アスカの日記 5冊目at EVA
アスカの日記 5冊目 - 暇つぶし2ch150:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/11/24 20:02:52
GJ!!!
かなり面白いです
楽しみにしてます

151:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/11/24 20:58:22
いちご100%の東城スタイルのアスカ見てえ

152:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/11/24 21:15:57
三人目ノシ

イイヨー(・∀・)

153:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/11/25 01:43:26
オッテュ

154:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/11/30 00:00:08
おもろい。
ワクテカ
ぐっじょぶ。

155:960
06/12/01 19:32:01
>>149

今日,カントクに直訴した。
「ツンデレは理解した,もし,出来なければ役を降ろしてもらって構わない」
「ただ,1週間だけ時間が欲しい」 と。
訝しげな表情で,カントクはアタシに何故かと尋ねてきたが,
理由を話すと,こちらの心情を汲んでか一応は了承してくれた。

「では,レートはツン50:デレ50ってことで」 アタシはそう言いつつ,席を立とうとした。
「・・・譲って,ツン90:デレ10だな」 例のポーズのまま,カントクが曰う。 
「そんなっっ!」 慌てて,席に座り直す。
「ツン60のデレ40では,どうです?」  
「・・・惣流君,もう,ドイツの家も引き払って来たのだろう,帰る場所はあるのか?」
ぐっ,痛いところを突かれる。
「・・・じゃあ,ツン80:デレ20では?」 アタシの最大限の譲歩だった。
「プラス・・・脱衣だな」 表情も変えず曰う。 
「えぇっ!脱衣ぃぃ!?脱ぐんですかぁぁ!?」
「それがイヤなら,今晩発のドイツ行きの便を早急に手配させよう」 有無を言わさぬ雰囲気が漂う。
「・・・」 「・・・」
アタシとカントク,二人の間を沈黙がしばらく流れる。



156:960
06/12/01 19:32:51

「・・・わかりました」 
葛藤の末,頭を垂れる。負けた。負けてしまった。
どうしよう・・・困った・・脱衣なんて・・・。
惣流家の家訓に従い,困ったときはとりあえず寝ることにしている。
現実逃避と言われようがなんだろうが,家訓だから仕方ない(コトにしている)。
おやすみなさい。

『エヴァンゲリオン新劇場版 前編 REBUILD OF EVANGERION:01』(仮題)
好調撮影中!
2007年初夏ロードショー予定!
でも,ひょっとしたら,R-18になるかも・・・。

157:960
06/12/01 19:38:47
>>all

960です。
まとめてで申し訳ありませんが,この場を借りてお礼申し上げます。
お読みいただき,ありがとうございます。

158:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/02 00:28:03
(・∀・)イイネー

159:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/02 03:20:31
オッテュ

160:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/03 20:46:37
うむ。アスカの中の人はなかなかカワイイ性格ですな。

今一番期待してますので、ぜひ続きよろしこです>>960

161:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/03 20:57:45
今はじめて言おう・・・


監督乙!

162:960
06/12/04 18:13:55
>>156

今日は,アタシの誕生日。
さっき,某巨大掲示板を覗いたら,「アスカ,お誕生日おめでとう!」とたくさん書き込まれていた。
板の看板まで,お祝いしてくれてる。
どうして,みんなアタシの誕生日を知っているの?なんで?
疑問がいっぱいだったけど,その時はホントに嬉しかった。その時は。

・・・けど,調べると,たまたま10年前のアニメでの設定が今日だっただけで,
単に偶然の一致だったことに気づいてしまった。
アタシじゃない「惣流・アスカ・ラングレー」が祝福されているコトに,ちょっと複雑な気持ちになった。
おそらく碇さんも葛城さんも,アタシの誕生日が今日だってコトを知らないだろうし。
やっぱり,今年も独りか。

でも,大丈夫。
実は,アタシには『足長おじさん』がいる。
事務所を通してだけど,節目節目には必ず何らかのお祝いが届く。
それだけじゃない。
奨学金で足りない部分の学費や,仕事の少ない時の生活費など,少なからず援助を受けた。
そして,金銭の面だけじゃない。アタシが窮地に立つと,その見えざる手で必ず助けてくれた。
一度も会ったこと無いのに。
お礼をしたくて,いつも事務所に連絡先を聞くけど,本人の希望でそれは出来ないって,教えてくれない。
ただ,こちらからのメッセージは届けてくれてるみたいだけど。
今年はニッポンにいるけど,届くかな。

163:960
06/12/04 18:14:43

お祝いが届いた。
さっきマネージャが来て,手渡してくれた。ちゃんと届いた。ちょっと驚いた。
中に入っていたのは,上品な感じのブラウスとちょっとクラシックな丈の長いスカート。
毎回,良い趣味だとつくづく思う。サイズもぴったり。
ありがとう,アタシの『足長おじさん』
これだけで十分幸せよ。

多くを望むと,無かった時の落胆も大きいことは身を持って知っている。
もう,あんな思いをするくらいなら望みはしない,期待もしない。

「ただいま」「ただいま」
碇さんが帰ってきた。葛城さんも。二人一緒とは珍しい。
「おかえり・・・って,何?その大荷物?」
二人とも両手にいっぱいの食材,そして大きな紙袋。
「だって,今日,誕生日でしょ?『アスカ』」
「今晩はごちそうよ,期待してちょうだい,ね」
え?

164:960
06/12/04 18:15:57

「あのー,ソレって役の上でのハナシですよね・・・」 
アタシは冷めた声でぽそっと言った。
語尾がフェイドアウトするくらい小さな声で。
二人は顔を見合わせ,一瞬の後,二人とも大笑いした。
「違うわよ,『アスカ』。これは『惣流さん』あなたの誕生日のお祝いよ」
「碇くん,すごかったのよ。カントクに『アスカ』じゃなく『惣流さんの』誕生日をやらせろって。自分の降板まで懸けてね」 
笑いすぎたのか,目尻の涙を拭う葛城さん。
「そんな,葛城さん,わざわざ言わないでくださいよ」 ちょっと照れ気味の碇さん。
えっ?今なんて?

「はい,これ,プレゼント」 
リビングで,葛城さんはまだ茫然自失気味のアタシに,綺麗にラッピングした大きな箱を手渡した。
「碇くんと二人で見立てたの,気に入ってくれると嬉しいけど」
ラッピングをほどくと,中には・・・渋いチャコールグレイのカーディガンが入っていた。
しかも,有名どころのカシミア100%,一体いくらすんのよ!これって!
「・・・」 もう,コトバが出なかった。
葛城さんに目を合わせたまま,カーディガンを抱きしめる。
ぽろぽろと涙がこぼれた。最近,涙腺がとっても緩い。ハナをすする。
「・・・ありがとう・・・ございます」
それだけを言うのが,精一杯だった。

165:960
06/12/04 18:16:44

それから,続々と人が来た。綾波さんも,他の出演者の方もスタッフも。
料理も豪華豪華,そこんじょそこらのディナーなんてかなわないくらいに。

「今日が誕生日なら私のほうが先輩ね。これから私のことを『綾波さま』と呼びなさいね」
「あら,この世界じゃ,入った順番で先輩後輩が決まるんでしょ?アタシ,赤ちゃん時分からモデルやってるんですよ。綾波さんこそ,アタシのことを『惣流さま』とお呼びくださいね」
「・・・」 じとっと上目遣いで睨む綾波さん。 
ふっ,勝ったな。へへん。

綾波さんの手でケーキにロウソクが立てられる。何故か5本。
「なんで5本なの?」
「あら,カズ数えられたの,この赤毛サル」
きぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!
一触即発のアタシ達。火花が散る。
・・・見かねた碇さんが,あと9本足してくれた。

リビングの電気が消され,Happy Birth day to Asuka~と合唱が始まる。
ロウソクの明かりの前で,アタシは涙を堪えるのに必死だった。
皆の合唱が終わり,そして,14本のロウソクを一気に吹き消す。
「おめでとう!」「おめでとう!」「おめでとう!」
拍手,拍手とお祝いのコトバ,ことば。
何だか,補完された気持ちになった。
嬉しい,本当に嬉しい。
アタシは,今日のコトを一生忘れない,忘れられない。
みんな,ありがとう。

166:960
06/12/04 18:17:30

「なんで,赤城さんの誕生日はお祝いしなかったんですか?」 何気なく聞いた。
赤城さんは,ぴくっ,とこめかみを引きつらせて,煙草の煙を天井に向かって深く吐いた。ため息のように。
「・・・女は30過ぎたら,もう誕生日って無いのよ」
目がマジだった。やばっ!
触れちゃいけなかったのね。ソコは。

『エヴァンゲリオン新劇場版 前編 REBUILD OF EVANGERION:01』(仮題)
好調撮影中!
2007年初夏ロードショー予定!
みんな,本当にありがとう!

167:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/04 18:23:58
おつ

168:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/04 18:41:25
最高に面白い
がんばってください

169:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/04 21:26:15
こういう視点はおもしろいです

170:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/04 21:42:40
(・∀・)イイ!

171:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/04 22:59:10
作者さん乙&アスカさんおめ
>>155
によると今度の劇場版では2割もデレのあるアスカが見られるのか
超期待

172:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/04 23:26:18
ちょwwwなんかリッちゃんリアルでオモシロスwwwwww

173:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/04 23:29:37
オッテュ

174:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/07 00:25:15
おつ

175:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/07 07:21:54
はたして足長おじさんの正体は!?

…正解当てちまったら作者様が続き書くの困るだろうから、犯人探しはやめよう。

176:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/07 20:18:53
日記と名のつくスレ一覧(順不同)

アスカの日記って何か教えやがって下さい
スレリンク(eva板)
渚カヲルの日記
スレリンク(eva板)
葛城ミサトの日記 2冊目
スレリンク(eva板)
【LAS】アスカの日記 8冊目【LAS】
スレリンク(eva板)
綾波レイの日記 3冊目
スレリンク(eva板)
マナのまなまな夢日記 3冊目
スレリンク(eva板)
碇シンジの日記 3冊目
スレリンク(eva板)
エヴァ量産機の流浪日記
スレリンク(eva板)
霧島マナの日記
スレリンク(eva板)

177:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/08 01:34:28
>>175

われわれはただドロリと待っていればよい

178:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/08 03:25:57
>>166
リツコは赤木

179:960
06/12/08 18:56:56
960です。

ありがとうございます >>all
>>175 ご配慮,感謝します。
>>178 すみません。以後気をつけます。

それでは,続けます。


180:960
06/12/08 18:58:02
>>166

『明日のことは,明日考えよう』
先日,悩んだまま眠り,翌日早朝の冴えた頭で考えて,たどり着いた結論だった。
なんてポジティブなんだろう,アタシって。
自分で自分を褒めてあげたい。

さて,HoneyMoonならぬHoneyWeekだ。
悔いの残らぬよう『家族ごっこ』に全力を尽くそうと思う。

とりあえず,清楚な感じ,をイメージしながら支度をする。
誕生日プレゼントにもらった白のブラウス,長めのスカート,
そして,白いフリルの付いた可愛らしいエプロンを纏う。
言われないとわからないくらいの薄化粧。
髪も1つにまとめ,あっさりとした感じにする。
ちょっとお姉さん風に。

朝食の準備も万全。ちょっとドイツ風味だけど,大丈夫よね。
お弁当も作った。特別に大きいのを一つ。


181:960
06/12/08 18:58:48

そっとフスマを開け,碇さんの部屋に入る。
碇さんは・・・ベットの上でタオルケットにくるまり,真ん丸になって眠っていた。かわいい。
起こすのがもったいないくらい,安らかな寝顔。

そっと,耳元で囁く。
「シンジ,朝よ,起きて・・・」
そして,そのまま・・・耳の端を唇で軽く柔らかくはむっとした。きゃー,やっちゃった。
ぴくり,と目を覚ます碇さん。
「おはよ,シンジ」
「・・・」
目が半分しか開いてないまま,碇さんがベッドから起きあがる。
耳先がちょっと湿っているのを,指で気にしながら。
「おはよう,惣流さん・・・って『アスカ』なんでここにいるの!?」 
焦る碇さん。時計を見て更に焦る。
「あっ,朝ご飯作らなきゃ!寝坊しちゃった。ごめんね」
「大丈夫よ,『シンジ』。アタシが全部作りましたから」
「えっ?」
「お弁当も,もう作りましたよ」 得意げなアタシ。へへん。
惚ける碇さん。

182:960
06/12/08 18:59:34

朝食。
「はい,『シンジ』あーんして」 
アタシも一緒に大きく口を開けながら,碇さんにあーんするよう促す。
まるで,赤ちゃんにご飯をあげるときみたいに。
「・・・『アスカ』,ボクのこと馬鹿にしてるでしょ?」 むーたれる碇さん。
「それは一体,何・・・?『アスカ』」 呆れたように葛城さん。
「『家族ごっこ』」 アタシはさらりと答える。

葛城さんが指先でちょいちょい,とアタシを呼ぶ。
ダイニングテーブルを挟んでのこそこそ話。
「(惣流さん。降板の噂,聞いてるんでしょ?ヤバイんじゃないの?)」
「(大丈夫です。カントクの許可得てますから)」
「(えぇー,あのカントクが!? よくOK出したわね)」
「(・・・脱衣を条件に,なんとかOKしてもらいました)」
「(えぇっー!脱ぐって,惣流さんまだ未成年じゃない,どうすんのよ!)」
「(なんとかなりますよ,多分)」

葛城さんが左手を腰に当て,やおら立ち上がった。
「シンジ君,命令よ!口を開けなさい!」
右手人差し指でびしっ!と碇さんを指さし,葛城さんが命令する。ミサトになりきって。
「えっ・・・どうしたんですか?葛城さん?」 豹変した葛城さんにきょとん,とする碇さん。
「と・に・か・く,口を開けなさい!早く!」 
さすが演技派女優,迫力満点。アルコールをも役者根性で克服しただけのことはある。
しぶしぶと,碇さんが口を開ける。
そこへ,アタシがちーゃんと飲み頃に冷ましたスープを口へ運ぶ。
碇さんが不満そうなまま,ずずっとスープをすする。
やりいっ!

183:960
06/12/08 19:00:23

一緒に登下校できるのはいいんだけど。
・・・前々から思っていたけど,ヒトから見たときに連れなのかそうでないのか,
判断のつきかねるこの微妙な距離って,一体何?

思い切って碇さんと腕を組む。そして,二の腕にきゅっとしがみつく。
コレなら,アタシの胸の感触も伝わるだろう。
いくら『家族ごっこ』とはいえ,こちらから積極的に仕掛けるのは結構恥ずかしいし,勇気もいる。
だけどアタシに与えられた期間は,たった1週間。存分に甘えなきゃ。

「ねぇ,『アスカ』,皆見てるんだけど・・・」 碇さんが恥ずかしげに言う。
「いいじゃないですか。それともアタシじゃ不満なんですか?」 
ちょっと口を尖らせて,他意無く,可愛らしく答えてみる。
「いや,そ,そんなんじゃないけど・・・」 口ごもる碇さん。
「じゃ,いいですね」 
ちょっと強引だけど,いいでしょ?碇さん?

184:960
06/12/08 19:01:52

さて,お昼だ,おべんとだ。おなかすいた。
「あれ,『アスカ』ボクの分のお弁当は?」
カバンからお弁当箱を取り出しているアタシに,碇さんが話しかけてくる。
特大のお弁当箱が碇さんの目に留まる。
「・・・まさか?」 
ピンポン。正解よ,碇さん。
逃げだそうとする碇さんの襟首を速攻で掴まえる。そしてそのまま,えい!と持ち上げる。
首根っこをつままれた仔猫よろしく,てろーんと垂れ下がる碇さん。
また,例によって,じとん,とこちらを見ている。
「逃げちゃダメよ,いつも自分で言ってるじゃない,『シンジ』」

でも,さすがにあれを皆の前でやるのは,アタシも恥ずかしい。
仔猫状態の碇さんとお弁当を両手に持って,そのまま屋上へ連れ出す。

「はい,『シンジ』あーんして」
「・・・」
「好き嫌いしちゃ,めんめよ。はい,あーん」
「・・・」
最後には空腹に屈服したのか,文句も言わず食べてくれた。

185:960
06/12/08 19:03:24

碇さんがお風呂に入って,かれこれ数分。
そろそろかな。
髪をアップにして,いそいそと服を全て脱ぐ。そして裸身にバスタオルを巻く。
「『シンジ』,背中流すわね」 返事も聞かず,バスルームに入る。
トビラを開けると,ぎょっとする碇さんがいた。
「ちょ,ちょっと『アスカ』これは何か違う!ちがうよ!」 悲鳴を上げる碇さん。
「あ,このバスタオル邪魔ですか?・・・それじゃ,外しますね」 ちょっとボケてみる。
バスタオルを外しかけるアタシに,更に慌てる碇さん。
「そ,そ,そうじゃなくて」
「冗談ですよ,アタシが背中を流したいんです。・・・いいですよね?」
「・・・」 碇さんの無言の返事は肯定と受け取った。いや,降伏かな?
かしかし,と碇さんの背中を洗う。服を着てる時と大分印象が違う。
やっぱり,華奢に見えても男の子よね。背中が広い。ちょっと猫背だけど。
「じゃあ,『シンジ』今度は前向いて」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
「嘘ですよ」 くすくすと笑いながら答える。
碇さんの一つ一つの仕草が,かわいくて仕方無い。

186:960
06/12/08 19:04:15

「さ,『シーンジ』,こーこ」 
寝ころんでる碇さんの隣で,アタシは正座をして自分の膝をぽんぽんと叩く。
「・・・『アスカ』今度は何なの?」 疑いのまなこ。
アタシの『家族ごっこ』に付き合わされて,散々な目に合っている碇さんには,当然の反応。
「世の定番,耳かきに決まってるでしょ,ほら」
無理矢理,寝ころんでる碇さんの頭を膝に乗せる。その重さに何とも言えない幸せを感じる。
「ほりゃ,こちょこちょこちょ・・・」 耳かきで,かきかきとほじる。 
「・・・」 
最初は嫌がってむーたれてた碇さんも,だんだん気持ち良くなってきたのか,静かに目を閉じた。
そして,次第に表情が柔らかくなり,とうとう最後には眠りに落ちてしまった。
う,動けない。あ,足が・・・。
でも・・・『家族』ってホントにいいな。

187:960
06/12/08 19:05:02

「はい,『シンジ』あーんして」
「あーん」
碇さんも,この生活に大分慣れてくれたようだ。
一時は諦めた表情でいたけど,今ではごく普通に赤ちゃんのように口を開けて待ってる。
いつ見ても,かわいい。

「ねえ『アスカ』?寝る前にまた本読んで欲しいな」
「うん。どの本がいい?『シンジ』」

ベットに入った碇さんの横で,アタシがしばらく本を読み聞かせる。
碇さんはそのうち,うとうととし始める。
そして,碇さんが眠った後,アタシは部屋の電気を消し,
そっとフスマを閉めて,碇さんの部屋を後にする。

このまま,時が止まってくれればいいな,と思った。
でも,約束の日は,間違いなく近付いてきていた。

188:960
06/12/08 19:05:48

「『セカンド』,アナタ最近やけに,碇君にべたべたしてるわね。もう決定なの?降板は?最後の悪あがき?」
綾波さんが,傍目には判らないくらいの,薄く微笑んだ口元で話しかけてくる。口調はレイだけど。
「いいんですよ。カントクのお許しを戴いてますから」 得意げなアタシ。
「えっ,それって,アリなの?」
「期間限定ですけどね」
「・・・フェアじゃないわ」 
フェアって?・・・アタシ達,何か勝負してましたっけ?

その後,綾波さんはカントクに直訴したそうだが,ダメだったらしい。
だって,一緒に住んでないから『家族ごっこ』にならないじゃん,綾波さん。

『エヴァンゲリオン新劇場版 前編 REBUILD OF EVANGERION:01』(仮題)
好調撮影中!
2007年初夏ロードショー予定!

189:960
06/12/08 19:06:35

今日,綾波さんのうちにこっそり遊びに行った。
・・・何?この殺風景な部屋?
血の付いた包帯とクスリとビーカー。ゴミが散乱している。

と,言うかヒトが住めるの?こんなところで。
靴下の裏,まっくろになった。
綾波さんも「もうこんな生活イヤ!」と嘆いていたけど,仕方ないもんね。
あなたがイヤなら,代わりは沢山いるって自分で言ってたじゃない。
お互いさまよ。

『エヴァンゲリオン新劇場版 前編 REBUILD OF EVANGERION:01』(仮題)
好調撮影中!
2007年初夏ロードショー予定!

190:960
06/12/08 19:07:21

いつも思うのだが,初号機に見られてる気がしてならない。
綾波さんも「うん。あるある。時々背筋がざわっとするのよね」って。

ある日,碇さんに何気に同じことを聞いてみた。
「あ,それ母さんじゃないかな。・・・今日,寄らなきゃならない用事があるから一緒に行ってみる?」
へ?
碇さんに連れられ,ケージにある初号機に向かう。
丁度,頭部の側面に取って付けた様な玄関ドアがある。横には『碇』の表札。そしてインターホン。
チャイムを鳴らす碇さん。
「母さん,シンジだよ,開けて」
かしゃん,と鍵が外れ,ドアが開く。中から出てきたのは・・・碇ユイさんだった。
「シンジ,待っていたわよ」 ユイさんが碇さんを抱きしめる。柔和な瞳で,きつく。
ここの『家族』は皆,会うたびに抱きしめるのがデフォルトなのか・・・。
なんて考えていたアタシに,ユイさんがいきなり話しかけてくる。
「あなたが,惣流さんね?」 
「はい。初めまして。惣流です。碇さんにはいつも大変お世話になっています」
当たり障りのない返事をして,ニッポン風に深々とお辞儀をする。
「いえいえ,こちらこそ息子がいつもお世話になりまして・・・」 
と言いつつ,ユイさんの瞳が急に鋭くなる。
アタシのことをつま先から頭のてっぺんまで,値踏みするように見ている。
あれ?この感じどこかで・・・。

191:960
06/12/08 19:08:08

「ま,こんなところで立ち話も何だから,入って入って」
一転して柔和な瞳に戻ったユイさんが,アタシ達二人を招き入れる。
中は・・・畳敷きの4畳半に小さめのキッチン,奥のほうにユニットバスかな。
丁度,初号機の目の部分が窓になっている。
あとは,壁の一方にスイッチやらボタンやらいっぱい付いている制御卓のようなものがあるのと,
遠くから聞こえる機械の低い駆動音を除けば,普通のアパートと何の変わりもない。

「あ,それは絶対触らないでね」
アタシが制御卓をしげしげと眺めていると,お茶を持ってきたユイさんが言う。
「あのー,これ,何ですか?」
「あ,それ,初号機の動作をコントロールするのよ」
ユイさんが,制御卓から生えているレバーの一つをちょん,と動かした。
急激に機械の駆動音が高まる。大量の水しぶきと共に,初号機の左手が水面上に現れる。
「ね,すごいでしょ? これで,私のシンちゃんに悪い虫が付いたら,叩き潰すの」
にっこりとユイさん。
あれ?・・・ひょっとして?
「!?」 
目線の正体に気づいたアタシは,どう返事をすればいいのか判らなかった。
こんな時は・・・笑えばいいのかな?

192:960
06/12/08 19:08:55

ちゃぶ台を囲んで,嫁姑の間に似た緊迫した空気が流れる。表面上はにこにこしながら。
碇さんだけがそんな空気の中,ホントににこにこしている。
猫舌のアタシは,ユイさんの入れてくれた,超熱いお茶を一気に飲み干すと,
碇さんを促し,そそくさとユイさんちを後にした。
可愛い可愛い1人息子がガールフレンドを,ましてや,同居までしている女の子を連れてきたら,
・・・普通,面白く無いわよね。取られたみたいで。

そして,ふと,思いついた。
「・・・!?」 
ひょっとして,ひょっとしたら?

193:960
06/12/08 19:09:42

ケージにある弐号機の正面に立つ。
そして,周囲に誰も居ないことを確認し,意を決して声をかける。
「ママ・・・」 
普通の声で呼んだつもりだったが,消え入るような,か細いつぶやきにしかならなかった。
何年ぶりだろう?ママって呼んだのは。

でも,何も返事は帰ってこなかった。当たり前のことだけど。
ちょっとだけ期待していた分,ちょっとだけ悲しくなった。

落胆したアタシがケージを離れようときびすを返したその時,
背後で巨大な機械が急激に動くような音がした。
振り返ると,拘束具の隙間から弐号機の双眸が2組,鋭く光っているのが見えた,ような気がした。
が,次の瞬間にはもう弐号機は何事も無かったように佇んでいた。
・・・まぼろし,か。

『エヴァンゲリオン新劇場版 前編 REBUILD OF EVANGERION:01』(仮題)
好調撮影中!
2007年初夏ロードショー予定!

194:960
06/12/08 19:10:29

今日の撮りはプラグスーツ姿。
実は結構,恥ずかしい。
殆どの部分が肌に密着しているので,体のラインが丸わかりしちゃう。
胸の部分は設定どおりなのか,以前,さばを読んで事務所に出したプロフィールを参考にしたからか,
パットの部分だけ"ちょっと"すかすかしてる。
ホントに"ちょっと"よ。
でも,外から見る限りは,美しいボディラインだと自分でも思う。ふふん。

結局,これってスキンスーツなのよね,なーんて,ほけらっと考えていたら,
綾波さんが,つかつかとアタシの目の前に来て,人差し指でつんっとアタシの胸を突っついた。
アタシの赤いプラグスーツの胸パッドが,ぽこんっ!と大きく凹む。
「ちょっと!綾波さん!いきなり何するんですか!」
凹んだ胸を腕でとっさにかばい,後へ身を引く。
「中身無いじゃない,・・・貧乳,うそつき」
くすくすっと小悪魔のような笑みを浮かべて,彼女はアタシが文句をいう間も無く去って行った。
・・・きぃっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっぃ!
これは,設定どおりなの!好きこのんでやってんじゃないのよっ!

『エヴァンゲリオン新劇場版 前編 REBUILD OF EVANGERION:01』(仮題)
好調撮影中!
2007年初夏ロードショー予定!
・・・熱膨張,やってみようかな。マジで。

195:960
06/12/08 19:11:16

さて,今日は・・・この間の復讐だ。
こっそり,綾波さんに近づき,いきなり後ろから両胸をわしっと掴んでやる。
げっ・・・ま,負けた。
ちゃんと中身入ってる・・・それにアタシよりでかいじゃん。きぃっ!

冷ややかな瞳で,肩越しにアタシを見下す綾波さん。
てっきり,ぶたれるかと思った。
でも,綾波さんはそのまま,つい,と視線を戻し,
「あんっ!やめてっ・・・もう,セカンドったらこんなところで・・・」と悶えた。
大きく,アノときの声で。
へっ?
そっちの気は全く無いですよ。別に揉んでもつまんでもいませんし,アタシ。

綾波さんは,アタシなんて見ちゃいなかった。
その目線の先には・・・碇さんが居た。

しばし,空気が凍り付いた後,当の碇さんは何も見なかったように,
ぎくしゃくとその場をフェイドアウトしていった。
それを無言で見送るアタシと綾波さん。アタシが胸を揉みしだいた姿勢のまま。

196:960
06/12/08 19:12:04

「・・・さてと」
いつもの口調に戻った綾波さんが,アタシに言う。
「ちょっと,セカンド。いつまでワタシの胸つかんでいるのよ」
綾波さんが語気を強め,アタシの手を汚いもののように振りほどく。
えっ?

「あれ,絶対誤解してるわよね,碇くん」 くすくすっと口の端で綾波さんが微笑む。
「碇くん,潔癖症気味だからね。取り返しつかないかもよ」

はめられた,と気づいた。が,時すでに遅し。
・・・碇さんに見られた。もう,生きていけない。

197:960
06/12/08 19:12:50

撮影所のでのこともあり,家に帰ってからも,
碇さんとアタシの間に会話はなく,気まずい雰囲気が流れていた。

・・・沈黙を先に破ったのは碇さんだった。
意を決した様にアタシに話しかける。
「・・・あのっ,『アスカ』,人の性癖には口出すつもりは無いんだけど
・・・アレは人のいないところでやった方がいいと思うよ」

・・・あぁ,やっぱり誤解されてる。
とりあえず,言い訳を考えた。
「あ,あれはね,スキンシップなの,割と向こうじゃ普通よ,こんな風に」 
そう言ってから,アタシは碇さんをハグして頬と頬をくっつけた。
向こうではこんなこと無かったのに,全身が心臓になったようにドキドキした。
あれ?なんでだろ?
でも,碇さんに悟らせないよう,平然を装う。
「そ,そうなの?」 碇さんも緊張しているのが伝わってくる。

前,碇さんに抱きしめてもらった時と同じように,どれくらいそのままだったか憶えていない。
「はーい,カットぉー,そこまでー,はい,お疲れさまぁー」
いつの間にか帰宅した葛城さんに,この心地良い時間を引き裂かれる。うーしくしく。

198:960
06/12/08 19:13:37

「ところで,アスカ,綾波さんと付き合ってるって本当?」 
冷蔵庫をお尻で閉め,ビールを開けながら葛城さんが言う。

あの上品だった葛城さんが・・・人間変われば変わるもんだなぁ,感心感心。
・・・じゃなくって,今なんて言いました?誰と誰が付き合ってるって?

「だって,今日,撮影所で乳繰ってたって聞いたわよ」
げ,何それ?何で知ってるの?
「だ,誰から・・・聞いたんですか?」
「綾波さん」
「は?」 アタシは二の句が継げなかった。
こっちが甘かった。捨て身の攻撃に出やがった。あのアマ。

いつの間にかアタシの腕の中から,碇さんは逃げ去っていた。
部屋のスミで体育座り,疑惑のまなこ,白い目でアタシを見ている。
「・・・ボクの気持ちを裏切ったな」

・・・って,ボクの気持ちって?えっ?裏切ったって?
ちょ,ちょっと待ってよ・・・。
あ,引きこもっちゃった。

・・・これ書き終えたら,回線切ってちょっと吊ってきますね。アタシ。
さよなら。

『エヴァンゲリオン新劇場版 前編 REBUILD OF EVANGERION:01』(仮題)
好調撮影中!
2007年初夏ロードショー予定!
アタシが氏んでも日記スレは残るもの・・・。

199:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/08 20:54:59
オッテュ

200:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/08 21:50:49
(・∀・)オツ!

201:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/08 22:45:43
貧乳・・・

 ボクの気持ちを裏切ったな>>960

202:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/09 03:54:26
見切った!
貴様の正体はだぶだぶだ!

203:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/09 15:58:40
GJ!

204:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/10 16:10:59
おつ

205:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/11 16:48:29
超乙

206:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/12 20:19:56


207:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/13 22:39:51
960氏に多謝!

208:960
06/12/14 17:53:09
>>198

 ニュースが流れる。

 「今朝,第三新東京市**区のマンションの一室で,
そこに住む中学2年生の女子生徒(14)が自室で首を吊っているのを,
同じ中学2年生の男子生徒(14)が発見し,警察に通報しました」

 「女子生徒は既に氏亡しており,氏因は頸部圧迫による窒息氏でした。
遺書などは無く,第三新東京市警察本部では,いじめや虐待などの事実が無かったかどうか,
同居している男子生徒及び同じく同居の女性(29),また学校関係者から詳しく事情を聞くと共に,
自殺の背景について詳しく調べる予定です」

 「次のニュースです・・・」

『エヴァンゲリオン新劇場版 前編 REBUILD OF EVANGERION:01』(仮題)
好調撮影中!
2007年初夏ロードショー予定!

209:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/14 20:30:22
あ、アスカああああああああ

210:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/14 23:10:00
>>208
偽者にしては手が込んでるな

211:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/14 23:26:13
オッテュ

212:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/14 23:41:14
縊死ってのは窒息より頚骨の骨折(脱臼)によるケースの方が圧倒的に多いはずだけどね。

213:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/15 01:16:26
窒息氏 乙

214:960
06/12/15 05:57:58
>>208


って,ニュースまで流されました。自分で見てて,びっくりしましたよ。
あの後,電話がじゃんじゃん鳴って大変だったんですから。
全く,日記(?)を真面目に取らないでください。
一体,何処までリアリズムを追求するんですか?カントク?

で,
まず,碇さんにをウソ付いたことを謝って,コトの顛末をそのまま伝えた。
胸のコトは誤魔化したけど。

「本当に?」 訝しげに碇さんがアタシを見る。
「ホントよ」 一度失った信頼を取り戻すのは大変だ。
「・・・じゃあ『アスカ』のこと信じるよ」 ほっと,胸をなで下ろす。良かった。

「『アスカ』おなかすいた・・・」
「ん,何がいいの?『シンジ』」
「『アスカ』の手作りで,それを食べさせてくれるなら,何でもいい」
もう,ホントはアタシが甘える予定だったのに。この甘えんぼめ。
でも,かわいいから特別に許す。『シンジ』

『エヴァンゲリオン新劇場版 前編 REBUILD OF EVANGERION:01』(仮題)
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2007年初夏ロードショー予定!

215:960
06/12/15 06:06:55
960です

>>all  いつも,まとめてですみません。ありがとうございます。
>>201 すみません。綾波さんがきつく言い過ぎたようです。寄せて上げてのBなら,貧ではないですね。
>>208 一応,本人です。トリップ付けたほうが良いですか?
>>212 そうなんですか。確かに全体重が首にかかりますよね。これは知らなかったです。勉強になりました。

正直,前段がこんなに長くなると思っていませんでした。
まだ出てきていないキャラが沢山ですので,しばらくこの状況が続きそうです。
何とか,前編公開前までには終わらせたいですが,スケジュール的に厳しいです・・・。

216:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/17 13:58:51
おお、遂に下の名前キタ
GJ

217:960
06/12/18 19:52:42
>>214


この役をもらってから,やたらと写真撮影の機会が多い。
普通なら,雑誌のインタビューに合わせてとか,宣伝用スチールくらいなんだけど。
グラビアなんだか知らないけど,とにかく着替え,着替えに次ぐ着替え。
結構疲れるんだな,コレが。

また,例によって,がさっと資料を渡される。
イラスト集,原画集,トレカ,フィギュア等々,すごい量。
何?これ?
何でも,過去に出たこれらを全て「実写で」再現するそうな。
はぁ。そうですか。
またもや,リアリティ,ですね。

218:960
06/12/18 19:53:41

こっちのお人形はどうするの?結構エッチなんだけど。
・・・と,聞こうと思った丁度その時,はた,と気付いた。
ひょっとして,脱衣って・・・こういうコトなの?
映画は小中学生でも見られるように,RとかXとかじゃないように撮るって聞いてましたし。

てっきり,某清純派女優の子役時代のように,ロングショットで
『脱いでいることはわかるけど,肝心の所は見せない』程度だと思ってました。
甘かったです。アタシ。

「リアリズム。これこそ,究極の芸術だ」

はいはい,やりますよカントク。
芸術のためなら脱ぎますって,言わせたいんでしょ?
アタシ,ちゃんと出てるところは出てますからね。つるぺたじゃないですよ。
児童なんとか法で,タイホされても知りませんからね。
あと,ガムテープは剥がすとき痛いのでダメです。
4枚刃でセーフティワイヤー付きじゃなきゃ,絶対イヤですよ。

今日の撮影は綾波さんと一緒だった。
黒地に白のフリルのついたワンピースが気に入った。ごすろり,とか言うらしい。
これ欲しい!と衣装の人に頼んだが,本編中で着ていないからダメ,と却下された。
けち。

219:960
06/12/18 19:54:30

今日,帰り際,衣装の人から要望どおりの『4枚刃でセーフティワイヤー付き』を渡された。
なんで,判ったんだろ?・・・こわっ!

「そろそろ・・・ね」
自分が悪い訳じゃないのに,衣装の人は妙に言いにくそうに,
両手を目の前で合わせて,アタシにお願いしてきた。
ま,そりゃそうだわね。14歳の女の子がすることじゃないもんね。

お風呂で剃ってから寝ることにする。
おやすみなさい。

『エヴァンゲリオン新劇場版 前編 REBUILD OF EVANGERION:01』(仮題)
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なんか,ひりひりするよう・・・。

220:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/18 23:36:36
オッテュ

221:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/18 23:39:32
バイパンアスカ…。

















違うか。

222:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/19 11:00:13


223:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/20 00:30:07
>>221
妄想はおまえの頭の中にだけある。
すべてはシナリオ通りだ。

224:960
06/12/22 21:46:30
>>219

約束の日が明日に迫った。
碇さんと手を繋いで,夕暮れの街を家まで歩く。
世界の全てが夕焼けに染まる中,二人の長い影が黒くアスファルトに落ちる。

いつものように,碇さんにゴハンを食べさせて,背中を洗って,
耳かきをして,本を読んであげて,終わるはずだった。
それだけだったのに。

本を読んであげているうちに,碇さんは眠りの世界へ誘われてしまった。
「・・・おやすみなさい」 
碇さんへの,たぶん最後のコトバ。返事は静かな寝息。

自室のフスマを閉じる。真っ暗な部屋の中で,涙がぽろぽろっとこぼれる。
アタシは,この甘ったるい『家族ごっこ』をほんの少し楽しみたかっただけだったなのに。
ただ,それだけだったのに。

期待や望み,そして想いも壊れたときのコトを考えると,
しない方がマシだって,14年間生きてきてイヤってほど思い知らされたのに。
ずっと,そう思っていたのに。
なんでなの。

本当に大事なことは,いつも,その時にならないと判らない。
莫迦なアタシ。

『エヴァンゲリオン新劇場版 前編 REBUILD OF EVANGERION:01』(仮題)
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225:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/23 00:06:35
オッテュ

226:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/23 20:44:54
オッテュ

227:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/24 00:40:17
乙かれ
つ、つづきが……続きが気になる木になる

228:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/25 18:51:55
メリークリスマスあすか

229:960
06/12/27 23:01:28
>>224

でも,未だ全てを失った訳じゃない。撮影が終わるまで一緒に居られるんだ。
一晩中,泣いて泣いて涙も出なくなった後に,そう考えた。

人生,何事もポジティブってやっぱり大切よ。

さて,稀代の天才子役,惣流・アスカ・ラングレー,一世一大の大芝居。
一丁,役者人生懸けてみようじゃないの。

今までの『アタシ』よ。しばらく,さよなら。
メガネは机の奥底に封印した。
毛玉だらけのジャージも,首ぐりの伸びたTシャツもゴミ箱に直行。バイバイ。

設定どおりのサイズのブラ。足りない分はパットを詰める。
コンタクトを付ける。そばかすはファンデーションで隠した。
昨晩,おフロで念入りにトリートメントした髪を,ツーサイドアップにまとめる。
メイクさんみたいに上手く出来ないけど,大体こんな感じね。
薄く,さりげない化粧。眉をきちんと整える。
制服のスカートは,今風に丈をちょっと詰めた。足のラインが良く見えるように。
表情の調整。目尻をちょっときつめに。口元もきっちりと。ツンよツン。

最後に,小道具さんからこっそりがめてきた,赤いヘッドセットを着ける。

そして,鏡の中の『アタシ』に話す。
新しい『惣流・アスカ・ラングレー』よ。これから,よろしく。


230:960
06/12/27 23:02:19

ここで失敗したら,アタシはこの役を降ろされる。
失敗は許されないわよ,アスカ。
自分自身を叱咤し,意を決して自分の部屋を出る。

わざと荒々しく,シンジの部屋のフスマを開ける。
ベットの上に,こんもりと布団のかたまり。かわいい・・・って違うわよ!ダメ!

「こらっ!シンジ!いつまで寝てんのよ!」
きゃんきゃん言いながら,布団を引っぺがす。

「あ,『アスカ』おはよう・・・」
「何が「おはよう」よ!何時だと思ってるの!さっさと起きなさいよ!」
もそもそと,起き出すシンジ。
「どうしたの?・・・いつも,もっと優しく起こしてくれるのに・・・」

そして,アタシの格好に気付いてきょとん,となるシンジ。
「え?どうしたの,その格好。朝から撮影なの?」
アタシは腰に手を当て,すうっと息を吸ってから,コトバと一緒に一気にはき出した。
「何寝ぼけたこと言ってんのよ!バカシンジ!それより朝ご飯は!?」

「え,『アスカ』,作ってくれないの?」
「何言ってんのよ!アンタが作るのよ!」
「え,どうしたの?急に」 
戸惑うシンジ。
それでも,パジャマの上からエプロンをし,ちゃっちゃと朝ご飯の支度を始める。
その口元は,何か拗ねているようにも見えるけど。

231:960
06/12/27 23:03:05

「あーん」 シンジが口を開けてゴハンを催促している。
「・・・」 超申し訳ないけど,ここは無視,ムシよアスカ。

「あーん」 まだ,やってる。
「・・・あんたバカぁ?」 
思いっきり,軽蔑を込めたまなざしで見下すアタシ。
ごめん,シンジ,と心の中で謝りながら。

口を開けたまま,唖然としているシンジ。
同じように唖然として,ビールの缶を手からすべり落とす葛城さん。

三人の間に沈黙が流れる。
アタシは素知らぬフリをして,黙々と朝ご飯を食べる。
申し訳ない気持ちで,アタマの中が一杯になりながら。
シンジの作ったご飯は,やっぱりおいしい。

232:960
06/12/27 23:04:25

アタシが自然に手を繋げるよう気遣って,さり気なく出していてくれたシンジの右手には,
当然の如く,アタシの鞄を持たせた。

「・・・何?これ?」
「アタシのカバンに決まってるでしょ」
「・・・」

アタシが,シンジの一歩前を背筋を伸ばして歩く。
シンジは,腑に落ちない顔,そして背を丸くして,とぼとぼと付いてくる。
登校途中,周囲の人たちがアタシの方を見ている。いつもの人達だ。

こそこそと囁く声が,セミの鳴き声に混じり聞こてくえる。
「あの人,ほら碇さんと一緒の女の子,誰?」
「え,前のヒト,降板って噂ホントだったの。わざわざドイツから来たのにね・・・」
「でも,今度のヒト,凄いわね・・・」

周囲から驚きと感嘆の入り交じる視線。
ふん!こんなの当ったり前よ!
この天才美少女,惣流・アスカ・ラングレーさまが演ってるんだから。
・・・って感じでいいのかな?
駄目,弱気じゃダメ,駄目よ『アスカ』

233:960
06/12/27 23:05:29

2-Aと書かれた教室に入る。
入った瞬間,視線がアタシに集中するのがわかる。
今までのざわめきが,水をうったように静まりかえる。

アタシは,つかつかと黒板の前に行き,流麗な筆記体で名前を書く。
そして,一番綺麗に見えるように振り返り,きっちりとこう言った。
「惣流・アスカ・ラングレーです。よろしく」

静寂が,また,ざわめきに戻る。先よりも大きなざわめきに。
「二人目なの・・・?」
「やっぱ,降板って噂,ホントだったんだな・・・」
アタシは,周囲の空気を気にも留めず自席へ向かう。

ふと,目線に気付く。

いつもの窓際の席に,包帯ぐるぐる巻きのファーストが座っている。
ちょいちょい,と指でこっちに来い,の合図。

234:960
06/12/27 23:06:26

「やるじゃない・・・赤毛サルのくせに」 
相変わらず,ぼそぼそと小さい声。
「誰がサルよ。当ったり前でしょ,今さら何を言ってんのよ?アタシは天才なんだから」
見下すようにして,自信満々でファーストに話す。
「アンタがヒントをくれたのよ,それだけは感謝しておくわ」

「それより,ファースト,こないだはよくも嵌めてくれたわね」
「ニュースのヤツも,元ネタはアンタが流したんでしょ」
「・・・」 
見落としそうなくらい僅かな,口端の微笑み。
無言の肯定が返ってくる。畜生,このアマ。

235:960
06/12/27 23:08:59

最後に一つ,爆弾を落としてやる。宣戦布告だ。
「アレ,アンタのモノじゃないじゃん・・・じゃあ,アタシのモノにしてもいいのね」

がたん,と椅子をひっくり返し,ファースト,綾波さんが急に立ち上がる。
紅潮した頬。怒りに満ちた紅い瞳。
これは『ファースト』じゃない。『素の』綾波さんだ。
「ぴー」 絶妙のタイミングで間の抜けた警報音が鳴る。綾波さんのモノリスだ。
悔しそうに,モノリスとアタシを交互に見る綾波さん。

「・・・やってみなさいよ,そのキャラで出来るんならね」 
さすが2人目,一瞬にして戻った。これは『ファースト』だ。
「へんっ! この惣流・アスカ・ラングレーさまに出来ないワケないでしょ!」

「セカンド・・・あなた,『EOE』を見てから出直してきたら?」
「もう,ちゃーんと見たわよ。アンタが氏んで3人目になって,でっかくなるトコもね」
まさに,一触即発。戦いの火蓋は切られた。決戦は何曜日?

236:960
06/12/27 23:09:44

「あのー,2人とも,もうそろそろ止めたら?」
冷たい火花が電撃のように散っているアタシ達2人の間に,おずおすとシンジが止めに入る。
「ねぇ『アスカ』,ホント今日は朝からなんかおかしいよ,どうしちゃったの?」

アタシは振り向いて,キッとシンジを睨み付ける。
瞳の奥だけは,優しくして。
「何言ってんのよ,バカシンジ!この,ア・タ・シの一体どこがおかしいって!?アタシはアタシよ!」
シンジの瞳を覗き込むよう,腰に手を当てたまま身を乗り出す。

お願い。気付いて。

「・・・」 アタシが覗き込んだ分だけ,引き気味にのけぞるシンジ。
「ちょっと,何とか言ったらどうよ!」 

お願い,気付いてよ。
どうか神様,お願い。一生のお願いだから。

「・・・」
でも,無言のまま,シンジはくるりと後ろを向き,教室を出て行ってしまった。
がっくりと肩を落として,とぼとぼと。

後ろから,小さい小さい含み笑いが聞こえる。
「・・・ほらね」

『エヴァンゲリオン新劇場版 前編 REBUILD OF EVANGERION:01』(仮題)
好調撮影中!
2007年初夏ロードショー予定!
(;_;)クスン

237:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/27 23:30:37
PS2版エヴァ2のアスカプレイで同じ展開を食らいましたw
乙!

238:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/28 00:16:43
オッテュ

239:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/28 00:19:20
ガンバレ負けるな~w

240:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/29 01:30:46
GJ

241:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/29 02:43:36
(・∀・)イイネ!

242:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/01/01 17:08:06
日記を書けよ

243:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/01/01 18:46:56
今年もよろしゅう

244:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/01/01 23:10:56
新年おめでとう

245:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/01/08 07:56:35
稲荷町

246:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/01/08 10:49:33
昨日は七草粥にトンカツだた

247:960
07/01/08 20:52:21
>>236

判っちゃいたけど,さすがにショックは大きかった。

ま,あれで判ってくれるなら,『シンジ』じゃないもんね。
でも,正直言うと,あの鈍感さが設定どおり,いや設定以上とは思わなかった。
結局,シンジもアタシの上っ面しか見てなかったってことか。

でも,いいの。
そう,本当のアタシを見てくれている人なんて,誰も居ないのだから。
このまま,最後のカットまで『惣流・アスカ・ラングレー』を演ってやる。

・・・でも,その後はどうするの?
ふと思い浮かんだ疑問を,考えぬよう頭の奥底へ沈める。

とにかく,今は役づくりに専念しよう。そうすれば,役を降ろされずに済む。
そして・・・あの2人との家族ごっこを続けられる。

「シンジ,帰るわよ!ほら,カバン!」
アタシの鞄を,シンジに当然のように渡す。
「なんでだよう・・・」 渋々と受け取るシンジ。

248:960
07/01/08 20:58:53

アタシがシンジの一歩前を歩く。夕暮れの街を家まで。
世界の全てが夕焼けに染まる中,高さの違う二人の長い影が黒くアスファルトに落ちる。

「そうか!」
学校から何かぶつぶつと独り言を言っていたシンジが,はたと思いついた様に,
いきなり大きな声を上げた。
周囲の人が,何事かとアタシ達を見る。

「ちょっとアンタ,変なところで大きい声出さないでよ!恥ずかしいんだから」
アタシが振り返り,文句を言うのも気にせず,シンジが興奮した様子でアタシに話す。
「ねぇ,アスカは,『アスカ』だよね!」 
え・・・何よ,それ?
「そうよ,決まってるじゃない。アタシはアタシよ!それ以外の何者でもないわ!」 
とりあえず,『アスカ』風に答える。シンジの考えていることが,判らないままに。
「そっか,そうだよね!アスカは,『アスカ』なんだよね!」
とても,嬉しそうなシンジ,釈然としないアタシ。
「だ・か・ら,何言ってんのか判んないわよ!全く,もう!」
注目を浴びるその場から立ち去るよう,アタシは踵を返し,足早に歩きだす。
嬉々としたシンジも,アタシの一歩後ろを付いてくる。

ご機嫌なシンジは,家に着くまで終始そのままだった。
アタシの疑問も,結局そのままだった。

『エヴァンゲリオン新劇場版 前編 REBUILD OF EVANGERION:01』(仮題)
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249:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/01/08 21:49:11
シンジくん敏感だw

250:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/01/08 21:51:16
シンジはアスカにシバかれまくるであろうのにそんなに嬉しいのかw
GJw

251:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/01/08 22:39:23
オッテュ

252:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/01/09 03:22:33
乙乙乙乙

253:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/01/09 14:49:24
おつ

254:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/01/10 16:30:27
>>125の続きはないんですかね?

255:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/01/10 22:44:11
>>254

つ ドリカム「KUWABARA KUWABARA」

256:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/01/12 23:47:47
>>255 ググればわかりますか?

257:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/01/13 02:48:45
ヤフれ

258:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/01/13 13:29:12
>>256
マジでわかんねーの?
ドリカムの歌の歌詞を小説風にしてるんだからこれ以上続けたらそれこそ蛇足ってもんでしょ。

259:960
07/01/14 18:38:00

『アスカ』はアスカ・・・。
ぽふっと,ベットに倒れ込んで考える。
考える・・・考える・・・。
あ,そっか。そういうコトか。アタシのほうが鈍いんじゃん。やば。

・・・でも,結局,それは,シンジの中の『家族ごっこをしている』アスカ。
そして,シンジの中の『家族ごっこをしているアスカ』を演じているアタシ。
そして,シンジの中の『家族ごっこのしているアスカを演じているアタシ』のココロ。

本当のアタシのココロなんて,誰も知らない。
誰も判っちゃくれない。

涙で天井がぼやけて見える。
やっぱ,こんな仕事,受けるんじゃなかった。
独りでいたら,こんなに悲しい思いもしなかっただろうに。
いつも嬉しい思いをした分,必ずどこかでバランスがとれて,結局最後はゼロになることは判っていたのに。

でも,シンジは『シンジ』なの?

そう言えば,『シンジ』じゃないシンジって,見たことが無い。
そう。最初に空母の上で会った時から,今まで,何も変わっていない。
・・・ってことは,今までアタシが見ていた『シンジ』は,ホントのシンジじゃない可能性もあるってこと?
じゃあ,ホントのシンジって?

『エヴァンゲリオン新劇場版 前編 REBUILD OF EVANGERION:01』(仮題)
好調撮影中!
2007年初夏ロードショー予定!
ここが潰れたら,何処へ行けばいいの・・・?

260:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/01/14 18:54:38
>>259 乙

使わないで済むだろうけど、第弐の避難スレは健在です。

アスカの日記(仮設)
URLリンク(bbs.jssdf.org)

261:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/01/14 20:16:43
オッテュ

262:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/01/15 07:41:09
乙乙乙

263:960
07/01/16 22:54:57
>>259

シンジはアタシより,よっぽど演技は上手い。
誰から見ても,それは明らかだ。
カントクの駄目出しの数が全然違う。もし,駄目出しをくらっても,次の撮りには完全に直ってる。
・・・アタシの方こそ,ホントのシンジを知らないかもしれない。

「ねえ,シンジ。アンタ,なんで子役になったの?」
何気に探りを入れてみる。
うつ伏せに寝転がり,テレビから視線を離さず,さり気ない会話の様に。
すると,堰を切ったようにシンジが話し始めた。目を輝かせて。
「昔ね,向こうで映画に何本も出てたでしょ?『アスカ』」
「ボク,それを見て,どうしても役者になりたくって。それで,今の事務所のオーディション受けたんだよね」
「あの時,ホントに凄いって思ったんだ。憧れだったんだ」
「今回,出演するって,一緒に演れるって聞いて,凄く嬉しかったんだよね」
いやー,それほど褒めてくれなくても・・・。ちょっと照れた。へへっ。

「・・・あと,テレビでやってたあのホームドラマ!あれは・・・」
それを聞いたアタシは,今までの笑みから一変して,即座に『素の』アタシに戻った。

振り返り,右手をかざしてシンジを制する。
「・・・それ以上は言わないで,シンジ」
えっ,と意外な顔をするシンジ。 
「どうしたの?急に?」
「その話だけは,もうしないで。今後一切,絶対ね」
「・・・わかったよ」

何だか,後味の悪い会話になった。話は途切れ,沈黙が続く。
話を切り出したのがアタシだったから,余計にバツが悪い。
リビングに居づらくなったアタシは,そっと自室に戻った。

264:960
07/01/16 22:55:47

そう,それだけは触れて欲しく無かった。

テレビで見れば,本当に楽しく愉快で,暖かくほんのり泣ける家族。
でも,裏側では,ほんの一瞬だけの家族。「カット」の言葉と共に崩れ去る家族。

「ママぁー!」さっきまで兄だったはずの男の子が,本当の母親の元へ走り去る。
「お疲れさん」「お疲れさま」
そして,パパだった,ママだった人がアタシの頭を軽く撫で,去ってゆく。
セットの横で,ぽつり,と独りで迎えを待った。

あの頃,どこにいてもアタシは独りだった。
もうこんな思いは,嫌だ。

でも,今,また,ここで同じことを繰り返している。
・・・結局,ロジックじゃないのよね,アタシって。

『エヴァンゲリオン新劇場版 前編 REBUILD OF EVANGERION:01』(仮題)
好調撮影中!
2007年初夏ロードショー予定!

265:960
07/01/16 22:57:01

「そうりゅう・アスカ・らんぐれーさん・・・ですか?」
撮り待ちをしているアタシに,足元の後ろから急に話しかけられた。
子供の声,しかもドイツ語。
久しくドイツ語からは離れていたので,一瞬,何を言っているのか判らなかった。
振り返ると,足元に小さな頃のアタシにそっくりな女の子が居た。
ご丁寧に,アタシが昔良く遊んでいたサルのぬいぐるみまで小脇に抱いて。
「こんにちわ,あたしも『そうりゅう・アスカ・らんぐれー』です。よろしくおねがいします」
女の子は無邪気に微笑んで,アタシに握手を求めていた。

まさか・・・二人目なの?
背筋に冷たいものが走る。
足が震え,宙に浮く。
冷や汗が止まらない。
頭の中で何かが弾ける。

一体,何がいけなかったの?

弾けた頭の中を,同じフレーズが繰り返し繰り返し流れる。
『殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる・・・』
アタシの右腕が,小さい『アスカ』に伸びる。

266:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/01/17 01:48:18
超乙

267:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/01/17 01:54:08
オッテュ

268:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/01/17 03:25:36
>>265
ちびアスカキタ━━(゚∀゚)━━!!

けど、、、そんなことしないよな?

269:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/01/17 12:32:50
アスカ、心の迷宮

270:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/01/17 18:51:36



271:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/01/18 21:23:19
おつ

272:960
07/01/19 21:37:27
>>265

アタシは,右手を出しながら彼女の前に屈み,目の高さを合わせた。
そして,引きつった笑顔で握手を返した。きつく。
「こんにちは,アタシも『惣流・アスカ・ラングレー』よ,・・・・よろしくね」
でも,アタシの醸し出す雰囲気は,動揺を隠しきれなかったらしく,
女の子の無邪気な笑顔は消え,今にも泣き出しそうな表情になった。

「いつまで握手しているの?」 聞き覚えのある声が,アタシ達の上から響く。
見上げると,アタシの前のマネージャ,今は所属事務所のチーフマネージャ,が立っていた。
「『アスカ』,久し振りね」 
そして,こう告げた。
「独逸編『アスカ』役の『惣流・アスカ・ラングレーよ』」
アタシがきつく握っていた手を離すと,小さい『アスカ』はすぐにチーフの後ろに隠れた。怯えたように。

「チーフ,どうして・・・」
「日本編のスタッフに挨拶と,あなたに会いに,よ」
やり手を思わせる自身ありげな口調,そして,ソリッドな感じは昔と変わらない。
「どう?調子は?」
「・・・ん,まあまあね」
「本当に?・・・なんだか,心配事があるように見えるけど?」
「・・・」 やっぱ,相変わらず鋭い。

273:960
07/01/19 21:38:15

アタシは,話を逸らした。
「ところで,アイツは?・・・一緒じゃないの?」
「あ,マネージャのこと?あんなのとっくの昔に解雇されたわよ」

えっ・・・知らないわよ。
「だって,『アスカ』のこと放って遊んでるんじゃ駄目でしょ?あんなのクビよ,クビ」
言葉と同時に,親指を立てた拳で首をくいっと掻く仕草。
一瞬,自分のコトに感じた。ぞくり,とした。

「じゃ,アタシのことは・・・」
チーフが微笑んで言った。
「私がしばらく 『アスカ』 あなたと,この 『アスカ』 のマネージメントをするわ。また,昔のように一緒にやれるわね」

274:960
07/01/19 21:40:15

「ちーふぅ,かえりましょ?」 足元で小さい『アスカ』がぐずり出す。
「ママのところ,いきたい!」
チーフは,やれやれと言った表情でため息を付く。
アタシが昔,よく見た表情と全く変わらなかった。
「こんなところまで,あなたに似なくても良いのにね・・・」
表情と一緒に,アタシはその昔に感じた自分の寂しさを思い出した。
胸が痛む。

「それじゃ,また今度ゆっくりね,何かあったら・・・って,そちらからの連絡は駄目よね,確か」
「独逸編の撮影が終わるまで,十分にはマネージメント出来ないけど,アスカなら大丈夫よね」
「なるべく連絡するようにするわ。それじゃ」
そして,チーフと小さい 『アスカ』 は去っていった。

昨日といい,今日といい,過去を抉られる出来事が続く。
今は,役作りに専念しようと誓ったばかりなのに。
なんでなのよ。

『エヴァンゲリオン新劇場版 前編 REBUILD OF EVANGERION:01』(仮題)
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2007年初夏ロードショー予定!

275:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/01/19 23:13:05
オッテュ

276:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/01/19 23:14:08
オッテュテュテュ

277:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/01/19 23:18:57
アスカがどんどん病んでいく…

278:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/01/20 10:47:36
読ませてくれるねぇ

279:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/01/20 14:28:35
このシンジなら、このシンジならなんとかしてくれるっ!!!

280:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/01/21 14:33:16
「アスカのAV撮影日記」というのはないのですか?

281:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/01/21 17:27:15
>>280
撮影、期待しているぞ。

282:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/01/21 18:04:15
さすがにピンク系の板でやった方が良さそうだけどね…

283:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/01/21 18:08:49
何でアニメビデオでしょ?
別のほうをここで希望するキモクテ頭弱いのなんてエヴァ板には居ないって。

284:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/01/21 19:02:32
AAスレ見てから来ると敏感になってしまうものだ。

285:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/01/22 18:17:59
職人町

286:960
07/01/22 21:15:29
>>274

しっかし,男の子の癖にうなじが綺麗なのよね,シンジって。
こないだ,首根っこ捕まえて,持ち上げた時に気付いたの。
アタシ的には,左斜め後ろ45度くらいが一番見栄えがすると思う。うん。

今日もリビングで何気に眺めていたら・・・あ,ヤバイ。うずうずしてきた。
しかも,目標は無防備かつ無警戒。ぼーっとソファにもたれてテレビを見ている。
ダメよ,アスカ。

ネコ耳がぴんっと立つ。気分は,猫じゃらしを前にしたネコそのもの。
ちろり,と口の端で舌なめずりをしながら,そおっと,そおっと後ろに近寄る。
(想像上の)しっぽがゆらりゆらり,と揺らめく。
ダメよ,アスカ。ダメだってば。

でも,アタシの本能が理性の声を無視して,ついつい指が出てしまった。
人差し指でつーっと,首筋の一番綺麗なラインを撫でる。
あぁ・・・すーっとする。気分爽快,何とも言えない充実感。ココロが満たされる。満足満足。

「はぅっ!?」 シンジが,びくん,と飛び上がる。
そして,しばし,とろんと惚けた後,はっと我に返り,アタシのほうを振り向く。
責める目つき。
アタシの指で撫でられたラインを消すように,シンジが自分の手のひらで首の後ろをこする。
頬が,何となく赤い。 
ひょっとして・・・感じちゃった?
「何するんだよ!アスカ!」 照れを隠すようにシンジが怒る。 

287:960
07/01/22 21:16:42

おこられちった。
でも,ココで弱気は禁物よ。アタシは『アスカ』なんだから。
頭の中の『How to アスカ』から,適当にセリフを選び出す。こんな時は・・・。

「なに言ってんのよ!このバカシンジ!アンタがスキだらけだからよ!」
「・・・」 シンジの無言の抗議。目つきはそのままで。

ま,怒られても仕方ないコトしたんだけど,アタシは『アスカ』なんだから,しゃーないでしょ。
演らなきゃ,アタシ,アンタとミサトと一緒に居られなくなるんだから。
・・・とは言っても,何となく悪いコトをしたなって思うアタシの気持ちは止まらない。

「な,何よ。こーんなコトも避けられないなんて,アンタが超ニブいからでしょ!」
ごめん,シンジ,とココロの中でアタシは手を合わせながら,言い返す。

うぅ・・・。
いいじゃん,シンジなんて。所詮シンジよ,と『アスカ』
ホントにゴメンなさい,とアタシ。
アタシと『アスカ』の間を罪悪感がせめぎ合う。

「・・・じゃあ,アスカにスキがあったら,ボクもアスカにやっていいんだね?」 
ぶーたれた顔で,シンジが言う。
やめなさいよ,『アスカ』。話に乗っちゃダメよ。このまま,強引に振り切るのよ。

「と,当然いいわよ。で,でも,ア,アタシに限ってそんなスキなんてあるわけないでしょ!」
全然良くないわよ,『アスカ』。うなじって,アタシの一番の弱点じゃん。

・・・ここまで譲歩しても,じとんとした目のまま,シンジはアタシを見る。
もう,これ以上やめなさいよ,『アスカ』ってば。

288:960
07/01/22 21:17:44

「し,仕方ないわね・・・」
本当にやめなさいってば,『アスカ』。

アタシはくるりとシンジに背を向けると,後ろ手で全ての髪をかき上げ,右肩に落とした。
左側のうなじが良く見えるよう,そして,挑発するように。
やめて!本当に,本当にやめて!『アスカぁー』。やめてぇぇぇー!

「ほ,ほら,アンタもやればいいじゃん。こ,こうでもしないと,アタシにす,スキなんて出来ないんだからさ」
「えっ,いいの?」
ダメぇー!!!,シンジぃー!!!。
シンジがアタシの首筋に指を伸ばす。そして,すぅーっと背筋まで指を落とす。
「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!・・・」 
びりびりと電気が流れる。頭の頂点から背筋を通り,足先まで。

膝の力が抜け,へなへなと座り込みそうになる。
腰から下が急に,ずん,と重くなる。じゅん,って何かが溢れてくる。
あぅ・・・,きもち,いい・・・。

「こ,これで,あ,あいこよね・・・」
『きもち,いい』コトを無理矢理隠して,『アスカ』が言う。
でも,シンジを見るアタシの瞳はとろけていたと思う。

でも,シンジは,やめちゃくれなかった。
ここぞとばかりの復讐なのか,よっぽど,アタシの様子が面白かったのか。
いぢわるを楽しむように,笑みを浮かべて,何度も何度もアタシの首筋から背筋までラインを描く。
そのたびに・・・。
アタシも・・・きもち,いいけど・・・このままじゃ・・・ぜんぶ,とろけちゃう・・・。
・・・このままじゃ『アスカ』じゃいられない。

289:960
07/01/22 21:18:30

な,なんとかしなきゃ・・・。このままじゃ・・・。

「・・・そうだ,回路をダミーシステムに切り替えろ」 
「管制システム,切り替え終了」
「全神経,ダミーシステムに直結完了」
・・・と,頭の中で小さな声が聞こえたような気がする。

『アスカ』が染みこんだアタシの体が,勝手に動く。
振り返りざまに伸ばした右手で,すぱーん,と気持ち良くシンジにビンタが決まる。
そして,腰に手を当てて上半身を乗り出し,罵倒する。
「何回やるつもりよ!いい加減にしなさいよ,このエッチ!スケベ!変態!」
ひ,膝のちからが,こ,腰がとろけてる・・・。あと,数回されていたら・・・危なかった。

頬を赤くしたシンジが,ぽそっとつぶやく。
「同じこと,綾波にしても,怒らないんだけどな・・・」

なにぃ?
さすがに,シンジもヤバいと思ったらしい。
アタシの表情を見るや否や,脱兎のごとく逃げだそうとした。
わしっと,後ろからシャツの襟を捕まえる。
「シンジ,・・・今なんて言ったの?」
「あ,綾波なら,お,怒られないんだよ,い,今の何回やっても・・・」

正直なのは,大変よろしい。
でも,『アスカ』だったら許さないんでしょ,ココは? 
アタシは,「なーんにも」思わないけど。・・・ホントよ,ホント。
しばき倒し『アスカ』モードにて,シンジにお仕置きをした。

『エヴァンゲリオン新劇場版 前編 REBUILD OF EVANGERION:01』(仮題)
好調撮影中! 2007年初夏ロードショー予定!

290:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/01/22 21:28:24

ちょっとホッコリした。
本編じゃあ家での2人のシーンが少なかったし…

291:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/01/22 21:47:02

イイヨイイヨー

292:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/01/22 22:38:50

読んでて、ゾクゾクなったわww
>>290
それには同意せざるを得ない

293:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/01/22 23:09:09
オッテュ

294:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/01/23 01:57:25
じゅん、て何が溢れてきたんだい?

295:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/01/23 11:53:56
バキが耳捻ったら出て来るアレ・・・ってことにしとけ

296:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/01/23 17:34:45 +xprXJDU
ファースト、氏ね

297:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/01/23 17:38:47
報知新聞

298:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/01/24 00:13:46
これはおもしろい
期待してるよ


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