06/05/29 01:47:26
それはシャアとアムロが「コート・ダ・ジュール」というコロニーに潜伏して
いたときのことだった。
「シャア、ここのところ毎晩どこへ行っているんだ?」
アムロは朝も明るくなってから帰宅するかつての好敵手、シャア・アズナブル
に問いかけた。シャアはサングラスを外すと一つあくびをし、ネクタイを緩めな
がらソファに腰掛けた。
「ああ、ちょっと小金を稼ぎにカジノへな」
「真っ当どころか商売ですらないな、そろそろ真っ当な商売をしたらどうなん
だ」
「何を言う。商売というものは真っ当ではないほど利率がいいものなのだよ」
「よく言うよ。いいか、俺たちは今やお尋ね者なんだ、目立つ行動は控えてくれ
よ」
「言われるまでもないさ、ほどほどにしている」
「わかったものじゃないな、まったく」
口にくわえたラッキーストライクへおっくうそうに火をつけているシャアに向
かって、アムロは冷蔵庫からとってきたエビアンを放り投げた。
アムロは行く先々の潜伏先で、いろいろな機械の設計・組み立て・修理など、
比較的真っ当な商売をして糊口をしのいでいた。商売は真っ当でもその生活は
真っ当とは言いがたく、いつもアムロは自分の仕事を進めては力つきてその場で
眠り、起きるとまた仕事を進め、食事も仕事をしながら、という有様である。一
週間シャワーひとつ浴びないことも珍しくはない。
対して、シャアは時にギャンブル、時に株や相場、時に密輸の請負など、お世
辞にも真っ当とは言えないヤクザな真似をしていた。それでいてコンスタントに
プラス収支にもっていくので、結果アムロと同等の稼ぎをたたき出していた。も
ちろん普段の仕事が真っ当ではない以上生活も真っ当ではないあたりはアムロと
同じだ。しかし性格なのか商売上なのか、シャアは身なりや部屋を清潔に保って
いたのが若干のアドバンテージか。
まさにジゴロとオタク。連邦とジオン双方のトップエースは、一皮むけばそん
な人間だった。