♂倒錯シンジきゅんハァハァスレ♀ 9at EVA
♂倒錯シンジきゅんハァハァスレ♀ 9 - 暇つぶし2ch50:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/31 00:18:56
ブラックヒカリを見てみたかったw

51:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/31 00:37:09
女シンジ←トウジのフラグ立つ←ヒカリ嫉妬

バルディエル戦、トウジ死亡

ヒカリ「どうして助けてくれなかったの!?鈴原を返してっ!!返してよぅ……」
シンジ、ヒカリの言葉で父親に怒りをぶつけることも出来ず、しかもこの時トウジが自分のことを好きだったと知らされ鬱突入

絶望的なゼルエル戦へ


なんて話を考えたこともありました

52:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/31 00:41:32
ここで話題をぶった切ってSSを投下するぜ

53:鋼鉄のBoyfriends(前編)
06/08/31 00:44:18
 シンクロテスト中の、突然の事故。
「初号機のシンクロ率が異常な数値を示しています!」
 マヤが叫んだ。
「今回の実験は…失敗だったかしらね」
「そんな呑気なこと言ってる場合じゃないでしょ!?この馬鹿リツコ!」
 静かにモニターを見詰めるリツコに、ミサトは声を荒げる。
「ミサト、どうなってんの!?初号機に何も繋がんないだけど!」
「落ち着いて、アスカ!こっちでも現在調査中よ!レイは平気?」
「はい…」
 回線が繋がったままの弐号機と零号機の無事は確認できた。
 だが、この突然の事故によって、初号機との回線は断絶状態になっていた。
「一部回線は回復、音声のみですが繋がります!」
「繋いで。シンジ君?シンジ君大丈夫なの!?」
 ミサトの呼び掛けに、返事はない。
 ただ、スピーカーから聞こえていたノイズに中には、微かだがシンジの声が混ざっていた。
「ザザッ…たす…ザザザ…」
「ノイズ絞って!」
「は、はい!」
 怒鳴るようなミサトの指示に、オペレーターは焦りながら指示を実行する。
 徐々にだが、ノイズは解消されていく。
 そして聞こえていたのは、絶叫だった。

54:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/31 00:45:06
好きにやりんしゃいな

55:鋼鉄のBoyfriends(前編)
06/08/31 00:46:39
「嫌だぁぁ!なんだよこれ!?助けて!出して、出してよぉ!!」
 何かに怯え、シンジは声を上げ続ける。
「シンジ君!?しっかりしてシンジ君!リツコ、どうなっているの!?」
「…わからないわ」
「わからないじゃないでしょ!?」
「え!?プラグ、強制排出されます!」
 ミサトとリツコが喧嘩のようなやりとりをしている最中、マヤが驚きながら報告をした。
 ミサトも、リツコも、皆が話すことさえ忘れ、室内は一瞬の沈黙に包まれる。
「シンジ君…!」
 蒼褪めたミサトが部屋を飛び出した。
「先輩…シンジ君は…」
「恐らく無事よ、自信はないけどね…」

「もしもし、リツコ?シンジ君、学校に行ったわ…アスカに付き添われてだけど」
『そう。“現在のシンジ君”の身体に異常はないはずだわ』
「異常はない、わけがないでしょ?」
『肉体の女性化、そして感情の欠落…そのことかしら?』
「そうよ…あんな状態でよく登校許可なんて出せたわね」
 カーテンの隙間から、リツコと通話中のミサトは二人の少女の登校風景を見ていた。
 一人はいつも見慣れたアスカである。
 もう一人は、女子の制服を着てはいるが、シンジであった。

56:鋼鉄のBoyfriends(前編)
06/08/31 00:50:52
「いつもみたいに朝食もちゃんと作ってくれだけど…初めて会った時のレイみたいでどう接したらいいか」
『言い得て妙ね。でも感情の欠落は事故が直接の原因ではないはずよ』
「どういうこと?」
『シンジ君の肉体はあの事故で自我境界線を失って、一度はLCLと同化したの』
「……」
 受話器の向こうからミサトの唸り声が聞こえてくる。
『…つまり、一度は肉体を失い、そしてまた再構成された。なんの因果か女性の体でね』
「シンジ君が叫んでいたのは?前だったの?後だったの?」
『後ね。プラグスーツからも離れてしまったようだから、自身の体を見て激しく混乱してしまったのよ』
「裸の状態で、スーツ共々排出されてたのはそういうことだったの…」
 ミサトはもう一度窓の外を見た。
 シンジとアスカは、既にそこにはいない。
『感情の欠落はその際のショックによるものだと思われるわ』
「元に戻る可能性があるってこと?」
『確証はないけど』
「はっきりしなさいよ」
『本人と周囲の対応次第よ。頑張ってね、保護者さん』
 リツコはそう言うと電話を切る。
 保護者。痛いところを突かれて、ミサトの眉がヒクヒクと動いた。

57:鋼鉄のBoyfriends(前編)
06/08/31 00:52:25

 通学路をシンジとアスカは歩く。
 時折、アスカはシンジを見た。
「さっきから僕を見てるけど何?」
 ちらちらと自分に向けられた視線に気付いていたシンジは、静かにアスカに訊いた。
「べっつにー。ただ、いつものシンジならそんな格好するの、泣いてでも拒むと思ってさ」
「そう」
「ほら、そうやって。そうとかうんとかあぁとか」
「ごめん。どうやって人と話をするのか…よく覚えてないや」
 前を向いたままシンジが言う。
 表情という表情を見せず、まるで人間の顔をした人形のようだった。
(ママみたい…)
 アスカの顔が歪む。
 今のシンジは、アスカ自身も含めて何に対しても興味を示さない。
 本来なら男であるはずの自分が、今は女であるという違和感も、感じてはいないのだろう。
「惣流やないか。おはよーさん」
「おはよう惣流。あれ?じゃあ隣にいるのは…?」
「なんやケンスケ、惣流の隣におんのは旦那様のシンジと決まって…って誰やこのお嬢さんは」
 やってきたトウジとケンスケ。
 いつもならここにシンジが加わって三馬鹿として騒がしくなるのだが、今日は違っていた。

58:鋼鉄のBoyfriends(前編)
06/08/31 00:54:24
「誰の旦那様よ、馬鹿。シンジなら、あたしの隣にいるじゃない」
「誰が馬鹿や!?それにどこにシンジがおんねん!?」
「じゃあやっぱり、あのことホントだったんだ…」
「ケンスケもなんや?さっきからわけわからんで」
「パパのパソコンにあったんだ。エヴァの事故で、パイロットがヤバイことになったって」
「じゃあ、惣流の隣に…誰もおらへんやないかい!!」
 トウジのツッコミもよそに、シンジはすたすたと先を歩いていた。
「待ちなさいよ!馬鹿シンジ!」
「な、なんか綾波が一人増えたみたいだな…」
「せやな…」
「私がどうかしたの?」
「うわぁ!!なんやねんいきなり!?」
「あ、綾波…」
 いつの間にかレイがひょっこりとそこにいた。
「それじゃ」
「あ、うん」
「あやつは忍者かい…」
「鈴原!相田君!遅刻するわよ!」
 そして最後にヒカリがやってくる。
 いつものメンバー。
 ただ、そこには、あるはずのものが何が足りなかった。

 無表情なシンジの顔を、ぺたぺたとトウジが触る。
「はあ~…ほんまにおなごなんやなぁ」
「うん」
「なぁなぁシンジ、一枚で良いから撮らせてくれよ~」
「それはヤダ」

59:鋼鉄のBoyfriends(前編)
06/08/31 00:57:19
 いきなり女生徒となって現れたシンジに一度は騒然とした教室だったが、
ホームルームが始まる頃にはいつもの教室に戻っていた。
 しかし、今のシンジを見れば、誰もが少女と見間違うだろう。
 顔も髪型も、どこも変わってはいないのに、シンジは一人の少女として形成されていた。
「二人共、席につきなさい!」
「なんやそんなに慌てんでも、利根川せんせなら平気やろ」
「実は今日、転校生が来るのよ」
「へえ。なんかもう驚きもしないなぁ」
 ヒカリの注意にトウジは渋々といった具合いに席につく。
 ケンスケも席に戻り、カメラのレンズを拭きながら鼻唄を口ずさんでいた。
「ねえねえ転校生だって、男かしら?男だったら加持さんぐらいの奴でなくちゃね」
「そう」
「シンジ…ほんとにあんたファーストみたいね」
「碇君と私は違うわ」
「そんなのわかってるわよ!てゆーか地獄耳ねアンタ」
 アスカがレイに対して、一方的に火花を散らしている。
 レイが口を挟むが、シンジはアスカに相槌を打っただけで、ただ前を見詰めていた。
 そんな中、利根川が教室に入ってくる。その後には、茶褐色の肌をした少年が入ってきた。

60:鋼鉄のBoyfriends(前編)
06/08/31 00:59:06
「え~、ホームルームの前に転入生を紹介します」
「ムサシ・リー・ストラスバーグだ、よろしく」
 簡潔にムサシと名乗った少年は言った。
 そしてそのまま、シンジの隣の席へと歩いていく。
「ここが空いているな、使わせてもらうぞ」
「そこは今日休みの子の席よ!」
「じゃあ次に来たら席を変わってもらってくれ」
 ヒカリの言葉に聞く耳を持たず、ムサシはシンジの隣の席に座った。
「さっきも挨拶したが、ムサシ・リー・ストラスバーグだ。君は?」
「碇シンジ」
「碇…シンジ?」
 一瞬、ムサシの顔が曇る。
(この子が…?)

 昼休み。
「さーて、今日も食うでぇ!」
「コンビニのサンドイッチと焼きそばパンを?」
「うっさいわいいんちょ!」
「そんなものばっかだと栄養摂れないんじゃない?」
「やかましいわ!むしゃむしゃばくばく」
 トウジとヒカリがいつものように痴話喧嘩をしている。
 ケンスケは軍用ヘリのプラモデルに色付けをしている。
 レイはじっと座ったまま動かない。ただ、少しだけシンジが気になっているようだった。
 アスカはそわそわとしていた。
(あいつ…お弁当ちゃんと食べられるのかしら)

61:鋼鉄のBoyfriends(前編)
06/08/31 01:00:40
 目線はレイと同じくシンジに向かっている。
「アスカ、一緒にお弁当食べましょ」
「そ、そうね、ヒカリ」
「どうかした?」
「なんでもない!」
 ヒカリに声をかけられ、アスカはシンジから注意がそれた。
 レイの近くでは生徒達が雑談を始め、シンジへの視界が遮られる。
 シンジは立ち上がり、教室を出ていった。
 そんな一部始終をムサシは黙って見届けると、出ていったシンジを追い掛けた。
「碇さん!」
「…ストラスバーグ君」
「ムサシでいいよ、昼は弁当なんだな。知らなかったから、学食か売店があったら案内してくれないか?」
「うん」
 案外簡単にシンジが承諾し、ムサシは少々呆気にとられる。
 そういえばずっとこの少女は淡々と受け答えしていたと、ムサシは思い出した。
「聞いたんだけど、君ってロボットのパイロットらしいな」
「そう。エヴァのパイロット」
「エヴァ…」
 シンジの言葉を、ムサシは繰り返す。
「…碇さん、あの」
「うわっ!!」
「あ…」
 ムサシがシンジに話しかけようとした途端、廊下の角から少年が飛び出してくる。
 飛び出してきた少年はシンジとぶつかり、二人はその場に倒れ込んだ。

62:鋼鉄のBoyfriends(前編)
06/08/31 01:04:53
「いてて…」
「ケイタじゃないか」
「あれ?ムサシ?」
「どうした?」
 ケイタと呼んだ少年と、ムサシが驚いたように目をあわせる。
「う、後ろ…」
 ケイタはおどおどしながらそう言った。
「転校生く~ん、逃げてんなよ」
 やってきたのは上級生に見える生徒だった。
「俺の友達になんの用だ?」
「もしかして君も転校生?良かったからお金貸してほしいんだけど」
「断る」
「あぁ?調子乗ってんなよ!」
 上級生の生徒がムサシに向かって殴りかかってくる。
 だが、ムサシは睨むような瞳を崩さず、振り降ろされた
拳を掴むとそのまま腕ごと捻って上級生の生徒を組み倒した。
「このまま腕を折ってやろうか?」
「や…やめてくれ…」
 ムサシが手を離すと、上級生の生徒は一目散にその場から逃げていく。
「大丈夫か、ケイタ、碇さ…ん!?」
 何かを見たムサシの声が裏返った。
「この子がどうかし…たの……」
 続くケイタも、それを目撃すると絶句する。
 そして、二人の顔は真っ赤に染まり上がっていた。
「どうしたの、ムサシ君?」
「い…碇さん、パパパパパパパンティが見えています!!」
「パンティ?……あ。」

63:鋼鉄のBoyfriends(前編)
06/08/31 01:06:23
 焦り過ぎてムサシは思わず敬語になる。
 倒れたまま身動きせずにいたシンジの制服のスカートは、これでもかというくらい捲り上がっていた。
 そして、ミサトから借りたランジェリーや、柔らかそうな太股がムサシとケイタを照らす。
「ごめん」
 シンジは物怖じもせず、捲り上がったスカートを直すと何事もなかったように立ち上がった。
「シンジ!!」
 そんな一騒動が終わると同時、アスカ達がやってくる。
「あんた何一人でほっつき歩いてんのよ!」
「何って、トイレ」

 明らかに心配しているように見えるアスカに、シンジは平然と答えた。
「なんやこんな大騒ぎする必要もあらへんかったやないかい」
「まだ塗装が終わってなかったんだけどなぁ」
「じゃあアスカ、お弁当食べに行きましょう」
「そ、そうね…」
「…早とちりだったようね」
「うるさいわねファースト!あんただって探すの手伝ってるじゃない!」
 いつものメンバーが、いつも通りに揃って、いつも通りに騒いでいる。
 いつも通りのはずなのに、いつも通りではない。
「…トイレまだ行ってないや」
「ちょっと!漏らすんじゃないわよ!!」

64:鋼鉄のBoyfriends(前編)
06/08/31 01:08:43
「漏らしてくれたら絶好のシャッターチャンスなんだけなぁ」
「ケンスケそら変態過ぎやで…」
「……不潔」
「トウジ!委員長まで……」
 そんないつものメンバーのやりとりに、ムサシとケイタは置いてき堀を食っていた。
 話についていけない二人に気付いたのは、シンジだった。
「そういえば、ムサシ君お昼どうするの?」「あ…そうだった」
「君も、もしかしたらお弁当なかったりする?」
「あ、はい。あの、浅利ケイタです…」
 心配をしてか、それともムサシに言われたことを思い出してか、シンジは二人に訊いてみる。
 そんなシンジの瞳は、未だどこか冷たい。
「なんや転校生、お前ら弁当ないんかい」
「あぁ、知らなかったからな」
「じゃあ僕のお弁当、食べる?」
 シンジはまた平然とそう言ってくる。
「ちょっと!あんたはどうすんのよ?」
「なんか…いらないや」
 食欲がないわけではなかったが、何故か食べる気がしなかった。
 アスカに短くそう返すと、シンジは「トイレ」と一言告げて、一人その場からいなくなる。
「………」
「ア、アスカ…」

65:鋼鉄のBoyfriends(前編)
06/08/31 01:10:45
 シンジの後ろ姿を睨みながら見送るアスカを、冷や汗を流したヒカリが恐る恐る声をかけた。
「やるわよ」
「な、何を…?」
「転校生の歓迎会!場所はあたし達のマンション!!」
 アスカは叫ぶ。
「ファースト、あんたも参加しなさい!」
「私は、関係ないわ」
「いいから!」
 アスカの目がシンジの行ってしまった方向を一瞬見た。
 レイは、それに気付く。
「…わかったわ」
「よし!じゃあ転校生、たっぷり歓迎してあげるから覚悟しなさいね!!」
「どういう意味の歓迎やねん……」
 ムサシとケイタを置いて、話はどんどん進んでいくのだった。

66:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/31 01:11:18
GJ。
まさかシンジとムサシかケイタがくっついたりはしないよなぁ…

67:鋼鉄のBoyfriends作者
06/08/31 01:13:28
鋼鉄なんてサターン版を昔やったきりで全然覚えてないです
マナは出てきません
シンジの感情がどうなるかはまだ決めてないです

68:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/31 01:16:22
GJ!!
世にも珍しいムサシ×シンジものか
まぁ性別が変わったならそっちんのが自然だねww
期待しとるよ

69:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/31 03:02:59
ミサトのエロパンティと太股丸出しのシンジが目の前にいたら男なら襲うぞ

70:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/31 07:59:34
ムサシ&ケイタ 「逃げなきゃダメだ」

71:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/31 08:05:08
シンジきゅんのお漏らし生写真撮ってくれケンスケ

72:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/31 18:18:42
あまり好きじゃない・・・・

73:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/31 18:41:51
そういう場合はスルーですよ


74:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/31 19:12:11
鋼鉄知らない俺はスルー
やらなくてもわかるサイトとかある?

75:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/31 19:29:17
2ndは更迭じゃない

76:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/31 19:36:12
これ元ネタはゲームなの?

77:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/31 20:37:03
まぁ、マターリと続きを見てみようぜ
面白くないからとかで叩くにしてもまだ早いんジャマイカ?

78:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/01 01:23:17
なんか書き慣れてない感があるので生暖かく見守りたい


79:621の続きで
06/09/01 01:44:43
「トウジ、どうしたのかな?」
「あぁ。今日は火曜日だから、妹のお見舞いだよ」
「…え?」
「何か負担かけちゃいけないって、昼からの面会になったんだってさ」
「…そうだったんだ」
トウジの妹は私が初めて初号機に乗ったときに、
めちゃめちゃに暴れたために怪我をしたのだ。
もう随分たつけど、経過が良くないのだろうか。
そういえば、まだ小学生だったけ。
「私も…一度お見舞いに行った方がいいのかな?」
ポツリと小さな声で呟いた。
言葉は疑問として出たけれど、誰に答えを求めるものでもなかった。
けれど、聞きつけたケンスケは不思議そうな顔をした。
「やだなぁ、責任感じてるの?」
「だって…トウジだって言ってたじゃない。妹が怪我したのは私のせいだって」
トウジが食べた空っぽのお弁当箱を片付けながら考える。
いつも優しく笑いかけてくれるから、気が付かなかった。
忘れていたわけじゃないけど、考えないようにしていた。
そうだ、私が傷つけたんだ。彼の肉親を。彼の心を。
初めて会ったときも、トウジは怒っていた。
あの時は何も感じなかったけれど、今思えば
あんなに素直に感情をぶつけてきた人は初めてだった。
たとえ、それが憎しみでも怒りでも。
けれどあの日、二人が私を心配してミサトさんのアパートに来てくれた日。
駅で私を出迎えてくれたあの日。
あの日にすでにトウジは私を許してくれてはいるのだろう。
それでも、私が傷つけたということに変わりはないのだ。
その事実を今更ながら思い出して、俯いた顔を上げられない。
「来てほしいんだったら、アイツから言うだろ。それにシンジが同情じゃなくて、
 本当に行きたくなったら行けばいいよ。アイツそう言うの大嫌いだから」

80:621の続きで
06/09/01 01:46:30
同情なんかではないだろうけど。
きっと、恐いんだ。私が傷つけたという事実を再確認するのが。
友達の悲しそうな顔を見るのが。
そして、私にもう笑いかけてくれなくなるかもしれないのが。
「妹のこと。お前に下手に気を使ってもらいたくないから、
 あまり言わないんだと思うよ。そんな暗い顔するなって。大丈夫だよ。
 トウジは嫌いな奴と一緒にいたら、あんな風に笑わないよ。」
私の心情を察したかのようにケンスケが声をかけてくれた。
それでようやく私は顔を上げた。
「…ケンスケって、トウジの事よくわかってるね」
「まーねー、付き合い長いし。アイツ単純だし」
「そんなこと言ったらトウジに怒られるよ」
そして二人で笑った。

青い空の下、悪戯っ子のように笑う黒いジャージの少年。
時々見せる、憂いを帯びた表情。
きっと妹のことを考えているのだろう。
私は、トウジを、他人のことをどれくらい解っているんだろう。
どれだけ解ることができるんだろう。
きっと私は何も解っていないのだろう。
ここへ来て出会った色んな人達のこと。
それだけじゃなく、自分自身のことすら。

81:621の続きで
06/09/01 01:48:04
「試作されたダミープラグです」
薄暗い部屋の天井には、エントリープラグが吊るされていた。
普段の白いそれではなく、真っ赤なエントリープラグが。
「レイのパーソナルが移植されてます。ただ、人の心…魂のデジタル化は出来ませんので
 …あくまでフェイク。擬似的なものです。人間の真似をする、ただの機械です」
リツコがそう告げると、ゲンドウがいつもの冷静な口調で答えた。
「信号パターンをエヴァに送り込む。エヴァがそこにパイロットがいると思い込み、
 シンクロさえすればいいのだ。初号機と弐号機にはデータを入れておけ」
「しかし、まだ実験中の問題が残っていますが」
「構わん。エヴァが動けばいい」
こちらを見ることなく、淡々と命令を下す。
だからこちらも科学者としての意見を述べ、そして従った。
それでいい。それでいいはずだ。
「機体の運搬はUNに一任してある。週末には届くだろう。後は君の方でやってくれ」
「はい。調整並びに起動試験は松代で行います」
「テストパイロットは?」
上部は無数のパイプが繋がっていた。その中央には液体に満たされた大きなガラスケース。
ぼんやりと光るその中には彼女が居た。私を誰よりも不安にさせる存在が。
「ダミープラグはまだ危険です。現候補者の中から」
「四人目を選ぶか」
「一人生理学的に持ち上げれば可能な子供が一人います」
「任せる。――レイ、上がっていいぞ」
その言葉に、今まで眠っているかのように目を瞑っていたレイが
ゆっくりと目を開く。露わになる赤い瞳。あのダミープラグのような。
「食事にしよう」
『はい』
彼は一度もこちらを見ない。
だが、いつもの表情に比べ明らかに柔らかな表情になったのが手に取るようにわかる。
私を見ない背中が今は逆に有難かった。レイを見る彼のそんな顔など、見たくはないから。

82:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/01 01:52:37
ナイスジョブ!

83:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/01 02:41:34
GJ

84:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/01 04:27:23
グッジョブ


あー死ぬんだな
トウジ死ぬんだな
あー

85:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/01 04:35:35
ほう死にそうなのか
今まであぼんしてたけどトウジガ死んだら読んでみるかな
生死の結果だけ報告ヨロ

86:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/01 04:46:26
鬱好きなの?
まぁ俺も鬱好きだけど

予想だけどね
貞版を踏襲してるから多分そうだろうかなと。


87:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/01 06:38:48
>>86
どっちかというと好きかな?

まあ、今まで読んでなかったわけだし、作者氏が書きたいのを書くのが一番なんで、
是非欝にしてくれっていうわけでもないんだけど……

88:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/01 20:18:19
そもそも始まりが、鬱展開の話してて作者さんがじゃあちょっと書いてみようかみたいな感じだったような

毎日更新はすごいね
夏休みの宿題も7月中に終わらせるタイプとみた

89:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/01 20:47:53
確かにすごいよなww
まさかこんなにすごいものがくるとは思わなかった。しかも更新速度の速いこと速いこと!

90:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/01 20:50:29
バジメちゃんの人(エヴァπだっけ?)も毎日だったな
ここの職人は凄いw

91:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/01 20:52:14
バジメって凄く・・・バジルっぽいです・・・正しくはハジメだな
LCLの海に飛び込んでくる

92:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/01 21:07:31
大丈夫
そのうち人の形を取れるようになる
安心して溶けてきな

93:621の続きで
06/09/01 21:30:34
窓に手を付いて、外の景色を眺める。
掌にはガラスの冷たい感触。
どこか遠い昔に感じた同じ感触。
血と、機械油の匂いを残して消えてしまう夢。
ガラスの向こうに確かに存在した命。微かな記憶。
二度と会えない母さん。もう二度と語り合うことのない父さん。
エヴァ。新しく出会った人たち。使徒。地下の巨人。そして私。
本当のことが、どこにあるのか自分でもわからない。
手に入れたと思った瞬間、指の隙間から砂のように零れてゆく真実。
その真実に手が届くものならば、私は。

私は…、どうするんだろう?

「…さん。碇さん?」
「え?あ、ごめん。委員長」
気が付くと、委員長が心配そうに私の顔を覗き込んでいた。
なんでもないと、笑いかけると彼女も安心したように笑った。
「どうしたの?ボーっとして。考え事?」
「ううん。なんでもないよ。さ、掃除しなきゃね」
私は今週掃除当番だったので、気を取り直してモップを手に取って教室を出た。
今週の掃除区域は、廊下と階段だ。下校する生徒がひしめく中でゴミを掃う。
そうしていると、いつもの見知った少年が雑巾がけをしているのに気が付いた。
掃除のときは、遊んでよく怒られてるトウジが珍しく働いている。
不思議に思って隣にしゃがんで彼と同じ目線になってみた。
天井が高く感じる。そのまま何となく目線を上げてみた。
「…うわぁ」
まぁ、なんてイヤらしい景色。
下から見上げてみると、階段を上る女子生徒のスカートの中が丸見えだった。
なるほど、だからか…。ぼそっと雑巾掛けをしていた彼に声をかけた。
「女の敵だね…。トウジ」
「シンジ!?お前何やっとんねん!」

94:621の続きで
06/09/01 21:33:31
って言うか、それはこっちの台詞だと思う。
今まで私には気が付かなかったらしい。それだけ夢中だったのか…。
男の子って皆こうなのかな?そういえばアスカも言ってたっけ。
「男の子ってバカでスケベで信じられない」って。
一理あると思う。冷ややかな目線になってしまうのが否めない。
「アホ!男がスケベやなかったら人類滅びてまうわ!」
「そりゃそうだけどさ…」
だからって、私に熱弁しないで欲しいと心底思う。
こんな階段の踊り場で一般男子の代表意見を聞いたって、私にはどうしようもない。
と言うか、委員長やアスカがよく言うアレだ。

「不潔」だ…。

その辺り、私も女の子だなぁと改めて自覚した。
なので、その一般男子に一般女子として率直な意見を申し上げた。
「そんなんじゃ、好きな子できたときに確実に嫌われるよ?」
「…マジで?」
「…マジで。普通はそうだよ…。でもトウジ好きな子いるの?」
そういうと、トウジの顔が少し赤くなった。
トウジの肌は褐色に日焼けしているから、わかりにくいけれど、
確かに頬が赤く染まったのがありありと見て取れた。
………へぇ~。何か面白い。
アスカが私をからかった時もこんな感じだったのかな?
「人のことはどうでもええやろ!お前はどうやねん」
「人のことはどうでもいいのに私は聞くんだ…。私?う~ん…。
 いないんじゃないかな。そういうのよくわかんないし」
「そ、そうか…」
それとなく答えるが、トウジの受け答えもあまり耳に入らない。
さっきから、何故か私もトウジと一緒にしゃがんだままなので、
見上げると視界に入る何とも言えない景色に魅入っていた。
最近の女の子の下着はカラフルで可愛いのが多いなぁ、と
恐ろしくどうでもいいことを考えた。

95:621の続きで
06/09/01 21:35:30
そして、はたと気付く。まさかとは思うけど…。
「…私のは見てないよね?」
「お前のは前にモロ見とるからなぁ…」
赤い顔はそのままに、記憶を反芻するかのようにトウジが言う。
…ちょっと待って。
勢い良く立ち上がってトウジを見下ろした。
前に、とは。ミサトさんの昇進パーティーのときだ。
昔の写真を見られるのが恥ずかしくて、着替えもそこそこに飛び出したあのとき。
確かあの時は見てないって言った!見てないって言ってたのに!
「やっぱり見てたんじゃないかぁ!」
「みみみ見てへん!水色のレースなんて見てへん!」
「しっかり見てるじゃないか!嘘つきー!!」
ぎゃあぎゃあ喚いていると、階段上から高くよく通る声が響いた。
「鈴原!もぅ、ちゃんと掃除しなさいよ!」
委員長だ。
…あ。まずい、その位置だと。
「…白や」
「え?あ!きゃあぁあああぁあ!!!」
「………外道だね、トウジ」
委員長は真っ赤になってスカートを押さえていた。
「こらまた、ええもん見たわぁ」
「す~ず~は~らぁ~!今日と言う今日は許さないから!待ちなさい!」
階段から降りてきた委員長が逃げるトウジを追い回している。
委員長には女の子の代表として、是非とも一発殴って頂きたいと思った。
本当に男の子って…。別次元の生き物だと実感する。
私はずっと男の子になりたかったけど、こういうのを見るとやっぱり思い止まる。

ああ、でも…。
そうだ、私はきっと。



96:621の続きで
06/09/01 21:37:57
「こら!待ちなさいってば!」
「助けろ!シンジ!」
「嫌だよ!って、わぁあぁああ!」

ガシャン

トウジを追いかける委員長と、逃げ回るトウジにぶつかって
立て掛けてあった掃除道具が私に倒れてきた。
「だ、大丈夫か?:
「碇さん!大丈夫!?」
「び、びっくりした…」
幸い、モップやらバケツやらの軽いものだったので
大事には至らなかった。と、思っていると委員長が声を上げた。
「碇さん!血!」
「え?」
よく見ると、腕にモップの金具で傷ついたのかかすり傷ができていた。
でも、言われるまで気付かなかったし、全然痛くないし大丈夫だと思うんだけどな。
「たいへん!保健室いかなくちゃ!」
「平気だよ。こんなのかすり傷だし。痛くないよ」
「今はびっくりして感じないだけなのよ。駄目よ、女の子が傷作っちゃ!」
これくらいの傷は日常茶飯事だし、平気だと思ったけれど、委員長は慌てていた。
ついでにトウジも。でも、こちらはただ慌てているだけで特に役に立ちそうになかった。
「早く消毒しないと!」
「だ、大丈夫なんか?」
「あんたが着いてきてもしょうがないでしょ!ちゃんと掃除してなさい!」
いざ緊急事態になると、男より女の方が強いなぁと、頭の隅で考えた。

「ごめんね」
委員長が私の傷に消毒液をかけながらそんなことを呟いた。
「どうして?」
「だって、半分は私の責任じゃない」
「そんなことないよ。言っちゃえば、全面的にトウジが悪いと思う」

97:621の続きで
06/09/01 21:40:07
ぶつかったのは、二人にだけど原因を作ったのは確実に彼だ。
だから、委員長が反省する点は何もないと思う。
「男の子ってどうしてああなのかしらね」
「それは私も思う」
ああいうのもそうだけど、ケンスケの趣味とかも全くわからないし。
ここに来てから初めてできた友達。
よく遊ぶのはトウジとケンスケだけど、たまに委員長と遊びに行くと
やっぱり男の子と女の子は違うなぁと思うことがある。
二人とはとても気があって、一緒に居るのは楽しいけれど。
まぁ、多分ケンスケの趣味はきっと特殊だ。
同じ性別で、私より付き合いの長いトウジさえ引いている時があるし。
「碇さんて、鈴原と仲良いよね。なんであんなバカと仲良くしてるの?」
「なんでって…?」
「さっきだって、ああだったし」
手馴れた手付きで傷の手当をしながら委員長が言った。
まぁ、男の子だからしょうがないって言うのを差し引いても
さっきのは私もどうかと思う。女として。
でも、それでも。
「そりゃトウジは、あんな風なことあるけど…。私よりずっとしっかりしてるし。
 何だかんだいって面倒見がいいし。凄く良い奴だよ」
委員長は、傷の手当ては一度止めて、私を見つめた。
それに、きっと私は…。
「私ね、ずっと男の子に生まれたかったって思ってたんだ。さっきみたいなのは
 ちょっと嫌だけど、きっとトウジみたいな男の子に」
そうだ、あんな風になりたかった。
あんな風に、はっきりと物が言えて、しっかりした意思を持った、強い男の子に。
もう二度と父さんとは話ができないとは思うけど、あんな風に生きれたら
その前に何とかできたのかもしれない。
そんなことは夢物語でしかないことはよくわかってるけれど。
「あんな風な男の子に生まれてたら、私も少しは強くなれたかなって…」


98:621の続きで
06/09/01 21:42:23
そこまで言うと、何だか照れくさくなって頭を掻いた。
そうしていると、委員長が言った。
「碇さんは十分強いわよ。私、碇さんが羨ましいな…」
「え…?」
その言葉はあまりに小さくて、私はよく聞き取れなかった。
「あ、なんでもないの。さ、早く済ませちゃわないとね!」
「あ、うん」
そういうと、委員長は手当を再開し始めた。
そして、最もな結論を告げた。

「でもバカはバカよね」
「うん、バカはバカだね」




投下する作品は休みの日に一週間分まとめてます。
というわけで明日は休みなんで、投下は日曜か月曜に。

99:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/01 21:51:47
GJ!!!
やっぱラブコメ(?)はええなぁ~
シンジ←トウジに思えたんだけど、多分フィルターかかってる


100:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/01 22:36:04
なぬっ!?そんなにというかそこまで真剣に取り組んでくれてるのか?

このスレは恵まれてるなぁ…( ̄∀ ̄*)

101:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/01 22:45:59
やっぱオリジナル部分は光る

102:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/01 23:24:48
この展開だと時かけ的な人間関係でもしっくりくるなw

103:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/02 00:11:28
職人のおかげでなんかスレよく伸びてるなw

104:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/02 00:20:17
レスが書きにくくなった人も居るけどな。

投下してる人は木にするな。

105:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/02 00:57:18
>>104
終わったら存分に喋ってやるよ

106:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/02 01:15:36
>>104確かにそうだが、それを犠牲にしてでも得るものは多いなww

107:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/02 01:26:51
つか過疎スレだし
別に今でも語ろうと思えば語れる


最近女装シンジきゅん割合が少ないなぁ
ギャグならいくらでも書けそうだが

108:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/02 01:34:49
evaに乗って性転換。
ショックのあまりうじうじ鬱鬱でツンツン街道まっしぐらなシンジキュンが好きなので
以下略

109:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/02 01:36:17
何を持って過疎と断言できるのか小一時間問い正したい

110:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/02 01:46:17
>>108
エヴァに溶けて、出てきた時には女のシンジと男のシンジに別れてましたーってのは考えたことがある
しかも二人とも同じシンジとしての記憶を持ってて、意識もシンジ
でも片方は女で、女であるから周りからシンジ扱いされずに居場所がどんどん無くなってしまう
シンジだけどシンジでありえないの。女だから


これが第一話の時点だったらギャグですむけど、
人間関係を形成した後じゃ鬱まっしぐら

111:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/02 02:14:11
性転換コメディー→女シンジきゅんの自分探しか
落差が素晴らしい良い欝じゃないの
YOU書いちゃいなYO!

112:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/02 02:19:41
YOUここで諦めたら終りだYO! ←(前HEY×3で赤西[亀梨?]がジャニーズ落ちた時にジャニーから言われたって言ってた)

113:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/02 02:50:51
今思ったんだけど女の子シンジきゅんはBLOOD+の小夜の声が似合う気がする
まぁ、声だけね。中の人は整形してるらしいし

114:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/02 02:58:24
そーいえばさ、暴走したときってダミーシステム付きのプラグで乗ってるんだよね?
てことは、下手に再構成に成功してたら、やっぱ綾波の情報と混ざって二身合体状態だったんだろうか?

115:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/02 03:01:46
そうなる場合もあれば、ユイママの加護があるかもしれない
要は作り手次第

116:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/02 03:03:47
シンジ自体が疎まれるのはやだお
だから>>110
そこをなんとか幸せにしてやって

でもちゃんとしたのを実際書こうとしたらなかなか難しいんだろうね…

117:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/02 03:11:28
人間関係が崩壊し始めたゼルエル戦くらいなら分裂してもイケそうな気ガス
いっそLSSとかにしてそれから起こることに2人でなんとかかんとか互いを支えあってくみたいな

118:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/02 03:21:25
女シンジが逆行してシンジの妹になりシンジとセックスしまくるSSを思い出した

119:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/02 03:54:34
女シンジきゅんだとEOEで、「私と一つになりたいんでしょう?」と言う
ミサトやアスカやレイは、トウジやケンスケや加地になるのだろうか…

120:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/02 04:15:29
>>119なんか前にもその書き込みあったな

121:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/02 04:18:05
実際どうなんだろう?
性的な意味じゃなくて、ただ子供のように抱き締めて貰いたいとか
そういう願望だったら女でもいいんじゃ?


122:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/02 12:10:49
母胎回帰願望みたいなもんかと


123:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/02 12:31:22
あんま難しく考えなくてもいいジャマイカ

124:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/02 13:52:36
でも女が、同級生の女にそれを感じるのは変ジャマイカ?
せめてミサトぐらいで…

125:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/02 14:37:18
大人が恐くて、男に走る女にも恐くてなれないから、同世代の女子に縋るのはアリじゃないかと

126:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/02 14:43:28
>>125百合?

127:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/02 14:48:22
うわー…
今そういうの書いてるわ。

128:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/02 14:57:25
俺もそんなプロットばっかり考えてるw

129:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/02 15:20:45
>>125
父性を求める女シンジきゅんが名も無きオヤジと援交しちゃうやつなら書いたことある
24話後のボロボロになったシンジきゅんが淋しさのあまりに

なんだかちまたの女子高生が読みそうな内容になってきたので止めた

130:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/02 15:44:57
百合じゃなくて、あれくらいの年ごろだったら
親や男よりも同性の友人を頼りにしそうだからさ

131:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/02 20:01:55
>>130
あるなぁ。アスカに縋りそう。

って変わんねーじゃんw

132:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/02 20:09:22
女が女を頼りにしたら即百合なのか?
恋人とか親とかよりも、友達と一緒にいた方が癒されるってことあるじゃん
そういうことじゃないか?

133:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/02 20:13:20
>>132まぁ、たしかにね…

134:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/02 20:14:12
>>132
だって百合にしたほうが萌えるだろ?

135:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/02 20:16:18
まぁ、職人さんは好きに書いて投下してくれればいいよ。
墓標にゲンドウと同じ花添える下りがうまいなと思った。


136:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/02 23:04:45
思春期の女子は一時的に同性に傾倒する傾向にあるらしい。
その後異性を意識しだしたりして精神的に女性になっていくんだって。
だから中学生が百合っぽくなるのはリアルでもあり。

137:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/02 23:11:34
それ、女子だけじゃなく男子にも言えるらしいな
あのくらいの年ごろの子供は同性に擬似恋愛感情抱きやすいんだと
まぁ、あくまで擬似だけど

138:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/02 23:20:47
>>137やめてくれ、さむぼろが…

139:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/02 23:27:54
インドとか異性に触れたり話したりできない文化を持ったところは凄いらしいな
男女で触れられない分、女同士、男同士でハグキス。でも同性愛ではない

140:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/02 23:30:46
まぁ、中学生くらいだったら同性に依存するよな
高校入ったらいきなり異性意識したり、モテはじめたり

141:621の続きで
06/09/03 22:17:37
細く女の子らしい手が手早く包帯を巻きつける。
その手付きに感心していると、委員長が少し言いにくそうにポツリと呟いた。
「ねぇ、碇さん。鈴原、私のこと、その…何か言ってない?」
突然の言葉に、私は疑問符しか浮かばなかった。
「あ!意味は特に無いんだけどね!私、委員長として色々注意しなきゃいけないでしょ?
 だから、口うるさいとか、仕切りやとか、おせっかいとか言われてないかなって!」
不思議に思って見つめていると、委員長の白い頬が赤く染まり、
いつものはきはきした口調ではなく、しどろもどろに言葉を紡いだ。
この様子はなんとなくどこかで見たことがある。
そう、委員長は注意とかお小言以外でトウジと話すとき、こういう風になるのだ。
「別に、何とも言ってないんだったら…それでいいんだけど…」
委員長は更に真っ赤になって、一瞬黙った。
そして、ちょっと困った顔をして決意したように私に問いかけた。
予想も付かないとんでもないことを。
「鈴原って…、アスカのこと好きなのかな…?」
…………………………。数秒かかって、脳がようやくその言葉を認識した。
「…………………はぁ!?」
つい、大声をだしてしまうのは許されることだと思う。
何をどうしたらそういう結論になるのだろう。
「だ、だって…いつも仲よさそうにしてるし…」
え…?アレが? 日頃の二人の関係を思い出す。
今日だって、アスカをからかうトウジに彼女は盛大な蹴りをお見舞いしていた。
アレが仲が良いって言うならば、戦争がこの世から消えると思う。
そして、世界中の男女はもっと簡単に恋人同士になると思う。
「ありえない…。それはありえないよ…」
うん、絶対違う。ぶんぶんとクビを横に振った。
まぁ、あの二人ケンカ友達みたいなものだし。
そこにある感情は決して「嫌い」ではないだろうけど、
そういう意味の「好き」ではないだろう。
アレが「好き」って言うんだったら、私の考える「好き」とは違う世界だ。
それとも、私の常識が覆されつつあるのか…。
ちょっと考える。…いや、きっと私の方が正しいよね?

142:621の続きで
06/09/03 22:25:28
「やだ、ごめんね!私ったら変なこと聞いて」
自問自答していると、委員長がそこで質問を終了した。
良かった。このままだと思考が無限ループに突入するところだった。
手馴れた手付きで私の包帯を巻きなおす。
その手付きを眺めていると、彼女はチラチラと私を見つめてきた。
そういえば、赤い頬は先ほどと変わらない。
「あの、碇さん…。もう一ついいかしら?」
さっきの質問より凄いことはもうないだろう。というより、そう思いたい。
肯定の返事をすると、彼女は一呼吸置いてまた決意の目で私を見つめた。
「あのね…、碇さんって…」

「おーい!シンジ」
委員長の言葉が最後まで終わらないうちに、誰かが保健室のドアを開き、私に声をかけてきた。
「…ケンスケ。どうしたの?」
「お前、今日当番だろ?昼の授業で使った教材そのままだったから
 先生が早く片付けろって言ってたぜ」
そう教えてくれると、ケンスケは帰っていった。今日もまた軍艦や戦車だかを見に行くのだろう。
その姿を見送ると、委員長に向き直った。まだ質問の途中だったからだ。
「邪魔が入っちゃったね。で、続きは?」
「あ!いいの。やっぱりもういいの」
「え…?でも…」
「いいの、たいしたことじゃないから。手当ても済んだし」
腕を見ると、包帯はきちんと巻かれていた。
教材の片付けと、掃除に戻ろうと保健室のドアに手をかけて
救急箱を片付ける彼女を振り返る。丁寧に手当てされた傷。
ああ、本当に委員長は良い子だ。
「ねぇ、委員長」
「…え?」
「トウジはきっと、アスカみたいなタイプじゃなくて、もっと家庭的な優しい子が好みだと思うよ?」
そういうと、彼女は嬉しそうに笑った。それを見て、私も何だか嬉しくなった。
だから彼女がどうしてあんなに嬉しそうに笑うのか、どうしてあんなことを聞いてきたのか
私に聞きたかったことが何なのかは忘れてしまった。

143:621の続きで
06/09/03 22:27:24
下校を告げるチャイムが鳴り響く。掃除も無事終了。残った生徒達のまばらになった。
今日も無事に委員長としての私の一日が終わる。あっと、いけない。まだ一つ残ってたっけ。
カバンを持って帰ろうとしている鈴原に声をかけた。
「なんやねん、いいんちょ」
「あなた今日週番でしょ。これプリント。休んでた分届けてあげて」
「えぇ~。そんなん相方がおるやん」
「その相方が休みなのよ」
「あぁ、綾波か」
プリントの束を渡すと、彼は露骨に面倒臭そうな顔をした。
でも、ダメ。だって週番は週番だもの。ちゃんと役割を果たさなきゃ。
「そんな顔してもダメよ。ちゃんと届けてね」
「せやかて、女の家に一人で行くんもなぁ…」
そういえば鈴原はそんな硬派な性格だった。
そこが良いところでもあるんだけど。
一人で女の子の家に行くのは抵抗があるのだろう。
そうだ。だったら、私が一緒に行ってあげれば…。
これは委員長としての義務であって、
別に一緒に帰りたいとかそう言う訳じゃないんだから。
いいわよね、これくらい。
誰が聞いてるわけでもないのに、頭の中で言い訳をしてしまう。
提案しようと声を出しかけると同時に鈴原が口を開いた。
「おーい、シンジ。お前一緒に付いてきてくれへんか?お前綾波と仲ええやろ」
鈴原は下校しようと教室の引き戸を開けている碇さんに声をかけた。
女の子とはあまり話をしない鈴原だけど、碇さんとは仲が良い。
さっぱりした性格の彼女は、男の子と気が合うのだろう。
相田君とも仲が良いし。
「別にいいけど。綾波いないかもよ」
「せやったら、郵便受けかなんかに入れとけばええやろ。な、いいんちょ?」
「え!?そ、そうね。できれば手渡しがいいんだけど」
「綾波の郵便受けっていっぱいだからなぁ…。気付くかな?」
「まぁ、ええやん。行くで。じゃあな、いいんちょ」
「ええ、また明日ね」

144:621の続きで
06/09/03 22:28:51
そう行って鈴原は碇さんと行ってしまった。
はぁ、私ってダメだなぁ…。ため息を付いてしまう。
せめて二人に付いて一緒に行こうとかすれば良かった。
もっと鈴原とちゃんと話ができたらいいのに。
あの二人って…。そんな素振りは全くないけど…。
でも碇さんは本人はわかってないけど、可愛くていい子だし。
今日、保健室で傷の手当てをしているときに尋ねようと思ったけど、
つい聞きそびれてしまった。
「もう!私らしくない、やめやめ!」
パシッと両手で頬を叩いて気合いを入れた。最後に教室の点検をしなくちゃ。
ヒカリは思考を入れ替えて見回りを始めた。

恋する少女は色々複雑らしかった。


「綾波、いる?」
相変わらず無機質で殺風景な綾波のマンション。
ドアを叩いて在宅を確認する。
「おい、何でチャイム鳴らさへんねん」
「それ、壊れてるの」
何回かドアを叩いたが、反応はなかった。どうやら彼女は留守らしい。
ちらりと郵便受けに目をやると、そこは相変わらずいっぱいだった。
しょうがないか。ひんやりとした感触のする金属のドアノブに手をかける。
「待てや、勝手に入ってもええんかい!」
「だって、こんな状態の郵便受けに入れたってきっと見ないよ。
 大事なプリントもあるんだし」
事実、郵便受けはすでにゴミ箱と化している。
これに突っ込んだって、ただゴミを増やすだけだ。
何か言いたげなトウジと一緒に部屋に入った。

145:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/03 23:02:13


146:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/04 06:52:03
乙。

147:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/04 20:43:10


148:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/04 21:21:10


149:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/04 21:35:56
この流れがウザイので感想をば
家庭的という表現がシンジ自身を含めて言ってるようだ
シンジ、怖い子…

150:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/04 21:57:22
いや、シンジきゅんは自分でよくわかってないから天然で言ってるんだ!
そうだ!きっとそうだ!
と思ってみる

151:621の続きで
06/09/05 00:24:04
「うはぁ…。これが女の部屋かいな」
綾波の部屋は、物が無いと言うか、殺風景と言うか。
とにかく生活感がまるでない部屋だった。
いつか見たシンジの部屋もおおよそ女らしいとは言い難いが、これよりましだ。
とりあえず、頼まれたプリントをベッドの上に置く。
これで仕事は終わった。と思っていると、シンジが床に屈んで何かをし始めた。
「お前何しとんのや?」
「掃除。ほらゴミがいっぱいだし。トウジも手伝ってよ」
「嫌や!男のすることやない」
「そういうのって、ミサトさんに嫌われるかもよ」
シンジのもう一人の同居人兼上司である葛城ミサト。
自分やケンスケは彼女に憧れを抱いていた。
今の男は家事くらいできないと駄目なのだろう。
自分だって母親がいないので、一通りのことはできる。
しかし、いくらなんでも男の自分が勝手に女の部屋を弄るのは抵抗がある。
「かまへん!ワシの信念が許さへんねん!」
古いなぁとぼやくシンジを尻目にそこらにあった椅子に座る。
そうして甲斐甲斐しく働くシンジをぼんやりと眺めていた。
「ねえ、綾波ってちゃんとご飯食べてるのかな?」
「あー?急にどうした?」
「さっき台所通ったでしょ。でも紅茶くらいしかなかったから」
「綾波って何や食わんでも生きていけそうな感じやもんな」
「でも綾波って以外とニンニクとか香辛料好きなんだよ。
 こないだミサトさんが私達にラーメン奢ってくれたんだけど、
 そのときもニンニクラーメン食べてたし」
「へぇー」
「コンビニでもよって、何か買ってきてあげればよかったかなぁ?」
彼女は掃除の手は休めずに楽しそうに話す。
昔の彼女はこんな風に人の事を気にするような性格だったろうか。
いや、違うな。そう、初めて会ったときは…。その事実を認識して何だかおかしくなった。
「どうしたの?そんなに笑って」

152:621の続きで
06/09/05 00:24:52
無意識に笑っていたらしい。
ゴミ袋を持ったシンジはきょとんとした顔でこちらを見つめていた。
その仕草が何だか小さな子供のようで微笑ましかった。
「お前、変わったなぁ。他人に関心見せるようになるなんぞ」
「え?」
「何や最初会うたときは、ウジウジしていけすかん女や思ったんやけどな」
初めて会った時、無気力で無関心で妹の事も、
自分のことすらどうでもよさげな彼女にムカついた。
いや、その時は「彼女」とは露とも思っていなかったが。
接しているうちに少しづつ表情が増え、感情も豊になっていった。
「まぁ、余裕ができたんやろな。心の。前見た写真よりも、今の方がずっとええで」
いつか見た彼女の昔の写真。
白い肌によく似合うワンピースを着て
長い黒髪をなびかせた彼女は確かに綺麗だった。
だけど、どの写真の彼女も、笑顔で写っているものはひとつもなかった。
感情と言うものがなかった。
今は違う。
ぎこちなさはまだあるが、本当に嬉しそうに、楽しそうに笑う。
その笑顔を見るのが、何だか楽しかった。
そこまで言うとシンジは、明らかに戸惑った表情を浮かべていた。
どうしたらいいのかわからないといった風だった。
大きく目を開いて自分を見つめる。
吸い込まれそうな瞳だった。
あぁ、そういえば彼女はこんな目の色をしていた。


153:621の続きで
06/09/05 00:28:17
トウジの言った言葉を理解するのにしばらく時間がかかった。
ここに来て、私は変わったと思った。でも、それは私の世界だけだと思っていた。
だけど、それは他人の世界にも影響を及ぼしていたらしい。
私は変われるのかもしれない。だけど、それが私には信じられない。
だって、そんな風には生きてこなかったから。そんな風に言ってくれる人はいなかったから。
自分でも思ってもいないことだったから。

「…碇さん。鈴原君?」
何も出来ずにいると、ドアが開き綾波が帰ってきた。思考を打ち切るにはちょうど良かった。
「おかえり、綾波。ごめんね、勝手に入っちゃって」
「プリント届けにきたんや。ほれ、そこ置いといたで」
「そう…」
綾波は辺りを見回す。部屋の変化に気付いたようだ。
「あの、部屋片付けておいたから」
「え?」
「大丈夫、ゴミ以外触ってないから」
そう言って、ゴミ袋を手渡した。
綾波は不思議そうな、驚いたような顔をして僅かに頬を赤く染めた。
あまり感情を見せない綾波にしては珍しい。そして、思いもかけない言葉を貰った。
「あ、ありがと…」
「え、あ?ど、どういたしまして」
綾波は小さくお礼の言葉を口にした。私も返事を返す。
ありがとうなんて言われるの、久しぶりだ。こうして返事を返すのも。
当たり前だけど、父さんにだって言ったことも言われた事もない。
何となく恥ずかしくなって、私も顔が赤くなってしまった。
「お前ら何二人で気恥ずかしいことしとんねん…」
「へ?あ、その。えへへ…」
微妙な空気の中、トウジがそんなコメントをくれた。
そう、何でこんなに恥ずかしいんだろう?気を取り直して、綾波に話しかけた。
「そうだ、綾波ちゃんとご飯食べてる?紅茶くらいしかないし」
「一応食べているわ。でも紅茶ってあってもいれたことなかったから…」
その後、綾波の家で紅茶を飲んで帰った。それは少し苦かったけど、とても暖かかった。

154:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/05 02:35:22
レイとトウジって意外な組み合わせだよなぁ
新鮮だ

155:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/05 05:56:54
GJ!

156:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/05 08:05:07
これってトウシンになるの?
でもこの先トウジは死ぬんだよな

157:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/05 14:02:32
分かんないぞ
分かんないぞ


158:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/05 15:33:52
7巻22ページで、ゲンドウに殴りかかるシンジきゅんが
おにゃのこにしか見えない俺はもう駄目ですか?
何か、胸あるように見えるし

159:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/05 16:04:09
>>158ああ、もう手遅れだ…
すでに、戻れないくらい君もナカーマだよ

160:621の続きで
06/09/05 21:55:56
白い湯気がゆらゆらと立ち昇る。
良い香りのする茶色い温かな飲み物。
舌に感じた僅かな苦味。
火傷した指先が少し痛む。
だけど、痛みは生きていることの証。

「綾波、大丈夫?ちゃんと冷たい水で冷やしておいてね」

碇さんが、熱湯の入ったやかんを触ってしまった私を気遣う。
黒い瞳が心配そうに彼女は私を見つめた。
そして、もうひとつの瞳が私達を眺めているのに気付く。
幾分背の高い彼が、私達を見下ろしながら言った。
とても興味深げに。

「なんやお前ら姉妹みたいやな」

姉妹。
私達が。
同じものから生まれたもの。
似てるということ。
仲がいいということ。
彼が言いたいのはそういうことだろう。
でも、わからない。
そういうことは、よくわからない。


161:621の続きで
06/09/05 21:58:17

「でも綾波はお姉さんというより、『お母さん』みたいだよね」

そう言って、彼女は笑う。
何故そう思うのだろうか?
意図が分からず彼女を見つめるていると
少し考えた後、何かを思い出したように言った。

「前の掃除のときの雑巾の絞り方。あれが何だかお母さんみたいだったから」


母親。
何かを生み出せるもの。
何かを育てることができるもの。
彼は私達を姉妹のようだと言う。
彼女は私を母親のようだと言う。
よくわからない。
そういうことは、わからない。

けれど。

「なにを言うのよ…」

けれど、不思議と悪い気はしなかった。


162:621の続きで
06/09/05 21:59:15
「じゃあ、綾波。また明日ね。紅茶ご馳走様」
「じゃあな」
「火傷、ちゃんと手当てしてね。薬が無いときはバター塗るといいって聞いたことがある」
「年寄りかお前は…」

彼女達はそう言って帰っていった。
いつもは無機質で殺風景な部屋は、綺麗に片付けられ
彼女の温かさがまだ残っているような気がした。
いつもの、無機質な空間。
私はそれが一番落ち着くのに。
それなのに、どうしてだろう。
ベッドにうつ伏せになって考える。
初めて言った言葉を。

 『ありがとう』

感謝の言葉。
あの人にさえ言ったことがなかったのに。
私の心の中にある空っぽの部分。
そこにあるのは、闇なのか、穿たれた穴なのか、
それとも「何も無い」のか。
けれど、その空っぽの空洞を碇司令を思うことで
埋められると思っていた。
私と碇司令の絆。私とこの世界の絆。
けれど、今は違うもので埋めようとしているのかもしれない。
以前に碇さんに言った言葉を思い出す。
何も始まっていないのは、きっと私の方だ。

紅茶の温度は、心まで温めたようだった。


163:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/05 23:40:57
綾波…

164:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/06 00:28:04
アロエ貼ったほうがいいっておばあちゃんに聞いたよ

165:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/06 01:23:14
このまま行ったらEOEどうなるのか楽しみ

166:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/06 22:37:03
今日のトリビアのシンジきゅんが女の子にしか聞こえなかった
可愛いよ、可愛いよシンジきゅん

むしろ快感です
むしろ快感です
むしろ快感です

167:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/06 22:44:17
あぁ、シンジきゅん愛してるよ。

168:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/06 23:23:57
やっぱ女シンジきゅんでも声は緒方さんだなぁ

169:621の続きで
06/09/07 00:02:11
マンションを出ると、もうだいぶ夕闇が迫っていた。
オレンジ色の雲がいくつか空に浮かんでいる。

「はぁ…エヴァのパイロットっちうんは、ホンマ変り者が選ばれるんやなぁ」
「だから、なんだよそれ…」
帰り道、トウジはまたそんな事を呟いた。
咎めつつも、完全に否定ができない事実が痛い。
「まぁ、怒るな。でもアレやな。変り者もそうやけど。
 エヴァのパイロットっちうんは顔で選んどるんか?
 なんや、綾波も惣流も綺麗な顔しとるからな。中身はともかく」
「あぁ…確かにね」
うん、中身はともかく。
「お前も根性悪やけど顔は綺麗やからな」
「へ?」
思わず、素っ頓狂な声をあげてしまう。トウジは、今何を言った?
「お前なぁ…。女やったらそこで礼言うか、照れるかしろや」
「私がそんなことしたって気持ち悪いだけじゃない」
私が綺麗?何を言ってるんだろう。
綺麗って言うのは、綾波やアスカや委員長やミサトさんの事を言うのだ。
私以外の女の人のことを言うのだ。
私なんてちっとも綺麗なんかじゃない。
だからトウジは何を言ってるのかわからない。
「お前ちっとは客観的に物事見たほうがええで。そのうちエライ目にあってまうわ」
やれやれ、と言った感じでトウジが肩を竦める。
その仕草が何ともからかわれたような、子供扱いされたような感じがする。
アスカといいトウジといい、何だって人を子ども扱いするのだろう。
このまま黙っているのも何なので、意趣返しをすることにした。
「良かったね。じゃあ、トウジは一生パイロットに選ばれることなんてないよ。
 変わり者っていうのは当たってるけどね」

170:621の続きで
06/09/07 00:03:38
一瞬ポカンとしたトウジが私を見る。数秒のち、やっと言葉を認識したようだった。
「何やとコラァ!!シンジ!もう一辺言ってみぃ!」
「わぁ!うそ!うそだってば!」
案の定怒りだしたトウジが私の頭を抱えて、拳骨をぐりぐりした。
痛いっ!痛いって!
笑いながら、言った。今度は本当のことを。
「嘘だよ。トウジは格好いいよ。本当にそう思うよ」
「ななななな!何言うとんねん!と、当然や!!」
トウジの夕日に照らされた赤い顔がもっと赤くなった。
…おもしろい。
青い空の下で笑う、無邪気な少年。
きっと彼はこのまま大人になって、優しい綺麗な女の人と結婚して、
子供をいっぱい作って。愛して、愛される人生を送るのだろう。
私が、ずっと欲しかった家庭を彼は作るのだろう。
「どうしたの?」
トウジは口の中でもごもご言葉を繰り返していて、よく聞こえなかった。

目の前には赤い夕日。
どこまでも伸びる影。
子供のときのあの頃とどこか似た光景。
でも、全然違う光景。
私もこんな日々が過ごせるなんて、思いもよらなかった。
早足になったトウジのあとを追いながら、私はまた笑った。

171:621の続きで
06/09/07 00:04:33

「松代での参号機の起動実験。パイロットは四人目を使うわよ」
「四人目?フォースチルドレンが見つかったの?」
リツコに呼び出され、研究室に訪れたミサトは思いもかけない言葉を聞いた。
「マルドゥック機関からの報告は受けて無いわよ」
「昨日報告を受けたのよ。正式な書類は明日届くわ」
コーヒーの香りとキーボードを叩くカタカタという音が部屋に広がる。
ミサトは淡々と告げるリツコの姿に眉をひそめた。
「リツコ、私に何か隠し事してない?」
「別に…」
「ふぅん…。まぁ、いいわ」
こんな時期に都合よく四人目が見つかるなんて…。
疑問はまだ残るが、それは頭の隅に追いやった。
彼女を問い質したところで大した情報は得られないだろう。
ならば、なりふりはかまってられない。
しかし、その前に確認はしておかなくては。
「で、その選ばれた子って?」
リツコが手馴れた動作でキーを叩く。そこに記された真実に言葉を失った。
「…よりにもよって、この子なの?」
液晶モニターは鈍く光を放ち、ただ一人の子供のデーターを映し出していた。


【TOUJI・SUZUHARA】



172:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/07 00:37:33
死亡フラグktkr

173:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/07 00:41:33
ウワァァァァァァン

174:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/07 00:48:17
トウジー死ぬなー(つД`)

175:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/07 01:03:24
サヨナラ、トウジ…

176:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/07 01:17:45
片足がなくなってもいいから助かってほしいが
…無理だなorz

177:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/07 01:24:07
やばい、展開を知ってるからさらに切ない…

178:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/07 01:36:48
初恋は実らないんだなぁ

179:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/07 07:06:05
この先の展開知ってると>>170がすげえ哀しいな
知らないと単にラブに発展する布石としか取らないんだが

180:621の続きで
06/09/07 22:02:24
夕飯のおかずはもう作り終えた。
あとは、ご飯が炊けるのを待つだけだ。炊飯器から白い蒸気が立ち上る。
もうすることはないので、テレビのスイッチを付けた。
今日はミサトさんが仕事でいないから、加持さんが来てくれることになっている。
今日はエビチリに棒々鶏。コンセプトは中華。
ご飯、足りるかな?まだ時間あるからついでにスープも作っちゃおうかな…。
そんなことを思いながらテレビを見ていると、同居人の少女の悲鳴が響いた。
「あっつうぅぅぅぅぅい!!何よあのお風呂の温度!火傷しちゃうわ!」
見ると、バスタオル一枚のアスカがバスルームから駆け出してきた。
人のことはとやかく言うくせに、自分はそんな格好で…。
「ご、ごめん。でもそんなに熱くなかったと思うよ」
「熱いものは熱いのよ!何度で設定したの?」
「41℃」
「めちゃめちゃ熱いじゃない!!」
そんなことない。日本人ならお風呂の温度は41℃だ。
あ、そうかアスカはクォーターで、今まで外国で暮らしてたんだっけ。
「水で薄めれば?」
「今そうしているのよ。まったくもう」
アスカは、バスタオル一枚の格好はそのままで
お湯が冷めるまで私と一緒にテレビを見ることにしたらしい。
「こんなババ臭い番組のどこが面白いわけ?もっとマシなのにしなさいよ」
そう言って、アスカはチャンネルを変えた。
テレビからは、アイドルが歌う歌謡曲が流れている。
特別見たい番組があったわけでもないので、私は台所に戻った。
「なに?なに作ってるのよ?」
「スープだよ。アスカも手伝ってよ」
「何すればいいの?」
くつくつと煮える鍋に興味を持ったのか、アスカが覗き込んできた。
そうだ。ここで料理の一つや二つ覚えてもらえば、私も楽になるかも。
ミサトさんは、家事とか料理とかそういう問題ではないから…。
いつか作ってもらったカレーは凄かったな。
普通はカレーって誰が作っても、大体食べられるレベルになるんだけど。

181:621の続きで
06/09/07 22:04:56
「じゃあ、おたまで灰汁すくって」
「『あく』って何よ?出汁と違うの?」
「……やっぱり味見だけでいい」
「えぇ?何で?」
いきなりやらせようって言うのが間違っていたのかもしれない…。
そんなやりとりをしながら、チラチラとアスカを横目で見る。
綺麗な顔をしていると思う。それに、女の子らしい体つきで…。
「なによ?なに見てるのよ?」
視線に気付いたアスカが不思議そうに私を見つめた。
「あ、アスカは胸が大きくていいなぁって…。どうしたらそんな風になれるの?」
「そうねぇ…」
アスカは興味ありげに隣の私をじろじろ眺めると、またしてもとんでもない行動にでた。
「ぎゃぁ!!」
「うわっ!胸って言うより、骨って感触が…」
「ひ、ひどい…!」
アスカは私の胸を後ろから鷲掴みにしたのだ。そしてこの感想…。
まぁ、もともと掴むほどないから…ってそういうことじゃなくて。
彼女は掌に残った感触を思い出しているようだった。
何か凄い失礼だと思うんだけど…。
「あんたは細すぎなのよ。そうね、そこだけ暖めれば大きくなるんじゃない?
 物は暖めると大きくなるのよ。熱膨張の原理ね。お風呂で揉めば?」
「熱膨張って、人体にも応用できるの?」
「やってみなきゃわからないじゃない。あんた、その大きさじゃ
 胸囲で言ったら相田や鈴原の方があるわよ」
「…………」
「………悪かったわよ。そんなに落ち込むことないじゃない」
薄々感じていたが、はっきり言われると…。
いい。どうせアスカの言うとおりだ。うじうじと床に「の」の字を書いた。
でも一応今日お風呂に入ったらやってみようかな…。
しかし、アスカの格好にも困ったものだ。バスタオル一枚でうろついて。
同じ女同士だけど、こっちまで恥ずかしくなる。…まぁ、私が言えた義理じゃないんだけど。

182:621の続きで
06/09/07 22:06:13
「アスカ、もうすぐ加持さんがくるんだから…」
「何言ってるのよ!加持さんが来るからこそ、清潔にしたいじゃない?
 あーん、あんたがいなかったら加持さんと熱い夜を過ごせたかもしれないのにぃ」
そうじゃなくて、その格好…。まぁ、いいか。まだ時間あるし。
熱い夜…ねぇ。そうだ、アスカは加持さんが好きなんだっけ。
この間帰りに水族館に行ったことがばれたらまた何か言われるかな…。
子供の憧れとは違う意味で、アスカは加持さんが好きなのだろう。
だから、きっと昼間のあの質問はありえない。
「ねぇ、アスカ」
「なによ」
それでも一応確認しておこう。
「トウジのこと好き?」
「はぁぁ!?何であたしがあんなゾウリムシのことなんて
 好きにならなきゃいけないのよ!気色悪い!」
「ゾウリムシ…」
確かこの間はサルだった気がする。
霊長類からいきなり微生物に格下げらしい。物凄い退化の道を辿っている。
「決まってるでしょ。鈴原がゾウリムシで相田がミトコンドリア。
 あんたはそうね、ハムスターかしら?」
私は、げっ歯類とはいえ最初から哺乳類らしい。別に嬉しくはないが。
まぁ、それは置いといて。とにかくありえないってことだ。
アスカは好きな人には優しくして、ちゃんと好きと伝えるタイプだ。
トウジに聞いてもきっと似たような反応だろう。
良かった。よくわからないけど、何だかホッとした。
でもどうしてこんなに安心したのかな?
そうだ。きっと私の常識は正しかったと再認識したからだろう。
「でも何でそんなこと聞くのよ」
「別に…」
つらつらとそんな事を考えていると、アスカが仕返しのように言い出した。
口の端を少し吊り上げて、意地悪っぽく笑う。

183:621の続きで
06/09/07 22:07:17
「あんたが好きだのなんだの、そういうこと聞いてくるなんて
 以外と女らしいとこあったのね~。どういう風の垂れ流し?」
「なんだよそれ…」
「早く例のあんた好みの男が現れるといいわねぇ」
アスカがからかうように笑った。
私の好みって…。アレか…。
もう!また私を馬鹿にしている!
以前、考えていたことを思い出す。

『私が男の子だったら、アスカみたいな女の子を好きになってたのかな』

前言撤回。これこそ、ありえない。
我ながら馬鹿な考えをしたものだ。
自嘲気味に冷ややかな眼差しになってしまった。
「ちょっと!何なのよ!なに人の顔見て笑ってるのよ!」
「べっつにぃ~。ちなみにアスカ。『風の垂れ流し』じゃなくて
 それを言うなら『風の吹き回し』だよ?」
「…ッ…うるっさいわね!あんたって奴は人の揚げ足ばっか取って!」

また怒り始めたアスカを笑って宥める。
もうすぐ、加持さんが来て三人でご飯を食べる。
明日の朝はミサトさんもきっと帰って来る。
学校では、皆と勉強をする。
委員長やトウジやケンスケ達と遊ぶ。

私はそんな楽しい日常がずっと続くとは思っていない。
でも、それが壊れる日がくるのはまだまだ先のことだと思っていた。

184:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/07 22:19:26
乙!!
可愛いなぁこのふたり…
加持さんうらやましいなぁ…

185:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/07 22:20:53
シンジきゅんをハムスターにたとえるということは
つまりシンジきゅんは小動物系で可愛いという解釈で(ry

186:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/07 22:29:26
完璧に死亡フラグたったな…

187:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/07 22:35:38
トウジ「碇…この戦争が終わったら俺たち結婚しよう」

188:621の続きで
06/09/08 23:30:50
「センセ!頼む!数学の宿題見せてんか!?」

トウジが手を擦り合わせて私を拝んでいる。
いつもの朝の風物詩。そんな風物詩、はっきり言っていらないんだけど。
「…また?最近私の宿題あてにしてない?」
「ええやん。一生のお願いや!」
その台詞もとうの昔に常套句になっている。
トウジの一生って何回あるんだろう…。
輪廻について思いを馳せながら、ノートを手渡すと
彼は素早く自分のノートに写し取っていた。
「たまに間違った答えも書いとかんとな。ワシはお前みたいに
 頭の出来がようないし」
そういう事には頭の回転が速い。
その発想を他の事に使えば宿題なんて自分でできるだろうに。
半ば呆れながら、トウジを見てると視線を感じた。
ふと顔を上げると、前の席から委員長が振り返って私を見ていた。
私を。違う、彼女が見ているのは…。
それに気付いてもう一度彼女を見ると、薄っすらと頬を染めて
視線を戻してしまった。こないだのことと言い、委員長は何か変だ。
「ねぇ」
「ん~?」
黙々と宿題を写す目の前のジャージの少年に声をかけた。
「たまには他の人に見せてもらったら?たとえば委員長とか」
「アホか!あんな堅物ドケチが見せてくれるわけないやろが!」
トウジは気付いているのかいないのか、わざわざ委員長を指をさして言った。
ああ、またそんなこと言って…。
「何ですってぇ!誰が堅物ドケチよ!!」
「誰もお前のことゆうてないやんか!」
「しっかり指さして言ってたじゃない!宿題くらい自分でしなさいよ!」

189:621の続きで
06/09/08 23:31:44
案の定、戦争勃発。
これまたいつもの風物詩。お決まりのケンカが始まった。
でも、良かった。いつもの二人だ。
昨日委員長が少し変だったので、何かあったのかなって思ったのだけど
この様子なら安心できそうだ。
でも…。
「なんでお前はいっつもワシを怒るんや!」
「あんたがいつも怒られるようなことするからでしょ!」
「………」
私を無視してケンカはまだ続いている。
よく飽きないと思う。仲良いなぁ。
なんか、一生やってなさいって感じ…?
その時、校内放送が入った。
二人のケンカが一瞬にしてピタリと止んだ。

『…2年A組の鈴原トウジ。至急校長室まで来なさい』

「トウジ、呼んでるよ」
「あぁ?なんねんな、一体」
「あなた何かやったの?」
委員長が怪訝そうに聞いた。
「アホ。心当たり無いわ。まぁ、何や知らんけど。とりあえず行ってくるわ」
そう言ってトウジは校長室に向かった。
その背中を、委員長が心配そうに眺めていた。
「何かあったのかな?校長室だなんて」
近くにいたアスカに声をかけると、私の質問は無視して彼女は立ち上がった。
「あーあ、見てられないわね。行くわよ!シンジ!」
「へ?あ、あの。アスカ?」
疑問符だらけの私を引きずって、アスカは委員長の肩を叩いた。

190:621の続きで
06/09/08 23:32:44
「まったくもう~、駄目じゃん。そんなんじゃいつまで経っても進展なしよ!」
開かれた屋上は空が近い。青い空にはいくつかの雲。
風が気持ちいい。きっとこういう状況じゃなきゃそう思えただろうに。
アスカがなんで委員長をここに呼び出したのかわからない。
何故私が引っ張り出されるのかはもっとわからない。
そんな私は関係無しに話は進んでいるようだった。
「水臭いんだから!何でもっと早くあたしに相談しないのよ」
「なんのこと?私にはさっぱり…」
「もう!とぼけるのもいい加減にしなさいよ!ヒカリの態度を見てたら
 誰だってわかるわよ!」
いや、わからない人がここに一名いるんですけど。
でも、ここで口を出すとせっかくの話の腰を折ってしまいそうで黙っていた。
委員長は伏せ目がちに言いにくそうに切り出した。
「いいのよ。私は別に、このままでも…」
「駄目よ!そんなの!」
びっくりした。
アスカは普段声を荒げることはよくあるけど
普段のそれとはまったく違っていた。
アスカは真面目な顔をすると、精一杯の言葉を紡いだ。
それはまるで、委員長だけじゃなく自分自身にも言い聞かせてるみたいだった。
「今のこの時代のことを考えて御覧なさいよ。あたし達、今はこうして
 のほほんとしてるけど、明日はどうなるかわからないのよ」
いつまたあの敵が攻めてくるのかわからないそんな毎日。
だからこそ、悔いが残らないようにと彼女は言う。
「伝えたい気持があるなら、ちゃんと伝えないと」
そして、アスカは悪戯っぽく片目を瞑った。
そのまっすぐな言葉は私の心に強く残った。
そして、それはきっと委員長にも。
「そう…よね…」
委員長は、そう小さく呟いた。
その呟きは本当に小さなものだったけど、しっかりとした決意に満ちていた。

191:621の続きで
06/09/08 23:34:00
ようやく話の本題に入れそうだ。
その前に、一つ聞いておかなければならないことがある。
「あの、アスカさん。一ついいですか?」
「はい、シンジさん。手早くね」
「あの…結局なんの話をしているの?」
私の言葉に、アスカの顔が一瞬歪んだ。
信じられないものを見るような眼差しのあと、呆れた声で言った。
「あんたバカぁ!?本当ッ鈍いわね!ヒカリはね、鈴原のことが好きなのよ!!」
「へぇ、そうだったんだぁ。…………って、えぇぇえぇえぇえ!?」
近くなった空に私の奇声が響いた。
だって、二人はいつもケンカばっかりしてるし。
そんな風には全然…。
「ふぅ…。お子様のあんたに恋心を理解させるってことが土台無理な話だったわ…」
「お、お子様!?だって…!」
「鈍いにも程があるわね…。恋をすると人は気を引くために色んな行動を取るの!
 それが女心よ!気付いてないのはあんたと鈴原本人くらいよ」
アスカがうんざりしたようにため息を付いた。
また馬鹿にされたような気がしたけど今はそんなのどうでも良かった。
やっと気付く。そうか、委員長が何かにつけてトウジに注意したり
話しかけていたのは、好きだったからなんだ。
そう考えると合点が付く。
でも、好きな人に冷たくしちゃうのも女心か…。
ミサトさんも加持さんに冷たいし。
じゃあ、私は好きな人が出来たら、どうなるんだろう。
私はずっと思ってた。
私を一人にしないで傍に居てくれる人。
優しく抱きしめてくれる暖かい太陽みたいな人。
そんな人がいるのかどうかはわからないけど。
そんな人がいたとしても、私を好きにはなってくれないだろうけど。
思考が違う方向に行きそうになるのを止めた。

192:621の続きで
06/09/08 23:35:00
「じゃあ、前保健室で色々聞いてきたのは…」
「あ、あの、碇さん。そのことなんだけどね…」
委員長が組んだ手を胸に添えながら私の前に来た。
その姿はまるで祈りの姿のようだった。
そして、あの日の保健室で見たときのような赤い顔で私に言った。
「碇さんって…。鈴原と、付き合ってるの?」
「違うよ」
「即答ね。シンジ」
脳内で言葉を認識すると同時に答えを出した。
だって、違うものは違うんだもん。
それでも、しばらく押し問答は続いた。
「でも…」
「うん?だって、違うし。ありえないし」
「本当?」
「こんなので嘘吐かないよ」
だってトウジは友達だ。
一緒にいて楽しいし、話していると面白いし。
それにトウジには私なんかふさわしくない。
彼は私なんか好きにならないだろう。
彼には幸せになって欲しい。
だってトウジは私が夢見た、ずっとなりたかった理想の男の子だから。
綺麗で、優しい人と一緒になるんだ。
優しい彼は、同じ優しくて綺麗な人を愛して、愛されて。
私が幼い頃夢見た温かい家庭を作る人だ。作れる人なんだ。
そうだ、委員長みたいな可愛くて優しい女の子と。
そんな想像を思い描き、うんうんと一人で頷いた。
「じゃあ、話は早いわ。シンジ!」
アスカは私に向き直ると指をさして言った。
「あんた鈴原と仲良いんだからわかるでしょ?」
「何が?」
「どうしたらあの熱血ジャージとヒカリがラブラブになれるかよ!」
なるほど。だから私が呼ばれたのか…。でも。

193:621の続きで
06/09/08 23:35:51
「そんなのわかんないよ…」
「あんた達、大体いつも一緒につるんでるんだから
 あいつの好きなものとか、何でもいいから心当たりあるでしょ?」
そんなこと言われたって…。
さっきまで、鈍いだのお子様だの言われて実際そうだった私が
どう考えたらクラスメイト達の恋のキューピッド役ができるのだろう。
それでも、何か言わなきゃ罵倒されそうだし…。
何か言わなきゃ。何か…。
トウジは何が好きだったけ?
いつもどんなことをしてたっけ…?
「……あ、そうだ」
「何か浮かんだ?言いなさいよ」
「えーっと、お弁当とかどうかな?あいつ、いっつも購買のパンばっかだし
 委員長、料理上手だから手作り弁当とか作ってあげたら…?」
トウジが、以前私のお弁当を美味しそうに食べていたのを思い出した。
トウジも母親がいないし、他の大人は忙しいので誰もお弁当を作ってくれる人が
いないらしい。だからきっと、喜ぶと思うんだけど…。
「ど、どうかな?」
「………」
そう提案すると、アスカは腕を組んで考え事をし始めた。
青い瞳が私を見つめる。
………また罵倒?
審判を待っているとアスカは言った。
「それ採用!あんたにしては上出来!単純かつ古典的だけど
 あのバカには効き目ありそう!」

…良かった。しかも何か褒められた。



194:621の続きで
06/09/08 23:38:31
そうかぁ、委員長はトウジのことが好きだったんだな…。
薄っすら頬を染めた彼女を見つめて考えた。

「鈴原、食べてくれるかな?」
「そんなの当たり前じゃない!ね、シンジ」
「え!?う、うん」

 ………あれ?

「どうしたの?」
「な、なんでもないよ。きっと、喜ぶよ」

 あれ…?何だっけ?

今、なんとなく胸がもやもやしたような?
喉元まで疑問が出かかったような気がしたけど…。

 えーっと…。


 何だ?


「じゃあ、明日さっそく作ってこようかな」

でも、それはほんの一瞬だった。
委員長が本当に嬉しそうに笑ったから。
その笑顔を見たら、その時覚えた違和感は全部消し飛んでしまったので
私はそれをもう二度と思い出すことはなかった。

195:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/08 23:50:25
GJ!
嗚呼、トウジ・・・・でも、好きな人?に殺されれば幸せかな。

196:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/08 23:52:28
GJ!!
し、シンジきゅん…!!
それはもしかして、嫉妬というやつでは…!?

197:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/09 00:41:45
モツカレー

198:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/09 05:58:27
>「あの、アスカさん。一ついいですか?」
>「はい、シンジさん。手早くね」

なんかいいね

199:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/09 09:26:48
シンジきゅん、トウジが好きなんて。裏切ったな!僕の気持ちを裏切ったなw

200:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/09 10:53:40
ぬるぽ

201:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/09 11:04:57
イインチョをもっと活用せんと

202:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/09 19:19:17
シンジが女だとアスカもこんなに素直なのか

203:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/09 19:39:45
女にあのままだったら、凄いことになるだろうが
でも仲良し風なだけあって後半欝展開がなぁ…

204:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/09 19:58:30
初期はとんでもないDQNだった

205:621の続きで
06/09/09 22:23:20
「鈴原、どうしたのかな?」
「結局あれから教室に戻ってこなかったもんね」
「何かよっぽど悪いことでもしたのかしら…」

帰り道、委員長とケンスケと歩く。
高く高く澄み切った青空に蝉の声が響く。
太陽の光を受けたビルは、反射して白く輝いて見えた。
アスファルトからの照り返しが暑い。
いつもの帰り道。
でも、いつもとは少し違う。
彼がいないから。
トウジはあの校内放送で呼び出されたあと、結局戻ってはこなかった。

「でも、トウジはそんな悪いことするような奴じゃないよ
 きっと、ただのサボリじゃないかな?」
心配そうな委員長を安心させるために言った。
トウジは確かに短気なところがあるけれど、
無意味に誰かを何かを傷つけるような性格ではない。
「……碇さんって、本当に鈴原と仲が良いのね」
「…え?だって、友達だし」
「うふふ…。じゃあ、碇さん。私、こっちの道だから」
そう言って彼女とは途中で別れた。
返り際、小さく手を振りながら委員長は微笑んだ。
少女らしい優しい笑顔だった。

その細い背中が小さくなるのを見届けていると
会話が終わるのを待っていたのか、ケンスケが
眼鏡の位置を直しながら伏せ目がちに言った。
「ところでさ、ちょいと気になる情報を仕入れたんだけど」
「…なに?」

206:621の続きで
06/09/09 22:26:07
彼は、以前も聞いたけどエヴァのパイロットに憧れている。
そのせいで、父親のパソコンから私達ネルフ関係者しか知らないような
情報を仕入れては、私に問いただすのだ。
今日もまた、新しい機器が入っただの前回の使徒殲滅についてだのの質問だろう。
そう高をくくっていると、彼は言った。予想もしなかったことを。
「エヴァ参号機。アメリカで建造中だったんだろ?」
「参号機?そんなの聞いたこと無いよ」
「松代の第二実験場で起動実験やるって噂だよ。ホントに知らないの?」
ネルフ本部に現在存在するエヴァンゲリオンは、
綾波の零号機、私の初号機、アスカの弐号機だけだ。
それ以外は存在しないし、他にあるだなんて聞いたことが無い。
「…うん」
知らない。そんなこと私は知らない。
発表が遅れているのか。
だから私達にはまだ知らされていないのか。
でも、幾ら考えたって私には知る術がない。
そう考えてると、ケンスケがいきなり私の肩を掴んだ。
「隠さなきゃいけない事情もわかるけど教えてくれよ!パイロットはまだ決まってないんだろ!?」
「そ、そんなこと言われても」
「あ~、ミサトさん俺にやらせてくれないかな?な、お前からも頼んでくれよ!」
一通り肩を揺さぶったあと、またしてもいきなりその手を離し
今度は指を絡め天に祈るようなポーズを取った。忙しいな…。
そうだ、参号機があるってことは新しくパイロットが増えるってことだ。
だからこの慌てよう…。ケンスケも好きだなぁ。
でも、いくら私がネルフ関係者だからって
パイロットの選抜に私が口を出せるはずは無い。
たとえ本当に参号機がこちらに移送中だったとしても。
「ちぇ!でも千載一遇のチャンスなんだよなぁ~」
乱れたブラウスを直しながら告げると
ケンスケは、しょんぼりと肩をすくませて悔しそうにしていた。
そして、次の瞬間に呟かれた言葉は私を酷く混乱させた。

207:621の続きで
06/09/09 22:27:17
「アメリカで建造された四号機は欠番になったって言うし」
「…なにそれ?」
「ほんとにそれも知らないの?」
きょとんとした顔でケンスケを見つめると、彼もまた不思議そうな顔をした。
「第二支部ごと吹き飛んだって、パパのところでは大騒ぎだったんだぜ」
ミサトさんからは何も聞かされていない…。
私だけじゃない、きっとアスカも。
最近ミサトさんは帰りが遅い。
もしかして、ケンスケの言うとおりだから?
だったら、どうして…。
「あ…。やっぱ末端のパイロットには直接関係の無い事だからな。
 言わないって事は知らなくてもいいってことなんだろ」
知らずに無口になった私を気遣ってかケンスケが言う。
そうだ。きっとそういうことなんだろうけど。
でも。
「ごめんな。変なこと聞いて。じゃ、明日な」
彼もまた、家路に着くため途中で別れた。
やっぱり私はその背中を見送ることしかできなかった。

空が青い。
高く澄み切った空。
蝉が鳴いている。
少し翳った日差しは先ほどより和らいでいた。
もう誰もいない。
一人で立ち尽くす。
見上げてみると、頭上には太陽と白い雲。
日の光は変わらず惜しみなく降り注ぐ。
いつもと変わらない町並み。
小さく一歩を踏み出した。
眩しいくらい輝く空の下、私の心は晴れなかった。

208:621の続きで
06/09/09 22:28:18
なんだろう、なんだか。
嫌な予感がする。
ここに来て、私の世界は変わった。
一人ぼっちだった私の世界には少しずつ他人が増えた。
灰色だった私の世界には少しずつ色が着いてきた。
私は、変われるのかもしれない。
だけど、それがまだ私には信じられない。
私が思うとおり、世界はきっと変わったのだろう。
でも、元居た私の世界が色づき始めたように
ここに来て変化した世界もまた、いずれ変わってしまうのだとしたら?
他者の手によって、簡単に壊れてしまうような脆弱な世界だとしたら?
真実はいつも遠すぎて掴み所がなく、私の手には届かない。
私の知らない所で、私には止められないほど強い大きな力で世界は動いてる。
真実を知って、どうしようっていうんだ?
真実を手に入れて、どうなるっていうんだ?
それに手が届いたとき、私は…どうするんだろう?
胸のざわざわが収まらない。
こんなことはただの考えすぎだと思いたい。
ケンスケが言っていた、エヴァンゲリオン参号機の起動実験。
だったら、もう一人パイロットが増えると言うことだ。
一体誰がまた、この戦いに巻き込まれるんだろう?
私も今まで、死にかけたり、散々な目に合って来た。
自分が傷つくのは怖い。
でも今は、自分が傷つくよりももっと怖いことは…。



209:621の続きで
06/09/09 22:29:26

気が付けば、ずっと足元ばかりを見て歩いてる。
失くした物がそこに落ちてることを信じているみたいに。
太陽が傾きかけ、影はさっきより伸びている。
その向こうにあるものが知りたくて、私は顔を上げた。


「………トウジ?」

「シンジ…」


影の向こうに居たのは、見知った一人の少年だった。
同じ年頃の男の子達と比べ、幾分発達した体格。
日に焼けた健康そうな褐色の肌。
短く切り揃えられた張りのある黒髪。
いつもと変わらない彼。
でも、その瞳はいつもの挑みかかるような強い視線ではなく
どこか淋しげな色をしていた。

「どうしたの?こんなところで…。トウジの家、こっちじゃないのに」
「ちょっと、買い物」

そう言って、トウジは今まで寄り掛かっていた柵から立ち上がった。
彼の家はこの道とは逆方向のはずなのに…。
でも、それじゃあまるで。

まるで…私がこの道を通るのを待っていたみたいだ。


210:621の続きで
06/09/09 22:31:06
そんなはずは、ないだろうに。自嘲気味に笑った。
「あれから、教室戻ってこないから、皆心配してたんだよ」
「あぁ、別に大したことじゃあらへんかった」
手持ち無沙汰に鞄を弄りながら、こちらは見ずに彼は独り言のように呟く。
いつも、人と話すときは相手の目を見て話すトウジなのにそのときは違っていた。
「けど、ちょっとと教室戻るんがかったるかったんでな」
彼は視線を合わせない。私を見ない。
虚ろに何処か遠くを見ている。
誰かに似ていた。
誰に?
そうだ、昔の私だ。
灰色の世界に一人ぼっちだったあの頃の私。
「トウジ…?」
小さく彼の名を呼んだ。
少し傾いた太陽に照らされた横顔は私の知らない男の子のようで、少し恐かった。
私の呼ぶ声にトウジは一度だけ瞳を伏せ、そしてゆっくりと開いた。
黒い瞳に私が映る。

「なぁ、シンジ」

そのとき私は初めてトウジの顔を見た気がした。トウジは私の目を見て言う。

「今日、これからうち来いへんか?」

「……え?」

いつもの、挑みかかるような強い瞳。けれど、どこか淋しそうな眼差し。

「ホンマはお前のこと待っとったんや。…聞きたいことあんねん」


211:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/09 23:01:13
乙です。

>そのとき私は初めてトウジの顔を見た気がした。
このFF通して一番はっとした表現ですね。

212:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/10 00:31:34
だんだん上手くなってるよな


毎日の楽しみだが、胸が締め付けられるわけです


213:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/10 11:30:31
GJ!!

214:621の続きで
06/09/10 21:58:51
「ねぇ、何か手伝おうか?」
「ええからお前はじっとしとき。
 ワシ、料理中に手ぇ出されるんが嫌なタチやねん」
「あー、でもほら。人参でかっ!!」
「やかましいわ!お前はワシのおかんか!」

あの後、とりとめない会話をしながらトウジの家に向かった。
家路に着くまでの彼との会話はどこかぎこちなかった。
それでも、いずれいつもの調子を取り戻していた。
夕飯のカレーを作るトウジの手つきを覗き込む。
先程感じたぎこちなさはもう消えていた。
「ええからお前は座っとけ」
危なっかしい手つきに、つい口を出してしまう。
渋々テーブルに着き、辺りを見渡す。
トウジとケンスケと一緒に帰ったり遊んだりすることはよくあるけど、
こうして男の子の家に上がるなんて、そういえば、初めてだ。
今更気付いた。何か変な感じだ。
台所に立つ彼の背中を見つめる。いつもと変わらない、はずなのに。
その背中は、私からわざと目を逸らそうとしているみたいだった。

215:621の続きで
06/09/10 22:00:11
「どや、いけたやろ?ワシのオリジナルカレー」
「…うん」

出されたカレーはとても美味しかった。
そのことを言うと、トウジは嬉しそうに笑った。
だけど…
「ねぇ、聞きたかったことって…。カレーの感想?」
後片付けをしていたトウジは、振り向いて一瞬こちらを見た。
ああ、まただ。
縋るような淋しげな目。
「何やったかな。忘れてもうた」
その視線もすぐ遮られた。背を向けて彼は言う。
聞きそびれたのか、はぐらかされたのか…。
トウジが何を聞きたかったのか、私にはわからない。
言われなければ、私にはわからない。
言いたくないのか、言えないのか、それさえも。

「後片付け、私も手伝うよ」

だから、聞かなかった。

216:621の続きで
06/09/10 22:01:42
沈黙は嫌いではない。
元々、お喋りな性質ではないから。
ここに来て、話をしなくても間が持つ存在が増えたから。
お皿を洗う水音と、食器が擦れ合う音が響く。
「なぁ…」
「…なに?」
おもむろにトウジが口を開く。
「そういえば、腕の傷。大丈夫なんか?」
傷…?
そうだ、前に掃除中に委員長とトウジにぶつかったとき
掃除用具が落ちてきてできた傷。
大げさに血が出た割には、擦り傷程度だったので
もうすっかりよくなっていた。
「平気だよ。かすり傷だったし」
「そうか」
トウジはぼんやりと返事を返す。
お皿を拭きながら、トウジの顔を見ようとした。
そのとき、彼は小さく呟いた。
「ワシはお前を傷つけてばっかやなぁ…」
その声はとても小さなものだったので、危うく聞き逃すところだった。
今日のトウジはどこかおかしい。
「…トウジ?」
今度こそ聞こうと、口を開くと後ろから声をかけられた。
トウジのお祖父さんだ。新聞からは目を話さずに言う。
「あんた、うちの人が心配しとるんとちゃうの…?
 女の子が連絡も無しにこんな遅うまで追ったらあかんよ」
「あ、これ洗ったらちゃんと帰りますから」
それから私達は一言も喋らなかった。

217:621の続きで
06/09/10 22:03:15
「じゃあ、ご馳走様。もう帰らないとミサトさんうるさいから」
「ああ、遅うまで引き止めて悪かったな」
外は確かに暗くなっていた。
空はオレンジ色の光と紺色の闇のグラデーションになっている。
もうすぐ日が沈んでしまう。
「また明日。学校でね」
「あ、ああ」
そうしてマンションを出た。トウジは私の背中を見送っていた。
同じ様なドアが並ぶ廊下を歩き出す。
数歩歩いたところで、私の足は止まった。
止まらずを得なかった。
「シンジ!」
肩に置かれた大きな手。
後ろを振り向くと、そこには信じられない暗い目をした彼が居た。
「トウジ…。どうしたの?」
肩に置かれた手はそのままに、虚ろに私を見つめる。
縋るようなその目。
帰るところがわからない迷子の小さな子供のような。
「シンジ…お前、何であれに乗るんや?」
「……トウジ?」
「初めて、エヴァンゲリオンに乗ったとき…どないやった?」
「……トウジ?」
「怖かったか?痛かったか?せやったら、何でアレに乗るんや…?」
唐突な問いかけに、言葉を失くす。
それでも彼は虚ろな目のまま言葉を続ける。
トウジに向き直り、彼の顔を見た。
愕然とした。
どうしようもない程の影が、彼を覆っていた。
夕闇が迫る。
太陽はもうすぐ沈んでしまう。
「なんでそんなこと…」
「ええから答えてくれ!!」

218:621の続きで
06/09/10 22:04:07
トウジは叫んだ。知らない人みたいだった。
その声に、一瞬怖くなって逃げ出したくなったが思い留まる。
トウジは深い深い闇に沈んでいくように見えた。
断罪を待つ罪人みたいな。
でも目の前にいるのは知らない人間じゃない。
罪人でも人殺しでもない。
私の知っている彼だ。
「どうしてそんなこと聞くの?」
こんなこときっとうまく言えない。わからない。
自分のことなのにうまく説明できない。
トウジは、初めて会ったときに私を殴ってしまったことを未だに引きずっているのか
傷ついた妹のことを思い出すのか、あまり深くネルフの話はしない。
それなのに、今更…。

陽が、傾く。

陽が。

やがて最後の陽の光も途絶えたとき、トウジは口を開いた。

「ワシ、今日…。ネルフの人来て――。パイロットになれ、言われたんや」

彼の言葉を、知覚するのに時間がかかった。
視界が歪む。
世界から他の音が消えたみたいに、トウジの声だけが耳に響いた。

オレンジ色だった雲は、いつのまにか燃える様な深い闇に染まっていた。
燃えさかる黒い炎の様だった。

219:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/10 22:31:31
キター!!!!
ああ、もうすぐか…

220:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/11 04:39:51 rtaXCSWy
トウジー!!
死亡フラグがビンビンに立ったな…

221:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/11 18:42:19
GJ・・・・・・・

222:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/11 20:49:39 6zbFZiMB
age

223:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/11 22:25:36
さようなら、さようなら。トウジ。

224:621の続きで
06/09/11 23:06:33
最後の陽の光も沈んでしまった。
血のように赤い夕日が闇に染まる。
雲は燃えさかるように影に色付く。
黒い炎みたいに。

「エヴァのパイロットやるんやったら、
 妹を本部の病院に転院させてくれる言うねん。
 そこやったら…今んとこよりずっといい治療受けられる言うし…」
聞こえるのは、二人の浅い呼吸音と自分の心臓の動悸。
そしてトウジの声だけ。切れ切れの呼吸の中、彼は言う。
「エヴァのパイロット言うたら、お前ら女だけやろ?
 せやったら、ワシにもできる筈やろ?…大したことなんてあらへん」
トウジの唇が小さくが歪む。それは理性か、なけなしの正気か。
暗い影はトウジから離れようとはしなかった。

「せやけど…ずっとそうやって言い聞かせとったんやけど…」

トウジはそう言って、私の前に一歩踏み出した。
私は動かなかった。動けなかった。

「こわい…」

彼はそう小さく呟くと、私の肩を掴んだ。
そのまま縋り着くように崩れ落ちる。
「見てみい…手ぇ、震えとる。…止まらへんのや」


225:621の続きで
06/09/11 23:07:54
そう呟くと、トウジは自分の掌を見つめた。
私とは違う骨張って無骨な大きな手。
何だって掴めそうな優しくて大きな手。
その手は小刻みに震えていた。
いつもの彼とは明らかに違っていた。
闇に怯える子供のようなその顔。
何とかして震えを止めたくて、
彼を闇から救ってあげたくて私は必死で言葉を紡ぐ。
声が掠れてしまうのが嫌だった。
「大丈夫…だよ…」
肩を掴むトウジの手を握り締めると、その手はまだ震えていた。
膝を着いて縋る彼と視線を合わせようと私も屈んだ。
「心配ないよ…。最初は怖いけど、すぐに慣れる。
 確かに戦うのは私達だけど、スタッフが全力でバックアップしてくれるし…」
握り締める手の力を強くする。
トウジは俯いたまま、顔を上げることはなかった。
「それに…エヴァの中は案外安全なんだ。トウジなら大丈夫。できるって。
 私が…。私がやってるくらいなんだから」
喉から零れ落ちる言葉は、やたら掠れて嘘臭く響いた。
アレに乗るのはきっと男も女も関係ない。
何回乗ったって恐怖は薄れることは無い。
死にかけたし、痛い思いも怖い思いもした。
そして、何より怖かったのは記憶を失くすような戦闘をしたときだ。
自分でも気付かないうちに、
誰かを何かを傷つけてしまっているのではないかと不安になる。

226:621の続きで
06/09/11 23:09:16
あぁ、こんなときどんな言葉を言えばいいんだろう?
いつだって、迷ってしまうのは私だったから。
いつも隣にいて、黙って手を差し伸べてくれたのは。
苦しいとき後ろに立って、そっと肩を押してくれたのは。
いつも他の人だったから。
こんな時、どうしたらいいのかわからない。
こんなこと言ったって気休めなのはわかってる。
わかってる。
それでも。
「大丈夫…大丈夫だよ…」
震えるトウジの体を抱き締める。
そしていつかの自分の様に、言い聞かせるように言葉を繰り返す。
今度は自分ではなく、彼に伝わるように。
トウジの体は酷く冷たく感じた。
顔を上げずに震える姿は、まるで泣いてる様だった。
暖めるように抱き締める腕に力を込める。
「すまん…」
「なに言ってるのさ」
「ワシ、お前の気持も知らんと…偉そうに殴ったりして」
「なに言ってるんだ」
懺悔のように呟く。
体は相変わらず冷たいままだ。
触れた体温から思いまで伝わればいいのに。
トウジが落ち着くように。
あの嫌な影が消えてしまうように。
ただ抱きしめた。


227:621の続きで
06/09/11 23:10:37

「すまんな…もうええわ」

どれくらいそうしていたのだろう。
すでに雲も空も真っ暗になっている。
トウジが少し恥ずかしそうに顔を上げた。
まだいつもの元気はなかったが、もうあの影は消えていた。
ホッとして息をつくとトウジは肩を掴む手はそのままに、
真っすぐな瞳で私に問い掛けた。
何かを決意したように。

「なぁ…シンジ、もしワシが上手くエヴァを動かせたら…」
「…え?」
「全部終ったら…、お前に言いたいことあんねん。聞いてくれるか?」
「…?うん、いいよ」
「………そうかぁ」

彼は笑った。
太陽みたいに。
それは、ほのぼのと暖かい柔らかな日差しの様な笑顔だった
だから吊られて私も笑った。
沈んでしまった太陽の代わりに、ぼんやりとした外灯が私達を照らしていた。


228:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/11 23:21:05
GJ!

しかし、これはフラグか? フラグなのか?

229:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/11 23:23:45
この光景を買い物帰りのヒカリが目撃していたら修羅場だな。

230:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/11 23:24:47 6zbFZiMB
乙です!!トウジにはぜひ生きててほしいとこだが…('・ω・)

231:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/11 23:25:51
生きてくれ!トウジ!

232:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/11 23:43:12
>>229
まあ、はたから見ればなにこの厨房カップルって感じだからな。
しかしトウジいいキャラだったのに。

233:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/11 23:55:31
まぁ、あれだ…今までありがとな、トウジ…

234:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/12 00:08:08
うあぁぁ…
あかん…悲恋やあぁぁ…

235:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/12 00:11:36
>>230
死ぬと分かってるからこそのこの切なさ…
パラレル書いてあげたいぐらい

236:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/12 00:14:44
>「全部終ったら…、お前に言いたいことあんねん。聞いてくれるか?」

か・・・完全に死亡フラグや!

乙です。まだなのにもう涙出そうだ・・・

237:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/12 00:18:50
しかもシンジきゅん、ちょっとトウジのこと好きになりかけてたっぽいのに

238:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/12 00:24:35
シンジきゅんの好みのタイプが
>優しく抱きしめてくれる暖かい太陽みたいな人。

んで今回
>彼は笑った。
>太陽みたいに。

自分でも気付かないうちに惚れてたんだな、シンジきゅん…。
初恋は実らんのですな。

239:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/12 00:39:47
シンジがあっさり耐えてるのにトウジはなんで怖気づくの?と思ってたが
よく考えたら何回死んでもおかしくないくらいの体験はくぐってきてるんだな。すまんかったトウジ。

240:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/12 00:43:12
トウジ死ぬなぁ!!生きるんだ

241:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/12 00:44:42
そなの?
シンジがあまり怖がらない(表面的には)のは、生に対する執着心が薄いからだと思ってた

242:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/12 00:54:28
別にトウジが最悪死んでもいいのは俺だけ?

243:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/12 02:36:57
死亡フラグ大盤振舞

244:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/12 07:39:11
使徒戦で生き残っても委員長に菜っ切包丁で刺されそうなトウジに合掌。

245:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/12 10:26:59
菜切包丁ワロス

246:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/12 11:24:28
菜切包丁でどうやって刺すんだよwwwww
斬りつけるならともかくw

247:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/12 11:36:08
そこを無理やり刺すところが恐ろしいわけだよ
楽には死なせないと

248:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/12 12:31:03
菜切り包丁ってほとんどが鉈とか中華包丁みたいな形だぞ
どうやって刺すんだよw

249:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/12 14:24:26
こうしてみると、委員長はダークを持った地雷女ってイメージがあるんだなwww

250:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/12 15:58:06
というか、エヴァキャラ全員

251:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/12 16:24:48
死ぬ前にシンジきゅんに抱き締めて貰えたから幸せじゃないか

252:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/12 21:16:29
URLリンク(www.geocities.jp)

↑これちょっと良かったww

253:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/12 21:19:29
このスレ的には生まれながらの女なのか
男に生まれたが、エヴァに乗ったせいで女性化のどっち?

254:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/12 21:26:21
>>253当然どっちも桶ジャマイカ

255:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/12 21:30:18
なんでどっちかを選ばなきゃいけないんだ?

256:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/12 21:31:07
悪かった。
俺が馬鹿だったよ。

257:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/12 21:37:03
>>256
君の人生も一歩前進だ

258:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/12 21:41:18
>>252
名前でワロス

>>252
つ女装

忘れてるぜ

259:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/12 21:41:45
新参乙としかいいようがないな
お前のせいでいらぬとこで荒れるとこだっただろ
自重して過去スレ嫁

260:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/12 22:10:46
切ねえとか言いながら死ぬのをwktk

261:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/12 23:41:59
>>245,246,248
なんかヒカリというと菜切包丁というイメージが。
文化包丁でもいいかもしれないけど。

262:621の続きで
06/09/13 00:08:39
「じゃあ四日程留守にするけどよろしくね。何かあったら加持に連絡して」
「はい…気をつけて下さいね」
エヴァンゲリオン参号機の起動実験のため、ミサトさんは松代に出張だ。
全部本当だった。目が覚めたらみんな夢なんじゃないかと思ったけど。
そんな奇跡みたいなことは起きるはずもなく朝が来た。
「アスカもね、わかった?」
アスカは昨日遅く帰ってきた後、一歩も部屋から出ていない。
ミサトさんの言葉に、面倒くさそうに襖が開いた。
じっとりとした目で玄関にいる私達を睨むが、すぐに襖は閉められた。
「なんなのかしら、あれ?」
「…ミサトさん」
ミサトさんはきょとんとした顔で私を見る。
整った綺麗な顔。でも今日に限ってその顔はちゃんと見れなかった。
「どうして、トウジなんですか?」
一瞬の沈黙の後、ため息と共に申し訳なさそうにミサトさんは言った。
「決まってしまったものをとやかく言ってもしょうがないわ。
 あたし達がついてるんだから心配しないで。今日はただの起動実験だし」
安心させるように肩を叩くとミサトさんは松代に向かった。
その姿を見送ると、アスカの部屋の前に立ち中にいる彼女に声をかけた。
「アスカ、もう学校行く時間だけど…」
「うるさいわね!!入ってこないで!あんたといい、あいつといい…。絶対嫌よ!わけわかんないわ!」
襖の前で立ちすくむ。ああ、そうか。アスカも知ってるんだ。
フォースチルドレンが、その人物が誰かということが。
扉の奥でアスカは拒絶している。でも、本当は違う理由があるからだ。
小さい頃から訓練を積んでパイロットになったアスカは
エヴァの乗ることにプライドを持っている。
何の訓練も実戦もなしにパイロットに選ばれると言うことが気に入らないのだ。
私の存在もまた、きっと面白くは無いのだろう。でも、だからってどうしようもない。
エヴァに乗らないとここにいることが出来ないから。まだ、ここにいたいから。
今の私には、エヴァにはもう乗らないと決めることなんてできない。
いつもとはちょっと違うけど、それなりの朝の風景。
それでも嫌な予感は昨日から消えない。しみのように心に張り付いたままだ。

263:621の続きで
06/09/13 00:12:21
『フォースチルドレンが到着しました』
『第二班はすみやかにエントリー準備に入ってください』
事務的な声が広大な実験場に響く。先ほど参号機は航空機によって、この松代に到着した。
十字に固定された黒い機体はまるで張り付けられた罪人のようにみえた。
この機体が納入されれば完全に直轄部隊に配属される。
それでこのネルフに存在するエヴァは4機。
エヴァを4機も独占か…。その気になれば世界を滅ぼせるわね。
「鈴原君、どうしたの?緊張してる?」
ケイジに固定された参号機を見上げる見知った少年に声をかける。
一瞬驚いたような顔をした彼は、それでも気丈に微笑んだ。
「ああ、平気ですわ。こんなんどうってことあらへん」
「…ごめんなさいね。急に決まってしまって」
アスカはいい。エヴァに乗ることにプライドがあるから。レイも、少し違うが同じことだ。
きっと、私達に関わってもいいことは一つも無い。それをよくわかっているのはあの子だ。
だから言い出せなかった。結局、秘密のままにはできなかったけれど。
「ええんです。これは、ワシが自分で選んだことなんですから」
「でも…」
「神様なんておらんからな。自分の力でやらなあかんねん」
この子は。そしてあの子達はきっと…。
きっと自分が思ってるよりずっと、世界の仕組みをわかってる。だけど…。
「そう。やっぱ男の子は違うわねぇ。もうアスカやシンちゃんなんてさぁ~」
だけど、あの子達には私みたいなひねた大人にはなって欲しくなかった。


「じゃあ、もうすぐ始まるから。気が済んだら戻ってきてね」
緊張をほぐそうと、優しく微笑んだ彼女を見送ってから黒い機体をもう一度見上げた。
「はぁ…これがワシのエヴァかい。何や怖い顔しとんなぁ」
そんな感想を抱きながら、昨日のことを考える。自分らしくない恥ずかしい所を見せてしまった。
それでも、昨日思ったことは本当だった。
「―――――。」
全てが終わったら彼女に言いたいことを呟いた。
その声は、実験場にこだまする機械音に紛れ、たぶん、誰にも、自分の耳にも届くことなく――消えた。


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