06/11/18 22:18:24 MKco23pu
宇宙世紀的エリア88
Mission④
「寄せ集めの部品ですので、バランスがいまいち…」
「飛べりゃ…いいわよ。
AMBACの反動でバラバラにならなきゃ、もうけもんね」
ガルマ・ザビがよくやっていた仕草で前髪を弄びながら、
だが凛とした決意を秘めた表情で、セラは初対面となる愛機のジム・カンヌを見つめていた。
教習用に作られた複座機だが、ジェネレーター出力は実戦に堪える水準にある。
何より、以前連邦軍の訓練校から強奪したことのあるジムカナールと操縦系が一緒で、訓練機ゆえ
シンプルで使いやすいのが助かる。
生産数の多い機体ではないので、寄せ集めとはいえどうやってエレズムの活動家達が調達できたのか
謎だが、聞いたら怖くて乗れなくなるかも知れない。
捕虜となったデラーズ軍残党の、軍事裁判が開かれることは結局なかった。
紛争が存在したこと自体が、連邦軍内の様々な事情を反映して一般には伏せられていたからだ。
その代わりに、月面の重力下での戦闘を想定した、実弾演習の標的として次々に動員されていた。
事実上の死刑判決だった。
そして明日、分隊長以上の士官級のMSパイロット20名が、非武装のザクⅡFZに搭乗して、
月面社会の標準時であるグリニッジ時で午後3時からの総合演習に駆りだされる。
もはや猶予はない。セラは作戦決行を決意した。
「キム…明日は丸腰の20機ひきつれて囲みを突破しなくちゃならないから…」
スミス海に、マッコイがフォン・ブラウンのアナハイムや、ここグラナダのジオニックなど旧ジオン系
の企業からの横流し品の搬出に用いる、廃鉱を利用したアジトがある。月の重力井戸から通常のMSが
脱出するためには、そこに隠してある宇宙船まで辿りつく必要があった。
「だ…大丈夫ですよ…ア・バオア・クーからの突破にくらべりゃ、ちょろいもんです」
「その意気よ…必ず生きて帰ろうね。」
「グラナダからの20機…自力で宇宙に上がってこられるわけでもあるまい…
ふん…気をつかいやがって」
ノーマルスーツを着用しつつ、ラウンデルの反対を拒む意図で、サキはひとりごちた。
「おそらくスミス海までの強行突破とみた。
20名のパイロットは必要だが、あの二人も死んでもらっては困る」
「しかし、何度も申しますように私が…」
「月の重力下での戦闘は、私の方が上手だと10年も前にお前から聞いた気がするが?」
そういい捨てて一人、出撃しようとするサキ。だが、
20名のパイロットは必要だが、サキにも死んでもらっては困ると思っていたのは
ラウンデルだけではなかった。
「散歩に行くならつきあうぜ」
「頼んだ覚えはないぞ」
「頼まれた覚えもねえけど…」
「いよう…気が合うな!!散歩ならおれも!!」
「散歩するにはいいミノフスキー粒子濃度ですよ…目標もよく見えます」
「………
. ………
. ………」
「全機装弾完了!!いつでも散歩に出られます!!」
「120mmマシンガン担いで散歩もないもんだが…エリア88可動全MS
セラとキムの脱出作戦の援護に発進する!乗機せよ!!」