アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ2at ANICHARA
アニメキャラ・バトルロワイアル2nd 作品投下スレ2 - 暇つぶし2ch50:少女の幸運と少女の不幸 ◇FbVNUaeKtI(代理)
07/09/25 03:39:11 k5nEM0BV
「あれ?」
・・・なかった。目を開くと、少女の姿が忽然と消えている。視線を落とすと、足元に転がるのは黒い鞄。
その場に残されたのは散乱する道具と呆然と佇む梨花。そして草を掻き分ける微かな音のみ。
逃げられた・・・よほど恐ろしい顔をしていたのか、こちらの殺気とやらを読んだのか・・・
(なんにせよ、うかつだったわね)
逃げられたことに微かな不安と怒りが込み上げるが、頭を振ってそれを追い払う。
殺気のような物を読まれたとしても、決定的と言える証拠は無かったはずである。
だから、逃げられてもそんなに問題視することは無い。
それに命の代わりと言ってはなんだが、少女は数多くの物を残していってくれたのだ。
「大漁大漁なのです。にぱー」
雰囲気を打ち消すように呟き、梨花はその場に転がっている物を拾い集め始めた。
パンや水を袋にいれ、支給品であろうタイマーと傘を手に取り・・・傘の異様な重さに気づく。
(くすくす・・・こんな物騒な物まであるのね・・・私には無用の長物だけど)
傘の内部に仕込まれた銃に、思わず自虐的な笑みを浮かべる。
おそらく使いこなせはしないだろうが、それでも何かの役には立つだろうと鞄に突っ込む。
傘はつっかえる事もなくスムーズに鞄の中に消えた。
「・・・・・・・・・」
目の前で起こった異様な事実を軽く無視して、梨花はもう一つの物体へと目を注ぐ。
それは一番最初に投げられた物体。掌に余るくらいの大きさのタイマーらしきものだった。
(時報の機能でもついてるのかしら?まあ、陽動くらいには使えるかもね)
そんな事を考えながら、魔女は自分のツキに笑みを浮かべる。
(6とまではいかないけれど、順調にいい目がでてるわね。私の運も捨てた物じゃ・・・)
と、そこまで考えたとき・・・梨花の手元からポンッという間抜けな音が響いた。

51:少女の幸運と少女の不幸 ◇FbVNUaeKtI(代理)
07/09/25 03:39:45 k5nEM0BV











『おっぺけぺ~のぺ~!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』















52:少女の幸運と少女の不幸 ◇FbVNUaeKtI(代理)
07/09/25 03:40:05 k5nEM0BV
後方から聞こえた物凄く大きな声に、森の中を走っていたアルルゥは首をすくめ、その動きを止めた。
恐る恐る後ろを振り向き、何の気配も無いことを確認すると再び山を駆け下り始める。
その手に抱えられている物は鋼色に輝く扇子。
ついさっき、見知らぬ少女から逃げるときに持ち出した、たった一つのもの。
(ちなみにアルルゥが逃げ出した原因は・・・単なる人見知りである)
「おとーさん・・・」
それの持ち主である仮面の青年の姿を思い浮かべながら、少女は麓へと駆け下りてゆく。
・・・アルルゥは全く気づいていなかった。
聞こえてきた奇声が先程、自分に話し掛けてきた少女の声で、
奇声をあげた原因が自分がいじっていた支給品―時限バカ弾にあるという事を。



【C-6山中 1日目 深夜】
【古手梨花@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:時限バカ弾で混乱、数秒程度で通常復帰
[装備]:スタンガン
[道具]:荷物一式×2、ロベルタの傘@BLACK LAGOON
[思考・状況]
 1:おっぺけぺ~のぺ~
 2:南下して町へと向かう
 3:ステルスマーダーとしてゲームに乗る
 基本:自分を保護してくれそうな人物(ひぐらしキャラ優先)、パーティーを探す
 最終:ゲームに優勝し、願いを叶える

53:少女の幸運と少女の不幸 ◇FbVNUaeKtI(代理)
07/09/25 03:40:19 k5nEM0BV
【C-6山中 1日目 深夜】
【アルルゥ@うたわれるもの】
[状態]:健康
[装備]:ハクオロの鉄扇@うたわれるもの
[道具]:なし
[思考・状況]
 1:ハクオロ等の捜索
 2:ハクオロに鉄扇を渡す
 基本:ゲームには乗らない


※アルルゥの支給品『時限バカ弾』は破裂して失われました
※梨花の奇声はエリア周辺に響いたと思われます

※『時限バカ弾』
  時限タイマーを巻いた状態で対象に貼り付けて使用。
  制限時間が来ると破裂し、貼り付けられた対象がバカな事を叫んだり踊ったりする。
  おそらく、数秒程度で普通の状態に戻ると思われる。

54:名無しさん@お腹いっぱい。
07/09/25 03:46:46 mtK0O8I3
 

55:「友達だ」 ◆2LEFd5iAoc
07/09/25 03:51:43 3WZf49N1
投下します

56:「友達だ」 ◆2LEFd5iAoc
07/09/25 03:53:22 3WZf49N1
 おっぺけぺ~のぺ~
  おっぺけぺ~のぺ~
   おっぺけぺ~のぺ~

 にゃはははぐるぐるでがらがらでどかんどかんぼーぼーなのです~

    おっぺけぺ~のぺ~
     おっぺけぺ~のぺ~
      おっぺけぺ~のぺ~

  byわひゃはyふぁらうぇおいjwみょ~

       おっぺけぺ~のぺ~
        おっぺけぺ~のぺ~
         おっぺけぺ~のぺ~

   ふぁけjひぁおうぇじゃだこぇえrふぁwfみおpmじゅえ~

          おっぺけぺ~のぺ~
           おっぺけぺ~のぺ~
            おっぺけぺ~のぺ~…………


 ◇ ◇ ◇

57:「友達だ」 ◆2LEFd5iAoc
07/09/25 03:54:02 3WZf49N1
いきなり殺し合いをしろ、なんて可笑しなことを言われたら、誰だって必然と視野が狭くなるもの。
 灯台下暗し―なんて諺があるが、暗くて見失ってしまうようなものは、何も手元にあるとは限らない。

「まぁ。今まで気にも留めませんでしたけれど、ここから見える月夜もなかなかのものじゃありませんの」

 空に上る満月を見ながら、獣耳の女―カルラは、物思いにふけるような素朴な笑顔を作る。

「まったく、こんな厄介なことに巻き込まれたりしなければ、今頃ウルトあたりと一緒に月見酒と洒落込むところですのに」

 素朴……そう、月を見上げる彼女の笑顔は、確かに素朴だったのだが、

「ねぇ? そうは思いませんこと?」

 見事すぎる真円から視線を外し、目の前に立つ少女へと被写体を移したその瞳は、どことなく妖艶にも見えた。

 深夜の森を行き来する風は、冷たい。
 漆黒のレオタードにマントベースとしたバリアジャケットを装備し、煌びやかな金髪を闇に引き立てさせている少女―フェイト・T・ハラオウンの格好は、見るからに寒そうだった。
 むき出しの太腿に鳥肌が立っていることにも気づかず、一点に見つめるは、闇の奥に潜みし者。
 寒さを忘れさせるほどの存在が、そこにいた。
 寒さを忘れさせるほどの失態を、やってしまった。
 寒さを忘れさせるほどの誤解を、生んでしまった。

58:「友達だ」 ◆2LEFd5iAoc
07/09/25 03:54:20 3WZf49N1
「あ、あ…………」

 やらかしてしまった失敗への後悔のせいか、それとも単純に、カルラへの恐怖からくるものか。
 分からない。分かるのは、自分が彼女に攻撃を仕掛けてしまったということだけだ。

 普段の冷静な思考が、取り戻せない。
 タヌ機による幻覚作用が齎した最悪な不幸―親友が人を殺す、という悪夢がフェイトを混乱の渕に追い込んでいた。
 目の前の女性は誰か? 耳や尻尾など、獣の象徴的なパーツを宿しつつも人型を成すその姿。アルフやザフィーラと同じ使い魔なのだろうか。
 そもそも自分は、殺戮を続けるなのはを追ってここまで来たはずなのに。当のなのはは何処に消えてしまったのか。

「なのは……どこ?」

 カルラに目の焦点を合わせようとせず、フェイトはキョロキョロと辺りを見渡す。
 見知ったはずの親友は、やはりいない。既に移動してしまったのだろうか。
 だとすれば、このままここで無駄な時間を使ってるわけにはいかない。

59:「友達だ」 ◆2LEFd5iAoc
07/09/25 03:54:40 3WZf49N1
「…………通る」

 殺し合いに乗った親友―高町なのはを止める。
 フェイトは意思を強め、見失わない内になのはを追おうと、再び進み出そうとするのだった。
 それこそ、降りかかる火の粉、行く手を阻む障害は、全て蹴散らしてでも。

「あらあら。殺気を放っても臆せずに向かってくるなんて……本当に困ったお子様ですわね。忠告しておきますけれど、わたくし、そんなに優しくありませんことよ」

 微笑の影に強大な剣気を隠し、カルラは杖を構えるフェイトに向き直る。
 ホーホー、と何処からか梟の鳴き声が聞こえてきたような気がした。いや、ひょっとしたら虫の鳴き声だったかもしれないし、周囲の参加者が高笑いでもしていたという可能性もある。
 なんにせよその瞬間、開戦の鐘の音としては十分な―音が、鳴り響いたのである。

「ランサーセット」『Get set』

 フェイトの足元に輝きを放つ魔法陣が形成され、周囲に雷の光球が三つ、発現する。
 高速直射弾『フォトンランサー』。フェイトが最も得意とする、雷撃系の攻撃魔法である。

「ファイア!」『Fire』

 フェイトと、その手に握られた杖―デバイス『S2U』の声が重なり、三つの光球は複雑な軌道を描きながらカルラへと伸びる。
 一つは直線的に真っ直ぐと、一つは螺旋を描きながら相手を錯乱させ、一つは横合いから低速で移動し時間差で攻める。
 数多くの戦を経験してきたカルラといえど、さすがに自由自在に軌道が変化する矢というものは初めてだった。

 まず一つ目に襲ってきた直線的な光球は、跳躍一蹴、地面を強く踏み込み空へと避ける。
 そして二つ目に襲い掛かってきた螺旋軌道の光球は、回避では防御で攻略する。
 カルラは跳躍したその先―高く聳える木の枝を掴み取り、そのまま猿のような機敏さで、生い茂る木の葉の群集に逃げ込む。
 それが隠れ蓑となり、光球は多くの枝と葉に阻まれ、カルラの下に届くことなく拡散した。
 途端、衝撃で舞い落ちる木の葉の雨中から、カルラが飛び出す。

(我ながら品のない戦法ですこと。森を飛びまわって攻撃を回避するなんて、まるでキママゥじゃありませんの)

60:「友達だ」 ◆2LEFd5iAoc
07/09/25 03:54:59 3WZf49N1
 余談だが、キママゥとはカルラが居た世界『ウィツァルネミティア』に生息する猿のことである。
 木の上から飛び出したカルラが向かう先は、魔法陣の上で光球の操作を行っているフェイト。
 カルラの想像以上のスピードに目を白黒させつつ、残った三つ目の光球を引き戻そうとする。が、
 時、既に遅し。カルラはフェイトの眼前に立ち、フェイトの額を目掛けて右腕を伸ばす。

「おイタはいけませんことよ」

 大人女性特有の、優しげだがどこか迫力のある微笑を見せ、フェイトの額にデコピン一閃。
 普段、大人の男四人がかりでも持ち運ぶのが困難な大剣を振り回すカルラのデコピンは、もはや単なるお仕置きのレベルを超越していた。
 ピンッ、と指が弾かれ、後方に飛ばされるフェイト。数多の魔法戦を経験してきた彼女でも、デコピンで攻撃されるのは初めてだった。

「―ぅあっ!?」

 デコピンといえど、怪力カルラの繰り出す攻撃の前に、超軽量級のフェイトが飛ばされない理由はなかった。
 地を転がり、綺麗な金髪を土に汚す。ダメージ自体は大したことはないが、精神面―命を懸けた戦闘でデコピンを繰り出す―という衝撃的な出来事に、フェイトは面食らっていた。

「アルカス・クルタス・エイギアス 煌きたる天神よ いま導きのもと降りきたれ……」

61:「友達だ」 ◆2LEFd5iAoc
07/09/25 03:55:22 3WZf49N1
 立ち上がりながら、フェイトはブツブツと何かを呟く。
 その複雑な言語様式が何を意味するものかは分からなかったが、フェイトの足場に形成された陣が未だ消えぬことに、カルラは警戒した。

(ウルトやカミュが術を使うのと似た雰囲気……まだ、何かがきますわね)

 フェイトから距離を取り、来るべき何かに備えるカルラ。
 その間も、フェイトは呪文の詠唱を止めなかった。

「サンダー……フォール!」

 瞬間。
 フェイトとカルラの周りに取り囲むかのような雷の帯が出現し、バチバチと火花を撃つ。
 傭兵としてのカンか、カルラはその雷で出来た円陣からこれまでにない危険信号を感知し、行動を移した。

 そして、天雷は降り注いだ。


 ◇ ◇ ◇

62:「友達だ」 ◆2LEFd5iAoc
07/09/25 03:55:39 3WZf49N1
「…………やった?」

 砂埃舞う森林地帯。焼け焦げた草の大地に立っていたのは、フェイトただ一人だけだった。
 獣耳の怖い女の人はいない。影も気配も見当たらない。
 クロノのデバイスを通して放った魔法、死ぬことはないはずだが。

「……!」

 消えたカルラを捜すフェイトの視線の先、その場に倒れた一本の木を発見して、顔色が変わった。
 長さはそれほどでもなく、太さは人間の女性といった細い倒木。
 サンダーフォールの範囲雷撃に耐え切れなかったのだろう。根元からポッキリと折れ、大地に力なく横たわっていた。

 所々に、紅い血を付着させて。

「――――ぁ」

 嫌な予感を感じた。
 最悪の結果が頭を過ぎる。
 カルラは何処に消えたのか。
 倒木に付着した血は誰のものなのか。
 分からない。違う。考えたくない。
 しかし、脳は無意識の内に思考を始める。

 ひょっとしたら、下敷きにしてしまったのではないか?

 ひょっとしたら、倒木の下にいるのではないか?

 血を流し、息絶えた状態の、彼女が。

 自分と戦っていたカルラが、

 死んでいるのでは、ないか?

63:「友達だ」 ◆2LEFd5iAoc
07/09/25 03:56:09 3WZf49N1
「――――ッ」

 言葉が、出なくなった。
 非殺傷設定があるから、クロノのS2Uがあるから、相手が死ぬことはない。そう思って攻撃魔法を放った。
 しかし、そのせいで木が倒れた。その先に彼女がいて、下敷きにされてしまったのだとしたら。
 ―死ぬ。間接的だが、自分が殺した。

「…………わたし、が?」

 殺すつもりなんてなかった。殺戮に走ってしまった友人を止めるため、ちょっと退いてもらおうと思っただけなのに。
 事故、じゃ済まされない。元はといえば、フェイトの放った魔法が原因だ。
 たとえその気がなくても。あの人は、


    フ ェ イ ト チ ャ ン モ 、 コ ロ シ チ ャ ッ タ ン ダ ネ 


 なのはの声が、聞こえてきたような気がした。
 どうしようもない絶望の中で、フェイトは膝を折り、落胆し、項垂れて、

「………………………………」

 泣きたくなった。

「―ぁっ、イタタ……まったく、驚かされましたわ」
「…………!」

64:「友達だ」 ◆2LEFd5iAoc
07/09/25 03:56:23 3WZf49N1
 涙が溢れ出す―その間際、フェイトの涙腺を閉めるきっかけとなったのは、ひょうひょうとした女性の声だった。
 倒木が持ち上がり、その下から獣耳の女が姿を現す。
 頭部から血を垂れ流し、痛みに苦しむ顔をしているにも関わらず、手では軽々と倒木を持ち上げている。
 若い女性が血を垂らしながら木を持ち上げる。その光景にも驚かされたが、それよりも何より、

「…………生き、てた」

 ―殺して、なかった。
 その現実に、フェイトはいたく喜んだ。

「『生きてた』、と。そう言いましたわね、今。自分であんなことをしておきながら、そんな口を叩きますの?
 ……これはさすがのわたくしでも、ちょっと怒りましたわね。
 子供にはお仕置きで済ませようとも思いましたけれど……そういうわけにはいかなくなりましたわ」

 起き上がったカルラの表情から、微笑が消えた。
 そして次の瞬間、ブンッ! という大音量の風を切る音が。

 ―ドズンッ

 カルラを殺していなかったという喜びから一転、眼前に振り下ろされた倒木を見て、フェイトは表情を失った。
 ほとんど顔スレスレで下ろされた倒木は、カルラが一歩前に脚を踏み込んでいたら、フェイトの頭をグチャグチャに粉砕していたであろう体積。
 それを棍棒のように扱うカルラの怪力もそうだったが、

「子供を甚振るのは趣味ではありませんけれど……!」

 傭兵が全力で敵を殺しにかかる際の、本気の正気の剣気を超えた殺気。
 それを剥き出しにしたカルラの迫力に、フェイトは恐怖した。

65:「友達だ」 ◆2LEFd5iAoc
07/09/25 03:56:46 3WZf49N1
「う、うぅ……」

 実力……いや、違う。『覚悟』が違いすぎた。

 身も心も、全て捧げた主ハクオロのため。楽しく過ごした仲間たちと、一緒に帰るため。また、平穏を取り戻すため。
 カルラは戦うのだ。死ねないのだ。降りかかる火の粉は何度も振り払い、押しのけてでも進まなくてはいけないのだ。

 片やフェイトは、親友を取り戻すため……本当に、そうだったろうか。
 あれは本当に真実だったのか。なのはが、あんなことをするというのか。
 今では、全てがまやかしであったようにも思える。それに、振り回されていただけのようにも思える。
 だとしたら―フェイトはとんだピエロだ。真面目にショーを見に来てくれたお客に、悪戯をするような悪いピエロ。
 必死に生きようとするカルラを殺害一歩手前まで追い込み、自分勝手な妄想で全てを台無しにしようとしてしまった。
 こんな茶番には、もう付き合いたくない。心底そう思った。

『……Prease Master』

 声が、聞こえた。
 破壊的なカルラのものでも、猟奇的ななのはのものでもない。
 もっと穏やかで、冷静で、お母さんみたいな声。

『It believes』

(……S2U…………)

『Friendship with the friend』

 平坦な声で、単調に言葉を紡ぐS2Uの声帯が、義母であるリンディの励ましにも思えた。

 ――なまえを、よんで――

66:「友達だ」 ◆2LEFd5iAoc
07/09/25 03:57:01 3WZf49N1
「なのは…………」

 呟く。小さくもしっかりと、会ってもう一度呼びたい、その名を。

「なのは、なのは……なのは」

「……その『ナノハ』というのは、あなたの恋人か何かかしら? それとも家族?」

 フェイトの呟きを聞き漏らさず、興味を持ったカルラが尋ねてみる。
 フェイトは、カルラのその問いを拒絶することなく、立ち上がって正面から返答する。


「友達だ」


 ハッキリと、言い切る。
 S2Uは言った。友達を信じろと。きっと、バルディッシュやレイジングハートでも同じことを言ってくれる。
 なのははフェイトを救ってくれた、掛け替えのない友人だった。そのなのはを、友達であるフェイトが信じないで、どうするんだ。

「私は、なのはに会う。友達に、会いに行くんだ」
「……そう。それが、あなたを『突き動かしていた力』だったのですわね。それが分かれば、十分……」

 フェイトがS2Uを構え、カルラが先程の倒木を拾い直す。

 それぞれの武器を片手に、譲れない思いを胸に。

 再び、衝突を。

「ブレイズキャノン」『Blaze cannon』

 杖の先端をカルラへ向け、魔力を集中させる。

「……参りますわ!」

 倒木を槍のように突き構え、フェイトへ向けて突進する。

67:「友達だ」 ◆2LEFd5iAoc
07/09/25 03:57:23 3WZf49N1
「ブレイズキャノン」『Blaze cannon』

 杖の先端をカルラへ向け、魔力を集中させる。

「……参りますわ!」

 倒木を槍のように突き構え、フェイトへ向けて突進する。

「……ファイア!」『Fire!』

 S2Uの先端から、閃光の帯が放出される。
 カルラは倒木を前に突き出し、襲い掛かってくる砲撃を正面から突破しようと直進する。

「わたしは……!」

 意地と意地とのぶつかり合い。思いと想いとのぶつかり合い。
 より強い方が勝つ。そんな気がして。

「なのはに、会うんだァァァァァァッ――!!!」

 フェイトは、友達の名前を精一杯叫んだ。

 衝突は、轟音と閃光を放って、終焉を迎える。


 ◇ ◇ ◇

68:「友達だ」 ◆2LEFd5iAoc
07/09/25 03:57:41 3WZf49N1
「ブレイズキャノン」『Blaze cannon』

 杖の先端をカルラへ向け、魔力を集中させる。

「……参りますわ!」

 倒木を槍のように突き構え、フェイトへ向けて突進する。

「……ファイア!」『Fire!』

 S2Uの先端から、閃光の帯が放出される。
 カルラは倒木を前に突き出し、襲い掛かってくる砲撃を正面から突破しようと直進する。

「わたしは……!」

 意地と意地とのぶつかり合い。思いと想いとのぶつかり合い。
 より強い方が勝つ。そんな気がして。

「なのはに、会うんだァァァァァァッ――!!!」

 フェイトは、友達の名前を精一杯叫んだ。

 衝突は、轟音と閃光を放って、終焉を迎える。


 ◇ ◇ ◇

69:「友達だ」 ◆2LEFd5iAoc
07/09/25 03:57:57 3WZf49N1
 そこには、極めて明確な勝敗結果が示されていた。
 先程まで構えていた杖はカード形態に戻し、立ったままの状態で、横たわる女性を見つめる少女が一人。
 地面に仰向けになりながら、開けてきた朝空と少女の顔を見つめる女性が一人。

「…………負けて、しまいましたわ」

 どこか陽気に聞こえるのは、彼女の楽天的な性格故のことだろうか。
 大した悔しさも見せず、カルラが終わりを告げた大地に倒れていた。

「ウルトやカミュの術も凄かったけれど、あなたの術の規模も相当なものでしたわよ」
「…………ありがとうございます」

 笑顔で相手を称賛するカルラとは反対に、勝者であるはずのフェイトは、居た堪れない気持ちでいっぱいだった。
 元はといえば、勘違いから始まった戦い。フェイトがもっと冷静であれば、回避できたはずの戦いだった。
 なのに、双方とも引き下がることが出来ず……結果的に、カルラをここまで傷つけてしまう結果になってしまった。
 落ち度を感じてしまうのは、しょうがないことであった。

「……ごめんなさい」
「あら、あなたが謝ることはありませんわ。これは、戦なんかよりももっと不条理で救えない、殺し合い。血も涙もなくて当然ですわ。ささ、遠慮なさらずこの首を持っていきなさい」
「! ……しませんっ、そんなこと」
「クスクスッ、分かっていましてよ。あなた、優しそうな瞳をしていますもの。見ていると吸い込まれそうな、そんな素敵な瞳……」

 カルラとフェイトは互いの視線を交差させつつ、その魅力に引き込まれ合っていた。
 さっきまで戦いを繰り広げ、互いにいがみ合ったていたはずなのに。今では、全てが分かり合えた気がする。

70:「友達だ」 ◆2LEFd5iAoc
07/09/25 03:58:14 3WZf49N1
「よろしければ……名前を教えていただけるかしら」
「……フェイト。あなたは?」
「カルラ、ですわ。別に覚えていてもなんの得もない、つまらない名前でしてよ」

 カルラのふざけたような物言いが、妙に心地よい。
 殺し合いという不安な境遇に置かれた中で、少しだけ元の世界の暖かさを取り戻せたような、そんな気がした。


 背後に死神が迫ってきていたことに気づけなかった。
 それは、一瞬でも殺し合いの世界から脱線してしまった意識のせいなのかもしれいない。


 ―バッ、と即座に飛び起きたカルラは、全身で覆い隠すかのように、フェイトの身体を抱きしめる。

「か、カルラさん!?」

 いきなり何をするのか、フェイトは赤面しつつも混乱を覚え、カルラの腕の中でされるがままに抱きしめられていた。
 その時の視界に映ったものは、ただ一つ。

 穏やかな笑顔から一転して、

 ドンッ、ドンッ、ドンッ、

 一頻りの銃声の後、笑顔から苦悶の形相へと表情を作り直す、カルラの姿だった。


 その後のことは、よく分からない。
 カルラはフェイトを抱きかかえたまま走り出し、森の中へと疾走を開始する。
 あの銃声はなんだったのか、カルラはどうしてこんなにも強く、フェイトを抱きしめるのか。
 その時はまだ、何も分からないでいた―


 ◇ ◇ ◇

71:「友達だ」 ◆2LEFd5iAoc
07/09/25 03:58:31 3WZf49N1
 人気の薄くなった森の奥まで連れて来られ、フェイトはやっと、状況を理解した。

「あ、あ、あ……」

 差し伸ばした手―カルラの背中辺りから、ヌメッとした感触を感じる。
 そして、暖かさも。
 確認するまでもなかった。自分の手にカルラの血が付着したことも、カルラの背中にどうしてこんな液体が付着しているのかも。

「カルラさん……あの時、誰かに撃たれて……」
「……あらあら、そんな泣きそうな顔をしちゃって、せっかくの可愛らしい顔が台無しですわよ」

 不思議だ。どうしてこの女性は、こんなにまで完璧な笑顔を作れるのか。

「ほら、笑ってくださいまし。あなたにはやらなくてはいけないこと、会わなくてはいけない友達がいるのでしょう?」
「でも、でも……」

 拒絶するようなフェイトの声にも押し負けず、カルラはあくまでも、地の笑顔を通して語りかける。

「もう一度、聞きますわよ。フェイト、あなたには会わなくてはいけない友達がいるのでしょう?
 その子の名前を呼んであげなさい。わたくしに聞かせてみせなさい。あなたには、悲しむ必要性なんてないのですから」

 カルラが見せてくれた極上の笑顔は、どこか痛々しくて。見ているだけで、涙がとめどなく溢れてきて。

72:「友達だ」 ◆2LEFd5iAoc
07/09/25 03:58:46 3WZf49N1
「わたしは……なのはに……」

 もう一度、確かめるかのようにその名を呼ぶ。
 もう二度と、この気持ちを失わないように。
 もう二度と、目的を見失わないように。

「なのはに、会いたいぃぃ……………………………………」

 目から大粒の涙をたくさん流し、フェイトは、号泣しながらカルラにそう言った。

「……その言葉さえ聞ければ、わたくしはもう満足ですわ。そうだ、あなたが無事に友達と再会できるよう、おまじないをかけてあげましょう。
 目を瞑って、泣くのをやめて、気を休めて……」

 フェイトは、カルラに言われたとおりに行動し、そこで背中に違和感を感じた。
 トンッ、という首筋を打つような音がした直後、フェイトの身体はぐったり崩れ落ち、そこで意識を失う。
 泣き疲れて眠ってしまったような―そんな表情を見せる幼子に、カルラはよしよしと頭を撫で、静かに布を被せて上げた。


 ◇ ◇ ◇

73:「友達だ」 ◆2LEFd5iAoc
07/09/25 03:59:06 3WZf49N1
 何が「おっぺけぺ~のぺ~」だ。
 正直、あんな状態になってしまった時はどうなるんだろうかと心配したものだったが、意外と早めに効果が切れたようで助かった。
 バカになっている最中に誰とも遭遇しなかったことは、運が良かったとしかいいようがない。
 あの尻尾の子には報復が必要ね……フフフ……いえ、それにお礼も必要かしら。
 なにせ、現在のこの状況を招く、きっかけを与えれてくれたんですもの。

「……つくづく、子供運がないですわね、わたくしも。まさか、襲撃者があなたのような可愛らしい娘だなんて」
「フフフ……あれだけ大きな戦闘音をたてれば、誰だって気になって調べてみようとするものよ。すぐにその場を立ち去らなかったのは、失敗だったわね」

 バカから平静に戻った私―古手梨花は、あの尻尾の少女を捜して森を彷徨っていた。
 その最中に見つけたのが、殺し合う二人の女たち。
 尻尾の少女と同族のようにも思える大人の女に、どういう仕組みかは知らないけれど杖から電気を発していた少女。
 私は二人の死闘を終始観戦しながら、機会を窺っていたのだ。―漁夫の利を得る、絶好の機会をね。

「みー。もう一人の女の子はどうしたのですか? あの子も殺してあげないと、ねこさんはガクガクブルブルが治まらないのですよ」
「ああ……あの子なら、とっくの当に逃げてしまいましたわ。せっかく助けてあげたというのに、薄情な子。きっと、あなたの顔も見ていないんじゃないかしら」
「それはそれは、ご愁傷さまなのです。かわいそうだから、もうこれ以上苦しまないように、楽に殺してあげるのですよ。にぱー☆」

74:「友達だ」 ◆2LEFd5iAoc
07/09/25 03:59:19 3WZf49N1
 私は満面の笑みを見せながら、銃を内蔵した傘を突きつける。
 女は既に死を受け入れたのか、木に凭れ掛かったまま静かに目を瞑った。

「何か言い残すことはあるですか? 今が最後のビッグチャンスなのですよ」
「遺言……ですか。そんなもの特にはありませんけれど、残念といえば残念ですわね……」
「みぃ? ここで死んでしまうことがですか?」
「後悔……というほどのものでもありませんけれど。叶うなら、もう少し居たかったですわね……あの居心地のいい食卓に……」
「食卓? ごはんが食べたいのですか? 心配しないでも、天国へいけばお腹まんぷくで、ペコペコフラフラになることもないのですよ」
「それもそうですわね。もっとも、天国なんてところに行けるかどうかは、イマイチ自信がないですけれど」
「大丈夫なのですよ。もし地獄に落ちても、ボクには全く関係のないことだから、安心して逝ってくるといいのです」
「……あなた、歳の割に意外と毒舌ですのね」
「? 何を言っているのかボクにはよくわからないのですよ」
「あらあら、それは困りましたわ」
「あはははは~」
「ふふふふふっ」

「じゃあ、死になさい」


 ◇ ◇ ◇

75:「友達だ」 ◆2LEFd5iAoc
07/09/25 03:59:38 3WZf49N1
  『それは俺の芋だァーーーー!』      『バカっ、テメー一人で食いすぎなんだよ!』

        『クロウ、あなたもいい加減にしておきなさい』

            『若様、おかわりはどうですか?』      『あらあらウフフ』

     『おいしいねーユズっち』          『はい……』

        『うぅ……聖上ぉ……某は、某はぁ……』   『ちょ、トウカさんそれお水じゃなくてお酒じゃないですか!』

 『やれやれ……』              『おとーさん、たいへん』



 あの、騒がしくも楽しかった団欒の日々。
 悲しみを招くような戦乱もあったけれど、あの楽しい日々があったから、今まで頑張ってこれた。
 もうあそこに戻れないんだと思うと、心が悲しくなってくる。

(もう少しだけ、あの場にいたかった)

(みなさんと一緒に、もう少しだけ)

(ごめんなさい……あるじ様。わたくし、どうやらここで退場みたいですわ)


 ◇ ◇ ◇

76:「友達だ」 ◆2LEFd5iAoc
07/09/25 03:59:55 3WZf49N1
 後に残ったのは、怪しく笑う青髪の少女が一人。
 木に凭れ掛かったまま、体中を銃弾で貫かれた死体が一つ。

「まずは一人……そろそろ夜も明けるだろうけど、まぁまぁの滑り出しといったところかしら。
 役に立ちそうな支給品も手に入ったことだし、早めにこの場から立ち去ったほうがいいわね」

 カルラを銃殺した古手梨花は、彼女の四次元デイパックを回収し、その場を離れる準備を進めていた。
 震源地から少し離れているとはいえ、あの戦闘音を聞きつけた参加者がまだ湧いてこないとも限らない。
 それらと接触するというのも手だが、近くに死体がある以上、無駄な誤解をされる危険性もある。

「尻尾の少女に金髪の少女も……今のところは保留ね。幸いにも私の正体はバレていないようだし、放っておいても大丈夫でしょう」

 古手梨花は子供らしからぬ妖艶な笑みを浮かべ、その場を去って行く。

「こわいこわい。あんなところで人が死んでるなんて、ねこさんはますますガクガクブルブルのニャーニャーなのですよ」

 異常としか取れないような、無邪気な発言を残して。


 ◇ ◇ ◇

77:「友達だ」 ◆2LEFd5iAoc
07/09/25 04:00:15 3WZf49N1
 風が吹く。
 その風は、少女を覆っていた布をバタバタとはためかせ、空へと舞い上げる。
 むき出しにされた少女は目元に涙を溜め、すぐ傍で起こっていた惨劇に気づけぬまま、朝を迎える。
 カルラが死亡前、フェイトに被せた布―『透明マント』が、梨花の目からフェイトを救ったのだ。
 だが、死は免れても、悲しみから逃れることは出来ない。

 フェイトは目を覚ましたあとも、きっと泣きじゃくることになるのだろう。

 分かり合えた、戦友になれると思えた女性の、死を受け止めて。



【D-7 森林・1日目 早朝】
【古手梨花@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:健康
[装備]:スタンガン@ひぐらしのなく頃に
[道具]:荷物一式×3、ロベルタの傘@BLACK LAGOON、ハルコンネン(爆裂鉄鋼焼夷弾:残弾5発、劣化ウラン弾、残弾6発)@HELLSING、
    :カルラの不明支給品ひとつ(カルラが扱える武具ではない)
[思考・状況]
1:南西の町方向へ移動。
2:ステルスマーダーとしてゲームに乗る。チャンスさえあれば積極的に殺害。
基本:自分を保護してくれそうな人物(ひぐらしキャラ優先)、パーティーを探す
最終:ゲームに優勝し、願いを叶える

78:「友達だ」 ◆2LEFd5iAoc
07/09/25 04:00:31 3WZf49N1
【フェイト・T・ハラオウン@魔法少女リリカルなのはA's】
[状態]:気絶、疲労大、全身に軽傷、背中に打撲
[装備]:S2U(元のカード形態)@魔法少女リリカルなのは
[道具]:支給品一式、ランダムアイテム残数不明
[思考・状況]1:なのはに会う。それ以外の思考は停止中。
[備考]:タヌ機による混乱は治まった様子。


【カルラ@うたわれるもの 死亡】
[残り71人]

 ※午前四時ごろ、D-7の森林地帯にて、大規模な戦闘音と閃光が発生しました。
 ※カルラの支給品『透明マント@ドラえもん』は、風に飛ばされD-7の何処かに放置されています。
  ですが、布の生地自体が透明なため、著しく見つけにくくなっています。
  透明マントは子供一人がすっぽりと収まるサイズ。複数の人間や、大人の男性では全身を覆うことできません。
  また、かなり破れやすいです。

79:「友達だ」 ◆2LEFd5iAoc
07/09/25 04:01:04 3WZf49N1
終了

80: ◆Yf4GQL3Gk6
07/09/25 04:03:10 cGCfh01Z
「ウ、ウヌゥ……」
会場の一角に停泊する、殺し合いの場には不釣合いなほど豪華に飾り立てられた豪華客船の、医務室のベッドのシーツの上。
「こ……、ここはどこなのだ!き、清麿はどうなったのだ?」

そこから、金髪の、小柄な姿が、飛び起きた。

正直な所、ガッシュはまだ現状を良く理解してはいない。突然、謎の場所に呼び出され、突然、殺し合いをしろと言われ、
そして――突然、自らの最も信頼するパートナー、高嶺清麿と引き離された。
わかっているのは、そのくらいのものだ。自らを呼び出し、「螺旋王」と名乗った者の正体はおろか、その「螺旋王」に
挑みかかって返り討ちにあった異形も、今自らのいる場所も、高嶺清麿がいる場所も、

「ど、どうなったのだ?どうなっているのだ……?」

何も、わからない。

ガッシュは、焦った。ここに飛ばされる前の記憶によれば、ここは「殺し合い」の場であるらしい。
ガッシュも、戦いを知らないと言うわけではない。これでも、魔界の王候補の一人。高嶺清麿と共に、多くの敵と戦い、多くの仲間と
助け合って、多くの危機を乗り越えてきているのである。

しかし、今までは、仲間がいた。ティオも、キャンチョメもいた。何よりも……、清麿がいた。


「はっ!き、清麿が危ないのだ!」

突然、ハッとしたように立ち上がるガッシュ。螺旋王から、この殺し合いゲームの説明を受けた時まで、清麿が側にいた事を思い
出したのである。
彼のパートナー、清麿は普通の中学生である。いや、頭脳は普通どころか、超が付くほどの大天才であるが、肉体的な能力は
所詮、普通の中学生である。

今までは、二人で力をあわせて困難に立ち向かい、幾多の危機を乗り越えてきたが……それも、清麿の心の力と、ガッシュの術、
その両方があってこそのものである。
今、二人が離れ離れになったこの危機的状況で、もしも凶悪な敵に襲われたら……。


清麿も、ガッシュも、生きてはいられないだろう。




「こうしてはおれぬ、いかなくてはッ……!?」

清麿を死なせたくない――清麿を探して、必ず助ける。
強い決意を胸に秘め、全速力で走り出すガッシュ。そしてその直後、支給品のディパックに足を取られて、スッ転ぶガッシュ。

「いたたた、そういえば、これを忘れておった……」

これは、たしか螺旋王から渡された、いろんなアイテムの詰まったタカラ箱。よくよく考え直せば、清麿に出会う前に別の悪い
敵に見つかってしまう可能性もある。そうならない為には、このディパックから、何か身を守れる物を出す必要がある。

「この中に……、何か良いものが入っておればよいが……」

祈る様な気持ちで、ディパックの中身を漁るガッシュ。始めに手に触れたものは、フカフカしてやわらかくて、暖かい……

「ネズミ、か?」

……クリクリした丸い目を持って、尻尾の先にフサフサの毛玉を持つネズミのような生き物。とある世界では、「爆弾生物」
との異名を取り、金に目が眩んだ運び屋を何人も爆殺した、歩くA級危険物ポルヴォーラ。それが、ガッシュの前に現れた。
見れば、足に足輪と重りを括り付けられている。これで勝手に歩いて勝手に爆発という事態を防ごうとしているのだろう。

「オヌシも、どこかからこの変な場所に飛ばされたのか?」

81: ◆Yf4GQL3Gk6
07/09/25 04:05:15 cGCfh01Z
しかし、ガッシュは、ポルヴォーラを知らない。だから、この毛だるま生物が、「武器」として支給されたなど、思いも寄らない。
精々、自分と同じように世界のどこかから螺旋王と名乗る男に連れてこられた生き物、としか思ってはいなかった。
人間界ならいざ知らず、この程度の異形なら、彼の故郷の魔界には掃いて捨てるほどいる。

「……」
「……」
「……………………」

だから、この魔物も話が分かる、と思い、話しかけたガッシュであったが……、帰ってきたのは長い沈黙だけ。

「オヌシ、もしかして喋れないのか?」
「……………………」
「……スマヌ、聞いた私が間違っておった」

何を言っても暖簾に腕押し、首をかしげるだけのポルヴォーラは、身を守るのに役に立たないと判断し、デイパック漁りを
再開するガッシュ。やがて、一つの紙包みを取り出し、開けた……までは良かったのだが。
中から出てきたのは、武器でもなければ防具でもない。チョコである。ネオホンコンのとあるお偉いさんが愛したチョコを、
ありったけ集めて袋詰めにしたお菓子セット。平時ならこれを見た子供は大喜びするものであるが、あいにくとガッシュの
身を守るためには、全くもって役に立ちそうもない。

「……、こんなものではどうにもならぬのだ……ハァ……」

ガックリとうなだれるガッシュ。半ば諦めかけた表情でデイパックをひっくり返し、振った。

                               ゴ  ト  ッ

すると、一冊の赤い本が、医務室の冷たい床の上に転がり出てきた。魔物の術を使うための本、赤い魔本。ガッシュの本。
ガッシュは、それを見るなり、今にも万歳をしそうな勢いで喜んだが、やがて元のようにうなだれてしまう。

「本があっても、清麿がいないと意味が無いのだ……」

医務室の床に座り込み、しばしの間いじやけるガッシュ。傍らではポルヴォーラが、支給品から引っ張り出した板チョコを
勝手に齧っており、その咀嚼音だけが医務室に響き渡る。

                                ガタゴトッ!

「ウ、ウヌッ!い、今の物音は一体何なのだ?」

静寂を打ち破り、突如別の部屋から、聞こえてくる物音。なにやら硬いもの同士がぶつかる音や、刃物がガチャ付く様な、
耳障りな音が次から次へと漏れ出してくる。
ガッシュは、ポルヴォーラと板チョコ以外の支給品をあわててデイパックの中へとしまいこみ、そろりそろりとドアへと忍び
寄り、耳を鍵穴に押し付け、全神経を集中させて隣の部屋の様子を探った。

「……切る?……〆る!?おおおおお、恐ろしい話が聞こえるのだ……!」

その結果は、最悪。少し音源が遠すぎるため、正確な話は聞き取れないが、切るだの〆るだのと、会話の所々に物騒
極まりない単語が混じっているようだ。
ガッシュは、医務室で震え上がり、あちこち見回して別の出入り口が無いかどうか探すが、あいにく、医務室の出入り口は
一つしかないようだ。それはつまり、ここから逃げ出そうと思えば、必然的に声の聞こえるほうに近づくこととなり……

おそらく、戦っているか殺しの相談でもしているだろう連中の前へと無防備に姿を現さなければならない、という事になる。

82:名無しさん@お腹いっぱい。
07/09/25 04:06:14 N5clpOmA
あれ?投下宣言あったっけ?

83:名無しさん@お腹いっぱい。
07/09/25 04:06:25 cGCfh01Z
「逃げられぬ……となれば、あやつらが居なくなるまで、ここで待つしかないのか……?」

冷汗まみれの顔でそう呟くガッシュ。しかし、ここで待っていても、助かるとは限らない上、隠れて時間を無駄にすれば
無駄にするほど清麿が危険な目に会う確率が高くなり、無事に出会える確立は下がっていく。
で、あるから、奇襲をしよう。と、ガッシュは考えた。
一気に突っ込んで、驚かせるか何かして隙を作った後、息が続く限り全速で逃走する。それが、ガッシュの考えうる限り、
最良の方法。

「今行くぞ、清麿ッ!」

デイパックを背に背負い、頭にポルヴォーラを乗せて、いざ発進。覚悟を決めて飛び出し、人影が見えたら声を上げる。
首絞めティオもかくやと言わんばかりの形相で、両手を大きく振って全速前進するガッシュ。医務室から少し進み、船の
大広間に出ると、そこには人影が一つ。ガッシュに気が付いた様子で、両腕を構え、迎撃の態勢をとる。

そして、ガッシュと人影が今にもぶつかろうとする瞬間……

「ちょーっと待った待った待ったァァー!爆発するーゥゥ!」

人影と共に大広間に居た一羽のカラスが、大きな叫び声をあげ、大広間は凍りついた。



「……つまり、あたしたちの話し声にびっくりして出てきた、ってワケね。」

騒ぎが一段落し、互いの情報交換を終えた後の大広間。青い髪の少女がガッシュに話しかける。

「そうなのだ。切るとか、〆るとか聞こえてきて驚いたのだ。まさか、こんなことをしているとは、思いもしなかったのだ」

そういって、傍らのテーブルを見つめるガッシュ。そこに用意されていたのは、豪華に飾り付けされたテーブルクロスと、
大きな皿。奇妙な形の反りが入った大きなナイフに、ブリ。まごうこと無きブリ。青の背に、銀の腹を持ち、体の中央には
金のラインが入った息のいいブリが、飾られたテーブルの皿の上で、ビチンビチンと音を立てて跳ねている。

「ま、このお嬢さんとのお近づきのしるしに、ケーキカットならぬブリカットとしゃれ込もうと思ったってワケさ。ちょうど
 都合よく、俺のディパックから出てきたもんでね。あ、あとカット用のナイフもね。俺も、探し人はいるんだけど、そいつ
 なかなかにしぶとくてね、そー簡単にくたばりゃしないだろうから、今はアレンビーちゃんと親睦を深めるのが先決だと
 思ってさ。彼女の話によれば、彼女の探し人も相当タフだっていうし。それに、このブリも早いところ喰ってしまわない
 と痛んじまう……etc」

黒いカラスが、青い少女につつつーっと近づいていく。羽ばたきもしないのに宙に浮いているように見えるのは、目の
錯覚なのだろうか。水の入ったワイングラスを傾けながら、アレンビーに向けて話しかけ続けている。

「とりあえず、お互い怪我もしなかったみたいだし、それはよしとしてさ。あんたの話してくれた清麿、だっけ?そのコ、
 武芸の心得も無いんでしょ。じゃあ、急いで助けに行ったほうがいいんじゃないの?」
「そ、そうなのだ!急いで欲しいのだ!急がないと清麿が危ないのだ!」

カラスの話をスルーして、ガッシュに語りかけるアレンビー。ガッシュはハッと顔を上げ、力説する。

「それじゃあ急いだほうがよさそうね!荷物を纏めて探しに出ましょ!」

青髪の少女アレンビーは、そう言うなり各自の荷物をチャッチャと纏め始める。

「ガッシュは、私の背に乗って。ポルヴォーラってのは、頭の上でいいよね。ブリは……尻尾掴んで持っていけばいいか、
 いざとなったらリボンの代わりとまでは行かなくても、鈍器くらいにはなるだろうし」

あっという間に荷物は片付き、出発の準備が整った。ガッシュを背に乗せ、ポルヴォーラを頭に載せて、ブリを右手に、
火の灯ったカンテラを左手に付かんだアレンビーは、そのまま走り出すと、豪華客船の最上甲板へ、あっという間に
たどり着いき、そこからそのまま陸地目掛けて飛び降りた。

84:名無しさん@お腹いっぱい。
07/09/25 04:07:25 GvHQaTFw
 

85: ◆Yf4GQL3Gk6
07/09/25 04:08:31 cGCfh01Z
「おーい!あんたどうしてこっちこないんだよー?」

初対面時はあれほど引っ付いてきたのに、ガッシュとの合流直後から常に一定の距離を保ち、一向に近づいて来ようと
しないカラスに、高く飛び上がったままアレンビーは問いかけたが、

「アレンビー!オレはいつでも遠くからお前のことを見守っているよぉーん!」

カアスから返ってきた返事は、これだけ。


「可愛いけど……バカな女」

これが、現時点におけるキールの認識するアレンビー像であった。



【E-3/豪華客船最上甲板上空5m/1日目/深夜】

【機動武闘伝Gガンダム@アレンビー・ビアズリー】
[状態]:健康
[装備]:背中にガッシュ、頭にポルヴォーラ、右手にブリ、左手にランタン
[道具]:支給品一式、ブリ@金色のガッシュベル!!(鮮度:生きてる)
     爆弾生物ポルヴォーラ@王ドロボウJING
     不明支給品1~3(本人確認済み、少なくともブリよりリーチの長い近接武器は入っていない)
[思考]
基本思考:螺旋王にドモンとダブルゴッドフィンガー!
1:高嶺清麿を最優先で捜索!
2:ドモン及びジンを捜索!
3:悪いヤツにはビームブリをブチかます!
4:強い人が居たら、ファイトしてみたいと心の片隅では思ってたり……

[備考]
※いきなりキールに口説かれてから今までノンストップなので、名簿の確認はまだ。
※シュバルツと東方不敗は死人と認識。
※キール、ガッシュと情報交換済み


【キール@王ドロボウJING】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:支給品一式、ジンの仕込みナイフ@王ドロボウJING
[思考]
基本思考:とりあえず、さっさと会場から逃げ出す
1:仕方ないので高嶺清麿を探してやる
2:アレンビーと二人でウエディングブリに入刀したい
3:ジンも探さしてやるか
4:ポルヴォーラには近寄りたくないけど、アレンビーが襲われれば駆けつける
5:他にも女性が居たら口説くつもり、野郎には興味なし

[備考]
※いきなりアレンビーを口説いてから今までノンストップなので、名簿の確認はまだ。
※アレンビー、ガッシュと情報交換済み

86:名無しさん@お腹いっぱい。
07/09/25 04:09:06 0cQldrsZ


87:Lie!Lie!Lie! ◆hT7zRmFpyY
07/09/25 04:10:18 kAm7og1W
『警告します。禁止区域に抵触しています。
あと30秒以内に爆破します』

無機質な声が響き渡る、それと平行して放送の声が聞こえる。

「圭一君!」
「レナ、逃げるぞ!」
『―えられた!、 これもひと・・・』

そういうが早く、俺はレナの手を掴み、正反対の方向に向かって一気に走り出す。
その首輪を見ると、首輪のランプが赤緑に点滅している。
放送は今なお続くが、そんな話に耳を傾けている暇は無い。

チクショウ、警告だけしてそのまま爆殺ってか!ありえない、ありえないんだ絶対にッ!
あの屑野郎がこんなことで自分の楽しみを放棄したりはしない、だから絶対に助かるッ!
信じろ、信じるんだ圭一!自分を信じろッ!

『―7時より A-4・・・』

程なくして自分の首の点滅が消え、俺はその場にへたり込む。
助かった・・・。いや、今はそれ所じゃない!一番重要な点を聞き逃しちゃ絶対にマズイッ!

隣のレナをチラッと見る。レナは俺に引き吊られる形で一緒に地面に座り込むことになっていた。
レナの首輪だけが光ったりといったようなおかしいことにはなってはいなかった。
いや、今はまず放送に耳を傾けるべき・・・・・・

88:Lie!Lie!Lie! ◆hT7zRmFpyY
07/09/25 04:10:42 kAm7og1W
『・・・ワハハハ―』

その不快な声とともに、あの仮面の男の立体映像は消え去った。
よかった、みんな無事だ。そうさそうだ、そうだよな。
俺たち部活メンバーが、こんなことで脱落するわけが無い!
あの策士である魅音の奴はこんなことではうろたえる訳がねえ。
沙都子は自慢のトラップワークで飄々と生き延び、梨花ちゃんはにぱー☆と笑いながら他の誰かをファンクラブにしている。
そんな光景が、不謹慎ではあるが浮かんだ。ふいにレナから声がかかる。

「圭一君、みんな・・・みんな無事だったね。」
「ああそうさ、俺たち部活メンバーはこんなことでやられたりはしないからな。」

俺はレナの手を引いて立ち上がり、ズボンについた土を払う。
レナが不意に口を漏らす。

「でも、19人も死んでいる・・・。」
「四分の一か・・・くそっ・・・。」

まだ俺たちはこの殺し合いに巻き込まれてから誰にもあっていない。
だから19人の人間が死んだかと言われて、俺はそれを実感として感じることが出来なかった。
最初の広間には様々な人間が居たことからも、実は俺たち二人以外に誰も居ない。それは無いだろう。
たまたま隣の人間が信頼の出来る仲間だったからこそ、放送を信じないという選択肢が与えられている。
そんな幸運、いや、奇跡に感謝しなくてはいけないのだ。

89:Lie!Lie!Lie! ◆hT7zRmFpyY
07/09/25 04:10:58 kAm7og1W
奇跡、そう、奇跡なんだ。俺たちは出会いも奇跡なら、経過も奇跡だった。
奇跡は間違いなく起きている。それは証明されたんだ。

「なあ、レナ」
「何?圭一君」
「やっぱり、俺たちはツイてる。いや、奇跡はちゃんと起きてたんだ。」
「ただの小学生や中学生の集まりに過ぎないはずの私たち部活メンバーが・・・」
「誰一人欠けることなく残っている。だから俺たち部活メンバーは、絶対にこの悪魔の脚本を打ち破る。」
「圭一君・・・・・・」

レナが相槌を打つ形になる。俺はそのまま話を続ける。

「だから、仲間を探そう、みんなだけじゃない。この馬鹿げた殺し合いを止めさせたいと願う人はきっと居る。
 俺たち部活メンバー、そして他の誰かを信じあおう。仲間と一緒にこの惨劇を絶対に止めよう」
「うん、圭一君。レナも、レナも圭一君と一緒に頑張るから・・・」
「さあ、仲間を探そう。信頼しあえる、仲間を探しに行こう。」

レナの手を取り、俺は歩き出す。
ん・・・ちょっと待て圭一、何か忘れてないか・・・・・・
ああっ!放送をメモするのを忘れた!
俺は数歩歩き出した足を止め、レナの方向に情けない顔で向き直る。
レナが疑問符を浮かべたような表情で声をかけてくる。

90:Flying the Sky ◆Yf4GQL3Gk6
07/09/25 04:11:03 cGCfh01Z
【ガッシュ・ベル@金色のガッシュベル!!】
[状態]:健康、おでこに少々擦り傷
[装備]:赤い魔本@金色のガッシュベル!!
[道具]:支給品一式、ウォンのチョコ詰め合わせ@機動武闘伝Gガンダム
[思考]
基本思考:螺旋王を見つけ出してバオウ・ザケルガ!
1:なんとしてでも高嶺清麿と再開する
2:ジンとドモンを探す
3:ブリ喰いたい

[備考]
※色々あったので名簿の確認はまだ。
※魔本が清麿以外にも読める可能性は全く考えていない
※キール、アレンビーと情報交換済み

91:Lie!Lie!Lie! ◆hT7zRmFpyY
07/09/25 04:11:14 kAm7og1W
「圭一君、どうしたの?」
「すまんレナ、放送の内容をすっかり忘れてしまった。教えてくれないだろうか」

レナの表情が変わる。あの表情はまさか・・・

「放送を忘れちゃったうっかりやの圭一君かぁいいーーーー、おっ持ち帰りぃぃぃぃぃ」
「だあああああ、レナ待て!、今はそれ所じゃないだろうがああああ」

レナが緩みきった表情で思いっきりじゃれてくる。というか首が絞まってるって、ギブギブギブだから!


・・・レナに散々弄り倒されながらも、俺はなんとかレナを落ち着かせるという任務を成功させる。
抜け目の無いレナは俺がくだらない妄想をしている最中にきちんと放送をメモしてたらしい。
おかげで禁止エリアに突入して、またドカンの危機を受けることは無いのだ。
そう、俺の横には信頼できる仲間が居るし、これから向かう先には人が居て、信頼しあえる仲間になる。
そんな根拠の無い妄想なら、俺は信じることが出来た。奇跡の存在を確かめることが出来たからこそだ。



窓の外にあの変態仮面の顔が映る。とともに放送が始まった。
やかましい声が耳をつんさき、ようやく禁止エリア情報を伝えはじめる。
俺は取り出しておいた地図を取り出し、情報をメモする。
苛立ちすら覚えるその声とともに、死亡者の名をメモするべく名簿を取り出す。

92:Lie!Lie!Lie! ◆hT7zRmFpyY
07/09/25 04:11:41 kAm7og1W
「圭一君、どうしたの?」
「すまんレナ、放送の内容をすっかり忘れてしまった。教えてくれないだろうか」

レナの表情が変わる。あの表情はまさか・・・

「放送を忘れちゃったうっかりやの圭一君かぁいいーーーー、おっ持ち帰りぃぃぃぃぃ」
「だあああああ、レナ待て!、今はそれ所じゃないだろうがああああ」

レナが緩みきった表情で思いっきりじゃれてくる。というか首が絞まってるって、ギブギブギブだから!


・・・レナに散々弄り倒されながらも、俺はなんとかレナを落ち着かせるという任務を成功させる。
抜け目の無いレナは俺がくだらない妄想をしている最中にきちんと放送をメモしてたらしい。
おかげで禁止エリアに突入して、またドカンの危機を受けることは無いのだ。
そう、俺の横には信頼できる仲間が居るし、これから向かう先には人が居て、信頼しあえる仲間になる。
そんな根拠の無い妄想なら、俺は信じることが出来た。奇跡の存在を確かめることが出来たからこそだ。



窓の外にあの変態仮面の顔が映る。とともに放送が始まった。
やかましい声が耳をつんさき、ようやく禁止エリア情報を伝えはじめる。
俺は取り出しておいた地図を取り出し、情報をメモする。
苛立ちすら覚えるその声とともに、死亡者の名をメモするべく名簿を取り出す。

93:Lie!Lie!Lie! ◆hT7zRmFpyY
07/09/25 04:11:57 kAm7og1W
―俺は開いた口が塞がらなかった。タチの悪い冗談だろ?

タバコは咥えていないはずなのに、ポロっと落ちた気がした。

銭型のとっつあんに、五ェ衛門。あの殺しても死ななそうな二人が死んだって・・・・・・?
放送が嘘であることはあの変態仮面の性格からしてありえないだろう。
だが、ありえないはずの二人の死、これは一体どういうことだ・・・・・・。
不覚にもありえない二人の死から、そんな都合のいい考えをしてしまった自分が情けない。


涙は出ない、流さない、流せない。
それが次元大介という男だから、悲しむ暇なんて許されないのだ。

俺は帽子を深く被り直し、しばしの間黙祷を捧げる。
―とっつぁん、まさかあんたが死ぬとは思わなかったぜ。化けて出てきたりするなよ。
―五ェ衛門、毎度毎度女に騙されてたけど、また騙されて殺されたなんて言うなよ。
―悪いなおまえら、俺にはまだまだやることがあってな・・・・・・、後でゆっくり頼むぜ。

・・・それから少しして、隣の男に話しかける。

94:Lie!Lie!Lie! ◆hT7zRmFpyY
07/09/25 04:12:14 kAm7og1W
「なあ、ソロモン」
「なんでしょうか?次元」
「予定変更だ、探し人が増えた。」
「どうしたんですか急に?・・・・・・ああ。」
「ま、そういうことだ。手の掛かる相棒が気になっちまってよ」

隣の男は変わることなく微笑を浮かべ、無表情な人形を抱っこし続けている。
本当に食えない男だが、少なくとも背中から刺されるといった事態にはならなそうだった。

「本当は信頼できない奴とは行動したくない、と言いたいところだが・・・・・」
「あなたのお友達が死んでしまったから、・・・ですかね。」
「そういうことだ。ま、慣れない武器だとどうなるか分からなくなったからな。」

と言って、俺は手元のカスタムオートを見せる。

「ちょっと俺には手の余る代物でな。」
「これはこれは、先ほどもお目にかかりましたが本当に常識外れなサイズですね」
「人間じゃないお前さんなら、問題ないんじゃないか?」
「さあ、僕はよくわかりませんね」
「ま、そういうわけでよろしく頼むぜ。」
「改めてよろしくお願いします。」

先ほどのやり取りから、成り行きでお互い情報交換は済ませていた。
ソロモンが手を伸ばしてきたからしょうがなく握手してやったが(その後は蒼星石という人形ともすることになった。)
完璧な信頼は置けないとはいえ、これからは一緒に協力する。だからこそこっちから手を伸ばすことにしてみた。

95:Lie!Lie!Lie! ◆hT7zRmFpyY
07/09/25 04:12:42 kAm7og1W
「さて、じゃあ行きましょうか次元」
「おう」

この古びた高校の探索は既に済ませており、ここには誰も居ないことは確かめた。
探索の途中にソロモンが拡声器を拾っていったほかに、役に立ちそうなものはなかった。
拡声器もこの殺し合いで何に役立つのか疑問だが、ソロモンの奴があるに越したことは無い。
とかなんとかで持っていくことになったっけな・・・・・・。
そんな調子でギシギシと床のなるこの高校の階段を下りていると、ふいにソロモンの奴が声を出す。

「おや、あそこに誰か人影が見えますね。」
「どれどれ・・・」

仕事柄目には自信がある俺だが、あの樹々が生い茂る山を見て人を発見できるほどじゃない。
ソロモンは自分からペラペラと喋ってくれた身の上話は、どうやら嘘って訳じゃなさそうだな。

「彼らは残念ながら小夜のようではありませんでしたが、何か知っているかもしれませんからね。」
「じゃあ、そいつらとうまく接触できるように動くとするか」
「ええ、そうしましょう。」

ソロモンはやはりというか小夜に入れ込んでいるらしく、ちょいとつついてやったら熱く反論してたっけな。
女の話は相棒の件からして面白くないものだが、ソロモンにとって音無小夜は相棒以上にお熱な女らしい。
ま、言って聞かないなら忠告してやる義理は無いなんて考えつつ、そういうわけで行動開始することに

96:Lie!Lie!Lie! ◆hT7zRmFpyY
07/09/25 04:12:56 kAm7og1W
私は圭一君と談笑しながら、目の前にそびえる古びた高校へと歩いている。
圭一君はまず人のいそうな施設に向かってみようと言い、私はそれに従うことにした。
人と接触することで情報を得るのは大事なことだ。今のところ私たちは今まで誰とも会っていない。
だからこそ情報を得る必要がある。そうでなければこの殺し合いでうまく立ち回ることは出来ない。
だが、もう一つ私は、先ほどはかぁいいモードで誤魔化した圭一君の言葉を反芻し続けていた。

「信頼しあえる、仲間」

そう、私にとっては隣の圭一君であり、魅ぃちゃん、沙都子ちゃん、梨花ちゃんのことである。
あのゴミ山で仲間と誓い合い、圭一君が私を引っ張り上げてくれた手は今でもかぁっと熱くなるときがある。
それはあの出会いからであり、先ほども放送のときも熱くなるのを感じていた。
でも、それじゃあいけないと私は分かっている。私は幸せを蝕む敵を倒さなくてはいけない。
信頼しあえる仲間なんて、私たち以外に誰が居る?19人も人が死んだのに・・・・・・
そんな状況下で信頼しあうほど私はお人よしではない。敵になる可能性があるならば速やかに排除するべきだ。
そんな仲間は何も出来ずに敵にやられた19人の中には居るに違いないかも知れない。違いない。違いない。
でも、圭一君は信頼しようと言った。私が一番信頼している圭一君はそう言っている。
だから自分の思考に忠実になれない。迷っている。迷うのはいけないことだって知っているのに
こんな考えはきっと相談できない。だから今なおその言葉について考えをめぐらせていた。

そうこうしているうちに目の前に高校の正面にたどり着く。
圭一君があまりにも無警戒だから人が居るかどうか見たほうがいいと忠告するが、分かってる分かってると流す。
私と圭一君が校門の死角から様子を見る。・・・人の気配はしない。そういう結論を出したので、進入することにした。
校内に入ろうと思った矢先に、私の前に金髪の優男と帽子を被った髭男が出てきた。
優男は小さな人と手を繋いでいる。髭の男は銃に手をかけている。
相手は銃を持っているッ!この状況はヤバイッ!!!

97:Flying the Sky ◆Yf4GQL3Gk6
07/09/25 04:13:03 cGCfh01Z
>>82
すみません、コピペが終わったようなので早く投下しようと焦ってしまい、宣言を忘れてしまいました、ごめんなさい。

98:Lie!Lie!Lie! ◆hT7zRmFpyY
07/09/25 04:13:19 kAm7og1W
銃を避けるために移動し、戦闘態勢に入るはずだった。
だが、私達が行動に移った段階で相手は沈黙し、圭一君はこの状況下でただ鉈を構えているだけだった。


戦意が無い?と思ったが早く、圭一君が大声で叫んだ。

「聞いてくれ!俺はこの糞ッ垂れな殺し合いには乗ってねえ、信じてくれ!」

すると二人と一つの人影がこちらに向かってくる。
だが髭男が銃から手を離していないところから見て、警戒はまだ解いていないらしい。
だからこそ私もいつでも踏み込んでナイフを差し込めるように警戒を解かない。
ああ、リーチが足りない。圭一君の鉈なら・・・・・・
このコンバットナイフは鉈よりはずっと扱いやすくていい武器だが、リーチで劣るのが痛い。
この状況下ではリーチの差が少なくない優劣を生み出す。圭一君は鉈を下ろして相手を見据えている。
もうこの状況下で焦ってもどうしようもないと判断し、相手の警戒を緩めるためにこちらの警戒を少し緩めることにした。

「僕はソロモン・ゴールドスミスと申します。あなたと同じようにゲームには乗っていません。」
「ソロモンさん、俺は前原圭一って言うんだ。よろしくな」

圭一君が金髪の男と握手を交わす。圭一君は何も考えずに笑って握手をしている。
ソロモンという男は微笑を浮かべたまま、表情を殆ど変えずに握手を交わした。
程なくして髭男も挨拶をする。

「自分は次元大介ってんだ。ま、よろしくな」
「・・・・・・竜宮レナです。」

99:Lie!Lie!Lie! ◆hT7zRmFpyY
07/09/25 04:13:33 kAm7og1W
次元という男は手を出さない。私を警戒しているのかもしれない。
まあ、それは私の行動に少し問題があったことで、次元さんを攻める訳にはいかない。
圭一君と握手をしたソロモンという男は私にも手を伸ばす。

「よろしくお願いしますね、レナ」
「よろしくお願いします。」

私と握手するときは表情は微笑からよりにこやかな笑いに変化する。
それにつられる形で私は笑顔を浮かべ、握手することにした。
別に面白くもなんとも無い私を見て表情が変わるとは、一体どういうことなんだろう?
ソロモン・ゴールドスミス・・・・・・か。

握手を終えたソロモンさんがさらに口を開く。

「この子は蒼星石です。私の優秀なパートナーでして、魔法の力で動いている人形なんですよ。」

蒼星石という男の子みたいな人形はぎこちなく歩き、圭一君と私の前で握手を交わす。
・・・魔法なんて嘘みたいだ。嘘みたいか・・・・・・、何かがおかしいような・・・。

私はこのやりとりに違和感を感じつつも、彼らと情報交換を交わす。
ソロモンさんの言う小夜という探し人。そして自分自身のこと
次元さんが言う青い狸とあの仮面の男のこと、次元さんの仲間のこと
あのルパンの三代目だとか、翼手の存在、青い狸といった漫画にしかありえないような話が次々と飛び出る。
圭一君はそれに殆ど疑問なんて持たない様子で、ペラペラと私たちのことを喋っている。
圭一君はこの状況下で手持ちの情報が持つ価値についてまったく理解をしていないようで、あの地図の外のことまで話してしまった。

100:Lie!Lie!Lie! ◆hT7zRmFpyY
07/09/25 04:13:49 kAm7og1W
ソロモンさんが、蒼星石という人形について話し始めた。

「この子は私の支給品なんですが、これが蒼星石との契約の指輪です。」

そう言って指輪を見せる。やっぱり何かおかしい。違和感じゃない。

「この指輪を通じて私と蒼星石は心が通じ合っているんです。
 そして、蒼星石は彼女の姉妹である人形を探したいといっています。」

クールになれ、レナ。どこからおかしい、どこがおかしい?よく考えろ・・・・・・

「この子のほかにも、同じような人形の姉妹が居て僕達はその・・・」



「嘘だッ!!!!!!」


私は気がついた。絶対に間違いなんかじゃない。だから言ってやった。
ソロモンは少し驚いたものの、動揺している様子は無い。
しかし人形のほうはそうでない。誤魔化しきれない。動揺している・・・・・・。
だから私が気がついたことは間違っていない、それを裏付ける動きをその人形はしていた。
次元のほうはというと、疑問を浮かべた様子で私を見ていた。

「嘘だなんて酷いですね。レ・・・」
「いいや、嘘だよ。私の目は絶対に誤魔化せないッ・・・」

言ってやる、私は相手に主導権を与えないように続ける。

「どうして嘘をついてないなんて嘘をつくのかな?かな?」
「だから嘘では・・・」
「嘘を付くんじゃないッ!!!!」

101:Lie!Lie!Lie! ◆hT7zRmFpyY
07/09/25 04:14:37 kAm7og1W
相手に弁解の余地を与えない、そのまま続ける。

「レナはちゃーんと知ってるんだよ。名簿あったよね、名前が・・・」
「蒼星石、ってね!!!!」

私があの放送の内容をメモしているとき、名簿の中でひときわ難しい漢字が並んでいる下りが確かに存在した。
ちょっと読むのに苦労したが、あの中には蒼星石という名前が存在したはず。いや、存在している。
あの動揺こそが証拠である。
私は明確な証拠であるはずの、ここに居るならかならずあるはずのアレを確認する。
リボンを引っ張るとすぐ取れた。私の考えの通りにリボンの下から、首輪が現れた。


「これは何なのかな?かな?」
「・・・・・・おいソロモン、こいつぁどういうことだ?説明してもらおうか。」

証拠を見せ付ける、次元は少なくない動揺をしているようだ。圭一君はまだ間抜け面を浮かべている。
ソロモンのほうはというと、蒼星石とともに謝罪をし、これまでの経緯を説明し始めた。
次元大介との接触時のほか、他の参加者とうまく交渉をするためであり、信頼できるものには説明する予定だった。
そして、そうでない参加者を場合によっては・・・殺す。たしかに筋は通っている。
だが、それは私たちも交渉の余地が無いなら殺す。そういうことを意味している。
私は今殺し合いに乗ってないからよかったものの、ソロモンと蒼星石は私の『敵』になるかもしれなかったのだ。

「こんなことをしている人は、レナ信用できないかな?かな?」
「ごめんなさい・・・。ソロモンさんをそんなに攻めないで、協力した僕のほうこそ悪いんだ。」
「そういう話じゃないかな?かな?ソロモンと蒼星石はレナ達を騙して殺そうとしてたかもしれないんだよ。」

そう言うが私はコンバットナイフを構えて戦闘態勢を取る。そして目の前のソロモン達も・・・

「みんな、やめろ!やめてくれ・・・
 なんでこんなことするんだよ!俺達は殺し合いをするんじゃねえ!惨劇を止めるために居るんだろうが!」

102:Lie!Lie!Lie! ◆hT7zRmFpyY
07/09/25 04:14:55 kAm7og1W
さっきまで馬鹿みたいに呆けてた圭一君が私達の前で盾になる。ああ・・・邪魔だ邪魔だ。
圭一君が私のほうに向き直る。

「レナ、俺は言った!信頼できる仲間を探そうって
 レナはソロモンさんを信用できないかもしれない。でも俺はちゃんと謝罪して説明してくれたソロモンさんは信用できるッ!
 この人は殺し合いなんてしない!俺がそれを保証するッ!!!
 だからレナは、俺のことだけでいいから信じてくれ!こんなことはもう止めてくれ!
 誰かを疑うのはもう沢山なんだよおおおおおおおッ!!!!!!!」

勝手なことを言うだけ言って、圭一君は続ける。

「聞いてくれソロモンさん、次元さん、蒼星石。レナはただ嘘が許せないだけなんだ。
 決してあんた達と敵対したくてこんなことを言った訳じゃない、信じてくれ・・・。
 もしこれであんた達が怒ったなら俺はいくらでも謝る。
 だから、だからそれで気が済むなら許してくれッ!頼むッ!!!!」

沈黙は一瞬、私は・・・・・・大好きな圭一君に従うことにした。

「ごめんなさい、ソロモンさん、次元さん、蒼星石ちゃん。」

私が戦闘態勢を解くと同じく、ソロモン達も戦闘態勢を解いた。
それから私達は許しあい、疑わない、嘘は付かないということ誓うことにした。

飛んだ茶番だ。

でも圭一君の真剣な表情の手前、無碍には出来ない。だから私は圭一君の望みに従う。
次元さんはそういうのが嫌いらしく、後ろのほうで苦笑を浮かべてぶつくさすまんね、とか言っていた。
次元さんは正しい。圭一君がどれだけ弁解しようとこの男、ソロモン・ゴールドスミスのことは信頼なんか出来ない。
協力した蒼星石は嘘は付いてる様子は無いが、この男との協力関係から信頼できる要素は薄い。
そういう意味では次元さんだって信頼できない。しかし信頼できないことは信頼できる。それだけは確かだ。

103:Lie!Lie!Lie! ◆hT7zRmFpyY
07/09/25 04:15:12 kAm7og1W
その後、信頼の証として支給品を含めた手の内を全て見せあうことにする。圭一君が支給品の食料を取り出す。
そういえばお腹がすかないかという圭一君の発言から、みんなで朝食を取ろうということになった。
そして私達は落ち着いて食事が出来る教室に移動し、談笑しながら食事を取る。
圭一君はまるで雛身沢に帰ってきたみたいに面白おかしく場を盛り上げて楽しく食事をしていた。
何も気が付いてない圭一君だけが

それから私達は今後のことについて話し合い、人が集まりそうな市街地に向かうことに決めた。
この辺りには人が居ないのは私たち自身の情報交換から明らかであり、私達5人の知り合いが向かいそうな施設。
ここから近い病院、図書館、映画館を探索することに決めた。

「それじゃあ、早速行こうぜ。善は急げだ!」

圭一君はやはり屈託の無い笑いでみなを引っ張るように我先にと歩き出す。
本当に圭一君は分かってない。ああもう・・・・・・イライラするなぁ・・・。

「待って、圭一君。提案があるの」
「ん?レナ、なんだ?」

私は圭一君に鉈とナイフを交換してくれと頼んだ。
かぁいいものがあったらぜひ自分の手で掘り出したい。そんな風に誤魔化して交換した。
信頼できるものが少ない今の状況下では、せめて武器ぐらいは信頼の置ける鉈にしたい。
圭一君はナイフを片手に、意気揚々と進み、遅れて蒼星石が歩き出す。
それ意外は、・・・・・・動かない。

「どうしました?レナさん」
「ソロモンさん、私は後ろから圭一君のことを見て居たいから、先に行ってくれませんか?」
「・・・一つ言っておきたいことがあります。」
「何なのかな?かな?」
「僕のことを疑うのは構いません。しかし小夜に何かするつもりなら、容赦はしませんよ。」
「それなら私だって同じ、圭一君や私に何かするなら容赦しない。」

104:Lie!Lie!Lie! ◆hT7zRmFpyY
07/09/25 04:15:28 kAm7og1W
真剣な表情を見せたソロモンはやり取りを終え、ヤレヤレと言った様子で歩き出す。
他にも言いたいことはあったが圭一君との約束の手前、あまり不振なやり取りは出来ない。
最後に残った次元さんにも声をかける。

「悪いな嬢ちゃん、自分も前を歩きたい気分じゃないんでな。」
「信頼できない、って言ってもいいんですよ。」
「そう言われると弱いなぁ・・・」

やり取りが終わり、私と次元さんは最後尾から互いの距離を開けて歩き出す。
これがお互いの距離、信頼できないもの同士のね



状況を確認しろ、レナ。
信用できるのは私と圭一君だけだ。
圭一君はさっきからイライラすることばかりやってるけど、私を騙そうなんて気は微塵も感じられない。
だからこそ圭一君に先頭という目を頼み、私は後方から監視する。
信頼できないのはこの三人、特にソロモン、ソロモン・ゴールドスミス、そして蒼星石。
特にこの二人は要注意であると頭に叩き込む、手は割れたとはいえいつでも裏切ることは出来る。
先ほどのやり取りから、ソロモンが何を考えているのかよーく分かった。

105:Lie!Lie!Lie! ◆hT7zRmFpyY
07/09/25 04:15:44 kAm7og1W
音無小夜、ソロモンの最愛の人。ソロモンの表情からも容易に存在の重要性が分かる。
ソロモンが私達を騙そうとしたことの理由が、ようやく推理可能になる。
音無小夜を生かす為に邪魔な存在を騙し討ちで排除し、優勝する。自然な考えだ。
しかしこの考えでは、蒼星石の存在がキーとなっている。
ソロモンが蒼星石を騙しているのか?それとも蒼星石とは互いに守るべきものの為に協力している?
蒼星石との情報交換から考えるに後者の可能性が高い、
だが、いずれにしろ決定的なキーを得る機会は無い。今この状況下でこちらから動くことは難しいだろう。
圭一君を裏切れば、それこそ私がみんなから攻められてもおかしくない。それでは駄目なのだ。

私がこれからすべきことは裏切りの証拠を押さえ、速やかに敵となった存在を排除する。
本当は次元さんも信頼が置けないのだが、次元さんも胸中は実のところ一緒のようである。
ソロモン達が信用できない。そういう意味で私達の利害は一致している。この線だけは部分的に信頼できるといっていいだろう。
本当は次元さんの後ろを歩きたかったが、この状況下でこれ以上の贅沢は望めない。
しばらくは、相手の出方を見続けるしかないだろう。私が気を抜いてはいけないのだ。
クールになれ、クールになるんだ竜宮レナ。もう二度と"い"やなことは起こさせない。

106:Lie!Lie!Lie! ◆hT7zRmFpyY
07/09/25 04:16:06 kAm7og1W
状況の確認、行動方針の確認を私は終えた。
やはり、圭一君は甘い。この状況下がどれだけ危機的か分かっていない。
情報交換をして分かったことから、私達のような普通の中学生では漫画の世界に出てくるようなやつらにはかなわない。
圭一君がべらべら喋ってしまったから、もうハッタリなんて使えるわけが無い。
ソロモンが嘘を付いているかもしれないが、他に違和感は無かった。
完全に信頼できるわけじゃないが、あの青狸の存在からして、普通では及ばないような存在が居ることは間違いない。
それを考慮に入れれば、ソロモンは強力な力を持ち、もしかしたら私達が束になってもかなわないかもしれない。
ああ、危機的だ危機的だ。考えること、やることはまだまだ沢山ある。
巨大な力を持つソロモン、蒼星石達ローゼンメイデン
どうやって尻尾を掴む・・・敵はどこだ、敵はどこだ、敵はどこだ・・・・・・。
ああ疲れる、圭一君は本当に何も考えてなくて本当に気楽そうだ。
そんな私のことを気遣ってくれない圭一君の様子が、私のイライラに拍車をかけていた。

鉈を掴む手に力が篭る。見てろ・・・私は絶対にお前達なんかに屈しない。
圭一君に手を出してみろ・・・・・・。おまえたちがどんなバケモノだろうと、一撃で叩き割ってやる。
一撃で駄目なら、*ぬまでバラバラにしてやる・・・・・・。
圭一君が教えてくれたオヤシロ様の奇跡は、私が絶対に守るんだから。



107:名無しさん@お腹いっぱい。
07/09/25 04:23:02 6sUjt+sz


108:「ゼロのルイズ」(前編) ◆K1z/mB9tDA
07/09/25 06:12:59 lj2yLf7+
「……ミス・ヴァリエール! ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール!」

 教員の怒鳴り声に刺激され、ルイズは机に突っ伏していたその身をがばっと引き起こした。
 涎の垂れた口元を拭おうともせず、ぼやけた頭を振って周囲の光景を確認する。
 そこは、無数の椅子や机と黒板の置かれた教室内。タバサやキュルケ、ギーシュやモンモランシーといった級友の姿が窺える。
 ……どうやら、こともあろうに授業中に居眠りをしてしまったらしい。
 恥ずかしさに口を噤みながら、ルイズはクラスメイトたちの笑い声を浴びせられて顔を赤面させる。
 その笑いの渦中に、やたらと聞き慣れた男の声が混じっていた。
 異変を感じ取るように訝しげな顔で横を向くと、隣の席には黒い短髪に平凡な様相を構えた、平民の少年がいた。

「ルイズは相変わらずドジだな。迂闊者っていうかさ」
「な、なんでアンタがここにいるのよ!」
「いちゃ悪いかよ。俺はルイズの使い魔だぞ」
「いちゃ悪いのよ! アンタは私の使い魔で平民! ここは貴族の学び舎よ! 犬は外で洗濯でもしてなさいよ!」

 晒してしまった失態からくる恥ずかしさを怒りに変えて、まるでその少年が全ての元凶であるかのようにルイズは非難を浴びせた。
 少年はちぇっ、と言い捨て、素直に教室を退出していく。
 そうなのだ。使い魔は主人の命令には逆らえない。
 召喚された時点でその主従関係は絶対であり、例外が生まれることはないのだ。

「だから、アンタはこの私に絶対服従でいなければいけないの! 分かった!?」
「はいはい分かりましたよ御主人様。俺は平民であって使い魔、ルイズは貴族であって主人。近いようで遠い関係だよなコレ」

 場所を寄宿舎の外に移し、少年は洗濯をしながらあーあと空に向けて溜め息を吐く。
 その横顔を見て、ルイズは自分の頬が薄紅色に染まっていることも気づかずこう発言した。

「で、でもまぁアンタも使い魔にしちゃ結構やるほうだし、そんなに遠くはないんじゃないかしら」
「? 遠くないってなにが?」
「だ、だからその…………カ、カ、カカカカンケイ…………とか」
「カンケリ? ルイズ、カンケリがしたいのか? つーかこの世界にもカンケリなんて遊びあるんだ……」
「な、なななななななななな違うわよ耳腐ってんじゃないのこのバカ犬!」
「イタっ、イタタタタ!? 耳引っ張るなよ!」

109:「ゼロのルイズ」(前編) ◆K1z/mB9tDA
07/09/25 06:13:21 lj2yLf7+
 茹蛸みたいに顔を火照らせて、ルイズは少年の耳を力いっぱい引っ張った。
 ……何故だろう。この少年の前に立つといつもこうだ。
 言いたいことが言えなくて、発言を失敗するたびに胸が締め付けられるように苦しくなる。
 病のようで怪我のようで、そのどちらでもなくて。
 ルイズは純真な瞳に笑う少年の素顔を映し、正体の掴めぬ感情に胸を焦がすのだった。

「……ったく、こんなガサツで乱暴な性格だから、みんなに『ゼロのルイズ』なんて呼ばれるんだよ。少しはシエスタとかを見習えよな」
「そ、それは昔の話じゃない! っていうかなんでそこでシエスタの名前が出てくるのよ!」
「え? い、いやぁ~なんでだろうなぁ……ハハハ」

 冷めた笑いではぐらかす少年の胸ぐらを揺さぶりながら、ルイズはまた怒り出す。さっきから顔を真っ赤にさせっぱなしだった。
 ……少しは素直にならないとね。
 表の思考ではなく、本能でルイズはそう思った。
 このまま意地を張ってばかりでは、いつかきっと後悔してしまう……そんな予感を本能が感じ取っていたから。

「……もう、ゼロのルイズなんかじゃない」
「分かってるよ。ルイズはもう立派な―」
「そうじゃない! そうじゃなくて……その……私には…………才人、がいるから」
「へ? オレ?」

 おどけた表情で言葉の意味を探る少年に、ルイズは依然赤面したまま、思いのたけをぶつける。

「……私には、『才人』がいるから! だから……だからもう『ゼロ』じゃない。才人が、才人さえいれば私は……」

 意を決した反動で涙まで流す健気な少女に、少年―平賀才人は優しく微笑み、その小さな頭にそっと手を置いた。


 ◇ ◇ ◇

110:「ゼロのルイズ」(前編) ◆K1z/mB9tDA
07/09/25 06:13:40 lj2yLf7+
 今宵の城は、漆黒ではなく真紅に染め上がることだろう。
 爆砕か、炎上か、血染か、それとも―真紅を超越した『虚無』か。

「我が名はルイズ! ルイズ・ド・ラ・ヴァリエール!」

 杖である戦鎚を振り、唱える。

「宇宙の果てのどこかにいる私のしもべよ!」

 サモンサーヴァントだけは自信があった。

「神聖で、美しく、そして強力な使い魔よ!」

 あの召喚の儀式の日が、全ての始まりだった。

「私は心より求め、訴えるわ!」

 ルイズと、才人の。

「我が導きに、答えなさい!」

 運命の出会い―。




『…………まずは悲しい知らせから―!』

 バトルロワイアル会場の中心地に位置するホテルという名の巨城。
 その最上階にて、ルイズはグラーフアイゼンを振るい、破壊の力を行使する。
 爆音が木霊し、壁が、天井が、床が崩壊。ほぼ同時に始まったギガゾンビの定時放送すら、その轟音で掻き消した。
 横に、縦に、斜めに自由自在に振り回し、まるでウサ晴らしをするようにありったけの魔力をぶち撒ける。
 これまでの激戦で損傷が進んでいた巨城はすぐにその身を揺るがし、ボロボロと破片を零していく。

『―涼子、前原圭一、竜宮レナ、古手―』

111:「ゼロのルイズ」(前編) ◆K1z/mB9tDA
07/09/25 06:13:58 lj2yLf7+
 放送は既に、ルイズの耳には入っていなかった。
 ギガゾンビの声を掻き消すほどの音も原因の一つだが、ルイズにはもはや、誰が死のうがどこが禁止エリアになろうがどうでも良かったのだ。
 ホテルを壊して、目に入った人間は殺して、グリフィスの下へ、才人と一緒に帰る。
 それだけ。たったそれだけで、才人は帰ってくる。
 誰にも邪魔はさせない。朝倉涼子も問題じゃない。
 才人と一緒にいれば、なんだって出来る。
 だって才人は、ルイズが召喚した世界でたった一人の平民の使い魔だから。
 神聖で、美しく、そして強力なゼロの使い魔だから。

「私はもう―ゼロじゃない!」

 懐に忍ばせておいた才人の眼球を取り出し、屋外へと飛翔する。
 天高く舞い上がったルイズは手の平に才人を転がし、同じ視点で崩壊していくホテルを見下ろした。
 未だ鳴り止まぬ轟音は、依然として破壊が続いている象徴でもある。
 スプーンで半分だけ掬ったアイスのように、ホテルは中途半端な半壊状態を迎えたところで鳴動を止めた。
 このコンクリートの巨城は、ルイズにとっては砂の城だ。
 そう形容するくらいに脆く、崩れやすく、壊しやすい。
 才人と再び出会うための、単なる糧に過ぎない。

「見て、才人。お城が崩れていくわ」

 地上から舞い上がってくる突風を受けて、ルイズの桃色の髪が揺れた。
 生気を宿さない眼球は何も言わず、ただ死んだ瞳に崩壊寸前の巨城を映す。

「召喚魔法は一生で一度きりのもの。使い魔は生涯添い遂げるべきパートナー。私にはもう、才人しかいない」

 ルイズが召喚した使い魔は、人間だった。
 ルイズが召喚した使い魔は、平民だった。
 ルイズが召喚した使い魔は、才人だった。

「もう一度やり直そう、才人。あの召喚の儀式から、私たちの出会いから―」

 グリフィスはそれを叶えてくれる。
 壊して、殺して、ぶっ壊して、皆殺しにすれば、才人は戻ってくる。
 ルイズはグリフィスの虚言に一欠けらの疑念も持たず、ただ単純に―すごい、と思った。

「帰ろう、才人」

112:「ゼロのルイズ」(前編) ◆K1z/mB9tDA
07/09/25 06:14:16 lj2yLf7+
 ―そこにはいないはずの才人と交わす、二度目のファーストキス。
 突き出した唇は空を捉え、ただ唯一といえる彼の象徴は、何も返してはくれなかった。
 今は、まだ。
 でも、これが終われば、きっと。
 グラーフアイゼンを頭上高く振り上げ、彼女の内に眠る潜在魔力を解放させる。
 生み出された特大の鉄球の数は、一発。その一発に、ルイズの魔法の特性である『虚無』の力を加える。

「これが、決まれば!」

 鉄球を狙い、グラーフアイゼンを当てんと振り被る。
 虚無により強化された、本来の使い手であるヴィータのものを越えるシュワルベフリーゲン。
 命中すれば半壊状態のところで食い留まったホテルも爆発と共に弾け、辺り一帯は焦土と化すことだろう。
 そこに、ルイズ以外の生存者はいない。

「―っぉわれろおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

 呂律の回らない口ぶりで叫び、ルイズはグラーフアイゼンを振り下ろした。

「やめなさあぁぁぁぁぁぁいっ!!」
「―ッ!?」

 鉄槌が鉄球を穿つ―その直前だった。
 ルイズの横合いから飛び込んできた黒い斧が、振り下ろされたグラーフアイゼンを弾き、同時に鉄球を空高く打ち上げた。
 ホテルを狙うはずだったシュワルベフリーゲンは空中で花火のように霧散し、黒味がかってきた空を茜色に染める。
 バランスを崩したルイズはなんとか体制を立て直し、謎の乱入者へと矢庭にハンマーを向けた。

 その場にいたのは、ルイズと同様に魔法の杖を持った、飛翔する女の子。
 白を基調としたロングスカートは、平凡な小学三年生の女子児童が思い描く、典型的な魔法少女の兵装。
 胸元で結ばれた大き目のリボンが際立ち、またそのリボンのイメージとは対極に位置する厳格な瞳を、ルイズに向ける。

「なによ……なんなのよアンタ!」

 歳相応とはいえない殺気の込めれらた睨みを利かせ、ルイズは少女を牽制する。
 だが少女はそれをものともせず、怯むでもたじろぐでもなく真っ向から視線を合わせていった。

 純白の清楚なバリアジャケットに、使役するは親友が愛用していたインテリジェントデバイス。
 闇を貫く雷神の槍、夜を切り裂く閃光の戦斧―その名は、バルディッシュ・アサルト。
 そして使い手は、『魔砲少女』、『管理局の白い悪魔』など、呼び名を悪名の如く周囲に認知させ、若輩を意識させないほどの実力を持った一流の魔導師。

「高町なのはとバルディッシュ・アサルト―これ以上の破壊は見過ごせない!」

 杖とは形容しがたい戦斧を構え、飛翔する少女は高らかにその名を宣言した。

 ―狂った。邪魔が入って、何もかもが狂ってしまった。
 直感でなのはを外敵と捉えたルイズは、奥歯を噛み締め、憤怒の思いを逆巻く風に乗せた。
 あと少し、あと少しで終わったのに。いつも、いいところでいつもいつもいつも、邪魔が入る。

113:「ゼロのルイズ」(前編) ◆K1z/mB9tDA
07/09/25 06:14:38 lj2yLf7+
「どうしてホテルを破壊しようとするの? それに、なんであなたがヴィータちゃんのグラーフアイゼンを……」
「……キュルケにシエスタに、アンリエッタにタバサ……こっちに来てからは朝倉涼子! みんな、みんな才人と私の邪魔をする!」

 慟哭を鳴らし、ルイズが雄叫びを上げた。
 子供とも女とも思えない、獣性を帯びた咆哮はなのはを唖然とさせ、身を引き締めさせた。
 同時に、虚無の力を更に行使する。
 グラーフアイゼンにこれでもかというくらい魔力を込め、その形状を変えていった。
 ハンマーヘッドの片方に推進剤噴射口が現れ、もう片方にはスパイクが取り付けられる。
 通常のハンマーフォルムに比べ、近接戦闘に特化した変形形態ラケーテンフォルム。
『鉄の伯爵』と呼ばしめる戦鎚型アームドデバイス、グラーフアイゼンのもう一つの姿である。

「殺して、壊すだけで終わるの! だから、だから……だから大人しく殺されなさいよぉぉぉぉぉ!!!」
『Raketenhammer』

 貴族の優雅さなど欠片も見せず、ルイズは感情のままになのはへと突進した。
 ロケット噴射による推進力がルイズの速度を加速させ、回転。遠心力も味方に付け、グルグルと円盤のように回りながら大気を巻き込む。
 なのはは咄嗟に防壁を張るが、グラーフアイゼンのラケーテンハンマーは基礎的なプロテクションなどで防げるものではない。

(すごい勢い……! ひょっとしたら、ヴィータちゃん以上―!?)

 絶大な威力を防ぐには敵わず、魔力防壁はガラスのように砕け、飛び散った。
 破壊力は強大でもそのコントロールはまだ不完全なのか、空中でグルグル回り続けたままのルイズの隙をつき、なのはは距離を取る。

「バルディッシュ、お願い!」
『Haken Form』

 なのはの声に答えた機会音声がスイッチとなり、バルディッシュ・アサルトの形状を変えていく。
 変形前を斧と言い表すならば、この変形後のハーケンフォームはその名の通り鎌。
 グラーフアイゼンのラケーテンフォルム同様、近接戦闘に特化した直接攻撃タイプの形態である。

「うわぁあぁああああぁぁあぁあああぁぁぁあぁぁあぁぁあっぁぁ!!」

 力任せに突っ込んでくるルイズはグラーフアイゼンを使いこなしているというより、武器として利用しているだけのように思えた。
 デバイスと意思疎通を図り、共に戦略を組み立てるなのはとレイジングハートのような関係とは違う。
 グラーフアイゼン本来の使い手であるヴィータ以上にムチャクチャな攻撃方法―それを見て、なのはは再度思う。
 ヴィータは、いったいどうなってしまったのだろうか。
 主である八神はやての死亡と同時に、彼女の守護騎士であるヴィータとシグナムの二人も消滅したものだと思っていた。
 しかし先ほどのホテル倒壊と同時期に行われた放送―告げられた死亡者の中には、確かにヴィータの名前があった。
 真相が分からない。シグナムはまだこの世界に存在しているのか、ヴィータは誰かに殺されてこの世から消えたのか。
 ルイズの持つグラーフアイゼンに訊けば、何かが分かるかもしれない。が、今はまだ。
 そもそも、悲しんだり考えたりする暇はないのだ。

(ホテルには、まだみさえさんやガッツさんがいる。これ以上壊させるわけにはいかない……全力で止めてみせる!)

 なのはは向かってくるルイズと真っ向から対峙し、加速するハンマースパイクをバルディッシュの刃で受け止めた。
 圧し掛かってくる力は過去ヴィータと交戦した時と等しく、重い。
 でも、挫けたり諦めたりすることはできない。普通の少女みたいな甘えは、なのはには許されない。
 守りたいものがある。友達と、仲間の、大切な命。失うわけには、いかない!

「死ね! 死ね! 死になさいよォォォォォ!!」
「……ぜったい、ダメェー!」

 何度も何度も打ち込まれる鉄槌を、バルディッシュの一薙ぎで全て振り払った。
 どうにかしてルイズからグラーフアイゼンを奪取し、無力化しなくてはならない。
 故になのはは不得手な近接格闘戦に挑むが、使い慣れない鎌は振るうだけで疲労が溜まる。
 そのため、隙も生じやすい。

「!」

114:「ゼロのルイズ」(前編) ◆K1z/mB9tDA
07/09/25 06:15:02 lj2yLf7+
 がむしゃらに振り回され続けてきたグラーフアイゼンが不意に軌道を変え、なのはの顎下を狙ってきた。
 バルディッシュの間合いを縫うように潜り込まれた一撃は、バリアジャケットに包まれていない頭部を掠めようとしている。
 反射的に身を引いてそれを回避するが、そこからさらなる隙が生まれてしまった。
 横合いから、真っ直ぐな軌道で振るわれるグラーフアイゼン。
 バルディッシュのか細い柄がそれを防ぐが、発生した衝撃はなのはの小柄な身体を容易く吹き飛ばした。
 流星のように煌びやかに、暗闇を帯びてきた市街地へとなのはが落下する。
 受身として即席の防御魔法を展開するが、それでも落下の勢いを減少させるほどの効果しかなく、音を立ててビルの壁へと衝突した。

「―っいたた……大丈夫、バルディッシュ?」
『Yes, it is safe』
「にゃはは……やっぱり、フェイトちゃんみたいにうまくはいかないね」

 コンクリートでできた壁に激突―常人、しかも小学三年生の少女ともあれば、笑って済ませられるものではない。
 だがなのはは、普通なら大怪我のところを掠り傷程度で抑え、バルディッシュも目だった損傷はなかった。
 戦いは始まったばかり、これからが本番。泣き言を言う暇も、言うつもりも、なのはとバルディッシュにはない。

(接近戦で対応するのは不利……かといって遠距離攻撃を仕掛ければ、あの子はシュワルベフリーゲンで攻撃してくる。
 もし流れ弾が一発でもホテルに命中すれば、中にいるみさえさんたちが危ない……なら!)

 なのは立ち上がり、再び飛翔した。
 空中で待ち構えていたルイズは未だ牙を剥き出しにした状態。
 戦意を治めず、むしろ高ぶらせて、まずは目の前の邪魔者を排除しようと躍起になっていた。
 ホテルからの注意は逸れている―引き離すなら、今がチャンス。

「あとで絶対、お話は聞かせてもらうから。でも今は―」
「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 再び突進してきたルイズに対し、なのははバルディッシュで受けようとも範囲攻撃で反撃しよともせず―身を翻し、急加速で撤退した。
 頭に血が上っているルイズは逃げる敵に意識を奪われ、闘争本能のままになのはを追跡していく。
 高速で飛行する魔法少女が二人、戦地をホテルの外周へと移す。
 ―これは、序章のほんの一部。


【D-6・上空/一日目/夜】
【ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール@ゼロの使い魔】
[状態]:精神完全崩壊/グリフィスへの絶対的な忠誠/全身打撲(応急処置済み)/左手中指の爪剥離
[装備]:グラーフアイゼン(ラケーテンフォーム)(カートリッジ二つ消費)@魔法少女リリカルなのはA's
[道具]:平賀才人の眼球
[思考・状況]
 1.殺す(なのはを)
 2.壊す(ホテルを)
 3.生き返らせる(才人を)
[備考]:第三放送を聞き逃しました。

【高町なのは@魔法少女リリカルなのはA's】
[状態]:全身に軽傷(掠り傷程度)、友を守るという強い決意、やや疲労
[装備]:バルディッシュ・アサルト(ハーケンフォーム)(カートリッジ一つ消費)@魔法少女リリカルなのはA's、バリアジャケット
[道具]:グルメテーブルかけ@ドラえもん(回数制限有り:残り18品)、テキオー灯@ドラえもん、支給品一式
[思考・状況]
1:ルイズをホテルから引き離し、無力化する。
2:グラーフアイゼンを奪取し、ヴィータがどうなったかを訊く。
3:シグナムが存在しているかを確認する。
4:フェイトと合流。フェイトにバルディッシュを届けたい。
5:はやてが死んだ状況を知りたい。
6:カズマが心配。


 ◇ ◇ ◇

115:「ゼロのルイズ」(前編) ◆K1z/mB9tDA
07/09/25 06:15:28 lj2yLf7+
 破壊神が通り過ぎた跡は、それはそれは無残なものだった。
 八階建てという、高く堅牢な誇りを掲げていたホテルという名の巨城は面影もなく崩れ落ち、今や元の半分、四階フロアまでを残すのみとなっていた。
 五階から上は既に残骸として地に落ち、周囲に散らばっている。
 ガッツや野原みさえがホームとしていた三階フロアも、上の階層から雪崩れ落ちてくる天井やら何やらによって、凄惨な有様となっていた。
 壁に穴が空いているのも別段珍しくはなく、中からでも日の落ちた世界が一望できる。
 崩れゆく鳴動は止まった。だが、これで崩壊が終わったとはとても思えない。
 三階フロアの天井は現在進行形でパラパラと崩れ落ち、なおも残骸の数を増していっている。
 いつのことだったか―野原みさえは、家族の住まうマイホームがガス爆発により崩壊した時のことを思い出した。
 あれは一瞬の内に弾け飛んだ分ジリジリと迫る恐怖は感じ取れなかったが、このホテルの状況は違う。
 いつ来るかは分からないが、いつか必ず来るであろう完全倒壊の時。一秒後か、一分後か、一時間後か、考えるほどに怖くなってくる。
 関東大震災などがこんな感じだったのだろう。日頃テレビのニュースで見る被災者の方々の気持ちになり、みさえはその身を震わせた。

「ガッツ……それに、ゲインさんやキャスカさんは……?」

 身体が満足に機能するのを確認した後は、改めて周囲を見渡した。
 確認できるのは、乱雑に散りばめられた瓦礫の山々のみ。ベッドやら電話やら冷蔵庫やら、室内にあったはずのものは全て埋もれ、その姿を隠している。
 見当たらないのはホテルの備品ばかりではない。ガッツやベッドで寝ていたはずのゲインもまた、その影をどこかに潜めたままだった。
 まさか、彼等も生き埋めになってしまったのだろうか……渦巻く嫌な予感に駆り立てられ、みさえは足場の整わない残骸の上を歩く。

「あっ……痛ッ!?」

 そこでようやく、自分の足が負傷しているという事実に気づいた。
 瓦礫の破片に足を躓かせ、転倒。原因となった左足は青く膨れ上がり、今頃になって痛みを訴えかけてくる。
 どうやら軽い打撲のようだ。これしきの怪我、ホテルの負った被害状況を考えれば随分と程度が低い。
 みさえは意識を奮い立たせ、立ち上がろうと力を込める。その背後から、

「フリーズ。動くなです人間」

 土埃に塗れた人形が、銃を突きつけてきた。

「あなた……どうして!?」
「まったく、あんな大爆発が起こったっていうのにしぶとい人間ですぅ。まぁ、そのおかげで翠星石も自由になれたわけですけど」

 その人形―翠星石は、取り上げたはずの銃を構え、今にもみさえの後頭部を打ち抜かんと牽制している。

「爆発……? 爆発って……あ」

116:「ゼロのルイズ」(前編) ◆K1z/mB9tDA
07/09/25 06:15:54 lj2yLf7+
 翠星石の言葉で、みさえはようやく思い出す。
 あれはたしか六時丁度、ギガゾンビの声がしたと思った瞬間の出来事だった。
 凄まじい怒号と地震のような波に襲われ、すぐに天井が崩壊してきたのだ。
 おかげでみさえも翠星石も、放送での死者や禁止エリアの情報を聞き逃してしまった。
 しんのすけは無事なのだろうか、蒼星石は無事なのだろうか、考える暇もなく、自分の命を拾うことに精力を注がなくてはならない状況に陥る。
 結果として、二人はホテルの倒壊にあっても即死は免れた。その際翠星石は意識を回復させ、同時に強奪された銃も奪還することに成功したのだ。
 みさえは微かに振り向き、翠星石のやや後方に目を向ける。
 そこに転がっていたのは、引き裂かれ、使い物にならなくなっていた誰かの四次元デイパック。
 おそらく翠星石は、あのデイパックから零れた銃を回収したのだろう。だとすれば、あのデイパックは銃を取り上げていたガッツのものに他ならない。
 彼のデイパックがあのような無残な姿を晒しているということは、つまり―

「ガッツ……ねぇ、ガッツはどうしたのよ!」
「あんなデカ人間しらねーです。ま、大方この瓦礫の下のどこかで野垂れ死んでるんじゃないですか。翠星石には関わりのないことです。それよりも」

 翠星石は突きつけた銃口をみさえの旋毛にグリッと押し付け、覇気を込めた声で言う。

「よくも! よくも翠星石をあんな目にあわせてくれやがりましたねぇ! 人間如きにあんな仕打ちを受けるなんて屈辱ですぅ!」
「仕打ちって……あなたがトンチンカンなことを言ってるからお仕置きしただけよ! それの何がいけないわけ!?」
「あーもう! これだから知能の低い人間の相手をするのは嫌なんですぅ! 今の状況が分かっていないですか!? お前は今から翠星石に殺される運命にあるのです!!」

 癇癪を起こしたように顔を染め上がらせ、翠星石は力の限り銃の引き金を引いた。
 銃声が鳴り、黒く開いた口から殺意の弾丸が飛ぶ―が、それは狙っていたみさえの後頭部を逸れ、天井へと放たれる。
 何が起こったか理解できない翠星石は、同時に自分の身体がみさえの手によって乱暴に振り回されていることを知った。
 隙を突き、小さな人形の身体を捕縛した―このまま投げ飛ばし、抵抗するつもりか。
 翠星石は考えたが、答えはまるで見当違いであり、みさえの行動の真意も一瞬が過ぎる内に知ることとなる。

「―危ない!」

 時間差で届いたみさえの危機を知らせる声は、翠星石に事態を把握させた。
 振り回された体勢のまま、視覚でも確認する。

 翠星石とみさえの後方に、剣を振るう褐色肌の女剣士がいた。

 みさえに気を取られている間に、この女は翠星石の背後に忍び寄っていたのか―ようやく自分がとんでもない窮地にあったことを自覚した翠星石は、遅すぎる恐怖に身を震わせる。
 あと数秒遅れていたら真っ二つという状況だった。げんこつの恨みは消えないが、この時ばかりはみさえの機転に感謝せざるを得ない。
 というか、この女剣士はいったい誰だ。翠星石は一瞬考え、すぐにキャスカという名のミニ人間がいたことを思い出した。

「……スモールライトの効果が切れたのね。それにその剣も……最悪」
「うっ…………ぐぅぅぅ……」

 キャスカが握っているのは、翠星石の銃と同じくガッツが預かっていたはずのエクスカリバーだった。
 あれが彼女の手に渡っているということは、やはりあのズタズタに引き裂かれたデイパックはガッツのものなのだろう。
 だとしたら、なおさら彼の安否が気に掛かる。みさえは未だ姿の見えぬ仲間を捜したい衝動に駆られるが、どうやら眼前の女騎士はそれを見逃してはくれないようだ。

117:「ゼロのルイズ」(前編) ◆K1z/mB9tDA
07/09/25 06:17:06 lj2yLf7+
 獰猛な獣のように声を漏らし、現状が把握できていないのであろうキャスカは、混乱気味にみさえと翠星石を襲った。
 グリフィス以外は敵。これはキャスカが定めたルールのようなものであり、目に付く人間、殺せるチャンスがあれば、深く考えずに襲えという本能からくるものだった。
 女と人形のように小さな子供……戦力的に見てもなんら問題ない。右足は骨折により使い物にならなくなっていたが、腕さえ動けば十分に殺せる。
 キャスカはエクスカリバーの柄を握る力を強め、片足で跳躍してみさえに飛びかかった。
 巻き起こる剣風は、みさえのような平凡な主婦には到底回避し切れぬ代物だったが、キャスカが満身創痍なこともあってこれは難なく回避する。

「ねぇ、ちょっと落ち着いてよ! おち……落ち着きなさいってば、ねえ!」

 攻撃を回避しつつキャスカを宥めようとするみさえだったが、混乱の度合いが強いのか、彼女は剣を収めようとしない。
 朝比奈みくるという少女を殺害し、ゲインやセラスに手傷を負わせた凄腕の女剣士―ガッツは保護対象として捉えていたが、やはりセラスの言うとおり彼女は殺し合いに乗ってしまったようだ。
 相手が刃物を持っている以上、翠星石のようにげんこつやぐりぐり攻撃で鎮圧することは難しい。大人しく逃げるのが得策かと考えたが、みさえ自身も怪我人の身。
 いつ崩壊するとも分からないホテル内を、キャスカの剣をかわしつつ負傷した足で脱出する自信はなかった。
 何より、ここにはまだガッツやゲインがいるはずである。彼等の安否を確かめるまでは、安心して避難などできるはずがない。

「くあああああああああああああッッ!!」
「―ッ!?」

 気合の咆哮と共に、キャスカはエクスカリバーを大きく振り上げた。
 その奇声に一瞬怯んだみさえは瓦礫の足場につんのめり、転びそうになった身体を寸でのところで制御する。
 その間、回避行動はままならず、停止したみさえの上空から真っ直ぐな一閃が振り下ろされた。

「――」

 目を瞑り、覚悟を決めた。
 これはもう避けようがない。恐れから来る痺れが身体を固めさせるが、死にたくないという強い意識はまだ保っている。
 たとえどうしようもない窮地だとしても、みさえは願った。
 助けを。ピンチを救ってくれる、ヒーローみたいな誰かを待ち望んだ。
 ―その脳裏に荒くれた大男の姿がよぎったのは、否定しない。

「お前はッ!」
(……え?)

 突如、キャスカの驚きに満ちた声を耳にし、みさえはそっと瞼を開けた。
 気づけば、両断されるはずだった我が身は五体満足のまま存在している。
 いったいどうして―答えを求めた視界の先で、キャスカの剣を一心に防いでいる男の姿があった。

「ガ―」

 その名を呼ぼうとして、みさえは異変に気づく。
 目の前で自身を守る障壁のように君臨している男は、脳裏をよぎった彼ほど大柄な体躯ではない。
 晒した上半身に包帯を巻きつけ、荒い息遣いでなんとか立っているその男は―ゲイン・ビジョウだった。

「ゲイン・ビジョウ!」
「よぉキャスカ。一度は撤退したかと思ったが出戻りか? そんな傷まで負って、そこまでして生き残りたいか?」

 ―昼に起こった闘争を再びなぞるかのように、ゲイン・ビジョウとキャスカの二人は対峙する。
 ゲインはみさえがベッドの傍に立てかけて置いたバットを得物とし、キャスカの剣を防いでいた。
 調子が万全ならば両断することも容易かったであろう代物だったが、キャスカ自身もいっぱいいっぱいらしい。
 エクスカリバーを握る手はどこか弱々しく、数多の兵士を率いていた頃の力強さは感じられない。

「驚かせてしまってすまない、ご婦人。少し尋ねたいんだが、君はシドウヒカル、もしくはセラス・ヴィクトリアの知り合いか?」
「両方よ! 二人は今外に出てていないけど、あなたの看病をしていたら突然ホテルが崩れ出して、っていうか今も崩れてる真っ最中で……」
「なるほど……なんとなくだが、状況は把握した。ここにキャスカがいる理由は後でゆっくり聞くとして、とりあえず彼女には眠ってもらわないと……な!」

 降りかかる刃の切っ先をバットで流し、ゲインはキャスカを沈静化させようと腹部に蹴りを放つ。
 だが負傷している身とはいえ、剣を持った傭兵に安易に隙が生まれるはずもなく、ゲインの一撃は空振りで終わった。

「相変わらず鋭いな。女性のものとは思えぬ剣捌きだ。……それだけの力を持ちながら、自分のことしか考えていないってのがマイナスだがな」



118:「ゼロのルイズ」(前編) ◆K1z/mB9tDA
07/09/25 06:17:41 lj2yLf7+
 見た目にそぐわぬ豪快さもまた、女性のステータスの一部。ゲインはそう捉えていた。
 だがその力を自分のため『のみ』に使うとあっては、とても褒められたものではない。
 血気盛んなレディは嫌いではないが、少々痛い目を見てもらう必要がありそうだ……ゲインは疼く脇腹を押さえ、キャスカの剣とバットを交わした。

(自分の命に、興味などはない……。私は決めたんだ。グリフィスを優勝させ、鷹の団を再興する)

 囁くように発した言葉は、ゲインの耳には届いていなかっただろう。
 ゲインは思い違いをしている。キャスカは決して自分が生き残りたいがために戦っているのではなく、ただ一人、敬愛した男の無事を祈り剣を振るっているだけなのだ。

(グリフィス……ジュドー……ピピン……リッケルト……コルカス)
 誰にも思いつかないような知略と、カリスマ性溢れる指揮でみんなを率いてくれたグリフィス。
 投げナイフを得意とし、何事もそつなくこなす参謀役でもあったジュドー。
 巨漢を盾にして何度も敵兵の応酬を食い止め、白兵戦の要として活躍していたピピン。
 幼いながらも常に皆のことを思い、鷹の団を支えていてくれたリッケルト。
 身勝手ではあるが、いざという時には誰よりも果敢に敵に攻めていったコルカス。
 何ものにも変えがたい、鷹の団の戦友たち。
(……ガッツ!)

 一年前に鷹の団を去り、仲間を、グリフィスを裏切り我が道を進んだ―今はもういないガッツ。

(ガッツも、私も、いらない。グリフィスが、いれば……)

 ふと、自分でも驚くくらい仲間に対して献身的な思いを抱いていることに気づく。
 その正体は、あの一年を無駄にしたくないという意地か、未だ潰えぬグリフィスへの思いか、傍を離れていったガッツへの怒りか―。

(深く……考えるなキャスカ。私はただ、敵を斬る。それ、だけでいい……!)

 エクスカリバーの握り手に再度、力を込める。
 グリフィス以外の敵を消す。ガッツであろうと、誰であろうと。そのためにもまず、この場を生き延びてやるんだ。

「いくぞ……ゲイン・ビジョウ!」
「やれやれだな……」

 鷹の団の千人長たる女戦士は、たった一人の男と残してきた仲間のために剣を振るう。
 黒いサザンクロスの通り名を持つエクソダス請負人は、その肩書きの誇りに掛けて、脱出を願う者たちでのエクソダスを目指す。
 観戦するしか道が残されていなかった主婦は、自分にでき得る最善の行動を模索し、そして速やかに取り掛かる。
 他者を恨んでばかりの人形は、いつの間にか姿を消していた。
 ―これは、序章のほんの一部。

119:「ゼロのルイズ」(前編) ◆K1z/mB9tDA
07/09/25 06:18:01 lj2yLf7+
【D-5/ホテル3階(倒壊寸前)/1日目/夜】
【キャスカ@ベルセルク】
[状態]:左脚複雑骨折+裂傷(一応処置済み)、魔力(=体力?)消費甚大
   :疲労大、全身各所に軽傷(擦り傷・打撲)、軽い混乱症状
[装備]:エクスカリバー@Fate/stay night
[道具]:なし
[思考・状況]
1:目に付く者は殺す
2:他の参加者(グリフィス以外)を殺して最後に自害する。
3:グリフィスと合流する。
4:セラス・ヴィクトリア、獅堂光と再戦を果たし、倒す。
[備考]:第三放送を聞き逃しました。

【ゲイン・ビジョウ@OVERMANキングゲイナー】
[状態]:疲労大、全身各所に軽傷(擦り傷・打撲)、腹部に重度の損傷(外傷は塞がった)
[装備]:悟史のバット@ひぐらしのなく頃に
[道具]:なし
[思考・状況]
1:キャスカを止め、ホテルからエクソダス。
2:市街地で信頼できる仲間を捜す。
3:ゲイナーとの合流。
4:ここからのエクソダス(脱出)
[備考]:第三放送を聞き逃しました。

【野原みさえ@クレヨンしんちゃん】
[状態]:中度の疲労、全身各所に擦り傷、左足に打撲
[装備]:スペツナズナイフ×1
[道具]:なし
[思考・状況]
1:ガッツ本人と、戦闘中のゲインの援護になるような物を掘り起こし、キャスカを止める。
2:ホテルが完全に崩壊する前に逃げる。
3:セラスら捜索隊と合流。
4:契約によりガッツに出来る範囲で協力する。
5:しんのすけ、無事でいて!
6:しんのすけを見つけたら、沙都子の所に戻る。キャスカを監視。グリフィス(危険人物?)と会ったらとりあえず警戒する
基本行動方針:ギガゾンビを倒し、いろいろと償いをさせる。
[備考]:第三放送を聞き逃しました。

120:「ゼロのルイズ」(前編) ◆K1z/mB9tDA
07/09/25 06:18:21 lj2yLf7+
【翠星石@ローゼンメイデンシリーズ】
[状態]:全身に軽度の打ち身(左肩は若干強い打ち身)、頭が痛い、全身各所に擦り傷
   :服の一部がジュンの血で汚れている、左肩の服の一部が破れている、人間不信
[装備]:FNブローニングM1910(弾:4/6+1)@ルパン三世
[道具]:無し
[思考・状況]
1:あんなバカな人間共は放っておいて、さっさとここから逃げるです!
2:真紅や蒼星石と合流するです。
3:まずは魅音を殺してやるです。
4:水銀燈達が犯人っぽいから水銀燈の仲間は皆殺しです。
5:水銀燈とカレイドルビーを倒す協力者を探すです、協力できない人間は殺すです。
6:庭師の如雨露を探すです。
7:デブ人間は状況次第では、助けてやらないこともないです。
基本:チビ人間の敵討ちをするため、水銀燈を殺してやるです。
[備考]:第三放送は聞き逃しました。


※ゲインのデイパック:
【支給品一式×2、工具箱 (糸ノコ、スパナ、ドライバーなど)】
 みさえのデイパック:
【糸無し糸電話@ドラえもん、銃火器の予備弾セット(各40発ずつ)、ウィンチェスターM1897の予備弾(30発分)、石ころ帽子@ドラえもん、スモールライト@ドラえもん(電池切れ) 】
 バトーのデイパック:
【支給品一式(食糧ゼロ)、チョコビ13箱、煙草一箱(毒)、 爆弾材料各種(洗剤等?詳細不明)、電池各種、下着(男性用女性用とも2セット)他衣類、茶葉とコーヒー豆各種(全て紙袋に入れている、茶葉を一袋消費)】
 ロベルタのデイパック:
【支給品一式×6、マッチ一箱、ロウソク2本、9mmパラベラム弾(40)、ワルサーP38の弾(24発)、極細の鋼線 、医療キット(×1)、病院の食材、ドラムセット(SONOR S-4522S TLA、クラッシュシンバル一つを解体)、クラッシュシンバルスタンドを解体したもの】
 翠星石のデイパック:
【支給品一式×4、オレンジジュース二缶、ロベルタの傘@BLACK LAGOON、破損したスタンガン@ひぐらしのなく頃に、ハルコンネン(爆裂鉄鋼焼夷弾:残弾5発、劣化ウラン弾:残弾6発)@HELLSING、ビール二缶、庭師の鋏@ローゼンメイデンシリーズ】
 パチンコ、パチンコの弾用の小石数個、トンカチ、ウィンチェスターM1897(残弾数3/5)、支給品一式、空のデイパック、スペツナズナイフ×1、銃火器の予備弾セット(各120発ずつ)、首輪
 がホテル内、もしくはホテル周囲の瓦礫の下に埋もれています。全て破損状況は不明。

※ガッツの持っていたデイパックが崩落により損傷、中身が全て吐き出され、使い物にならなくなりました。


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