種・種死のキャラがX世界に来たらat SHAR
種・種死のキャラがX世界に来たら - 暇つぶし2ch163:GX1/144 ◆nru729E2n2
06/08/08 22:18:20
暑い日が続きますねぇ… ああ、庭の草むしりしなきゃ…

第二十八話『・・・幸せってなんなんだろうなぁ・・・』

「なぁおい! お前一体何があったんだ!?」
無言で医務室を後にするシンを追ってカガリも医務室を後にする。カガリの制止を無視してシンはずんずんと足を進めた。
「おい! 聞こえてるんだろ!!?」
無言で歩くシンの腕を掴み彼女は強引に顔を向かせる。彼は相変わらずの不機嫌そうな顔を向けた。
「・・・なんだよ?」
「何だよって、さっき言った事がどういう意味なのかを聞きたいといっているんだ! “好きな人を助けられなかった”って…。」
 シンはカガリの言葉が終わらないうちに掴まれている腕を振り払って彼女に背を向ける。彼のその姿は普段の仲間と馬鹿話をしている姿ではなく、
フリーダムや大西洋連合に対する激しい憎悪を感じさせるものでもなかった。いや、戦士としての姿ですらなかった。
「・・・あんたって、ホントに空気読まないよなぁ・・・。」
「なんだと!」
「いちいちギャーギャー喚くなよ。聞きたいんならついてきな。」
そういうとシンはまた足を進め始める。彼女に対してようやく打ち解け始めたとはいえ、未だに彼の中には嫌悪感が根強く残っている。そんな彼がいやなことを聞かれて感情を爆発させなかったのは今回が初めてだった。


 ローレライの海での戦闘が終了して既に半日、フリーデンは未だ動けない状態であった。右の機関部の損傷がひどいようで未だ命綱を付けたメカマンたちが修復作業を行っている。
「・・・あれだけ損傷してよくあの嵐を乗り切ったもんだ・・・。」
「おい、話をそらすなよ。」
シンたちは艦橋の右側に位置する荷物搬入用の甲板に出た。長かった嵐は終わり、空も海も落ち着きを取り戻している。シンは甲板の縁に腰掛けたがカガリは立ったままほとんど青一色の世界に目を向けた。
「初めて出会ったのは海だった。」
「え?」
「・・・あんたが聞きたいって言うから、話したく無い話をしているんだ。話の腰を折るのはやめろよな。」
「あ、ああ…。」
 一度は嫌悪感が混じった目を向けたが、またすぐにすがすがしい青だけの世界に目を戻す。こうして海を見ているのと自分の目の前で散った少女の事が思い出された。
「あの子は崖から海に落っこちてさ、俺が助けて無かったら今頃海底で魚のえさになってたと思う。」
 シンはただ事実を淡々と語った。”死”に対して異常に恐怖を覚えること、後々彼女が大西洋連合の強化人間だったこと、薬品漬けにされていて特殊な措置なしではまともに
生きることすらできないこと、彼女のことを思って軍紀を破って彼女を帰したにもかかわらずベルリンであの巨大MSに乗って出てきたこと、
フリーダムがそれを撃墜したこと、戦闘後に彼女の遺体を近くの静かな湖に沈めて弔ったこと・・・。
 その話を聞くカガリは彼がものすごい悲しみをこらえて話していることは察する事ができた。
「・・・そうか。」
「似てるだろ? 戦わせる必要が無い奴を戦わせてたり、好きだった奴が大変な目に遭ったり・・・。」
「そうだな・・・。」
「だから、ジャミルさんには同じ思いをしてほしくないのさ。目の前で好きな人が死ぬ姿なんて、自分が死ぬよりもつらい・・・。」
「でも、お前にそれだけ思われていたなら、彼女も幸せだろうさ。」
「・・・幸せ? 死んで幸せな奴なんてどこにいるんだよ!!」
 悲しみに染まっていた彼の瞳が一瞬のうちに怒りの炎に包まれる。彼にとってその少女のことはたとえどんなことであっても口出しをされたくないことであった。
「死んで幸せになる奴なんているもんか!! 生きて、生きて生きて生きて生き抜いて! やっと見つかる物が幸せだろう!!?」
 握る両の拳から少しずつ血が染み出てくる。さっき医務室で付けた傷がまた開いてきたのだろう。手からたれる血の一滴が青い海に染みを作る。



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