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第十九話『何でこの船にはスーパーマンがいっぱいいるんだ?』(中編)
「『サテライトシステム』?」
聞きなれない言葉にシンは不思議そうな顔をした。ブリッジに来たガロードが言うには、昨晩このシステムが使用されているところを見たというのだ。
「で、結局なんなんです? その『サテライトシステム』って?」
ブリッジの一番奥、舵を任されているシンゴにシンは聞いた。
「今は使ってないけど、元々GX装備されていた戦略兵器さ。一撃でコロニーも吹っ飛ばす威力がある。」
シンゴの話にシンは耳を疑う。コロニーとは、この世界で言うプラントのことだ。それを一撃で吹き飛ばす兵器がMSに搭載されていることは正気の沙汰と思えなかった。シンゴの説明にジャミルが付け加える。
「使用する際にMS単機のエネルギーでは発射する事ができん。そこで月にエネルギー供給用のマイクロウェーブ送電施設を作り、そこからエネルギー供給を受けて発射する。だから打つ前に必ずそのレーザー回線が見える。」
語るジャミルからは苦々しさが感じられた。このことはあまり話したくないのだろう。
「だが、送電施設との最初のアクセスにはフラッシュシステムを使用せねばならん。」
「つまりそこにニュータイプがいると?」
サラの言葉にジャミルは無言でうなずく。
艦が出航したのはその次の日のことだった。
いつものシミュレーション訓練の後、シンはガロードと話をした。
「なぁガロード、ジャミルさんが言ってたニュータイプってなんなんだ?」
「ニュータイプ?」
「言ってたろ? ニュータイプがいるとかいないとか。」
「ああ、あれか。ジャミルがこうして旅をしているのはニュータイプを保護するために旅をしているんだ。」
ガロードは続けた。先の大戦でかなりの数のニュータイプが戦場に出て散っていったこと、ジャミル自身もニュータイプだったこと、
戦争で力を失い、その後ニュータイプを戦争に利用させないために今のように保護活動を始めたこと…。
「んで、保護できたニュータイプは今のところティファ一人ってわけ。」
「ティファってあの女の子の事か?」
「ああ。俺のせいで一時はかなりやばい状態にもなったけど、今はああして元気にやってるよ。」
その後のガロードのティファについての外見や内面の話はシンには聞こえていなかった。
「ニュータイプ…か。」
特殊能力を持った人間、人類が進化すべき姿とされ名づけられた”ニュータイプ”と仇名。
シンはいつの間にか彼のいたCEにあった遺伝子改良を受けていない”ナチュラル”とそれを受けた”コーディネーター”の話に重ねて考えてしまっていた。
「彼女には戦闘能力は皆無だろう?」
「…シン、俺はティファを誰にも渡すつもり無いからな。」
「別にとりはしないけど…、ただ能力があってもやっぱり好き嫌いがあるよなって話さ。」
「? どういう意味だよ?」
「パイロット適正があっても、やる気が無いならやるべきじゃないよなってこと。」