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返答はせずに、剣先を地面に突き立て、地面を蹴り飛ばす。加速のスピードが跳躍のエネルギーに変質し、地を這う炎の舌スレスレを、跳ね上がる事によって回避。
すぐさま追撃のために落下しようとして―銃口と目が合った。
「兵は拙速を尊ぶものだ。確かに君たちは速いが―まだまだだ!」
あと数瞬、それで焼き尽くされる。
まずい、と思う暇もない。ない、のに。体は自身の危機を感知し、既に動き始めていた。
そう、それは体が覚えていたから。高町なのは一等空尉が定めた訓練メニュー、それらが体に染み付いていたからに他ならない!
右腕の袖が焼け、爆ぜる。露になった腕から伸びた紫電が、ヘビのように偽・螺旋剣に巻きついた。。
それは彼の力。魔法による変換のプロセスを踏む事なく電気を発生させる、プロジェクトFの残滓が生み出した特異能力。
その雷光は剣先に収束し―雷と化しロイへ放たれた。
「な―ッ!?」
錬金術だと!? と、ロイが驚愕の呻きを漏らす。
回避できるタイミングではない。ロイはすぐさま拳銃型ライターを放り投げ、自身は後ろに跳ぶ。ロイに向かっていた雷光は逸れ、拳銃に収束する。
雷は高いところに落ちる。魔法として放ったのならともかく、ただの雷として放てば物理現象に左右されるのは自明の理だ。
しかし、エリオは当てるつもりなどなかった。元より、射撃魔法は得意な方ではないのだ。
―そう、獣の如く地を駆ける、ランサーから気を逸らせればよい!
「おらぁ!」
地に落ちた雷光と同じか、はたまたそれより速く駆けたランサーが、ハンティングナイフを槍の如く突き出した。
心臓目掛けて放たれたそれであったが、しかし、ロイは背を逸らす事によって回避する。
ランサーが顔を顰めた。足りない。間合いが圧倒的に足りていない!
「……ッ! 燃えろ!」
ランタンから伸びた紅のヘビがランサーへと伸びる。それを横に滑るように移動して回避しようとする。
その刹那、ロイは鮮烈な笑みを浮かべ―
「爆ぜろ!」
酸素と水素の密度を制御。酸素を吸い膨れ上がり、水素を喰らい―炸裂。
自分より遥か大きなモノを喰らったヘビの如く、炎はその太さを変え、ランサーを飲み込む。
「が―ッ!?」
爆風によって吹き飛ばされたランサーが苦悶の声を漏らす。
距離は広がり、またもやロイの間合いへと移り変わった。
追い討ちをかけるように放たれた炎を避けながら、彼はエリオの元へ向かう。