07/10/16 00:09:24 W0wsa2sV
ある世界の話。
来たるべき近未来、人類は第三のエネルギー革命と呼ばれるシズマドライブの発明により、新たな繁栄の時代を迎えていた。
完全無公害、完全リサイクルを可能とするそのエネルギーは、瞬く間に人々の生活の隅々にまで浸透し、あらゆる動力がシズマドライブへと置き換えられた。
ついに人類は有史以前から脈脈と続けられてきた、エネルギー資源を巡る不毛な争いの輪から脱却することに成功したのである。
人々はこの奇跡に歓喜し、発明者として名を残した4人の博士達に惜しみない賛辞を浴びせかけた。
シズマドライブの発明により、人類の輝かしい未来は約束されたかに見えた。
しかし。
◇
101:Cats on sizuma drive ◆10fcvoEbko
07/10/16 00:11:39 W0wsa2sV
エドが行く。
広い広い発電所の中をエドが進み行く。
腕を大きく振り上げぴょんびょん跳ね回ってエントランスを通り過ぎる。
通路の移動は膝を抱えてでんぐり返り。
消火用設備の赤い光をしげしげと眺め続け。
立ち上がると手をぐにゃぐにゃ振って大股歩き。
階段を昇ったかと思うとうにゃ~となきながらごろごろ転がり落ちる。
そのまま大の字になってしばし活動停止。
かと思えば突然弾かれたように起き上がり行動再開。
鼻歌混じりに「所長室」と書かれた部屋に入り。
机の上、あぐらでぼけっと何もしない。
部屋を出るときは逆立ち歩き。
と、何かの匂いを嗅ぎとり四つん這い。
ふんふん匂いをたどるも見つけたのがネズミの死骸でがっくり。
空腹を意識しつつ「燃料貯蔵庫」と書かれた部屋に入り。
そこにある「燃料」の放つ青い輝きに両手を広げて大はしゃぎ。
その勢いのまま部屋から飛び出し「タービン室」へ。
荷物運搬用リフトに潜り込み階を移動。
着いたときにはもう寝てる。
寝呆けたままだらりと芋虫のように這い回り。
ぐぅ~とお腹のなる音を合図に停止する。
おっくうそうに立ち上がりふらふら歩き。
そのようにしてエドは、力の抜けた姿勢のまま「中央制御室」と書かれた部屋に入って行った。
「お腹すいた~」
102:Cats on sizuma drive ◆10fcvoEbko
07/10/16 00:14:52 W0wsa2sV
中央制御室の中は薄暗かった。
部屋には一切窓はなく、外の明かりが入ってくることはない。
ただ、壁の一面がガラス張りになっており、そこから発電設備を見下ろすことができた。
そこから臨む、そびえる巨大な「管」が放つ淡い光のみが、かろうじて制御室を明かりをもたらしていた。
室内には、発電所全体の管理を行うと思われる、複数のデスクトップタイプのコンピュータが置かれていた。
しかし、いずれも電源が落とされている。
それでも問題なく発電所が稼動しているのを見る限り、かなりのレベルまで自動化された施設であるらしい。
「どさどさどさ~~」
とりあえずエドにとっての問題は、部屋の暗さより自身の空腹である。
いつから持っていたのかはよく覚えていないが、何か良いものが入っているのではないかと、エドは部屋の真ん中でデイパックをぶちまけた。
地図やコンパス、カンテラなど様々なものが床に散らばる。
その中には、エドが現在最も望む物である食料も含まれていた。
「パンだ!いっただっきま~す!」
見つけると同時に飛び付き、三口で食べきった。
かなりの大きさで、しかも乾燥もしているため決して美味しくはない。
それでもエドは、常に空腹と戦い続けるビバップ号のクルーである。
食べれるときには食べておくことが如何に大切かは、嫌というほど経験で知っていた。
「まっず~い。でも、も~いっぱ~い」
もう一つのパンも同じように食べきった。
さらに、二本あったペットボトルのうち一本を一息に飲み干す。
そこでやっと満足したのか、エドはふみゃらはぁと声をあげ床に寝そべった。
デイパックの中身は散乱したままであり、その中にはエドにのみ支給されたものも含まれている。
それぞれ小型の装置のような物、鉛色に輝くステッキ、西部劇風の衣装という見た目である。
エドは見ていないが説明書には『X装置』『東風のステッキ』『アンディの衣装』と書かれている。
「これは何ですか~?」
エドはその中の一つ『X装置』を手に取り、目の前にかざして眺めた。
103:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/16 00:16:06 eShFQY/f
【基本ルール】
全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が優勝者となる。
ゲームに参加するプレイヤー間でのやりとりに反則はない。
ゲーム開始時、プレイヤーはスタート地点からテレポートさせられMAP上にバラバラに配置される。
【スタート時の持ち物】
プレイヤーがあらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収。
ただし、義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない。
また、衣服とポケットに入るくらいの雑貨(武器は除く)は持ち込みを許される。
ゲーム開始直前にプレイヤーは開催側から以下の物を支給され、「デイパック」にまとめられている。
「地図」「コンパス」「筆記用具」「水と食料」「名簿」「時計」「ランタン」「ランダムアイテム」
「デイパック」→他の荷物を運ぶための小さいリュック。主催者の手によってか何らかの細工が施されており、明らかに容量オーバーな物でも入るようになっている。四●元ディパック。
「地図」 → MAPと、禁止エリアを判別するための境界線と座標が記されている。【舞台】に挙げられているのと同じ物。
「コンパス」 → 安っぽい普通のコンパス。東西南北がわかる。
「筆記用具」 → 普通の鉛筆と紙。
「水と食料」 → 通常の成人男性で二日分。肝心の食料の内容は…書き手さんによってのお楽しみ。SS間で多少のブレが出ても構わないかと。
「名簿」→全ての参加キャラの名前のみが羅列されている。ちなみにアイウエオ順で掲載。
「時計」 → 普通の時計。時刻がわかる。開催者側が指定する時刻はこの時計で確認する。
「ランタン」 → 暗闇を照らすことができる。
「ランダムアイテム」 → 何かのアイテムが1~3個入っている。内容はランダム。
【禁止エリアについて】
放送から1時間後、3時間後、5時間に1エリアずつ禁止エリアとなる。
禁止エリアはゲーム終了まで解除されない。
【放送について】
0:00、6:00、12:00、18:00
以上の時間に運営者が禁止エリアと死亡者、残り人数の発表を行う。
基本的にはスピーカーからの音声で伝達を行う。
----------------------------------------------------------------------
どうでもいいけど
この4次元デイバック、これまずくね?と思うのだが
104:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/16 00:16:11 fc0Uj1xG
105:Cats on sizuma drive ◆10fcvoEbko
07/10/16 00:17:09 W0wsa2sV
「ふみゃ~、お腹いっぱい…」
しかし、特に興味を引かれなかったのか、すぐそれをぽいと放り投げた。
放物線を描いて飛んだ『X装置』は、部屋の中央にしつらえられた、メインコンピュータと思しき一台の起動スイッチに綺麗にガンと、派手な音を立ててぶつかり、そのまま床に転がった。
コンピュータがヴンと、重低音とともに起動を始める。
その音は今まさに心地よい満腹感とともに眠りにつこうとしたエドの神経にも響いた。
「んにゃ?」
頭の奥底まで届く機械音と、暗い室内に突如発生したディスプレイの光に、エドが反応を示した。
のそのそと、目をこすりながらコンピュータの前に移動する。
最初に起動したコンピュータに続くように、他のコンピュータや照明が次々に起動し、暗かった室内は明かりで満たされた。
「ん~ん~?」
エドが珍しいものを見つけた子犬のように、コンピュータを覗き込む。
ディスプレイに映されていたのは発電所の管理用のプログラムと、通信記録だった。
管理プログラムは現在の発電状況に特に問題がないことを伝えている。
逆に、通信記録には何も記されていなかった。
普段エドが扱うコンピュータの性能からすれば幼稚もいいところであるはずなのだが、何かが琴線に触れたのかエドの好奇心は大きく刺激された。
「寄り道寄り道覗いちゃお~。今日のご飯はなんですか~?」
エドはコンピュータの置かれた机の上に直接座り込むと、準備運動と言うかのように指をぐねぐねさせ、迷い無い手つきでキーボードを叩き始める。
指の動きが非常識に速い、などということはない。
それどころか、体全体を揺らしながら叩いているのでむしろ遅めと言ってもいいかもしれない。
そうであるというのに、ディスプレイには凄まじい速度でウィンドウが表示されては消えていく。
常人ならば数分で酔ってしまうか、あるいはそもそも全く付いていけなくなる程の勢いである。
だが、エドにとってはまだまだ余裕であるらしく、行け!行け!ビバップ!などという歌を口ずさみながらそれらの情報を吸収していった。
106:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/16 00:17:31 GF2xbvum
>>103
あ、そうか
いくらでも入るなこれ
107:Cats on sizuma drive ◆10fcvoEbko
07/10/16 00:18:14 W0wsa2sV
「飛べ!飛べ!ビバップ!俺達かう~ぼ~い~、でも墜落し~そ~」
だが、コンピュータの中をいくら漁ってみても出てくるのは無味乾燥な発電所の管理に関する報告ばかり。
ネットワークも所内で完全に閉じており、外部へのアクセスも不可能である。
そもそも愛用のコンピュータが手元に無い以上、いかに天才的なハッキング能力を持っているエドとはいえ、所内の端末からできることは自ずと限られてくる。
「晩ご飯はまだですか~?あ、み~っけた!」
全く面白みの無い内容にだんだん飽き始めてきたエドだったが、ある情報を見つけたとき、楽しいもの見つけたとばかりに大声をあげた。
それはコンピュータ内の情報の山に埋もれるようにひっそりとした、だが逆にそれに気付く鋭さを持つ者には異質な存在感を以って受け止められるような、そんな場所に存在していた。
ある程度慎重な者ならば、繁華街の一角に居を構える不気味な占い師のような印象を感じ取っていたかも知れない。
エドは違った。ためらいなくキーボードを操作し、それを表示させる。
「おぉほ~」
画面が切り替わると同時に感嘆の声を挙げた。
ディスプレイは先程までの無機質さとはうって変わり、見るものの快適さを考慮したデザイン性の高いレイアウトに変化している。
どうやらこの発電所の動力について説明しているらしい。
コンピュータの奥深くに置かれていた不自然さに目をつむれば、広報用のページと思えなくも無い。
先頭に「シズマドライブの仕組み」とタイトルが記されていた。
「なにドライブ?」
エドは目を輝かせて、そこに表示されている情報の隅々までを、舐めるような視線で読み取っていく。
108:Cats on sizuma drive ◆10fcvoEbko
07/10/16 00:20:28 W0wsa2sV
そこに記されていた内容は、要約すると次のようなものである。
シズマドライブは完全無公害、完全リサイクル可能の夢のようなエネルギーであること。
この発電所の電力もシズマドライブに依るものであり、複数の巨大シズマ管を順次リサイクルして使用していること。
シズマドライブの開発の歴史について。
その開発過程で一人の科学者の暴走によって引き起こされた事故と、それに付随して起こったエネルギー静止現象について。
完成後のシズマドライブに仇をなすかのように存在するアンチシズマ管。
それらが使用されたとき再び起こる悪夢、エネルギー静止現象。
そして最後に、シズマドライブやエネルギー静止現象等に関する非常に詳細かつ専門的な報告が挙げられていた。
見る者が見れば、そこに記されている情報に驚愕するかもしれない。
何故ならそこに記された情報の一部、例えばアンチシズマ管の存在などは限られた世界の極僅かの者しか知り得ない情報だからである。
それが、あたかも一般的な情報であるかのように公開されている。
それがどのような意味を持つのか、あるいは何の意味も持たないのかについて判断できる者はこの場にいないが、少なくともエドがその奇妙さに気付くことはなかった。
「んにゃ~」
最初こそ、すごいすごいと未知のエネルギ-に関する情報を喜んで閲覧していたエドだったが、読み進むにつれて段々と不可解な表情になっていった。
「あれ~?」
何かが引っ掛かる。
書かれている内容は基本的にシズマドライブを褒め称え、エネルギー静止現象を忌むべきものとする論調である。
栄光を賛辞し、惨劇を忌避するのは当然の思考と言えるが、エドはそこに何らかの齟齬を感じ取っていた。
机の上にあぐらをかいたまま考え込む。
「あれがこ~なってえ……」
首を、どころか全身を傾げて考え込む。
思い出すのはたった今読んだばかりのシズマドライブの仕組みと、アンチシズマ菅の存在について。
「それがそ~なってぇ……」
逆方向に体を傾げる。
ほとんど机に接するかのような角度である。
「いらないものがたまっちゃって、最後にはぐるぐるばたんきゅ~。ぐるじい~」
そして、突然もがくような仕草をしたかと思うとばった~んと、床に倒れこんだ。
そのまま動かない。
本当に死んでしまったかのように、目を見開き天井の一点を凝視し続ける。
室内はしばし静寂に包まれた。
109:Cats on sizuma drive ◆10fcvoEbko
07/10/16 00:21:53 W0wsa2sV
「そうだよ!」
その静寂を輝かしい笑顔とともに破ったのもまた、エドだった。
さっきまでの、全身の力を抜いただるだるな態度からは一変し、全身に溢れんばかりの活力がみなぎっている。
「キミは間違ってるよ。合ってるのはそのおじいさんで、間違ってるのはそれ以外の人~」
指を突き付けてコンピュータにお説教をする。
自らが看破した真実を、自分以外には理解できない言葉で朗々と語る。
あるいは、看破させられたのかも知れないが。
「そのおじいさんはとってもいい人なんだ。そっちの管がないとみんなばたんきゅ-になっちゃうんだよ?ここのそれは止めらんないし、いらないものも一杯になっちゃうから、エドが探してきてあげる!」
知る者はほぼ皆無だが、シズマドライブにはリサイクルの過程で、一定以上の濃度になると酸素と結合する性質の物質を放出するという特性があった。
アンチシズマ管と呼ばれたものの正体は、その副作用を除去するための中和剤としての役目を担うものであった。
先程得た情報から、どういう訳か外部からの操作で発電所の機能を止めることは不可能であることが分かっている。
だからこそ、それを唯一知る自分が、自らの足でアンチシズマ管を集めなくてはならないのだと、エドは考えていた。
「エドがみんなを助けて、ついでにご飯も探すの。だってエドはカウガールだから!」
エドは元気よく宣言するとデイパックの中身をまとめ、勢いよく外へと飛び出していった。
自分が皆を救うのだと言う、無邪気なエネルギーがその背中から溢れていた。
110:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/16 00:21:55 oGmEi0CY
111:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/16 00:21:56 fc0Uj1xG
112:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/16 00:23:33 HQ+rRfda
113:Cats on sizuma drive ◆10fcvoEbko
07/10/16 00:24:00 W0wsa2sV
エドが行く。
カウボーイと呼ばれた男の帽子とスカーフを身に纏い、エドが走り行く。
目的はシズマドライブの副作用による酸素の結合現象の阻止。
その副作用を除去するために作られたアンチシズマ管の蒐集。
結合現象までの具体的な時間は分からない。
もはや、手遅れなのかもしれない。
もしかしたら、放っておいても問題は無いのかも知れない。
そもそもこの限られた空間内に真実それが存在するという保証すらない。
仮に管の蒐集が成ったとして、それをどこでどのように使えばいいかも分かっていない。
発電所のどこかにそのための装置があるのか、あるいはそれ以外の場所か、端から存在すらしないか。
何もかもが不明のまま、それでもそれに絶対の必要性を感じているエドが一人、発電所の外の世界へと飛びだしていった。
「いっきますよ~!1、2、5、4、こぉんにちわあ~~!!」
【C-2 発電所 一日目・早朝】
【エドワード・ウォン・ハウ・ペペル・チブルスキー4世@カウボーイビバップ】
[状態]:健康 強い使命感
[装備]: アンディの帽子とスカーフ
[道具]:支給品一式(食料残り水一本のみ) アンディの衣装@カウボーイビバップ
東風のステッキ(残弾率100%)@カウボーイビバップ
[思考] 1:アンチシズマ管を探す。
※X装置は説明書とともに中央制御室に放置されました。
【X装置】
無限エネルギー装置の核となる装置。
【東風のステッキ】
マッドピエロ東風が使用していたステッキ型の銃。
劇中では乱射していたため、弾数はかなりあると思われるが正確な数が不明であるため仮に%で表示。
【アンディの衣装】
スパイクと並び称されるカウボーイ、アンディの衣装一式。
靴、帽子、スカーフ、手袋、中着、上下白のカウボーイスタイル。
着れば誰でもたちまちカウボーイ。
【発電所】
シズマドライブによる発電所。
リサイクルの際に不純物を出しているのでいつかは酸素の結合現象が起きると思われる。
原作の描写では結合現象まで年単位の時間があるが、本ロワでそれがいつ起きるかは今のところ不明。
114:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/16 00:24:25 Soo0j8oQ
>>3 だろ?
☆全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が優勝者となる。
は、まあ通常通りだが
☆優勝者のみ元の世界に帰ることができる。
…戻る必要性あるのか?
☆また、優勝の特典として「巨万の富」「不老不死」「死者の蘇生」などのありとあらゆる願いを叶えられるという話だが……?
ここまずいだろ。参加者生き返り可能ってことじゃね?
☆ゲームに参加するプレイヤー間でのやりとりに反則はない。
説明そのものがいらない。不要
☆ゲーム開始時、プレイヤーはスタート地点からテレポートさせられMAP上にバラバラに配置される。
はOKかな?
115: ◆10fcvoEbko
07/10/16 00:27:15 W0wsa2sV
以上で投下終了です。支援、ありがとうございました。
116:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/16 00:30:54 gZf2TL29
,..-‐-- 、、
,ィ":::::::::::::::::::;;;;;:ii>;,
/:::::::::::::::;;;;;;;;iii彡" :ヤi、
.i::::::::::::;:"~ ̄ ::i||li
.|:::::::::j'_,.ィ^' ‐、 _,,. ::iii》 >>114
.|:::i´` `‐-‐"^{" `リ"゙ 人殺しておいて元の世界に戻すといわれても
ヾ;Y ,.,li`~~i 喜ぶのは私ぐらいじゃないのかね?
`i、 ・=-_、, .:/
ヽ '' :/
` ‐- 、、ノ
117:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/16 00:35:41 DEKMsEEu
/:/V :/_ ィ ´ i i 1 ┴イー⌒ ー-i_ | _ ハ:\j /
,' イ . :/ . i :! i:i| :|| |i、_!__:_: i: :丁: : : :|: : | /
i:/ ! !: , :i . : :i + 爪|丁| |ハ: :|リ|、:T: :j : :i: : :! : :レ'
|l i i: :| :i : : :i |Vィ≠xリ |{ ,ィ|示ぇⅥ: : :!: : |: :,l
|{ i i: :| :i : : :| { {|::::::::}` {:::::::::} } | : : i: : :|: :l'
. |:|: :И、 : :ド 、廴.ソ 廴 .ソ ,i : : ,: : :ハ :| >>116
ヘ\: :V\i:、ゝ ′  ̄ i : : ': : :l ゙!
ヽハ:ヤ/ト :、 ゝェェ-----ェェイ' ,i : :, : : j、 ! 慣れればなんてこと
ト、 /: :ヽ/小i: :\ ` ー─‐ ´ ,ィ : , : : ム_ヽ| ないですよ
| ヽ ゝ- ¬´ | ト、: : :ミ: 、 _.. </ :/ : ゝ二二_
| ', ゝ >トトゝ-}>.彡‐ .二7 / //__ __ ハ
l } 〈ー --- 二 -‐ ' ´ / / // V__ハ: :ヘ
l l \二 二.. -― x/ /:/:/ ̄ Y {:ノ ヽ
| | ハヽ| _ -―ハ `ー7 _. ィ 二二ム \
118:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/16 00:37:53 GF2xbvum
(´-`;).。oO(…・・・それでいいのか?)
119:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/16 00:40:51 lSjWfC2U
いや、だめだろ
120:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/16 01:11:56 WNHef7hq
_ 、_ ,. ,./i,.
、ヽ、 `ヽi、゙ヽ、 ,,.-‐'''""'''- 、 /i/ '"´'´''"i,
,r''´' ゙、 ,.-'".:.: : : `ヽ、 / ノ'i'
. <´ ゙、 _,,.-- 、 __,,,_ /:.:.:.:.:.:. : : __,,,. -- .,,,_ゝ、_,,,.-'、__ 'ノ,
`フ ./`'''7´ `y´ `ヽ、,.-‐''""'‐y'.:.:.:.:.:.:.:.:._,.-'"__,,. -''^ヽ、,_ヾ ヽ ヾ、 ソ
〈、_...... . . . . . ....:.:.〉、_l:.. /''" l:.:.:.:.:.:.:.:.:/-‐''´ _,゙i |'':.. . ....:.:.:.:>
>.:.:.:.:.:.:.:.:.:::::::/ ゙、:.:.:.:.:....:.:.. i'ニヽ.:.:.:./ ,.== 、 i ,.=、'l ノ:.:.ノ-、.:.:.:__=‐'"
 ̄´-ニ',,. -'" `‐ --''゙、`.:.:.:.:.:.:.:.:.:.. . . ..l | | |.:.:.ノ ,.=-=、`' ' ' _二, i'.:.:.:ノ'"  ̄
ヽ、,,__,,,.-、.:.:.:.:.:.:.:.:.:.l ! | |.:/ '‐‐( Oi ゙i r' Oノ/_,ノ
゙ヽ、,,,_,,{゙、i,l |:.i, ,. 、`ー‐' ,. ヽ=' i 夜中の0時放送なんて誰が聞くんだい
_,,,,,.-''":l゙、'-'.:.゙、 ' ´i'ヽ、__ノi_ l、 /
___,,,,r''":::::::::::::::::::::!:.:゙、.:.:.:| i l i'、 `ヽ,ノi/ ̄ ̄` ''ヽ、
,,.-''"::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\.'i, ! ! `、二ニニソ/ ノ  ̄ヽ、_
r'´::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::`‐-.,,_::::::::::ヽゝ, ‐‐ |r' ,.-'"/::::::ヽ、
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121:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/16 01:27:08 IQCR9iX6
w
122:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/16 02:05:49 Wp6B+bvM
誰が深夜帯に放送するって決めたん?
123:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/16 02:29:33 l2PsUc0/
いつのまに
124:ひとつ屋根の下 1/9 ◆AZWNjKqIBQ
07/10/16 19:51:21 CV/kvzvM
昇り始めた朝日から放たれる光を、一様に東側の壁で受け止める住宅の群れ。
その中の一つ。特に他とは変わりのない一軒の民家の中に彼らはいた。
それは、スバル・ナカジマ、アルフォンス・エルリック、マース・ヒューズ、泉こなた―の四人だ。
先程までは、そこより西にあった大きな橋の下に潜んでいたが、
陽が昇り始めたことで明るくなってきた事と、海から吹き始めた風が思いのほか冷たかったために、
これでは休むに適さないと隠れる場所を屋内へと移したのだった。
無断で場所を借りたその家は、大きな通りから二つの小さな通りを隔てた場所にある、庭付き二階建ての一軒屋である。
別に金持ちの家と言うわけではなく、安く余った土地にそこそこの家が建てられているといった感じで、
その周りに立ち並ぶ住宅も似たような感じだった。
適度に見通しがよく、他者を警戒しながら潜むには都合がよい場所であった。
もちろん、この選択は要人警護などに精通したマース・ヒューズ中佐によるものである。
◆ ◆ ◆
「そっちはどうだ?」
ヒューズのその問いかけに、二階より降りてきたスバルは、
「はい。誰かが入ってきていたり、隠れているということはないと思います」
と答えた。それに満足すると、ヒューズは彼女に向って頷き、二人揃ってリビングへと戻る。
そこには、ソファに横になったこなたと、彼女を抱えて運んできたアルの姿がある。
「大丈夫かい? こなたちゃん」
リビングへと戻って開口一番に放たれたヒューズのやさしい言葉に、小さな彼女は、
「ん。もうほとんど平気です」
と、横になったままの姿勢で答えた。その身体の上にはこの家で調達した毛布がかけられている。
「じゃあ、そろそろ俺は駅の方へ偵察に行ってくる。」
潜伏している家の調査をあらかた終わらせた後、リビングでお茶を一口飲むと、そう言ってヒューズは立ち上がった。
そして、部屋の端に固めて置かれているバックの内、アルの物であった所から二つの物を取り出す。
こいつを借りていくぞと、片手に見せたのは軍隊の中でも使用される単眼鏡だ。
そしてこいつもと、もう片方に持った物を慎重にテーブルの上へと置くと、その包みを解いた。
「鋏……ですか」
「ああ。しかしこのままじゃ、無用の長物だろう?」
ヒューズが取り出したアルに支給された最後の品。それは12挺の、銀色の鋏だった。
これをそのまま武器とするには、やや使い勝手が悪いと言わざるを得ない。
なので、これをアルの錬金術で他の物へと練成してくれないか―と言うのが、ヒューズの頼みごとだった。
もちろん、これはそもそもアルの所有物であるため、その最終決定権は彼にある。
「いいですよ。ナイフで構いませんか?」
間を置かずしてアルはそれを快く承諾した。鋏は彼にとっても不用品で、これを断る理由はない。
そして、ヒューズの肯定を受けると、アルはバックからペンとメモを取り出して手早く練成陣を作り、
銀色に輝く12挺の鋏をその中央に置いた。
初めて見る錬金術に、スバルとこなたの二人は興味深げに注目する。
125:ひとつ屋根の下 2/9 ◆AZWNjKqIBQ
07/10/16 19:52:33 CV/kvzvM
一瞬の後、練成陣の上に細い稲光と薄い煙が立ち上がり、12挺の鋏は12本の短剣へと姿を変えた。
目の前で起こった奇跡に、こなたとスバルの二人は小さな歓声と拍手をアルに贈る。
「兄さんほどじゃないから、強度と切れ味は保証できないけど……」
「謙遜だぜ、アル。じゃ、これはありがたく使わせてもらうよ」
言いながらヒューズはそれを懐に仕舞うと、改めて外へと向った。そして見送る三人に、
「アル。こなたちゃんを護るのはお前の役割だ。いざとなったら、その身体を盾にして護ってやるんだぞ」
「スバル。警戒と言っても緊張しすぎるのはだめだ。自分の中で適度な緊張感を保つよう意識しろ」
「こなたちゃん。君は今のうちによく休んでおくんだ。二人は頼りになる。心配することはないよ」
とそれぞれ言葉を残すと、扉を潜りその家を後にした。
◆ ◆ ◆
「(……期待が外れちまったな)」
駅へと向う道すがら、ヒューズは先程の家の中で集めた情報を、頭の中で整理しながら進んでいた。
民家に入ることを提案したのは彼自身だったが、それは何も休むためだけということではない。
目的は三つ。その内の一つは休息することだが、残りの二つは―監視体制の調査と、この世界の住民の行方である。
監視体制。つまりは、盗聴や盗撮。
狭い屋内に入り込めば、家捜しや外敵の侵入をチェックする振りをしてそれらを見つけることも容易いかと思ったが、
結果は芳しくなかった。残したスバルにも引き続き調査するよう指示してはいたが、期待薄だ。
ここから導き出される可能性はいくつもあるが、
まずポジティブに考えるとしたら―最低でも民家などの中は監視されていないという可能性がある。
しかしこれは前向きすぎるだろう。後に足元を掬われかねない。
最悪の可能性を考えるとしたら―自分達には思いもつかない方法や技術で監視されているという可能性。
やはり、こちらの線が強いと今は認識しておくべきだろう。魔法があるのだ。それ以上があっても不思議ではない。
そして、あそこで得られたもう一つの情報。
民家の中に入るそれまでは、姿を消した住民の行方を追えば、あるいは脱出の手がかりになるかと思っていた。
だがあの中で調べた限りは、元の住民達は忽然と姿を消されたとしか思えない。自分達がここに来た時同様に。
拉致や、避難させられた痕跡がないのはもちろん。日常生活の跡がまるで突然途切れたかのように残されていた。
これは、やはり自分達同様に何らかの不可思議な力で転移させられたとしか考えようがない。
何万人と居たであろう住人全てが―恐らくは一度に!
螺旋王が持つ力の強大さ、その空恐ろしさにヒューズの身体がわずかに身震いする。
だが、それはまだ始まったばかりだとヒューズは思考を切り替え震いを払った。
まずは仲間を探す事。自分達の顔見知りと合流することも大切だが、全く別世界の仲間も欲しい。
そうすれば、また情報も増える。圧倒的な力に対し、情報戦で切り込んでいくのは自分の領分である。
そのためにもと、ヒューズは駅の方へと向ける足を早め、その蒼い姿を目立たぬ路地の中へと滑り込ませた。
◆ ◆ ◆
「……ここも、OKと」
外に繋がる戸や窓を一つ一つ指差し確認しながら、スバルは家の中を一部屋ずつ回っていた。
ヒューズに言われた通りに、外敵の侵入に警戒するだけでなく、家の中に監視装置がないかも探しながら。
126:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/16 19:53:23 awG+U22B
127:ひとつ屋根の下 3/9 ◆AZWNjKqIBQ
07/10/16 19:53:46 CV/kvzvM
扉を閉め部屋の中から廊下に出たスバルの顔に、僅かながら笑みが浮かぶ。
同行するヒューズとは同じ軍属の身ではあるが、彼女は前線に出て戦う魔導師。つまりは兵士だ。
逆に、彼女に指示を与えたヒューズは後方支援。その中でも特に裏方に当たるエージェント。
彼から与えられた、まるで映画の中のスパイのような指示に、スバルの心は不謹慎ながらも浮き立っていた。
「(……~♪)」
エージェント・スバルが大活躍し、みんなを助けて大団円。そんな未来を夢想しながらスバルは捜索を続ける。
広い家の中を端から端へと進み、そして彼女はついにその扉を開いた。
そこは家の大きさに相当する、広い台所だった。
怪しい人影などはない。だが、入った途端に、それまでスバルの顔に浮かんでいた余裕は消し飛んだ。
そしてそれと入れ代わりに聞こえてくるのは―……、獣が発する唸り声の様な低い音。
◆ ◆ ◆
「(……暇だなぁ)」
ヒューズが家を出る際、君はできるだけ動かないようにとこなたは釘を刺されていたのだが、
体力も回復し、周りにも安全な人間しかいないと解ると、あれだけ高まっていた緊張感も次第に緩くなってきていた。
ソファの上から部屋の中を見渡しても、こなたの興味を引くような物は発見できない。
ゲーム機は勿論なかったし、DVDラックに収められているのも見知らぬ時代劇ものばかり……と、
「そういえばさ。あたしの支給品って、他はなんだったんだろう?」
最初に一つ拳銃を取り出したところでアルと出会った為に、他の支給品はまだ未確認だったことをこなたは思い出す。
「そうだね。じゃあ今のうちに確認しておこうか」
言いながら立ち上がると、アルはこなたのバックへと手を伸ばす。
そして、そこからゆっくりと取り出されたのは……、一本の大きな山刀―マチェットだった。
巨躯であるアルが持って、丁度釣合いが取れるぐらいの大きさで、鞘から抜くとその刃がギラリと光を反射した。
刃の背に当たる部分にはギザギザの鋸が刻まれており、その大きさと相まってまさに凶器といった様相を醸し出している。
「……う~ん。これはあたしには装備できません。って感じだなぁ。」
「……そ、そうだね。じゃあ、他にもないか見てみるね」
再びアルがバックの中に手を入れて引き抜くと、次に出てきたものは先程よりもさらに凶悪なものだった。
「(か、神殺し……!)」
こなたが胸中でそう思ったソレは、―巨大なチェーンソーだった。
今度の物は、アルが持ってもなお大きいと思わせるサイズがある。
こなたの胴回り以上もの太さのエンジン部分に、2メートルもの長さのチェーンを通すバー。
重さはゆうに20kg.程もあり、さらにこれを稼動させて振り回すとなると、相当の筋力が要求されると想像できる。
「……はは。これは絶対に無理。”こなたは装備できません”だ」
「……ハハ。ボクでもギリギリかも」
と、これでこなたに支給された物は出揃った。最初の拳銃も合わせて考えれば、これは当たりの部類に入ったろう。
もっとも、後の二つは威力はあるが、とても彼女に扱いこなせるような物ではなかったが。
128:ひとつ屋根の下 4/9 ◆AZWNjKqIBQ
07/10/16 19:55:00 CV/kvzvM
アルが取り出した武器を改めてバックの中に仕舞って、ついでにと切れたストラップを修復していると、
そこに家の中を再チェックしていたスバルがふらりと帰ってきた。
彼女の顔色は先程よりも心なしか悪い様に見える。それをいぶかしむ二人に、彼女は―……。
◆ ◆ ◆
「……30分から、1時間ってところか」
先を焦がした枯れ草。土に刻み込まれた足跡。コンクリートの床に残った黒い煤。そして、壁にかかった乾いた血。
駅の隣りに開けた空き地に残っていた戦闘の痕跡を検分したヒューズは、それがあったであろう時間を推測する。
「(痛み分けだったみたいだな……)」
焦げた床から炭と化した繊維質を取り上げ、ヒューズはそう推測する。
土の上に残った足跡から推測するに、ここで戦闘を繰り広げたのはおそらく三人。そして最低でも内二人が大きく負傷。
壁際に残された血溜りの跡からは真っ赤な足跡が、焦げた地面の上からも黒い煤の足跡が伸びている事から、
お互いにどちらも死には至っていないらしい……。
足跡はどちらもすぐに途切れてしまっているために追うことはできないが、どちらも北東方向へと向っている様に見えた。
派手で特徴的な戦闘痕は様々な情報を、それを観察する者に伝える。
そして、それによりヒューズが確信したのが―、
「……何やってるんだ。アイツは」
此処に、さっきまで彼の親友であるロイ・マスタングがいたと言う事だ。
ヒューズは親友の愚行に、ポケットの中の発火布でできた手袋を握り締める。
燃料を使用せずに対象を直接燃焼させ、爆炎を起こす彼の能力の痕跡は、非常に特徴的で解りやすい。
もちろん、直接見た訳ではないからそれだけでは断言できない。他にも同等の能力者がいるとも考えられる。
だが、そんな可能性は床に転がった銀色のボタンが決定的な証拠となって否定していた。
「いつもいつも、勝手にでしゃばって来やがって……。ケツを持つ方の気持ちも考えろってんだ」
恐らくは斬撃を受けた時に落ちたのであろう、彼の胸にある物と同種のボタンを拾いながら、ヒューズはひとりごちる。
彼の親友であるロイの目的は組織の中でトップを目指す事であり、ヒューズの目的は彼をその位置まで持ち上げることだ。
だが、上に立つ者は怠慢なぐらいが丁度よい……と言うのに、正義感と責任感が人一倍強い彼の親友は、
度々勝手に現場に出てきては、自分で直接物事を解決しようとしてしまうのだ。
今回のコレも、その結果であろうことが容易に想像できる。
溜息を一つつくと、ヒューズは壁際に放られたままのデイバックを拾った。
ここに落ちているということは、おそらく親友の持ち物だったのであろう。
そして、これは彼が荷物を拾う余裕すらなくここから離れたことを意味している。
「……銃が二挺、か」
置き去りにされたバックの中から出てきたのは二挺の拳銃だ。しかしどちらも偽物で、実弾が出るものではない。
どちらも見た目はリアルな拳銃そのものなのだが、片方は水鉄砲。もう片方は銀玉鉄砲だった。
ランタンが抜き出されていた事から、やはりこのバックが親友の物だったということと、
そして、やはり彼は不運な男だったということを確認すると、もう一つ溜息をついてヒューズは立ち上がる。
「……お前の方が死んじゃあ、元も子もないだろうが」
壁に残された血痕や、付近の地面を穿つ金属片を見やれば、親友がどういった状態に陥っているか察するのは容易い。
だが、ヒューズは親友を追おうとはしなかった。追うとなれば、それこそ愚の骨頂だ。
彼は護るべき人間を多数待たせているのである。それを無責任に放っていくことはできない。
129:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/16 19:55:24 awG+U22B
130:ひとつ屋根の下 5/9 ◆AZWNjKqIBQ
07/10/16 19:56:14 CV/kvzvM
「死ぬなよ……」
最後にそれだけを言い残すと、ヒューズはその場所を後にして駅の構内へと向った。
◆ ◆ ◆
無人の駅構内で、列車のダイヤを手持ちのメモに書き写すと、ヒューズは調査も程々に仲間が待つ民家へと戻った。
螺旋王が実験と称するコレが始まって五時間足らず。夜も明けきれぬというのにもう殺し合いが始まっている。
しかも、錬金術師をはじめとしたビックリ人間達によってだ。
あんなものに襲われては、彼もその仲間達もひとたまりもないだろう。
それが、目を放していた内に仲間が死んでいたとなれば、なお最悪だ。
ヒューズは蒼い制服の裾を翻して走る。もうあの民家は近い。後一つ通りを超えればそこに辿り着く。
―と、ヒューズはある「匂い」に気付いた。
「……あ、あいつら。……まさか」
それは……、その匂いは……、その匂いが意味するものは。それが何を意味するのか彼はよく知っていた。
今までは至極冷静だったヒューズの顔色が変わる。最初は青褪め、次に赤く―。
「クソッ!」
一つ毒づくと、ヒューズは走る速度を上げて仲間の元へと急いだ。
近づくにつれ、その匂いもはっきりとしたものになる。そして……、やはりその匂いはそこから零れているものだった。
☆ ☆ ☆
「「「 おかえりなさーい 」」」
それが、息巻いて戻ってきたヒューズにかけられた三人の言葉だった。
三人の内の一人であるこなたは、頭巾にエプロン、片手にお玉。その姿を見れば、彼女たちが何をしていたかは明白だった。
「おかえりなさいじゃないだろうっ!」
カウンターで浴びせられたヒューズの剣幕に、三人は思わずたじろぎ、廊下を後退してしまう。
何で彼がこんなにも怒っているのか? それが三人には解らない。
「お前達、状況を考えろよ。俺達は隠れているんだろうが!
それなのに、こんなに美味そうな匂いをプンプンと外に漏らしてちゃあ―バレバレだろうがっ!」
その言葉に三人の表情が「あー……」という感じになる。
言われてみればその通りで、隠れ家から朝餉の匂いを漂わせている潜伏者など聞いたこともない。
あまりにも素直なその反応を見て、潜伏時の心得をきっちりと叩き込み直そうと考えていたヒューズの肩が落ちた。
「……まぁ、仕方ないか。
じゃあ、せっかくだしお呼ばれするか。腹も減ってるしな―飯にしよう」
その言葉に、三人の―特にスバルの顔が明るくなった。
131:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/16 19:57:00 OkkSbqbt
132:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/16 19:57:05 awG+U22B
133:ひとつ屋根の下 6/9 ◆AZWNjKqIBQ
07/10/16 19:57:27 CV/kvzvM
☆ ☆ ☆
今朝の四人の朝食はこなた特製ジャガイモカレーだった。
最初に腹が減ったと言い出したのはスバルで、彼女はバックの中から大量のジャガイモを取り出して二人に見せた。
なんでも、それが彼女に支給された食料だったらしい。
でもそのままじゃ食べられないので、こなたがこの家の台所を使って調理するということになったのだ。
こなたはジャガイモの皮むきをアルに任せると、自分は台所を漁り使えるものがないか探し始めた。
その家はあまり無駄な物を溜め込まないらしく冷蔵庫はほとんど空だったが、いくつかの玉葱とカレー粉があったので
こなたはその時点で、メニューをジャガイモカレーと定めた。
皮を剥いた玉葱を手早く微塵切りにして、深い鍋の底で炒め始める。
本来ならここは時間を掛けたい所だが、そうも言ってられないので適当なところで水と調味料を加えて煮始める。
アルがジャガイモを剥き終わると、水を足して大まかにカットしたそれを加え、さらに煮込む。
そして、ジャガイモが煮えたら、アクを掬い取って後にカレー粉を放り込み、最後の一煮立ち。
あっと言う間に……ではないが、これでこなた特製ジャガイモカレー(ライスはないよ)の出来上がりである。
☆ ☆ ☆
「―おいしい。おいしいよ、こなたちゃん。―おかわり!」
四人の中でも特にたくさん。しかもバクバクと音を立ててジャガイモを貪っているのはスバルだ。
食べていると言うよりも、むしろ蹂躙されているといった表現が適切かもしれない。
大量に作られたジャガイモカレーは、昼にもとこなたが用意したものだったのだが、朝の内に完食されそうな勢いである。
「はい。慌てて喉を詰まらせないようにね」
言いながらお茶を差し出すのは、彼女とは対照的に一切食事を採らず、給仕に専念しているアルだ。
彼の身体は事情によりただの金属の鎧であるため、彼は食事をすることを必要とはしない。
「こなたちゃんもよく食べるんだぞ。じゃなきゃ大きくなれないからな」
帰ってきた時は不機嫌だったヒューズも何時の間にか上機嫌へと変わっていた。
子煩悩で、さらに家族思いであるため、この様なアットホームな食卓に心解されたのかもしれない。
「……いや、あたしもう成長期すぎてるし。てか、18歳だし」
ジャガイモを冷ましながらゆっくりと食べていたこなたが、ヒューズにそう答える。
そう。この中で一番小さく、下手をすれば小学生にも間違われかねない彼女だが、実はもう18歳である。
ある意味においては、もう大人と認められる年齢だ。
「―えぇっ! あたしより年上!?」(スバル・ナカジマ 15歳)
「……お姉ちゃんだったんだ」(アルフォンス・エルリック 14歳)
「……………………」(マース・ヒューズ 29歳)
三者三様の大げさなリアクションに、当のこなたは涼しい顔だ。
むしろ、最近はこういう反応も彼女は楽しめるようになってきている。
☆ ☆ ☆
「あのさ。ヒューズさんって、ウチのお父さんに似ている感じがする」
食事も終わりに近づいた頃、唐突にこなたがこんなことを口にした。言われたヒューズも敏感に反応する。
「へぇ、どんなところだ。格好よくて頼りになって、娘思いで最高のお父さんってところか?」
「ううん。女の子と食事してる時に、ニヤニヤしてるところ」
134:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/16 19:58:20 /XYIx/bf
135:ひとつ屋根の下 7/9 ◆AZWNjKqIBQ
07/10/16 19:58:43 CV/kvzvM
う……と、硬直。否定できない部分ではある。
「そ、それは……誰だってそうだろう。―って、アル。なんだその解るなぁって顔は!」
顔を真っ赤にするヒューズに対し、残りの三人はニヤニヤ顔だ。
まだ短い時間しか経っていないが、何時の間にかに四人は家族の様に仲良くなっていた。
真っ赤な顔の下で、ヒューズは一人安堵する。そして同時に、この三人を護ってやらなければと誓うのであった。
☆ ☆ ☆
……そう言えば、家族の写真をこいつらにはまだ見せていない。
それに気付いてヒューズは持っていたスプーンを置いて、手を懐に忍ばせるが……そこに写真はなかった。
何故かは解らないが、螺旋王に没収されたか何処かで失くしたらしい。そして、また別の事にも気付いてしまった。
「……アル。あいつらは、俺がいなくなった後も幸せに暮らしているか?」
それは、アルが連れて来られた時間では、すでに自分は死者となっているらしいということだ。
ならば気がかりなのは、そこで残された家族―妻と幼い娘の事だった。
「ヒューズさん…………」
ヒューズが死亡した時、アルと彼の兄はその近くにはいなかった。だからその時の詳しい事は知らない。
だが、その後に伝え聞いたことをアルは正直に彼へと伝えた。
「……そうか。あいつらが元気だったんならそれでいいんだ。
にしても、二階級特進とはな。アイツよりも先に偉くなって俺はどうするんだ。ハハハ……」
せっかくの朝食だったのに、暗くしてスマン。とヒューズは神妙な顔をした三人に謝った。
そして、気持ちを振り払うかのようにジャガイモをかきこむ始めた彼に、こなたが静かに声をかけた。
「……こういう言い方がいいのかはわかんないけど。
あたし、お母さんのことずっと好きだよ。
あたしが小さい頃に死んじゃったけど、あたしも、あたしのお父さんもお母さんをずっと愛してる。
だから、ヒューズさんの奥さんも。その娘さんも……」
こなたの言葉にヒューズの心が潤む。また、こんな素直な娘を持った彼女の父親を羨ましくも思った。
ありがとう。ただ、ありがとうとだけ、ヒューズはこなたに言葉を返した。
それ以上口を開けば、また別のものも一緒に零れてしまうと、そう思ったから……。
◆ ◆ ◆
和気藹々とした朝食が終わると、四人は気を引き締めなおして出立の準備を整えていた。
元々長く居座る予定でもなかったし、ヒューズが偵察によって持ち帰ってきた情報を聞くと仲間の安否が気になった。
「……じゃあ、まずはデパートへと向うんですか?」
スバルの確認に、ヒューズは頷く。当初は駅と列車を利用する事を考えていたが、駅で時刻表を見てその考えは覆った。
「ああ。さっきも言ったとおり、停車時間が20分もあるんじゃ待ち伏せが怖い。
実際に駅周辺で戦闘が行われた形跡もあったしな。俺達四人じゃ、少しリスキーすぎる」
停車時間が20分あるということは、逆に言えば待ち伏せを受けた際に20分間は車中に釘付けにされるということだ。
すでに駅周辺での戦闘を確認している以上、他の駅でもそれが起こるという可能性は決して低くないだろう。
136:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/16 19:59:01 awG+U22B
137:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/16 19:59:20 OkkSbqbt
138:ひとつ屋根の下 8/9 ◆AZWNjKqIBQ
07/10/16 19:59:57 CV/kvzvM
「ヒューズさん。大佐は……」
アルの言葉にヒューズは唸る。最優先で見つけ出したいが、それには手がかりが少なすぎた。
「怪我をしているなら、おそらくは病院。またはより近いデパートへとアイツは向うだろう。
会えるかどうかは、アイツと俺達のどちらかに運があることを祈るしかないな」
「ハイお昼。残り物だけど」
キッチンから小走りで戻ってきたのはこなただ。
その腕に、人数分のジャガイモカレーが詰められたタッパを抱えている。
こなたの分は小さく、ヒューズの分は中くらい、スバルの分は特大で、残念ながらアルの分はない。
「忘れ物はないか、みんな?」
言いながら、ヒューズは腕時計で時間を確認する。手にはメモとペンを持っていた。
同様に、他の三人もその手にメモとペンを持っている。
―時間は5時59分。予定されている螺旋王よりの放送。その1分前であった。
その緊張の1分を、彼らは穏やかな朝を過ごした家の中で待つ。
【F-4/民家/1日目-早朝(放送直前)】
【チーム:引率の軍人と子供たち】
[共通思考]
1.主催者の打倒。またはゲームからの脱出
2.首輪の解析、解除が可能な人物、技術、物を探す
3.互いの知り合いや、ゲームに乗っていない者を探し仲間とする
4.殺し合いはしない
※首輪から、会話が盗聴されている可能性に気づきました
※盗撮に関してはあくまで推測の域なので、確定ではありません
※螺旋王には少なからず仲間や部下がいると考えています
※それぞれの作品からの参加者の情報を共有しました
【マース・ヒューズ@鋼の錬金術師】
[状態]:健康、腹一杯
[装備]:S&W M38(弾数5/5)
[道具]:デイバック(×2)、支給品一式(×2、-ランタン×1)、ロイの発火布の手袋@鋼の錬金術師
S&W M38の予備弾数20発、エンフィールドNO.2(弾数5/6)、短剣×12本
制服のボタン(ロイ)、単眼鏡、水鉄砲、銀玉鉄砲(銀玉×60発)、ジャガイモカレー(中)
[思考]:
基本:主催の打倒。または脱出を目指して行動。仲間を集める
1.デパートや病院等、人が集まりそうな場所を目指す
2.ロイ・マスタングを探す
3.首輪や脱出に関する考察を続ける
【スバル・ナカジマ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
[状態]:健康、腹一杯
[装備]:リボルバー・ナックル(左手)(カートリッジ:6/6)@魔法少女リリカルなのはStrikerS
[道具]:デイバック、支給品一式(食料-[大量のじゃがいも、2/3][水])、ジャガイモカレー(特大)
ランダムアイテム不明(本人確認済み)、予備カートリッジ(×12発)
[思考]:
基本:仲間を集めて事態の解決を目指す
1.ヒューズに従って行動する
139:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/16 20:00:17 /XYIx/bf
140:ひとつ屋根の下 9/9 ◆AZWNjKqIBQ
07/10/16 20:01:08 CV/kvzvM
【アルフォンス・エルリック@鋼の錬金術師】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:デイパッグ、支給品一式
[思考]
基本:仲間を集めて事態の解決を目指す
1.ヒューズに従って行動する
2.兄やロイ・マスタングを探す
3.こなたを護る
※アルの参戦時期はヒューズ死亡後のいずれか
【泉こなた@らき☆すた】
[状態]:右頬に銃創、疲労・小、腹一杯
[装備]:
[道具]:デイバック、支給品一式、マチェット、チェーンソー、ジャガイモカレー(小)
[思考]
基本:死にたくないので助かるよう行動する。みんなと再会したい
1.ヒューズに従って行動
2.柊かがみ、柊つかさ、小早川ゆたかを探す
※こなたの参戦時期は原作終了後
【単眼鏡@現実】
片目に当てて使用する望遠鏡。
集光機能付きで、暗い場所でも僅かな光さえあればクリアに見ることができる。
【チックの鋏@BACCANO バッカーノ!】
ガンドールの拷問係であるチック・ジェファーソンが拷問の際に使用している鋏。
特に何の変哲もない既製品。
【大型マチェット@現実】
刃渡り50センチ程の大きな山刀。主に山中でのサバイバル用具として使われる。
グリップにナックルガード付き。
【大型チェーンソー@現実】
重さは20kg.を超え、バーの長さも2m.を超える大型のチェーンソー。
【水鉄砲@現実】
見た目は拳銃そのもの。だけど中身は水鉄砲。子供用の玩具で威力はない。
【銀玉鉄砲@現実】
見た目は拳銃そのもの。だけど中身は、バネの力で銀玉を飛ばす玩具。
銀玉は粘土製で当たっても痛くない。弾は全部入っており、振ればジャラジャラと音がする。
141:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/16 20:37:46 BdKg0SyT
2743 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 00:25:42 ID:???0
書き込んだ直後に、とてつもなく無神経な書き込みだったと気づく自分。
穴があったら入ったまま出てきたくない。
2744 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 00:26:33 ID:???0
ロワ書き手なら青酸カリを破棄する方法ではなくて活用する方法を考えてくれよ……
2745 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 00:29:53 ID:???0
>>2744
つっても、ヒューズなら処分しようとするのが一番自然ではあるしなぁ。
処分したいという描写はあえて省いて、そのまま持っていたほうがよっぽど自然だと思うのだけれど。
2746 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 00:30:36 ID:???0
いやあ、持っているのが処分したがっている人達だからなぁ。
持たせるならば基本的に初期ステルスマーダー。
最初から活用させる形で頭を捻れる分楽だ。
2747 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 00:33:08 ID:???0
ヒューズ組は知り合いが死んでるから、化ける可能性もある
書き手を信じろ、彼らは常に読み手の想像を超える
2748 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 00:36:22 ID:???0
>>2747
こなたという不安材料がまだいるしな。
さすがにヒューズやスバル、アルが青酸カリ使うような疑心暗鬼展開は超難度だと思うが。
それにしたって、やっぱりヒューズの青酸カリへの扱いは要修正部分?
2749 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 00:41:34 ID:???0
そうだな、そろそろ言っても良い頃かな。
書き手を信じろ!!
俺たちの信じる、書き手を信じろ!!!!!
2750 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 00:47:09 ID:???0
俺はヒューズを信じるぜ!
2751 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 01:11:04 ID:???O
じゃあ俺はこなたを信じる
142:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/16 20:39:13 BdKg0SyT
2752 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 01:14:02 ID:???0
及ばずながら、自分はスバルを。
2753 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 01:17:14 ID:???0
俺は誰も信じない!
2754 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 01:17:33 ID:???0
よし読子さんは俺に任せろ
2755 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 01:18:38 ID:???0
言峰、信じてるぜ。
2756 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 01:19:24 ID:???0
ムスカはわたくしにお任せください。
2757 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 01:20:47 ID:???0
ゆーちゃんはワシが信じよう
2758 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 01:22:50 ID:???0
会長、僭越ながら不肖この私めが信じております。
2759 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 01:29:30 ID:???O
よそでやれ
2760 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 01:35:07 ID:???0
ここ以外のいったいどこでやるんだよw
2761 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 01:36:23 ID:???0
いい落ちがついた
2762 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 01:37:13 ID:???O
我輩はクレアをw
ところで図書館に参加作品に関する記述があるのはちょっとヤバいんじゃね?と思うんだけど。
2763 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 01:38:41 ID:???0
メタ的な要素はできるだけ入れないようにー、って開始前議論にあったような。
2764 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 01:39:19 ID:???0
映画館での前例もあるし、あれくらいならいいんじゃね?
流石に参加者の情報が分かっちゃうとアウトだろうけど
2765 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 01:42:48 ID:???0
微妙なとこだな。
アホみたいに多い参加者名簿やら映画館やらがあるから。
自粛しろ、な流れならなしだし。
そういう意図だ、な流れならあり。
2766 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 01:43:47 ID:???0
メタ的要素といっても参加者が漫画とかアニメで知ってるのと
ロワ内の図書館じゃ違うんじゃね?
前者だとその漫画やアニメにのってる参加者はその漫画やアニメの作者につくられたものになってしまうが
後者だと主催者が別の世界を見て絵本を書いただけ
2767 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 01:45:57 ID:???0
絶望先生のネタを許している時点でメタもなにもないと思うが
こなたのコードギアス知識は封印されてるし
143:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/16 20:41:18 BdKg0SyT
2752 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 01:14:02 ID:???0
及ばずながら、自分はスバルを。
2753 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 01:17:14 ID:???0
俺は誰も信じない!
2754 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 01:17:33 ID:???0
よし読子さんは俺に任せろ
2755 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 01:18:38 ID:???0
言峰、信じてるぜ。
2756 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 01:19:24 ID:???0
ムスカはわたくしにお任せください。
2757 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 01:20:47 ID:???0
ゆーちゃんはワシが信じよう
2758 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 01:22:50 ID:???0
会長、僭越ながら不肖この私めが信じております。
2759 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 01:29:30 ID:???O
よそでやれ
2760 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 01:35:07 ID:???0
ここ以外のいったいどこでやるんだよw
2761 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 01:36:23 ID:???0
いい落ちがついた
2762 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 01:37:13 ID:???O
我輩はクレアをw
ところで図書館に参加作品に関する記述があるのはちょっとヤバいんじゃね?と思うんだけど。
2763 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 01:38:41 ID:???0
メタ的な要素はできるだけ入れないようにー、って開始前議論にあったような。
2764 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 01:39:19 ID:???0
映画館での前例もあるし、あれくらいならいいんじゃね?
流石に参加者の情報が分かっちゃうとアウトだろうけど
2765 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 01:42:48 ID:???0
微妙なとこだな。
アホみたいに多い参加者名簿やら映画館やらがあるから。
自粛しろ、な流れならなしだし。
そういう意図だ、な流れならあり。
2766 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 01:43:47 ID:???0
メタ的要素といっても参加者が漫画とかアニメで知ってるのと
ロワ内の図書館じゃ違うんじゃね?
前者だとその漫画やアニメにのってる参加者はその漫画やアニメの作者につくられたものになってしまうが
後者だと主催者が別の世界を見て絵本を書いただけ
2767 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 01:45:57 ID:???0
絶望先生のネタを許している時点でメタもなにもないと思うが
こなたのコードギアス知識は封印されてるし
144:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/16 20:42:37 BdKg0SyT
2768 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 01:47:08 ID:???0
絵本作家ロージェノ(ry
実際主催者が意図的に与えた情報のようだし
フラグとして活用する方向で行きたいと個人的には思う。
2769 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 01:47:58 ID:???0
絵本作家・ロージェノム……なんか某それも私だの人みたいになってきたな
まあ置いといて、参戦作品が民間伝承とか神話とかそんな感じになってるならありかと思うが
2770 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 01:49:11 ID:???0
伝承や神話っていうか、我様や槍兄貴なんてもろ神話の人だぞ。
2771 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 01:49:18 ID:???0
うお、即行で絵本作家がかぶった
2772 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 01:51:30 ID:???0
この流れでふと思ったが、らきすたor絶望勢の参加作品以外の他作品(ハルヒとか)の記憶はどうなってるんだろうか
2773 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 01:54:00 ID:???0
少なくともSAGAは知ってるんだよな……こなた……
2774 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 01:54:05 ID:???0
メタネタ自粛のための記憶制限なんだし、それに関係ない作品に
関する知識は普通に持ってんじゃない。
2775 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 01:55:27 ID:???0
>>2772
なかったらこなたのアイデンティティーがやばい
2776 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 02:06:40 ID:???0
読子がギルガメシュ叙事詩や北欧神話を知らねぇのもどうなんだ、って話もあったよな
2777 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 02:08:02 ID:???0
流れに乗り遅れたが、俺はアニキを信じるぜ!!
そしてV様も信じるぜ!!
……このコンビ好きなんだけどなぁ…書きにくさが目立つんだよなぁ……ウウッ
2778 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 02:19:12 ID:???0
>>2776
その書き込みみてなんとなくアマゾンでギルガメッシュ叙事詩みてみたら
クーフーリンの神話と併せて購入薦められて吹いた。
2779 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 02:23:03 ID:???0
でも気をつけろ、ギルガメシュ叙事詩を読んだところで我様のキャラ把握にはまったく意味はないからな!
2780 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 02:26:50 ID:???0
名簿で偽名のランサー→結構神話に忠実
名簿で本当の名前のギルガメッシュ→神話?何それ
2781 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 02:30:07 ID:???0
原作ネタに使えんかなあと思ったんだが、我様じゃ仕方ないか。
2782 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 02:34:13 ID:???0
紙媒体で我様把握したいならFate/Zero読んだほうがまだまし。
2783 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 02:35:43 ID:???0
なんかギルの印象強いなぁと思ったら、NGやら没入れて奈緒ギル関係のSSは既に6作も投下されてたんだな
2784 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 02:39:39 ID:???0
没作の方は普通に投下できそうなんだけどなぁ……
2785 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 02:40:07 ID:???0
ナオギルの書きやすさは異常。
頭の中で勝手にギルが動きやがるから、あとはそれをナオが突っ込めばいいだけ。
マジお勧め。
145:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/16 20:44:37 BdKg0SyT
2778 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 02:19:12 ID:???0
>>2776
その書き込みみてなんとなくアマゾンでギルガメッシュ叙事詩みてみたら
クーフーリンの神話と併せて購入薦められて吹いた。
2779 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 02:23:03 ID:???0
でも気をつけろ、ギルガメシュ叙事詩を読んだところで我様のキャラ把握にはまったく意味はないからな!
2780 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 02:26:50 ID:???0
名簿で偽名のランサー→結構神話に忠実
名簿で本当の名前のギルガメッシュ→神話?何それ
2781 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 02:30:07 ID:???0
原作ネタに使えんかなあと思ったんだが、我様じゃ仕方ないか。
2782 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 02:34:13 ID:???0
紙媒体で我様把握したいならFate/Zero読んだほうがまだまし。
2783 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 02:35:43 ID:???0
なんかギルの印象強いなぁと思ったら、NGやら没入れて奈緒ギル関係のSSは既に6作も投下されてたんだな
2784 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 02:39:39 ID:???0
没作の方は普通に投下できそうなんだけどなぁ……
2785 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 02:40:07 ID:???0
ナオギルの書きやすさは異常。
頭の中で勝手にギルが動きやがるから、あとはそれをナオが突っ込めばいいだけ。
マジお勧め。
2786 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 02:42:47 ID:???0
ナオギルのいる南方面は、マーダーもいなくて安全圏だしな……クレアも対主催だし。
ヴィシャスあたりがワープして乗り込んできてくれないものだろうか。
2787 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 02:45:47 ID:???0
後半の考察は作者の言ってる通り、今回ので盗聴警戒しちゃったから、難しいかもね。
けど、神父のターンであるナオのトラウマパートは使えそうだと思うが。
あと、温泉に行けばクレアと自己中対決ができたのに、惜しいねぇ。
2788 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 02:47:13 ID:???0
ギルとかラッド見たいな思考がアレなキャラは把握は難しいけど、
一度把握すればこれほど書きやすいものはない、ってくらい簡単に書けるようになるよな。
2789 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 02:49:27 ID:???0
クレアとかもな。そいつらみんな勝手にしゃべることしゃべること。
2790 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 02:54:42 ID:???0
逆に天才系は下手なこと言わせられないので難しい。
2791 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 15:09:20 ID:???0
だが天才ゆえにアホなことも言わせられる
2792 :やってられない名無しさん:2007/10/16(火) 19:26:29 ID:???0
>>2775
ふと気づいた。ねねねに既にボン太くんが支給されている。
っていうか声優ネタ。
146:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/16 20:48:36 BdKg0SyT
/:.:.:ハ
,r≠‐ /:.:.:/,ハ
/ / _,厶≦ 二二二二ニ=--
. { { ,. -‐ ´ `丶:.:.:>
\\_/ \ \ `ヽ、
ト、 `ア¨ ̄ \__ \ \____\
',:.:\- 、 / ! ヽ `>、- ヽ \ `\ 重要議論は
. v.:.:.:.:.:..\ .| | '. ヽ. ', \ | 、 \_ 2chでやるという話は
. \:.:.:.:.:.:..ヘ.| / ム- |l | ,x≦i :!、、\` ̄ ̄ どこいったんでしょうねー(棒読み)
\:.:.:.:.:.:∨:| /| lヘ |l | ´{んハ|∧} |\|
≧x:.:.:V! ! ! ! \. lハ! マ沙 。V\ー---- .. _
∧ Y^| | | |_,x≦ヽ.| 〉 ` ̄`\ ` ー- 、
/:.:∧ ,ハ | | |モ{えィハ ' ,.ヘマー- 、 ハ \
|:.:.:.:.:ム ヾ\ |∧.マt少 l>/ '.Y ヽ. \ } ̄ ̄ ̄`\ー- 、\
. /.:.:/ V ∧ \ ||\ __ . イ \. || ハ Y! ,.--、 ヽ `ヾ.
// V ∧ ヽ| ヾY `丶---ヘ. ||ヽ ヘ. リ f⌒ソ } /⌒\\
V ∧ | ||三三三三≧x、∨| | ヽ ,ム._____// Y }
V ∧ .| || \ ヽlリ | マ´ >ヘ. ̄ ̄ ノ'′
V ∧| |/\ ` ー‐一ドム. ∨ || } ̄ ̄`ヽ
V ヘ| / `ト 、 \ ハ V__jj/ }
___ i| |ノイ! }\\ \'. マ TTi____,/
〃´ ̄ |/ :| || r{ ー\ `ヽ. ハ _j_j.|
{{ / | || ,ムヘ ____\ \/ ∧ムイ
,ゞー一'´ ./ :!! ∨´| | | \ ,rイヾ._ノ ニぅ
. /_____,/ || ハ !, / :!| |l \_,/// :}`ぅ ̄
//{ 廴__,/ 、 ,リ ノ ムく / !| ヾマニニマ´‐'´/ ニぅ
. {{ ` ̄ ̄  ̄ ̄ { (__,.ゝ{ー--トマニニマ´ ̄ | ̄ {ハ.ハ〉
ヾ ` ̄ ` ー-ム< ̄ |
147:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/16 21:16:20 pWHZP282
既に忘れてるだろ
148:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/16 22:19:54 4F0n6YWJ
したらばがルール決めて
したらばでNG出して
したらばがアクセス禁止して
したらばがいい住人と悪い住人決めて
作品発表だけ2chだから2chの企画だというやつらだからな
149:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/17 20:56:10 H+UL3dIQ
>>141
なんで青酸カリを破棄しちゃあかんのよ
どう使おうと書き手の勝手だろう
150:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/17 21:29:21 emsjPCrd
どうせだからロワ関連スレは全部ここで統合で
151:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/17 23:31:04 pADnguAf
したらばで議論・雑談するのが嫌ならここをリサイクルすればいいんじゃないの?
スレリンク(anichara板)
152:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/18 00:21:58 eziOqogY
別にここでもええし
153:Gentleman ◆bsSjhtXYP2
07/10/18 10:22:49 OTWEkYez
病院の薬品保管庫の中で、ムスカは椅子に座り、頬に手を当て机に肘を立てながらうつらうつらと舟を漕いでいた。
彼がここに入った理由は簡単だ。病室より人に見つかり難い病院の奥でなら、休息を取れると思えたからだ。
戴宗との戦いは彼に多大な疲労を与え、それにともなう睡魔を誘発していた。
故に彼の体は休息を訴え、夢の中へと意識を誘っていた。
ああ、眠い。このまま放送のことなど忘れて寝入ってしまおうか?
ムスカはそんなことを思いつつ、睡眠欲へと溺れようとしていた。
だからだったのかもしれない。
力を抜いた体は逆に感覚が鋭敏化し、ムスカの耳にとある音が聞えた。
いったいなんの音か?
ムスカは意識を半場覚醒させ、耳をすませる。
その音は風きり音だった。何かが風を斬るような速さでこちらの方に近づいてきている音だった。
そして、ムスカはその音に聞き覚えがあった。
あいつだ。あの男だ。自分をコケにし、膝を尽かせた無礼な男だ! 自分の背後に立ったときあの音が聞えたのだ!
意識を完全に覚醒させ、冷や汗をながしながらムスカはそう確信する。
どうするか? まずそれを考えた。
おそらく自分の逃走を知り、病院内を探し回っている最中なのだろう。隠れれば見つからないかもしれない。
几帳面な男には見えない。ならば、雑に探し回っていても不思議ではないのだ。
だが、今の自分が武器を持っていると相手は気付いていないはずだ。
今が屈辱を晴らす最大のチャンスであることを考えれば仕掛けるべきだろう。
しかし、銃一丁であんな化け物を倒せるのだろうか?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
154:Gentleman ◆bsSjhtXYP2
07/10/18 10:24:33 OTWEkYez
朝日が昇る中、今だ暗闇が支配する病院内を梁山泊の九大天王の一人、神行太保・戴宗は駆けていた。
理由は至極簡単。何処かへと逃げ出した眼鏡の男を捕まえるためだ。
自分の迂闊な行動でこれ以上犠牲者を出したとあっては、あの世に先に逝った仲間達や弟分である鉄牛にすら笑われてしまうだろう。
「さて、いってぇどこに消えた?」
戴宗は意識を集中させ、辺りの気配を探る。
そして、彼の鋭敏な知覚は男の気配を察知した。それと同時に自身を狙う強烈な殺気も。
「いやがったか!」
戴宗は叫び、その場から飛び跳ねる。その瞬間彼が一瞬前まで走っていた場所に轟音と共に、隕石が直撃したかのような大穴が空いた。
床に鮮やかに着地し、殺気の放たれた方向に目を向ける。
そこには吹き飛ばされ破砕したドアだったと思われるものの残骸と、扉を失った入り口から現れた眼鏡の男がいた。
いつのまにか銃らしき物を手に入れている。かなりの破壊力だ。おそらく自身の捻り出せる力より数段上の力は持っているだろう。
どうやらあの男はよほど運に恵まれているらしい。
こちらは本と鏡の欠片以外は、死体と一緒に拾った剣とナイフしかないと言うのに、
あちらは自分の力を無力化したばかりか、電気を発する葛篭や銃などの武器を簡単に手に入れてしまう。
「死ね!?」
男は憎悪を隠そうともせず、戴宗の頭上に向かって何かを投げつける。
投げつけられた物を確認するまもなく、戴宗は後ろに向かって飛び跳ねた。
ムスカの放った弾丸がビンに当たり、中に入っていた液体が床に飛び散る。
液体が床一面に広がり、油が煮立つ音と共に辺りにうっすらと白い煙が立ち込める。
酸だ。敵は硫酸か何かを投げつけるつもりだったのだ。
だがこのような手に戴宗は引っかかるわけでもなく既に退避済みである。
「もう終わりか?」
戴宗は男に問いかける。
「さあな?」
だが男はうっすらと見るものを苛立たせる笑みを浮かべたまま、余裕とも取れる表情で答えた。
155:Gentleman ◆bsSjhtXYP2
07/10/18 10:25:54 OTWEkYez
いったい何を考えているのか?
戴宗はそれを考える。罠があるのか、それともハッタリなのか?
だが関係ない。罠があろうとなかろうと力づくで食い千切るまで。
今やるべきことは、あのにやけた顔面に一撃を加えることだ。
「ハァ!」
掛け声と共に地を蹴り噴射拳を併用し疾走。
男が弾丸を何発も連射する。
だがそれらの凶弾を戴宗は紙一重で全て回避しながら、酸の海を飛び越え男に向かって真直ぐに突撃する。
あたらなければどうということもない。
男の目では戴宗の体を捕らえることは不可能だ。
弾丸の威力は尋常ではなくても、男の銃の腕前は精々B級エキスパート程度でしかない。
だがムスカも自分の弾丸が当たるとは思ってはいなかった。
突然に戴宗の足が滑った。
「なんだと!?」
戴宗の心が驚愕に染まる。目の前で眼鏡の男のにやけ顔がさらに深まった。
そして戴宗は理解する。今までの男の行動はこのための布石だと、油か何かの液体を地面にばら撒き
自分を滑らすことが目的なのだと。床を溶かし煙を出す酸はこのためのカモフラージュだったのだ。
勝利を確信した男の銃が、自分の心臓に狙いをつける。あの威力を防ぐ手段は自分は持ってはいない。
横に滑った体では男の狙いを外せない。ならば、避けずに受け止めるのみ。
戴宗はデイパッグの中に右手を入れる。求めるものは奇妙な形をした剣。
剣士ではないものの、拾った剣を大業物だと理解していた戴宗はそれで弾丸を受け止められると確信していた。
ムスカの銃口が戴宗の心臓に垂直を結び、戴宗がエアを取り出す。
戴宗は乖離剣・エアを振るい、同時にムスカが引き金を引いた。
エアの軌跡と弾丸の軌道が交差する。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
156:Gentleman ◆bsSjhtXYP2
07/10/18 10:28:40 OTWEkYez
アニタ・キングは死んだ。
それはいったい何故か? 客観的に見れば、剣の暴走によりその見を切り刻まれたからである。
剣の暴走という死に方は事実だ。 だが真実は少し違う。
アニタ・キングの本当の死因、それは彼女の持つ強大な資質が剣を通したために発動し、押しつぶされたからだ。
ジェントルメンという老人がかつて存在していた。
彼は50万年ほど古より存在し、イギリスを中心として古代から現代において、老死に至るまで世界を支配し続けた最高権力者。
だが、その多種多様な人格に異能や能力を持つ人類を権力だけで支配はできない。
その答えは単純、全人類の力を扱いやすいように彼自身が制御したからだ。
気の長くなるような永い時をかけて、ジェントルメンは人類に多種多様な固定観念を植え付けていった。
人は螺旋力を持たない、空を飛べない、水中で息ができない、火で炙られれば皮膚は焼ける、100年程で命は尽きる、錬金術など理解できない、
魔術等はフィクションでしかない、肉体を変態させることはできない、視線だけで他人を支配できない、生命を生き返らすことはできない、
無から武器を生み出せない、物の怪を召還できない、炎や雷に衝撃波といった力を放出できない、悪魔を呼び出し契約などできない、
ただの蹴りでビルを持ち上げられない、気功など体得できない、紙を意のままに操れない、鳥が口から光を吐き出すことなど夢物語だ。
故に人は人であるしかなかった。
さらにジェントルメンが作り上げた大英図書館や大英博物館が正史以外の歴史を内包することにより、真実はジェントルメンの定めたものとなった。
故に人は、ジェントルメンの物語の住人でしかなかった。
だがあるとき、そんな中からルールを破る者たちが現れた。俗に言う異能者達である。
そして、その中のもっとも代表的な者達を挙げるとするならば、ジェントルメン自身が作り上げた組織が多数保有する紙使いが有名であろう。
紙使い、それは紙を自分の意のままに操る異能を持つ人間。その大半は本という存在を愛しており、
周囲の人間も本を愛するからこそ紙を使えると思っていた。
だがそれは違う。本が好きなだけで紙を操れるなら世界中の大半は紙使いになれるだろう。
紙使いである彼女ら彼らは本を読むうちに知ったのだ。
紙は自分の意のままに操れると。紙は信じれば答えてくれると。
そうやって異能者達は、ジェントルメンの作った現実という名のルールを破っていったのだ。
アニタ・キングはそんな異能者達の中でも、強大な力を持つ紙使いの遺伝子を掛け合わせて作られた少女だ。
D・Nの精子とY・Rの卵子によって、この世に生れ落ちた彼女は7歳という異例の若さで紙を扱えるようになるほどの資質を持つに至った。
157:Gentleman ◆bsSjhtXYP2
07/10/18 10:29:51 OTWEkYez
ジュニア死亡と大英図書館に認知された際はジェントルメンを復活させる候補にも選ばれたほどだ。
現代になるとジェントルメンは急速に老い、その強大な力も弱くなり老死した。
だが老死する以前から、彼に再び寿命と力を取り戻させる計画が大英図書館の手によって発足していた。
それがジェントルメン再生計画である。その計画は彼の精神から肉体における全てを7冊の本に纏め上げ、別人へとコピーするといった内容であった。
コピー先は誰でもいいというわけではなく、強い資質や器を持つ人間が必要ではあったが、
ジュニアやアニタといった優秀な素材があったために、その問題は解決していた。
後は素材が成熟するまで多少の時間が必要ではあり、ジェントルメン復活は問題なく行なわれるはずであったが、
大英図書館の保有するエージェントであるザ・ペーパーの暴走により計画は頓挫し、再計画を余儀なくされることとなった。
それほどの力を持つジェントルメンの支配から抜け出し、その器にも選ばれた少女である。
人間が紙を元々操れる力を持つことを知っていた以上は、魔術を操れる道具から人間は元々魔術を使えることを知ることができてもおかしくなかった。
そう、アニタが乖離剣・エアを扱えたのは紙使いとしての能力が一種の魔術回路として機能したからでもなく。
はたまた、螺旋王がこの実験によって探し出そうとしている新たな螺旋力を生み出しているからでもない。
気付いたからだ。人間は元々魔術を使えるということに。現代の人間がそのことを知らないのは、知ることができていないということに。
それほどの資質を持つアニタの力は、剣の巻き起こす力がアニタを切り刻んだように、剣に何の影響も与えていないはずがなかった。
剣の持ち主であるギルガメッシュすらも一見すれば全くの無傷としかいえない状態を保ってはいたが、
その実はアニタの引き出した出力と制御ミスに耐え切れず金属疲労に似た現象を引き起こしていたのだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
158:Gentleman ◆bsSjhtXYP2
07/10/18 10:31:47 OTWEkYez
エアの軌跡と弾丸の軌道が交差した瞬間、エアは戴宗の目の前で飴細工のように粉々に砕けた。
金属疲労に似た現象が起こり、折れる一歩手前の剣だったのだ。
この結果は想像に難くない。
「なっ!?」
しかし戴宗にとっては予想外の事態であったために彼は驚いた。
だが彼には、驚く暇も事態に対処する暇もなかった。
エアが粉々に砕けた瞬間、弾丸が心臓の前にある左胸に直撃していたのだから。
「ぐぅぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁあぁぁ!!」
戴宗は弾丸を喰らい後ろへと数m吹き飛ばされた。デイパッグとエアの柄が彼の体を離れる。
デイパッグは軽い音を立てて地へと落ち、エアの柄は甲高い音を立てて地面に激突し崩壊した。
戴宗の体は床を激しくすべり壁に追突し、動かなくなった。
ムスカは恐る恐る、仰向けに倒れ動かなくなった戴宗を数分眺める。
だが、彼はいくら待っても動かなかった。
「ハッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタの勝利の高笑いが、死者を侮辱する哄笑が病院内に響き渡る。
ひとしきり笑い終えたあと、ムスカは戴宗のデイパッグを拾い上げ、今だ薄暗さを残す廊下を移動し始めた。
恐怖の象徴が逝った今、彼に恐れるものなど何もない。
「これは私に逆らった報いなのだよ。さようなら名も知らぬ東洋人」
最後にそういい残しムスカは戴宗を残し、その場を後にした。
薬臭い倉庫など神がいるべき場所ではない。目指すは病院内のどこかにあるVIPルーム。そこで休息を取るのだ。
そして、そこには砕けた剣と胸を撃たれた男と幾つもの破壊痕だけが残された。
神を名乗る男が生き続ける限り、この光景は幾度となく繰り返されるであろう。
159:Gentleman ◆bsSjhtXYP2
07/10/18 10:33:41 OTWEkYez
【D-6/総合病院内/1日目/早朝(放送数十分前)】
【ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ(ムスカ大佐)@天空の城ラピュタ】
[状態]:精神・肉体共に激しく疲労、背中に打撲
[装備]:ダブルキャノン@サイボーグクロちゃん (残弾18/30)
[道具]:デイバック×2、支給品一式(食料-[大量のチョコレート][紅茶][エドの食料(詳細不明)])、葡萄酒の空き瓶、
アサシンナイフ@さよなら絶望先生×11本、『涼宮ハルヒの憂鬱』全巻セット@らき☆すた(『分裂』まで。『憂鬱』が抜けています)
魔鏡の欠片@金色のガッシュベル!!、食料-[握り飯、3日分][虎柄の水筒(烏龍茶)]
[思考]基本:すべての生きとし生ける者に、ラピュタ神の力を見せつける。
1.VIPルームで休息をとりたい。
2.パズーらに復讐する。
3.出来れば『平賀源内のエレキテル』のような派手な攻撃が出来る武器も欲しい。
最終:最後まで生き残り、ロージェノムに神の怒りを与える。
160:Gentleman ◆bsSjhtXYP2
07/10/18 10:36:45 OTWEkYez
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
神行太保・戴宗の体は放置されていた。心臓の上にある部分の衣服は激しく破れ、ダブルキャノンの威力を物語っていた。
ダブルキャノンの一撃は彼の周囲にある破壊痕から分かるとおり、人間など当ればひとたまりもない。
故に生存することなど不可能だ。なんらかの防御手段を用いなければ。
「ガハッ! ゲホッ!」
突然に、死んだと思われた戴宗は血を吐きながら咳きをした。
ムスカが去るまで本当に心臓は停止していた。
なんとか蘇生できたのは普段から絶やさぬ鍛錬の成果と、過酷な任務に就き磨かれた精神力故であった。
だが、それらだけでは彼の復活はありえないことだ。分厚い鉄板を胸に仕込んでいたとしても、簡単に彼の胸を貫通しているはずだからだ。
戴宗は起き上がり、壁にもたれかかりつつ自分の懐から何かを取り出した。足元に、弾頭が平らになった弾丸が転がる。
取り出した物、それは本だった。丁寧な装飾がされているわけでもなければ、タイトルがついているわけでもない茶色い分厚い本だった。
唯一表紙には6つの点を結ぶように六角形が刻まれており、中央に7つ目の点が刻まれていた。
その本が『涼宮ハルヒの憂鬱全巻セット』、『魔鏡の欠片』に続く戴宗の最後の支給品だった。
戴宗はその分厚い本を弾除け代わりにするつもりで懐に忍ばせたのだ。
「……傷一つ……ついて……いないとは……ねぇ」
戴宗は喋りずらそうに文句を言う。さすがの彼も心臓に多大な衝撃を受けたとあっては疲弊するのは当然であった。
だが、これ以上は文句を言わない。本が自身の心臓を守らなければ死んでいたことを理解していたからだ。
とはいえ、大砲の弾丸に匹敵する弾に耐えられる本など戴宗の理解の範疇外ではあったが。
しかし、ここにザ・ペーパーと呼ばれるエージェントがいれば、この事態を納得しただろう。
なぜならその本は、ジェントルメンを7分割した内の一冊である『全てを見通す眼の書』なのだから。
強大な力を持つジェントルメンそのものと言えるその本は、簡単には破壊できない。
「……さて、どうす……っかなぁ?」
戴宗は懐に本を戻しながらそう呟く。彼自身はとてつもない倦怠感と疲労感に包まれていた。
ゆえに休息を取る事を選ぶ。強敵との戦いに備えるために、今は失った体力の回復をするべきだ。
戴宗はとりあえずムスカから離れることにした。
死を恐れるわけではないが、この体では返り討ちが関の山でしかない。
まだ十傑集も残っているのだ。せめて殺し合いに乗った連中に対し、相打ちぐらいには持っていきたい。
せめて一子報いるまでは死んでも死にきれない。
161:Gentleman ◆bsSjhtXYP2
07/10/18 10:38:41 OTWEkYez
【D-6/総合病院内/1日目/早朝(放送数十分前)】
【神行太保・戴宗@ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日-】
[状態]:疲労、心臓に多大な衝撃
[装備]:全てを見通す眼の書@R.O.D(シリーズ)
[道具]:無し
[思考]:
基本:不義は見逃さず。悪は成敗する
1.眼鏡の男から離れ、傷ついた体を休めたい。
2.どこかで酒を調達したい。
3.菫川ねねねを捜し、少女(アニタ)との関連性を探ってみる。
4.死んでいた少年(エド)の身内や仲間を探してみる。
最終:螺旋王ロージェノムを打倒し、元の世界へと帰還する
162:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/18 10:56:06 Czht6a3f
403 名前:名無しセカンド 投稿日: 2007/10/18(木) 00:12:47 ID:I8NWlGSQ0
10/20(土)に期限が切れる予約
◆LXe12sNRSs氏 菫川ねねね、イリヤスフィール・フォン・アインツベルン、パルコ・フォルゴレ
◆bsSjhtXYP2氏 戴宗、ムスカ
◆hsja2sb1KY氏 スパイク・スピーゲル、読子・リードマン、八神はやて
404 名前: ◆bsSjhtXYP2 投稿日: 2007/10/18(木) 10:21:32 ID:TL3AiN5E0
投下します。
405 名前: ◆bsSjhtXYP2 投稿日: 2007/10/18(木) 10:40:06 ID:TL3AiN5E0
投下終了。
自分の中の問題点としては小説版R.O.Dの設定流用と、
病院の中の薬品の扱いかな?
平日朝10時に投稿たあいいご身分ですな
163:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/18 20:11:45 Z+CcJxbm
2ndの連中がしたらばで勝手に進めたって事なら、
こっちが2ちゃんで3rdを始めちゃっても問題無いって事だよなぁ?
164:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/18 20:30:18 HMG9VAlb
まあ、名前は2ndでしょ
165:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/19 22:05:58 git5T9ze
166: ◆LXe12sNRSs
07/10/19 22:07:53 vWxFrcJv
突然だが、水族館とは、海や河川、湖沼などの水中や水辺で生活する生き物を収集、展示している施設である。
魚介類や無脊椎動物、両生類、海産獣類、爬虫類といった動物や、水草などが主な展示物であり、
水族館を訪れる客は、多くがその生体の観察を目的として来るものである。
しかし近年、旧世紀から受け継がれてきた水族館の様式美も、様変わりをするようになってきた。
それは、エンターテイメント性の追求である。
ただ『魚が観れる』だけのアミューズメントではパンチが弱いのか、集客数は年々減る一方。
水族館側の人間はそんな状況をなんとか打開すべく、イルカやアシカといった人気の動物によるショーを開いたり、
水族館にちなんだオリジナルグッズを開発したり、動物に特殊な芸を仕込ませマスコットキャラとしてアピールしたりなど、
試行錯誤を繰り返す内に、昨今の水族館は、ただ魚と水槽を置きそれを見せるだけの施設ではなくなった。
そこで疑問に思うのが、『このE-1に位置する水族館は、いったいどの年代をベースにして作られたのか』ということである。
疑問の観点は水族館のみならず、会場全域にも言える。ドーム球場に観覧車などのアミューズメント施設から、
灯台や空港といった産業の基盤になる公共施設まで、各施設の充実ぶりは目を見張るものがある。
住まう分には不自由なく暮らせる快適な街……というのは客観的な論。では、殺し合いの舞台としてはどうか。
そもそも、殺し合いに相応しい会場とは如何なる場所が言えるのだろうか。
安易に脱出できない環境は当然として、敷地面積は広すぎず、隠れ家となるような施設は最大限排除したほうが効率的なような気もする。
つまり、この『暮らすには快適すぎる街』は、殺し合いをするに相応しい場所とは到底言えない。
だが、この殺し合いはただ人と人が殺し合うだけでなく、『優秀な螺旋遺伝子を選出させるための実験』という意味も孕んでいる。
むしろ、本来の目的こそがこの実験であり、殺し合いはそのための方法でしかない。
話は戻るが、この、『現代日本のそれと非常に酷似した水族館』は、どういった意味が込められこの場に配置されたのか。
主催者である螺旋王ロージェノムは、話していた言語こそ日本語だが、とても日本人と思える外見ではなかった。
いや、日本人どころか、外国人ですらない。そもそも人間なのかも謎。そんな人物がなぜ、実験の会場を日本に模したりなどしたのか。
なぜ、多種多様な施設を配置したのか。この水族館に、どこまでの狙いが潜められているのか。
「とまぁ、水族館一つでここまで考察できるわけだ、が」
―重苦しい印象を放つ男性モノの眼鏡を光らせ、菫川ねねねが言う。
「あいつら見てると、なんか馬鹿らしくなってくるな」
客席に腰掛けながら、ねねねは遠方ではしゃぐ二人組をみて思う。
実験、殺し合い、表現の仕方は色々あれど、このような危機的状況でなぜあの二人は、ああも楽しそうにしていられるのだろう……と。
「ハハハ、よーしイリヤ、次はイルカさんと遊ぶぞー!」
「遊ぶぞー!」
水族館内、直径約20メートルはあるかと思われる円形の巨大プールに、ねねねとイリヤとフォルゴレの三人組はいた。
ここは水族館内のパンフレットによると、「イルカのプール」と呼ばれる当館の看板スポットらしく、
バンドウイルカのダイナミックなジャンプや、カマイルカのスピード感あふれる泳ぎなどが、
音楽と照明に合わせたオリジナルな演出で華麗に繰り広げられ、さらに客席数は1350席でプールを囲むように配置されているので
どの席からでもイルカたちの迫力あるパフォーマンスは見逃すことなく堪能できる……らしい。本来ならば。
当然ながら、上記のようなパフォーマンスは、客が目の前にいるからといってイルカが勝手にやってくれるものではない。
スタッフが指示をして、初めてイルカは芸をする。いかに知能が高くとも、イルカはそこまで万能ではない。
そして根本的な問題として、このプールにはイルカはいれど、彼らに芸を指示する係員はいない。
それどころか、この水族館はまったくと言っていいほどの無人。飼育係も清掃員もいない、いるのは動物たちだけだった。
世話をする者もいなければ、訪れる者もいない廃れた水族館。ゆくゆくはどうなってしまうのか、考えると鬱になる。
しかし、今は自分たちのことで手一杯な状況だ。いくら愛らしく鳴かれても、ここにいる動物たちの面倒まで見る気にはなれない。
生きるか死ぬか、それが今の最重要問題だ。
167:「プレゼントするのはパルコ・フォルゴレさ!」
07/10/19 22:09:01 vWxFrcJv
「なのに、目の前の男とちびっ子ときたら」
プール内を悠々自適に泳ぐラセンちゃん(♀、推定4~6才)を追いかけ回し、黄色い声を上げている。
心の底から楽しそうだ。まるで危機感が感じられない。バカか、バカなのか。ねねねは自問し、勝手に自答した。
―イリヤの先導で水族館を探索し、衛宮士郎他それぞれの知人を捜してみたが、収獲は当然のごとくゼロ。
理論的に考えて、こんな端っこの施設にそれほど人が集まるはずもない。三人いるだけでも不思議なくらいだ。
ならさっさとここを離れて他の場所に移ろうとしたのだが、イリヤの好奇心がそれを阻む。
子供の扱いに慣れているらしいフォルゴレもそれに同調し、結果、ねねねを放って水族館内を遊び回る始末だ。
付き合いきれん。一人で勝手に出て行こうとも考えたが、これも何かの縁。
二人に他意はないという考えが先行して、今一歩薄情になりきれない。
詳細名簿を確かめるまでもなく、あの二人は人畜無害なお人好しだ。一応、信頼はできる、と判断した。
その確固たる証拠として、ねねねの座る座席の両横には、フォルゴレとイリヤ、二人分の荷物が鎮座している。
ライフラインとも言える荷物を預けたということはつまり、相手もねねねを信頼している証拠だろう。
単に危機感が足りてないだけかもしれないが。
「他の連中も、あの二人くらい平和ボケしててくれたら話は早いんだけどねぇ」
そんなにうまい話があるはずない、とねねねは心中で打ち消す。
空想の物語を綴る小説家という職業に就く彼女だが、その性格は健全なリアリストだ。
これが実験という名目の殺し合いであり、それに賛同している輩が既に何人か行動を起こしており、その被害にあった人間も少なからずいる。
そう、当たり前のように考えていた。実験が開始して数時間、まだ窮地らしい窮地に対面していない自分たちは、運がいいだけなのだ、と。
もうすぐ流れるだろう放送とて、何人の参加者の名前が、何人の知人の名前が呼ばれるか分かったものじゃない。
紙使いだから、天才中学生だから、魔物だから、シロウだから―などといった根拠は、まるで意味を成さない。
覚悟は万全にしておかなければならない。心を打ちのめされたままでは、いざというときに対処が追いつかなくなるからだ。
「というわけで、私はあの二人に目をやりつつ、当てになるかどうかも分からない考察を練ることしかできない」
ぼやくように吐き捨て、ねねねは自分のデイパックを探った。
取り出したるは、全19冊の文庫小説セット。表題はそれぞれ違うがどうやら連作モノらしく、シリーズ名は―『フルメタル・パニック!』。
イラスト付きの表紙から察するに、どうやら中高生をターゲットにした小説らしく、
アニメ化決定!などと書かれた帯で括られているところを見ると、それなりの人気作であることが窺える。
ちなみにこれは、元はフォルゴレの支給品だ。荷物を預かる際、ねねねが支給品を見せてくれ、と申し出ると、
『おいおい、私の支給品が欲しいって!? ホラ、受け取りな! プレゼントするのはパルコ・フォルゴレさ!』
などと言って、頼んでもいないのにわざわざサインを添えて謙譲してくれた。なんというありがた迷惑。
フォルゴレの温厚は置いておくとして、気になったのはこの本の発行所だ。
富士見書房。ちなみに作者は賀東招二、イラストは四季童子、単行本は富士見ファンタジア文庫からの刊行。
……どれもこれも、聞いたことすらない名称ばかりだった。
著作者の賀東、イラストの四季の名は置いておくとしても、富士見書房などという出版社はまったくの初耳だ。
自らの知識を過信するわけではないが、ねねねはこれでも現役の小説家だ。日本の出版業界にはある程度精通している。
そのねねねが、名前も知らないのだ。これはただ事ではない。
(考えられるとしたら……まぁ、マッハキャリバーが言うような異世界の産物なんだろうけど、これは明らかに日本語だ。
出版社の名前も、作者や発行人の名前も、物語の舞台も。……つまり、考えられるとしたら。
マッハキャリバーの言う異世界の概念をさらに超越したパラレルワールド、私の知らない別の日本、この本はそこで生まれた)
168:「プレゼントするのはパルコ・フォルゴレさ!」
07/10/19 22:10:10 vWxFrcJv
世界が複数存在するのではなく、日本が複数存在する。そしてこの会場には、その異なる日本からの参加者が集められている。
ねねねが『フルメタル・パニック!』から導き出した推理は、現実味がなく、だからといって否定もできない。
この推理が真実だと考えるならば、この名簿に名を連ねている読子・リードマンやアニタ・キングは、まったくの別人である可能性すらある。
パラレルワールド説……世界の構造はまったく同じだが、そこに存在する人や物は、もう一方の世界とはまるで違う。
この『フルメタル・パニック!』が存在する日本に菫川ねねねなどという作家はいないかもしれないし、彼女の本を発行している読仙社も存在していないかもしれない。
この会場内にいる読子やアニタも、ひょっとしたら、ねねねとは面識を持たぬ『パラレルワールドの住人』かも知れないのだ。
「ま、そこは実際相手と会ってみないとなんとも。次いこ、次」
文庫小説のセットをデイパックにしまったねねねは、次いでイリヤの荷物への手をつける。
「念のために言っとくが、一応本人の了解は得てるからな」
誰にともなく呟いて、ねねねはイリヤに支給された物資を確認する。
中から出てきたのは、二等辺三角形の刀身に柄を付けただけのやたら不恰好な剣。用途不明の鏡の破片。そして、
「なんじゃこりゃ? ショッピングカタログか?」
と思えるような、小冊子の三つ。
ねねねは一番興味を引かれた小冊子をパラパラと捲り、流し読みしていく。
目に入ったのは、銃火器や刀剣、車やバイク、さらにはぬいぐるみやメロンといった、実に多種多様な写真とその注釈。
それが全ページに渡って綴られているのを確認して、ねねねは冊子を閉じる。
どこからどう見ても、通販のカタログだった。
「……って、どこに本物の拳銃売る通販会社があるんだ。だいたい値段も電話番号も書いてないし。つーとあれか、これ……支給品のリストか」
推理するまでもなく、冊子の表紙には『支給品リスト』と書いてあった。盲点。
今一度じっくり中を覗いてみると、殺し合いの道具足りえる物品の数々が、写真と説明書き、本来の所有者の名前付きで載っている
その数百点以上。イリヤのバッグに一緒に入っていた『ヴァルセーレの剣』、『魔境の欠片』なども、事細かく掲載されていた。
これさえあれば、相手の持つ武器の性質を瞬時に把握でき、対処もしやすくなるだろう。
しかし融通が利かないことに、これらの支給品のどれが誰の手に渡ったのかまでは、書かれていなかった。
「軍が開発したパワードスーツだとか、小型の高性能爆弾だとか、やたらと物騒なもの多いな。ま、殺し合いなんだからあたりまえか。
お、マッハキャリバーのお仲間もいるじゃん。他には……マタタビとかブリとか、なんに使えって言うんだ。食うのか」
ねねねの知識では図れない未知の技術を用いた兵器から、ただの食い物まで、この支給品の山々だけでマーケットが開けるほどだった。
ザーッと冊子を読み進めていくと、先ほどフォルゴレから譲り受けた『フルメタル・パニック!』の項目も発見する。
付属の説明書よりも詳細に書かれている説明文を読んでみるが、やはり単なる文庫小説のようだった。
そして文末には、『柊かがみからの提供。』とある。どうやら、柊かがみというのがあの本の本来の所有者らしい。
「柊かがみ……たしか、名簿にもあったわね」
詳細名簿を取り出し、柊かがみの項目をチェックしてみる。
柊かがみ。7月7日生まれ。血液型はB型。身長は159cm。左利き。埼玉県在住。陵桜学園高等部の三年生。
家族構成は両親に姉が二人、双子の妹が一人。この実験にも参加している柊つかさはその双子の妹であり、泉こなたは親友。
読書が趣味で、特にライトノベルを愛読。主な愛読書は、フルメタル・パニック!シリーズ、涼宮ハルヒシリーズ等……
(なるほど。あの文庫小説は、このかがみって子の愛読書なわけだ)
169:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/19 22:11:52 git5T9ze
170:「プレゼントするのはパルコ・フォルゴレさ!」
07/10/19 22:12:11 vWxFrcJv
再び支給品リストのほうへ目をやると、『フルメタル・パニック!』の次の項に、ねねねに支給された『ボン太くんのぬいぐるみ』があった。
これはどうやら、フルメタル・パニック!シリーズに登場するボン太くんというキャラクターのぬいぐるみらしく、こちらの文末にも『柊かがみからの提供。』との一文が。
これらから推察できることはただ一つ。この、柊かがみという女子高生は―『フルメタル・パニック!』の大ファンだということだ。
まったくの偶然によるものだが、ねねねの手元には今、柊かがみの所有品が二つも並んでいることになる。
他意はないとはいえ、ねねねは少し居た堪れない気持ちになる。もしこの地で巡り会いでもしたら、ぜひ二点ともお返ししたい。
それに、今どき珍しい読書家の女子高生(と勝手に想定)というのも、少し興味がある。
ビブリオマニアというほどではないだろうが、ひょっとしたら、読子とも話が合うかも……などと思いつつ。
「マッハキャリバーに詳細名簿に支給品リスト、ぬいぐるみに文庫小説に鏡の欠片……武器になりそうなのは今のところこの剣だけか」
ねねねとイリヤとフォルゴレ、三人はこれからチームとして動く、いわば運命共同体だ。
できることなら自分たちの身を守れる武器らしい武器が欲しい。正直、あの振りにくそうな剣だけでは心許ない。
ねねねは望みを託してフォルゴレのデイパックを物色するが、出てきたのは見たこともない文字で綴られた黄色い本のみ。
「本づくしか、あいつの支給品は」
使えない、もとい、運が悪い男だとぼやきながら、デイパックに突っ込んだ右手が何かを探り当てた。
指が捉える、武骨でひんやりとした感触。ねねねは若干の緊張感を覚えつつも、一気にそれを引き抜く。
手が掴んでいたのは、一丁の拳銃だった。
「……なんか、一気に現実に引き戻された感じだな」
グリップのサイズは、やや手に余る。子供の頃握っていた水鉄砲などとは重量の桁が違う。
異能を持たぬ者でも、簡単に相手を死に至らしめることができる、お手軽殺傷兵器。
あればあったで安心できる物ではあるが、いざ握ってみると、引き金に触れることすら恐ろしく思えてくる。
遠くない未来、この引き金を引くことが、黒光りする銃口を誰かに向けるときが、必ずやってくるのだろう。
大切なのは、そのとき臆さないことだ。敵を敵と割り切り、早々に安全を確保するために、相手を撃つ。
それさえできればいいのだが、それが難しい。
「ま、こりゃそもそもあいつのモンだし、私が覚悟したところでどうしようもないか」
溜め息とともに吐き捨て、ねねねは拳銃をフォルゴレのデイパックに戻した。
銃などは自分の柄じゃない。いや、フォルゴレの柄でもないだろうが、少なくともねねねが持っていて重宝するような代物ではない。
銃を向けるくらいなら、とりあえず殴る。相手がマシンガンがだろうが戦車だろうが、とりあえずぶん殴って鎮圧する。これが一番。
彼女は、そういう人間だ。
「……手持ちの武器は、とりあえずこんなところか。あとはまぁ、あのちびっ子に危ない行動は控えるよう注意しとけば―」
チーム全体の支給品確認を終え、ねねねはプールのほうへ視線を移し―ギョッとした。
数分前までそこでイルカと戯れていたはずのイリヤとフォルゴレ、その二人に、思わぬ異変が訪れていたのだ。
客席から腰を上げ、大慌てでプールに駆け寄る。まさか、のんきに考察を練っている間にこんなことになっていようとは。
子供たちやイルカの楽園だったはずのプール、そこで起こっていた異常事態とは―!?
◇ ◇ ◇
171:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/19 22:12:18 aZ6r5Qda
172:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/19 22:13:47 git5T9ze
173:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/19 22:14:45 aZ6r5Qda
174:「プレゼントするのはパルコ・フォルゴレさ!」
07/10/19 22:14:57 vWxFrcJv
(休み話)
作家性、という言葉の意味を知っているだろうか?
読んで字のごとく、作家の持つ性質……培ってきた経験ではなく、元々秘めていた才能やら、人間性やらを指す。
バラエティに富んだ展開を生み出すアイディア、キャラクターに芝居をさせる上での役の分配、これらは才能の賜物であるように思われがちである。
しかし、ある作家は言った。作家性など、どれほど大事にしたところでそのうち消えてしまう、いわば消耗品だ、と。
作家性よりも大事なものは経験の蓄積であり、重視すべきはそれを育む環境の有無である。
一例として、13歳でデビューし、以降6年間天才作家としてヒット作を飛ばすも、19歳以降まったく小説を書かなくなったある女流作家を挙げよう。
彼女が執筆をやめてしまったのはなぜか。評論家の目から見れば、作家性の衰退、経験不足、といった酷評で捉えられることだろう。
しかし、人の人生など何が起こるか分からないものだ。彼女の事情を知らない第三者の論などでは、正解が搾り出せるはずもないのだ。
実際は何者かに拉致監禁されて母国を離れていただけかもしれないし、腱鞘炎などで筆を握れない事態に陥っただけなのかもしれない。
あるいは家族関係、交友関係でトラブルが起きただとか、女性ならば結婚を機に引退することだってあり得る。
作家が筆を手放す理由など、それこそ実際にあったケースで考えても、山のような数だ。ひとえに、作家性の衰退などという結論は下せない。
だが、一つ致命的ケースがある。それは、なんらかの理由により、作家から創作意欲が失われてしまうことだ。
小説の執筆に限らず、意欲―やる気という概念は、物事をやり遂げる上で最も必要とされる、前提的な要素だ。
これがなければ話にならず、書き始めることも、最後まで書ききることも、全てはこの創作意欲によって左右される。
これは、作家性も経験も関係ない。作家の意識の問題である。
前述した生活上のトラブルにより削がれることもあれば、原因不明のスランプによって失われることもままあるのが、創作意欲だ。
あるいは、そういったしがらみを全てかなぐり捨てでも書こうとする者もいるかもしれないが、それは恐らく作家性の範疇だろう。
この創作意欲を復活させる方法だが、実生活で起こった刺激的な体験、それに対して抱いた感情を、創作意欲に転化させるというやり方がある。
世に名を連ねる文豪の中には、波乱万丈な人生を送り、その実体験を小説として綴り大成した者がいる。夏目漱石や太宰治がそうと言えるだろう。
彼らは何も、小説のネタにするために意図的に波乱万丈な人生を歩んできたわけではない。実体験を文に起こす技能に恵まれていただけの話だ。
彼らの創作意欲がどれほどのものだったのかは知るよしもないが、史実を見ても、これらは彼らだからこそ持ちえた作家性の賜物であると解釈できるだろう。
だがそれは同時に、人生を振り返り、それを文章に転換できる、経験の賜物であるようにも思える。
結論など、解釈をする人間の数だ。ただ、一番大切なことは、書くという意志。これは揺ぎないものだと思う。
余談の、さらに余談になるが―13歳でデビューした天才女流作家は、4年間活動を停止するが、それ以後再び作家として躍進する。
失われた創作意欲を取り戻したのか、それとも小説よりも比重を置いていた物事が片付いたのか、それは誰にも分からない。
しかし―今、その彼女の書くという意思が、再び失われようとしている。
(休み話 中断)
◇ ◇ ◇
175:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/19 22:15:48 git5T9ze
176:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/19 22:16:36 aZ6r5Qda
177:「プレゼントするのはパルコ・フォルゴレさ!」
07/10/19 22:17:20 vWxFrcJv
「……で、今度はなんの遊びだ?」
「アレが遊んでるように見える!? むしろ遊ばれてるのよ! フォルゴレが……ラセンちゃんに!」
現場、もといプールに駆け寄り事情を把握したねねねは、思わず脱力した。
目の前に聳える円形のプール、その水面は荒々しい波濤によって飛沫を上げており、俄かには近寄りがたい。
飛び跳ねた水飛沫がねねねの眼鏡を濡らし、若干不快になりながら、頭を抱えた。
プールの中で、金髪の男がイルカと戯れている。否、訂正。金髪の男が、イルカに戯れられている。
「おぐっ!? ま、待つんだラセンちゃん! バンビーナである君がファッ!? 絶景の美男子である私に……ノォ!
好意を抱くのは分か……ゴボッ!? ……るが、これはスキンシップとしては些か激し、アーッ! すぎて……
あ、あ、あ……ダメ、ダメ、股間は……股間は弱いのよォォォォォッ!?」
奇声を発しながら、フォルゴレが宙を回転しながら舞ったり、落ちてプールに沈んだり、イルカから逃げ惑って鼻血を吹いたり。
まるで曲芸に用いられるビニールボールのように、イルカの鼻先で、尻尾で、フォルゴレはボコボコになるまで振り回されていた。
「最初はフォルゴレがラセンちゃんの背中に乗るって言い出したの。でもラセンちゃん、臆病なのかフォルゴレを攻撃しちゃって。
それでも諦めずに再チャレンジしたんだけど、やっぱりダメで。フォルゴレがあんまりにも頑丈だから、それが何回か続いて。
次第にラセンちゃんもフォルゴレが気に入ったのか、ああやって体全体でスキンシップを取るように……!」
「説明ありがとう。そして私からのコメントはたった一つだ。バカめ」
呆れを超越した蔑むような目で、ねねねはフォルゴレを見やり、すぐに目を背けたくなった。
イルカは知性が高い動物として有名だが、その裏で、実はなかなかに獰猛な一面も秘めている。
フォルゴレを襲っているラセンちゃんはマレー湾などでよく見られるバンドウイルカという種で、
彼らはよく、自分たちよりもサイズの小さいネズミイルカを群れ単位で襲撃し、噛み殺したりする。
その愛らしい外見的特長に騙され、イルカに噛み付かれる観光客もしばしば。
こういった水族館に属するイルカも例外ではなく、飼育係やトレーナーが襲われるという件数は多い。
同じ水族館の仲間から突き放され、こんな場にたった一頭だけ拉致されたともなれば、気も立っていることだろう。
それを面白おかしく背中に乗ろうなどと考えれば、当然襲われる。
「よし、もう一度言ってやろう。バカめ」
呆れて怒鳴る気にもなれず、ねねねは小言のように繰り返す。
やがてイルカも飽きたのか、フォルゴレを宙高く飛ばすと、自らも同様にジャンプ。
そこから尻尾を翻し、フォルゴレに叩き付けてプールの外へとぶっ飛ばした。
ねねねとイリヤは思わず「おお~」と感嘆し、ラセンちゃんに拍手を送る。
トレーナー抜きでこれほどの芸ができるなら大したものだ。この殺し合いの場でも、きっとたくましく生きていけることだろう。
「強いね、ラセンちゃん。イルカってこんなに強いんだ」
「イルカは頭もいいしね。可愛いからって喧嘩売っちゃいけないよ。返り討ちにあるのが関の山だ」
「あら、わたしならあんなバカな真似はしないわ。イルカはこうやって、遠くから眺めて愛でるものよ」
「なんだ、分かってるじゃないかちびっ子」
部外者のいなくなったプールをスイスイ泳ぎ回るラセンちゃんを見て、ねねねとイリヤがハハハッと笑い合う。
イルカは本当にたくましい。たくましい上に、見ていると癒される。すごい動物だ。本当にすごい動物だ。すごい動物だ。
「ってコラー! 二人とも、少しは私の心配をしたらどうなんだー!」
ねねねとイリヤの二人がプールのほうに意識を奪われていると、ふと後ろの客席から、ズタボロになった男の憤慨が聞こえた。
ラセンちゃんによってぶっ飛ばされたフォルゴレである。さすがは無敵を名乗る男、再起も早い。