♂倒錯シンジきゅんハァハァスレ♀ 9at EVA
♂倒錯シンジきゅんハァハァスレ♀ 9 - 暇つぶし2ch200:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/09 10:53:40
ぬるぽ

201:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/09 11:04:57
イインチョをもっと活用せんと

202:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/09 19:19:17
シンジが女だとアスカもこんなに素直なのか

203:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/09 19:39:45
女にあのままだったら、凄いことになるだろうが
でも仲良し風なだけあって後半欝展開がなぁ…

204:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/09 19:58:30
初期はとんでもないDQNだった

205:621の続きで
06/09/09 22:23:20
「鈴原、どうしたのかな?」
「結局あれから教室に戻ってこなかったもんね」
「何かよっぽど悪いことでもしたのかしら…」

帰り道、委員長とケンスケと歩く。
高く高く澄み切った青空に蝉の声が響く。
太陽の光を受けたビルは、反射して白く輝いて見えた。
アスファルトからの照り返しが暑い。
いつもの帰り道。
でも、いつもとは少し違う。
彼がいないから。
トウジはあの校内放送で呼び出されたあと、結局戻ってはこなかった。

「でも、トウジはそんな悪いことするような奴じゃないよ
 きっと、ただのサボリじゃないかな?」
心配そうな委員長を安心させるために言った。
トウジは確かに短気なところがあるけれど、
無意味に誰かを何かを傷つけるような性格ではない。
「……碇さんって、本当に鈴原と仲が良いのね」
「…え?だって、友達だし」
「うふふ…。じゃあ、碇さん。私、こっちの道だから」
そう言って彼女とは途中で別れた。
返り際、小さく手を振りながら委員長は微笑んだ。
少女らしい優しい笑顔だった。

その細い背中が小さくなるのを見届けていると
会話が終わるのを待っていたのか、ケンスケが
眼鏡の位置を直しながら伏せ目がちに言った。
「ところでさ、ちょいと気になる情報を仕入れたんだけど」
「…なに?」

206:621の続きで
06/09/09 22:26:07
彼は、以前も聞いたけどエヴァのパイロットに憧れている。
そのせいで、父親のパソコンから私達ネルフ関係者しか知らないような
情報を仕入れては、私に問いただすのだ。
今日もまた、新しい機器が入っただの前回の使徒殲滅についてだのの質問だろう。
そう高をくくっていると、彼は言った。予想もしなかったことを。
「エヴァ参号機。アメリカで建造中だったんだろ?」
「参号機?そんなの聞いたこと無いよ」
「松代の第二実験場で起動実験やるって噂だよ。ホントに知らないの?」
ネルフ本部に現在存在するエヴァンゲリオンは、
綾波の零号機、私の初号機、アスカの弐号機だけだ。
それ以外は存在しないし、他にあるだなんて聞いたことが無い。
「…うん」
知らない。そんなこと私は知らない。
発表が遅れているのか。
だから私達にはまだ知らされていないのか。
でも、幾ら考えたって私には知る術がない。
そう考えてると、ケンスケがいきなり私の肩を掴んだ。
「隠さなきゃいけない事情もわかるけど教えてくれよ!パイロットはまだ決まってないんだろ!?」
「そ、そんなこと言われても」
「あ~、ミサトさん俺にやらせてくれないかな?な、お前からも頼んでくれよ!」
一通り肩を揺さぶったあと、またしてもいきなりその手を離し
今度は指を絡め天に祈るようなポーズを取った。忙しいな…。
そうだ、参号機があるってことは新しくパイロットが増えるってことだ。
だからこの慌てよう…。ケンスケも好きだなぁ。
でも、いくら私がネルフ関係者だからって
パイロットの選抜に私が口を出せるはずは無い。
たとえ本当に参号機がこちらに移送中だったとしても。
「ちぇ!でも千載一遇のチャンスなんだよなぁ~」
乱れたブラウスを直しながら告げると
ケンスケは、しょんぼりと肩をすくませて悔しそうにしていた。
そして、次の瞬間に呟かれた言葉は私を酷く混乱させた。

207:621の続きで
06/09/09 22:27:17
「アメリカで建造された四号機は欠番になったって言うし」
「…なにそれ?」
「ほんとにそれも知らないの?」
きょとんとした顔でケンスケを見つめると、彼もまた不思議そうな顔をした。
「第二支部ごと吹き飛んだって、パパのところでは大騒ぎだったんだぜ」
ミサトさんからは何も聞かされていない…。
私だけじゃない、きっとアスカも。
最近ミサトさんは帰りが遅い。
もしかして、ケンスケの言うとおりだから?
だったら、どうして…。
「あ…。やっぱ末端のパイロットには直接関係の無い事だからな。
 言わないって事は知らなくてもいいってことなんだろ」
知らずに無口になった私を気遣ってかケンスケが言う。
そうだ。きっとそういうことなんだろうけど。
でも。
「ごめんな。変なこと聞いて。じゃ、明日な」
彼もまた、家路に着くため途中で別れた。
やっぱり私はその背中を見送ることしかできなかった。

空が青い。
高く澄み切った空。
蝉が鳴いている。
少し翳った日差しは先ほどより和らいでいた。
もう誰もいない。
一人で立ち尽くす。
見上げてみると、頭上には太陽と白い雲。
日の光は変わらず惜しみなく降り注ぐ。
いつもと変わらない町並み。
小さく一歩を踏み出した。
眩しいくらい輝く空の下、私の心は晴れなかった。

208:621の続きで
06/09/09 22:28:18
なんだろう、なんだか。
嫌な予感がする。
ここに来て、私の世界は変わった。
一人ぼっちだった私の世界には少しずつ他人が増えた。
灰色だった私の世界には少しずつ色が着いてきた。
私は、変われるのかもしれない。
だけど、それがまだ私には信じられない。
私が思うとおり、世界はきっと変わったのだろう。
でも、元居た私の世界が色づき始めたように
ここに来て変化した世界もまた、いずれ変わってしまうのだとしたら?
他者の手によって、簡単に壊れてしまうような脆弱な世界だとしたら?
真実はいつも遠すぎて掴み所がなく、私の手には届かない。
私の知らない所で、私には止められないほど強い大きな力で世界は動いてる。
真実を知って、どうしようっていうんだ?
真実を手に入れて、どうなるっていうんだ?
それに手が届いたとき、私は…どうするんだろう?
胸のざわざわが収まらない。
こんなことはただの考えすぎだと思いたい。
ケンスケが言っていた、エヴァンゲリオン参号機の起動実験。
だったら、もう一人パイロットが増えると言うことだ。
一体誰がまた、この戦いに巻き込まれるんだろう?
私も今まで、死にかけたり、散々な目に合って来た。
自分が傷つくのは怖い。
でも今は、自分が傷つくよりももっと怖いことは…。



209:621の続きで
06/09/09 22:29:26

気が付けば、ずっと足元ばかりを見て歩いてる。
失くした物がそこに落ちてることを信じているみたいに。
太陽が傾きかけ、影はさっきより伸びている。
その向こうにあるものが知りたくて、私は顔を上げた。


「………トウジ?」

「シンジ…」


影の向こうに居たのは、見知った一人の少年だった。
同じ年頃の男の子達と比べ、幾分発達した体格。
日に焼けた健康そうな褐色の肌。
短く切り揃えられた張りのある黒髪。
いつもと変わらない彼。
でも、その瞳はいつもの挑みかかるような強い視線ではなく
どこか淋しげな色をしていた。

「どうしたの?こんなところで…。トウジの家、こっちじゃないのに」
「ちょっと、買い物」

そう言って、トウジは今まで寄り掛かっていた柵から立ち上がった。
彼の家はこの道とは逆方向のはずなのに…。
でも、それじゃあまるで。

まるで…私がこの道を通るのを待っていたみたいだ。


210:621の続きで
06/09/09 22:31:06
そんなはずは、ないだろうに。自嘲気味に笑った。
「あれから、教室戻ってこないから、皆心配してたんだよ」
「あぁ、別に大したことじゃあらへんかった」
手持ち無沙汰に鞄を弄りながら、こちらは見ずに彼は独り言のように呟く。
いつも、人と話すときは相手の目を見て話すトウジなのにそのときは違っていた。
「けど、ちょっとと教室戻るんがかったるかったんでな」
彼は視線を合わせない。私を見ない。
虚ろに何処か遠くを見ている。
誰かに似ていた。
誰に?
そうだ、昔の私だ。
灰色の世界に一人ぼっちだったあの頃の私。
「トウジ…?」
小さく彼の名を呼んだ。
少し傾いた太陽に照らされた横顔は私の知らない男の子のようで、少し恐かった。
私の呼ぶ声にトウジは一度だけ瞳を伏せ、そしてゆっくりと開いた。
黒い瞳に私が映る。

「なぁ、シンジ」

そのとき私は初めてトウジの顔を見た気がした。トウジは私の目を見て言う。

「今日、これからうち来いへんか?」

「……え?」

いつもの、挑みかかるような強い瞳。けれど、どこか淋しそうな眼差し。

「ホンマはお前のこと待っとったんや。…聞きたいことあんねん」


211:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/09 23:01:13
乙です。

>そのとき私は初めてトウジの顔を見た気がした。
このFF通して一番はっとした表現ですね。

212:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/10 00:31:34
だんだん上手くなってるよな


毎日の楽しみだが、胸が締め付けられるわけです


213:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/10 11:30:31
GJ!!

214:621の続きで
06/09/10 21:58:51
「ねぇ、何か手伝おうか?」
「ええからお前はじっとしとき。
 ワシ、料理中に手ぇ出されるんが嫌なタチやねん」
「あー、でもほら。人参でかっ!!」
「やかましいわ!お前はワシのおかんか!」

あの後、とりとめない会話をしながらトウジの家に向かった。
家路に着くまでの彼との会話はどこかぎこちなかった。
それでも、いずれいつもの調子を取り戻していた。
夕飯のカレーを作るトウジの手つきを覗き込む。
先程感じたぎこちなさはもう消えていた。
「ええからお前は座っとけ」
危なっかしい手つきに、つい口を出してしまう。
渋々テーブルに着き、辺りを見渡す。
トウジとケンスケと一緒に帰ったり遊んだりすることはよくあるけど、
こうして男の子の家に上がるなんて、そういえば、初めてだ。
今更気付いた。何か変な感じだ。
台所に立つ彼の背中を見つめる。いつもと変わらない、はずなのに。
その背中は、私からわざと目を逸らそうとしているみたいだった。

215:621の続きで
06/09/10 22:00:11
「どや、いけたやろ?ワシのオリジナルカレー」
「…うん」

出されたカレーはとても美味しかった。
そのことを言うと、トウジは嬉しそうに笑った。
だけど…
「ねぇ、聞きたかったことって…。カレーの感想?」
後片付けをしていたトウジは、振り向いて一瞬こちらを見た。
ああ、まただ。
縋るような淋しげな目。
「何やったかな。忘れてもうた」
その視線もすぐ遮られた。背を向けて彼は言う。
聞きそびれたのか、はぐらかされたのか…。
トウジが何を聞きたかったのか、私にはわからない。
言われなければ、私にはわからない。
言いたくないのか、言えないのか、それさえも。

「後片付け、私も手伝うよ」

だから、聞かなかった。

216:621の続きで
06/09/10 22:01:42
沈黙は嫌いではない。
元々、お喋りな性質ではないから。
ここに来て、話をしなくても間が持つ存在が増えたから。
お皿を洗う水音と、食器が擦れ合う音が響く。
「なぁ…」
「…なに?」
おもむろにトウジが口を開く。
「そういえば、腕の傷。大丈夫なんか?」
傷…?
そうだ、前に掃除中に委員長とトウジにぶつかったとき
掃除用具が落ちてきてできた傷。
大げさに血が出た割には、擦り傷程度だったので
もうすっかりよくなっていた。
「平気だよ。かすり傷だったし」
「そうか」
トウジはぼんやりと返事を返す。
お皿を拭きながら、トウジの顔を見ようとした。
そのとき、彼は小さく呟いた。
「ワシはお前を傷つけてばっかやなぁ…」
その声はとても小さなものだったので、危うく聞き逃すところだった。
今日のトウジはどこかおかしい。
「…トウジ?」
今度こそ聞こうと、口を開くと後ろから声をかけられた。
トウジのお祖父さんだ。新聞からは目を話さずに言う。
「あんた、うちの人が心配しとるんとちゃうの…?
 女の子が連絡も無しにこんな遅うまで追ったらあかんよ」
「あ、これ洗ったらちゃんと帰りますから」
それから私達は一言も喋らなかった。

217:621の続きで
06/09/10 22:03:15
「じゃあ、ご馳走様。もう帰らないとミサトさんうるさいから」
「ああ、遅うまで引き止めて悪かったな」
外は確かに暗くなっていた。
空はオレンジ色の光と紺色の闇のグラデーションになっている。
もうすぐ日が沈んでしまう。
「また明日。学校でね」
「あ、ああ」
そうしてマンションを出た。トウジは私の背中を見送っていた。
同じ様なドアが並ぶ廊下を歩き出す。
数歩歩いたところで、私の足は止まった。
止まらずを得なかった。
「シンジ!」
肩に置かれた大きな手。
後ろを振り向くと、そこには信じられない暗い目をした彼が居た。
「トウジ…。どうしたの?」
肩に置かれた手はそのままに、虚ろに私を見つめる。
縋るようなその目。
帰るところがわからない迷子の小さな子供のような。
「シンジ…お前、何であれに乗るんや?」
「……トウジ?」
「初めて、エヴァンゲリオンに乗ったとき…どないやった?」
「……トウジ?」
「怖かったか?痛かったか?せやったら、何でアレに乗るんや…?」
唐突な問いかけに、言葉を失くす。
それでも彼は虚ろな目のまま言葉を続ける。
トウジに向き直り、彼の顔を見た。
愕然とした。
どうしようもない程の影が、彼を覆っていた。
夕闇が迫る。
太陽はもうすぐ沈んでしまう。
「なんでそんなこと…」
「ええから答えてくれ!!」

218:621の続きで
06/09/10 22:04:07
トウジは叫んだ。知らない人みたいだった。
その声に、一瞬怖くなって逃げ出したくなったが思い留まる。
トウジは深い深い闇に沈んでいくように見えた。
断罪を待つ罪人みたいな。
でも目の前にいるのは知らない人間じゃない。
罪人でも人殺しでもない。
私の知っている彼だ。
「どうしてそんなこと聞くの?」
こんなこときっとうまく言えない。わからない。
自分のことなのにうまく説明できない。
トウジは、初めて会ったときに私を殴ってしまったことを未だに引きずっているのか
傷ついた妹のことを思い出すのか、あまり深くネルフの話はしない。
それなのに、今更…。

陽が、傾く。

陽が。

やがて最後の陽の光も途絶えたとき、トウジは口を開いた。

「ワシ、今日…。ネルフの人来て――。パイロットになれ、言われたんや」

彼の言葉を、知覚するのに時間がかかった。
視界が歪む。
世界から他の音が消えたみたいに、トウジの声だけが耳に響いた。

オレンジ色だった雲は、いつのまにか燃える様な深い闇に染まっていた。
燃えさかる黒い炎の様だった。

219:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/10 22:31:31
キター!!!!
ああ、もうすぐか…

220:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/11 04:39:51 rtaXCSWy
トウジー!!
死亡フラグがビンビンに立ったな…

221:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/11 18:42:19
GJ・・・・・・・

222:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/11 20:49:39 6zbFZiMB
age

223:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/11 22:25:36
さようなら、さようなら。トウジ。

224:621の続きで
06/09/11 23:06:33
最後の陽の光も沈んでしまった。
血のように赤い夕日が闇に染まる。
雲は燃えさかるように影に色付く。
黒い炎みたいに。

「エヴァのパイロットやるんやったら、
 妹を本部の病院に転院させてくれる言うねん。
 そこやったら…今んとこよりずっといい治療受けられる言うし…」
聞こえるのは、二人の浅い呼吸音と自分の心臓の動悸。
そしてトウジの声だけ。切れ切れの呼吸の中、彼は言う。
「エヴァのパイロット言うたら、お前ら女だけやろ?
 せやったら、ワシにもできる筈やろ?…大したことなんてあらへん」
トウジの唇が小さくが歪む。それは理性か、なけなしの正気か。
暗い影はトウジから離れようとはしなかった。

「せやけど…ずっとそうやって言い聞かせとったんやけど…」

トウジはそう言って、私の前に一歩踏み出した。
私は動かなかった。動けなかった。

「こわい…」

彼はそう小さく呟くと、私の肩を掴んだ。
そのまま縋り着くように崩れ落ちる。
「見てみい…手ぇ、震えとる。…止まらへんのや」


225:621の続きで
06/09/11 23:07:54
そう呟くと、トウジは自分の掌を見つめた。
私とは違う骨張って無骨な大きな手。
何だって掴めそうな優しくて大きな手。
その手は小刻みに震えていた。
いつもの彼とは明らかに違っていた。
闇に怯える子供のようなその顔。
何とかして震えを止めたくて、
彼を闇から救ってあげたくて私は必死で言葉を紡ぐ。
声が掠れてしまうのが嫌だった。
「大丈夫…だよ…」
肩を掴むトウジの手を握り締めると、その手はまだ震えていた。
膝を着いて縋る彼と視線を合わせようと私も屈んだ。
「心配ないよ…。最初は怖いけど、すぐに慣れる。
 確かに戦うのは私達だけど、スタッフが全力でバックアップしてくれるし…」
握り締める手の力を強くする。
トウジは俯いたまま、顔を上げることはなかった。
「それに…エヴァの中は案外安全なんだ。トウジなら大丈夫。できるって。
 私が…。私がやってるくらいなんだから」
喉から零れ落ちる言葉は、やたら掠れて嘘臭く響いた。
アレに乗るのはきっと男も女も関係ない。
何回乗ったって恐怖は薄れることは無い。
死にかけたし、痛い思いも怖い思いもした。
そして、何より怖かったのは記憶を失くすような戦闘をしたときだ。
自分でも気付かないうちに、
誰かを何かを傷つけてしまっているのではないかと不安になる。

226:621の続きで
06/09/11 23:09:16
あぁ、こんなときどんな言葉を言えばいいんだろう?
いつだって、迷ってしまうのは私だったから。
いつも隣にいて、黙って手を差し伸べてくれたのは。
苦しいとき後ろに立って、そっと肩を押してくれたのは。
いつも他の人だったから。
こんな時、どうしたらいいのかわからない。
こんなこと言ったって気休めなのはわかってる。
わかってる。
それでも。
「大丈夫…大丈夫だよ…」
震えるトウジの体を抱き締める。
そしていつかの自分の様に、言い聞かせるように言葉を繰り返す。
今度は自分ではなく、彼に伝わるように。
トウジの体は酷く冷たく感じた。
顔を上げずに震える姿は、まるで泣いてる様だった。
暖めるように抱き締める腕に力を込める。
「すまん…」
「なに言ってるのさ」
「ワシ、お前の気持も知らんと…偉そうに殴ったりして」
「なに言ってるんだ」
懺悔のように呟く。
体は相変わらず冷たいままだ。
触れた体温から思いまで伝わればいいのに。
トウジが落ち着くように。
あの嫌な影が消えてしまうように。
ただ抱きしめた。


227:621の続きで
06/09/11 23:10:37

「すまんな…もうええわ」

どれくらいそうしていたのだろう。
すでに雲も空も真っ暗になっている。
トウジが少し恥ずかしそうに顔を上げた。
まだいつもの元気はなかったが、もうあの影は消えていた。
ホッとして息をつくとトウジは肩を掴む手はそのままに、
真っすぐな瞳で私に問い掛けた。
何かを決意したように。

「なぁ…シンジ、もしワシが上手くエヴァを動かせたら…」
「…え?」
「全部終ったら…、お前に言いたいことあんねん。聞いてくれるか?」
「…?うん、いいよ」
「………そうかぁ」

彼は笑った。
太陽みたいに。
それは、ほのぼのと暖かい柔らかな日差しの様な笑顔だった
だから吊られて私も笑った。
沈んでしまった太陽の代わりに、ぼんやりとした外灯が私達を照らしていた。


228:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/11 23:21:05
GJ!

しかし、これはフラグか? フラグなのか?

229:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/11 23:23:45
この光景を買い物帰りのヒカリが目撃していたら修羅場だな。

230:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/11 23:24:47 6zbFZiMB
乙です!!トウジにはぜひ生きててほしいとこだが…('・ω・)

231:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/11 23:25:51
生きてくれ!トウジ!

232:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/11 23:43:12
>>229
まあ、はたから見ればなにこの厨房カップルって感じだからな。
しかしトウジいいキャラだったのに。

233:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/11 23:55:31
まぁ、あれだ…今までありがとな、トウジ…

234:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/12 00:08:08
うあぁぁ…
あかん…悲恋やあぁぁ…

235:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/12 00:11:36
>>230
死ぬと分かってるからこそのこの切なさ…
パラレル書いてあげたいぐらい

236:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/12 00:14:44
>「全部終ったら…、お前に言いたいことあんねん。聞いてくれるか?」

か・・・完全に死亡フラグや!

乙です。まだなのにもう涙出そうだ・・・

237:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/12 00:18:50
しかもシンジきゅん、ちょっとトウジのこと好きになりかけてたっぽいのに

238:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/12 00:24:35
シンジきゅんの好みのタイプが
>優しく抱きしめてくれる暖かい太陽みたいな人。

んで今回
>彼は笑った。
>太陽みたいに。

自分でも気付かないうちに惚れてたんだな、シンジきゅん…。
初恋は実らんのですな。

239:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/12 00:39:47
シンジがあっさり耐えてるのにトウジはなんで怖気づくの?と思ってたが
よく考えたら何回死んでもおかしくないくらいの体験はくぐってきてるんだな。すまんかったトウジ。

240:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/12 00:43:12
トウジ死ぬなぁ!!生きるんだ

241:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/12 00:44:42
そなの?
シンジがあまり怖がらない(表面的には)のは、生に対する執着心が薄いからだと思ってた

242:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/12 00:54:28
別にトウジが最悪死んでもいいのは俺だけ?

243:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/12 02:36:57
死亡フラグ大盤振舞

244:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/12 07:39:11
使徒戦で生き残っても委員長に菜っ切包丁で刺されそうなトウジに合掌。

245:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/12 10:26:59
菜切包丁ワロス

246:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/12 11:24:28
菜切包丁でどうやって刺すんだよwwwww
斬りつけるならともかくw

247:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/12 11:36:08
そこを無理やり刺すところが恐ろしいわけだよ
楽には死なせないと

248:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/12 12:31:03
菜切り包丁ってほとんどが鉈とか中華包丁みたいな形だぞ
どうやって刺すんだよw

249:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/12 14:24:26
こうしてみると、委員長はダークを持った地雷女ってイメージがあるんだなwww

250:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/12 15:58:06
というか、エヴァキャラ全員

251:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/12 16:24:48
死ぬ前にシンジきゅんに抱き締めて貰えたから幸せじゃないか

252:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/12 21:16:29
URLリンク(www.geocities.jp)

↑これちょっと良かったww

253:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/12 21:19:29
このスレ的には生まれながらの女なのか
男に生まれたが、エヴァに乗ったせいで女性化のどっち?

254:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/12 21:26:21
>>253当然どっちも桶ジャマイカ

255:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/12 21:30:18
なんでどっちかを選ばなきゃいけないんだ?

256:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/12 21:31:07
悪かった。
俺が馬鹿だったよ。

257:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/12 21:37:03
>>256
君の人生も一歩前進だ

258:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/12 21:41:18
>>252
名前でワロス

>>252
つ女装

忘れてるぜ

259:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/12 21:41:45
新参乙としかいいようがないな
お前のせいでいらぬとこで荒れるとこだっただろ
自重して過去スレ嫁

260:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/12 22:10:46
切ねえとか言いながら死ぬのをwktk

261:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/12 23:41:59
>>245,246,248
なんかヒカリというと菜切包丁というイメージが。
文化包丁でもいいかもしれないけど。

262:621の続きで
06/09/13 00:08:39
「じゃあ四日程留守にするけどよろしくね。何かあったら加持に連絡して」
「はい…気をつけて下さいね」
エヴァンゲリオン参号機の起動実験のため、ミサトさんは松代に出張だ。
全部本当だった。目が覚めたらみんな夢なんじゃないかと思ったけど。
そんな奇跡みたいなことは起きるはずもなく朝が来た。
「アスカもね、わかった?」
アスカは昨日遅く帰ってきた後、一歩も部屋から出ていない。
ミサトさんの言葉に、面倒くさそうに襖が開いた。
じっとりとした目で玄関にいる私達を睨むが、すぐに襖は閉められた。
「なんなのかしら、あれ?」
「…ミサトさん」
ミサトさんはきょとんとした顔で私を見る。
整った綺麗な顔。でも今日に限ってその顔はちゃんと見れなかった。
「どうして、トウジなんですか?」
一瞬の沈黙の後、ため息と共に申し訳なさそうにミサトさんは言った。
「決まってしまったものをとやかく言ってもしょうがないわ。
 あたし達がついてるんだから心配しないで。今日はただの起動実験だし」
安心させるように肩を叩くとミサトさんは松代に向かった。
その姿を見送ると、アスカの部屋の前に立ち中にいる彼女に声をかけた。
「アスカ、もう学校行く時間だけど…」
「うるさいわね!!入ってこないで!あんたといい、あいつといい…。絶対嫌よ!わけわかんないわ!」
襖の前で立ちすくむ。ああ、そうか。アスカも知ってるんだ。
フォースチルドレンが、その人物が誰かということが。
扉の奥でアスカは拒絶している。でも、本当は違う理由があるからだ。
小さい頃から訓練を積んでパイロットになったアスカは
エヴァの乗ることにプライドを持っている。
何の訓練も実戦もなしにパイロットに選ばれると言うことが気に入らないのだ。
私の存在もまた、きっと面白くは無いのだろう。でも、だからってどうしようもない。
エヴァに乗らないとここにいることが出来ないから。まだ、ここにいたいから。
今の私には、エヴァにはもう乗らないと決めることなんてできない。
いつもとはちょっと違うけど、それなりの朝の風景。
それでも嫌な予感は昨日から消えない。しみのように心に張り付いたままだ。

263:621の続きで
06/09/13 00:12:21
『フォースチルドレンが到着しました』
『第二班はすみやかにエントリー準備に入ってください』
事務的な声が広大な実験場に響く。先ほど参号機は航空機によって、この松代に到着した。
十字に固定された黒い機体はまるで張り付けられた罪人のようにみえた。
この機体が納入されれば完全に直轄部隊に配属される。
それでこのネルフに存在するエヴァは4機。
エヴァを4機も独占か…。その気になれば世界を滅ぼせるわね。
「鈴原君、どうしたの?緊張してる?」
ケイジに固定された参号機を見上げる見知った少年に声をかける。
一瞬驚いたような顔をした彼は、それでも気丈に微笑んだ。
「ああ、平気ですわ。こんなんどうってことあらへん」
「…ごめんなさいね。急に決まってしまって」
アスカはいい。エヴァに乗ることにプライドがあるから。レイも、少し違うが同じことだ。
きっと、私達に関わってもいいことは一つも無い。それをよくわかっているのはあの子だ。
だから言い出せなかった。結局、秘密のままにはできなかったけれど。
「ええんです。これは、ワシが自分で選んだことなんですから」
「でも…」
「神様なんておらんからな。自分の力でやらなあかんねん」
この子は。そしてあの子達はきっと…。
きっと自分が思ってるよりずっと、世界の仕組みをわかってる。だけど…。
「そう。やっぱ男の子は違うわねぇ。もうアスカやシンちゃんなんてさぁ~」
だけど、あの子達には私みたいなひねた大人にはなって欲しくなかった。


「じゃあ、もうすぐ始まるから。気が済んだら戻ってきてね」
緊張をほぐそうと、優しく微笑んだ彼女を見送ってから黒い機体をもう一度見上げた。
「はぁ…これがワシのエヴァかい。何や怖い顔しとんなぁ」
そんな感想を抱きながら、昨日のことを考える。自分らしくない恥ずかしい所を見せてしまった。
それでも、昨日思ったことは本当だった。
「―――――。」
全てが終わったら彼女に言いたいことを呟いた。
その声は、実験場にこだまする機械音に紛れ、たぶん、誰にも、自分の耳にも届くことなく――消えた。

264:621の続きで
06/09/13 00:15:38
そろそろ始まるころかな…?参号機の起動実験。

太陽はちょうど頭上で輝いている。
いつもの屋上の片隅で思考を巡らす。
きっと、夜には実験も終了するはずだ。
早く夜になればいいのに。
心を焦げ付かせるこの不安が取り越し苦労だったと思いたい。
そうだ、すぐに終わる。
少なからず変わってしまうとは思うけど、いつもの日常は戻ってくる。
そしたら、トウジが私に言いたかったことをちゃんと聞こう。
でも、彼は何を言いたかったのかな。
空を見上げてぼんやりと考えた。太陽が眩しい。
「考えたってしかたないか…」
いくら考えたって私にはわからない。
言われなければ、私にはわからない。
だけど、それでもいいはずだ。
全部終わったら聞けばいいんだから。

夜が来れば。明日になれば。

「碇さん…お昼まだなの?」
「委員長?」
後ろから声をかけられ振り向くと、そこには委員長が居た。
「うん。今日は、お弁当作る時間なかったから。購買で何か買ってこようかと思って」
「そうなの。ねぇ、だったらこれ食べない?」
そう言って手渡されたのは、可愛らしく包まれたお弁当箱。
これって、ひょとして…。
「わ、悪いよ。だってこれ…」
「いいの。今日あいつ休みだし。残しても腐っちゃうし」
掌に感じるその重みに何だか心が温かくなった。
恋とか好きとかは、私にはまだわからないけど、委員長のその気持ちが感じられた。
そうだ、きっとこの嫌な予感はただの思い過ごしだ。

265:621の続きで
06/09/13 00:17:10
「あのね、碇さん」
手渡されたお弁当箱を眺めていると、委員長が小さく言った。
その声を聞き取って、顔を上げると委員長ははにかみながら言った。
「今度、鈴原が学校来たらね。ちゃんと言おうと思うの。私の気持ち…」
白い頬を薄く染めて、少し恥ずかしそうに言葉を続ける。
「アスカの言うことって、最もだなぁって思って…。
 たとえ結果がどうあれ…、鈴原を好きって気持ちだけはちゃんと伝えたいの」
「結果って…?」
「うふふ…」
何を言ってるんだろう。そんな筈ない。だって、委員長はとても可愛くていい子だ。
そんな子に思って貰えるなんて幸せなことだと思う。きっとトウジだって彼女を好きになる。
そんなこと、ありえないのに…。
目を大きく開いて彼女を見つめていると、委員長は元気良く私を指差して言った。
いつもの、きびきびとした良く通る声で。
「いい?碇さんも自分の気持ちに気付く時が来たら、ちゃんと伝えないとダメよ!」
「委員長?」
「じゃあ、碇さん。あとで教室でね」
そして、委員長は振り返り屋上を後にした。その姿はとてもとても綺麗だった。
教室でよく見る、皆のために一生懸命な委員長の姿に似ていた。
光が差し込む教室で委員長は、一際輝いてみえた。そして、去ってゆく今の彼女も。
その後ろ姿に私は見惚れていたので、委員長の言葉を理解することができなかった。


今思えばあれが、私が誰かと分かり合える最後のチャンスだったのかもしれない。





携帯の着信音が無機質に鳴り響く。
何かの合図みたいに。

266:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/13 00:40:27 9Ob4h0f9
投下乙です!!
…ついに起動実験…トウジが…トウジがぁぁー(ノД`)。゚・。

267:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/13 07:16:53
乙。崩壊のシナリオが始まる。

268:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/13 07:24:38
乙です。ここから話がどう進むのか楽しみ。
がんばってくだされ(´・ω・`)ノシ

誰かトウジの死亡フラグ数えてみたか?俺は忘れちまった。

269:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/13 07:30:22
>今思えばあれが、私が誰かと分かり合える最後のチャンスだったのかもしれない。

この先の展開を暗示している一行ですな。。。
アスカもあのまま奈落へまっしぐらなんだろうか。

270:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/13 10:36:30
委員長はトウジの気持ちもシンジの気持ちも知ってたんだな…

271:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/13 11:01:18
刺すような子じゃなくてほんといい子だ

272:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/13 14:17:36
同じく堕ちたアスカと共に慰めあうシンジきゅん

273:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/13 14:24:26
百合になんの?

274:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/13 16:57:31
さて、どーかのう
カの字の登場も控えてる品
ここはただ待つべし

275:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/13 17:11:40
カの字ってなんだ?加地?と思ったら
カヲルかwwwすっかり忘れてた

276:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/13 18:26:56
カの人は貞版なの?

277:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/13 18:52:15
この流れなら貞カヲ…と思ったけど、アニメのエピソードも少し組み込まれてるしな

278:621の続きで
06/09/14 00:21:47
血のように赤い夕日。
影に色づいた雲。
燃えさかる、黒い炎。

陽が、傾く。

陽が。


『目標接近。全機地上戦用意』
近づいてくる敵。使徒。夕日を背にゆっくりと歩くそれ。
光を受けるその存在の輪郭がはっきりとしてくる。
その輪郭を完全に捉えたとき、私は自分の目が信じられなかった。
「うそ…」
目の前にいるのは使徒。
まぎれもない私達の敵。
倒すべき現在の目標。
だけど、その形は
「目標って…目標ってこれなの?」
だって、だってこれは…「エヴァ」じゃないか…。
私達の仲間になるはずだった存在でしょう?
それに…あれには…あの機体には…。

「シンジ、これはもうエヴァではない」

嘘だ。だって、アレはエヴァだ。
違うと言うのなら…何だというの?
何だっていうんだよ!

父さんが機械的に要点だけを伝える。

「使徒だ」

279:621の続きで
06/09/14 00:23:01
「パイロットは…?パイロットは乗っているの!?ねぇ、アスカ!!」
「ここからじゃわかんないわ…。でも、乗ってるんだったら何とか助けなきゃ」
モニターに写るアスカに叫ぶと、動揺を隠せない声で彼女が呟く。
その瞬間、ウインドウは雑音と共に砂嵐に閉ざされる。
上がるアスカの悲鳴。轟く地響きと轟音。
「アスカ!?」
『エヴァ弐号機完全に沈黙!』
『目標移動!零号機へ』
動かない弐号機に興味を失くした様に
黒いそれは不気味に眼を光らせ再び歩き出す。
私達と同じ機体のはずなのに、まったく別の生き物に見えた。
『レイ、接近戦闘は避け、目標を足止めしろ』
「了解」
『聞いたなシンジ。急げ』
「綾波!!」
事務的に命令を下す父さんの声。
その声が耳に入る前に駆け出していた。
「まだ撃たないで!私が行くまで待ってて!エヴァ参号機には…」
だって。
だって、あれには。
あれに乗っているのは…!
「トウジが…。トウジが乗っているんだ!」
彼が乗っているのに、攻撃なんてできるはずがない。
傷つけるなんてできない。
その言葉に立ち止まった零号機に呼応する様に参号機も移動を停止する。
動きを止めた参号機はゆっくりと振り返り――あとは一瞬だった。
信じられない動きで飛び上がった参号機は零号機を押しつぶす。
肩口から白い粘液を零号機の左腕に垂らし、侵食を始める。
綾波が声にならない呻き声を上げる。

280:621の続きで
06/09/14 00:24:16
「まずい。切断だ」
冷静に告げる父さんの声のあと、零号機の左腕は剥離された。
神経接続をカットする暇も無く切断されたため、
綾波の悲痛な叫びがモニターから響いた。

「綾波!!」

血のように赤い夕日。
影に色付く雲。

陽が、沈む。

陽が。

赤い夕日。
夕日は好きじゃない。
昼と夜との一瞬の隙間。
ほんの一瞬交わるだけの瞬間。
決して一つにはなれないと思い知らされるから。
わかりあえることはないと、嫌でも思い知らされるから。



でも君と一緒に歩いた、あの帰り道は

傾いた陽に照らされ、照れるように笑った君の横顔を見たときは


あの日君と見た夕日は――


エヴァ参号機は、使徒は、私を認識し射程内に入れた。

281:621の続きで
06/09/14 00:27:50
>>273
百合には、多分ならないと思う。
異性を意識した描写や、性的な表現はなるべく書き換えるようにしてるので
>>276
ゼルエル戦終わったらアニメ版の欝展開予定なので、庵カヲかな…?
途中で変更するかもしれませんが。


282:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/14 01:25:11 wcfNcn9R
乙です!!
起きててヨカタ(ノ∀T)トウジ生きててくれ…と、淡い希望にすがってみるorz

283:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/14 13:16:43
621氏乙
トウジvsカヲルが見たい・・・
無理なのはわかってるので脳内妄想だけにしておく

284:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/14 13:59:01
トウジVSカヲル…無理だとはわかってるがちょっと見たい
はっ!!ラストがテレビ版だったら学園エヴァで実現するかも…


戯言です

285:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/14 19:43:21
ああ、戯言だな

286:621の続きで
06/09/14 22:19:25

―見てみい…手ぇ、震えとる。…止まらへんのや

―そんな暗い顔するなって。大丈夫だよ。
  トウジは嫌いな奴と一緒にいたら、あんな風に笑わないよ。

―転校生、ちょっと顔貸せや

―ごめんですむか!!ボケェ!!

―碇、ワシを殴れ!

―ええんじゃ!誤解とは言え女殴ったなんぞ、ワシの信念に反するんや!!


 おもいだすのは、きみのこと


―全部終ったら…、お前に言いたいことあんねん。聞いてくれるか?


ねぇ、君は。
君は私に何を言いたかったの?
ちゃんと言われなければわからない。
私にはわからない。

自分のこともわからないのに、他人のことがわかるはずもない。


 私は―――


287:621の続きで
06/09/14 22:21:40

『シンジ!どうした!何を突っ立っている!』

父さんが叫ぶその声にやっと自分の置かれた状況に気付いた。
それと同時に使徒は雄たけびを上げ、空中に飛び上がる。
次の瞬間感じた衝撃。激しい痛みが私を襲う。
だけど、それでも…。
使徒は蹴りの反動で飛び上がり、四つんばいで着地する。
倒れ落ちた初号機と距離を置き、こちらの様子を伺っている。
そのとき、見えた。
白い粘液がくもの巣状に覆っているエントリープラグ。
乗って…いるの?
乗っているんだ、彼が。
「トウジ!トウジ!答えてよ!」
立ち上がり呼びかける。
彼がそこにいる。
傷つけるなんてできない。
攻撃なんてできない。
「無事だったら返事して!何とかして助けるから!」
その声は、多分君の耳には届くことなく消えた。
通常のエヴァでは考えられない動きで使徒の腕が伸びる。
その瞬間、初号機の首筋は使徒の掌に包み込まれた。
「あぅっ…う…あ…ッ…ト、トウジ…!」
そのまま両腕に掴まれ、木々をなぎ倒し山に叩きつけられる。
首を絞める腕の力が強くなる。
「はぁ…はぁ…っ…くぅ…ッ…んっ…うぅううう」
息ができない。
鼓動が収まらない。
叩きつけられた身体が激しく軋む。

288:621の続きで
06/09/14 22:26:15
『生命維持に支障発生!パイロットが危険です!』
『シンジ、何故戦わない!?』

「私には…できない…よ…」
苦しさにぼんやりと霞む頭に父さんの声が響く。
使徒は初号機に覆いかぶさり、更に力を強めた。
「私には…戦えない…」
戦う?
誰と?
何と?
何を、誰をまた傷つけるの?
目の前の使徒は真っ黒な機体に目だけを爛々と輝かせ、
腕の力を更に強くする。
違う。
使徒なんかじゃない。
これは…。
これは…エヴァだ…。
「友達が…友達が…乗ってるんだ…戦えるわけないじゃないか!」
押しつぶされた声帯で、それでも必死に叫ぶ。
『お前が死ぬぞ』
「いいよ!友達を殺すよりは…人を殺すよりはいい!!」
そんなことをするんだったら、私が死んだほうがいい。
だけど次の瞬間、苦痛の開放と同時に世界は闇に閉ざされた。


289:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/14 23:41:14
GJ

苦しい喘ぎがエロく見えました

290:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/15 00:34:26 5T+Kr/gW
乙ッスm(_ _)mついにあれを使うのか…トウジの運命やいかに!!

291:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/15 00:43:16
ていうか、女になってこの流れにしてみると、逆にシンジのヘタレぶりが増すよな。
なんで戦わない、ってその通りじゃん。

292:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/15 01:45:34
ヘタレてこそシンジきゅんですよw

293:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/15 02:24:21
戦わなかったというより戦えなかったんだよ。友達と殺し合いスレスレの事しなきゃならんのだから、まともな神経してたら出来ないだろ。
アスカなんかも瞬殺だったしヘタレとかいうのはあんまりだと思うがね

294:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/15 02:35:55
心を落ち着かせるために前スレの最初から読み直してみたら益々泣けてきたorz
トウジ…さよなら

295:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/15 02:58:02
>>293
>友達と殺し合いスレスレの事し
そう思う前に「助ける」ほうが先に来てないとおかしいだろ
ましてこの話じゃエントリープラグ確認してるし。

296:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/15 03:11:56
問題は全部パイロットまかせで、ろくに指示を出さないネルフスタッフにあると思うんだ
いつも「戦え」とか「ダメです」しか言わないし

297:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/15 04:42:55
>>296
サキエル    手探り状態→初号機暴走
シャムシェル  指示を出すもシンジが無視、からくも勝利
ラミエル     作戦通りに殲滅
ガギエル     アスカが出撃するも、ミサトの作戦で殲滅
イスラフェル   一戦目、指示出すも敗北 二戦目、事前の訓練のおかげで勝利
サンダルフォン アスカの機転で勝利
マトリエル    アスカが作戦立案、三人のチームワークで勝利
サハクィエル   一応、作戦通り・・・か?
イロウル     リツコとネルフ職員のおかげで勝利
レリエル     独断専行した初号機により作戦がメチャクチャに。騒ぎの張本人の初号機暴走で勝利
バルディエル  シンジがまたもや命令無視。ダミーシステムで勝利
ゼルエル     アスカは普通に敗北。レイは片腕が無い為ほぼ戦力外。初号機暴走で勝利
アラエル     アスカは命令通りに行動するもまた敗北。零号機のロンギヌスの槍でなんとか勝利
アルミサエル   様子を見るも敵が突っ込んできて零号機自爆
タブリス      シンジの判断で殲滅

そんなにパイロット任せかな・・・?

298:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/15 07:29:31
トウジはシンジきゅんの心に傷を残したまま死んでしまうのかな
悲しいな

299:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/15 08:55:29
つか俺のシンジきゅんに向かってヘタレとか言うと前歯全部折るぞ

300:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/15 11:47:54
>>297
サキエル→何の訓練もしてないド素人をいきなり使徒の目の前に。
しかもとりあえず歩けとしか
シャムシエル→指示は出したが、シンジが命令違反。その前は効かなかったパレットライフルをもう一度使えと指示。
ラミエル→一話同様、敵の能力が未知数にも関わらず真っ正面にシンジを出す。何の指示を出したかは分からないが、結果シンジ死にかけ。
しかし、その後は作戦通りに行動し、使徒撲滅。
ガギエル→ミサトの機転と指示、2人の力で使徒撲滅。
イスラフェル→初、弐号機による波状攻撃を指示。二機が敗北してからは、加持の提案で作戦を立案。
無事成功し撲滅。
サンダルフォン→パイロットの命より自分の復讐を優先した指示を出す。
勝利はしたが、シンジが助けなければアスカが道連れにマグマの中に沈み死んでいた。
マトリエル→とりあえず使徒撲滅、みたいな
サハクイェル→無茶な作戦立案、初号機の超加速が無けりゃ失敗してただろなぁ…
イロウル→リツコとネルフのみんなのおかげ
レリエル→初号機の独断専行、作戦無視により作戦が無茶苦茶に。
その後はリツコによる、人命は無視で初号機の回収と使徒の撲滅を最優先とする作戦にアスカもレイも従う。


301:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/15 12:07:24
まぁ、ネルフは庵野曰く「素人集団」らしいから…
それにしたって、ちゃんとした指示出せる軍人とか雇えよな

302:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/15 12:09:32
バルディエル→経緯の説明不足、パイロットの精神的負担も考えずに、ただ撲滅しろとのみ。
シンジは戦えずに、ダミープラグの起動を余儀なくされる。
ゼルエル→敵の圧倒的力の前に、作戦も指示も無意味に。
敵をジオフロント内へ侵入を許すが、シンジの機転で外へ排出。その後は初号機の暴走で撲滅。
アラエル→アスカが作戦無視して勝手に先行。
後に許可し、長距離砲による撲滅を指示するが敵が射程距離外のため無意味。
パイロットが敵の精神攻撃に襲われる。撤退命令を出すがアスカは無視。
碇司令の槍の使用許可、零号機による投擲により使徒撲滅。
アルミサエル→弐号機バックアップ、零号機を中心に撲滅を指示。
使徒の能力が未知数のため、ろくな指示も出せず。結果、零号機が使徒に浸食される。
弐号機が動かないため、初号機にレイの救出を指示。レイの心がシンジまでも取り込もうとしたため、レイが使徒を抱え込み自爆。使徒撲滅。
タブリス→ シンジと交流を持っていた少年が使徒。
事実を事実とだけシンジに伝え、使徒撲滅を指示。
シンジは指示通りに撲滅するが、好きな人を殺してしまった責任と事実に、心が壊れてしまう。

303:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/15 12:13:30
要するに「髭と牛はとっとと氏ね」というだけのことをそこまでまわりくどく書かなくてもw

304:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/15 12:14:42
>>301
命令を受ける側も、兵士でなく子供だからねぇ…
幼い頃から特殊訓練を受けてきたアスカですら、命令違反してたから
お互い中途半端すぎたんだろうね…


使徒の能力が未知数すぎて、作戦の立てようも無いし。
まあそれなら事前に能力をはかれ、と言いたくなるけどそこはアニメ

305:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/15 12:17:59
>>303
いやいや
そんなこたぁ無いです
304の通り、お互いだと思うけど…
ネルフ側は大人だし上の立場だからね
非難されるのは仕方ない


それがゲンドウ嫌いとかミサト嫌いに繋がるわけじゃない
むしろ私はどっちも好きだ

306:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/15 12:31:26
ネルフとは反対に、普段はギャグ集団だけど一旦事あれば
非常なプロ集団、っていう構図は、結構漫画的には一般的かなあ。
と言いつつ、今すぐ出せる例が漫画版パトレイバーのシャフト企画七課、
ってとこが微妙なんだがw

ネルフの場合はどっちかつーと、特車二課の裏返しなのかなあ。

307:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/15 12:54:15
たとえ、ゲンドウがエントリープラグ引っ込抜けって指示出しても
貞版はトウジ侵食されてる表紙とかあったから、
助けても間に合わなかったと思うんだけど
わかってたからあえて倒せって言ったとかは考えられない?

308:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/15 12:59:11
なら、そう説明すればいい

309:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/15 13:02:23
>>306
パトレイバーは普段も何だかんだ言ってプロだし

エヴァは素人同士で頑張ってみましたって感じだろか

310:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/15 13:21:27
でも実際友達と殺し合えって言われたら、指示出されても結局何も出来ないと思う
ましてやまだ中坊だし
エントリープラグ握り潰す前にダミーシステム停止させりゃ良かったのに
これが一番の得策

311:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/15 13:29:43
ゲンドウ的には中の人も殺そうとしてたのかも知れない


312:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/15 13:32:14
ダミーシステムの実験データー欲しかったんじゃないの?


313:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/15 14:08:25
使徒に乗っ取られた3号機を止めるには
エントリープラグからの信号を止めるしか無かったからじゃないか?

314:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/15 14:11:30
いや、首絞めた時点でピクリとも動かなくなったんだが

315:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/15 14:31:14
>>314
しかし、使徒である以上それで油断せず徹底的に殲滅することが必要。
ただ、バルディエルが3号機の素体をズタズタにしただけで殲滅というのは
ちょっと不可解なところではある。

それこそ最終的にトウジの身体を乗っ取ったのだとすれば、
ダミーがエントリープラグを潰したのも、ゲンドウが止めなかったのも
すごく理解できるんだけどね。
まあ、アニメ版が下手に生き残されたのが本来まずいのであって、
トウジは焼却処分だろ。

316:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/15 14:59:02
まぁ遺体は返されなかっただろうな。サンプル保存とかされたかもしれない。
葬式やったって描写もないし
委員長やケンスケもトウジの死を薄々感じてはいるが、
はっきりとはわかってないみたいだし

やべぇ、怖いな。ネルフ

317:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/15 15:17:00
アニメも最初は殺す予定だったから

カヲルもトウジも、シンジは殺すしかなかったんだなぁ
命令だから仕方ない、使徒だったから殺さなきゃいけなかったと考えようとしたけれど、
シンジは優しいから結局自分のせいにしちゃった

318:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/15 15:25:50
少年兵みたいなもんだしなぁ…
あの世界、子どもの権利条約とかどうなってるんだろう?

319:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/15 15:34:05
そんなのはあったとしても超法規的な組織だからモウマンタイ

320:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/15 15:35:27
キャラの性別逆だったらスレって落ちたの?

321:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/15 16:44:41
うん
全部逆には興味ないからどうでもいいけど

322:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/15 17:03:09
>>310
あの時点でのダミーシステムは未完成の半欠陥品。
停止できたかどうかすら不明。
後、土壇場で使徒相手に手加減したらまずいので、パターン青が途切れるまでやらせてみた、とか。
結局、トウジのプラグをトウジごとあぼんさせないと使徒は消えなかった、ということになるけど。

323:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/15 17:19:48
何かシンジきゅんの話題よりトウジの話題で盛り上がってるなww

324:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/15 17:26:46
シンジにとってトウジはなくてはならないものだからね

325:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/15 17:27:44
バル戦クライマックスだから

326:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/15 17:32:19
>>323まぁ、それにしてもそう長くは続かないさ

327:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/15 17:34:24
職人いると伸びるの早いな

328:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/15 17:42:06
楽しいなこのスレぬるぽ

329:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/15 17:47:48
楽しいよねガッ

330:621の続きで
06/09/15 22:33:27
掌の中で霞んでゆく命。
それを消そうとしているのは紛れもなく自分。
この指を、腕を、止めたかった。
薄れ行く意識の中、それだけを思う。
自分の中に何かが入り込み、侵食していく。
「正気…失うわけには…いかへん…のや…」
いつかこれと同じエヴァの中で見た小さな背中。
泣きたい筈なのに、涙も流さず細い肩を震わせていた彼女。
その時まで本当に何もわかっていなかったのだ。
たった14歳の子供の肩に、どれだけ重いものが乗っているのか。
「シンジ…傷つけるわけには…いかへんのや…!」
無知のまま奮った拳。
何も知らず、投げつけた感情と行為。
ようやく笑うようになった彼女。
もうあんな思いはしたくなかった。
手に入れたと思ったはずの力は、ただ傷つけるだけの力になった。
伸ばした腕は、誰にも届かず中を舞う。
言葉はきっと、誰にも届かない。
あの実験場で呟いた言葉のように。


だから初号機の瞳が赤く瞬いたそのとき
彼女の悲痛な叫びが耳に届いたとき、嬉しくて笑った。
やっと眠れるような気がしたから。

そして意識は闇へと溶けた。




悲しかったのは、彼女が泣いていることと
この思いがもう届きはしないこと。

331:621の続きで
06/09/15 22:34:20


一体どうしてこんなことになっているのか
わけがわからない。


わからない。


「何だ……?」
暗闇のエントリープラグの中で、後部のディスクが高速回転を始める。
黒に満たされた闇の中、突然プラグ内が真っ赤な光に染まる。
嫌な予感がする。
何を…
「何をしたの!!父さん!」
ゆっくりと、ゆっくりと初号機の腕が動き始める。
その腕はそのまま使徒に襲い掛かった。
ギリギリと軋む音を立てて、その存在を締め付ける。
小さくうめき声を上げる使徒。
目の前の光景が信じられず、ただその様子を見ていた。

何が…起こっているの?

どうして…

どうして何もしてないのに


何で勝手に動くんだよ!?


332:621の続きで
06/09/15 22:35:14
渾身の力を込めて絞められる使徒の首。
装甲が砕かれる破壊音が響き、もがく様に腕が中を彷徨う。
やがてかくんと糸が切れたマリオネットのようにその動きが完全に経たれた。
活動を停止した使徒。
それでも初号機は不気味な雄たけびと共に、それを地面に叩き付けた。
「くそ…っ…何で言うこと聞かないんだよ!?」
何を…一体何をしたんだよ!!父さん!!
どうして…もうシンクロはカットされてる筈なのに!!
初号機はぐったりと意識を失くした使徒の上に跨り、拳を叩きつける。
叩き潰された頭部から血が大量に溢れ、
その勢いで近くにあったトラックを押し流した。
「父さん!やめて!!やめてよ!こんなの嫌だっ!」
何の感情も理由も無く、初号機の拳はただ振り下ろされる。
装甲が機体から剥がされる嫌な音がする。
腕が引き千切られる鈍い音がする。
肉が潰れる不快な音がする。
耳を塞ぎたくなる様な音の中で、さらに耳障りな音が響く。

こんなときに…ッ!!
なんだよ…なんなんだよ!!

「止まれっ!止まれ止まれ止まれ止まれ!!」


そして気付いた。
ああ、この音は。


私の声だ。



333:621の続きで
06/09/15 22:36:33
ちょっと明日から出張なんで、次は月曜か火曜の夜に投下しますノシ

334:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/15 22:46:17
>>330
>「シンジ…傷つけるわけには…いかへんのや…!」
トウジ(つД`)

335:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/15 22:46:54
ちょっとひいた

336:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/15 22:59:10
まぁ、もうすぐ死ぬから


乙です

337:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/16 00:27:43
>>336
そんな悲しいこと言わんといてえな

338:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/16 00:36:11
だから全部終わったら何かするっていうのは
絶対叶うことが無いと母ちゃんあれほど(ry

さよなら…トウジ。お前のことは忘れない

339:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/16 07:11:28
今までご苦労様、トウジ。バイバイ

340:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/16 08:52:17
みんな死ぬの限定だなww



俺もだけど

341:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/16 11:24:19
トウジが死亡で終了でいいよ
カヲル殺しは見たくない

342:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/17 15:25:50
>>341お前の都合なんか知るかよ

LOSスレから飛んできましたがこれはよいSSですね。
どっかでチルドレンのナンバーが入れ替わってるSS見たけどあれのバルディエル戦も鬱だったなあ

343:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/17 17:33:37
カヲル殲滅wktk

344:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/17 18:31:36
この調子でどんどん書き手が現れんかな。
バイオレンスな後転TS物読みたい。
貞エヴァで有ったように、事件を起こして親父を呼び出してやると思ってグレて
暴力沙汰を起こすが、ゲンドウが選んだ保護者もなかなかの権力者で、事件をもみ消してしまう。
逆にそれに反発したシンジは、さらに事件を起こそうとするが、そういう態度が
保護者に事件をもみ消してもらえるから調子に乗って暴れてると思われ、数名の不良にリンチを食らう。
満身創痍ながら、そばに落ちていたバットで帰ろうとする不良に反撃し、洒落にならん大怪我を負わせ、
もみ消しも出来なくなり、保護者も愛想をつかし、ゲンドウの元に送り返すが、そこにちょうど使途が攻めてくる。
ゲンドウはシンジをエヴァに乗せる気は無かったのだが、レイがやられ、仕方なくシンジ出撃。
シンクロ率400%暴走、溶けて、サルベージしたら女になった。
男子の制服のまま学校に行くことになり、何時もの通りトウジに殴られイベントが起こる。
普段のシンジなら、一撃目も軽くかわせるのだが、女性化したことで足が竦んでしまい、かわすが尻餅。
そんな自分が許せずトウジに反撃し、経験の差で圧倒するのだが、いかんせん非力な肉体で決定打が打ち込めず
もみ合ってるうちにマウントを取られ、上から殴られそうなところを思わず女みたいというか、女らしく悲鳴を上げてしまう。
キャーとかイヤァ。
そんな悲鳴を上げてしまった自分が悔しく女の子っぽく泣き出してしまい、それも悔しくてさらに泣く。
トウジはパニック。超殴られ損。
みてーなの読みたいんですけど、僕の熱意は伝わりましたか?
たとえるならDISTANCEミカエル計画

345:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/17 19:00:32
>>344
そこまで熱意(?)があるなら自分で書け。

346:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/17 19:11:58
そーだそーだ

347:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/17 19:13:39
きちんと題名をつけてくれれば言うことは無い

348:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/17 19:27:19
>>344
でもシンジきゅんって一歩間違えればそういう不良少年になりかねないよな

349:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/17 19:28:09
>>344理想郷にでも逝ってこいよ

350:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/17 20:56:32
>>349
つチラシの裏

351:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/17 21:09:25
甘系の女シンジならなんでもいいよ

352:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/17 21:46:54
>>351軽く同意

353:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/17 22:04:49
甘系とはどんな感じ?

354:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/17 22:36:28
>>353そこなんだよな、漏れもあんまイメージが湧かない。
他のキャラよりもよっぽど女の子が似合うとは思うんだが元が男だからなぁ…

355:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/17 23:15:11
>>344の妄想読みてー、とか思ったのは俺だけでいい

356:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/17 23:24:07
>>354
貞シンジはツンデレだし、
庵シンジは庵シンジで仲良くなるまではハリネズミ
仲良くなっても毒舌


甘系が具体的に分かれば書きようがあるけど

357:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/17 23:31:17
>>356わかる気がする

358:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/17 23:43:15
既存の女性化FFでいえば碇カスミなんかが甘系ではないか?

359:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/17 23:51:01
激甘だったな

360:344
06/09/17 23:52:35
まぁ、微妙にダメっぽいけど
つまり下六行ぐらいの部分が
読みてーのだ。

361:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/17 23:53:24
>>358
どんなんだったっけ?忘れちった

362:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/17 23:57:45
>>360
ミニスカセーラー服の警棒を持ち歩いてるベリーショートツンツンシンジきゅんしか思い浮かびません

363:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/18 01:16:08
>>361
俺も知らんのでぐぐった。今から読んでくる

364:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/18 01:55:57
>>361
レイと病院で感極まってキスしちゃってミサトに見られちゃったり
パイロットを下ろされるからもう会えないと
アレしちゃたり、えろいレイに頬染めちゃうみたいなFF

俺が言った甘系っていうのは
かなりファンフィクションのフィクションが強いから
非難されそうだから言うのやめとく。
とにかくイタモノとかシリアス路線はお腹いっぱいと言いたかった。
バカネタとか軽い感じのデレな女シンジが見たいのだ

365:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/18 02:09:49
>>364
俺的にはシリアス路線も好きだけど…
>バカネタとか軽い感じのデレな女シンジが見たいのだ
ここには激しく同意。

366:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/18 02:20:27
あ~、カスミってレイと百合になるやつか。今思い出せた

367:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/18 09:55:57
甘系好き多いなぁ・・・。
情緒不安定でツンツンツンデレぐらいが。
強く在ろう、強く在ろう、強く在ろう
でも、やっぱり私は女なんだなぁ。
見たいに苦悩するのに萌えを感じるの。

368:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/18 10:19:36
>>364
ああ…あったなあ
しかし白痴みたいに感じてしまうんだよな
甘系は一歩間違えれば

369:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/18 12:21:46
シリアスも好きだが、エヴァGのように一作でシリアスもバカも熱血もパロも楽しめるような
ごった煮のような作品が好きだったりする。

370:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/18 13:10:01
シンジの姿を追い求めようとすると、シンジからあまり剥離したキャラが出来にくくなる
カスミやユイやめたもるシンちゃんみたいな

371:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/18 19:48:22
カスミは原型キャラもかっこ「ごめんね」が口癖だったから笑えた。

372:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/18 23:21:39
シンジと似ても似つかない女シンジを見て楽しいのか?
かわってるな

373:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/18 23:28:29
そこが文字のつらいとこだよな。絵が本当にシンジにそっくりだったらオリキャラ度も少しは抑えられるんだが…

374:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/18 23:47:19
>>372
SSや絵が書けない以上
所詮は作者の妄想の尻馬に乗っかる事でしか楽しめまい。

>シンジと似ても似つかない女シンジ
可能な限り脳内で理屈変換している。
中には余りにもかけ離れすぎていて、萌える事ができない女シンジもあるが……。


375:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/18 23:50:08
普段投下系のスレ見るくらいで、個人サイトのFF読まないからなぁ
そんなにかけ離れてるの?
原作みたいな良い女シンジきゅんはおらんものか
前投下してくれた絵師がまたこないかな?
そして、バル戦の続きはまだかな?

376:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/18 23:56:08
シンジを女にするとき、そのままじゃアレだから名前変えるよな
そのときレイは大丈夫だけど、全然違う他の名前になった女シンジきゅんだと
イマイチシンジきゅんの姿として脳内変換できない俺は
まだ修業が足りないのだろうか?

377:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/19 00:07:33
似ても似つかないって女シンジに対するものか?
個々の作品に対する批判ならまだしも。
いまいち頭ごなしに感じる。

378:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/19 00:21:13
いや中には物凄く違う女シンジきゅんもいるって話じゃないのか?
何かどっかで見た18禁のトウジ×女シンジきゅんの碇ユカだっけか?
俺はあれくらいかけ離れてなきゃいける

379:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/19 00:26:50
シンジのような女シンジと
立ち位置だけがシンジの女シンジでは全然違うよな。

前者は内罰的、内向的な性格を含んでいたりしてまだ何とか脳内変換できるけど
後者は無理。
挌闘家風味の女シンジにどうやって萌えろと……。

380:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/19 00:46:45
後転TS好きとしては
名前もシンジで全然おk

381:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/19 00:51:49
>>376そんなことはない、それが普通

382:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/19 00:53:47
>>379
俺が言いたいことを言ってくれてありがとう

383:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/19 01:04:08
>>380かなり同意

384:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/19 01:16:19
今の投下作品のシンジきゅんはいい感じだけどさ、
カヲルが貞カヲだったら血を見るような気がする

385:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/19 02:17:02
貞カヲvs貞女シンジきゅんのバトルも見てみたいww
無理やりキス(過呼吸の治療)してシンジきゅんにビンタされちゃう貞カヲwww

386:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/19 08:25:08
シンジきゅんの唇を奪うなんてお父さんは許しませんよ
前歯折ってやるっ

387:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/19 11:42:18
>>379
その「格闘家風味の女シンジ」の最たるものがエヴァGだがな。
ありゃドモンとその他もろもろがくっついて、元のシンジの性格はほとんど消えてる。
たまに出ても、おそらく作者が元の性格が嫌いなんだろうが、とても皮肉げに書かれているな。

まあ俺はそんなのであってもシンジであれば萌えられるし、ああいう作品の雰囲気も好きだ。
女シンジならなんでもおkがこのスレだろう。

388:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/19 11:46:31
>女シンジならなんでもおkがこのスレだろう。

女シンジと名前がつけば性格が別人でも
似ても似つかない外見でもおkなスレではないはずだがw

389:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/19 11:54:37
可愛い子って可愛くない

390:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/19 12:29:27
欝でちょっと毒舌で仕草が可愛い原作のシンジきゅんがそのまま女の子になったような
女シンジきゅんじゃなきゃ受け入れられないな
格闘系元気娘なシンジきゅんじゃダメだ

391:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/19 13:12:12
>女シンジならなんでもおkがこのスレだろう。

>>1を読め

392:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/19 13:34:30
他人の趣味に要らざる口を出すな、ってことだが?
別にそういうSSをうpしてるわけでなし。

393:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/19 13:43:58
うん

個人的には趣味は一致しないが、別に>>1で特定のシンジきゅんを定められてるわけでもないし。
まあ女シンジ好きとシンジストを兼ねてる奴も多いですから

394:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/19 15:04:21
スパシン嫌いな人間は>>372みたいなのは嫌悪しそうだ

395:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/19 15:25:09
なんかわかる気がしないでもない

396:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/19 15:48:44
何かここ数日互いの理想のシンジきゅん感を語るのはいいけど
ちょっと自分の中の理想像と違うと、否定傾向になってない?

397:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/19 16:26:25
それは言える。シンジらしくないシンジ、というのは確かに否定されやすいが
それが好きな人間が少数ながらいるのも事実。
他人は他人で、互いに貶さないのが一番の共存方法じゃないかね。
そういった別ジャンルのシンジに関する文章を読むことすら耐えられないのなら、そもそもNGワードにでも放り込めばいいだけ。
>>379>>388のようなレスは場を荒らすだけだ。

398:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/19 16:30:40
>>396おまい良いこと言ったww
まぁな、みんな女シンジきゅんの理想を否定されると普通の人が理想の彼女を否定されたみたいでいらっとくるんジャマイカ?
もう少しもちついたほうがいいとはおもうが…

399:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/19 17:02:30
語るのはいいが否定するのはね

400:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/19 17:05:05
以下落ち着いたところでwktkしながら職人待ち

401:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/19 17:13:25
そうだなwktkして続きを纏う

402:621の続きで
06/09/19 21:05:10
血の匂いで吐きそうだ。
雨のように、命の欠片が降り注ぐ。
ビルに。道路に。信号に。
飛び散った赤い雨は川に流れ落ちる。
全てが赤く染まる。
空も街も何もかもすべて。

「トウジ!返事してよ!このままじゃ…殺されちゃうよ…!!」

初号機は目の前の「参号機だったもの」を蹴り付ける。

何度も何度も何度も何度も何度も何度も。

「ふ…うう…う…ぅ…」
泣いたってどうにもならないことを、10年前のあの日に知った。
父さんに捨てられたあの日に。
だけどあの日と同じように、流れる涙は止まらない。
零れ落ちた涙は膝に落ち、レンズのように光った。
「お願い…止まってよ…」
掠れた声にならない声で呟く。
誰か冗談だって言って欲しい。
こんなの悪い夢だよって…。


403:621の続きで
06/09/19 21:08:07
ふいにあれだけ響いていた嫌な音が止んだ。

突然訪れた静寂に顔を上げる。
目の前にあるその形を認識して目を見開いた。
初号機の手に握られた、白いエントリープラグ。
命が入っているそれ。
トウジが乗っている。
そこに彼はいる。

「やめて…」

掠れた声で呟いた。
届かないとわかっていても。


『トウジの奴、反省してた』


夢みたいな解法を待っている。こんなにも望んでいる。


『妹に怒られたらしいよ。私達を救ってくれたのは、あのロボットなのよって』


そんなこと望んでも起きやしないことは、よく解っているはずなのに。




404:621の続きで
06/09/19 21:09:19
青い空の下、太陽みたいに笑う少年。


「うわぁあぁあぁああぁあああぁあぁあぁあああ!!!」
 

――神様は、どこにいるの?



『神様なんておらんからな。自分の力でやらなあかんねん』













     トウジ


405:621の続きで
06/09/19 21:10:22
『参号機回収班より連絡』

太陽は沈んでしまった。
最後の陽の光も随分前に消えてしまった。
黄昏は黒に染まってしまった。
夜が来る。

それなのにここは真っ白に明るい。
真っ白な、真っ白な、目も眩む様な白い世界。
白熱灯に照らされた世界から、声が響く。

『20時07分。参号機パイロットを確認』
『頭部裂傷。右足切断。脾臓破裂』

『心音、脈拍、共にありません』

状況だけを伝える、無機質で無関心な声。
醜く歪曲しLCLに塗れたエントリープラグから
人形みたいに青白い肌をした人が引きずり出された。

最後まで私達の間には距離があった。
血に塗れた君の横顔。
虚ろに開いた君の目を、知らない回収班の調査員がそっと閉じた。

もう何も映すことはない黒い瞳。


その目が私を見ないのは、トウジが私を拒絶しているからだと漠然と思った。

406:621の続きで
06/09/19 21:11:16
『ダメです。初号機の連動回路、カットされました』
『シンちゃん!聞こえてるか!?ああしなければ、君がやられていたんだぞ!?』

「わかってるよ…そんなこと…」

声が震えてしまうことに酷く嫌悪を感じた。
頭の中は、驚くほど真っ白で何も考えられないのに
身体が収まらない。爆発してしまいそうだ。
わかってる…そんなことわかってる…。
だけど…!
「私はその方が良かったんだ!!」
声と同時にレバーに力を込める。
残された予備電源はあと185秒、これだけあれば本部の半分は壊せる。
壊れてしまえばいい。
父さんが築き上げたものなんて。
あいつの大事なものなんて。
私が全部壊してやる。
父さんが…!
父さんのせいで…!!
「うっ!…がはっ…!!」
突然息苦しくなり、呼吸がままならない。
薄れゆく意識の中で感じたのは、怒りと憎しみ。

ちくしょう
ちくしょう
ちくしょう

ちくしょう!!

407:621の続きで
06/09/19 21:12:22
どこか遠くで音が聞こえる。
菜を刻む包丁の音。
コトコトと煮える鍋の音。
フライパンをかき回す音。

「今度のお弁当は…ちゃんと食べてくれるかなぁ?」
夕暮れ時、オレンジ色の光に照らされて楽しそうに料理をする細い背中。
その背中に手を伸ばそうとした瞬間、光は閉ざされ暗転した。
目の前にいたのは、悲しそうな目をした見知った一人の少女。
「碇さん、鈴原知らない?ずっと探してるんだけど、いないのよ」
小さな掌に、少し大きめのお弁当箱を抱え込んで呟く。
「碇さんが鈴原を隠したの?」
ちがう
「碇さん、鈴原君を…返して」
ちがう
「碇さんが隠したんじゃないの?じゃあ、鈴原君はどうなったの?」
私じゃない!
トウジを殺したのは私じゃない!!
「殺した…?鈴原君死んだの?」

目の前で、失われた命。

「返して」
「返して」
「返して」
「返して」

声は止まない。


408:621の続きで
06/09/19 21:13:15
違う。違う。違う。
私だって返して欲しい
そうだ…私のせいじゃない

私はやめてって、嫌だってあんなに言ったのに…

父さんが!

父さんがトウジを殺したんだ!!


悲しそうに、淋しそうに、哀れんだような委員長の瞳。

叫んだ言葉は真っ暗な空間に耳障りに響いただけだったけれど、
私は聞こえない振りをした。


自分の叫び声で目が覚めた。
飛び込んできたのは、真っ白な天井。
夢を見ていたような気がする。
嫌な夢。
「気が付いたみたいだな」
病室の隅にいた加持さんが声をかける。
私はあのままエントリープラグから強制排除され、
裸の状態でベッドに寝かされていた。
それを恥ずかしいと思う前に、加持さんは言った。
「司令が話をしたいそうだ。
 気は進まないだろうが、意識が戻り次第這ってでもくるようにとの仰せだ」

409:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/20 01:12:49
もう何かほかの読みたい

410:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/20 01:26:18
超乙!!!やっぱトウジ死んじゃったか
これからの展開がかなり気になるよ

411:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/20 01:35:20
あんだけサムいセリフを連呼して生き残ってたら立場がないだろ
コメディーなら逆にありかもしれないが

>>409
そういういらんカキコはせんでよろしい

412:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/20 01:38:12
あのまま生き残って結局悲恋で別れたら
補完のとき迎えに来るのがカヲルじゃなくてトウジになっちまうwwww

413:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/20 01:54:45
巨大トウジが「もうええのか?」とか言いながら出現するのですか

414:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/20 01:58:10
でもそれはほんの一瞬で、真っ白な巨大トウジが再び綾波に戻るのですね




見たくない

415:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/20 02:04:31
せっかくのカヲルの見せ場がなくなるよ…

416:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/20 02:05:44
カのことだから普通に心の隙間に入り込んでくるんじゃないの?
あいつはそういう奴だ

417:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/20 02:10:32
EOEとは限らないぞ。
テレビ版の学園エヴァ→私はここにいてもいいんだ!→おめでとうエンドかもしれん。


418:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/20 02:16:35
確かにEOEカヲルの役どころがトウジに変わったらはっきりいってキモイな

419:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/20 02:45:09
あー、トウジ死んじゃったんだ…

420:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/20 02:53:43
逆に言えば生き残ったらトウジを補完するのはシンジきゅんになってしまう。

421:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/20 05:04:02
加持の立ち位置が凄まじくうらやましい件

422:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/20 07:11:22
>>418
カヲルの位置じゃなくてアスカの位置じゃないのか?
他人とか異性の象徴
カヲルとレイは分かり合えるかもしれない希望


>>420
裸のシンジきゅんがトウジを抱きしめてパシャですか?

423:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/20 07:43:47
別に裸じゃなくてもいいじゃん。マヤのりったんや日向のミサトは服着てたしwww
それがトウジの望んだレイの姿。
トウジの願いそのものだったらLCLの海から引き摺りだして殴る

424:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/20 08:26:19
加持→シンジもいいなあ
で、それにアスカを絡ませると


425:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/20 08:44:54
次回は「女の戰い」か。

426:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/20 08:59:53
>>424
複線もナシに今更絡められんだろ

でも、シンジがエヴァを降りた後、再び乗る動機はどうするんだろ
漫画版の加持の言い分ですらキツかったのに、ましてや相手は女の子

427:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/20 10:12:36
シンジきゅん…かわいいよぉ

428:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/20 11:21:55
>>426
それでも・・・それでも職人なら何とかしてくれる!!

429:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/20 20:04:43
ワクテカ

430:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/20 22:12:31
展開そのものにまったくオリジナリティがないからな。
なんか性別が単に変わっただけ、でしかない。

まあ、だからってスパシンTueeeeeになっても困るというジレンマ。

431:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/20 22:15:27
口調を変えてだけの性別逆転スレのよりはましかと

432:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/20 22:18:28
どこまでの改変なら許せる?

433:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/20 22:21:01
>>431
あそこ落ちたし

434:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/20 22:21:30
>>430
そう、だから展開に多少違和感が出ることも



しかし、本編シンジはこの女シンジよりヘタレというレスがあったけどやってることは一緒なんだけどな
やっぱ性差ってのはデカイんだなあ…

435:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/20 22:24:36
他に職人は来ないのかい?

436:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/20 22:30:49
そういうレスするもんじゃないよ

437:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/20 22:33:10
だってこのままオリジナル展開ないままEOE行くの?
かなり長いぞ?少なくともカヲル殲滅までは行くみたいだし

438:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/20 22:33:16
それじゃ誰も投下するなって言ってるようなもんだ

439:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/20 22:37:49
元々過疎スレじゃん

こうやって職人さんが毎日投下してくれることが嬉しいけどなあ

440:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/20 22:44:51
>>65の続きってどうなったんだ?

441:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/20 22:45:59
このスレみたいに職人が居るだけ幸せだと思うけどな。
良スレでありながら、話途中で星のように消えたスレがいくつあった事か・・・

442:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/20 22:56:08
今の投下作品って、確か前スレでこういうのが読みたいっていうレスがあって
じゃあ書くよって投下してくれるようになったんじゃなかったっけ?
それもほぼ毎日投下。オリジナル展開なくても面白いと思うけどな

443:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/20 23:00:42
本編再構成ってやつだな
間違い探し的に細かい差を探すような楽しみ方をするという

読者も何人もついてるようだし、NGワード登録できるように題名も付けてくれてるんだから、
NG登録しておとなしくしているよろし

444:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/20 23:09:17
今はこの職人さんのやつの方が全然見たい

445:621の続きで
06/09/21 00:27:45
「思ったより元気そうだな」

背を向けそう語る父さん。
ゆっくりと振り返り、私と向き直る。
どんな顔をしているのかと思った。
私にあんなことをさせた父さんが、どんな表情で私を見るのか興味があった。
「命令違反。エヴァの私的占有。それによる本部施設の一部破壊。
 これらは全て犯罪行為だ。…何か言いたいことはあるか?」
ただ要点のみを伝える父さんの声。
そこには何の思いも感情もなかった。
「父さんこそ…私に何か言いたいことがあるんじゃないの…?」
そんな何もなかったように淡々と。
自分にとってはとるに足らないことだったかのように冷静と。
どうしてそんな風に私と向き合えるの?

「何のことだ?質問してるのは私だ」

考えるよりも早く身体が動いた。

「シンちゃん!よせ!こんなことしてもなにもならない!」
だけどその腕は加持さんの逞しい腕に掴まれ、行き場をなくした。
「離して!離してよ!」
こんな彼の掌一つで収まってしまう様な細い腕で何をしたって変わらない。
こんなことしたって、父さんは私のことを何とも思わない。
現に父さんは無表情でただ私を見ている。
逃げるわけでもなく、止めるわけでもなく。
涙が流れた。悲しみとも怒りともつかないそれ。
「私はもう…エヴァには乗りたくない!!」
浅く息づく呼吸の中、搾り出すように声を出す。
「もうエヴァには乗れない!ここにもいたくない!!」
ぽろぽろと頬を伝う生ぬるい水が邪魔に感じた。
この涙は、誰のため?…自分のため?

446:621の続きで
06/09/21 00:29:29
「父さんの顔はもうみたくない!!」
「わかった。ならば出て行け。お前には失望した」
良く響く低い父さんの声。
「もう二度と会うことは無いだろう」
喉まで何か言いたいことが出かかったが、歯を食いしばって耐えた。
きっと、この声はもう届かない。この腕ももう届かない。
踵を返し、私は司令室を出た。


「もう一度考え直す気は無いの?」
「ありません」
ずっと願っていた。
手を伸ばせばすぐそこに誰かがいる生活を。
「鈴原君のことは、わるかったと思ってるわ。彼が自分で選んだとはいえ…。
 どんな言葉で取り繕っても貴方の傷は癒せないでしょうけど」
だけど今の私とミサトさんは一定の距離をおいて話をしている。
「けれどこれだけは覚えておいて。あたしは貴方に自分の夢・願い・目的を
 重ねていたわ。いえ、あたしだけじゃない。それが貴方の重荷になるのが
 わかっていても、あたしたちはそうするしかなかったの」
伏せ目がちだったミサトさんは目線を上げて私をみると
はっきりとした口調で話し出した。
それが何だか煩わしくて、私は口の端を少しだけ上げた。
「ミサトさんの夢って…願いってなんですか?」
嘲笑みたいになってしまうのはしょうがないことだと思った。
「人類の平和ですか?人の命を踏みつけにしてまで?」
トウジが自分で選んだ?
エヴァに乗ることを選んだのは私や彼の意思でも、
そう仕向けたのは他の存在による力なのに。
そう、父さんやミサトさんや…他の大人の。
「人の命の重さはおなじなのに?」
「ごめんなさい…勝手な言い分だったわね」

447:621の続きで
06/09/21 00:33:00
そこまで言うと、今までじっと私を見つめていたミサトさんは
初めて目を逸らした。
「本部までのパスコードとあなたの部屋はそのままにしておくから」
「無駄です」
あそこはもう私の帰る家じゃない。
私はもう、エヴァには乗らないから。

「さよならミサトさん」


空が青い。
高く澄み切った空。
蝉が鳴いている。
見上げてみると、頭上には太陽と白い雲。
日の光は惜しみなく降り注ぐ。
いつもと変わらない町並み。

そう何も変わらない。

私がエヴァに乗るのをやめても、友達が死んでも。


448:621の続きで
06/09/21 00:36:30
それなのに、青いはずの空は何故か色をなくした灰色に見えた。
あの頃の。昔の私の世界のように。
昨日までの私は怒りと憎しみで出来ていたのに、今はもう何も感じない。
もう私には「何も無い」
大丈夫。最初に戻っただけだ。ここに初めて来た頃の私に。
そう、きっと大丈夫。私は生きていける。
ほら…もう皆の顔も思い出せない。
トウジの顔も思い出せない。

――トウジ

――彼はどんな風に笑っていたっけ?

「幾らなんでも悲しいはずなのに…もう涙も出ないんだ…」
謝る代わりに風で翻るスカートを握り締めた。
その時けたたましいサイレンの音が当たりに響いた。

十字の光の柱が幾本も立っている。
あそこに使徒はいる。あの光の柱の数だけ街が破壊されている。
その光景は目に入ってはいたが、私はどこか別の世界のことの様に見ていた。
そう思い込もうとしているのかもしれないことは考えないようにした。
頭上を幾つもの戦自の戦闘機が白い飛行機雲を靡かせながら飛んでいく。
あんなもので敵を倒せるのだろうか?考えるのはそこまでにした。
だって、私はもうエヴァには乗らないって決めたから。
思考を打ち切ろうとすると、誰かが私の腕を強く掴んだ。

449:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/21 01:49:51
この時期のシンジの感情って、読み直すたびに違和感があるなあ。
まさか初陣もせず死ぬことは考えてなかったとはいえ、トウジなりに覚悟を決めて乗った以上
その覚悟を尊重するのもひとつだと思うが。
原作シンジなら、トウジがエヴァに乗った経緯を具体的に知らなかったからまだしも。
4話あたりで書かれたクラスメートの作文の冷静さとえらいギャップがある。

450:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/21 02:01:58
モツカレー

451:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/21 02:15:42


親友が死んだ重みに耐えられへんたのだろ

452:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/21 02:32:33
>>449
シンジが元から第三新東京市の市民ではない、
つまり急に戦時体制下に放り込まれたただの子供であることを忘れないように。

453:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/21 02:39:17
>>449
ぶっちゃけまだシンジきゅん達は14の子供だぞ?

454:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/21 02:50:31
中の人のひととなりを知っている身からすると

あの1/3で良いから男らしさを分けてやれれば熱血風主人公になったのにと言う考えが離れない。

銀河にほエロ! はショックだったなぁ。

455:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/21 02:55:30
シンジはオナニー好きな一介の中学生に過ぎないことを忘れちゃいかんね

456:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/21 03:16:20
オナニーやって自己嫌悪するぐらいのシャイボーイさ

457:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/21 03:28:57
トウジの遺体ってどうなったのかな?
無難に使徒に侵食された人間としてサンプル保存か?
委員長達見てると本編で葬式やったって描写ないし。

458:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/21 03:37:21
なんか前も似たようなレスあったな

>>456
馬鹿。このスレだったらシャイガールだろうが!!
誰をおかずにして自己嫌悪?

459:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/21 05:50:58
トウジの件で精神崩壊したヒカリの病室で。
最低。私って・・・ とか。

460:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/21 08:54:37
>>454
熱血なシンジきゅんなんて見たくない

461:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/21 10:05:06
愛と正義のためってのが熱血だと思ってるんだけど
怒りと悲しみと憤りで戦うのって
熱血って言うのかな?

462:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/21 10:38:01
理由はどうあれ熱い血が燃えていれば熱血。
島本和彦を嫁。
>>457
そもそも一般人にはトウジが死んだことすら知らされてないんじゃないか?

463:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/21 12:24:17
ネルフこぇぇええ

464:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/21 12:33:54
でもトウジの親ってネルフ職員だよな?
ネルフ恐いよ。ネルフ。

465:NGワード登録推奨
06/09/21 17:42:15
>>344
をみて初めてSSというものを書いてみた。
落ちがない、中途半端なTSものだからNGワード登録を推奨する。

466:NGワード登録推奨
06/09/21 17:43:19
『僕はいらない子供なんだ』

今から転入する学校に行く途中ふとそんな事を考える。
前の家で散々事件を起こしたが、唯一の肉親である父親は結局来てはくれなかった。
今回は傷害事件を誤魔化しきれなくなった自分を叔父夫婦は父の元に送り出したのだ。
内心はっきり言って父に会えると少しだけ喜んでいた。
だがそんな物はすぐに消えてしまった。
父の元へ着いたらわけのわからないロボットそう『エヴァ』とか言うものに無理やり乗せられて、散々痛い思いをしたと思ったら気を失って、病院のベットで気がついた時には自分の性別が変わって居た。
何日間か体の検査の為に入院していたが父は僕のお見舞いには来る事はなかった。
偶然見てしまったのだが、父は自分と同い年くらいの少女にお見舞いに行っていた。
とてもそんな父と同居する気もせず、なし崩し的に父の部下の家にお邪魔することになった。

「馬鹿みたいだ…」

ぐるぐると思考の海に沈んでいた事に嫌気がさし一人呟いてみたが、気がつくと職員室に到着していた。

「碇シンジです。よろしくお願いします」

無難なあいさつをして転校初日の挨拶を終える。
席に着く時にワイシャツの隙間から見えた包帯に目を落とすと昨夜の光景が思い浮かんだ。


467:NGワード登録推奨
06/09/21 17:44:45
「シンジ君かわいいわね~お姉さん惚れちゃうかも」

目の前の女性ミサトさんはビールを飲みながら僕に話しかけてきたが、その言葉は聞き捨てならなかった。

「僕は男なんですよ。かわいいなんて言われてもうれしくないです!」

すぐさま反論するが、目の前のミサトさんは気にせず話を続けてきた。

「でも今は女の子でしょ~これはお父さんからプレゼントよん」
「女子の制服…ID…碇……レ…イ? な、なんですかこれは!?」

渡された物は女子の制服と下着、碇レイと書いてあるIDカード。
薄々意味がわかってしまったが聞かずにはいられなかった。

「シンジ君明日から学校だから困るでしょ? 女の子になってしまったんだから女の子の制服とIDよ」

なおも目の前のミサトさんはビールを飲みながら楽しそうに続ける。

「なんだってあの子の名前なんですか!? 僕は男なんでこんな服いりません!!」

そういくら僕が女の体になってしまっても精神的には男なのだ、しかも名前が父が僕より大切にしている子とまったく同じ…そんな物受け入れられるはずがなかった。
しかも鏡で見ると僕は綾波レイという女の子と似ているのだ。
そこが何より気に食わなかった。

「ごめんね…シンジ君の気持ちもわかるけど……学校どうするの? その胸と体つきはどうみても女の子よ」
「胸に包帯でも巻いていきますよ! 僕はあの子の名前なんて名乗りたくない!」

ミサトさんはビールを飲むのを止めて深刻そうな顔で話しかけてきたが、僕は結局怒鳴る事しかできなかった。

「胸の形崩れるちゃうのに…いいの?」

最後のミサトさんの言葉は無視する事にした。

468:NGワード登録推奨
06/09/21 17:46:03
<ピピピッ!>

また思考の海に浸っていた僕を現実世界に返したのはパソコンのメール音だった。

<碇君って本当は女の子なの? Y/N>

内心かなり動揺したがNOをクリックする。

<碇君は綾波さんの親戚? Y/N>

知らない…彼女と父の関係は僕が知りたいくらいだ、もちろんNOをクリックする。

<碇君があのロボットのパイロット? Y/N>

少し考えてみる…周りを見てみると後ろの女子が手を振ってきた。
これはYESだろうと思いYESをクリックした。

「ねえねえ、どうやって選ばれたの?」

「テストとかあったの?」

「怖くなかった?」

「必殺技とかあるの?」

YESと答えた瞬間に黒山の人だかりができた。
かなりびっくりしたが…こういうのも気分は悪くなかった。
前の学校だと事件ばかり起こしていたので、学校にいてもこんなに質問されるのも初めての事だった。

469:NGワード登録推奨
06/09/21 17:49:04
放課後呼び出しを食らったので校庭に向かう。不良という奴はやはりどんな学校でもいるらしい。
こういう奴は徹底的にやるしかない。やらないとこっちがやられる。
校庭の中庭に着くとジャージの男が殴りかかってきた。すぐさま避けるが、思ったように体が動かず尻餅をついてしまった。

「何よけてんねん! 女みたいな顔して…またんき付いとるのか?」

今の言葉は許せない。近くに落ちている小石を握り込み立ち上がると同時にジャージの男を殴り飛ばした。

「僕は男だあやまれ!! 前歯全部折ってやる!!」

ジャージの男はすぐさま立ち上がると胸倉を掴んできた。もみ合っているうちに馬乗りにされてしまう。
前の体なら押し返して逃れる事ができたのに、今の非力な体ではビクともしなかった。

「すまんな転校生、わしはおまえを殴らなあかん。殴らなあかんのじゃ」

470:NGワード登録推奨
06/09/21 17:50:01
「いやぁああ!!」

殴られると思った瞬間声が出ていた。自分の出した声があまりにも情けなくて涙がでてきた。

「転校生……おまえ女なんか?」

胸倉を掴んだ拍子にワイシャツのボタンが取れてしまい、もみ合っているうちに包帯が取れてしまっていたらしい。
僕の中学生にしては大きいそれがワイシャツの間から顔をのぞかせていた。
ジャージの男と連れのメガネは困惑した顔でこちらを見ている。

「あなた達何をやっているの?」

ふと目線を声の方に向けるあの子がこっちを見ていた。
泣き顔をみられてしまった事が悔しくてさらに涙が出てきた。
とめようと思う程逆に涙はあふれてきた。
少し怒った顔をした彼女は僕の上に馬乗りのままになっているジャージの男に蹴りをいれた後

「非常召集………先行くから」

とだけ言って去っていった。
僕は彼女に助けて貰った事を理解すると、涙はとまり不思議と安心した気持ちになった。
伸びてるジャージ男と呆然とするメガネ君を残しすぐさま彼女の後を追った。

471:NGワード登録推奨
06/09/21 17:56:12
正直すまんかった>>344の内容を誰か書いてくれ…実は俺も読んでみたいんだ。
俺が書くと中途半端で落ちがない。>>344こんなんでよければ読んでくれ。
むしろ書いてくれ。

472:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/21 18:01:10
もっとひねくれてツンツンの、貞シンジ強化版みたいにすればいいんじゃないか?


473:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/21 18:51:08
ちゃんと書かないと難しいよな。ひねくれ具合ひとつをとってもいき過ぎると最低系になりかねないし

474:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/21 21:25:42
>>472
それだと単なる、周囲すべてに噛み付く狂犬のようなガキの一丁あがり。

475:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/21 22:15:49
トウジ「スマンなぁ…転校生。ワシはお前を殴らないかん。殴っとかな気がすまへっ…んっ…のっ…やあ!!なっ、避けんなアホ!!」
シンジ「やだよ…だって殴られたら痛いじゃないか」
トウジ「ここは男としておとなしゅう殴られんかい!!女みたいな顔しやがって、マタンキついとるんか!?」
ピクッ
シンジ「お、女みたいだって…?」
トウジ「へ?」
ドガァッ
トウジ「ふ、ふぐっ」
シンジ「僕のっ」
ドゴォッ
トウジ「うがぁ」
シンジ「どこがっ」
ベキィッ
トウジ「お、おぅっ」
シンジ「女みたいだって言うんだよっ!?」
トウジ「うげぇっゲホッゲホッ…」
シンジ「かかってきなよ…いくらでも相手してあげるよ…」
トウジ「お、おのれぇ…覚悟せぇよ…」




き、狂犬シンジ…?

476:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/21 22:18:01
あーなんか面白いかも・・・

477:475
06/09/21 22:25:36
そ、そうか?
うーん…

478:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/21 22:28:47
本気で長編やられたら引くかもしれんがなw

479:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/21 22:34:00
実際問題男のときにあれだけ体格差あって、さらに女になってからだったら
トウジがよっぽど油断してない限りボディに入れるのは難しいと思うんだよな
途中で止められそう。パンチかましても大したダメージは与えられないというか

480:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/21 22:34:19
最低系かw

481:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/21 22:34:39
なんか、チキンと言われるとキレちゃうマーティ・マクフライを思い出した
女みたいだとか言われるとキレて、相手をボコボコにwあ、これカミーユ…

482:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/21 22:36:56
>>479
虚構には不可能はないのさ

483:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/21 22:37:34
>>479
三寸切り込めば人は死ぬ。

つまり急所を狙えば…

484:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/21 22:50:47
馬乗りになられたとき膝立てればいいじゃん

485:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/21 22:52:23
たしかにカミーユだな。
急所…トウジのマタンキが大変な事になってしまうぞ…

486:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/21 22:55:06
何かトウジって色々使い勝手のいいキャラなんだなぁ

487:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/21 23:13:58
関西弁というだけで強烈な個性を醸し出し、なおかつ熱血おばかさん
使いやすいな

488:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/21 23:29:59
ジャージ、関西弁、熱血バカ、鈍感、主人公の親友、途中退場

たしかにおいしいキャラだな。

489:621の続きで
06/09/21 23:41:32
「こんな所でどうしたんだ?
 ボーっとしてたら悪いお兄さんに攫われちゃうって言っただろう?」
「加持…さん?何でここに!?」
「誰もいないなら俺が攫っちまうぞ?」
私の言葉は聞こえていないのか聞いていないのか。
加持さんは腕を掴む手はそのままに、辺りをきょろきょろと見渡した。
「連れ戻しに来たんですか…?父さ…、あの人の命令ですか?」
もう全部が煩わしくて、問いただした。
ぐいぐいと力強く腕を引っ張って彼は歩く。
歩幅が合わないので多少小走りになりながら私はされるがままだった。
「いや。俺の意思だ。監視がだいぶ厳しかったけどな。こうでもしないと
 君と話す機会は二度とないだろうからな」
「話?なんですか?私は話すことなんてなにもありません!」
思わず叫んで腕を振り払おうとしたけど無駄だった。
加持さんは一瞬立ち止まり、私を見た。
その目はいつも通り優しげだったけど、それ以外の感情をはらんでいた。

490:621の続きで
06/09/21 23:43:26
「来たわね!!」

大きな大きな天井は破壊され、気味の悪い顔をした敵がゆっくりと降りてきた。
「シンジなんかいなくたって…!あんなのあたし一人でお茶の子さいさいよ!!」
あの、いつも人の機嫌を伺うような卑屈な目をした黒髪の少女。
時折何もかも見透かしたような瞳で自分を見る少女。
けれど、言葉としては何も言わないくせに。
今だって、ここにいないくせに。結局何も出来ないくせに。
あんなのがいなくたって、一人で十分過ぎるくらいだ。
「こんのぉぉおぉおぉお!!」
ライフルの引き金を引くと同時に轟音と閃光が使徒を包んだ。
天空から速度は変わらずに、ゆっくりと使徒は降りてくる。
その時ライフルの弾が切れ、引き金からカチカチと間抜けな音がした。
「次!!」
予備のライフルに手をかけ、撃つ。撃つ。撃つ。
それなのに、敵は攻撃をものともしない。
「ATフィールドは中和してるはずなのに…!」
ゆっくりと、使徒の近づく距離が狭まってきている。
「なんで平気なのよっ!?」
先日の使徒との戦い。
中に人が乗っていると考えたため一瞬攻撃を躊躇した。
その結果があの様だ。
情けなく地に這い蹲って救助を待つしか出来なかった弐号機。
そして、結局使徒を倒したのは――

「もう二度と負けらんないのよ、このあたしは!」

苛ついた様に引き金にさらに力を込めた。

491:621の続きで
06/09/21 23:45:31
連れてこられたのは、ジオフロントの端にある小さなスイカ畑。
「こんなところで何をしてるんですか?」
「アルバイトが公になったんでね。戦闘配置に俺の居場所はなくなったんだ
 以来ここで水を撒いてる」
「こんなときにですか?…ッ…!?」
青々と茂るスイカから目を逸らし、見上げたその瞬間見えたものは。
「アスカッ…!?」
遠くに見えたのは、首と腕を無残に切り落とされた弐号機の姿。
鋭利に切断された傷口から血が噴出したのか、カラーリング以外の赤に染まっていた。
身体が小さく震えた。パイロットは…?アスカは無事なの?
いや、違う。こんなこと考えたって。私が考えたって…。
だって私は、もうエヴァには乗らないって決めたから…。
そう決めたんだから!
最大限の努力で、私は弐号機を見ない振りをした。震える拳は隠した振りをした。
「俺はここで水を撒いて、これを育てることしか出来ないからな。君が羨ましいよ」
じょうろを手に、加持さんは目の前で繰り広げられている戦闘など見えていないのか
何事も無かったかのように畑に水をまく。
「私が羨ましいって…どういうことですか?」
「言っただろう?俺は水を撒くことしか出来ない。育てることしか出来ない。
 けど君は、君達女性は何かを育てるだけじゃなく生み出すことが出来るだろう?
 女体の神秘ってやつだな」
水を撒く手を一瞬止めると、彼はいつもの優しい顔で私を見た。
けれど、私にはその目をまっすぐに見ることが出来ず伏せ目がちに目を逸らした。
いらない。そんなもの、私はいらない。
私が欲しかったのは。私がなりたかったのは…。
「私は、加持さんの方が羨ましいです」
「それこそどういうことだい?」


492:621の続きで
06/09/21 23:46:58
あんな、加持さんの片腕一つにすっぽり納まってしまうような細い腕。
拳を叩き付けた所で何の意味にもならない小さな力。
うじうじとして、情けない私。
私は強くなりたかった。
男の子になりたかった。
たとえそれがただの願望であっても。
力が。
ただ、力が欲しかった。

そして、私はただ。

―――私はただ

「じゃあ、欲しかった力を手に入れたというのにどうして君は何もしないんだい?」
その言葉を理解するのに恐ろしい程時間がかかった。
本当は、ほんの一瞬だったかもしれないけど。
嫌な汗が吹き出た。鼓動が収まらない。身体が動かない。
呼吸は浅く小さく空気を吸い込むだけだった。
「あなたも…私にあれに乗れって言うんですか?」
目の前で失われた彼の命。
その償いのために?
「私じゃない…」
父さんは義務で。
ミサトさんは私に自分の夢を押し付けて。
勝手な言い分で取り繕って。
今度は彼を殺した償いのため?
違う。私のせいじゃない。
選んだのは私でも、そう仕向けたのは貴方達だ!
「トウジを殺したのは私じゃない!父さんのせいでトウジは死んだんだ!」
やっとの思いで搾り出した言葉を、加持さんの真っ黒な瞳が受け止めた。
「君は前に進まなくちゃいけない」

493:621の続きで
06/09/21 23:50:49
加持さんは、私の言葉には何も触れなかった。
ただ口に出したのは、いつかのあの場所で言われたその言葉。
彼は全く同じ口調で同じ言葉を繰り返した。
嫌だ。
嫌だ。
そんなものいらない。
そんなもの私には必要ない。
「進むって…何処へですか?」
気が付いたら叫んでいた。
「アレにもう一度乗るのが私の道だって言うんですか?」
目の前で失われた彼の命。
人形の様に青白い肌。虚ろな目。
違う。こんなんじゃない。
きっと言いたいことはこんなんじゃない。
だけど、止まらない。
「私はもう戻らないって決めたんです」
だって、私にはきっともう何も無い。
何も無いはずだ。
認めてはいけない。考えてはいけない。
「私には道なんてもう何処にもない!!」

私は。

―壊れてしまうから。

「あるさ」
それでも、彼は大したことではないかのようにさらりと告げた。
「ありませんよ!」
少なくとも、私にはそんなもの見えない。
俯いたまま、加持さんの顔を見ることができずにいると
頭上から声がした。



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