種・種死のキャラがX世界に来たらat SHAR
種・種死のキャラがX世界に来たら - 暇つぶし2ch466:GX1/144 ◆nru729E2n2
06/09/10 23:42:38
第三十三話『幸福の価値は人それぞれだろ?』(前編)

「ふああぁぁああぁぁ・・・。」
窓の外は薄暗く水平線の向こうに太陽の片鱗すら見えていない。目覚める時間としてはかなり早い時間ではあったが、シンは珍しくそんな時間に目を覚ました。大きなあくびをしながら寝ぼけ眼で時間を確認する。
「まだ5時か…。とはいってももう一眠りするような時間帯じゃないよなぁ…。」
寝起きでボサボサの髪をかき上げ、窓の外に目を向ける。下はどこまでも穏やかに広がる海、上は明るくなり始めた空を少しばかりの雲がゆっくりと流れてゆく。
「…甲板に出て朝日でも見るか…。」
シンには寝坊の習慣は無い。部屋にいてもやる事も無く退屈なだけなのでなんとなく甲板へと足を運んだ。

 外は中に比べて空気に”張り”があった。ドアを開けた瞬間、頬をなでる朝の空気が体にまとわりついていた眠気を吹き飛ばし、
ふやけていた顔を引き締める。大きく体を伸ばし、全身の筋肉を一通り動かすと甲板の縁へと足を進めた。
「そういや、朝日をこうやって見るのは何年ぶりだろう…?」
C.E.70の泥沼化した戦争でオーブを離れた後、彼はずっとプラントにいた。砂時計を模したプラントでも朝はやってくるがそこはやはり人工の空間、
幼い頃にオーブで見た朝焼けや夕焼けの美しさには程遠い。ミネルバに乗って地球に戻ってきた後も、戦争ばかりでそういったことをする余裕も無かった。
 フリーデン正面の水平線から太陽が顔を出し始める。太陽が昇る速度はゆっくりとしていて、それでいて見ている人を飽きさせる事が無い。
「…朝日って、こんなにきれいだったかな…?」
今までに何度か見たこの光景にシンは感動を覚えていた。地球にいればどこでも見ることのできる光景だが、以前見たものとはまるで違う。
見た場所が違うからか、時期が違うからか、理由はいくつか考えられるがそんなことはどうでも良いと思わせるほど朝日は美しく見えた。
「”早起きは三文の徳”って言うけど、確かにこれを見ると得した気分になれるな。」
 朝日は水平線を昇りきり、燦々と光を湛えている。何か良い事が起こる予感を感じながらシンは朝日に背を向けた。


「…んで、これか…。」
「ん? どうかしたか?」
「べつに…。」
カガリが運転する車の助手席でシンは頬杖をついて投げ遣りな返事を返した。
 フリーデンは大小6つの島からなる太平洋上の交易中枢都市『セインズアイランド』に寄港していた。北米大陸とユーラシア大陸の間にはこのセインズアイランド以外に目立った島が無いため、
シー・バルチャーやオルクでさえもここで売買を行う。15年前のコロニー落としの被害を逃れた数少ないエネルギープラントを持つこの都市は、海で生活を営むものたちの生命線となっていた。
 フリーデンクルーにとって、北米大陸を出港してから約一ヶ月ぶりの陸地である。久しぶりに陸地の安定感を感じながらクルーの半分が物資の買出しをかねてセインズアイランド観光に繰り出すこととなった。
 南国のきつい日差し、右にはこの一ヶ月窓から眺め続けた青い海を見ながら整備された海岸道路を車は南へと走る。いつもはなんとも思わないこの光景だが、この時ばかりはこの心地よすぎる青い世界が苛立たしく思えた。
「ガロードとティファはわかるさ。ウイッツさんたちもわかる。何で俺とアスハが組んで買い物なんだよ・・・。」
「そんなこと言ったって仕方ないだろ? 手分けしてやらなきゃ終わらないんだから。」
「女同士トニヤさんとでも組めば良いじゃねぇか…。」
「あいつはサラと何か話していた。」
「ちぇ…。」
「それに、こういう時じゃないと話せない内容もあるからな。」
ふてくされているシンを横にカガリは真剣な表情を見せた。口調からも真剣な様子が伺えたのでシンも気持ちを切り替える。
「…フリーダムのことか?」
「それもあるが、お前や私、そしてキラ…フリーダムのパイロットのことだが、何でこんなところにいるのか? 理由も原因も謎だ。」
元々いたC.E.73からA.W.0015へ、どういった経緯で世界を超えてきたのか。こちらに来て既に2ヶ月、まったくそういったことはわかっていなかった。



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