【ノーマル】ローゼンメイデンのSSスレ 5【一般】at ANICHARA
【ノーマル】ローゼンメイデンのSSスレ 5【一般】 - 暇つぶし2ch2:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/09 01:31:25 7451vkqD


3:1
07/05/09 01:31:40 mzVP9d1S
間違えました。
直ちに削除依頼を出してきます。

板の住人の方々には大変ご迷惑おかけしました。
申し訳ありません。

4:1
07/05/09 01:33:04 mzVP9d1S
また間違えてるし…orz
落ち着け俺。

エロパロ板の人達に謝らなければ

5:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/09 01:35:58 daQ4wt3u
ドンマイ

6:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/09 05:15:56 tHWKWObT
クソ金糸雀と金糸雀ヲタ死ね
        __,,ゝ┼─┼====┐.        ''"´"'''::;:,,,      ヽr'._ r`γヽ./.゚;・.,'
        | □|   .| |:|ヾ二二二二二(ポ     ,,;;;;´."'''    //`Y. ,,‘ .゚;・.,'`ヽ
   _____|__,|_;||___,| |:|ル-┬─┘     ´''::;;;;::'''"´      i | ノi ノ_';;;∵\@
  |ヌ///   /   ~~|ミ|丘百~((==___     バゴーン       ヽ>,/! ヾ(i.゚'Д;;。;∵ がじらぁぁぁぁぁぁ!
  └┼-┴─┴──┴─┐~~'''-ゝ-┤             `ー -(kOi∞iミつ
  ((◎)~~~O~~~~~O~~(◎))三)─)三);                (,,( ),,)
  ..ゝ(◎)(◎)(◎)(◎) (◎)ノ三ノ─ノ三ノ;*;∵                じ'ノ'

7: ◆LNZbyB1zfI
07/05/09 17:31:13 701xqIzd
電波を受信してしまったので投下。まだ序盤ですけど。

8: ◆LNZbyB1zfI
07/05/09 17:33:56 701xqIzd
「漆黒の翼」

ズキン...    ズキン...
背中から生えた翼の付け根に時折走る、鈍い痛み。
お父様の期待に応えられず見限られてしまったときから、
初めて自分の妹たちに出会い、自分の代わりとなる存在が作られたと知ったときから、
妹たちへの嫉妬と憎悪の心から生まれた漆黒の鴉のような翼が、華奢な背中を突き破って生えた時から、
延々と二百年以上もの間続いている痛み。

痛みが強くなる度に、私の脳裏に忌まわしい記憶が蘇る。
お父様に望まれて生まれ、愛され、見放され、そして捨てられた記憶が。
私はお父様に望まれてこの世に生を受けたはずだった。
初めて目を開いた時、最初に映ったのはお父様の優しい笑顔だった。
お父様は簡単に自己紹介され、私のことを、ご自分の名前から取ってローゼンメイデンの水銀燈と名付けて下さった。
お父様は、私に歩き方から紅茶の入れ方まで、何でも手取り足取り優しく教えて下さった。
私もお父様の愛情に応えようと、一生懸命教えられたことを学び、体得し、お父様のために尽くそうと頑張った。
お父様を喜ばせるために、歌を覚えたり踊りを覚えたりもした。
お父様を愛し、お父様に愛されることが、自分のこの世に生を受けた意味だと信じていた。
それなのに…。

日に日にお父様の表情に翳りが出るようになってきた。顔が笑っていても目が笑っていないことが多くなった。
お父様に笑っていただこうと、ますます私は尽くしたが徒労に終わった。
次第に螺子を巻いてもらえなくなり、呼び出されることもなくなり、ついには誰もいない物置部屋の椅子に放置されてしまった。
動くことも出来ず、ただ部屋の中を眺める毎日が、気が遠くなるほど続いた。
何故お父様は私を見てくれなくなったのか。何故?何故?
そればかりを延々と考え続けていた。

漆黒の衣装が灰色に見えるほどに埃が積もった頃、物置部屋の扉が開いた。
小さな人影がこちらを覗いている。誰何しようとしたが、生憎声は出ない。
人影はおずおずと部屋に入った来たが、すぐに私に気付き「ひゃっ」と声を上げて驚いていた。
すぐに気を取り直したのか、人影は私の傍までやってきた。窓から差し込む光に人影は照らし出された。
背丈は私よりも小さい。緑色の髪に黄色を基調とした衣装、厚底の靴。
「わ、私はローゼンメイデン第2ドール金糸雀なのかしら。貴方は、第1ドールの水銀燈お姉様なのかしら?」
人影は私を見て、大きな無邪気な声で自己紹介をした。
お父様は私以外にもローゼンメイデンをお作りになった?私の代わりこの子を作った?
心の奥底がざわつく。目の前にいる第2ドールとやらに対し、嫉妬の炎が燃え盛る。
「動けないのかしら?螺子が切れてしまっているのかしら。埃がたくさん積もってるから、とても古いお人形なのかしら?」
金糸雀と名乗った妹らしき人形は、無邪気かつ無遠慮に言いたいことを言ってくれる。
その時扉の向こうから声がした。

9: ◆LNZbyB1zfI
07/05/09 17:35:14 701xqIzd
「金糸雀、金糸雀、こっちへおいで。こっちへ来て、またおまえのバイオリンを聞かせておくれ」
「は~いお父様。今行くかしら~」
金糸雀は返事をして出て行ってしまった。去り際「また、来るかしら。お姉様」と言った。
続けて扉の向こうからお父様の声が聞こえてくる。
「おお、おお、待っていたよ。こんなところにいたのかい。」
「ああ、この部屋には入ってはいけないよ金糸雀。私の恥を見ないでおくれ。部屋にある物は皆失敗作なのだから」
失敗作。私は失敗作。失敗作という言葉が頭の中を巡る。
私の何が至らなかったのだろう、どこが失敗だったのだろう。
哀しい。あれほど尽くしたのに。お父様に喜んで欲しくて一生懸命愛し、愛されるよう努力したのに。
泣けるものなら泣きたかった。涙を流せるのなら流したかった。しかし身体は動かない。
開いた目は、ただただ、虚空を眺めるだけだった。

次の日、金糸雀は予告していた通りやってきた。両手いっぱいに叩きや箒、ちりとり、雑巾などの掃除道具を抱えている。
「水銀燈お姉様とお話したいのかしら。でもお姉さまの螺子を巻く前に、お姉さまをキレイにするのかしら」
本当に無邪気な妹だ。そういえば私も、お父様に愛されようと一生懸命だった時はこんな感じだったかもしれない。
金糸雀は窓を開け放ち、私に積もった埃を叩きで軽く落とした後で、水に濡らして固く絞った布で丁寧に拭き始めた。
甲斐甲斐しく何度も水と布を取替えて拭いてくれたおかげで、小一時間後には、私の身体は随分見られるようになった。
しかし反対に金糸雀が埃だらけになってしまった。
「ふぅっ。キレイになったかしら。いよいよ螺子を巻いてみるのかしら」
金糸雀が私の後ろに回り、発条の螺子を背中の穴に挿し込み、ゆっくりと回した。
キリキリキリ…。キリキリキリ…。
螺子が巻かれるにつれ、四肢に感覚が戻ってきた。
思い切り伸びをし、内部の歯車の自動調律をすると、ほぼ問題なく動けるようになった。
正面を見ると埃まみれの金糸雀が目を輝かせて立っている。
私は金糸雀の持っていた布巾をそっと取り上げると、彼女の頬や髪、袖に付いていた埃を払ってあげた。
 螺子を巻いてくれてありがとう。それから、こんなにキレイにしてもらって…。
 貴方が初めてこの部屋に入ったときから、ずっと私は貴方を見ていたわ。
「お姉様が動いたのかしらー!改めまして、私はローゼンメイデン第2ドール金糸雀かしら」
 改めまして。私はローゼンメイデンの…最初のドール、水銀燈よ。よろしくね。金糸雀。
失敗作である自分の代わりに作られたのであろう妹を見るにつけ、どす黒い感情が胸の奥から沸き起こるのを抑えられなかったが
一方で自分を慕ってくれる彼女に対する淡い感情も芽生え始め、どうにか衝動を抑えることができた。

10: ◆LNZbyB1zfI
07/05/09 17:36:45 701xqIzd
今回はここまで。
ローゼン日記よりも長くなるかも

11:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/09 18:37:04 wYcPvQ9x
>>1乙です
期待上げ

12:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/09 18:43:38 z+eF04qQ
>>1 乙です!

13: ◆vJEPoEPHsA
07/05/09 19:15:17 Fu2NWjKE
保管庫更新しました
URLリンク(library.s12.dxbeat.com)

14:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/09 21:45:19 CsBIAVSO
>>13
乙です!こんなサイトがあったのですね!
とりあえず、前スレ604の続きです。

水銀燈は飲み干した。少し紅茶を少なく入れすぎたか。
「あっもうちょっと飲みます?」
「そうね…」
ヤカンを持った。ぬるくなっている。確か…真紅はぬるいお茶に対しては徹底的にブチ切れてたよな…やっぱ入れ直してきた方がいいか。
「ち、ちょっと待ってて!今入れてきます!」俺は部屋を飛び出し、台所へ。古い茶を捨てる。
もったいないが、銀様にこんな茶を飲ませるわけにはいかない。新たに紅茶を煎れる。そして部屋に戻り、またコップに注いでやる。
水銀燈は静かにそれを口に運び少し飲んでは、一息着き、また飲みを繰り返す。ん?しまったぁ!今は夏だ!熱いお茶はダメなのか!?
でもアニメって確か夏が舞台だった…だからこれでいいんだ。うん。俺は必死に自分を落ち着かせようと努力した。
俺は水銀燈を見つめた。水銀燈が大きなコップで飲むのを見ていると興奮する。
哺乳ビンを必死で両手で持ち、ミルクを飲む赤ちゃんを連想させる。
しかし、いくらかわいいと言ってもずっとこれを使わせると言うのは失礼だ。小さなティーカップが要る。
俺は大概、思い立ったらまず行動してしまう方だった。
気付けば立ち上がっていた。水銀燈はどうしたという顔でこちらを見上げている。もう後には退けない。
「ちっ、ちょっと出かけてくるよっ。す、すぐに戻ってきます!」
ああ、情けない。いつまで動揺しているのだ。俺は部屋を飛び出した。よし、ティーカップを買いにいこう!
外に飛び出し、また軽トラに飛び乗る。ダッシュボードに投げ捨ててある自分の財布を後ろポケットに突っ込んだ。
エンジンを掛ける。
「あ…俺金ねぇ!!」俺は発狂した。血の気が引く。汗が顎から滴り落ちる。運がいいのか悪いのか、母のクルマが家に入ってきた。
俺は軽トラから出、母の元に駆け寄る。
「おかぁ、金貸してぇな」普段は標準語を話すが、地元で地元の人と話すと不思議な事に方言になってしまう。
「はぁ?大学生にもなってぇ、親におこずかいおねだりかいなぁ。情けない。自分の金はどうしたねんな?またパチンコか!?」
断られるのは百も承知だ。しかし今は金が必要だ。
「ちっちゃうわ!」
何故親はこうして何でも知っているのだろうか。
「あんたなぁー」
母の説教が延々と続く。しかし、俺は心に…いや銀様に誓った。
パチンコは程々に、後先考えてやろうと。「負けるためにパチンコするんだ!」なんてもう言わない。
俺はまた一つ賢くなった。こうして人間は成長していくのだ。
「しゃーないなぁホレ」
気付けば母は壱万円を差し出していた。
「ありがとう!絶対返すわ!」
俺は車に戻った。よく考えると、こんなド田舎のスーパーにティーカップとか言うシャレたモノが有るのか微妙だった。
とりあえず行くしかない。四方八方山と田の道を、車を走らせていると右手に一件の農家が見える。
連れの家だ。その瞬間俺の頭に天才的な閃きの閃光が走った。クルマを路肩に止め、その家に入る。
家はやはり古びた日本家屋だ。鍵などというものは存在しない。
「おーい、おるかー!わしやー!」
勝手に玄関の戸を開ける。なんてあつかましいと思われるかもしれないが、田舎では普通だ。中から一人の男が出てきた。
「おー、帰っとったんかいな。久しぶりやのー、調子はどうや」
簡単に会話を済ます。
「それでよ、お前の家に昔、知人のヨーロッパ旅行のミアゲとか言ってコップと土瓶のセット持っとったやんな?」
「あー…そういえば…そんなんあったっけ?」
「あったわ!それを今すぐに貸してほしいねん」
「ええけど…何に使うんや?」
そいつは納戸を漁りながら言った。
「…水銀燈が家に来たんや…」
「水銀燈?体育館のあれか?あんなん部屋に付けたら明るうて目チカチカするやろ」
「はぁ!?ちゃうわい!いいから早く貸してくれ!まじ頼むわ!」
俺はそいつから、見つかったティーカップを貰うと一言礼を言い、その内飲みに行く約束をして軽トラに飛びのった。

15:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/09 21:49:34 CsBIAVSO

すぐに家に着き、早速それでお茶を入れる。モノが小さく繊細なのでゆっくりと二階の俺の部屋に運ぶ。
そぉーっと、絶対に水銀燈に気付かれないように襖を少し開ける。中の様子を確かめてから入るためだ。
中を覗いてみる。あれ?居ない…と思ったら水銀燈は窓に座っている。アニメのめぐの病室のシーンにソックリだ。
裏が山なので、家が立っている所は少し高かった。なので、外はそこそこきれいな景色が見えるはずだ。
ひたすら田んぼが続き、その先に民家がポツポツ見え、細い農道が縦横に走っている。さらに向こうには低い山がある。
今日のように天気の良い日は山の隙間から市街地と太平洋の水面が僅かに見えるはずだ。
不便な立地に俺は昔から嫌だと思っていたが、今は神様仏様に感謝している。
襖を開ける。水銀燈がこちらに気付いた。
「お茶を…」
ちょっと待て。よく考えたら水銀燈はお茶は3杯目。さすがにこんなに飲まないか。
俺は言い掛けた言葉を止め、ティーセットを机に置いた。水銀燈の元に近づく。
「あなた、本当によい所に住んでるのね」
水銀燈は景色を眺めながら言う。よかった。銀ちゃんはどうやら家は気に入ってくれたようだ。救われた気分になった。
いつのまにか日は落ちかけ、辺りは夕焼けに染まっていた。
水銀燈に目を移す。オレンジ色に染まった水銀燈…虫の音が心地いい。そよそよと風が吹き水銀鐙の髪を撫でた。
ため息が出る。なんて俺は幸せなんだろう。とにかく俺は神様に感謝した。
夕焼けはあっという間に闇に変わる。俺は部屋のライトを付けた。すると一気に外は夜になった。
水銀燈は窓から下り部屋の畳に座った。俺も座る。
「…」
痛い沈黙が続く。いったい…何を話せばいいんだ…アリスゲームの事か!?
アリスゲームと言っても俺の知識はアニメで得た知識のみだ。
だいたい、アニメでは水銀燈は真紅にボコボコにやられ、最後は燃やされたり、
さらには訳の分からない薔薇水晶とかいうドールにボコボコにやられた、なんて話出来るか!!でもこの沈黙なんとかせねば…
そういえば…アニメ内でジュンは真紅と出会った直後どう接してたっけ…
ジュンは真紅・雛苺、翠星石をものにし、さらにそれでは飽き足らず蒼や金にまで手延ばしてたよな。しかも人間の巴まで・・・
なんて奴だ。一体何股なんだ!?憎い。ジュンが憎い。
思考が脱線しかけたが、元に戻す。
ジュンはドールを手懐けるプロだ。あいつの行動を真似るのだ
しかし、一番最近見たオーベルでさえ半年前の話だ。第一期の話なんかもう忘れてしまっていた。
ふと思った。そういえばこの銀ちゃんって何銀だろう。なよ銀…ではないよな。
時計に目をやる。
もう部屋に入って40分が過ぎようとしていた。何か話さねば。銀ちゃんは窓沿いに座って真っ暗な外を見ている。
「あの…」

16:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/09 21:52:50 CsBIAVSO
俺が切り出すと銀ちゃんはこっちに振り向いた。ドキッ!心臓が跳ね飛び、肋骨に直撃した。
「…なに?」
しまった!話題をまだ考えていなかったんだっけ!仕方がない。
「あの…」
そういえば俺は彼女の事をなんと呼べばいいんだ?水銀鐙?なれなれしい。
水銀鐙さん?何か変。銀ちゃん?論外。銀様?なんか…ねぇ…。
「あの、何とお呼びすれば良いのでしょうか。」
「わたし、最初に、水銀燈だと言わなかったかしら?」
「あ、じゃあ水銀燈と…」
「他に呼び名がある?」
「いえ、無いです。申し訳ないです。。。」
ああ、なんて会話だ…
何か話題は無いか?このまま沈黙を続ける訳にはさすがにいかないだろう。俺は意を決した。
が次の瞬間、腹が鳴った。気付けば夜8時だ。
銀様も腹が減っているに違いない。
俺は何か作るために、銀様に一言言ってから一階に下りた。やはり両親は出ていた。旅行とか言っていた気がする。
冷蔵庫を開ける。
「えーっと…ニボシ、鰺の開き、ほうれん草…ミズナ、大根…漬物に梅干し、小魚の煮付け…ハナマルハンバーグなんか作れっこなかった。
仕方がない。お弁当用冷凍食品を電子レンジでチンし、ご飯を盛って持っていく。
「あ、あの・・・水銀燈…」
呼び捨ては少し照れる。念のため最後に聞こえない程度に「さん」を付けた。
「あの、こんなつまらない物しか無いけど、良かったら食べて…」
「…」
銀ちゃんは少し臭を嗅いでから口に入れていく。モグモグと口を動かす様子は本当に愛らしい。みなに見せてやりたいくらいだ。
それにしても、アニメの冷酷銀様とは少し違うなと感じた。なよ銀ほどなよなよしてるわけではない…まぁいい。
正直、こっちの方が萌える。
「お茶ドゾー」
俺はお茶を差し出した。
そうこうしている内に夜も更けてきた。そろそろドールは寝る時間だったはずだ。


17:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/09 21:54:49 CsBIAVSO
ドン、ドドンドン!
外から炸裂音が聞こえた。
「あっ、そういえば!」
俺は思わず声を上げた。なんてタイミングだ。今日は花火があるのをすっかり忘れていた。
数日前に無理矢理別れた彼女と見に行くはずだったのだ。漫画や小説を見ているような、完璧なタイミングだ。
これは丁度いい。立ち上がり、不思議そうにこちらを見る銀ちゃんの手を引っ張り、俺は外に飛び出した。
「何!?離しなさい」
「いいから!とにかく来てみろって!」
俺は銀ちゃんを軽トラ…いや、バイクだ。ここはバイクがいい。帰り、花火の観客で道が混むからだ。バイクならスイスイ帰れるはずだ。
農業用機械がしまってある大型倉庫のシャッターを開ける。確か、親父のバイクがあるはずだ。
シルバーの米用大型冷蔵庫の横にバイクらしき物が見える。カバーが掛かっている。それを外し、外に出す。非常に重い。
「どう…やるんだろ・・・原付と・・・似てるよな。」
とりあえず適当にやってみる。
「バルルーン…ドッドッドッ…」何とかエンジンは掛かった。重低音が響く。運転の仕方は何となく分かる。
俺はハーフタイプのヘルメットを被った。そしてバイクにまたがる。
「ほら、銀ちゃん、ここに乗って!」
銀ちゃんはバイクを初めて見たかのように、呆気にとられた顔をしていた。しかしすぐに近寄ってきた。
「ち、ちょっとぉ、ぎ・・・」水銀燈は何か言おうとした。が俺は構わず
「ほら」
俺は銀ちゃんを抱き上げてバイクに乗せた。
そして、もう一個、艶消しの真っ黒のハーフタイプのヘルメットを手に取り、水銀鐙の頭に乗せた。
「きゃあ!何よーこれぇ!」
水銀鐙には大きすぎた。前が見えないらしく、ごねごねとヘルメットを触っている。…


なんか…








萌るハァハァ

18:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/09 21:57:30 CsBIAVSO
「それを被らなきゃ危ないの!しっかり捕まれよ!」俺はバイクを走らせた。
「きゃあ!」
水銀燈はとっさに俺の背中に抱きついた。





やばい…かわいい…ハァハァ


何もない農道を飛ばす。前には既に花火が何発も上がっている。
「ほらっ、銀ちゃん、花火上がってるよ!」
…水銀燈の返事はない。俺は微妙に後ろの様子を伺った。
すると、彼女は片手でヘルメットを押さえ、もう片方の手で俺の体にしっかり抱きつき、花火を見ていてくれていた。
アニメでは絶対にお目にかかれないような笑顔だ。俺は感動で泣きそうになった。ていうか涙は流れていた。
笑顔に涙を流しながらバイク運転。まわりから見ればただの変人だろう。だがそんな事どうでも良かった。
調子に乗り、アニメ第三期は俺の話でいいのではないかとすら思った。
山の中腹の広場に着いた。結構人がいた。バイクを止め、俺は水銀燈の手を引き、森のなかに入っていった。
「ち、ちょっと、どこへ行くのよ!?」
「いいから、付いて来てみって!」
ズンズン林を進む。しばらくすると景色が開けた。

「ドーン!」
花火が目の前で上がった。
「な!ここすごいだろ!?俺が小学校の時に見つけた秘密の場所なんだ。」

19:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/09 22:00:59 CsBIAVSO
~半日前~
「何で!?何でよ!訳わかんない!なんで!?そんな…いきなり…」
私は一度彼に会いたかった。会って、しっかりと話しをつけるのだ。こんな事、納得出来るはずが無かった。
私は急いで駅に向かった。よかった。何とか、日が暮れるまでには彼の実家に付けそうだった。
私は高校の時、何度か彼の家に行ったことがあったので、場所は知っていた。予想通り三時間後、彼の家に到着した。
「ごめんくださーい」
「あらー、久しぶりやねー」
中からオバサンが出てきた。私は精一杯の笑顔で感情を誤魔化した。
彼はさっき出ていったので、今は居ないという。すぐに帰ってくると思うので、彼の部屋で待っていろとのことだ。
私は階段を上がった。考えれば考えるほど怒りが込み上げてきた。勝手だ。そんなの勝手すぎる。
彼の部屋の襖を勢い良く開けた。
部屋は昔となんらかわらない様子だった。ある「人形」を除いて。
それは窓辺にちょこんと座らされていた。顔は何かを監視するように外を向いていた。
彼にそんな趣味があったかしら…
出会った直後、携帯の待ち受けが美少女アニメキャラで、少し引いた覚えがあったが、それ以降、何もなかった。
その人形は何か異様な雰囲気を発散していた。私は恐る恐る近づいた。
肌は大変色白で、とても人形の肌とは思えないほど生き生きとしていて美しかった。髪も絹のようにきめ細かい銀髪だ。
顔は文句の言いようが無い程整っていた。しかし全くの無表情だ。何を思っている顔なのか全く掴めない。
瞳と唇は血のように真っ赤だ。まわりが白いので、その赤は強調される。女の私でも本能的に興奮しそうになるほどだ。
彼女は視線を服へとずらす。それは黒を基調に、かなり細部まで丁寧に作り込まれ、背中に可愛い、小さな羽が生えていた。
目線を顔に戻す。







「ひっ!!」

20:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/09 22:04:12 CsBIAVSO

私は飛ぶように部屋の端に後退った。
顔が笑っているのだ。あれだけ無表情だった顔が。目は見開き、口は左右に切れるようにニヤついている。
しかし、よく見ると、表情など何もかわっていないようにも見えた。やはり私の見間違えか…
私はとりあえずこの部屋から出たくなった。何か嫌な予感がするからだ。まるで、人形が生きているようだ。生きている?
「そんなわけ無いわよね…」あたりまえだ。
「そんなわけ…あるわよ」
「ひっ!?」
私はとっさに振り向いた。しかしさっきと何も変わりは無かった。
「私…疲れているのかしら…」
空耳を聞いたのはこれが初めてだった。
私は振り向いた。






「いゃーぁ!!」
私は叫んだ。しかし何故か声が出ない。あの人形は宙に浮き、私の行方を阻んでいるのだ。
殺される…私の体は本能的に怯えきっていた。
「あなた…何?」
その人形は私の顎に触れ、聞いてきた。
体がガタガタ震えてくる。私は腰が抜けて倒れこんだ。すーっとその人形も降りてきた。これは本当に現実なのか。
「もう一度聞くわ…あなたは…」
体かガクガクと音を立てて震える。恐い…可愛い人形なのにどこか冷酷な目つきだ。
そういえば…
彼がいきなり私を振った理由…もしかしてこの人形が原因ではないのか。
私は怯えながらも意を決して尋ねた。
「あなた…一体何なの?何?何が目的なの?」声が震えている。

21:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/09 22:05:48 CsBIAVSO
「あーらぁ、質問を質問で返すなんて…」
「私は…彼の彼…女よ。数日前までね。」
「そぉ。」
「私の質問にも答えてよ。あなたは何なの!?」
「何ってぇ…ただの彼のお人形さんよぉー。」
「何が目的で彼に近づいたの!?」
「…」水銀鐙は目を細め、彼女をにらみつけた。
「そんなに知りたぁいのぉ?」
水銀鐙は目を剥き、歯を見せずにニッと笑う。
「いいわ…あなたにだけ…教えてあげる」

・・・・・・


「何ですって!?そんな…そんな!ひどいわ!」
「…はぁい…おしゃべりは終わり。。悪いけど…あなたの記憶…一部消させてもらうわぁ」
「記憶を消すですって?そんな事…」体が動かない。声も出なかった。
その人形は背中から羽を一本出し、私の額に押し当ててきた。どんどん力が込められていく。痛い・・・
気が遠退いていった。


帰り道。気づけば銀ちゃんはバイクの上で俺に抱き付いた状態でぐっすり眠っていた。
銀ちゃんの行動一つ一つが叫びたくなるほど萌えた。萌え死にそうだ。
家に着くとヘルメットを外してあげ、ゆっくりと銀ちゃんを抱きかかえた。
スー・・・スー・・・と寝息を立てて眠っている。



やばい・・・これは・・・やばいぞ・・・これは可愛すぎる。
こんなのを見せられておれはどうすればいいんだ!だれか教えてくれ!

22:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/09 23:46:16 kyIHt/9O
駄目野郎だが行動力と頭の回転の早さは褒めるべきところなんだろうな

23:kkk
07/05/09 23:49:20 y0Z3bV3W
最高にGJ!

24:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/10 10:08:36 2bO4meYd
銀ちゃんカワイイ!
アニメ3期は俺の話しがおもろいwwwwww

25:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/10 23:00:36 Uo13OINi
>>14-21
ドールの銀ちゃんと変に現実味のある話の内容が嫌味なく面白い。
第三キャラの俺と彼女の名前を決定して出していない所にも好感が持てる。
つか実は実話?w

26:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/11 02:36:42 BspvqBBc
皆さんレスありがとうございます!
ご存知の通り、前スレに投稿した一個目のSSは、ドールが一人づつ死んでいくと言う非常に惨いものでした^^;
で、最初その続きを書こうと思ったのですが、あの黒さに自分自身、嫌気がさしてきました。
なので今回、あえてそのま逆の方針「極力明るく」を目標としてみました^^;

27:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/11 02:42:53 VFiO7F8E
これは絶好のピチカート日和の予感

28:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/11 02:45:54 TfXBDxMH
GJ ナイス銀さま!
最近のローゼンメイデン小説の良作を挙げていかないか?

29:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/11 02:46:46 VFiO7F8E
×これは
○この流れは

30:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/11 03:25:21 1W0m3aKu
>>27
意味がわからない。おまえは何が言いたいんだ?

31:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/11 05:22:39 vAXYT/Cj
kitaiage

32:21
07/05/12 00:46:06 DtwX7cvg
微妙に(エロ注)的内容が一部含まれる続きになってしまいました・・・
投下しても大丈夫でしょうか。もちろん、18禁にはならぬよう、出来る限り努力しておきましたw
一応、許可をもらいたいです。

33:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/12 00:51:29 0O5DmvKc
よし俺が許す。GO

34:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/12 07:09:06 SAV2pBtu
まさかとは思うが銀様に手を出す気ではあるまいな
党員がみんなでお前の家に遊びに行くぞ

35:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/12 14:15:58 KD0lTOby
wktk

36:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/12 15:09:18 xElYXrfh
早く続きを!

37:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/12 21:06:18 DtwX7cvg
では投下~
俺は自分の部屋に入り、水銀燈をカバンの中にそっと寝かせた。
彼女の手の平を重ねて、その上に彼女の頭を乗せてやる。アニメで見たドールの寝方を再現してやるのだ。
…俺は銀ちゃんを見つめた



…たまらない。

反則だ。

この可愛さは。

…ちょっとくらいなら…触っても…いいよ…な

俺は手始めに水銀燈のホッペを指で触ってみた。





…ぷにゅっ






まさに上記の擬音語通りの感触がした。ハァハァ
心臓の鼓動が早くなる。あ、あれ?どうやら俺の心臓は下半身に血を送っているようだった。
ホッペを触ったあと、つぎ触るところと言ったら…あれだよな…
俺は目線をほっぺから首へ、そしてさらに下げていく。目線はふっくらとした膨らみの部分に到達した。
その部分に手を近づけていく。その瞬間、
「ううーん…」水銀燈が寝返りをうった。俺は驚いて手を引っ込めた。
「俺はいったいなにやってんだ」
俺はカバンを閉じた。
そして立ち上がり、机に座った。パソコンを起動する。暗い部屋にパソコンの液晶画面の明かりが灯る。
そして2ちゃんねるを開き、水銀燈スレの一つに入る。やはり数日前に書き込んだレスはもののみごとに美しく華麗にスルーされていた。
「どうにかしてこの幸せを皆に自慢してやりたい!」
ふと、俺の視界に雑誌が目に入った。
「そうだ…」
俺は「ローゼンメイデンのSS」で検索する。
「よかった。やっぱりあった。」
俺は「ローゼンメイデンのSSスレ」に入った。今までの出来事全てを文字で残すのだ。
俺は小説なんか学校の現文以外で読んだ事なかった。基本的に文字を読むという辛気臭いことはあまり好きでなかったからだ。
だから、慣れない長文を書くのには大変苦労した。同時に改めて日本語の難しさというものを思い知った。
全部書きおわった頃にはもう朝方になっていた。目蓋が重い。まだ誤字脱字がわんさかあるだろう。
もういい…ちょっと寝てから・・・修正だ・・・俺は意識を失った。

38:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/12 21:13:33 DtwX7cvg
「はっ!?」しまった。俺はそのまま寝てしまっていた。
「水銀燈!?」
水銀燈は俺の目の前、つまりパソコンを置いてある机のうえに堂々と膝をたてて座っている。
くそっ!もう少しで見えそうなのに!惜しい!俺は心のなかで叫んだ。
「あらぁ♪やっとお目覚めぇ~??」
なんか今日の銀ちゃんはやけに色っぽい。というか大胆だ。どうしたのだろう…
「あ、うん…パソコンを見てたら寝てしまったみたい…」
「ふぅ~ん…それより…あなたぁ昨日…わたしにぃ、なにかしたでしょぉ~?」
「えっ!?」
やばい、もしかしてバレてたのか!?
「そんなに私とぉ…やりたいの?」
水銀燈は俺の顎に触れ、顔を近付けて言った。何かを企む、文字通り小悪魔のような笑みを浮かべている。
こういう銀ちゃんも…悪くないかもハァハァ
俺の心臓の鼓動が早くなっていく。体中の血液が凄まじいスピードで循環し、体温を上げていく。
もう既に水銀燈には、俺に下心があった事はおそらくばれているだろう。
そしてありえない事に銀様自らお誘いしてきたのだ。ここは正直になっておくほうが良いだろう。
「えっ…あ…そう…です・・・やりたい・・・・・・です」
俺がそう言った途端、俺の目の前にいる銀ちゃんはすぐさま、さらに近寄り、いきなり首を傾げ、腕を俺の首に巻きつけると唇を奪った。
銀ちゃんは貪るように…やばい…激しい…
俺は必死になった。すると今度はその状態を維持したまま水銀燈は俺の片手を手に取り、自らの胸へともっていった。
俺の心臓は破裂寸前だ。とうとう下の部分がおっきしてきた。
正直、これは…相当やばいぞ…この、エロゲーのような展開…
「んーっ、ぱぁ…」
いきなり、水銀燈は俺の唇から離れた。その時、チュパッとやらしい音がなった。
「んふふ」
水銀燈は舌でペロと自分の唇に付いている唾液を舐めとった後、手で自分の唇を拭った。
エロい…エロすぎるぞ銀ちゃん!!
水銀燈は下をみた。そしてニッと笑う。
「あらぁ~これはなぁに?」
水銀燈は俺の股間をパンツの上から握った。
「ひっ!」俺は情けない声をあげた。
やばい…今の俺の選択肢…気付けば俺は手に二枚のカードを持っていた。

1.やられるがまま。銀ちゃんに全てを委ねる。
2.今すぐに水銀燈の手を振り払い、押し倒して無理矢理犯す。
さあどっちがいい!!

39:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/12 21:17:25 DtwX7cvg
ここは冷静に考えるんだ俺!人生最大の転機!いや好機!
そうだ、ここは1が無難だ。2だと、せっかくの銀ちゃんとの仲が崩壊する恐れがあるからだ。
しかも、逆に俺が殺される可能性だってある。俺は「されるがままになる」というライ○カードを選んだ。
「ここぉ、かたぁーい…ふふ♪」
もみもみもんでくる。今度はズボンの中に手が入ってきた。
「うわぁ」
「そんな顔しちゃってぇ~かわいいぃ~…ハムッ」
水銀燈はそれを口にくわえた。
「ふぉ!」
俺は絶頂した。









バッ!!!



「…」




何だ?俺は…
俺は瞬時に状況を把握した。
「はぁ!?やっぱり夢落ちかよ!くそが!!」俺は絶叫し、拳を机に叩きつけた。

40:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/12 21:21:10 DtwX7cvg
気分を落ち着かせる。涎が滴れて机に溜まっている。俺はティッシュを取り、机を綺麗にした。
ふと外を見る。今日もギラギラと太陽が空気を熱している。蝉もいつものように大合唱だ。
時計を見る。朝の9時を回っていた。
俺はトイレに行こうと立ち上がった。そういえば銀ちゃんはどこだ。俺は部屋を見回したがどこにも居なかった。
カバンはある。窓が開いている。心地よい、そよ風が吹きこんできた。どっかに空中散歩にでも出かけたのだろう。
昨日の出来事は夢ではなかった。目の前の銀ちゃんのカバンが何よりの証拠だ。
俺はうれしかった。本当に、本当にこれは現実なのだ。ホッペを摘むと痛いのだから。
…体がベトベトして気持ち悪い。風呂に入りたい。
すると銀ちゃんが窓から入ってきた。
「あ、おかえり」
「あら、起きたの」
水銀燈はチラとこちらを見た。が、すぐに目を逸らされた。
やっぱ銀ちゃんは無言だ。
「そうだ!」
俺は思い立った。こんなに暑いのだ。川に泳ぎにいこう。もちろん、銀ちゃんと!
「なぁ!銀ちゃん!」
「なに?」
「今から川に泳ぎに行かん?」
「えっ・・・川?泳ぐの?」
「うん、川。渓流だから水が綺麗で冷たくて気持ちいいよ。な!行こ!」
「…」
返事がない。
「…嫌?」
水銀燈は首を左右に振った。髪も左右に揺れる。この仕草もまたかわいい!ハァハァ
「なら行こ!」
俺は水銀燈を抱き抱えた。
「汗…臭いわ…」
「うわわぁ!ごめん銀ちゃん!」
俺はすぐに銀ちゃんを下におろした。
「ちょっとシャワー浴びてくるよ!」
俺は風呂場に入った。
シャワーを浴びる。こんな汗の臭かがせて悪かったなぁ…俺は少し罪悪感に苛まれた。
「ん?」
風呂のスリガラスに黒いものが移っている。
銀ちゃんがそこで待っていてくれているのだ!
おぉ俺は…本当に銀ちゃんのミーディアムになったんだなぁ。俺は感激した。嬉しくてたまらなかった。
根元の木が腐ってるようなボロい風呂場も今はどんな超高級ホテルのバスルームよりも美しく見える。
「銀ちゃん、あがるからちょっとそこ退いてー。」
影がスッと消える。
「ありがとう」
俺は風呂から出、脱衣場で服を着る。
そして脱衣所を出る。引き戸の横に水銀燈はいた。
「じゃっ!行こか!」
「ええ」
水銀燈は満面の笑みを浮かべた。

41:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/12 21:37:44 DtwX7cvg

何で川まで行くのか。もちろん、バイクだ。その理由は…まあ…あれだwwwwww
また倉庫からバイクを出すためにシャッターを開ける。そして米の冷蔵庫の付近に行く。そうだ…俺はいい事を思いついた。
「おーい、水銀燈ー!ちょっと来てみ!」
「なぁに?」
外で待っていた水銀燈は中に入ってきた。
「こっちこっち」
「何よ」
「これはな、お米を貯蔵するための冷蔵庫なんだけど、この中は涼しくて気持ちいいんだ。中に入ってみない?」
冷蔵庫と言っても巨大で、中に何もなければ大人一人位十分に入れる。
また、温度も丁度よく、真夏の灼熱地獄を体感したあとにこの中入ると最高だ。
俺は巨大な観音扉を開ける。心地よい冷気が出てくる。俺は水銀燈を抱き抱え、冷蔵庫の中に入れた。
「ほらっ涼しいだろ?」
「ほんと!気持ちいいわぁ」



・・・バタン!
俺は冷蔵庫の扉を閉めた。

「ちっちょっとお」
中から水銀燈の声が聞こえる。
俺は必死に笑いを堪え、沈黙を守った。


「ねぇ、冗談はよして。出してよ」
くっくく…ダメだ。笑えてくる。


「ね、ねぇ…そこに居るのでしょ!?」
俺「…」


「出して…早く出してっ!ねぇ!出して!」
俺「…」ドアを押さえ沈黙を続ける。


「・・・出して…早く…」




「ん?」しばらくして声が聞こえなくなった。さすがにやりすぎたか。
俺は扉を開けた。

42:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/12 21:40:48 DtwX7cvg

「あ…」
水銀燈は冷蔵庫の中で三角座りし、シクシクと泣いていた。
「ご…ごめん…」これはやりすぎた。
水銀燈はこちらに振り向いた。涙を流して俺を見つめてくる。
うっ…こんな時になんだが、これは…d(゚∀゚)カワイイ!!

水銀燈はまだ俺を見つめている。
・・・・・・
俺はイイ!と思ったことを後悔した。本当にかわいそうに思えてきた。
俺は水銀燈を抱き上げた。
「悪かった悪かった。まじごめん…」
俺は水銀燈の頭を撫でながら言った。
「馬鹿!ほんとに…真っ暗で恐かったん…だから…」
水銀燈はヒックヒックと嗚咽していた。
俺はバイクのエンジンをかける。1100ccの巨大なエンジンが唸りを上げた。
俺は昨日と同じ様に水銀燈をバイクに乗せ、出発する。
しばらく走る。いつの間にか山に入っている。時々、小さな集落がある。
山のなかの道を走るのは本当に気持ちがいい。マイナスイオンむんむんだ。
水銀燈とは…話しにくい。俺は無言で川を目指してバイクを飛ばした。

43:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/12 23:43:01 zzP9s0bF
>>37-42
GJ!銀さん可愛いし読みやすくて素敵です。続き期待!


以前めぐのお見舞いとか
銀ちゃんクッキーとか似顔絵とかのSSを書かせて貰った俺から、
SS職人さん達と読者の方たちへプレゼント。
URLリンク(rozen.no-ip.org)
(※トロイメント未視聴の人は注意)

書き手と読み手双方が
何らかのモチベーションを得てくれればいいかなぁ、と思う次第です。
一日くらいで消しますんでお早めにどーぞ。

44:kkk
07/05/12 23:59:13 Ed0vhCCt
>>37-42
(・∀・)イイ! GJ!

45:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/13 00:07:41 C+cLhNgQ
妄想を現実化しているというより現実を妄想化しているな

>>43
もろたthx

46:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/13 00:19:16 1pJbVruR
GJすぎる
>>45
意味わかんね

47:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/13 00:20:29 46U1+I/x
>>43
異常に重いんだが
ダウンロード速度264bps

48:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/13 11:38:27 A0KeleDg
タダでこんなに良いものが読めるとは…
レスを見るとローゼンメイデンはまだまだ需要が有るのがわかる
つくづく連載終了が悔やまれる
いや、スレ違いだなスマン
だが言いたかった

49:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/13 18:56:21 4jnp7bW0
>>42の続きです~
しばらく走っているとトンネルが見えてきた。俺はこの道を通るといつもワクワクする。それを抜けるとダムが見えてくるはずだ。
下からダムのせき止め?を見上げると、そこそこな迫力がある。その近くの道を通る。
「ほら、銀ちゃん!あれがダムだよ。すごいだろ?」
銀ちゃんに返事は無い。
よほど怒っているのか…
山のクネクネ道をしばらく走ったあと俺はアスファルトの道から舗装がされていない脇道に入る。すると急な下り坂が表れた。
危ないので俺はバイクからおりた。銀ちゃんもヘルメットを外してやり、バイクから下ろしてやる。
「この先に川があるんだ。だいたい10分くらいで着くよ」
俺は重いバイクを押しながら森の木のトンネルを歩いた。
すると道にスバル・インプレッサが止まっている。知り合いのクルマだ。
木漏れ日がメタリックブルーのボディーに反射し、すこし綺麗だ。が、後ろにそそり立つ巨大な羽はいつ見てもダサい。
なぜこんなもの付けるのか俺には理解できなかった。
眼前に川が見えてきた。バイクをとめる。川の幅は測ったことは無いがパッと見、4、5メートルか。
もうちょっとあるかもしれないし、ないかもしれない。川自体は小さく見えるが、深さは結構ある。
深いところで3メートルはゆうに有るだろう。水は極めて透明だ。全く濁りはない。底までくっきり見える。
流れはそんなに速くない。だがぼけていると流される。川辺には大きな石、小さな石がいっぱいある。
どうやってやってきたのか人間より大きな岩もゴロゴロある。
「転ばないように気を付けてね」
俺は水銀燈に注意をうながした。
どこからかバシャバシャと水の音や声が聞こえる。
「やっぱ来てるか…銀ちゃん、こっちだよ。」
俺は後ろを振り向いた。
足場が悪いので銀ちゃんは手間取っていた。
俺は銀ちゃんの元ヘ行き、抱き抱えてやる。
「よーし、ここは人がいるからあっちにしよう」
俺は銀ちゃんを抱えて川を登る。
「ここらでいいだろ」
俺は場所に着くと水銀燈を下ろしてやった。
暑い。暑すぎる。俺は川に入りたくてたまらない。我慢できなくたった俺は服を脱ぎ去り、下の下着一枚になり、川に飛び込んだ。
「うー!冷た!」
非常に冷たい。夏なのに水はギンギンに冷えている。冷蔵庫で冷やした水より冷たいかもしれない。
底を見ると魚がいる。オイカワか、ヤマメ・アマゴ・イワナだろう。カジカもいるようだ。
「銀ちゃん!きもちいいよ!早く入って来てみろって!」
銀ちゃんは靴を脱いで裸足の状態で躊躇している。
そうか。ドレスで泳げるわけがない。
あ!そうだ…俺にまたもや閃きの閃光が走る。
俺は川から出る。
「ほら、銀ちゃん早く」
「でも…」銀ちゃんは服をゴネゴネと触っている。
「そんなの脱いじゃいなよ!」ハァハァ
「えっ、でも・・・」
「ここには誰もこないから大丈夫だって!」
「ホント?」水銀燈は少し羞かしげに上目遣いで聞いてくる。
「もちろん!俺が保障する」
「わっわかったわぁ」
銀ちゃんはおもむろに服を脱ぎ始めた。

50:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/13 19:03:49 4jnp7bW0
「よ、よし、準備はいいね?」
水銀燈は下着姿になった!これは…アニメにも無かった姿!下着姿の水銀燈も…いいぞハァハァ
「なっなにじっと見てるのよ」
「いや、別に…」
俺は急いで目を逸らした。
「ただ、銀ちゃんかわいいなーって思って」
「なっ!……」
「……ありがとう…」銀ちゃん顔真っ赤。
「さて行くぞ!」俺は水銀燈を抱き抱え、川に向かって走りだした。
「ちっちょっと!」
そういえば水銀燈って水に濡れても大丈夫なのだろうか。
そういえばオーベルでは海みたいな所に沈んでいっても大丈夫だったよな。サブザブと水のなかに入る。
「冷たぁ~」銀ちゃんが言った。
「なっ気持ちいいだろ?」
「ええ!とっても」
銀ちゃんは嬉しそうだ。
「ここは岩壁になってるだろ?あそこを登っていって頂上から飛び込むときもちいいんだぁ!」
上流から下流を向いて左側、つまり俺たちが歩いてきた所は石がたくさんあるだけだ。そして森が続いている。
対して右側は断崖絶壁の岩壁だ。5メートルはあるか。
その岩壁に登るために俺は銀ちゃんを離した。
その瞬間、
「きゃあ!」
ブクブクと沈んでいくではないか。よく考えたら銀ちゃんは人形だ。浮くわけがない。俺は自分の愚かさを呪った。
「待ってろ!いま助けに行く!」
水深は・・・3メートルとちょっとだ・・・よし。俺は急いで潜る。
が、流されて少しづつ銀ちゃんから離れてしまう。流れに逆らいながら数メートル潜るのは以外と辛い。
くそ!もうちょっとで届きそうなのに!次の瞬間
「うっガポッ!」
俺は足をつった。去年の受験期間から運動不足が続いていたからだ。痛くて俺は思わず水を飲んでしまった。
俺はどんどん沈んでいく。苦しい。もがいてももがいても水面は遥か上だ。俺はパニックになった。
苦しい!死にたくない!苦しい!助けて!誰か!意識が遠退いていった。

51:kkk
07/05/13 19:13:56 +THeIoxg


52:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/13 19:27:57 1pJbVruR
これは金払ってもいい

53:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/13 20:12:12 4jnp7bW0

「ん…死んだのか?」
そうだ、俺は溺れたのだ。情けない。








何かを忘れている。。。





「銀ちゃん!!」俺は飛び起きた。
「あら♪やっとお目覚め?」
銀ちゃんは横に座っていた。どうやら、川の外にいるようだ。
「えっ、銀ちゃん…助かったの?」
「ええ、あれくらい」
「よかったぁ~。あ、そういえば、俺は…」
「か、感謝なさい…」
「銀ちゃんが助けてくれたの!?」
「…」
「ありがとう!銀ちゃん!それと…何も知らずに深い所まで連れていって…ごめん・・・
しかも助けに行った俺が溺れるなんて、情けないね。。。男失格だよ。」
「でも・・・私、嬉しかった。。。それと、私も忘れてたの…自分は人形だから泳げないってこと。わるかったわ…」
暗い空気になった。せっかく遊びにきたのに。
「そうだと思ったよ!銀ちゃんが悪いって!」俺は努めて明るく言った。
「なっなんですって!?」
「はいはい、冗談だよ!」俺は水銀燈のデコをこついた。
「なっっ!」銀ちゃん、また顔真っ赤。
「そだ!釣りしない?」
「…釣り?」
「うん、この川には魚がいるんだ。焼くと旨いぞ!」
「ほんと!?」
ん?銀ちゃんは魚好きか?
「ちょっと待ってて。釣り竿借りてくるよ」
俺は走りだした。

54:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/13 20:17:40 4jnp7bW0
「そんな調子のって走ったらまた足つるわよ!」
「だいじょーぶー!そだ、銀ちゃん、服濡れてるだろ?俺のシャツ着といていいよ」
服の濡れた銀ちゃんもいい感じなので惜しいが・・・
「やぁーよ。あなたが一度着た服なんか」
「素直じゃないなぁ」
俺はそう言いながら川を下った。
来たとき居たやつはまだ遊んでいた。元気なものだ。
「うーっす、久ぶりやなー」
手前で何かしていた一人に声をかける。
「おー、久ぶり!誰かと思ったやんけ。帰っとったんかいな。連絡くれよー」
「あー、悪い悪い、色々忙しかったねん」
「あっ、丁度ええわ。おまえもこっちこいよ。」
「悪い!今日はあかんわ。親戚の子の相手したってるねん。マジだるいし。」
適当な言い訳をしておく。
「そうか…しゃーないな」
「悪いな。でよ、お願いやねんけど、釣り竿持っとらん?もし持ってたら貸して欲しいねん。」
「あー、あいつが持っとるかも。おーい!釣り竿貸してやってよぉー!」
「釣り竿?」向こうにいた一人が言う。
「誰がぁー?」
「こいつやー!」
「おー!久しぶりやんけ!おまえもこっち来いよ!」
「親戚の子と来てるんやってよ!」
「まじ?」
「ごめんなー!」
「釣り竿なー、わしのインプのトランクに入れたーるわ。インプの場所わかる?」
「あー、わかるわ。来る時見たし。ありがとーな!遅ーなったら、また家に返しに行くわぁ!
あ、そや、炭もちょっと欲しいわ…無いやんな?」
「あー炭はたぶん無いわー…。」
「わかった。ありがとうな!」
「おう、またな!」
「おう」
俺は片手をあげ、別れを告げたあと森に入っていく。
車を見つける。俺はインプのトランクを開け、釣り竿と釣具一式を取り出した。
「銀ちゃん待ってるかな」俺は急いだ。
「おまたせー!」
おっ、嫌とか言っておきながらしっかりと俺のシャツを着ている銀ちゃん。
「遅かったわね」
「うん、ちょっとね」
「いま用意するからちょっと待ってね。」

55:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/13 20:21:11 4jnp7bW0
俺は釣り竿を延ばし、先端の紐にライン(透明の釣り糸)を付ける。
そして右手、左手、口を使い鉛製の重りや針、蛍光色の紐である目印などなど必要なものを順々に付けていく。
渓流用の餌釣り仕掛の完成だ。銀ちゃんは俺の作業を横で無言でジッと見ていた。
「あなた、以外と器用ね」
「そうか?釣りする人ならこれくらい誰でも出来るよ。」
俺は餌となる白くて小さな幼虫を針に刺した。
「うっ気持ち悪い…」
銀ちゃんは顔を逸らした
「あはは、餌釣りなんだから仕方ないよ…さて、こっちだよ。」
俺は釣れそうなポイント(釣り場)を探す。水銀燈はしっかりついてくる。
「あそこがいいな」
俺は釣れそうな「おちこみ」を見つけた。川が小さな滝?状になっている部分で、少し水深が深くなっている。
魚はおちこみに落ちてくる餌を食べるため、ここに寄ってくるのだ。
俺はさっそく投げ入れた。

…十数分後…

「釣れないわね…」
「あっれー?おかしいな…」
俺は場所を移動したりしながら粘った。
「ホントに釣れるの?」
「釣れるよ!見てろ!デカイの釣り上げてやる」






諦めかけていたとき・・・
「おっ…キタ!でかい!」俺は上手くアワセる。
パチャン…
「あらかわいい」
手のひらサイズのアマゴだ。天然のアマゴは模様が大変綺麗でかわいい。
俺「…」情けないorz
俺は針を外し魚を逃がしてやる。
「あら、逃がしちゃうの?」
「まだまだ小さいからね。」
「ふーん…」
俺は釣りを再開した。釣りは持久戦だ。焦ってはまず釣れない。
銀ちゃんの前でおっきいの釣って凄い所見せてやる!

56:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/13 20:24:02 4jnp7bW0




諦めかけていたとき・・・
「おっ…キタ!でかい!」俺は上手くアワセる。
パチャン…
「あらかわいい」
手のひらサイズのアマゴだ。天然のアマゴは模様が大変綺麗でかわいい。
俺「…」情けないorz
俺は針を外し魚を逃がしてやる。
「あら、逃がしちゃうの?」
「まだまだ小さいからね。」
「ふーん…」
俺は釣りを再開した。釣りは持久戦だ。焦ってはまず釣れない。
銀ちゃんの前でおっきいの釣って凄い所見せてやる!


さらに十数分後・・・
「おっ!でかい!!」
竿の引きが前と全く違う。
バシャ!銀色の体が見える。
「うお、でけー!鱒だよ銀ちゃん!」
「そ、そう」あれ?銀ちゃんの声が遠くから聞こえる。
「銀ちゃん、何でそんな離れてるの?」
「なんでもないわよ」
「ふーん」わかったぞ、銀ちゃんは大きな魚が恐いんだな。
「ほら、見てみなよ!おーきいだろー?40センチはあるな。」
俺は魚を持って、水銀燈に近づく。
「どうしたの?銀ちゃん。ホラ!」
俺は銀ちゃんに魚を投げる真似をした。
「きゃあ!」銀ちゃんは両腕で顔をかばった。
「冗談だよ!」
「もう!」銀ちゃんはふくれた。これまたかわいい。
その後は、調子よく釣れた。もちろん銀ちゃんにもやらせてあげた。
「そろそろ日が傾いてきたね」
「そうね」
俺は川辺の木陰に腰をおろした。
銀ちゃんもその横に座った。夕方の風が気持ちいい。
「おもしろかった?銀ちゃん」
「ええ、とっても!」
「なんか俺ばっか楽しんでた気もするけど・・・」
「そんな事無いわよ。」
「そう、よかった!」

57:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/13 20:29:17 4jnp7bW0
・・・・・


「ねぇ…」
水銀燈が切りだした。
「キスして」
「えっ…」俺は動揺した。これは現実か!??ばれないようにホッペの下の方を軽くつねってみた。痛い。
「ねぇキスしてよ」水銀燈が誘っている!!!まだ出会って二日目だぞ!?
「…」キスか…嬉しいが…緊張するなぁ…俺は顔を近付ける。
「!!」だめだ。俺は昨日の夢を思い出してしまった。ああ、ダメだ。変な妄想が頭を駆け巡る。
仕方がない…俺は顔を水銀燈のホッペに進路変更し、一瞬だけキスした。
「なーんだ。つまんない」
水銀燈は目を開け、そっぽを向いた。
「そうだ!」水銀燈は腕を差し出した。
「今度はここにキスして」
「ここに?」
「ええ。あなたがここにキスすると私と契約をかわしたことになるの。」
「契約?」辺りは夕焼けに染まっていた。虫が鳴いている。
「深い意味は無いわよ」
「そう」キタぞ!俺はついに正式な水銀燈のミーディアムになるんだ!俺は興奮を押さえ、キスした。


俺は釣った魚を小さなクーラーボックスに入れた。
そして帰宅の途につく。バイクを走らせる頃には辺りは真っ暗になっていた。
「家に着いたらこの魚、焼いて二人で食べようね」
「ええ!」

こうしてこの一日は終わりを告げた。

58:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/13 20:32:31 4jnp7bW0
水銀燈と出会って3週間が立っていた。
その間、俺はずっと銀ちゃんと一緒に過ごした。色々な所に行き、遊んだ。喧嘩もした。
ドレスもいいが、外に出てもおかしくないように、今の女の子らしい服を買ってあげたりもした。
俺にとってこの3週間は宝物だった。








楽しい事というのは長いと信じていても思いの外、早く過ぎ去る。









終わりは突然やってきた。
確か夏休みがもう終わろうとしていた頃だったか。明後日には実家を離れようとしていた時期だと思う。

59:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/13 20:39:34 4jnp7bW0
今日は特にすることが無かった。と言うよりなぜか体がだるくてしかたない。何もやる気が起きないほどだ。疲れたのかな…
「あ~」
俺は畳の上で、扇風機の前で涼んでいる。
エアコンなどというハイテク機器は無かった。戸全開だ。庭から中が丸見えだ。
銀ちゃんは縁側で本を読んでいた。
「ちょっと、静かにしなさい」
「はぁ~~い」扇風機で声が震える。
「ん?」
やけに目が霞む。擦っても擦っても治らない。なんだ?力が出ない。
しばらくするとだんだんと意識が朦朧としてきた。視界が曇り、グルグルと回転し始めた。
「ん~なんか体が…」
「あら、」
本を読んでいた水銀燈がこちらにやってきた。
「銀ちゃん…?」
眠くなってきた。
「なんだか…眠いんだ」
「でしょうね」水銀燈は微笑んでいる。でしょうね?どういう意味だろう。
「へ?」俺は銀ちゃんに尋ねた。
「あなたはね、今から私に殺されるの。」
「は?」意味が分からない。
「私は自分の目的のためにあなたを利用したの」
「利用?」声に力が入らない。
「そう。私はあなたの命を奪って力を得るの」
一体なんの話だ。
「何を言ってる…んだ?…今まで…」
「今まで一緒に仲良く暮らしてきたって?そんなの演技よ。あなたから確実に力を得るためのね。あなたってホント馬鹿ね。
私は昔から人間が大嫌いなの。残念だったわね。騙されるあなたが悪いわ。」俺は必死に水銀燈を見つめた。
「私にはね、あなたと違ってアリスゲームに勝つという宿命があるの。
その目的を達成するためにあなたを利用したの。馬鹿なあなたは私の思ったとおりの反応をしてくれたわ。
おかげで簡単に契約にこぎつけ、あなたのエネルギーを私に送るための回路を作れた。」
よくわからない。ちょっとした事を考えるのでも一苦労だ。
簡単に言えば、銀ちゃんは俺の命を奪って自分が生きるための糧とすると言っているのだな。

60:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/13 20:42:11 4jnp7bW0
「そう…よかった…ね」皮肉を込めて言ったわけでは決して無い。
「はぁ?あなたってホント馬鹿ね。私はあなたを殺そうとしているのよ。わかる?あなたは今から死ぬの。」
俺にとって、水銀燈と出会うまでの人生は本当につまらない物だった。何の夢も希望もなかった(持たなかった)
俺は大学なんか行く気は全く無かった。しかし、親に行かされていた予備校の先生や学校、両親に猛烈に進学を勧められ、
気付けば大して何もせずに某国立大に入学していた。法学部に入った理由はただなんとなくだ。
そして大学生活は「つまらない」の一言で片付けることができた。
何の目的もない勉強は苦痛でしか無かった。退学を真剣に考えた程だ。俺にとって人生はすべてが物足りなかった。
何をしてもすぐに飽きた。前の彼女とも、彼女が高校の時、一方的に接近してきたので、ただなんとなく付き合いはじめただけだ。
やはり俺は何とも思っていなかった。その証拠に別れた時は何のためらいも無かった。そんな時だ。彼女か表れたのは。
たった一ヶ月程だったが彼女は俺に一生分の喜びを与えてくれた気がした。いや、俺の場合、それ以上かもしれない。
「キミに…殺されるなら本望だよ…俺の命をキミが…使ってくれる…の・・・だろう?
俺が…キミの…幸せに役立つなら…こんな命…いくらでも…差し出せる…よ」
今のこの俺があるのは彼女の存在があったからなのだから。
水銀燈は驚いた顔をした。そして…
「ハハハッ!なぜ!?なんであなたはそんなに馬鹿なの!?」
水銀燈は口を大きく開け、笑っている。




「…」

61:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/13 20:43:45 4jnp7bW0
「なぜあなたは…そんなに…こんな私なんかに…優しいのよ…」






気付けば水銀燈は泣いていた。どうしたのだろう。俺は何かまずい事でも言ったっけ。
「水銀燈…泣かないでよ…僕はキミのそんな顔は…見たくないよ…」俺の意識はみるみる遠退いていく。
同時にとてつもない幸福感に満たされていく。これで水銀燈と一緒になれるのだ。



「ごめんね…ごめんね…」ん?何か聞こえる。水銀燈?
君が言っているの?なぜ?




62:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/13 20:46:36 4jnp7bW0
「んーっ…」
気付けば俺は意識が戻っていた。だが体はだるいままだ。関節が痛い。
「…ごめんね…」
壁にもたれ、足を広げて座っている俺の横に、水銀燈は俺に頭と体をもたれさせるように、座っている。
「ごめんね…私…ごめんね…」
俺は力を振り絞り水銀燈の頭を撫でた。まだ頭はボーッとする。
「なぜ…君が謝るの?なんで…泣くの?」
「…ごめんね…私も…あなたが好き」
「…そう…ありがとう。銀ちゃん。嬉しいよ…」
「私ね、とっても楽しかった…あなたと過ごした日々…私の…宝物よ…?」
意識が徐々にハッキリしてきた。体力も回復してくるのが分かる。視界の曇りも消えてきた。俺は横にいる水銀燈をみた。
俺の脇にもたれ、うつむいている。
「あれ?」確かに目の曇りは取れた。しかしすこし水銀燈が白っぽくというか薄く見える。
「おい、水銀燈?」俺は水銀燈をゆすった。


グシャ…


「それ」は脆くも崩れた。

「へ?水銀燈!!」俺は叫んだ。
どこからか水銀燈の声が聞こえる。
「はじめてだったの。こんなにやさしくされたの…嬉しかった…」
俺は窓を開け水銀燈と叫んだ。どこに行くのだ水銀燈。早く戻ってきてくれ。
「ねえ、私の最後の望み、聞いてくれる?。」
最後!?そんな…嫌だ。嫌だ最後なんて。離れたくない。せっかく…まだ出会ったばかりじゃないか…あんまりだよ。ひどいよ…
俺は水銀燈の名前を呼んだ。いい年して泣きながら呼んだ。しかし返事は無かった。水銀燈が戻ってくることは


もう無い。

63:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/13 21:04:07 Jl8AxkLM
>>62
全俺が泣いた

64:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/13 21:44:04 9vkGP5A3
友人との会話が奇妙にリアルだな

65:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/13 21:54:12 4jnp7bW0
今、やっと俺は、出会ったその夜から書いていた日記を小説の形にしたものを、かなり省略はしたがを投下し終えた。
結局、彼女の願いは何か分からなかった。が、俺は思う。水銀燈の分もしっかり生きよう。これが彼女の願いなんだ。そうに決まっている。
今、手元に銀ちゃんが着ていたドレスと鞄がある。
いつまでも銀ちゃんを側に置いておきたいという理由から捨てれずに、残しておいたものだ。
週末、実家の倉の奥に片付けに行こうと思う。



どうでしたでしょうか。
感想なんかいただけるとうれしいです・・・
また、「パクリだ!」的な事言われない事を願っておりますw

66:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/13 22:39:14 oCJiiEUu
切なくていい!
こういう書き方もありだなと思い知らされた。また書いてくれ。
後、インプださい言うな!w

67:kkk
07/05/13 22:43:34 +THeIoxg
最高。GJ!


68:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/13 22:54:31 OLYdsq2i
>>66
ところでインプはどう?
                 いいですね
( ´∀`)            (´∀` )         (・ω・ ).。o ~(・・・・・・・)

                       走りますよねぇ
( ´∀`) (´∀` )          (・∀・` )


走らんよインプは   走らんよねぇ              ?
( ゜Д゜)    (゜Д゜ )             (´・ω・`)


NAインプって亀だよな。   そーそー重いしね。
( ´∀`)         (´∀` )           ゛(・ω・ )


内装は軋むし   馬力は無いしWRX以外は
プラスチッキー  偽インプってか?     インプって酷いんだぁ?
( ´∀`)  (´∀` )              (・∀・` ))))


あんだとコラ!?   インプはいい車なんだよ!ゴルァ!     ???
( ゜Д゜)        ( ゜Д゜)         ((((’~’;)

69:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/13 23:29:05 1pJbVruR
もう、神認定してもいいか?

70:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/14 00:27:23 9/oBJlVm
ノーマルスレ初の神職人認定age

71:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/14 01:34:21 8/Pc388g
>>65
GJ!短期間でここまで話を展開できるとは。
とても面白かったし、主人公視点ですんなりの話に引き込まれました。
その文章力に脱帽です。

ただ、あまり褒めてばっかでは書いた人も本意では無いと思うのでちょっとだけ指摘。
あくまで私の個人的な意見ですので、読み飛ばしていただいても結構です。

まず、これは始めから読んでいて感じたことですが、水銀燈があまり水銀燈らしくない気が
しました。>>59でなんでらしくない行動をとっていたかは一応の説明がなされていますが、
その分>>60以降の水銀燈と主人公とのやりとりをもう少し書き込んで彼女らしさを前面に出したほうが
良かったんじゃないかと、水銀党員の私としては思いました。
全体を読み返してみても>>58以降が少々端折り過ぎの気もします。
せっかくここまでを細かく描写していたのですから、最後もじっくり書かれた方が良かったのではと。
あと、主人公視点で書かれているので、終わりももう少し余韻を持たせて書くと尚良いと思います。
それ以外は文句なしです。お疲れ様でした。
次作も楽しみにしてますよ。

72:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/14 01:48:21 w+i2vrHW
>>65
GJ!
面白かった!


正直>>58を読むまでシリーズ化を期待していた俺がいた

73:Rozen Maiden LatztRegieren プロローグ
07/05/14 02:09:57 wSZh4ySF
0

水銀燈、金糸雀、翠星石、蒼星石、真紅、雛苺、そして…第七ドール。
これら七体の薔薇乙女 - ローゼンメイデンと呼ばれる自らの意思を持つ生ける人形は、
天才といわれた人形師ローゼンが究極の少女アリスを目指して作られた試作品といえたとこでしょう…
究極の少女とは美しさか、存在か、心か、何をもってしての究極なのか
私は夢の中でずっと、ずっとそれを思い出そうとしています…
ローゼンは最初に水銀燈を作ったが、アリスではなかった。そして、二作目、三作目…どれもアリスではない。
ついに彼は七作目を作り終えたところで人形作りをやめてしまい、姿を消してしまった。
では、何故七作目で止まったのか…?

七作目には依然としてアリスになれなかったものの、その鍵となるものを見出せたからか
それとも七体というところに意味があるのか

"7"にはそれは幾何学的にあまりに沢山の意味を持っていますが、
"割り切れない気持ち"、"さらなる探求"がこの場合には適するところでしょうか…
それは7が全円の360度を 1、2、3、4、5、6、7、8、9 の中で唯一割り切れない数だから

アリスへの割り切れない気持ちと、アリスへのさらなる探求…

ここで、私からあなたにしつもん。
ローゼンは薔薇乙女七体に彼女らの魂となるローザミィスティカを"7つ"に割ってそれぞれに与えました。
なぜローゼンはよりにもよって、割り切れない7を選んだのでしょうか。これでは均等に分けられません。
そこにはローザミィスティカとアリスに関わる秘密が姿を隠しているのです…

74:Rozen Maiden LatztRegieren I:余命 Remained Life
07/05/14 02:12:50 wSZh4ySF
初めて書いた小説です。あげてすいません。
アニメ第二期の後の話ですが、雛苺、蒼星石も復活しているので設定をある程度無視しています。


1

鞄の中で眠りに就こうと目を閉じた真紅は、今日の出来事を思い出していた。
お父様を名乗って現れた一人の人間は実はその弟子で、第七ドールを名乗って現れた薔薇水晶もローゼンメイデンでは無かった。
昨日のアリスゲームは、全て夢だった。
だから、それまでに倒されたドールはお父様の手によって直してくださった。
一度体を水晶に串刺しにされ、生まれて初めてジャンクというものを味わった晩だったが、真紅の気持ちは暖かかった。
もう一度アリスを目指しなさい。お父様はおっしゃった。でも、アリスゲームだけがアリスになる方法じゃない。

他に道はある。

これは他のドールにも伝えられた言葉だろうか、真紅は思った。
翠星石や、雛苺、金糸雀、そして水銀燈。
もし水銀燈にも、お父様がアリスゲーム以外にも道があることを教えていたら…
私はもう、水銀燈と戦わずにいられるのか。

彼女は今頃、何をしているのだろう…真紅は急に強烈な眠気に襲われ、眠りに落ちた。

視界が闇に閉ざされている。
真紅は不安を感じた。何もみえない。普通なら、今頃は自分のフィールドで一人紅茶を飲んでいるはずなのに。
次第に闇はゆっくりと薄らぎ、僅かながらうっすらと風景を表し始めた。
真紅の不安はいよいよ焦燥に変わってきた。明らかに私のフィールドではない。
薄暗い、人気の無い廃墟も同然の…教会。空間の両側には、一つ残らず破壊された信者席がやりたい放題に放置されている。
ステンドガラス張りの窓から入ってくる光は極度に少ない。その一部に、薔薇が描かれているのが目に入った。
そして教会の正面には、大きな十字架が立てられている。
真紅はその瞬間息を呑んだ。十字架のすぐ下にいる人物が下を向いて呆然と立ち尽くしていたからだ。
十字架をそのまま逆さにした逆十字の印を標されたドレスが目をつく。
そう、彼女だ。水銀燈…!。
下に俯いたまま身動きひとつしておらず、自分には気付いていないらしい。
一瞬、真紅はその場を離れたい衝動に駆られたが、何かの力が勝手に真紅を前へと押し進め始めた。
いや、違う。
これは全く違う人の視線を自分が見ているのだ…だから自由が効かない。
視界はついに水銀燈の目の前へと迫ると、ゆっくりと水銀燈は顔をあげた。
その瞳から憎悪と殺意の赤い光が差して真紅が身を凍るような恐怖を感じたとき、突然視界全体を真っ白なフラッシュが覆った。

75:Rozen Maiden LatztRegieren I:余命 Remained Life
07/05/14 02:14:00 wSZh4ySF
何がおきたのか分からないのだが、今真紅は飛んでいた。
数本の黒い羽と共に。いや、黒い羽のすぐ後を追うようにして飛んでいる。水銀燈の羽だ。いまだ自分の視線ではないらしい。
黒い羽はまっすぐ軌道を変えることなく飛び続けた。やがて黒い羽は何処を目掛けて飛んでいるのかが見えてきた。
真紅は声を張り上げたが、自分の耳に何も聞こえてはこなかった。黒い羽の行く先には、自分自身がいる。
真後ろを向いていて、背後より迫る水銀燈の羽に気付いていない。距離がみるみるうちに縮まっていく。
やめて!真紅はもう一度声にならぬ叫びをだしたが、真紅に黒い羽がまさに刺さろうという直前で全く別の視点に切り替わった。
竜巻。すぐ目の前の竜巻が地面をえぐりながら直進し、今度は水銀燈を飲み込もうとしている。
この竜巻は金糸雀の技で起こしたものだ。またしても、竜巻が水銀燈に到達する直前で視点が切り替わった。
それからも、次から次へと事が成熟する直前で視点が切り替わっていった。
翠星石の植物が雛苺を捕らえる直前…
蒼星石のはさみが金糸雀を切る直前…
さらに視点が切り替わると、今度は紅い花びらが目の前に写った。これは自分のものだった。
視点は花びらの動きに沿って、まっすぐ同じスピードで追いかけてゆく。今回は長い。
ゆっくりと目の前の障害物をぎりぎりで避けて視界が開けると、何も知らずに一人飛んでいた水銀燈が目に飛び込んだ。
突然の攻撃に水銀燈はこちらを向き、恐怖に満ちた顔を覗かせた。
やめて!
いまや花びらは水銀燈の胸にむかって一直線にむかい、ほとんど着弾したも同然だ。だが、またそこで視点が切り替わった。
雛苺の蔓が翠星石を絡め取る直前でまた視点が切り替わる…
一体誰の悪ふざけなの!
だが、次の光景がさらに真紅を戦慄させた。
真っ白の薔薇の茎。どのドールのものか思い当たらない。
茎はまっすぐのびてゆき、その動きに沿って視点はまっすぐ直線に進んでいった。
その茎の先にいた人物は一人の人間だった。お父様!白い茎は戸惑うことなく人形師のもとへとのびていく。
そのまま視点が人形師のもとへ突っ込もうとするところで、視界はゆっくりと闇に閉ざされていった。

76:Rozen Maiden LatztRegieren I:余命 Remained Life
07/05/14 02:15:13 wSZh4ySF
2

「……はっ! あ、痛ッ…」
これまでになく突発的な目覚め方をした真紅はその勢い余って鞄に頭をぶつけるようにして飛び起きた。
「はぁ…!っはぁ…」
まだ呼吸が整えらない。今まで見た中でも最も恐ろしい夢をみた。
アリスゲームの夢。いままで楽しげな表情ばかり見せてくれる雛苺も、優しげな表情を見せてくれる蒼星石も、
アリスゲームの中では全てを変えてしまう。みんなの恐怖に駆られた表情が頭を離れない。
自分の攻撃で恐怖に慄いたあの水銀燈の表情も。

そして夢の中でかい間見えた、お父様の姿。でも、やっぱり顔まで見ることは出来なかった。
お父様は何者かに襲われたのではないだろうか、一瞬真紅はよからぬ予感を覚えた。
あの白い茎。一体…

夢の記憶を辿っていくうち、序盤で廃れた教会にいる水銀燈が憎しみに満ちた瞳で見上げてきたのを思い出し、真紅は身震いした。
あの瞳はやはり自分に向けられているのだろうか…

自分は姉妹の水銀燈をジャンクと罵ったことがあるし、実際にジャンクにしたこともある…

しきりにあらゆる罠を仕掛けてくる水銀燈にいつも命がけな日々を強いられた真紅だったが、失って初めて分かったのだ。
いままでいた姉妹がいなくなってしまう寂しさと辛さを。
それからは、しばらくくんくん探偵を見ても、本を読んでも、みんなと紅茶を飲んでも全く楽しい気分になれなかった。

だから、水銀燈が復活した時は本当に嬉しかった。

しかし、水銀燈は前と同じく、いや前にも増して真紅や他のドールにしきりにアリスゲームを仕掛けようとする。
全身を焼かれ一度ジャンクにされたことで今水銀燈が持つ真紅への憎しみはかつてより大きいはずだ。
先週、水銀燈は薔薇水晶と手を組んでドール達全員をアリスゲームへと巻き込んだ。
次は一体どんなことを仕掛けてくるつもりなのか…
このままでは、また同じことが繰り返されてしまう。だが、真紅は硬く決意していた。

もう姉妹は失わない。自分は戦わない。私は、私なりの方法でアリスゲームを終わらせる。他にも道はあるのだから。

気持ちを落ち着かせ鞄から出ようとしたとき、
翠星石と蒼星石 - それぞれ左右の目の色が異なる双子のドールが - 部屋へ入ってくるのが見えた。
「珍しいね真紅。いつも決まった時間に起きる君が…。何かあったのかい?」
真紅は部屋の素朴な時計を見やった。午前9時34分。
「そうね…なんといったらいいのか」真紅は起き上がり外から鞄を閉じた後、顔を落とした。「アリスゲームの夢をみたわ」
双子の二人に鋭い緊張感が流れた。蒼星石がまじめな顔つきになって問い掛ける。「それはどんな?」
真紅の顔はみるみる暗さを増すかのようだった。
「最初、水銀燈の羽が背後から私に飛んできた。それから、みんな戦って…夢の中では誰も傷つけられなかったけど、
私は水銀燈を攻撃していた…あの子に胸に向かって私の花びらを放っていた。
それはローザミィスティカを奪おうとしていること、私はあの子を殺そうとしていたのよ!」
真紅は悔しそうに言った。「あんなこと私は望まないのに!」

19世紀時代の真紅と水銀燈…、
蒼星石は真紅に話してもらったことを思い出した。この二人は訳あって決裂している。あの話を聞かせて貰えたのは、
自分が愚かにもあの時アリスゲームすら知っていなかった水銀燈を真っ二つに断ち切ってしまったからに違いない。
真紅は続けた。「最後に、お父様を見たの」
「えっ」「お父様を?」二人は驚いた。
「お父様は、何者かに襲われていた…白い薔薇の茎のようなものに。何者かはわからない」
真紅はようやく顔をあげ、双子の方を向いた。その瞳は悔いと不安で弱々しかった。
「蒼星石、翠星石…一体何がおきているの?」

77:Rozen Maiden LatztRegieren I:余命 Remained Life
07/05/14 02:16:36 wSZh4ySF
3

広大な劇場と、照明に照らされた豪華な舞台に、ローゼンメイデン第二ドール・金糸雀が立ち、
手持ちの楽器であるバイオリンを劇場に向かって演奏し始めた。
これ程までに夢舞台という言葉が似合う素晴らしい劇場があろうか。
ところが、金糸雀の演奏の聞き手となるはずの観客席には、誰も座っていない。それどころか、金糸雀以外に人の姿もない。
それは、ここがnのフィールドで、また金糸雀のフィールドでもあったからだった。
金糸雀はそれでもただただ演奏を続けた。決してうまいとはいえない演奏かもしれないが、バイオリンを弾くのは大好きだった。
これは自分という存在の創り主お父様の大事な贈り物。
自分が全てのローザミスティカを集めてアリスとなったら、お父様に会ってバイオリンを聴かせて差し上げるつもりだ。

その為にも、お父様のためにいつもこうして練習するかしら!

そうして今日もただ一人バイオリンの演奏を劇場に響かせていると、
突然観客席の内の最前席に光の粒が何もないところから現れ、下へと降り注いだ。光はやがて形作り、ある人影を作る。
人影は席にゆっくり腰掛け、演奏を聴く姿勢をとった。
金糸雀の演奏する手が止まった。見覚えのある、優しい人影だった。でもそんなことって…
「お…おとう…様…?」恐る恐る、金糸雀は人影に向かって声をかけた。
人影の返事はなかった。光は勢いを増し、金糸雀の舞台側まで光り輝いた。金糸雀の視界が一瞬光に埋もれる。
「お父様…!」金糸雀は叫んだ。光がやむと、人影は既に姿を完全に消していた。
一瞬の出来事。そしていつもの、自分ひとりだけの空間の戻る。

金糸雀は悲しい気持ちに襲われた。そうだ、お父様はアリスを待っている。私はアリスゲームに勝たなくてはならない。
全てのローザミィスティカを集めて。この私の演奏で、他のドール達を蹴散らして。
再びバイオリンを手を掛けたとき、思わぬことが起こった。
弦を引いても、全く音が鳴らない。よく見ると、バイオリンの方の弦に何かが絡まっている。
「どうしたかしら、ピチカート」
金糸雀は不思議な顔つきをして、弦に絡まったものに手を触れた。
罠だと気付いた頃には手遅れだった。
いつしかそれは手を蔦って全身に絡まり、金糸雀の身動きを完全に封じた。鞭を思わせる素早い動きだ。
「く、苦しい!」
金糸雀の叫びは誰の耳にも届かなかった。数秒の後、金糸雀は地面の中へずるずると引き込まれた。

78:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/14 02:42:40 cvf8XP3q
>>65
乙!この切ないような満足したような読後感は久しぶりだ!
また機会があったら来てくれ!

79:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/14 02:48:00 cvf8XP3q
もしかして割り込んじゃったかな・・・
ID:wSZh4ySFさん、スマン!

80:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/14 03:32:52 u6xWgdeK
>>65
乙!!これは良かった!
確か小説2作目だよな?
これが才能というやつか…

81:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/14 07:40:56 6s2tRVWC
>>43
調子こいてんじゃねーぞ無能が 氏ね
ワケわかんねーんだよ二度と来るなボケ

>>65
すっげーイイよ!天才ってお前みたいなのを言うんだな!
あと6体もローゼンメイデンいるんだから残り6人の「俺」の話も当然期待してるぜ

82:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/14 07:47:38 JWg7K9ra
>>65乙。
しかしそんなにベタ誉めするほどのSSか?
もちろん書き手は悪くないし、大変GJなのだが。
読み手のレベルが下がったのか、単に過去スレのSSを読んでいない新しい人たちが多いのか。

83:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/14 08:22:35 6s2tRVWC
質の低い過去SSなんてどうでもいいし大事なのは今だ
65はSS書き始めて2回目らしいじゃねえか、それでこの腕前は天才だろうが?

84:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/14 09:20:18 DdAl6MrJ
>>77
シリアスものに飢えていたところだ。GJ!

>>82
出来は悪いが、感覚の目で見れば問題ない。考えるな、感じるんだ

85:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/14 12:29:58 OSdjsA6I
>>77
こういう重いSSを待っていた!GJ!
続きに大いに期待。

>>82
何事にも流行というものがありまして。
今は>>83のように>>65氏のようなのが好きな読者が多いだけじゃないか?
そんな気にするほどのことでもないような。

あと、忘れ去られてる>>7-10!
早く続きを投下しないと蒼い子みたいに本当に忘れ去られるぞ。

86:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/14 13:54:43 9aXcfPED
消えてるから分からんのだけど、43って結局なんだったの?
目立ちたがりの自己厨宣伝?
>>65
自分が読んだローゼンSSの中では一番でした。
淡い気持ちと、切ない現実感が押し寄せてきて泣きそうになります。
是非また書いてください、待っています。

87:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/14 15:34:19 ezXVKSyC
昔ので言うなら、ピンクハウスのやつと翠マフラーのやつは良かったな
ジュンの性格変わってたけど、上手い心情描写だった

88: ◆xLJAc4vOZM
07/05/14 15:44:56 k5US6CPc
今までトリップ付け忘れてました(爆

うぉー!みなさん、お褒めの言葉有難うございます!!!自分には
もったいない言葉です(滝汗)涙が噴出すほどうれしいです!!!
>>71
正直、こういうレス待ってました!!w水銀燈らしくなかったですか。。。orz
>>58以降ですよね。。。絶対誰かに指摘されると思っておりました^^;
休みの内に完結させようと思っておりましたので、少々話が突っ走りすぎというか急ぎすぎたと思います。自分で読み返してみても
かなりこれはダメだと思いました。
もうちょっと、工夫次第で最後、面白く出来る余地があったなと後悔しております。。。

次回も、もし気が向けば何か書きたいと思います。

89:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/14 18:28:11 wSYJMDLY
43は


光の螺旋律の絵コンテ

90:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/14 18:30:03 OSdjsA6I
>>88
へー。やっぱりSS書きってのは褒めるばっかじゃ満足しないものなんだ。
具体的な評価や指摘も欲しいんだね。
そんな謙虚な姿勢にますます期待!

91:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/14 22:46:45 8/Pc388g
保管庫見れないよ?なんで?

64 名前: ◆vJEPoEPHsA [sage] 投稿日:2007/04/04(水) 07:29:44 ID:ypwhmDEY
URL貼り忘れていました、すみません。
URLリンク(library.s12.dxbeat.com)


92:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/14 22:51:10 8/Pc388g
>>88
そういうことでしたか…。
何でも終わりが一番難しいんですよね。
次は焦らずじっくり練って書いてみてください。
期待してますよー

93:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/14 23:13:51 OSNTfozF
>>88
GJだ!
もう一回、シリーズの一番最初から読んで泣いてくる。
ちうか、新しいシリーズをぜひとも書いてほしい。
さっきも書いたが、俺はアンタのSSのためにこのスレに来てる。
正直言って、原作者に承諾得て、正式に執筆するのを奨めたいくらいだ。

もう一度言おう。
GJだ!!






>>89
ウソはいけない
43はウィルス

94:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/14 23:32:23 u6xWgdeK
俺もそう思た。
話のなかにもあったが、リアルにアニメ3期は>>88のSSでいいと思うw

95: ◆vJEPoEPHsA
07/05/15 01:19:44 vUfxNYBS
>91
なんだか保管庫(で使っているサーバ側)に問題発生しているようです。
X-BEATのトップにも行けなくなっていてよく分からないのですが、
今のところURLの一部を dxbeat.com → x-beat.com と置き換えるといけるようです。
サイト内は相対リンクで結んでいるので多分大丈夫だと思いますが、検索エンジンは使えなくなっています。
FTP接続も不可能なので修正することができなくなっています。
面倒ですが、スレごとのまとめリンクから閲覧してください。


96:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/15 02:11:26 b2crb44s
>>88
あんまり読み込んでないが、一応それなりに読んでの感想
確かに上手い、すんなり読めるし、つくりも面白い
でもちょっと気になるのが。
まずみんなが言う銀さまの心理。微妙に違ってね?
あと主人公の心理。はっちゃけたり気にしたりどっちだよと。もう少し脈絡もてと。俺らと同じ人間なんだから納得できる行動してほしかった。ちょっと?って感じ
あと、最後はどうやら作者とくっつけてるようだけど、そういう書き方するんなら特に意見とか求めるよりは放置のほうがよかったんではないか?と
それのほうが余韻があってよかった
フレンドリーな作者もいいが、作者の行動や言動、その見解自体が作品に影響することもあるのでね

そんなとこ。個人的な疲れもあってあんまり読み込めない・誤解があるかもしれないけど。辛かったらスマンね

97:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/15 04:29:40 ZTXMddEB
>>88
スレリンク(anichara板:416番)
これの続きはもう書かないの?

98:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/15 06:47:16 S6akdpZm
>>93
それは俺が別の職人に対してしたレスと同一内容だw
保管庫タイトルで『お見舞い』の職人さんに対して、したレスだ。
俺のレスを盗作しやがったな?!とまでは言わんが、レスや感想くらい、自分の言葉でしようぜ。
それが職人さんに対する最低限の礼儀だと思うが。



99:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/15 07:13:14 F0GnijP6
>>98がいいこと言った!

100:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/15 12:36:05 mJvmNl3j
>>96殿のお手本を見たいですな

101:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/15 13:03:21 RDA5yZPL
>>100
ナンセンスの極み。
SSの批評はSS職人しかできないのか?

102:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/15 18:24:01 0QZIfxrS
そんなことより二階堂流麗だ

103: ◆xLJAc4vOZM
07/05/15 19:07:51 BjmU1jB0
>>96
なるほど・・・確かに言われてみればそうですね・・・
貴重な批評どうもです^^
>>97
途中ですが、今のところ書く予定は無いです。
多分、この続きを書いてもあまり面白くないと思うので^^;

104:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/15 21:51:26 dzoRThVH
とりあえずうPしときますね



世の中には不思議な事がある。

例えば人形が意思を持ち、人間と同じ様に振る舞い、話したり、物を食べたりと。

そう。
そんな事はあり得ない話だ。
本当なら。

しかし、だったらこんな事だってあり得ない話であるべきだ。
こんな・・・こんな事は。


   ・
   ・
   ・


「はぁ・・・いよいよか・・・」

桜田家の長男、桜田ジュンは学校の制服の襟に指をいれ、
窮屈そうにこね回しながら緊張した面持ちで玄関に座り、靴を履こうとしていた。

「何だったら私が付き添ってやってもいいですよ?」

すぐ側で、緑色のドレスに身を包んだ
二つ分けの茶褐色な長髪の人形がニヤニヤと笑みを浮かべながらジュンに話しかけてきた。
ローゼンメイデンと呼ばれる不思議なドールの第三女、翠星石である。

「バカ言うな。子供じゃないんだから。それにどこの世界に人形に保護者してもらう中学生がいるんだよ」

むすっとした顔で翠星石の言葉に言い返すジュン。
その後ろには鮮やかな濃赤のドレスをまとった、金髪のやや幼いドールが見守るような笑みで彼を見つめていた。
此方はローゼンメイデンの第五女、真紅である。

「そろそろ巴が迎えに来る頃ね・・・ジュン」
「やっぱり来るですか、あの精神注入棒女・・・」

真紅と翠星石がそう言いながら玄関のドアを見つめた。
彼が引き篭もりからようやく立ち直り、そして今制服をまとって、復学の為にこの扉を開けようとしている。
真紅の心には感慨深い物があった。
翠星石はあまり面白くなさそうである。

「お、お姉ちゃん・・・おねえちゃん・・・ううぅ」
「なっ、泣くなよ姉ちゃん・・・大丈夫、もう僕は逃げたりなんかしない・・・
 みんなが居てくれたから、お姉ちゃんが居てくれたからこうして勇気が持てるようになったんだ」

感激のあまり よよよ と泣きそぼる姉、のりの肩に手をおいて力強い笑みを見せるジュン。

「ジュンくんっ!」
「よせっ離れろっ、抱きつくなッ!」

精神的に力強く成長した弟に感激して抱きつく姉に、何やってるんだと言わんばかりに

「もう巴がそこまで来てるですよ~・・・」


105:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/15 21:52:57 dzoRThVH

翠星石は白け顔で二人に話しかけてきた。何故か手にはモンキーバナナを持っている。
そこにジュンの幼なじみ、柏葉巴が玄関の扉を開けて朝の挨拶をかけてきた。
幸いクラスが一緒な上に、前々から徐々にジュンが復学出来る手はずを整えていてくれた彼女。
今回こうして一緒に登校して、ジュンの精神的圧迫感を和らげていこうとしてくれていた。

「おはよう、桜田君。・・・準備は・・・も、もういいの?」
「あ、ああ お、おはよう。姉ちゃん離れろって」
「あはは。ごめんね巴ちゃん、お姉ちゃん感激しちゃってついジュン君に」

「ジュン、いよいよあなたが本当の一歩を踏み出すときが来たわね。
 この真紅のミーディアムらしく、気丈に振舞っていれば大丈夫。貴方ならそれができるわ」

「ま、翠星石も応援していてやるですから、 モグモグ  一発ガツーンとかましてきやがれです  ムグムグ」

「ああ、ありがとう二人とも・・・って何食ってんだよお前・・・」

みんなが話する中、一人だけ緊張感無くバナナを頬張ってる翠星石にジュンが呆れ顔で尋ねた。
何故か翠星石はバナナを咥えたまま、ちょっぴりいやらしい笑みでジュンを見つめて

「べふにぃ・・・ふゅんふぉふぁんふぉくふぁふぇるふぁめをふぇんふゅうふぇふ」

まともに話すと放送コード断裂破砕な内容の言葉を喋っていた。
翠星石が何を言っているのか把握できない巴、のり、ジュンは首をかしげているが、
真紅は顔を赤くして猛然と翠星石に抗議しだした。外観は少女、中身は熟女の真紅ならではの明快な思考解析である。

「あ、朝から何を言ってるのあなたはっっ!!
 大体抜け駆け無しって言ってきたのはあなたなのに何でジュンにそんな破廉恥な」

「あのぉ・・・真紅・・・何話してるのかわかんないけど、僕もう行くよ」
「桜田君の事は心配しないで下さい。私が・・・ついていますから」
「あ、ええ。よろしくね巴ちゃん」

二人のドールの良く解らないやり取りに別れを告げるべく、
ジュンは巴と一緒に玄関を出ようとしていた。

「よっし!行ってこいですぅーー!!」
「ぅわっ!?」
「ジュ、ジュンっ!!」


106:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/15 21:55:38 dzoRThVH

バナナを食べ終え翠星石が放ったその皮が、ものの見事にジュンの足もとに滑り込み
彼は見事に後ろ向きに倒れこんだ。ベタなギャグでもここまでクリーンヒットはしない。

「いっ・・・たたたた」
「だ、大丈夫ですか・・・ちょ、ちょっとした冗談だったですのに、
 まさかここまでベタにヒックリこけやがるとは思わなかったです」
「っっ・・・翠星石っ!!あなた最近ジュンに対する度が過ぎるのではなくて!!」

その瞬間、辺りが凍りついた。

「え?!」
「し、真紅?!」
「じゅ、ジュン・・・君?!」

「な、何?」
「な、何だよ・・・」

「「って えーーーーーーーーーーーーー!!??」」

「どどど、どうなってやがるですか!?」
「ちょ、ちょっと二人とも??」
「どっどういうこと?!ジュン君が真紅ちゃんで真紅ちゃんがジュン君?!」

説明せねばなるまい。
翠星石の放ったバナナの皮で滑ったジュンを庇おうと、とっさに真紅がジュンの背中に回ったまではよかったが
当然身体の大きさが違うため支えきれる筈も無く、そのまま倒れこんでしまったのだが、
その時真紅のおでことジュンの後頭部がぶち当たってしまい・・・魂が入れ替わってしまっていたのである。
まさにローザミスティカの存在を否定するかのような不可解なトリック。

「あああああああああ」
「あああああああああ」

真紅とジュン、二人仲良く _| ̄|○; このように膝を突いて喚く様を、
三人の女性達は顔を引きつらせながら、気が遠くなる思いで見ているのだった。


107:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/15 21:57:37 dzoRThVH
多分続きますんで、また今度。

108:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/15 23:09:33 qDZ83kJI
>>107
いらね

そんなのよりこの人の続きが気になって仕方が無い
早く書いてほしいもんだ。
スレリンク(anichara板:3-15番)

109:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/15 23:25:24 BeqsCHN4
>>98
あれに>>93みたいなレスの価値があるのか?
ダラダラ長いだけで締まりの無い話じゃないか
しかもセリフの使い方がおかしいぞあれ。
セリフの「 」の中にまた( )の入れてるのなんか見たこと無いし
どう考えたってイレギュラーだろ、素人SSにしても文体が酷過ぎる。
最後も変に説教臭い終わり方でゲンナリしたよ
アリス云々語るんじゃねえってな。

110:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/15 23:35:28 b2crb44s
妙に殺伐

111:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/15 23:44:41 3OLituWs
>>109
長文読めないDQNですかw

112:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/16 00:13:40 xOo8GciP
>>107
同人誌のネタ乙。

113:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/16 00:21:26 ohrY1aw+
>>103
新作待ってるよ

>>107
つかもう書くな低脳文章のクズ野郎!wwwwwww

114:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/16 00:37:11 VuIGM5NU
>>112
kwskってか>>107って同人のパクりなの?最低だな

115:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/16 00:44:30 xOo8GciP
>>114
スマン、語弊があったかもしれん。
でも確か、真紅とのり、雛苺と水銀燈、翠と蒼、Jと金が入れ替わるやつを見たことある。

116:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/16 01:00:30 VuIGM5NU
>>115詳細snks
何にせよ>>107はもう書くの止めた方がいいな
ほんとにパクってるのかも知れないし
これ以上書いてもお里が知れるってもんだ


117:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/16 02:24:57 86NaNtbq
最近、新しい読者が増えてきた気がする
やっぱり本家が終了したからかな?
まぁ何であれ嬉しい限りですな

118:98
07/05/16 04:36:27 aJSrcoRV
>>109
おまい、話の論点が完全にズレてるぞ?
俺は>>93に対して、感想やレスは自分の言葉でしなよとは言ったが、別におまいや他の連中に対し、
俺と同じ感動を持てとか、俺の感想に強制的に同意しろなどと言った覚えは全くないぞ。
そういう風に取れる表現もしていないと思う。

どんな感想や感動を持とうが、それは個人の自由だろ?
もちろんおまいがそういう感想を持つのは、おまいの自由だ。
だけど俺におまいの批評や感想や意見を押し付けたって意味はない。
どうしても言いたいなら職人さんに対して言う事じゃないのか?

長文スマソ。

119:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/16 12:54:10 7HgghaOJ
>>109
もう少し穏やかに書けないものでしょうか?
確かに、ここでの発言は基本的に自由です。
しかしその自由は、発言が与える周囲への影響に対する責任が付いてくることを忘れないでください。
どういう感想を持ってもそれは貴方の自由ですが、評価の押し付けともとれる書きようや、
いちゃもんのような挑発的な批評の書きようはいかがなものでしょうか。
貴方の>>109のレスを、当時あのSSを心待ちにしていた読者たちが読んだらどう思うか考えましたか?
彼らとの論戦を望んで書かれたのですか?ここで論戦するとスレの雰囲気がどうなるか考えて発言しましたか?
書き込む前に少しでもそういうことに思いを巡らせましたか?
論調からして>>83も貴方でしょうか。違っていたらごめんなさい。
しかしあのように他のSSの職人さんを十把一絡げにけなすレスをされてまで、
自分のSSが褒められることを望む職人さんはいないでしょう。
そもそもSSの批判は>>118さんが指摘されている通り、SSの職人さんに直接向けられるべきではないですか?
批判が悪いとは言いませんし、むしろそれを望むSS職人も多いので大いに結構だと思います。
しかし批判するにも書きようというものがあるのではないですか。
SSスレは互いの価値観を発表しあう場である以上、どうしても衝突が起きやすいし荒れやすいものですが、
だからこそ互いを尊重する姿勢は持つべきじゃないでしょうか。
私の指摘は自分でも大袈裟だと思いますし、わざわざ事を大きくせずに見過ごしても構わなかったとも思います。
貴方にとっても間違いなく大きなお世話だとは思います。
しかしここ最近、特定の職人ばかり擁護して他の職人を排除するかのようなレスが目立つなど、
雲行きが怪しくなってきているのは看過できませんでした。
ですから、他にも該当者はいるようですが、敢えて発言が目立つ貴方を槍玉に上げさせてもらいました。

長文お目汚しすみません。

>>115
それを言ったら、◆xLJAc4vOZMさんのSSだって類似のSSがありますよ。

>>118
激しく同意します。

120:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/16 13:43:42 0eKosg62
晒しage

121:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/16 15:19:23 aHDspwJH
一転、糞スレ化したな

122:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/16 15:33:14 xNx5mwO+
>>107
続きに期待してます。
しかしスレの雰囲気が変な感じになってるからローゼンSS総合の方にでも投下し直したほうがいいかも。

123:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/16 18:53:24 XIiy3hWo
>>121
どの辺りから?

124:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/16 20:53:59 VedIeOTP
巴が雛苺と契約を続けていたと仮定しての小ネタ

とあるファミレスに中学生とおぼしき少年と少女が座っている。

注文はドリンクバーとデザートが少々、それだけでかれこれ30分以上はいるだろうか。

この若さにして将来を誓いあった仲なのか、お互いの左手の薬指には
薔薇をかたどった同じデザインの指輪がはめられていた。

しかし、二人の間に流れている空気はとても恋人同士のそれではない。
二人とも沈黙を続け、少年は落ち着きなくコーヒーを何度も口元に運んでいる。
少女の方は俯きながらテーブルに指で「の」の字を書いている。
まるでこれから別れ話でも始まりそうな、そんな重苦しい雰囲気だった。

「あの、これ…」
つと、少女が重い沈黙をやぶり、まるで離婚届けでも差し出すように、少女は鞄からおずおずと書類を差し出した。
「私の口からは何も言わないから、これで察して…」
まさかこの齢にして結婚していたのか、いやまさか。
興味本位の野次馬が見守る中、少年が口を開いた。
「…っておい、これ」
その紙はなんのことはない、ただの宿題のプリントだった。
「こんなもん届けるためにわざわざファミレス来てこんな雰囲気つくる必要ないだろ!
  普通に渡せよってゆーかいつも通り図書館で会えばよかったじゃないか!
  じゃなきゃウチに来てくれれば雛苺にも会えたし!」
「ごめんなさい、これ渡すの忘れてて…今まで渡すタイミング逃しちゃってて」
「答えになってなーい!っていうか僕柏葉にまで突っ込みたくないんですが!」
「そんな…ひどいよ、桜田くん…私だけのけ者なんて」
「確かにお握りに苺入れたりとか、天然かましてた時もあったけど!
  そんなキャラじゃないだろあーた!」


オチはない

125:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/16 20:58:59 oka86dSp
なんで契約したままなのに苺がジュンの家にいるの?とつっこんでもいい?

126:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/16 21:57:47 79Ei5ox2
thfcー^^

127:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/16 22:39:49 ok/UH61D
>>124
いいタイミングでおもろいSSをw
素でワロタ。

128:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/17 08:55:15 3wecn9AN
前のスレで翠紅苺のSSを書いたんですけどどこが変でした?
初めて書いたから、反省して次に繋げてみたいと思って

129:名無しさん@お腹いっぱい。
07/05/17 10:18:13 /po0JIce
強いて言えば最後の名前で噴いた
まぁ楽しめるレベルだったと思う

130:Rozen Maiden LatztRegieren I:余命 Remained Life
07/05/17 22:18:49 OVHeD+Qc
>>77の続き

4

「…ダブルキル」
nのフィールドの中で、嘲る様な独り言が響く。そこは全体が薄暗く、廃墟しかない。
「…マルチキル。うっふふふふ…」
黒い翼を羽ばたかせ、銀色の髪、ダークピンクの瞳に、ナイトブルーのドレスと逆十字の柄が入ったオーバースカート。
ローゼンメイデン第一ドール・水銀燈が、自分のフィールドに無数に散らばっている
がらくたも同然な欠けた人形を相手に、破壊ゲームを楽しんでいた。
水銀燈の力によって無理やり意思を与えられた首や片手のない人形たちが、その命惜しさにフィールド中を逃げ惑っていく。
そんな彼らを自らの黒い翼の羽を使ってさらに粉々へとしていくのだ。

だが、これはあくまでもゲーム。無数に羽をとばしてやってただハチの巣にするのではつまらない。
水銀燈は自分の翼のうち、たった二本を取り出して手に持った。
狙うは二人仲良くそろって廃墟の道を逃げ惑う哀れなジャンクたち…あの二体だ。
道の先はただっ広く、一見この道を逃げ進むには無謀に思える。しかし、ただ一つだけ希望がある。
道の途中、横に開ける細く目立たない道…そこへ入り込めば身を隠すことが出来るだろう。
だが、無駄な努力だ。
水銀燈は狙いを定め、二本の黒い羽をあの細い道の数歩手前のあたりへと飛ばした。
一瞬、それは見当違いな所に向かって飛んでいったかに見えた…
ところが二体の人形は身を隠すべく、方向を転じて垂直にのびる細い道へ向かい始めた。
あと少しでその道へと入り込めるというところで、
まるで全てを予知していたかのように後から黒い羽がまっすぐ飛んできて二体ともそれぞれ頭と背中に突き刺さった。
タイミングも位置も完璧だった。
「うっふふふふ…あったり。おばかさんたちったら、まるわかりよ…」
ゲームの勝者水銀燈が敗者を嘲笑った。
突き刺さった黒い羽は青い炎を発し始め、有無を言わさず人形達に燃え移り始めた。
二体の人形はもがき、最期の抵抗として必死に自分達が目指した細い道の中へ体を引きずろうとしている。
足は既に灰と化し地面を蹴れる代物ではなく、這って進もうにも次は手が崩れ落ち、いまや体を運べるものは完全に無くなった。
水銀燈はこの敗者のもがく姿が面白くて仕方がない。
二体の人形はついに原型すらおさめないがらくたの塊へと化した。
「またしてもダブルキル…うふふふ…」
水銀燈の世界におかれた人形達は、こうして日を追うごとにジャンクからジャンクへと化していった。
アリスゲームの為だ。水銀燈は思った。アリスゲームの勝者となり、自分という存在の創立主 - お父様に合うための、
これは破壊の練習行為だ。他のドール達よりも、自分には遥かに物を破壊する経験を多く持っている。
それに自分の力で作り上げた技と武器だってある。
これこそがこの水銀燈の強さであり、お父様への愛でもある…

131:Rozen Maiden LatztRegieren I:余命 Remained Life
07/05/17 22:20:28 OVHeD+Qc
5

自分こそがアリスに一番相応しい。
アリスゲームの為になることもせず、保守的な他の愚かなドール達とは違う。
「……チィ」水銀燈は舌打ちしてがらくた人形を足で踏み潰した。
また思い出してしまった。
どいつもこいつもローゼンメイデンの宿命であるアリスを目指すこと - お父様が理想とした完全な少女になることを - 
忘れ、ジャンクを恐れアリスゲームを避け弱い者同士固まってじゃれ合うドール達の愚行を思い出すたび、
水銀燈は必ず軽蔑や怒りといった感情に苛まれた。

この愚行の先頭には…顔も思い出したくない…あの第五ドール…
自分なりにアリスゲームを制するとぬかしといて、実際していることはままごとだ。

アリスゲーム以外の道?
薔薇乙女同士で誰が一番アリスに相応しいのか仲良く話し合いをするくらいのことしか思いつかない。
そしてどうせアリスに一番相応しいのは自分なのだ。

アリスへの執着が強い一方、普段から群れているドール達に真っ向から一人でアリスゲームを仕掛けにいく程、
水銀燈は自信過剰ではなかった。これまで、真紅のいない間に雛苺を人質に取って自分のフィールドにおびきよせたり、
翠星石と蒼星石の悪化した双子の関係を利用してローザミスティカを迫ったり、邪魔な媒介を夢の中に閉じ込めたりした。
結果としては…いずれも失敗した。あいつらの結束は想像以上に固い。そしてあいつらは相も変わらず…保守的だ。

おかげで、アリスゲームは全く進行しない!ただ一人のジャンクすらでていない!

いや…。
過去にジャンクとなった者は出た。最も認めたくない、最もアリスに相応しいはずだった者が。
私は一度、真紅に負けた。そして、ジャンクに…
あの様なアリスへの志半ばなドールに!この水銀燈を倒しておきながら、結局ローザミスティカを奪うこともしなかった。

どこまで私をばかにすれば気が済むのか!

今こうして左手で人形を握り締めながら真紅への殺意を込めている事が出来るのは、
お父様が私を直してくれたから。

一度アリスゲームの敗者になったにも関わらずお父様が私を直してくださった意図は明らか。
お父様は真紅のやり方に呆れられたのだ。
水銀燈には自然とお父様の声が聞こえたかようだった。

 - アリスを完成させられるのは水銀燈、お前しかいない - 。


突然、左手の指輪が意思とは関係無しに紫色の光を発し始めた。「な、なぁに?」水銀燈は困惑した。こんなことは初めてだ。
「メイメイ」同じく紫色に輝く小さな光の浮遊体 - 水銀燈の人工精霊が駆け飛んできた。
人工精霊は今指輪が光っていることの意味を伝えた。

ミーディアムの命が危険に晒されている。

132:Rozen Maiden LatztRegieren I:余命 Remained Life
07/05/17 22:21:20 OVHeD+Qc
6

「誰かぁぁ!誰か助けて~!」
とある部屋の中で、極めて危険な状況に晒されている者が叫んだ。
「放せって!ほどけー!!」
不登校の少年 - 桜田ジュンが、ロープでぐるぐるに縛られて湯の溜まった風呂の湯船へと落ちそうになっている。
風呂場の隅に放置されており、その位置はかなりきわどい。
「あぁっ、すっかりチビ人間のこと忘れてたです」
階段を降りていくさなか、翠星石がジュンの声に反応して風呂場へと向かった。「チビ人間!生きてるですか!?」
「死んだ方が良かったか?この性悪人形!いやここまでくると悪魔人形だな!さっさとほどけー!どういうつもりだアー!」
「この前と同じことですよ」翠星石は微笑を浮かべて言った。
「私達ローゼンメイデンは契約したミーディアムに危険が迫ると反応するです。
そうやって真紅を起こそうとしたちゅー訳ですぅ」
「真紅!?」ジュンはいつもより目覚めの遅い真紅を今朝から気にかけていた。「それで真紅は起きたのか?」
「さっき起きて私より先に階段降りてったですよ」
「そ、そっか…よかった…って、、あ、あんにゃろうー!僕がこんなにも叫んでいるっつーのに無視しやがったな!!」
翠星石は吹き出した。「この調子だと真紅はチビ人間の危機に反応して起きた訳じゃなさそうですぅ!無様なヤツですぅ!」
「わ、笑ってないでほどけよ!!もういいだろー!」
「しゃーねーなー、救ってもらえない哀れなチビ人間に少し慈悲をかけてやるですぅ」
「くっそぉー…ほんとのほんとに覚えてろ呪いの性悪人形…」
「何かいったですか?チビ人間」翠星石は手をかけたジュンを少し湯船側に揺らした。
「わああああああ!なんでもない!」ジュンは青ざめた。殺される!恐怖で口が硬直する。「なんでもないから…ほどいて…」
「はぁ、もうやめなよ…翠星石…」蒼星石が呆れ気味な表情で部屋の入り口に立っているのが目に入った。
とめにくるのが若干遅い!

133:Rozen Maiden LatztRegieren I:余命 Remained Life
07/05/17 22:23:29 OVHeD+Qc
7

水銀燈は自分の契約したミーディアムである柿崎めぐの病室へと窓からかつてない程勢い強く飛び込み、
ガタガタとガラスが揺れた。

ミーディアムの身に危険が迫っている。

ところが、目に飛び込んできたのは、思っていた程悲惨なものではなかった。
ミーディアムは、呼吸器をつけられ何人かの白い服をきた人間の女に囲まれて、
聴診器の先端チェストピースをあてられたり、そばになにやらの機器を持ち込まれたりしている。
当の本人は苦しげにもがいていて、呼吸すらままなっていないように見える。

だがこんなことは生まれつき病弱な自分のミーディアムにはよくあることだった。

「メイメイ。これ位のことでこの私を呼び起こしたとでも?」
水銀燈は問い詰めたが、人工精霊はただあちこち宙を舞い続けるだけだった。水銀燈はため息をついた。全くの無駄足だ。
ゆっくりと窓から飛び降りようとしたとき、突然同じく白い服をきた男がめぐの病室に押し入ってきた。
「一体どういうことなんだ!原因は?」
「全く分かりません!先生、このままでは心臓の細胞が死滅していきます!かなり危険です!」
「とにかく今は特効薬の投与だ」男は叫んだ。「さあ運ぶぞ。ぐずぐずするな!」

心臓。それは人間にとって最も大事なもので、めぐは生まれつきそれに欠陥があると話していた。
一連の会話からして、人工精霊は正しかったらしい。
めぐの命は危ない。
水銀燈は運ばれていくめぐを窓から振り返って凝視した…すると、一瞬、めぐと目が合った。
ベッドを運ぶ白い人間達に遮られてその姿は見え隠れする。
めぐは左手を看護士の間から突き出させ、息もままならない状態で"それ"を必死に水銀燈に見せようとした。
左手に嵌められた、契約の指輪を…
水銀燈に考えられるめぐの意図は一つしかなかった。"私の命を使って"。
病室の外まで運ばれるまで、めぐは左手を差し伸ばし続けた。そして…今、水銀燈の視界から消えていった。

「おばかさんね」水銀燈は一人静かに呟いた。「あなたに都合のいいように…アリスゲームは始まらないのよ」
今はどのドールも眠りについているだろう。そんな状況下でのアリスゲームはあり得ない。
「メイメイ…あの子、これから死ぬの?」
人工精霊は未来のことは分からないことをマスターに伝えた。
「そう…そうね。おばかさん」
水銀燈は病室の窓から下にあるコンクリートの出っ張りに腰掛け、満月の夜空を見つめた。
驚くほど自然に、心の中に歌が流れ始めた。それはもう聞くことの叶わないかもしれない、ミーディアムのよく歌っていた歌が。

 …からたちの花が咲いたよ
   白い白い花が咲いたよ

    からたちのとげはいたいよ
     青い青い針のとげだよ

  からたちは畑の垣根よ
   いつもいつもとおる道だよ

    からたちも秋はみのるよ
     まろいまろい金のたまだよ…


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