06/12/02 12:41:25
微かに確認できたのは、ソード状のビーム・ブーメランを振るうデスティニーの姿。
(肩っ!? いや……)
全速で回避運動を行いながら、モニターが表示する機体の異常を見れば、左肩部に装備
されたレールガンが切り落とされている。
「この野郎っ!」
同僚の窮地に突進するイザークのソード・インパルス。彼の判断では追撃をカットでき
るかどうか、微妙な間合いではあった。だが、追撃へ走ればデスティニーは大きな隙を見
せるであろう。恐らく、敵パイロットはそう行動するだろうし、その時点で勝負は決まる。
(落ちるなよっ! ディアッカ!)
下手を打てばディアッカは死ぬ。最悪でもコクピットだけは外してくれよと、イザーク
は友の腕に全てをかけるしかなかった。だが、
「なっ!?」
予想に反して銃口が向いたのは自分だった。ビーム・ライフルが雨のように降り注いでくる。
「こいつっ!?」
明らかに異質だった。今までのように、全てが必殺を狙ったものではない。牽制の中に
本命を隠した攻撃は、その一つ一つに意味を伴っているのかのような錯覚に陥る。
「一体、何があった!?」
大きな変化に動揺が隠しきれない。イザークは辛うじて、その攻撃を避けながら自問す
る。
きっかけは、間違いなくセイバーだろう。しかし、それが一言、二言かけただけで、こ
のような変化がおきるのだろうか?
最後と思われるビームを避けて、反撃の手をイザークは上げようとする。だが、
「くそっ!」
目に映るのは掻き消える敵機の影。見渡せば、すでにブラスト・インパルスに弾丸のよ
うに突っ込んでいくデスティニーの姿があった。
「認めてやるよ……アンタ達は強い。だがっ―」
盛る業火を、真紅の瞳の奥で凍てつかせた少年は、獲物を見据えながら小さく呟く。
「―その機体じゃ、オレには勝てない」
一定の状況にはめ込む事を想定したインパルス。全ての状況に対処できる能力を求めた
デスティニー。前者ははまれば抜群の力を発揮できるのに対し、後者はどんな状況でも安
定した力を発揮できる。
とどのつまり、コンセプトが違いすぎるのだ。
相性の選択が重視されるインパルスでは、その換装が重視される。それが無ければ、力
を十二分に発揮できはしない。だからこそ、アスラン・ザラは二種類の機体を生産させて、
それを補わせようと考えた。もちろん、それを実行できるパイロットがいることを念頭に
おいてのことである。
彼は間違ってはいなかった。
現に二人は獅子奮迅の活躍を見せ、敵陣の不覚まで切り込んできている。だが、それは、
インパルスのはらんだ不安を拭い去った結果とは言い切れない。
ソード・インパルスは距離を取られれば手数を減らされるし、ブラスト・インパルスは
決して、接近戦が得意な機体ではない。
その部分を全く感じさせずに、ここまでの力を発揮できたのは、彼等の熟練された能力
と、長年の間に培ってきたコンビネーションの賜物である。