06/11/10 22:14:28
1.
「よくやったな坊主」
ムウは格納庫に行くと、真っ先にキラに声をかけた。
「ム、ムウさん……」
声はまだ震えていたが、幾分か落ち着きを取り戻している。
ヘリオポリスが崩壊した後、宇宙に押し流されたストライクは自力でアークエンジェルへ帰還した。
その途中、推進部が壊れた救命ポッドを見つけたキラはそれを抱えていた。本来はオーブの救援艇が
保護しに来るのだが、“住民を見殺しにするな”とパオロが命じていた為ナタルはそれを受け入れていた。
「もう怖い思いをしなくていいぞ。後は俺と中尉にまかせろ」
「は、はい」
そう返事をしたものの、キラには複雑な思いがあった。
これでキラはMSに乗らなくていいだろう。機密を見たこともクリスとムウが何とかしてくれそうだし、
自分がコーディネイターであることも黙っていてくれるようだ。しかし、
―やはりキラ? キラなのか?
アスランの声を思い出す。
―どうしてそんなものに乗っている!?
確かにMSに乗り戦うのは嫌だ。しかしここでMSを降りたら、二度とアスランと会えないような気がした。
(アスラン……僕は……)
「キラッ!」
「無事だったんだな!」
友人達が駆寄ってくる。トールは抱きつき、サイは頭を掻き毟ってキラは目を白黒させる。
ほほえましい光景の中、救命ポッドから声が上がった。
「サイーッ!」
紅い髪を束ねた少女はキラ達に近寄る。
(知り合いか……ここはもういいな……)
ムウはその光景を見ると、そっと場を離れた。