06/10/16 23:23:40
─さて。
どうするか。
本郷は自分の学校の生徒の後を密かに尾けながら、
これからの行動を考えていた。
華奢な肢体。艶やかな短い黒髪は綺麗だ。
肩にかけているバックは重そうで、危なっかしい印象を受ける。
本郷はやや離れた位置から碇シンジの後姿を眺めていた。
つい数分前、シンジは店の商品をあのバックの入っているのだ。
買ったわけではない。無断で、それを入れたのだ。
つまり万引きである。
それを目撃したのは偶然だった。
立ち寄ったデパートでシンジの姿を視認した本郷は、
ストーカーのように彼の後を無意識に尾いていったのだ。
それは本郷の勘だったのか。
明確には判然としない。思えば、シンジの挙動はあまりにも不審だった。
迷い込んだ子犬のようにキョロキョロと辺りを見回して、
店員からは死角となる棚と棚の狭い間に入ったのだ。
もしやと思った。
本郷はシンジに気取られぬように近づき、
棚の隙間からシンジの様子を窺った。
─案の定、
シンジは商品をバックの中にしまい込んだ。
万引きだ。だが、本郷はすぐに彼を問い詰めることはしなかった。
何故か?
そんなことをしたら、ご破算だからだ。