07/10/01 00:18:47 fx28daaU
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時間は少し遡る。
「行け!」
そう言われても、ゆたかの足は一歩も前に出なかった。
一人になることが、怖かった。
何も考えられなかった。
ただ、何も分からないことも怖くて木からひょっこりと顔を出して様子をうかがったのだ。
そして、ゆたかの目にDボゥイが倒れ伏す姿が写った。
ごちゃごちゃの飽和状態だったゆたかの頭の中で、たった一つだけ言葉が響いた。
―嫌だ
優しい人は怖い人だった。怖い人だったけど優しかった。
そう、優しい人だったんだ。だから私は信じることにしたんだ。
それで、みんなで帰ろうって決めて・・・・・・みんな、お姉ちゃんにかがみさんにつかささん。
それと、Dボゥイさんも。
―こんなの、嫌だ!
私は帰りたい。みんなと帰りたい。
こんな所で死にたくない。死んでほしくない。
私は・・・・・そうだ、私はDボゥイさんのことを何も知らないし、私もぜんぜん話してない。
―よく分からないけど、こんなの、嫌だ!
それはパニックに似ていたかもしれない。
支離滅裂な思考で、普段なら考えられないような行動をとってしまう。
Dボゥイの元に駆け出したゆたかは、何も考えてなどいなかった。