07/10/11 01:37:17 a4jIyiyW
「気のせいか…?でも確かに今『怪物』って」
「だから俺を呼んだか?」
「ああああああ!やっぱりぃ!!」
今度は後ろから声がした。
慌てて振り返るがやはり誰もいない。
「騒がしい奴だな。何だお前は?猫か?まあいいや、ちょっと話を聞いていけよ。
退屈していたんだ。実を言うと少し寝ていた」
さらに別の方向から声がした。
見ても誰もいない。
「寝ていたと言っても時間を無駄にしていた訳じゃないぞ。
身の振り方を考えるのに体を動かす必要が無かった、というだけだ。
頭はきちんと働かしていた」
視線を空振らせつつ、だんだん冷静さを取り戻してきたミーの思考の一部が聞いてねぇよ、と呟いた。
「俺はこの場でどうするべきか?
いきなりこんなところに連れてこられてさすがの俺も戸惑ったが何、
困ったときには基本に立ち戻ってみればいい。
おいお前、俺はいったい何だ?」
「何って……『怪物』って言ったらでてきたけどぉ~」
何となくキャラが掴めてきた。ミーは割と惰性で首を振りつつ答える。
「そう。俺はあの黒服や白服連中にとっての『怪物』レイルトレーサーだ。
では何のために俺はレイルトレーサーになった?車掌として乗客の安全を脅かし列車の正常な運行を妨げる者達を喰らい尽くすためだ。
個人的にガンドール達との約束に遅れる訳にはいかないというのもある」
どうやら姿は見えないものらしい。ミーは声の主の探索を諦めた。
ただ話をするだけのものみたいだし危険はないだろう。
ミーの日常は順応性が高くないとやっていられない。
「いや俺を探せよ」
後ろから蹴飛ばされた。
隠れていたのはわざとだったらしい。
351:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/11 01:38:07 BxUW+VhZ
2291 :やってられない名無しさん:2007/10/09(火) 18:19:58 ID:???0
>>2284
その上今もう一方の隣接エリアにはヒューズもいるし、どう転んでも美味しくなりそうだ
視力障害起こしてるから道間違えてもおかしくないし
2292 :やってられない名無しさん:2007/10/09(火) 18:25:19 ID:???O
鎖、カイジと繋がると船の未来が絶望しかみえないw
2293 :やってられない名無しさん:2007/10/09(火) 18:28:21 ID:???0
つまり限定ジャンケンでもやるのかw
2294 :やってられない名無しさん:2007/10/09(火) 18:44:31 ID:???0
参加作品で船にまつわる悲劇といえば、幽霊客船殺人事件にアドウィナ・ウェイス号とか……
2295 :やってられない名無しさん:2007/10/09(火) 18:51:17 ID:???0
誰かをトリックで殺人して、後続の人がそれを解けるかどうかで
犯人が見つかるかどうか変わるのも面白いかもな。
問題はそんな推理小説を書ける人がいるかどうかだが。
2296 :やってられない名無しさん:2007/10/09(火) 19:31:42 ID:???0
>>2295 というかそれはすでに別企画なんじゃ……ミステリー好きとしては面白そうだけど
ロワは後続にわかるように書かないといけないからなあ
2297 :やってられない名無しさん:2007/10/09(火) 19:40:02 ID:???0
>>2294
鍋入りの不死酒を支給すれば……
それはそうと、ランサーは言峰に会ったらどうするんだろうな?
奴ならエリオの腕も治せるぞ、多分。
2298 :やってられない名無しさん:2007/10/09(火) 20:11:00 ID:???0
ジャグジーってラッドの名前知ってたっけ?
列車の中でぶつかったときでさえ気づいてなかったはずだけど。
2299 :やってられない名無しさん:2007/10/09(火) 20:34:56 ID:???0
なぁ…結局あの読子とスパイクのSSはどういう扱いになるんだ?
結局NGになるの?
後1時間弱で投下から48時間経っちゃうんだが……
352:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/11 01:38:14 xRRFZ0hA
353:世界の中心で、叫ぶ ◆10fcvoEbko
07/10/11 01:38:20 a4jIyiyW
「その俺が今ここにいる。列車に俺はいない。
ではトニーの仇は誰が討つ?乗客の安全は誰が守るんだ?
もちろん俺だ」
「矛盾してるだろ」
蹴られた頭をさすりつつ応える。
「矛盾していない。
たとえ矛盾していたとしても、その矛盾を俺自身の圧倒的な能力で無かったことにしてしまえるのが俺だ。
この場合はどうすればいいかと言うと『黒服や白服が乗客に危害を加えるよりも早く俺が列車に戻り事態を解決する』これだけだ。
簡単だろう?」
「……」
声の持つ自信とは裏腹の、言ってることの内容の無さにミーが言葉を失っていると。
「いや相槌打てよ」
また蹴飛ばされた。
どうやらわがままらしい。
「簡単だろう?」
しかもわざわざ聞きなおしてくる。ミーは仕方無しに口を開いた。
「そういうと簡単に聞こえるけどさァ。具体的にはど~すんの?」
「具体的には、か。そうだな。まず考えたのはこの会場にいる者を皆殺しにしてとっととこのゲームを終わらせることだ」
ミーは息を呑んだ。
もし声の主がそうするつもりなら、今自分は最も危険な場所にいることになる。
「だがこの案はすぐに却下した」
ミーは息を吐いた。
「こぇ~。びっくりさせんなよ、もう。変に間なんかとって」
「演出だ。で、何故だと思う?」
「なんで?」
蹴飛ばされたく無かったので即答した。後頭部が地味に痛い。
354:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/11 01:38:29 czFAXldO
355:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/11 01:38:40 tPu6csrN
356:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/11 01:39:15 BxUW+VhZ
2300 :やってられない名無しさん:2007/10/09(火) 20:41:21 ID:???0
NGっしょ。
要修正箇所の提示はされてるのにリアクション無いし。
2301 :やってられない名無しさん:2007/10/09(火) 21:01:59 ID:???0
>>2298
アニメ/原作、一応両方確認したけどジャグジーはラッド個人に関しての知識はないね。
2302 :やってられない名無しさん:2007/10/09(火) 21:03:31 ID:???0
>>2301
だよね。これは修正依頼を出した方がいいのか?
2303 :やってられない名無しさん:2007/10/09(火) 21:08:18 ID:???0
そもそも本投下されなければ予約期限切れでその時点で本来ならアウトだからね、
一応修正依頼ちゃんとした形で出しておくほうがいいだろうけども。
2304 :やってられない名無しさん:2007/10/09(火) 21:53:15 ID:???0
ここで言うことではないかも知れんが、どこで言うべきか分からんからここで言う。
基本的に修正不可能だな、と思ったときは、逃げないでちゃんと「破棄します」って言った方が良いよ。
責任放棄して逃げるのとか、企画全体から見れば迷惑行為以外の何者でも無いし。
前の闇の書のアレもそうだったけど、そういう初心者+空気読めない+責任感無い、とかだと、
ホント何時アク禁されてもおかしくない……と言うのはちょっと言いすぎかもしれんが……なあ?
2305 :やってられない名無しさん:2007/10/09(火) 22:10:04 ID:???0
参加者に一人も知り合いがいないのってヴィラルとクレアぐらい?
2306 :やってられない名無しさん:2007/10/09(火) 22:11:37 ID:???0
ヴィラルはシモン達と面識アリ。
2307 :やってられない名無しさん:2007/10/09(火) 22:13:20 ID:???0
あとラッド
>>2306
会う前の状態で放り込まれてたはず
2308 :やってられない名無しさん:2007/10/09(火) 22:18:16 ID:???0
>>2307
ラッドってジャグジーのことも知らないんだっけ?
直接会ってはいないけど手配書は貰っててもおかしくないな
2309 :やってられない名無しさん:2007/10/09(火) 22:19:01 ID:???O
クレアはフライング・プッシーフットの乗客名簿をしっかり覚えてるだろうから、アイザック、ミリア、ラッド、ジャグジーの名前だけは知っているはずだけどな。チェスは偽名使ってたから知らないだろうけど。
容姿も覚えていそうだし。
2310 :やってられない名無しさん:2007/10/09(火) 22:21:10 ID:???0
ラッドはジャグジーのこと知ってるんじゃないか?
フライングプッシーフット乗車前の「泣きながら仇討ち」の一件で。
2311 :やってられない名無しさん:2007/10/09(火) 22:21:33 ID:???0
レイチェルの無賃乗車を見抜いたくらいだから乗客の容姿まで把握しててもおかしくないなー>クレア
2312 :やってられない名無しさん:2007/10/09(火) 22:29:34 ID:???0
>>2306
>>2307
ヴィラル自身は知らないが、シモン・カミナ・ヨーコはヴィラルの事は知ってるな
ニアは…どうなんだ?元々は獣人側の人間だから知らない事は無いような気も…
2313 :やってられない名無しさん:2007/10/09(火) 22:31:40 ID:???0
原作読めとは言わんが、とりあえずアニメ放映分は見てくれ、な。
2314 :やってられない名無しさん:2007/10/09(火) 22:32:28 ID:???0
チェスって呼んでください!って、クレアには本名で名乗ってるけどね?相手が乗客名簿把握してる車掌だし
ただアニメで描写されるかわからない
2315 :やってられない名無しさん:2007/10/09(火) 22:35:16 ID:???0
ラッドは、参戦時期が乗車前だから、
面識はないけど、手配書で顔(写真)と名前と素性は知っている。という状態だな。
2316 :やってられない名無しさん:2007/10/09(火) 22:36:45 ID:???0
地味にロイドさんが知り合い消えちゃった予感
2317 :やってられない名無しさん:2007/10/09(火) 22:40:06 ID:7mytOmjkO
>>2309
公の書類なんかでは偽名名乗れないから乗客名簿も本名のはず
2318 :やってられない名無しさん:2007/10/09(火) 22:40:14 ID:???0
>>2309
チェスは乗客名簿には本名で載ってる。
どうやら乗客名簿とかは公式書類扱いにされて、不死者間のルールに反するらしい。
357:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/11 01:39:44 xRRFZ0hA
358:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/11 01:40:09 tPu6csrN
359:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/11 01:40:24 BxUW+VhZ
2319 :やってられない名無しさん:2007/10/09(火) 22:42:23 ID:???0
あとはビクトリームも参戦時期によっては誰も知り合いがいなさそう
2320 :やってられない名無しさん:2007/10/09(火) 22:55:33 ID:???0
なんでもありスレ……駄目だこいつら……はやくなんとかしないと……
2321 :やってられない名無しさん:2007/10/09(火) 23:02:46 ID:???0
Rw氏はまだか?そろそろ日が変わっちまうぜ……
2322 :やってられない名無しさん:2007/10/09(火) 23:04:11 ID:???0
>>2320
大丈夫だ1000いったから
2323 :やってられない名無しさん:2007/10/09(火) 23:06:48 ID:???0
>>2322
日本語でおk
2324 :やってられない名無しさん:2007/10/09(火) 23:08:14 ID:???0
>>2323
もう書き込めないって意味だろ
2325 :やってられない名無しさん:2007/10/09(火) 23:12:14 ID:???0
>>2324
書き込めないと大丈夫になるとは思えんが……というか何が大丈夫かも分からんが。
2326 :やってられない名無しさん:2007/10/09(火) 23:12:32 ID:???O
ウルフウッド大暴れの予感
2327 :やってられない名無しさん:2007/10/09(火) 23:47:19 ID:???0
舞衣とティアナの同声優共演なんだが
会話できるかなこいつら、特にティアナ
2328 :やってられない名無しさん:2007/10/09(火) 23:54:09 ID:???0
>>2327
二人とも精神的にダメージ負ってる状態だからなぁ
舞衣…やや軽くはなったが未だに精神消耗中。割かし自分の命に対してなげやり
シモン…言わずもがな疑心暗鬼モード。どう考えてもまともに行動できなさそう
ニコラス…迷いはあるもののスタンスは無差別マーダー
チェス…殺し合いに乗ってるわけではないがクセがある
ティアナ…現在進行形でトラウマに苦しんでる。かなりの精神的衰弱
……ジェ、ジェットがんばれ!!超がんばれ!!
2329 :やってられない名無しさん:2007/10/10(水) 15:40:52 ID:???0
シュバルツって2人のどっちか追っかけるんじゃなかったっけ?
2330 :やってられない名無しさん:2007/10/10(水) 15:54:28 ID:???0
>>2329
「後を追おうとした矢先に発見された」って描写されてる。
どっちかつーと衝撃の人の時間軸が朝になってる=放送過ぎちゃってる事が気になった。
多分ミスだろうけど
2331 :やってられない名無しさん:2007/10/10(水) 16:20:55 ID:???O
なぁ、シュバルツってDG細胞使って造られてんだよなぁ。シュバルツの死体って結構な危険物じゃね?
流石にスパロワの再来は無いと思うけど。
360:世界の中心で、叫ぶ ◆10fcvoEbko
07/10/11 01:40:42 a4jIyiyW
「殺すのは簡単だ。だが少し待て。本当にそれでいいのか?
車掌であると同時に俺は何だ?そう、殺し家だ。
殺し屋が殺す相手は依頼があって始めて生まれるんだ。
無差別に殺して回ってはそれはただの殺人狂だ。殺し屋ではない」
「あ~、つまり『仕事以外の殺しはしねぇ』とか何かそういう、殺しの哲学みたいなもの?」
「まさにその通りだ。分かってるじゃないか」
なんか嬉しそうだ。
「まぁ個人的に気に入らなかったりしたら殺すけどな」
「守る気ねぇじゃねぇか!」
ミーが叫ぶと、声はその反応が楽しいのかくっくと笑った。
「まぁそういうな。
おまけに名簿を見ると列車の乗客名簿にあったものと同じ名前もあった。
車掌である俺自身が彼らを殺してしまっては本末転倒だ。
そういう意味でもこの案は却下だ」
「まぁ、却下してくれてよかったよ。って言っても一人で80人も殺せる訳ないだろ~」
クロみたいな奴もいるのにさァ、と続ける。
「相手が誰でどれだけ数がいようと、俺が負けることはない」
「無理むり~。だってすごい武器もってるやついるかもしれないぜ?
ほら、最初に爆発させられた奴みたいにさ」
「それでも俺が勝つよ。
たとえば俺が絶体絶命の危機に陥ったとしようか。
『俺』が『絶体絶命』とは言葉として矛盾している訳だが、理解を助けるための言葉の綾として適当に流してくれ。
そうだな、今お前が言った最初に爆発した男いるだろ。
あの男の放ったボルテッカなる光線が俺に向けて放たれたとしようか。
あれほどの威力の技をくらえば俺でもただではすまない。
だが、俺ならばどんな状況であってもそれを避けることができるし、たとえ回避不可能な状況であっても死ぬことはない。
そのときはきっと『俺に秘められたす真の力』とかなんかそういうものが覚醒して結局俺は生き残る。
何故なら世界は俺に都合が良いようにできているからだ」
この声そこそこの年に聞こえるんだけど実際は中2くらいなのかな、とミーは思った。
361:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/11 01:41:09 tPu6csrN
362:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/11 01:41:29 BxUW+VhZ
2332 :やってられない名無しさん:2007/10/10(水) 16:46:23 ID:???0
予約スレで期限延長を申請してたけど予約期限ってもう延長できるんだっけ?
2333 :やってられない名無しさん:2007/10/10(水) 17:00:34 ID:???0
てか、死体をDG細胞で弄ってできたアンドロイドなんで
胸に穴空いたぐらいじゃまだ生きてる気がしないでもない
2334 :やってられない名無しさん:2007/10/10(水) 17:17:27 ID:???0
DG細胞ではなくアルティメット細胞なのかもしれない。
病院でレイン父に殺されかけてたからDG細胞よりも凶悪ではないっぽい。
2335 :やってられない名無しさん:2007/10/10(水) 17:31:03 ID:???O
制度としての延長でなくて、温情的延長の申請じゃね?
2336 :やってられない名無しさん:2007/10/10(水) 17:34:59 ID:???0
書いているのがクレアだからなぁ。
2337 :やってられない名無しさん:2007/10/10(水) 17:41:53 ID:???O
ひろし対決は譲れない
2338 :やってられない名無しさん:2007/10/10(水) 22:36:13 ID:???0
>>2331
スパロワがよく超展開の悪例に挙げられるけど、DG関連は凄く面白いんだぜ?
停滞もDG細胞と言うよりDG戦にフォルカが絡むことが決まってからだし。
2339 :やってられない名無しさん:2007/10/10(水) 23:07:14 ID:???0
死ぬほど亀だがはやて予約入ってたのな。どう転ぶかwktk
2340 :やってられない名無しさん:2007/10/11(木) 01:15:06 ID:???O
あーシュバルツ死んだかー
はじめの行動方針が面白そうだから期待してただけに、それっぽい事をほとんどしなかったのは残念だ
363:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/11 01:41:45 xRRFZ0hA
364:世界の中心で、叫ぶ ◆10fcvoEbko
07/10/11 01:41:53 a4jIyiyW
「う~ん、あんたが凄いってのはよく分かったけどさぁ。でも殺しはしないんだろ?
だったらどうやって脱出するんだよ」
「具体的にはまだ何も考えていないさ。
というか、これからそのための行動をしようとしていたところだ。
だが問題はない。俺が『脱出したい』と思いながら行動すれば何か色々上手くいってその通りになる。
何故なら世界は」
「『俺に都合が良いようにできているから』ね。はいはい、じゃあ頑張って。
オレ、そろそろ行くから」
多分決め台詞のつもりなんだろな横取りしたらまた蹴られるかな、と思いつつミーはその場を後にしようとした。
一応脱出を目指すと言っているがこいつと一緒にいても多分無理だ。
今度は蹴られなかった。
「待てよ」
代わりにまた声を掛けられた。
「何だよォ」
振り返る。相変わらず姿は見えない。
ただトンネルが真っ暗な入り口を広げているだけだ。
「お前はなかなか聞き上手だな。お陰で退屈が紛れた。礼だよ、持ってけ」
暗闇から何かが飛び出してきた。
ミーは反射的にそれを受け取る。
「礼って。それ程のことをした訳じゃないよ。ま、くれるってんなら貰っとくけどさ」
何だ結構いい奴じゃん、と思いつつ自分が受けとめたそれを見た。
保存液らしきもので瓶詰にされた目玉と目が合った。
「いるかああああああああ!!」
ミーは瓶を全力で投げ返すと、声の主から一歩でも多く距離を取るために走りだした。
走りながら、もう絶対にここには来ないと固く誓った。
【H-7/道沿いに北に爆走中/1日目-早朝】
【ミー@サイボーグクロちゃん】
[状態]:走っているため体力消費中 精神的疲労(小)
[装備]:セラミックス製包丁@現実、アニメ店長の帽子@らき☆すた
[道具]:支給品一式、世界の絶品食材詰め合わせ@現実
[思考]:あいつ馬鹿だ!絶対馬鹿だ!
基本:殺し合いには乗らず、ゴー君の元へと帰る。
1:現状を打破する為クロに会う。襲われた場合は容赦しない。
2:トンネルにはもう行かない。馬鹿がうつる。
3:帰って絶品食材を振舞う
[備考]:
※武器が没収されているのに気がつきました。
※悪魔のチップの性能の悪さをなんとなーく感じ取っているようです(気のせいレベル)
※食材詰め合わせの内約はご自由にどうぞ。
365:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/11 01:42:26 tPu6csrN
366:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/11 01:42:36 BxUW+VhZ
994 名前:名無しセカンド 投稿日: 2007/10/09(火) 18:33:32 ID:S91tJZs.0
そういうステータスってアニメでもでてたっけ?
995 名前:名無しセカンド 投稿日: 2007/10/09(火) 18:37:13 ID:NG9iZ.Eo0
少なくとも対魔力と神性はアニメでも使われてるな。
996 名前:名無しセカンド 投稿日: 2007/10/09(火) 18:49:16 ID:KonjFr0Q0
しきりなおしと矢避けもだ
しきりなおしは序盤のセイバーとの
矢避けは終盤あたりのギル様で、あれは数が数だったから完全には対処仕切れずにやられたはず
997 名前:名無しセカンド 投稿日: 2007/10/09(火) 21:40:05 ID:PLrmteDY0
いや、矢除けは発動したけど、神性Bも発動して鎖ジャラジャラで負けたはず。
998 名前:名無しセカンド 投稿日: 2007/10/09(火) 22:16:19 ID:ac8sqiks0
とりあえずアニメでの確認状況は
対魔力:C…第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。大魔術、儀礼呪法などは防げない。・・・OK
保有スキルは以下のとおり。
戦闘続行:A…瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。 ・・・?
仕切り直し:C…戦闘から離脱する能力。また、不利になった戦闘を戦闘開始ターンに戻す。・・・OK
ルーン:B・・・?
矢除けの加護:B…飛び道具に対する防御。狙撃手を視界に納めているかぎりどのような投擲武装だろうと肉眼で捉えて対処できる。ただし超遠距離からの直接攻撃、広範囲の全体攻撃は該当しない。・・・OK
神性:B・・・OK
999 名前:名無しセカンド 投稿日: 2007/10/09(火) 22:24:20 ID:PLrmteDY0
ついでにギル
クラススキル
対魔力:E…魔術に対する守り。無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。
単独行動:A+…マスター不在でも行動できる能力。
保有スキル
黄金率:A…人生において金銭がどれほどついて回るかの宿命。
カリスマ:A+…大軍団を指揮・統率する才能。ここまでくると人望ではなく魔力、呪いの類である。
神性:B(A+)…最大の神霊適性を持つのだが、ギルガメッシュ本人が神を嫌っているのでランクダウンしている。
うむ。全スキルまったく意味がない。
1000 名前:名無しセカンド 投稿日: 2007/10/09(火) 22:39:22 ID:ac8sqiks0
つまり、だ
ギルこそが螺旋王打倒の参加者を率いて戦う男にふさわしい
367:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/11 01:43:37 xRRFZ0hA
368:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/11 01:43:46 tPu6csrN
369:世界の中心で、叫ぶ ◆10fcvoEbko
07/10/11 01:44:04 a4jIyiyW
ミーが走り去ってしばらくして、トンネルから一人の男が姿を現した。
「怒って行っちまいやがった。まさか俺の好意が通じなかったのか?」
声の主、クレア・スタンフィールドである。
未だ血に塗れているが、ほとんど乾いているため禍々しい印象は大分薄れている。
手はミーに投げ返された瓶を弄んでいる。クレアの支給品である。
説明書には『マタタビの目玉』とだけ書かれていた。
「『マタタビ』って猫っぽい名前だからちょうどいいサプライズプレゼントになると思ったのになぁ。
あいつ白目だったし。」
心底不思議そうに首を傾げる。
「まぁ、次にプレゼントを送るときはもう少し慎重に吟味するとしよう。
にしても、やっぱり体が上手く動かんな」
クレアがミーの視界から声を掛け続けたのは何もからかうためではない。
いや、何か騒がしい奴が来たみたいだからからかってみたくなったのは事実だが。
いや、声はすれども姿は見えずってされる側にしたらすっげぇ怖くね、とか思ったのも事実だが。
主目的はここに来てから違和感を感じていた体の調子を確かめるためである。
最初に声をかけたとき、クレアは本当にミーの頭上にいた。
天井部分のでこぼこの激しいところをとっかかりに、指を掛け気配を消して身を潜めていた。
クレア以外の人間が見れば平らと変わりないと思っただろうが。
何故ミーが見たときには誰もいなかったかと言うと、それより早く音も気配もなく死角に移動したから、という単純な理由である。
後は同じように、振り返るタイミングを見切って移動していただけだ。
諦められると淋しいので蹴飛ばしたが。
「相手の視界に入らず気配も感じさせずで声だけ聞かせる。
ってこれもできるようになるまで結構苦労したんだよな」
周りの者達には天才の一言で方づけられてしまったが。
もう慣れたとはいえやはり気分の良いものではない。
「だが、余り上手く行かなかったな」
やはり体の調子はよくない。
恐らくあの猫がもう少し冷静だったら、あるいはもっと熟達した人物であったら、自分の存在に気付いていただろう。
そういや何であの猫喋れたんだ。
「まぁ、俺からすれば大した問題じゃないな」
370:世界の中心で、叫ぶ ◆10fcvoEbko
07/10/11 01:45:12 a4jIyiyW
全ては自分に都合の良いようになり、自分ができると信じてできないことはない。
このようにデイパックの中を漁れば当然脱出に役立つものがでてくる。
クレアはデイパックの中から、赤い球体を浮かべ緑色に輝く液体を収めた一本の管を取り出した。
それを空中に掲げ、吟味するかのように様々な角度から眺める。
そして、クレアは管を空けるとその中身を一気に飲み干した。
上手そうに喉を鳴らしながら飲み、空になった管は放って捨てた。
「カクテルか。ちょうど喋り疲れて喉が乾いていたところだ。
水じゃ味気ないし。やはり、俺は世界の中心だ」
クレアの二つ目の支給品『ワシの梅サワー……』であった。
「では行くか。とりあえず温泉で血を洗おう。
乾きはしたが何かうっとおしくなってきた。
それに」
レイルトレーサーは、朝日と共に退散する。
後に残ったクレア・スタンフィールドという男が、行動を開始した。
【H-7/真っ直ぐ温泉に向かって移動中/1日目-早朝】
【クレア・スタンフィールド@BACCANO バッカーノ!】
[状態]:自分への絶対的な自信
[装備]: なし
[道具]:支給品一式 マタタビの目玉入り瓶@サイボーグクロちゃん
[思考] 基本:脱出のために行動する 、という俺の行動が脱出に繋がる。
1:自分に攻撃してくる者に対しては容赦なく反撃する。
2;名簿に載っているのが乗客なら保護したい
3:リザ・ホ-クアイに興味(名前は知りません)。
※クレアの参戦時期は『フライング・プッシーフット』の『車掌二人』の死亡後です。
【梅サワー@3ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日-】
ある時ある場所で、ある十傑集がある少年に飲み干されてしまったもの。
ある特殊なシズマ管に見た目がそっくり。
【マタタビの目玉入り瓶】
クロが昔マタタビから抉り取った目玉を保存していた瓶。見た目は結構グロテスク。
371:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/11 01:45:12 BxUW+VhZ
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\ \ ヾ||,i / ゞ,イ゜ .r゜ } ]
\ \ . ||{ゝ‐- <,...r‐=F,/"~`゛'-、__.ノ_ .ノ 転載完了です
\,. -‐ ''\゙´||iゝ∠..ノ^ゝ.,,/i'"´~~゛'‐ 'i,_, li、.,_
/'\ ':;|レ''i, t . / >ィ‐"´~‐- 'iO ,ノ}‐-``'i,
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372:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/11 01:46:34 tPu6csrN
373:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/11 01:46:55 B+5Umz+M
毎度どうも
>>362
また予約延長とかやってんのかあのバカども
374: ◆10fcvoEbko
07/10/11 01:47:16 a4jIyiyW
以上で投下終了です。支援ありがとうございました。
375:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/11 01:48:02 ENp3nVWA
>>374
さるさる回避ゴクロウさん
376:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/11 01:48:52 tPu6csrN
377:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/11 01:49:56 i093qU8a
こうやってログ張っていただけることで
いちいちしたらばに出向いてカウンター上げなくてすむから
便利ですね
378:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/11 02:02:33 wPZQdd8W
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/ノ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::::::/'´ `´ i':::::::::ji
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{;;;;;;;;;;;;;_;;;;;;;::i_,,-‐l ̄ `'t-__' ,,,___-‐- i:::ノ'´
l;;;;;;;;;/ ヽ;;:i i ノ {  ゙̄l
ヽ;;;;;;l i ) V `'‐--─" l、__ ,ノ、
\ヽ ゝゝ , 〉  ̄ }ノ 思うんですが、したらばは一切
ヽ\ , /ノ 2ch側運営と話し合う気はないのではないでしょうか
\ト-i `''‐- 、,,,_ /‐'
l ヽ _  ̄ ノ
l゙ ゙i /
_,l ヽ /
,r'´ .l ,r‐- 、,_`'‐-─-- ,,_,,ィl` >
_ \ l/r'  ̄``'''─--─'´ノ-、
_,,-‐''"´ _,,二ニニ=-、______,,,,,--‐ッ‐' ``‐、,,_
379:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/11 02:04:15 B+5Umz+M
かもな
380:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/11 02:12:44 YP8LPrYh
>>356-359
基本的に修正不可能だなとか、なんなんだ
あんたら・・・
381: ◆RwRVJyFBpg
07/10/11 02:20:46 tPu6csrN
【セカンドチャンス】修正
>>288
>ここが殺し合いゲームの盤の上であることを考えると
>初っ端からこのようなアドバンテージを背負うのは正直、好ましくない。
>もし、この不完全な状態のまま、もう一度、東方不敗クラスの人間と戦うことになれば、今度は命の保証がない。
この部分を
>ここが殺し合いゲームの盤の上であることを考えると
>初っ端からこのようなハンディを背負うのは正直、好ましくない。
>もし、この不完全な状態のまま、もう一度、東方不敗クラスの人間と戦うことになれば、今度は命の保証がない。
に訂正いたします。
>>316
状態表を
【A-6/高速道路/1日目/早朝】
【衝撃のアルベルト@ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日-】
[状態]:疲労極大 全身にダメージ 右足に刺し傷(それぞれ応急措置済み)
スーツがズダボロ やや精神不安定
[装備]:なし
[道具]:支給品一式 シガレットケースと葉巻(葉巻2本使用) 不明支給品0~2(本人確認済み)
ボイスレコーダー@現実 シュバルツのブーメラン@機動武闘伝Gガンダム
赤絵の具@王ドロボウJING、自殺用ロープ@さよなら絶望先生
[思考]:
基本方針:戴宗を一刻も早く探して合流し、決着をつける
1:戴宗を再び失うことに対する恐れ。そうならないために戴宗の情報を集める
2:休息をとり、体力を回復させる
3:脱出の情報を集める
4:いずれマスターアジアと決着をつける
5:他の参加者と馴れ合うつもりはない
6:脱出不可能の場合はゲームに乗る
[備考]:
※上海電磁ネットワイヤー作戦失敗後からの参加です
※素晴らしきヒィッツカラルドの存在を確認しました
に訂正いたします。
382:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/11 02:36:29 +M9I0r6x
そろそろテンプレの訂正・・・もとい改正に着手するか
383:ここらへんも多すぎ
07/10/11 23:39:10 LOL3POfe
【NGについて】
・修正(NG)要望は、名前欄か一行目にはっきりとその旨を記述してください。
・NG協議・議論は全てしたらばで行う。2chスレでは基本的に議論行わないでください。
・協議となった場面は協議が終わるまで凍結とする。凍結中はその場面を進行させることはできない。
・どんなに長引いても48時間以内に結論を出す。
『投稿した話を取り消す場合は、派生する話が発生する前に』
NG協議の対象となる基準
1.ストーリーの体をなしていない文章。(あまりにも酷い駄文等)
2.原作設定からみて明らかに有り得ない展開で、それがストーリーに大きく影響を与えてしまっている場合。
3.前のストーリーとの間で重大な矛盾が生じてしまっている場合(死んだキャラが普通に登場している等)
4.イベントルールに違反してしまっている場合。
5.荒し目的の投稿。
6.時間の進み方が異常。
7.雑談スレで決められた事柄に違反している(凍結中パートを勝手に動かす等)
8.その他、イベントのバランスを崩してしまう可能性のある内容。
上記の基準を満たしていない訴えは門前払いとします。
例.「このキャラがここで死ぬのは理不尽だ」「この後の展開を俺なりに考えていたのに」など
ストーリーに関係ない細かい部分の揚げ足取りも×
・批判も意見の一つです。臆せずに言いましょう。
ただし、上記の修正要望要件を満たしていない場合は
修正してほしいと主張しても、実際に修正される可能性は0だと思って下さい。
・書き手が批判意見を元に、自主的に修正する事は自由です。
【予約に関してのルール】(基本的にアニロワ1stと同様です)
・したらばの予約スレにてトリップ付で予約を行う
・初トリップでの作品の投下の場合は予約必須
・予約期間は基本的に三日。ですが、フラグ管理等が複雑化してくる中盤以降は五日程度に延びる予定です。
・予約時間延長を申請する場合はその旨を雑談スレで報告
・申請する権利を持つのは「過去に3作以上の作品が”採用された”」書き手
【主催者や能力制限、支給禁止アイテムなどについて】
まとめwikiを参照のこと
URLリンク(www40.atwiki.jp)
384:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/12 01:13:22 tKdMGJkE
【NGについて】
(不要)修正(NG)要望は、名前欄か一行目にはっきりとその旨を記述してください。
(不要)NG協議・議論は全てしたらばで行う。2chスレでは基本的に議論行わないでください。
(不要)協議となった場面は協議が終わるまで凍結とする。凍結中はその場面を進行させることはできない。
(不要)どんなに長引いても48時間以内に結論を出す。
(OK)『投稿した話を取り消す場合は、派生する話が発生する前に』
NG協議の対象となる基準
(不要)1.ストーリーの体をなしていない文章。(あまりにも酷い駄文等)
(不要)2.原作設定からみて明らかに有り得ない展開で、それがストーリーに大きく影響を与えてしまっている場合。
(不要)3.前のストーリーとの間で重大な矛盾が生じてしまっている場合(死んだキャラが普通に登場している等)
(不要)4.イベントルールに違反してしまっている場合。
(不要)5.荒し目的の投稿。
(不要)6.時間の進み方が異常。
(不要)7.雑談スレで決められた事柄に違反している(凍結中パートを勝手に動かす等)
(不要)8.その他、イベントのバランスを崩してしまう可能性のある内容。
(不要)上記の基準を満たしていない訴えは門前払いとします。
(不要)例.「このキャラがここで死ぬのは理不尽だ」「この後の展開を俺なりに考えていたのに」など
(不要)トーリーに関係ない細かい部分の揚げ足取りも×
(必要)・批判も意見の一つです。臆せずに言いましょう。
(不要)ただし、上記の修正要望要件を満たしていない場合は
(不要)修正してほしいと主張しても、実際に修正される可能性は0だと思って下さい。
(不要)書き手が批判意見を元に、自主的に修正する事は自由です。
(不要)【予約に関してのルール】(基本的にアニロワ1stと同様です)
(不要)したらばの予約スレにてトリップ付で予約を行う
(不要)初トリップでの作品の投下の場合は予約必須
(不要)予約期間は基本的に三日。ですが、フラグ管理等が複雑化してくる中盤以降は五日程度に延びる予定です。
(不要)予約時間延長を申請する場合はその旨を雑談スレで報告
(不要)申請する権利を持つのは「過去に3作以上の作品が”採用された”」書き手
(不要)【主催者や能力制限、支給禁止アイテムなどについて】
(不要)まとめwikiを参照のこと
(不要)URLリンク(www40.atwiki.jp)
ほぼイラネ
385:再会と血と薔薇 ◆NGgK3uvozk
07/10/12 04:27:45 5FKZimre
彼女、柊かがみは走っていた。
自分を脅かす存在から逃げ切るために。
今はもう動かない、妹のもとへ戻るために。
■
(ここまで来たら、もう大丈夫かな?)
今まで走って来て何事もなかったのだから、ここまであの男が追いかけてくることはないだろう。
まさか、気配を消してどこかに潜んでいるのでは。
立ち止まり、恐る恐るレーダーを確認してみる。
……幸い、何の反応も見つからなかったようだ。
386:再会と血と薔薇 ◆NGgK3uvozk
07/10/12 04:30:32 5FKZimre
(……良かった。あれ以上は追いかけて来なかったみたい)
少しのため息と共に、胸を撫で下ろす。
あのまま遭遇していたならば、きっと喰われていたに違いない。
彼の右手が自分の頭に置かれる、そんな状況を想像するだけでも寒気がした。
私……怖いんだ。
何事にも恐れてはいけない筈なのに。
これからあの出来事の、何倍もの恐怖に立ち向かう必要があるのに。
殺さなくてはいけない。この身体を元にしてもらうために。
そして何よりも、自身の妹である、柊つかさの蘇生のためにも。
そうだ、あまり思考に耽っている相場ではない。
早くつかさのもとへ戻らなければ。あのまま野ざらしにしておくのは可哀想だ。
早くつかさを埋葬してあげなければ。腐敗していくつかさの姿なんて見たくない。
彼女は走る。
もう少しで待っているであろう、妹のもとに戻るために。
早く、早く戻らなければ。
…………戻らなければ?
387:再会と血と薔薇 ◆NGgK3uvozk
07/10/12 04:32:40 5FKZimre
■
呆然と立ち尽くすかがみの目の前には、柊つかさと思われる肉塊が転がっていた。
まるで再会を祝うための薔薇の花束のごとく、赤く、赤く染まり尽くした肉塊が。
「…………嘘。」
再会の言葉としては、あまりにも気の抜けた一言だった。
それもその筈、かがみは目の前の事態を、上手く飲み込めていなかったのだから。
え、何で。
こんなことはないよ。
こんなことってないよね。
「あの時」は綺麗だったのに。
あの傷以外は、綺麗だったのに。
嘘。
…………嘘!!!!!!
388:再会と血と薔薇 ◆NGgK3uvozk
07/10/12 04:34:17 5FKZimre
その頬に手を伸ばし、顔をこちらの方に向けようとする。
―頭の中からゼリー状の物体がこぼれ落ち、ブラウスが少しだけ汚れた。
【B-2/観覧車前 一日目・早朝】
【柊かがみ@らき☆すた】
[状態]:激しい動揺、不死者
[装備]:軍用ナイフ、防弾チョッキ、UZI(9mm.パラベラム弾:0/50)、ローラーブーツ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
[道具]:デイバッグ、支給品一式(水入りペットボトル×1消費)、レーダー、かがみの靴
[思考]
基本:優勝してつかさを生き返らせる
1.! !? ? ! !
※つかさを殺したのは武器を必要としないくらいの強者だと思っています。
※かがみの不死はBACCANOのアイザック、ミリア等と同じものです。
※かがみに支給されたレーダーは同エリア内のキャラ名と位置が表示されています。
389:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/12 19:04:23 MlRMIGhf
【読み手の心得】
・好きなキャラがピンチになっても騒がない、愚痴らない。
・好きなキャラが死んでも泣かない、絡まない。
・荒らしは透明あぼーん推奨。
・批判意見に対する過度な擁護は、事態を泥沼化させる元です。
同じ意見に基づいた擁護レスを見つけたら、書き込むのを止めましょう。
・擁護レスに対する噛み付きは、事態を泥沼化させる元です。
修正要望を満たしていない場合、自分の意見を押し通そうとするのは止めましょう。
・嫌な気分になったら、「ベリーメロン~私の心を掴んだ良いメロン~」を見るなどして気を紛らわせましょう。「ブルァァァァ!!ブルァァァァ!!ベリーメロン!!」(ベリーメロン!!)
・「空気嫁」は、言っている本人が一番空気を読めていない諸刃の剣。玄人でもお勧めしません。
・「フラグ潰し」はNGワード。2chのリレー小説に完璧なクオリティなんてものは存在しません。
やり場のない気持ちや怒りをぶつける前に、TVを付けてラジオ体操でもしてみましょう。
冷たい牛乳を飲んでカルシウムを摂取したり、一旦眠ったりするのも効果的です。
・感想は書き手の心の糧です。指摘は書き手の腕の研ぎ石です。
丁寧な感想や鋭い指摘は、書き手のモチベーションを上げ、引いては作品の質の向上に繋がります。
・ロワスレの繁栄や良作を望むなら、書き手のモチベーションを下げるような行動は極力慎みましょう。
【議論の時の心得】
・このスレでは基本的に作品投下のみを行ってください。 作品についての感想、雑談、議論は基本的にしたらばへ。
・作品の指摘をする場合は相手を煽らないで冷静に気になったところを述べましょう。
・ただし、キャラが被ったりした場合のフォロー&指摘はしてやって下さい。
・議論が紛糾すると、新作や感想があっても投下しづらくなってしまいます。
意見が纏まらずに議論が長引くようならば、したらばにスレを立ててそちらで話し合って下さい。
・『問題意識の暴走の先にあるものは、自分と相容れない意見を「悪」と決め付け、
強制的に排除しようとする「狂気」です。気をつけましょう』
・これはリレー小説です、一人で話を進める事だけは止めましょう。
【禁止事項】
・一度死亡が確定したキャラの復活
・大勢の参加者の動きを制限し過ぎる行動を取らせる
程度によっては議論スレで審議の対象。
・時間軸を遡った話の投下
例えば話と話の間にキャラの位置等の状態が突然変わっている。
この矛盾を解決する為に、他人に辻褄合わせとして空白時間の描写を依頼するのは禁止。
こうした時間軸等の矛盾が発生しないよう初めから注意する。
・話の丸投げ
後から修正する事を念頭に置き、はじめから適当な話の骨子だけを投下する事等。
特別な事情があった場合を除き、悪質な場合は審議の後破棄。
まだ検討されてないのここくらい?
390:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/12 19:30:51 zPjl2Ay+
>ロワスレの繁栄や良作を望むなら
いや、こんな企画にそこまで忠誠を望められてもwww
391:肉はない。が、監視はある ◆5VEHREaaO2
07/10/12 20:33:29 gQBxTF1K
太陽が湧き、月が沈もうとしていた。
黒い夜空を引きつれ夜の太陽は西へと沈み、昼の月が東より昇り赤い空を生み出そうとしていた。
そんな太陽の方向へと連れ立って進む人間が二人いた。
先頭で歩くはアフロで青いスーツを着た男、その後ろにいるのは長髪に白いコートを着た女であり、
静寂を守るように佇む街中を進んでいた。
そんな二人が街中を歩んでいるときだった。突如として静寂を打ち破る音が響き渡ったのは。
ぐ~きゅる~る~ぐお~ん
珍妙な音が二重に響き渡った。その音は人間が空腹時に消化器官から発せられる腹鳴り。
通称『腹の虫が鳴く』。
「腹減ったー」
男は現在の自身の状況を言葉で表す。
男の名はスパイク・スピーゲル。
ビバップ号で肉なしチンジャオロース等の貧乏メニューが主食のカウボーイ。
女の名は読子・リードマン。
本を読むためならば、三大欲求の一つである性欲を消去し、残り二つの睡眠欲や食欲すら忘却するビブリオマニア。
バトルロイヤル開始から数時間しか立っていないとはいえ、胃袋に元々何も入っていなかった二人に空腹が訪れるのは必然であった。
無論二人のデイパッグの中には他の参加者同様に食料品が支給されている。
とはいえ、スパイクの方は移動中に食料を摂取していた。
故に空腹感が強かった。摂取した量は雀の涙のため、余計に空腹感が襲ってくるのだ。
というよりも肉がなければ喰った気がしない。
さらに、水以外の食料と呼べるものは失われているという事実が拍車をかける。
「なあ、リードマン」
スパイクは何気なく読子に声を掛ける。
別に何か意味があったわけではない。侘しさを紛らわしたかっただけである。
だがすぐには読子は反応を返さなかった。
「おい、リードマン」
スパイクはもう一度読子の名を呼ぶ。
だが5秒、10秒とスパイクが待っても反応はない。
腹の虫が二重に聞こえた以上は、後ろから付いてきているはずだ。
そうぼんやりと考えながら、スパイクは後ろへと振り向いた。
392:肉はない。が、監視はある ◆5VEHREaaO2
07/10/12 20:35:08 gQBxTF1K
そこにはやはり読子・リードマンがいた。
ただし、本を読みながら歩くという本好きにも程がある所業をしていたが。
「………」
スパイクは絶句する。すでに認知はしていたがこの女はどれだけ本好きなのかと。
転んだらどうする? 逸れたらどう合流する? ふだんからこうなのか?
スパイクの心の中で、リードマン株がアメリカの大恐慌も真っ青になる勢いで暴落していく。
「もう少ししっかりしろよ」
再び足を進めながら、呆れた口調で呟く。
もちろん、本のページをめくる音しか返ってこなかった。
数歩進み、無言でスパイクは立ち止まった。
もし自分が先導しなければこの女はどうするんだろう、という知的好奇心が彼の中で渦巻く。
そして、スパイクはあっさりと誘惑に負けた。
スパイクは横へと退き、読子に道を譲る。
読子はスパイクの前を通り過ぎ、先へ先へと歩いていった。状況の変化にも気づかずに。
「……よくついて来れたな」
あえて、口に出し嫌味を言う。だが読子はなんの反応も返さず本を読み続ける。
恐ろしい程の集中力である。思わず嗜虐新がそそられるほどの。
「何の反応も返さねえといたずらしちまうぞ」
そう言ってみる。返事は当然のことながら無し。
スパイクはにやりと笑う。お前が悪いんだぜと、心の中で呟きながら。
背後へと周り歩調を合わせ、いたずらをしようと身構える。
さて、何をしてやろうか?
仮を返す主義である以上は、先ほどの紙斬撃未遂のおかえしぐらいはしておきたい。
メガネをずらす。いや駄目だ、さきほどのように反撃されかねない。
巨大な胸を揉む。これも駄目だ、セクハラで訴えられれば普通に裁判直行コースだ。
チョップでもかます。泣き出したりしたら、あやすのがめんどくさい。
etc,etc,etc,etc,etc,etc,etc,etc,etc,etc,etc,etc
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
393:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/12 20:35:34 tz09pVL5
394:肉はない。が、監視はある ◆5VEHREaaO2
07/10/12 20:36:26 gQBxTF1K
ある程度考えいくつかの案を出してはみたが、ほとんど没となった。
どうやら割と出来ることは少なそうだ。とりあえずは、餓鬼の悪戯レベルで勘弁してやることにする。
リードマンのデイパッグの中にわざと乱暴に手を突っ込む。だが反応はない。
乱雑にデイパッグの中からペンダントを抜き出す。やはり反応はない。
ペンダントのホックを外し首へと掛ける。もちろん反応はない。
首紐に掛かる形となった長い黒髪を外へと出す。当然のことながら反応はない。
本を読んでいる間はもっと刺激的なことをしなければ反応はないようだ。
きっと本読み発電という装置があれば、この女は最高の素体だろう。
ぐ~きゅる~る~ぐお~ん
再び、二人仲良く腹の虫が鳴く。やはり暇つぶしでは腹は膨れない。
本を読んでも腹は膨れない。大食漢というわけではないがあの程度では腹は膨れない。
ならばどうすればいいか?
決まっている。どこからか食料を調達してしまえばいい。
「さて、うまい飯はどこにある?」
スパイクは読子の後に続きながら、右手の親指を目頭に当て、辺りに視線を彷徨わせる。
「おや?」
そして、前方数十mの所にある、鮮やかな赤色に縦に黒井文字が書かれている旗を見つけた。
その旗は数本あり、こんな文字が載っていた。
『一番人気 尾道ラーメン 600円』
『昼食にお勧め 店長自慢のカレーライス 500円』
スパイクは思わず笑みを浮かべる。
これで空腹からオサラバダ。チャーシューメンイタダキマス。カツカレーハオレノモノ。
ぐ~きゅる~る~ぐお~ん
同時に腹の虫も鳴る。まるで自身を満たす強敵を見つけ、歓喜する武道家のごとく。
スパイクは今だ本を読みながら歩く読子の首を、チョークリッパーを仕掛けるがごとく二の腕で締め上げる。
「てりゃ!」
「わっ!? いきなりなんですか?」
読子はいきなりのスパイクの暴力に講義の声を上げ、手足をじたばたと動かしながら抵抗を試みる。
だがスパイクは、そんな読子のささやかな抵抗すら力技でねじ伏せ、ラーメン屋と思われる建物へと引っ張っていく。
ぐ~きゅる~る~ぐお~ん
「ラーメンですね」
読子は腹の虫を鳴かせながら、目の前の店を見てそう呟く。
395:肉はない。が、監視はある ◆5VEHREaaO2
07/10/12 20:37:54 gQBxTF1K
「食べたいな~」
さすがの彼女も本の虫状態を中断されれば、食欲も湧き上がる。
「でも、誰もいませんね」
ガラス張りであるため、店内は外から丸見えである。
故に誰もいないことが見受けられた。それは客どころか料理人すらいないという事実を指している。
とはいえ、二人は質を追い求めるわけではないので、煮込んだチャーシュー程度充分であるので
入らないという選択肢は両名の頭には存在しない。逆に、ただ飯にありつけるというものだ。
そして、スパイクには料理に対する秘策があった。
「昔の偉い人はこう言った。料理は女の仕事」
彼の相棒が聞いたら泣き出し、家事を放棄するような台詞をぬけぬけと言い放った。
スパイクは読子に料理を作らせ、自分はノウノウと結跏趺坐の行をするつもりなのだ。
「あのぅ。コックさんは男の人が多いらしいですよ」
スパイクの男女差別極まった暴論に、どこかピントのずれた答えを読子は返す。
いまだ、スパイクの企みなど知らぬまま。
「料理の本ぐらい読んだことあるだろう?」
「……ありますけど」
「なら作れる」
「む、無理です。私生まれてこのかた……」
陰謀に気付いた読子の鼻先にスパイクは右掌を突きつける。読子は思わず黙ってしまった。
そして、戸惑う読子の言葉を片手で制した男は口を開く。
「偉大なるブルース・リー師父はこう言った」
「あのぅ。それってまさか……」
「考えるな、感じるんだ」
「暴論ですそれ」
そんなやり取りをしつつ、頭をホールドされている女と年上の婦女を捕まえた男は店内へと入っていった。
ちなみに店名は『全国のラーメンが楽しめる店倉田屋』
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
396:肉はない。が、監視はある ◆5VEHREaaO2
07/10/12 20:39:09 gQBxTF1K
八神はやては項垂れながら街中を歩いていた。
親に見捨てられた子供と思えるほどに覇気を失いながら、北へと進んでいた。
クロとの約束を守るために。
いや、クロとの約束がただ一つの自身を現世に繋ぎつける糸であるかのごとく、
観覧車へと向かうルートを歩んでいた。それ以外にはやてにできることはなかった。
言峰綺礼の言葉に縛られるはやてには、クロとの約束以外のことを考える余裕はなかった。
故に、ここにつれてこられてから、初めて無警戒に行動していた。
言峰綺礼の呪は、はやての思考を縛り短絡化する。
そんなはやてが無用心に歩いている時だった。
道先にある十字路にまっすぐ進んでいく影を見つけたのは。
はやては驚きつつも、慌てて電柱の裏へと隠れる。
影ははやての姿に気付かずに、十字路の右へと進んでいく。
いったい誰だろうか? はやてはそれをまず考える。
はやての眼には、人影は白い長衣を着た人物に見えた。
その白い長衣を着た人物にはやては心当たりがあった。
八神家の一員であり、機動六課の医療担当班に所属する湖の騎士シャマルである。
それは見間違えだったのかもしれない。ただの儚い幻想だったのかもしれない。
はやては心を期待で満たしつつ、曲がり角まで歩み寄り、壁に隠れながらも人影が去っていった方向を覗く。
だがそこには、騎士シャマルはいなかった。
代わりに、アフロの頭に青色のスーツを着た男と、その先を行く長髪で白いコートを着た女が見えただけだった。
どちらも捜し求めた人物でないどころか、クロやパズーや自身が知っている人物ですらない。
はやては失望しつつどうすればいいか迷った。あの二人に接触すべきだろうか?
先ほども二人組を見かけたが、自分では戦闘になった際に対処できないと判断したため会話すらせずに避けた。
だが、あの二人の場合はどうだろうか?
正直に言えば、あの二人が自分より戦力的に勝っているという姿が想像しにくい。
あの男はデバイス無しの自分よりも戦闘能力があるかもしれないとは思える。
しかし、女の方は真逆だ。どう見ても戦闘能力があるとは思えない。
先ほど言峰という戦闘能力がないと思われた神父に手痛い思いはしたものの、それでも女の方を脅威だとは思えない。
正直に言えば魔法無しのリィンフォースⅡですら勝てそうだ。
しかも何か書物を読んでいる。その本が重要であったとしても、あれでは襲ってくださいと言っているようなものだ。
そんなふうに思える女が、足を引っ張らないわけがない。
397:肉はない。が、監視はある ◆5VEHREaaO2
07/10/12 20:40:28 gQBxTF1K
ここは接触するべきだろうか?
はやてがそんなふうに悩んでいる時だった。突如として変化が訪れたのは。
女の後ろを歩く男が、突然女のデイパッグに手を突っ込んだのだ。
果たしていったい何をしようというのか?
はやてには男の考えなど分からなかった。ある瞬間までは。
男はデイパッグの中から、ワイヤーのような物を取り出すと女の首へと掛けた。
はやては突然のことに驚きつつ、とっさに男へと銃を向ける。
男は女の首をワイヤーで絞めるつもりなのだ。
ゆえにはやては防ごうとした。この距離で当るかどうかも考えずに。
『誰かを否定することでしか肯定できぬ願望があるのなら、
何を躊躇うこともない。自らの意思で他者を蹴落とし、その先へと進みたまえ』
だが撃てない。はやては弾金を引くことができない。
言峰の呪が頭に響き、行動を阻害する。
他者の願いを否定するほど自身の信念は正しいのか?
優勝して願いを叶えるのは、間違っているのか?
今までのはやての人生を否定するような疑問が、彼女の行動を縛る。
しかし、はやてが弾金を引く必要はなかった。
女の首に手を掛けていた男は、あっさりと女から身を離し、辺りを見回していた。
いったい何なのだろうか? はやては状況が悪い方向に流れなかったことに安堵しつつも疑問に思う。
が、はやてがホッとしたのもつかぬまに男はすぐさま女にヘッドロックを掛けた。
首を絞め殺すつもりか!?
はやては再び岐路に立たされた。と思った。
だが男は、じたばたともがく女を引き釣り、飲食店の中へと入っていった。
あの男はいったい何がしたいのか? はやてには理解できない。
故にはやては想像する。あの男がこれから女性に何をするのかを。
薄暗い店内。二人きりの男女。自分より2,3歳ほど年上と思われる弱そうな女性。
推定85と思われる男を惑わす巨峰。男のにやりといやらしく笑う唇。殺し合いという極限空間。
殺せるチャンスなどいくらでもある状況で、男が女を捕まえる意味。
それらから、はやては結論を出した。
あの男は婦女暴行をしようとしているのだ。
はやては非男性経験が19年の処女であるものの、れっきとした女である。
人気の無い店で、あの男が女に何をするかは簡単に想像が付く。
薄暗く数坪ほどの狭い店内へと無理矢理連れ込まれる女。そこには誰も助けなど来なず、逃げ場すらない。
その場で、男は銃を突きつけ女に要求するのだ。
服を脱げ、下着を脱げ、俺に奉仕しろと。
女は泣き叫び、髪をつかまれ、床に押し倒されつつも必死に抵抗する。
だが抵抗むなしく、後には白い液体塗れになった女が店内に残された。
そんな状況を思い浮かべると、生理的嫌悪と共に寒気がしてくる。
生まれ故郷の大阪でも同じような事件が起こったことを考えると、この答えは間違ってはいないだろう。
ならばどうするか?
果たして、婦女暴行を阻止するべきなのだろうか?
はやては悩む。それは言峰綺礼の呪の範囲外の悩み。
80人を殺害し優勝という希望を得ようとしているわけではなく、世界の運命などまったく左右されない婦女暴行。
たった一人の女性の運命とその周囲の人物の感情しか狂わない事態。
はやては憤り、胸を切り裂かれる思いとなり、女性としての嫌悪感を感じ、
言峰の言葉を思い出し、守るという行為に対する疑念を感じ、悩む。
「……私はどうすればええんやろう?」
そして、彼女の下した結論は―――――
398:肉はない。が、監視はある ◆5VEHREaaO2
07/10/12 20:42:18 gQBxTF1K
【G-4ラーメン屋店内 一日目・早朝】
【スパイク・スピーゲル@カウボーイビバップ】
[状態]:腹減ったー
[装備]:デザートイーグル(残弾8/8、予備マガジン×2)
[道具]:支給品一式(食料なし)
[思考]
1.オンセンに行く前に腹ごしらえ。料理はリードマンに作らせる。
2.とりあえずオンセンに行ってから帰る。
3.読子と一緒に行動してやる。
【読子・リードマン@R.O.D(シリーズ)】
[状態]:お腹空きましたー
[装備]:○極○彦の小説、飛行石@天空の城ラピュタ
[道具]:支給品一式、拡声器
[思考]
1.○極○彦先生の本を読破する。
2.温泉に行く前に腹ごしらえ。
3.スパイクと一緒に温泉に行ってから帰る。
【G-4ラーメン屋から少し離れたところ 一日目・早朝】
【八神はやて@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
[状態]:健康
[装備]:トリモチ銃@サイボーグクロちゃん
[道具]:支給品一式 レイン・ミカムラ着用のネオドイツのマスク@機動武闘伝Gガンダム
[思考]
1.婦女暴行を阻止するかどうか迷う。
2.自分の信念が正しいのかという迷い。困惑。
3.東回りに観覧車へ。クロと合流する。
4.主催者を逮捕するのは、果たして正しいのだろうか?
※ムスカを危険人物と認識しました
※シータ、ドーラの容姿を覚えました。
※モノレールに乗るのは危険だと考えています。
※言峰については、量りかねています。
399: ◆5VEHREaaO2
07/10/12 20:43:40 gQBxTF1K
投下終了。
400:ログ保全1
07/10/12 21:38:01 pB9fWppG
1 :名無しセカンド:2007/10/11(木) 22:02:01 ID:5x9.wqL.0
なんでもありスレpart2です
2 :名無しセカンド:2007/10/11(木) 22:23:59 ID:hoEXug8o0
スレタテ乙ぶるわああああああああああああああ
3 :名無しセカンド:2007/10/11(木) 22:39:10 ID:Fr7g9bmIO
乙。
感想以外雑談スレってとこかな?
議論までいかない疑問や指摘もここになるか。
4 :名無しセカンド:2007/10/11(木) 23:03:14 ID:hoEXug8o0
ならば今話題の放送前に終わらしておきたいパートで雑談。
5 :名無しセカンド:2007/10/11(木) 23:07:32 ID:gIfj/7KY0
エドのトコ、発電所がらみでどでかいイベント起こすには良いタイミングだと思ったり。
作中時間でも結構余裕あるし、放送直前or直後にイベント発動、って風にすれば……とかな。
大停電とか、電化製品暴走とか……??
まあ、肝心のイベントそのものが思いつかないから意味無いんだけどorz
6 :名無しセカンド:2007/10/11(木) 23:07:37 ID:NBfI1OO60
エドで考察話か…。
ロワに一切貢献しないあさっての方向向いてる考察ならしそうなんだがw
7 :名無しセカンド:2007/10/11(木) 23:08:38 ID:OnrPmCvg0
そんじゃまー、時間帯別表のコピペ&最新版に弄った奴を張ってみますか
再び、いつもの人勝手な事してゴメン
【黎明】
(無予約)
エド/マオ/シータ/ヴィラル/スバル/ヒューズ/泉こなた/アル
(予約済み)
ミー/クレア/シモン/舞衣/ウルフウッド/チェス/スパイク/読子/はやて
かがみ/間桐慎二/ギル/奈緒/言峰
【早朝】
(無予約)
剣持勇/ねねね/フォルゴレ/イリヤ/絶望/カレン/ルルーシュ/ドモン/士郎/なつき
Dボゥイ/ゆたか/木津千里/ヴィシャス/相羽シンヤ/ヨーコ/ジン/清麿/ラッド/東方不敗
クロ/ヴァッシュ/クアットロ/ロイ/エリオ/ランサー/戴宗
スカー/ロイド/金田一/ミリア/カミナ/V/シャマル/アイザック/可符香/高遠
静留/ジャグジー/キール/ガッシュ/アレンビー/マタタビ/衝撃
(予約済み)
ジェット/ティアナ
【放送前】
ホークアイ/ニア/ドーラ/パズー/ムスカ/明智
401:ログ保全2
07/10/12 21:41:05 pB9fWppG
8 :名無しセカンド:2007/10/11(木) 23:16:09 ID:NBfI1OO60
>>5
そういうの考えてみようとして、自分の中に
発電所の内部に関するイメージが全然無いことに気づいた。
9 :名無しセカンド:2007/10/11(木) 23:24:56 ID:cdZlLIoQ0
>>7
このまま放送後に送ってもいい連中がちらほらと
……第一回放送が投下されてから、放送前の話を投下してもいいんだろうか?
いいなら問題なさそうだけど
10 :名無しセカンド:2007/10/11(木) 23:27:35 ID:gIfj/7KY0
>>8
よし、じゃあ俺のメチャ曖昧な情報を披露してやる!
発電所っつうのは、特定のエネルギーを電力に変えるところ。
火力・水力・風力・潮力・原子力……といったところのコト。
ただ、水力はダムが必要。
火力と原子力はかなりでかい設備が必要になるのだが……あと燃料が大量に貯蔵してあることになり、文字通り火薬庫状態。
風力と潮力は、まあ有り得るカンジなんだが、俺が良く知りません。
そして最後の選択肢こそが……「螺旋力」だ!!!
未知のエネルギーで発電、っつうのも有り得る話なんですな。
内部は、まあ水なり蒸気なりでモーターを回して発電するので、そのためのでかい機械と管理部屋があるカンジだね。
あと、起こした電気は基本直流なので、それを交流に変える変電所も併設してるかも。
まあ、発電所なんかで下手に暴れたら取り返しのつかない大惨事になってもおかしくはねーぞ!
11 :名無しセカンド:2007/10/11(木) 23:32:13 ID:cdZlLIoQ0
>そして最後の選択肢こそが……「螺旋力」だ!!!
内部にグレンラガンがあるのを想像したのはきっと俺だけじゃないぞー!
12 :名無しセカンド:2007/10/11(木) 23:34:20 ID:XQxmFyG2O
螺旋力発電所って……人力?w
13 :名無しセカンド:2007/10/11(木) 23:35:02 ID:gqaSiy760
>>11
起動した瞬間に首輪が爆破されそうだな。
起動キーがアレな豪華客船がカテドラル・テラだと思ったのは俺だけでいい。
14 :名無しセカンド:2007/10/11(木) 23:37:45 ID:NBfI1OO60
>>10
おお、thk。そんなんなってんのか。
螺旋力は面白そうだが。エドの螺旋力ってチェスでもしたら発揮されるかな?
15 :名無しセカンド:2007/10/11(木) 23:38:54 ID:hoEXug8o0
発電ねえ。シズマドライブか原子力か、それとも螺旋力か?
自分の発想だと各作品に関係する動力はそれぐらいしか……
そういえば、ゴッドガンダムって感情エネルギーを出力に付加していたっけ?
402:ログ保全3
07/10/12 21:42:42 pB9fWppG
16 :名無しセカンド:2007/10/11(木) 23:43:02 ID:OnrPmCvg0
>>13
ちょwwww月サイズwwww
アークグレンだとしてもでかすぎるってのに、カテドラル・テラとか絶対にロワ会場よりもでかいぞwww
しかし螺旋力で発電、となると…>>12の通り人力以外だとすると難しいんだよな…
人間が持つ未知のパワー=螺旋力だし
……もしかしてあれか。今回未参戦だった某白い冥王とか某あかいあくまとかが発電所に囚われてバッテリーにされてるとかかw
17 :名無しセカンド:2007/10/11(木) 23:44:37 ID:OnrPmCvg0
>>15
シズマドライブだとするとオイシイ展開を思いついたぞ…
アンチ・シズマドライブが『三本』用意されているとしたら、もしかしたらその用途は……
18 :名無しセカンド:2007/10/11(木) 23:50:33 ID:gIfj/7KY0
……と、唯の地図上の一点だったハズの施設が途端にアツいスポットに早変わり、っと。
コレが発想の転換、コレが螺旋の力だッ!!!
19 :名無しセカンド:2007/10/12(金) 01:53:06 ID:6kknzP1s0
今んところ、あんまり触れられてない場所は卸売り市場、刑務所、デパート、フェリー発着所か。
ところでさ、高速道路ってどこが入り口と出口なの?
20 :名無しセカンド:2007/10/12(金) 02:10:57 ID:joBzqZUY0
書き手が描写したところに出入り口があることになる。多少多目でも問題はないだろう。
21 :名無しセカンド:2007/10/12(金) 07:49:43 ID:HkFQ8bho0
とりあえずアレンビー達が高速道路に上がったからあの辺には一個ある
22 :名無しセカンド:2007/10/12(金) 10:22:48 ID:DD3R04J60
そういや高速道路E-3封鎖されてたなと思い出したが
このメンバーじゃ支給品と気づかず飛び越えて行きそう
23 :名無しセカンド:2007/10/12(金) 14:20:31 ID:mUYdnQFU0
>>10
風力はでかい風車が並んでるから見ればわかる、「風力発電」で画像検索すれば出てくる。
潮力は海専用だからここは違うかな?海だとあと温度差発電・波力発電ってのもある。
他にはソーラーパネルが並ぶ太陽光、立地条件が限定される地熱なんてのも。
24 :名無しセカンド:2007/10/12(金) 14:21:52 ID:eGDEsPl60
しかしポルヴォーラを抱えたままそんな危険なことするかな?
あいつ、ちょっと高い所から落としただけで大爆発するんだぜ……。
25 :名無しセカンド:2007/10/12(金) 19:17:21 ID:baglIhRY0
発電所でできるのは最初から交流だってのは誰も突っ込まないのね。
電圧を変える変電施設とかも一緒にあると思う。
フェンスやカメラとかの警備体制はいいはず。(良くなかったら怖い)
あと、立地条件からすれば水力と風力は無いと思う。
水力は山の中でやるものだし(水を高いところから落とすために)、
風力発電するには周りの風通しが悪そうだから。
26 :名無しセカンド:2007/10/12(金) 20:57:52 ID:wtDDqlkIO
むしろ発電所は異世界からのエネルギーを云々ってフラグに使うとか…
エドが書けるなら書いてはみたいけど
403:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/12 21:55:37 09I1rHdF
>>400-403
何そのシムシティ
404:阿修羅姫(前編) ◆LXe12sNRSs
07/10/12 22:32:29 u8HW3Rwm
人生は絶え間なく連続した問題集と同じだ。
揃って複雑、選択肢は極小、加えて時間制限がある。
一番最低なのは、夢のような解決を待って何一つ選ばないことだ。
最良の方法を瞬時に選べ、私たちは神とは違う。
万能でないだけ鬼に成る必要がある。
◇ ◇ ◇
405:阿修羅姫(前編) ◆LXe12sNRSs
07/10/12 22:34:26 u8HW3Rwm
某月某日明朝名もなき市街地にて―
微かな街頭に照らされるだけの心許ない道路は、なんとかバイクを走らせられる程度には明るくなった。
それでも、肝心の運転手―鴇羽舞衣には、免許証はもちろん、自動二輪車を動かした経験すらない。
たどたどしい運転は今にも転倒しそうな危うさで、どうにか二人乗りの車体を垂直に保つので精一杯。
周りの警戒は愚か、後ろの乗客の異常すぎるテンションにも気が回らなかった。
シモンは思った。
俺がやるしかない、と。
(ニア……待っていてくれ、ニア……!)
シモンがアニキと慕う男、カミナはもういない。
グレンの搭乗者であり、大グレン団のリーダーであり、何よりシモンの心の支えであった存在は、もうここにはいないのだ。
(……そうだ、アニキは死んだ。だから俺が、俺がアニキの分まで戦わなきゃいけないんだ……!
獣人たちを、四天王を、ロージェノムを倒して! 俺が……アニキにならなきゃいけないんだ!)
獣人の駆逐と地上の解放、それがシモンたち大グレン団の掲げる目標だ。
人間たちは、遥か昔から獣人たちの圧力により地中での生活を強いられてきた。
だが、それももうすぐ終わる。カミナやグレンラガンの勇姿に感銘を受け、集った仲間たち、大グレン団の結束力を持ってすれば。
(無理を通して道理を蹴っ飛ばす。できるさ、俺たちならきっとできる。そのためにも、早くダイグレン戻らなくちゃ!
ニアと、それからヨーコとも合流して……アニキなら、アニキならまずそうするはずだ!)
シモンの中で大仏のように力強く鎮座する『アニキ像』は、決して揺るがない。
幼少の頃より可愛がられ、誰よりも近くで見てきたその背中、その心意気、その生き様。
シモンは追いかけてばかりだった。昔からずっと、憧れのアニキの背中を見つめてばかりだった。
だが、見つめていた背中は、ある日突然消失した。
いつも追いかけていた目標を見失い、シモンは戸惑った。
明日から俺は、何を目指して進めばいい。何を信じて生きればいい。
自問して、そのたびにシモンの内にいるアニキが答えてくれた。
おまえが信じる俺を信じろ。
それは、シモンの精神を正常に繋ぎとめる薬であり、毒でもあった。
いつまで経ってもアニキという存在に固執し、泥濘から抜け出せない。
ニアと出会ってからも、新たな四天王と相対して、挙句ラガンに拒絶されても、それは変わらない。
シモンはまだ、カミナの死を乗り越えられていなかった。
ニアを助けたいという思い、そこに焦りが孕むのも、仕方がないことだった。
アニキならそうする―そう思わずにはいられなかったから。
重すぎたのだ。シモンにとって、カミナという存在は。
そして、カミナはもういない。
(だから、俺がアニキの代わりに―ん?)
血走った目で、シモンはゴーグル越しに進路方向を注視する。
朝焼けのおかげでだいぶ明るくなってきた街路、その路上に、人影が転がっている。
運転手の舞衣はバランスを保つことで精一杯なのか、数十メートル先のそれにはまだ気づいていない。
406:阿修羅姫(前編) ◆LXe12sNRSs
07/10/12 22:36:01 u8HW3Rwm
「舞衣、あれ見てくれ。あそこ、前のほうで誰か寝てる!」
「はい~っ!? 寝てるって、ここ道路よ!? ってか私それどころじゃ……って、ホントだ」
シモンに促されて、舞衣も前方の人影にようやく気づく。
元々低速だったバイクのスピードをさらに緩め、ノロノロと接近していく。
徐々に、徐々に、路上に転がっているそれの実態が、シモンと舞衣の瞳に映し出されていく。
微かに黒ずんでいるように見えるそれは、どうにか人の形を保っている。
周囲の地面でアメーバのように広がっている染みは……血、だろうか。
いくら朝方とはいえ、こんな道のど真ん中で、人が寝ているはずもない。
とくれば、答えは単純。寝ているのではなく、起き上がれないのだ。
つまり。
「……おい舞衣、あれって……」
「まさか…………」
―脳裏を、不吉な影が横切った。
しかし、シモンも舞衣も、言葉にするには至らず。
唐突に、世界が途切れた。
◇ ◇ ◇
彼女にとって、炎は忌むべきものだった。
炎。それは彼女、鴇羽舞衣のエレメントの象徴ともいえるものであり、攻防の両方を担ってきた。
当初はオーファンと戦うための術として、かつてはHiME同士の争い、蝕の祭を勝ち抜くための術として。
そして現在は、82名による殺し合いを生き抜くための術として。
なぜ、炎だったのかは分からない。舞衣と炎になんらかの因果関係があるのか、それよる恩恵が与えられでもしているのか。
定かではない。どちらにせよ、舞衣は炎が、自身の持つ炎の能力が好きではない。
森を焼き、友達を焼き、闘争の渦中へと導いた……HiMEの能力。
こんな能力、いらなかった。こんなものがなければ、舞衣は今も弟の巧海と幸せに暮らせていた。
オーファンと戦って傷つくことも、シアーズ財団や一番地等とも無関係の日常を過ごし、命を焼き殺すことだってなかった。
望まざる能力。舞衣にとって炎は、カグツチを含めたHiMEの能力は、忌むべき力だったのだ。
舞衣は思った。
私はなぜ、生きているのだろう、と。
路上に転がっていた異物を確認し、遅行運転で進んでいたはずの数秒前。
舞衣の意識は気づかぬ内に一旦途切れ、いつの間にかバイクのシートから身を落としていた。
407:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/12 22:36:42 f8SFo9OZ
408:阿修羅姫(前編) ◆LXe12sNRSs
07/10/12 22:37:15 u8HW3Rwm
「あ、れ?」
弱々しい、少女とも聞こえるその声は、路地に転がるボロボロの身体から漏れ出ている。
ずぶ濡れだった制服を一瞬で乾かすほどに身を焦がし、爛れた顔に皹を走らせ、土埃と煤に塗れたその姿は、爆撃の残滓とも見えた。
が、彼女はまだ生きている。熱の篭った瞳で目の前の惨状を見渡し、混乱する頭で必死に状況を理解しようと努めた。
燃えている。何もかも燃えている。
乗り回していたバイクが、近隣の建物の外壁が、進路上に転がっていた『何者かの死体』が、粉々に砕け、燃え盛りながら散布している。
舞衣は思い出す。こんな状況に陥る寸前、自分はいったいどうしていただろうか。
バイクを運転し、転がっていた何かに近づき、どうやらそれが他の参加者の死体らしいと気づいて―そこで、意識が途絶した。
そして、気づいたらこうだ。
(だれかに、襲われた?)
そうとしか考えられなかった。
バイクを木っ端微塵にし、なにもかも吹き飛ばした惨状、爆弾か何かを投げ込まれただろうと舞衣は推測した。
(ふざけんじゃ……)
茫漠として定まらない脳裏に揺れる、数々の闘争とそこからの一時的な離脱、そしてシモンとの記憶。
この場にHiME同士の戦いなどという低俗な競争はない。あるのは、生きるか死ぬかの生存競争のみ。
舞衣は抗うつもりだった。もう二度と間違いは犯したくない、復讐心に駆られて友達を焼き殺すのも、後悔の念に苛まれるのも御免だったから。
シモンに協力し、ニアを助け出し、螺旋王に敵対するという形で、舞衣はこの世界を生きていこうとした、のに。
「……女の子の死体餌にして、寄ってきた女子供を爆撃、か。なるほど、外道やな」
自分と、そして数時間前まで同じようなことをしていた人物に向けて吐き捨てたセリフが、舞衣には酷く不快に感じた。
舞衣の生きようという意志も、シモンの膨れ上がりすぎた決意も、この男が全部台無しにしてしまった。
この、真新しい黒いスーツを着こなし、燃え盛る戦場をさも興味なさげに闊歩し、あろうことか神に対して祈りを捧げる仕草を見せる、ふざけた男に。
(こいつが……私を、シモン、を……!)
舞衣の中で、沸々と激情が燃える。
燃焼する怒りに身を委ねると、外傷と熱により苦しんでいたはずの身体は、意外にも自然と持ち上がった。
糸で吊られたマリオネットのように、緩やかに、それでいて確かな敵意を全身に宿して、舞衣は立ち上がる。
まだ男が気づかぬ内に、そっとエレメント―両腕に宝輪を具現化し、戦闘体勢を取る。
「……許さない」
その囁きで、男は舞衣のほうへ振り向いた。
顔を俯かせ、幽鬼のように立ち尽くす彼女を見て、男が何を思ったかは分からない。
ただ面倒くさそうに苦笑いして、軽く舌打ちをした後、右手に銃を握っていた。
「……寝とけや。死に掛けの女いたぶるんは趣味やない」
「ここまでしといて何言ってんのよ……!」
舞衣の両腕に装着された宝輪に、僅かな炎が宿る。
風華学園に現れる異形―オーファンを撃退するために用いられてきた炎は、今や人殺しの道具へと変わり果てた。
他のHiMEのチャイルドを、命を、そして今は、目の前の男を焼き殺すために。
それでも舞衣は、はち切れんばかりの感情を寸前で押し留め、男に尋ねる。
「なんでよ。なんで、こんなことするのよ? そんなに死にたくない?
誰かを蹴落として、誰かを殺して、誰かの大切なものを奪ってまで、生き残りたいわけ?」
409:阿修羅姫(前編) ◆LXe12sNRSs
07/10/12 22:38:53 u8HW3Rwm
「……それが、この殺し合いっちゅーもんやろ。……それにな。わい、とっくの昔に死んだ人間やねん。
この銃かて、今になって初めて握ったわけとちゃう。女の子に説教されて自分見つめなおすようなアマチャンともちゃう」
冷徹な眼光を放ちながら、男は黒光りする銃口を舞衣に向けた。
―キャロ・ル・ルシエの死体を餌に通行人を誘き寄せ、タイミングを見計らって近隣のビルの屋上から、手榴弾を投下する。
男が殺し合いに乗る上で最初に実行した狩りは、なんとも下劣で、人の道から外れたものだった。
しかし、それも今さらだ。
男は、一度は死んだ人間。言うならば、螺旋王によって無理矢理蘇らせられたゾンビだ。
そんな男に今さら人道を説いて、なんになるというのか。
これはやり直しの機会などではない。冥府へ旅立つ際の、ちょっとした寄り道のようなものだ。
螺旋王の実験を円滑に進めるための駒。それが今の男―ニコラス・D・ウルフウッドの役目なのだと悟った。
「……そっか。そうだよね。何勘違いしてたんだろう、私。シモンみたいな奴ばっかなはず、ないじゃん。
だって、殺し合いしてるんだもん。あんたみたいなのが、普通だよね。だってこれ、殺し合いなんだからさ」
舞衣の視線は、眼下の焦げ爛れたアスファルトに奪われていた。
何もかもが焼けた。バイクも、死体も、道も、シモンも、唯一燃え滓のような舞衣だけが残った。
少し前までは、シモンとこれからの方針を論じていたはずだったのに。展開が激変するには、あまりにも早い。
だが、正常だ。これがこの世界にとっての、普通なんだ。舞衣はようやく理解した。
理解して―もはや怒りしかなかった。
「……あんたは! あんたみたいなヤツを! 私は絶対に許さない―ッ! カグツチィィィィィィィィィィィッ!!」
怒りに狂った表情を、燃え滾るような赤で染めて―舞衣は、腹の底から我が子の名を叫んだ。
我が子、即ちチャイルド。HiMEの能力の根底にして、最強の保有戦力。
その実態は神話から抜け出たモンスターのようであり、HiMEの心象をその身に宿したものである。
舞衣の使役するチャイルド、カグツチは、記紀神話における火之迦具土神を模した火竜の化身だ。
その戦闘力は人智を超えており、高次物質化能力を中和できもしない人間が太刀打ちするのは到底不可能。
極論を言えば、チャイルドを出したHiMEを殺すのは、同じくチャイルドを有するHiME以外存在し得ない。
こんな殺し合いなど、HiMEが複数介入している時点で成り立たない……はずだ。
しかし、主である舞衣が呼びかけても―彼女のチャイルド、カグツチは答えてはくれなかった。
「……カ、グ、ツチ? なんで、どうして……?」
「……助け呼ぶつもりなら無駄やで。引き金引くのなんざ、一秒とかからん」
いっこうに姿を現さないカグツチ。訳が分からず、舞衣は呆然と立ち尽くした。
チャイルドの召喚は、螺旋王によって封じられている―そのような事実に気づく間もなく、舞衣は死の瞬間を直視する。
ウルフウッドに憐憫の情は欠片もない。銃口は逸れず、ぶれず、真っ直ぐ舞衣の胸元を射抜いていた。
あとは引き金を引くだけだ。たったそれだけで、舞衣は死ぬ。
……あるいは、それもいいか、と思った。
端から不要と感じ始めていた命、生への執着もなくしかけていた。
それを寸でのところで繋ぎとめてくれたシモンも、もういない。
これでいいか。これで終わろう、舞衣はシモンの熱弁を思い出しながら、再び諦めようとしていた。
(結局私は、いつだって奪われる側の人間なんだ。幸福なんて訪れやしない、勝ち取ろうにもいつも品切れ。
……あーあ、最後まで不幸だったなぁ……でも、ま、それも私らしいか)
カグツチが呼び出せない。銃弾くらいならエレメントでも防げるだろうが、今さらそんな気は起こらなかった。
巧海を失い、命を失い、今度はついに、自分を失う。それが鴇羽舞衣の末路なのだと、受け入れた。
410:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/12 22:38:57 k1j242kf
411:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/12 22:40:03 k1j242kf
412:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/12 22:40:32 gO/kL+nO
413:阿修羅姫(前編) ◆LXe12sNRSs
07/10/12 22:40:43 u8HW3Rwm
「ふざけるなッ!」
―そのとき。
死を与える者とそれを受け入れる者、二者の間に、小柄な影が割って入った。
ブルーカラーだった服を土色と赤で汚し、それでもなお、常の勇ましさを誇示する少年こそ、シモンだった。
ウルフウッドが投擲した手榴弾の爆発に巻き込まれ、舞衣が掠り傷程度で生き永らえたのは、運が良かったとしか言えない。
しかしこのシモンも、キャロのように身体が木っ端微塵になることはなく、どうにか一命を取り留めていた。
ただ彼は舞衣とは違い、その姿を以前とはまるで違う様相へと変貌させていた。
「なんだよおまえ……ッ! 俺はこんなところで死ぬわけにはいかないんだ……舞衣だって死なせやしない!
ニアを助けて、ヨーコを拾って、みんなで螺旋王を倒しにいくんだ……邪魔するってんなら容赦しないぞ!」
一本の小さなナイフを頼りに、シモンは舞衣を庇うように立ち、ウルフウッドに敵意を向ける。
ナイフで銃を持った殺人者に張り合うなど、冷静な思考のできる人間の行動とは思えない。
実際、シモンはとうの昔に冷静さを欠いていた。
ここに連れてこられ、ニアの存在を知り、そして襲撃された今となっても、それは変わらない。
ただ、死ぬわけにはいかない。がむしゃらに生きて、大グレン団のみんなで螺旋王を倒さなくちゃいけない―そういった願望に駆られているだけ。
自らが陥っている状況を理解し、打開することもできはしない。そういう意味では、シモンはもう手遅れだった。
一度は発狂し、熱意が冷めると同時に死を覚悟した舞衣とて、それは理解できた。
今のシモンは尋常ではない。尋常ではないが、だからといって何かができるわけでもない。
「……アホくさ」
鼬の最後っ屁として、勇猛に戦意を振り翳して……死のうとしている。ただそれだけだ。
「おまえ、わいが何もせんでも死にそうやんけ。死人に無駄弾使う気なんぞ起こるかい」
冷たく吐き捨てると、ウルフウッドは銃を収めた。
シモンと舞衣の殺害を諦めたわけではない。今さら撃つ意味がないと判断したからだ。
なにせ、一人は軽傷とはいえ心身ともにボロボロの状態。それくらいは、彼女の事情を知らないウルフウッドにも分かった。
そしてもう一人は、棺桶に片足を突っ込んだ状態―ーつまり、死ぬ寸前だ。
これから死に逝く者に、数少ない銃弾を割くのは不合理と言えた。
実際、シモンが死ぬ一歩手前であるという表現は、的を射たものだった。
それが誰でも理解せざるを得ないであろう決定的な箇所を挙げるなら、頭部。
シモンの頭部は脳天から額に欠けてパックリと割れ、夥しい量の血を外部に紛失、首から上を深紅に染めていた。
立ち上がってナイフを握っていること自体が、不思議なくらいの有様。
単なる女子高校生であれば、直視した瞬間に失神してもおかしくない。それほどの傷だった。
シモンが生きていた。だが、もうすぐ死ぬ。
新たに飛び込んできた情報を頭で整理して、それでもやはり、舞衣は絶望から抜け出せずにいた。
◇ ◇ ◇
414:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/12 22:42:29 gO/kL+nO
415:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/12 22:42:45 k1j242kf
416:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/12 22:42:48 gQBxTF1K
417:阿修羅姫(前編) ◆LXe12sNRSs
07/10/12 22:43:00 u8HW3Rwm
「けったくそ悪い……」
いくら胸ポケットを探ろうとも、愛しの煙草の感触は戻ってこない。
胸糞が悪い。イライラする。いつものように血塗られた腕で人を殺め、外道として振舞ってきただけなのに。
ウルフウッドは思った。
……ひどく疲れた、と。
「……今さら後悔してどないすんねん。わいは死人やぞ。誰に恨まれようが関係あらへん。こんな悪夢さっさと終わらして、向こうでヨロシクやりたいわ」
シモンと舞衣を襲撃し、退散した後のウルフウッドの後姿は、とても穏やかなものとは言えなかった。
人を殺した後の背中など、どこぞの殺人狂でもない限りは後悔の念と罪悪感でいっぱいになるものだ。
それは、最強の重兵器を担ぎ砂漠の星を渡り歩いてきたウルフウッドとて、例外ではない。
人の死は嫌というほど見てきた。目の前で誰かを殺されるのも、誰かの目の前で殺すのも、それこそ星の数だ。
それでも、善良な女子供を死に至らしめ、その怒りの矛先を向けられるのは、気分がいいものではない。
憂さ晴らしに煙草が欲しい……心底からそう願い、しかし叶えられはしない。
「……いいかげん割り切れや、自分。女子供がどうやあらへんやろ……ああそうや、そうやな」
あの名も知らぬ少女の死体には、謝罪してもしきれないほどの祈りを捧げておいた。それで許されるとも思っていないが。
ウルフウッドは既に冥府魔道に落ちた愚者だ。それを自覚しているからこそ、あんな外道なやり方を思いつき、実戦した。
彼の目的はただ一つ。死んだはずのこの身がここに存在する意味……それを果たすだけだ。
殺し合い。つまりはそれだ。
迷いなどない。孤児院の子供たちと同年代くらいの少年を殺した今となっては、迷いも何もない。
胸糞は悪いが、それを受け止めて、殺し続けるしかない。それが、この地に存在するニコラス・D・ウルフウッドの意味だった。
「だからなぁ……せめて、煙草くれるくらいの温情は働いてくれや。聞こえてへんのやろうけどな」
人知れず、螺旋王に愚痴るウルフウッド。
覚悟だとか、迷いだとか、そういう次元の話ではない。ウルフウッドは逡巡する間もなく、既に外道なのだ。
初めてこの手を血で汚したあの日から、今に至るまで。人間は、そう簡単に変わりなどしない。
ただやはり、胸糞は悪かった。
それだけの問題だ。
◇ ◇ ◇
418:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/12 22:43:32 gO/kL+nO
419:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/12 22:44:02 f8SFo9OZ
420:阿修羅姫(前編) ◆LXe12sNRSs
07/10/12 22:44:06 u8HW3Rwm
―いいか、シモン。忘れるな。お前を信じろ。俺が信じるお前でもない。お前が信じる俺でもない。お前が信じる、お前を信じろ。
シモンは思った。
俺は……俺が信じる俺を、最後まで信じることができたのだろうか、と。
(アニキ……俺、やっぱりアニキみたいに……)
虚ろな意識がガラスのように罅割れて、カミナの虚像を歪めていく。
カミナは死んだ。もういない。
分かっていた。分かっていたはずなのに、シモンはそれを乗り越えることができず、偶像のアニキに縋ってばかりだった。
(ニア……すまない、俺……)
―穴を掘るなら天をつく。墓穴掘っても堀り抜けて、突き抜けたならシモンの勝ち。
―シモンはシモンだ、カミナのアニキじゃない。シモンはシモン、穴掘りシモンだ。
答えは用意されていたはずなのに、掴み取ることができなかった。
シモンは、この殺し合いという環境に順応する前に、不遇な運命を迎えた。
(舞衣も……ごめんよ……)
シモンの瞳にはもう、泣きじゃくりながら死を嘆く舞衣の顔すら映っていない。
カミナやヨーコ、ニアやリーロン、ロシウ、ダヤッカ、キタン……仲間たちとの思い出、走馬灯で視界が埋め尽くされていた。
決意も無念も、全てが死という名の虚無に埋没されていく。螺旋王と敵対する大グレン団筆頭の意志は、ここで潰えるのだ。
(俺も、アニキみたいになりたかった。でも俺は、アニキにはなれなかったんだ)
最後まで間違いに気づくことはなく、シモンは『アニキ』という大きすぎる存在を抱えて、死んだ。
後に残されたのは、いつものように泣く少女だけだった。
◇ ◇ ◇
421:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/12 22:44:18 k1j242kf
422:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/12 22:46:26 f8SFo9OZ
423:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/12 22:46:36 gQBxTF1K
424:阿修羅姫(後編) ◆LXe12sNRSs
07/10/12 22:47:15 u8HW3Rwm
まるで、雨が降っているようだった。
爆発により炎上したバイクの破片は、未だにそこら中で熱気を作っている。
そのど真ん中に身を置いても、舞衣の心は冷めていた。すっかり乾いた制服も、頭から水を被ったかのように重い。
舞衣は思った。
どうして私は、いつも失う側なんだろう、と。
腕の中には、事切れたシモンの遺体。それを抱いて泣き喚いたせいか、服には血がびっしりこびりついている。
死因は失血死だった。バイク爆破の際に吹き飛ばされた身体は路上を転がり、頭皮を削ってそこから多量の血を奪い取った。
身体が粉々にならなかっただけマシと考えるか、即死でない分僅かでも生を謳歌できたのは幸いと捉えるべきかは、人それぞれだ。
どちらにせよ、シモンは死んだ。もういない。
巧海と同じように、もうこの手に戻ることはない。
あれだけニアを助ける、螺旋王を倒すと息巻いていた元気な姿は、もう戻ってこない。
舞衣は、もう何度目か分からない消失による悲しみを痛感した。
(なんでよ……なんで、いつもいつもいつも、私ばっかりこんな思いしなくちゃならないのよ……!)
シモンはこんなにも重傷を負ったというのに、当の自分は五体満足、出血らしい出血も見当たらない。
精々肘や膝が擦り切れて、ヒリヒリと痛むくらい。普通なら幸運だったと喜ぶべきなのだろうが、今の舞衣にはこの幸運も、神様の皮肉にしか思えなかった。
殺すなど生温い。許す限り生き永らえ、永遠に消失の苦しみを味わえと……そんな神託すら聞こえてくるようだった。
巧海を失い、命を自らの手で殺め、そしてこの世界でもこうして、シモンを失った。
会話など数時間しかしていないが、彼の志しは悲痛にもがく舞衣に多大すぎる影響を与えた。
だからこそ、彼に付き合おうとここまで来たのに。運命は、それすらも容易く刈り取る。
結局は、何も変わらない。
蝕の祭も、殺し合いも、舞衣が失う側の人間であるという現実は、何も変わりはしない。
(……もう、死んじゃおうかな)
今回ばかりは、本気でそう思った。
もう、失うのには疲れた。誰かに大切なものを奪われて、そのことに憤慨して、駄々こねて生き続けるのには。
立ち直ってまた前を進もうにも、待っている運命はまた同じものに違いない。
奪われて、嘆いて、その繰り返し。
何度後悔すれば許されるのか。
そもそも、なんで自分ばかりがこんな目に遭わなければいけないのか。
分からない。舞衣には何も分からない。
こんな不公平すぎる人生、もはや価値などない。
巧海もいない、命もいない、帰ったところで、待っているのはあの無神経な馬鹿面ぐらいだ。
やってられない。もう人生に未練などない。あるとすれば……
「……なんで、私はいつもこうなのかな? 私、そんなに神様に恨まれるようなこと、した? ねぇ、ねぇ?」
425:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/12 22:47:55 k1j242kf
426:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/12 22:48:11 gO/kL+nO
427:阿修羅姫(後編) ◆LXe12sNRSs
07/10/12 22:48:23 u8HW3Rwm
白く、そして青く。夜天が明けて、すっかり爽やかな景色になっていた空は、何も答えてはくれない。
それでも舞衣は、天を仰ぎながら懸命に語りかける。
「どうして? ねぇどうして? なんで、なんで私ばっかり、いつもいつも、こんな損な役回りばっかり……
HiMEなんていう訳の分からない戦いに巻き込まれて、今度は殺し合えって言われて、それで何?
真っ先に死んだのは私じゃなくて、巧海と同じくらいの男の子よ? 何よこれ、どう考えてもおかしいじゃない」
運命なんてものはきっと、誰かが面白おかしくなるよう仕組んだ下手な脚本なんだ。
舞衣というキャラクターは決して報われることのない悲劇のヒロインとして、一生涙を流し続けるだけで終わるに違いない。
「ふざけてるの? 私が落ち込むのを見るのが、そんなに楽しい? 悪趣味よ、そんなの……ええ悪趣味だわ!
私は、あんたの思い通りになんかならない! もう、失うのも奪われるのもうんざり!
私は……私は、あんたのオモチャなんかじゃないッ! あんたのオモチャにされて一生を終えるくらいなら、私は―」
シモンから離れ、天の向こうにいる誰かに訴えかける舞衣の表情は、明らかに狼狽していた。
それでいて、覇気は十代の女子高生とは思えぬほどに鋭い。
この世の全ての憎しみを背負って立つような、鬼神の如き勇ましさが、その顔には宿っていた。
「―……そこにいるの、誰?」
発狂する舞衣の口から微かに、凍てついた問いかけが零れた。
その照準は、騒ぎを聞きつけてきたのだろう、舞衣に恐る恐る近寄ろうとしていた、ある少年に向けて。
「ひっ……あ、あの僕……お姉ちゃんがここで泣いてるのが見えて、それで、その、どうしたんだろうと思って……」
おっかなびっくり返事を返す少年の容姿は、巧海やシモンよりずっと若い。
利発そうな顔つきに、服装はいかにもな金持ち坊ちゃまの礼装だった。
舞衣と同じく首輪をつけているということは、つまりは彼も、シモンと同じ殺し合いの犠牲者。
「ぼく、名前は?」
「え? あ、あの、僕は―」
「……ううん、ごめん。やっぱりいいや」
初対面の少年の前とあってか、落ち着きを取り戻した舞衣は、穏やかな声をしていた。
しかし、その瞳は虚ろで、整然としているかに思われた足つきは、フラフラしていてどこか危なっかしい。
悪く言えば酔っ払いのような、さらに悪く言えば、精神を磨耗した異常者のような危うさ。
この時点で舞衣が何を思い立ったのかなど、少年には分かりもしない。
ただ一つ決定的なことは、この場に踏み入れた不幸―それが、間違いなく少年の身に降りかかろうとしている。
「おねがいがあるの。決心、つけさせて」
「え?」
一言断って、舞衣は少年の首に手を差し出した。
そして、そのまま掴む。
掴んで、握り締める。
強く、強く、ありったけの力を込めて。
428:阿修羅姫(後編) ◆LXe12sNRSs
07/10/12 22:49:48 u8HW3Rwm
「……ッが、お、でぇ……」
少年のおどおどした表情は次第に苦悶に染め上げられ、か細い喘ぎを漏らしながら舞衣の手を外そうとする。
しかし、まったく抗えない。少年の首を絞める舞衣の手には、尋常でないほどの力が込められていた。
それこそ、殺さんばかり握力で。
「痛い? ねぇ苦しい? ……巧海や命やシモンも、あんたみたいに苦しんだんだよね。
本当なら、私が受けるはずの苦しみだったのにさ。……私、また一人になっちゃった」
右手と左手、両の五指が、それぞれ少年の首にめり込む。
親指はまだ発達しきっていない喉仏を潰し、人差し指の爪は皮膚を裂いて血が滲んでいる。
首輪のせいで締めにくかったが、少年の首が細いこともあってか、別段問題ではない。
「苦しいよね。でも、私はもーっと苦しいの……たった一人残されて、泣いて、嘆いて、もう疲れちゃった。
なんで私ばっかりこんな目に遭うんだろうって、考えたの。答えなんか、分からなかったけどさ……」
少年の顔色が、次第に青ざめていく。
血色のいい肌はどんどん生気を失っていき、瞳の色からも活力が見られなくなってきた。
「私は、許せない。あんたが許せない。私から何もかも奪おうとする……あんたがッ!
奪われるのはもうたくさん! また奪われて後悔するくらいなら……私はずっと一人でいい!」
少年にか、それともここには存在しない誰かにか、舞衣は怒りの赴くままに言葉を紡いだ。
聞いているかどうかは問題ではない。激情を発散する術として、舞衣は辺り構わず喚き散らす。
「私は―奪う側に回るッ! あんたなんか……死んでしまえぇぇぇぇぇっ!」
コキャッ、と。小気味のいい音が鳴ったような気がした。
その音がスイッチとなって、舞衣は叫ぶのをやめる。
そして、改めて覗く少年の顔は……初見の際の利発そうな表情は微塵もない。
肌は青ざめ、瞳は焦点が定まらない……完全なる、死者の顔だった。
「……なんだ、なんてこと、ないじゃない」
舞衣が首から手を離すと、少年の身体は一切の抵抗を見せることなく地面に沈んだ。
もう、自らの力で立つこともままならない。いや、できない。
少年は既に事切れていた。舞衣が首を握り締めただけで、あっけなく死んだ。
つまりは、そういうことだ。この、殺し合いというものは。
「あは、あははははは。なぁ~んだ、全然たいしたことないじゃん。誰かから、大切な何かを奪うのってさ。
そうだよね、こんなに簡単だったんなら、罪悪感なんてあるはずないよね。みんな踊らされるはずだぁ。
奪われる側だった頃の私が、まるで馬鹿みたい。本当に、馬鹿だったんだ私。はは、ははははは。ははははは」
すっかり動かなくなった少年の死体を踏みつけてから、舞衣はあてもなく歩き出した。
その顔を、怨嗟を越えた、異常とも取れる哄笑で満たしながら。彼女は向こう側の境界線に踏み込んだのだ。
もう、あんな思いをする生活には戻らない。自分だけが苦しむ世界はもうたくさんだ。
心身を削られ、それでも絶望より怒りが先行した結果、舞衣は壊れた。殺し合いに順応するという形で、正常に壊れた。
彼女にはもう、何も残されてはいない。
大切なものも、守るべきものも、守りたいと思えるものも。
◇ ◇ ◇
429:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/12 22:49:58 gQBxTF1K
430:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/12 22:51:17 k1j242kf
431:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/12 22:51:43 29nYnTNE
432:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/12 22:51:46 gQBxTF1K
433:阿修羅姫(後編) ◆LXe12sNRSs
07/10/12 22:52:00 u8HW3Rwm
朝焼けの眩しい光に照らされて、低速ながらも修復が始まる。
どんな傷を負おうとそれが死に繋がることはなく、かつての姿に維持しなおす。
そんな、不死者にとっては当たり前の活動が、昇り始めた日の下で行われている。
チェスワフ・メイエルは思った。
想定外―だが、悪くはない結果だ、と。
首を絞められ、呼吸困難に陥る苦しみとそれによる死はなかなかのものだったが……外的殺傷に比べれば、些か楽なほうではある。
不死者とはいえ、殺害に伴う苦痛が皆無というわけではない。痛みは一般の生者と等しく与えられる。
先ほども、チェスは舞衣に絞殺されて死んだ。だが、すぐに生き返った。
散々締め付けられて青くなっていた痣は、艶やかな肌色に戻っている。潰された喉や爪で裂かれた皮膚も、また同じく。
(彼女が玖我なつきの知り合いならば、あるいは……とも思ったが、予想の斜め上をいく顛末を迎えてくれたようだ)
なつきに失望し会場内をさ迷い歩く内、チェスはウルフウッドの放った手榴弾による爆音を聞きつけ、ここまで駆けつけた。
もっとも、辿り着いたときにはもうウルフウッドの姿はなく、息絶えたシモンの死体と、それを抱えて号泣する舞衣を見かけたのみ。
何者かに襲われ、何者かが死に、なつきの言っていた『鴇羽舞衣』の外見的特徴に酷似する少女が、何者かの死を悲しんでいる。
状況は決して良好とは言えなかったが、彼女が本当になつきの知り合いであるなら、利用価値は見い出せると判断したのだ。
しかし、いざ話をしてみればこのとおり。チェスは、あっという間に舞衣の手にかかった。
不死者でなければ、なんとも救えない散り方をしていたところだろう。
彼女が何を思い、何を決意して殺人者側に回ったのかは、図りきれない。
だが残った結果として、ゲームに乗った参加者が一人増えた。
つまり、生き残る上で邪魔となる存在を消してくれる人間が、一人増えたのだ。
舞衣がチェスの知らぬところで勝手に暴れまわってくれるなら好都合。
彼女はチェスを殺したものと思っているだろうし、ここに戻ってくることもないはずだ。
(ならば彼女が去っていった先……南東方面を避けて行動すれば、まだやりようはある―おっと、誰か寄ってきたようだ)
爆発音を耳にし遅れながらも偵察に来たのか、それとも未だ燃え盛っているバイクの残骸を察知したのか。
どちらにせよ、このような場に走りながら寄ってくるような人間だ。単なる殺人者である可能性は低いだろう。
(『不死者のチェスワフ・メイエル』ではなく、『無害で善良なチェスくん』として接触してみるか……)
決めると、チェスはまたその場に倒れこんだ。
◇ ◇ ◇
434:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/12 22:53:05 29nYnTNE
435:阿修羅姫(後編) ◆LXe12sNRSs
07/10/12 22:53:37 u8HW3Rwm
時は少しだけ遡る。
映画館入り口のロビー、頼りない電灯が照らす内部に、朝焼けが差し込んで微かに明るくなった頃。
小刻みに震える身体を懸命に押さえつけながら、彼女は思案を続けていた。
ティアナ・ランスターは思った。
やはり、自分は馬鹿だ。ヴィータ副隊長に叱咤されたあの日から、何も変わっちゃいない……、と。
キャロを不可抗力で銃殺し、罪悪感に苛まれながら民間人の男性に銃を向け、逆に拘束されてしまう体たらく。
おかげでいくらかは落ち着けたが、ティアナの身体の震えはまだ治まらなかった。
それを案じてか、ティアナを拘束し、成り行きで保護した体格のいい男性―ジェット・ブラックは、未だ彼女から目を離そうとしない。
彼からしてみれば、ティアナは訳も分からないまま殺し合いに参加させられ、動転して錯乱した可愛そうな素人。
ティアナが時空管理局機動六課に所属する魔導師であり、幾多の死線を乗り越えてきたことなど、露とも思っていないだろう。
当たり前だ。今のティアナは、どう見ても異常事態に混乱した小市民。救助される側の人間だ。
同僚である機動六課の面々、相棒であるクロスミラージュ、激励をくれる存在は身近になく、彼女は未だ、立ち上がることができないでいた。
「だいぶ、落ち着いたか?」
「……ええ」
ジェットの問いかけに力なく答えながら、ティアナは数時間前のことについて、もう一度思案していた。
キャロの突然の死。警告の意を込めて向けた銃口は、親友の身体を射抜き、命を奪い取った。これは、紛れもない事実だ。
だが、幾分か冷静になった頭で今一度考える。
あれは、本当に自分が撃ったのか?―と。
何も責任転嫁をしようというわけではない。ただ、ここにきて腑に落ちない点が思い浮かぶので、考えてみただけだ。
実銃でないとはいえ、ティアナは管理局勤めを志し今日に至るまで、ずっと銃型のデバイスを愛用してきた、いわば専門家だ。
そんなティアナが、誤って引き金を引き、それが顔見知りであるキャロに直撃するなど、どんな確率か。
例えば、こうとは考えられないだろうか―ティアナが誤ってキャロに銃口を向け、寸でのところで銃を引こうとするも、
そのタイミングに合わせ、何者かが遠方からキャロを狙撃、その結果をティアナが『自分が撃った』と誤認した場合は?
都合のいい解釈というのは百も承知だ。だが、冷静になろうとすればするほど、その可能性もありうるような気がしてならなかった。
(そういえば、私の持っていた銃の残弾……もし、残弾が一発も減っていなかったとしたら……)
ティアナはここにきてから、一発も銃を撃っていない―つまり、キャロを撃ったのも別人ということになる。
今まで考えもしなかったが、この腑に落ちない疑問点を解決するには、最も有効的な方法だった。
ティアナは取り上げられた銃の残弾を調べようと、ジェットに声をかける。
「あの―」
「落ち着いたってんなら、ひとまずは安心だ。俺はちょっと外の様子を見てくるから、しばらくここで待っていてくれ」
しかしジェットはティアナの言葉を遮り、映画館の外へと足を向けていた。
「え、ちょっと、待って。外の様子、って?」
「さっきの爆発音だ。誰かが、そう遠くない場所でドンパチやらかしてるらしい。まさか、聞こえてなかったのか?」
「あ……」
首を傾げるティアナを見て、ジェットは溜め息をつく。そして、映画館から出て行ってしまった。
近隣で爆発音が鳴り響いたのは、ほんの数十分前。まだティアナが荒れていて、とても目を離すことができない状態の頃だった。
近くということもあり気にはなったが、ティアナを放っておくこともできず、ジェットは彼女が落ち着くまで待っていたのだ。
しかし当のティアナは、そんな爆発音があったことすら覚えていない。
キャロの死で、頭がいっぱいだった証拠である。
436:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/12 22:53:52 k1j242kf
437:阿修羅姫(後編) ◆LXe12sNRSs
07/10/12 22:55:13 u8HW3Rwm
(ダメだな、私……)
震える身体を体育座りの体勢で縮ませて、また思案の海に耽る。
銃の残弾を確かめるのは、ジェットが戻ってきてからにしよう。そう決めたところで、ある重大な点に気づいた。
(外……爆発音……あれ? そういえばキャロは―)
映画館。外。そう遠くない場所。路上に放置したままの、キャロの死体はどうなったのだろうか。
真実がどうであれ、仲間の死体の場所を知りながら放置しておくのは居た堪れない。
(強く、ならなきゃ。立ち上がって、前を見なくちゃ駄目だよね)
思い立ち、ティアナは自らの足で外へと飛び出した。
キャロをあの場所に放置しておくわけにはいかない。然るべき場所へ移してやろう、と。
それが、修羅道へと続く第一歩であるとも知らずに―
◇ ◇ ◇
燃え盛る鉄の残骸、蔓延する血と肉の焼ける臭い、そして血達磨と化した少年の遺体。
駆けつけた先に広がっていた光景は、まるで。
ジェット・ブラックは思った。
なんだここは、地獄か、と。
ジェットがティアナを宥めている間、ここで何が起こり、誰がどうなったのか、定かではない。
ただ確かな結果として、ここで誰かが爆発を起こし、バイクらしきものと人らしきものを粉砕し、血塗れの少年を作り出した。
犯人は既に去った後だろうか。ジェットはティアナから没収した銃を片手に被害現場を検分する。
そして、血塗れで既に死亡していた少年とは別に、割りと小奇麗な姿の少年が倒れているのを発見した。
「おいボウズ、生きてるか!?」
警戒しがちに歩み寄り、その少年を抱き起こす。
見たところ、目立った外傷はない。精々服が土に汚れているくらいで、それ以外はまったくの無傷と言っていい。
しかし意識を失っているのか、ジェットが揺さぶってもすぐには起き上がらず、何度か声をかけてやっと目を開いた。
「うっ……あぁ…………」
「……どうやら、生きてはいるみたいだな」
苦しそうに呻く少年の姿を確認し、ジェットは安堵した。
ここで何があったのか、そこで死んでいる少年は誰なのか、どこまで把握しているかは知らないが、事情を聞くにしてもここでは場所が悪い。
ジェットが少年を抱えて映画館に戻ろうとした―そのときだった。
438:名無しさん@お腹いっぱい。
07/10/12 22:55:22 29nYnTNE
439:名無しさん@お腹いっぱい。
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442:阿修羅姫(後編) ◆LXe12sNRSs
07/10/12 22:57:00 u8HW3Rwm
「嫌ァァァァァッ! キャィヤァロロロオオオオオォォォォォッ―!」
眼前に広がる惨状を目撃して、絶叫するティアナの姿があった。
ようやく取り戻したかと思った整然さは表情からして崩壊し、涙と涎を垂らしながら頭を掻き毟っていた。
落ち着いたなんてとんでもない。さっきの十倍は取り乱し、感情を暴発させている。
このままでは、何をやらかすか分かったもんじゃない。ジェットはティアナを鎮めるため歩み寄ろうとするが、
「……ゥッ! 近寄るなァァァ!」
容姿端麗な外見からは想像もできないほどの声量で威嚇され、ジェットは思わずたじろいでしまう。
少年のほうもティアナの咆哮に驚いたのか、完全に覚醒しジェットの脚に縋りついていた。
「アンタが……アンタが、キャロを! よくも、よくもよくもよくも……アンタもグルだったの?
そうなんでしょ? 二人で私を嵌めようとして……その上、キャロの……キャロの身体をこんなにしてぇぇぇ……」
泣きじゃくりながら、ティアナはジェットと少年の二人を拒絶した。
彼女がなぜ再び発狂しているのか、ジェットには考えつかない。
『アンタ』というのが自分と少年のことを指しているのだとしても、いったい何がきっかけでこうなったのか。
異常患者の思考などジェットには理解しえない範疇だが、可能性があるとするならば、この惨事に散ったあの少年か。
いや、ティアナが主張するキャロという名前は、どう考えても女の子の名前だ。だとすれば、彼女の発狂の理由は一つしかない。
血塗れの少年ではなく、ティアナの足元に転がっている……少女らしき人物の、バラバラ遺体。
おそらくはジェットをここに呼び寄せた根底たる爆発の最大の被害者なのだろうが、その有様は見るも無残で、原型を留めていない。
なのに、何故ティアナはそのバラバラの遺体を、キャロという名の知人だと断定できたのか。
もしくは、落ち着きかけていた錯乱状態が再発し、この被害を誇大解釈しているだけなのかもしれない。
「落ち着け、そこに転がっているのは、お前さんの言うキャロって子じゃ―」
ジェットが負けずに弁解を試みるが、
「嘘だッッッ!」
すぐさまティアナの怒号に打ち消され、後ずさる。
決してジェットが臆病者なわけではない。そうさせるだけの意外な迫力が、今のティアナにあっただけの話だ。
「キャロはキャロよ! 私が……ううん、違う、アンタが殺したんだ! その銃で!
そうよ、私は騙されていた……けど、ようやく気づけた! アンタが、アンタがキャロを!
キャロをおおおおおぉぉぉぉぉ――うぷっ、げ…………ぇぇぇぇぇ」
心臓がはち切れんばかりの勢いで喋っていたせいか、肉片に気持ち悪くなったのか、ティアナは堪えきれずその場に嘔吐した。
滝のように流れる胃液を全て吐き出すと、余韻に浸ることなく口元を拭う。そして、間髪入れずに再起した。
ジェットをキッと睨みつけ、脱兎のごとく逃げ出した。
去り際の言葉は何もない。ただ、その女の子のものとは思えぬ形相は、この世の怨念を一身に受け止めた、阿修羅の化身のようだった。
「クソッ、何考えてやがんだあの女……ッ!」
ジェットはすぐに後を追おうとするが、踏み出そうとした脚は、まだ名も知らぬ少年にひっしと抱き止められていた。
ティアナの覇気にやられたのか、小動物のように竦み上がり、振り払うのも不憫な様子に見える。
別に子供愛護団体に所属したつもりはないが、彼を無碍にしてティアナを追うというのも、それはそれで胸にしこりが残る。
それに、少年からはこの場で起こった一部始終を聞きだす必要もあった。
二兎を追える状況ではない。ジェットは決断し、ままならない歯がゆさを舌打ちに変えて、遠ざかっていくティアナの背中を見送った。
すぐ後ろで妖艶な微笑を浮かべる、チェスの腹の底も知らずに。
◇ ◇ ◇