06/11/21 23:07:38
3.
「補給に関しては閣下の申し上げるとおりです。ですが、護衛艦を付けないのは些か問題があると思われます」
ホフマンはガルシアの意見に同意しつつ、自論を述べ始めた。
「護衛を付けないとなると、彼らがアラスカに辿り着けなかった場合、事は責任問題になりますでしょうな……」
「な、なに!?」
責任という言葉にガルシアは顔色を変えると、大きく目を見開いた。
「どうです? ここはあの哨戒任務中の部隊を護衛に付けるという事で……」
ガルシアはホフマンの言葉に動揺していた。
「し、しかし……」
「彼らはユーラシアに所属し、かつ第8艦隊にも籍を置いている。我々にとって有益になると思いますが?」
ガルシアはしばし考え込んだ。
(何だぁ? 厄介者の押し付けは勘弁してくれよ……)
ムウはそんな事を思いながら、ガルシアを注視すると、
「…………いいだろう。私から伝える」
そう言って立ち上がり、部屋を後にしてしまった。
ホフマンはガルシアの態度に溜め息を吐くと、ムウ達を気遣った。
「すまんな」
「いえ、我々は嫌われているようです」
「奴は病人なのだ。精神面のな」
「はぁ?」
ジェラード・ガルシアは、元々アルテミスに左遷されて来た。その為にガルシアは功績を上げることに執着していた。そして、
アルテミスの重要性が高まると彼は一層躍起になる。だが戦争が長引いて故郷のユーラシアがジオンに侵略されてゆき、ジオン
の強さを目にすると、ガルシアは日に日に圧し掛かる重圧に耐え切れず、心身を病んでいった。
「昔は出世欲に執着した男だったが、この一年で事なかれ主義の小心者になってしまった。戦争は人を変える、と言うが……
寒い時代になったものだな、まったく」
ガルシアも戦争の被害者なのだろう。
「ところで、護衛の部隊ですが……」
「失礼します!」
突然、憲兵が入ってくるとホフマンに耳打ちをする。それを聞いたホフマンは沈痛な面持ちでムウ達に向かった。
「君達に残念な事を伝えなければならん」