06/04/26 12:04:05
地球落下後、五日目。
伊、北上の後仏領に入る。ニース経由でハイウェイA-20走行中。
天候 雨
時刻 フタマルヒトマル
〝・・・・・昨日未明、連邦元首はネオ・ジオンの全面投降に伴い、年内におけるE.F.S.Fの独立部隊ロンド=ベル
解体の意を表明。ついては、地球住民と全コロニー市民に対する――。
尚ネオ・ジオン総帥シャア・アズナブルの生死は未だ不明〟
ヒトは、目に見えるものか理解できる現象にしか意識が行かない。
手軽に手に入る情報に飼いならされて、自分で空の向こうへ意識を向けようともしない。
そんな人達の有様がアムロの頭の中で思い描かれて、少なからず一抹の寂しさを覚えた。
既にアムロはラジオから流れる報道に気を配っていなかった。
車を走らせながら、今はガラス中に当る雨音とワイパー音を聞いている。
雨の音は好きだ。虚しさを洗い流すような。
アムロがカーラジオを無造作に押し消したのと、助手席で仮眠を取っていた男が目覚めた
のはほぼ同時だった。
「すまんな」
肋骨を骨折し処置はしてあるが、徐徐な動作でシャアは倒したシートを起こした。
「いい」
「・・・・・」
「フタマルヒトヒト」
別に訪ねられた訳ではないが、シャアが時間を気にしているだろうと察しているアムロが彼に
告げた。
「私は別に構わん。聴きたいなら、聴けばいい」
「いや、いい」
十日前まではお互い命を狙っていたのに、今は暗い車中ギアを挟んでラジオを付けるか付け
ないかを話してる。
全ては、あの光の所為だ。