFT6
07/10/24 18:22:53 Ism2cGKG
『―エドワード・エルリック、キャロ・ル・ルシエ、―枢木スザク』

その名前が呼ばれた瞬間、名簿片手に放送を聴いていたルルーシュは自分の耳を疑った。

(スザクが……死んだ……?)

脳裏に浮かぶのは、はにかむ様に笑う親友の笑顔。

「何故だ……どうしてお前が死ななければならない……!」

最高の親友。
多少甘いところもあるがいずれは最も大切な妹すら任せようと思っていた男。

幼少の頃の出会い、互いに世界を変えようと誓い合ったこと、そして時を経ての再会。
それらがフラッシュバックし、
そのたびにその身を削られるような悔恨の念が自分を責め立てる。
まるで半身を失ったかのような感覚―ああ、これが“絶望”でなくて何というのだろう。

「そこにいるのは誰だっ!」

だからそんな声がかけられてから初めて
ルルーシュは自分が地面にへたり込んでいることに気付いたのであった。

「出て来い! 10秒数える間に出てこなければ撃つ!」

***


放送を聞き終えた糸色望は大きく息をつく。
とりあえずは自分の知り合いの名前が呼ばれなかったからである。
が、カレンの表情が僅かに曇っていることに気付く。
この状況でそんな表情の意味するところは一つ。

「……お知り合いの名前が呼ばれたのですね」
「はい……」
「こういう場合どういっていいのか分かりませんが……ご愁傷さまです」
「……いえ、いつかは倒さなければいけなかった相手です」
「? それはどういう……」

望が詳しく聞こうとしたその時、近くのトイレの裏から何かが崩れ落ちるような音がした。

「そこにいるのは誰だっ!」

今までとはうって変わった機敏な動作でカレンがディパックから取り出したのは黒い鉄塊―ワルサーP38だ。

「出て来い! 10秒数える間に出てこなければ撃つ!」

硬直する“ゼロ”を尻目にカレンは鋭い視線を物陰に向けたまま銃を構える。

312:三つの心が一つにならない  ◆DNdG5hiFT6
07/10/24 18:24:06 Ism2cGKG
糸色望は絶望した。

背後で物音がしたと思ったらいつの間にかカレンさんが銃を構えているではないですか!
しかもどう聞いても物騒なこと極まりない台詞を口にしながら!
ハッ、いけませんよこの状況は!

・出てきたのが凶悪な殺人鬼⇒カレンさんがやられる⇒私の監督責任
・出てきたのが無害な一般人⇒カレンさんが誤射する⇒私の監督責任

どちらにしろ私の監督責任になってしまうではないですか!
教育者の責任問題が取りざたされている昨今、そんな時事問題に巻き込まれたくありません!

「ま、待ってくださいカレンさん!」
「何を悠長な! あそこに隠れているのが
 この殺し合いに乗った輩だった場合どうするんですか!」
「(監督責任を追及されたくないので)私は貴女を危険な目に合わせたくはないのです!」
「え……」

カレンさんの体から力が抜けたのをいいことに、後ろに追いやります。
カレンさんの顔が何やら赤いようですが風邪でしょうか。
まぁずぶ濡れですからね。この問題を素早く解決して着替えないといけません。

「……私たちはこの争いには乗っていません。
 貴方も乗っていないのであれば姿を現してはいけないでしょうか。
 いえ、姿を現さなくともかまいません。
 それならば私たちがここから去るまでの間―そうですね5分ほどでいいので
 大人しくしてはいただけないでしょうか」

そして待つこと数秒。
反応がないのでこの場所から離れようかと思い始めたときでした、物影から少年が出てきたのは。
一見普通の少年……ですが彼を見たカレンさんが驚きの表情に変わりました。

「お知り合いで?」
「はい、学校の……クラスメイトです」
「なるほど。カレンさんのご学友の方ですか。
 はじめまして。一応今は色々あってゼロと名乗らせていただいてます」

とはいってもルルーシュ君はこちら―というか私を怪しんでいるようです。
まぁ目の前に怪しい仮面とマントの男がいたら不信でしょうしね。
ええ、その気持ちは十分に分かります。
そんな彼と私の間にカレンさんが庇うように立ちはだかります。

「ルルーシュ……これは、その……」
「俺だって馬鹿じゃない。“ゼロ”と親しげに話しているってことは“そういうこと”なんだろう?
 まさか黒の騎士団に参加していたとは予想外だったがな」

少し苛立たしげに言うルルーシュ君。
しかしまさかカレンさん以外にも“ゼロ”とやらを知っている人物がいらっしゃるとは。
もしかして若者の間では流行っているの人物なのでしょうか?
私も教師という職業柄、時事には敏感なほうだと思ったのですがそうでもないようです。
しかしそれにしてもひどい顔色です。こちらも風邪でも引いたのでしょうか。

313:三つの心が一つにならない  ◆DNdG5hiFT6
07/10/24 18:26:48 Ism2cGKG
「大丈夫ですか? その、顔色が優れないようですが」

私の言葉に反応したのはルルーシュ君よりもむしろカレンさんでした。
先ほど以上に沈痛な表情を浮かべ、ルルーシュ君に話しかけます。

「ルルーシュ、その、放送は……」
「ああ、聞いたよ……くそっ!
 こんなところで死んでいい人間じゃなかったはずだ、あいつは!」

そう言って拳を握り締めるルルーシュ君。
話から察するに先ほど放送で呼ばれた人間とは相当親しかったのでしょう。

「……ルルーシュはこれからどうする予定?」
「……まだ決めていないな。まずはスザクと合流するつもりだったから」
「……なら、私たちといっしょに来ないか。
 私たちはこれからゲームを倒す同志を集めて回るつもりだ。それに協力して欲しい」

―はい?
ちょっと待ってください。それは初めて聞いたのですが
ルルーシュ君も訝しげな目でこっちを見ているじゃありませんか。

「……それはその……ゼロがそう言ったのか?」
「いえ、私は「ああ、ゼロはそう言ってくれた!!」」

いえ、言ってません! 言ってませんよそんなこと!
何なら前回を読み直して頂いても結構です!

「ゼロは言ってくれた。『貴女の目的に力をお貸しすることにしましょう』と。
 私の―いや、黒の騎士団は『すべての武器を持たないものの味方』だ。
 だからこのゲームに巻き込まれたお前みたいな人々を助けるために私たちは活動しようと思っている!」

……どうやら彼女の中で最早それは決定事項のようです。
こちらも『貴女の目的に力をお貸しすることにしましょう』と言ったことと
『ゼロを演じきる』と決めたことは事実なので下手に反論出来ないじゃあないですか!
ルルーシュ君も何か考え込んでないで異論や反論の一つでも言ってくれればいいのですが……

314:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/24 18:29:04 llAXnKB5


315:三つの心が一つにならない  ◆DNdG5hiFT6
07/10/24 18:31:09 Ism2cGKG
「……そうだな、悪くない考えかもしれない。
 どちらにしろこのゲーム中で確実に信用できる人間はカレンぐらいしかいないしな。

って、ちょっと待ってください! 貴方も何故賛成しているのですか!

「それじゃあ……」
「ああ、“何の力もない”学生だが
 スザクの敵を討つため……このふざけたゲームを潰すために協力させてくれ、ゼロ」

そう言って右手を差し出してくるルルーシュ君。
ああ……ここで今更断れるわけもありません。諦めて大人しく右手を差し出すこととしましょう……

「はい……よろしくお願いします……」

流されるままに他人を演じることになったと思ったら、いつの間にか勝手に期待される始末。
しかもその期待が偶然の出会いによって2倍に増えてしまいました。
ああっ、期待が、期待が重い!
大体この世の中は期待されるとろくなことがないのです!
・『出来る新人』というレッテル
・『ここでボケて!』というネタ振り
・好きな作品のアニメ化(つ○き○、デ○ンベ○ン……etc)
・好きなシリーズの続編(Gダ○ガイオー、スター○ーシャ○3……etc)
・サッカー日本代表(急にボールが来たので)

嗚呼、絶望した! 
過度な期待を背負わせる少年少女たちに絶望した!


*   *   *


一人頭を抱えるゼロの隣でカレンは決意する。
その発端となったのは放送で『枢木スザク』の名が呼ばれたことだった。

放送で名前を呼ばれた枢木スザク。
名誉ブリタニア人にして軍の新型KMFのパイロット。
自分たち黒の騎士団にとっては目下最大の障害の一つであった。

その男が死んだのだ。
ゼロの―黒の騎士団の目的からすれば喜ぶべきことに他ならない。
事実、放送でスザクの名前が呼ばれた瞬間、どこか安心した気持ちがあった。
これでゼロの障害が一つ減った、と。

だが自分にとっては敵でも目の前のルルーシュにとってはそうではない。
何時も何処か飄々としていた彼が人前であそこまで激しい感情をあらわにしたことがあっただろうか?
―いや、ない。つまりそれだけ大きかったのだ。
ルルーシュ・ランペルージにとって枢木スザクという存在は。
そう、自分にとっての母やゼロのように。

そう考えると心のどこかとはいえ喜んだ自分がひどく醜く感じてしまった。
だから決意する。この闘いに巻き込まれた力なき人々を私が守ろう。
そして出来うる限り行動を共にして、ルルーシュを守ろう。
彼をあの平和な学園生活に返すことがせめてもの罪滅ぼしになると信じて。

316:三つの心が一つにならない  ◆DNdG5hiFT6
07/10/24 18:34:04 Ism2cGKG
*   *   *

ルルーシュは思考する。

落ち着け。冷静になれルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。
期せずして偽ゼロと合流してしまったが
考えようによってはこれで堂々と常時監視下におけるということでもあるのだ。
状況は悪いと言わざるを得ないがまだ最悪ではない。

あの時、出て行かずに二人が離れるのを待ち、別行動を取るという手はあった。
だが多少のリスクを犯してでも“ゼロの衣装”を手に入れておきたい理由がある。

漆黒の仮面にマントといったゼロの出で立ちは初めて見た者に強い猜疑心を抱かせる。
だが最初の猜疑心が大きければ大きいほど自身の指揮が成功したときの信頼も強まる。
それは黒の騎士団で実証済みだ。
また、反主催のシンボルとしても有効に働いてくれるに違いない。

だが不安要素も勿論ある。
最も大きいのが目の前の“偽ゼロ”だ。
実際に会話を交わしても目の前のゼロを名乗る男の真意は読めない。
とりあえずスタンスは反主催のようだが、仮面の裏側で何を考えているか分かったものではない。
その証拠に仮面の下からでも俺の目を決して見ようとはしなかった。
ギアスのことを知っているとは思えないが、予想以上に用心深い相手ではあるようだ。

そしてもう一つの不安要素が“時間”である。
もし仮にこれから先、このまま誰か他人に出会ってしまえば
その他人にとっては『ゼロ』=『袴にマント姿のあの男』と認識されるのである。
その後、自分がマントと仮面を奪い返し、ゼロを名乗ったとしても
不信の目で見られるのが関の山だ。
ゼロに心酔しているカレンならばともかく他の人間ではそううまくはいくまい。

つまりそれはこれから先、何としても他人に会うまでに偽ゼロの正体を暴き、
―場合によってはギアスを用いてでも―その真意を問いただし、
ゼロの衣装を奪い返すことが最優先事項ということだ。

だがここで人気のない方向へ誘導するのは明らかに不自然だ。
まずは二人の要求を聞き出し、それをかなえた後、すかさず適当な理由をでっちあげ人気のない方向
―ここからすれば南の方角にある森だろうか―に誘導し、行動に移す。現状ではこれがベストな選択だろう。

「……ところで、二人はこれからの具体的な行動案は?」
「特には決めていないのですが。まぁこの服を乾かさないと。
 ええ、二人が別々のところに衣服が干せるぐらいの場所がベストですね」

仮面の下をカレンには見せたくないと言うことか。
フン、予想以上に用心深い男だ。やはり油断は出来ない。
だがそれならばここからでもいくつか民家が見える。
適当なところに侵入し、着替えてさせればいいだろう。その後、適当な理由をつけて南下すれば良いだけだ。

317:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/24 18:34:26 NS466PIq
 

318:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/24 18:35:52 llAXnKB5


319:三つの心が一つにならない  ◆DNdG5hiFT6
07/10/24 18:35:59 Ism2cGKG
―スザク、お前さえいればゼロの衣装など見切りをつけて行動を共にしたのにな。
だがスザクは死んだ。それは何故か。
誰か弱者を庇って死んだか、それとも誰かに騙され後ろからやられたか。
どちらにしろここで出会った“誰かのために”戦って死んだのだろう。
甘い―だがそれでも、

(でも俺はお前のそんなところに憧れていたし、好きだったんだ)

自分たちに負けず劣らずの生い立ちでありながら真直ぐに育った彼がまぶしかった。
『ブリタニアを内部から変えていく』などという自分以上の夢物語を大真面目に話す彼が腹立たしくもどこかで好ましかった。

だがスザクはもういない。このふざけたゲームに連れて来られたばかりに。
故にこんな馬鹿げたゲームを主催するロージェノムには相応の報いを受けさせねばなるまい。
俺はこの殺し合いを破壊し、ナナリーの元へ戻ってみせる!

(見守っていてくれスザク。お前の仇は俺が討ってみせる……!)


***


その決意は苛烈にして強靭。
ルルーシュ・ランペルージの主催者打倒の決意は親友の死に発端を発する怒りによってより一層強まったと言えるだろう。

だが、かつてあるガンダムファイターは言った。
怒りは人間から冷静な心を奪い去り、敵に多くのスキを与えてしまう事になるのだと。

その証拠が一つある。
この時点でルルーシュは“早くゼロの衣装を取り戻す”ということに拘るあまり、
『すでに民家に誰かがいる可能性』と『この時点で学校のほうから誰かが向かってくる可能性』を考慮していないのである。
静かな“怒り”に囚われたルルーシュ。
このことがどのような意味を持つのか、この時点ではまだ、誰も知りようがない。

320:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/24 18:37:09 llAXnKB5


321:三つの心が一つにならない  ◆DNdG5hiFT6
07/10/24 18:37:33 Ism2cGKG
【G-5/河川敷-川のほとり/一日目-朝】
【糸色望@さよなら絶望先生】
 [状態]:絶望(デフォルト)、ずぶ濡れ
 [装備]:ゼロの仮面とマント
 [道具]:デイパック、支給品一式、不明支給品(0~2個)
 [思考]:1、カレンがあまりに不憫なので、ゼロとして支えながら正しい絶望へ導く
     2、服を乾かしたい

【カレン・シュタットフェルト@コードギアス 反逆のルルーシュ】
 [状態]:ずぶ濡れ
 [装備]:なし
 [道具]:デイパック、支給品一式、ワルサーP38(残弾8/8)@カウボーイビバップ、不明支給品(0~2個)
 [思考]:1、ゼロを守る
     2、ルルーシュも守る(ただしゼロが最優先)
     3、服を乾かしたい
     4、その後、仲間を集め、このゲームの主催者に立ち向かう
 [備考]:スザクがランスロットの搭乗者であることを知っている時期(17話以降)からの参戦です。

【ルルーシュ・ランペルージ@コードギアス 反逆のルルーシュ】
 [状態]:精神的疲労(大)、頭部及び手先・足首に痒み
 [装備]:なし
 [道具]:デイパック、支給品一式、メロン×11
 [思考]1:人に出会う前に“ゼロ”の衣装を奪い返す
    2:このゲームをぶっ壊すための駒と情報を集める
 [備考]:参戦時期は第13話以前。スザクがランスロットの搭乗者であること、マオの存在を知りません
     偽ゼロ(糸色望)を警戒しています。


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