06/10/09 04:25:53
制服のブラウスに袖を通す。
学校には行っていなくても、この制服はずっと着ていた。
何か繋がりが欲しかったのかもしれない。
あの楽しかった時間と。皆がいた夢のような時間と。
もうその時間は定かには思い出せないけど。
「碇さん」
着替え終わった私に綾波が声をかけた。
彼女は私より早く着替えが済んだはずなのに、まだロッカールームに残っていた。
「これから時間あるかしら」
「…え?大丈夫だけど…」
凛とした声が響く。
「彼女があんな事になって、私達だけこんな風に
仲良くおしゃべりなんかできる感じじゃないのはわかっているのだけど」
彼女から私に話しかける事は珍しかった。
いや、そうでもないか。今更ながらその事実に気付いた。
「一緒に行きたい場所があるの。…行かない?」
そう言って、綾波は白く細い指を持った掌を私に差し出した。
いつからだろう?
私と綾波の距離は少しずつ縮まっていった。
あの一緒に戦った夜から。
あのエントリープラグの中で彼女の笑顔を見たときから。
あの学校の屋上で彼女と話したときから。
あの彼女の部屋で感謝の言葉を聞いたときから。
あの彼女の部屋で一緒に紅茶を飲んだときから。
でも、一定以上の距離を置いて私達は存在している。
これ以上彼女との距離が縮まることはあるのだろうか。
そんな事を思っていた。