07/05/09 21:45:19 CsBIAVSO
>>13
乙です!こんなサイトがあったのですね!
とりあえず、前スレ604の続きです。
水銀燈は飲み干した。少し紅茶を少なく入れすぎたか。
「あっもうちょっと飲みます?」
「そうね…」
ヤカンを持った。ぬるくなっている。確か…真紅はぬるいお茶に対しては徹底的にブチ切れてたよな…やっぱ入れ直してきた方がいいか。
「ち、ちょっと待ってて!今入れてきます!」俺は部屋を飛び出し、台所へ。古い茶を捨てる。
もったいないが、銀様にこんな茶を飲ませるわけにはいかない。新たに紅茶を煎れる。そして部屋に戻り、またコップに注いでやる。
水銀燈は静かにそれを口に運び少し飲んでは、一息着き、また飲みを繰り返す。ん?しまったぁ!今は夏だ!熱いお茶はダメなのか!?
でもアニメって確か夏が舞台だった…だからこれでいいんだ。うん。俺は必死に自分を落ち着かせようと努力した。
俺は水銀燈を見つめた。水銀燈が大きなコップで飲むのを見ていると興奮する。
哺乳ビンを必死で両手で持ち、ミルクを飲む赤ちゃんを連想させる。
しかし、いくらかわいいと言ってもずっとこれを使わせると言うのは失礼だ。小さなティーカップが要る。
俺は大概、思い立ったらまず行動してしまう方だった。
気付けば立ち上がっていた。水銀燈はどうしたという顔でこちらを見上げている。もう後には退けない。
「ちっ、ちょっと出かけてくるよっ。す、すぐに戻ってきます!」
ああ、情けない。いつまで動揺しているのだ。俺は部屋を飛び出した。よし、ティーカップを買いにいこう!
外に飛び出し、また軽トラに飛び乗る。ダッシュボードに投げ捨ててある自分の財布を後ろポケットに突っ込んだ。
エンジンを掛ける。
「あ…俺金ねぇ!!」俺は発狂した。血の気が引く。汗が顎から滴り落ちる。運がいいのか悪いのか、母のクルマが家に入ってきた。
俺は軽トラから出、母の元に駆け寄る。
「おかぁ、金貸してぇな」普段は標準語を話すが、地元で地元の人と話すと不思議な事に方言になってしまう。
「はぁ?大学生にもなってぇ、親におこずかいおねだりかいなぁ。情けない。自分の金はどうしたねんな?またパチンコか!?」
断られるのは百も承知だ。しかし今は金が必要だ。
「ちっちゃうわ!」
何故親はこうして何でも知っているのだろうか。
「あんたなぁー」
母の説教が延々と続く。しかし、俺は心に…いや銀様に誓った。
パチンコは程々に、後先考えてやろうと。「負けるためにパチンコするんだ!」なんてもう言わない。
俺はまた一つ賢くなった。こうして人間は成長していくのだ。
「しゃーないなぁホレ」
気付けば母は壱万円を差し出していた。
「ありがとう!絶対返すわ!」
俺は車に戻った。よく考えると、こんなド田舎のスーパーにティーカップとか言うシャレたモノが有るのか微妙だった。
とりあえず行くしかない。四方八方山と田の道を、車を走らせていると右手に一件の農家が見える。
連れの家だ。その瞬間俺の頭に天才的な閃きの閃光が走った。クルマを路肩に止め、その家に入る。
家はやはり古びた日本家屋だ。鍵などというものは存在しない。
「おーい、おるかー!わしやー!」
勝手に玄関の戸を開ける。なんてあつかましいと思われるかもしれないが、田舎では普通だ。中から一人の男が出てきた。
「おー、帰っとったんかいな。久しぶりやのー、調子はどうや」
簡単に会話を済ます。
「それでよ、お前の家に昔、知人のヨーロッパ旅行のミアゲとか言ってコップと土瓶のセット持っとったやんな?」
「あー…そういえば…そんなんあったっけ?」
「あったわ!それを今すぐに貸してほしいねん」
「ええけど…何に使うんや?」
そいつは納戸を漁りながら言った。
「…水銀燈が家に来たんや…」
「水銀燈?体育館のあれか?あんなん部屋に付けたら明るうて目チカチカするやろ」
「はぁ!?ちゃうわい!いいから早く貸してくれ!まじ頼むわ!」
俺はそいつから、見つかったティーカップを貰うと一言礼を言い、その内飲みに行く約束をして軽トラに飛びのった。