落ち着いてLRS小説を投下するスレ3at EVA
落ち着いてLRS小説を投下するスレ3 - 暇つぶし2ch367:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/20 16:36:43
すんません、やっぱしこれで第四集は終了とします。
区切りの良いとこまでいかないとね、ってことで書いちゃいました。

368:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/20 16:41:16
>>367


369:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/20 17:26:38
>>367
死ね!くたばれチンカス野郎!もう2chくんな!

370:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/20 19:07:42
>>367
乙。

> 材料も足りないのに色々工夫している。
> 野菜も多くてとても健康的だ。

足りないの?潤沢なの?

371:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/20 21:15:38
ニート乙

372:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/21 14:54:04
>>370

ヒント:乾燥野菜

373:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/21 15:04:01
>>366書き直し



一日の終わり、碇君は発電機の電源を消しに屋外に出た。

私は窓辺に折りたたんでいる赤いプラグスーツに目を移した。
そして、私は静かに窓辺に近寄るとプラグスーツを手に取った。

懐かしい感触だった。
柔らかいが極めて耐久性の高い繊維のそれ。
私たちがEVAに搭乗していたころ、彼女はこれを着ていた。
彼女とともに幾度も死地を乗り越えてきた赤いプラグスーツ。

一昨日のような醜い感情はもう湧いてはこなかった。

ごめんなさいセカンド。
ごめんなさい碇君。

赤いプラグスーツにぽとり、と涙が落ちた。
一滴、二滴…。

発電機のエンジン音が聞こえなくなり、明かりがふっと消えた。

私は涙を拭うとそっとセカンドのプラグスーツをもとの窓際に戻した。

おやすみなさい。
私は呟いた。


374:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/21 15:07:11
「綾波、しっかりつかまっててよ。」

次第に砂利で粗くなる山道に自転車を走らせながら碇君は言った。

「ええ。」

この日、4月8日。
私たちは釣りをするために家から5kmほど離れた山の谷間にある渓流に向かった。
図書館で借りた本によるとこの川にはかなり豊富な種類の魚が生息しているという。

当初、碇君は自転車で現地に向かう計画を立てていたのだが、私が自転車を上手に乗りこなすことが出来なかったため、
苦肉の策として碇君の運転する自転車の後部に乗せてもらうことになった。
私はこれまで自転車に乗った事などなかったのだ。

碇君が運転手。私は自転車の後部に釣具を持って座らせてもらうことにした。
お尻が痛かったがこの際文句は言っていられない。

朝、家を出てから一時間と少し。
もう目的地は目の前だがだんだん山道が不親切になってきており、さすがの碇君もかなり息が切れてきたようだ。

倒木も多くなってきた。もう自転車で行くのは限界だろう。

私たちはここから歩いていることにした。
山の中は晩秋の香りが漂っていた。
何百枚もの色づいた木の葉が舞い降りるなか私たちは歩いた。

「碇君、もっとゆっくり歩きましょう。」

「ごめん、早すぎた?」

「いえ、もっと周りを見て歩きましょう。」


375:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/21 15:08:30
大体この辺りが本にも書いてあった釣りポイントだろうか。
私は川の上にかけられた木橋から、碇君は数mほど離れた大岩の上から釣り糸を垂らした。

鮎だろうか、たくさんの川魚が泳いでいるのが見て取れる。
15年続いた夏の影響か、巨大なものも泳いでいる。
にもかかわらず全く糸にかかってはくれない。
餌だけ見事にかすめ取られてしまうのだ。

「まあ…僕達、初心者だからね…仕方ないよ…」

碇君は苦笑していた。
だが、今日は昼食をあまり持ってきていなかった。
ここで魚を釣れなければかなりひもじい思いをするのは確実だ。
内心、彼はかなり焦っていたのかもしれない。

だがチャレンジから二時間ほど経ったあるとき、遂に私は一匹目を釣り上げた。
人生で初めて釣った魚にしては食べるには勿体無い程見事なものだった。鮎のようだ。

この魚が馬鹿だっただけかもしれない、と考えたが直後に、二匹目、三匹目と続いた。
ここの魚は余程馬鹿なのね。

だがそれにしても碇君は全く釣れなかった。
昼はとうに過ぎていたがせめて彼が一匹目を釣り上げてから昼食にしよう。


376:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/21 15:09:54
そして、昼の二時過ぎについに一匹目を彼は釣り上げた。
やや小ぶりだが立派な鮎だ。

彼は、余程嬉しかったのだろうか釣り糸の先で暴れている鮎をみつめている。
が、糸をぶらさげているだけで何故か魚を糸から外そうとしない。

数秒後、彼はかなり言いにくそうに私に話しかけた。

「…あ…綾波…できれば…魚…外してくれない…?」

「…?」

かなり元気な鮎らしく、釣り糸の先で猛烈に暴れている。
要するに彼は鮎を触ることができないのだ。

「あなたは鮎が怖いの?」

「う…その…死んでる鮎なら触れるんだけど…」

「生きてる鮎は触れないの?」

「…」

彼は赤くなってうつむいた。


377:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/21 15:11:30
私たちはその場で生きた鮎を串刺しにして塩焼きにした。
串に刺したのは私なのは言うまでもない。

久しぶりの新鮮な魚に私も碇君も無言でかぶりつく。
冷凍や真空パックの魚とは比べ物にならない。
たまにはこういうのもいいのかも知れない。

隣で豪快に鮎にかぶりついている碇君に目をやる。

私を後ろに乗せて何kmも自転車で走ることができる碇君。
30kgもの荷物を背負って朝から晩まで歩き続けることができる碇君。
どのような家事も楽々こなしてしまう碇君。

その彼が、生きた魚一匹触ることが出来ない。

私は思わず吹き出してしまった。
碇君と目が合った。

駄目、笑いが止まらない。

碇君の顔は真っ赤だったけれど。
その様子があまりに滑稽だったのだ。


378:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/21 15:13:20
「綾波?」

僕は後ろの綾波に呼びかけたが、彼女は返事をしなかった。
僕の背中にもたれかかっているようだ。
おおかた、眠ってしまったのだろう。
今日は一日、本当に楽しかったから…

横に吊り下げたクーラーボックスには魚が唸るほど詰め込まれている。
八割は綾波の戦果だ。

今日の夕飯を何にしようかということを考えても良かった。
でも、僕には気になって仕方が無いことがあった。
この数ヶ月間で幾度も反芻していながらも消化しきれずにいたこと。


僕達は世界で二人だけだ。
僕達が生きている間に他の人々が戻ってくることはまず望めない。

そして、綾波はこの世界で唯一の他人だ。
これからの一生、僕は綾波と暮らしていかなければならない。
僕は綾波なしでは生きていけないし、綾波は僕なしでは生きてはいけない。

僕は背中に綾波の体温を感じながら考えた。


綾波は僕の中でどのような位置づけなのだろうか。

379:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/21 15:14:43

大切な存在…?

綾波は僕を精神的に支えてくれている。
綾波がいなかったら僕はとうの昔に壊れてしまっていた。
綾波は僕を幾度も死から救ってくれた。
今の僕がいるのは間違いなく綾波のお陰だ。

でも、何か違う。
僕が綾波に対して抱く感情はそれだけでは説明できないのだ。

380:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/21 15:16:44

僕は綾波が好きなのかもしれない。
それは僕の勘違いだろうか。

だが、何故だろう。

綾波は異性だから…?
華奢な綾波は僕が護るべき存在だから…?

僕は綾波に近寄りがたい何かを感じていたころがあった。
周りのみんなもそうだった。
誰も綾波を少しも理解することはできなかった。
綾波も誰一人さえ理解することはできなかった。

だがそれを言うなら僕だって同じだ。僕が誰の心を理解できたというのだろう。
ミサトさんの心、リツコさんの心、アスカの心、それとも父さんの心か?
そう、僕だって誰の心も理解できなかった。

人と人とが完全に理解し合うことは決してできぬ、だっけ。

でも、今なら僕と綾波は分かり合える。
互いに分かり合える唯一の存在。
それが僕にとっての綾波であって綾波にとっての僕なのかもしれない。

だからこそ僕は綾波がこんなにも愛おしく感じるのだろうか。

381:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/21 15:27:31
「碇君、前。」

綾波の声で僕は現実に引き戻された。

「おっ、とっとっ」

僕は慌てて急ブレーキをかけた。
綾波の顔がごつん、と背中にぶつかる感触がした。
避けられたから良かったものの、危うく電柱に突っ込むところだった。

「考えごとしてたみたい、大丈夫?」

「別にいいわ。碇君、ここ、どのあたりかしら。
 私、眠ってたみたい。」

「あ、うん。この坂下って、川渡ったら僕達の町だよ。
 あと二十分くらいかな。ゆっくり運転するからさ、綾波は寝といていいよ。」

「ありがとう碇君。今日、本当に疲れちゃって…」

綾波は再び僕の背中にもたれかかって寝てしまった。
余程、疲れていたのかもしれない。

早く家に戻って綾波を寝かせてあげなくては。
そんなことを考えながら僕は夕日を背に受けて自転車を走らせた。

382:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/21 15:32:29
今日はこれくらいで。


第四集改訂版うpしときました
URLリンク(www.geocities.jp)

383:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/21 15:44:12
>>382

さりげないフォロー GJ

384:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/21 17:04:43
>>382
超GJ。

385:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/21 21:49:30
なんか久しぶりに盛り上がってるね。

386:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/22 00:45:18
GJ!いいです

387:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/22 01:07:32
ニート乙

388:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/22 12:41:11
ひっそり投下待ち

389:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/23 08:12:25
4月も終わりに近いある日、初雪が降った。
朝が寒くて起きたら窓の外は一面の銀世界が広がっていた。
家も、木も、田んぼも、遠くに望む山々まで真っ白だ。

「綾波!雪だよ。」

僕はつい興奮して綾波を叩き起こしてしまった。
綾波は朝早くに叩き起こされた上に布団から引きずり出されて相当機嫌が悪そうだったが、
僕と同じようにその不思議な光景に思わず心を奪われてしまったみたいだった。

僕と綾波は玄関から足を踏み出した。
薄暗い灰色の空から白いものが次々と舞い降りてきてる。

綾波が手を差し伸べて落ちてくる雪を触ろうとしていた。
でも、綾波の素肌よりも白い雪の欠片は手のひらにくっついた途端に体温で消えてしまう。
不思議そうな顔をしていた。


僕達は十五年間、終わらない夏を享受してきた。
だから相当、冬は体に堪える季節になるだろうな、とは思っていたが。
多少自覚が足りなかったようだ。

寒い。本当に寒い。
そのうち指先がかじかんできた。

僕は発電機の電源を入れるために家の裏に回った。
が、なかなかエンジンが動いてくれなかった。この寒さが原因かもしれない。

390:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/23 08:15:33
角死ね!

391:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/23 08:20:33

まあ、そんなことより早く朝食でも食べよう。
暖かいものでも飲まないと体が持たないよ。

そんなことを考えながら玄関の前まで戻ってきたとき。


綾波が門の前に仰向けで大の字になって倒れていた。
さらに目と口を空に向かって大きく開いている。
寝ているわけでもなさそうだ。

この奇怪極まりない光景を目の前にして僕はどう行動すればいいのだろうか。
僕はしばらく思考が停止していたような気がするが、覚悟を決めて話しかけてみることにした。

「綾波…何してるの…?」

しばらく気まずい沈黙が流れた。

「雪って味がしないのね。」

392:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/23 08:22:55
今修羅場ってるんで投稿が少し遅れるかもしれませn…

393:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/23 08:27:36
今日の朝は寒かった。
初雪からそろそろ一週間、雪は毎日のように降り続いていた。
積雪も30cmを超えているようだ。

太平洋沿いのこの地域ではセカンドインパクト以前は全くと言っていいほど雪は積もらなかったそうだ。
だから冬が始まったばかりなのにこの降雪は異常としかいいようがない。
季節が戻ったとはいえ、まだかなり気候に混乱があるからかもしれない。
考えたくはないが今度は冬が10年くらい続くことになったらどうしよう。
本当に夏が恋しい。

綾波が布団の中からかすれた声で話しかけてきた。
「ごめんなさい。私、体がだるいの。
 今日は起きれそうにないわ。」

初雪以来、僕が出来るだけ外に出ないように努力していたのに対し、綾波は事あることに外を出歩いていた。
余程、雪というものが物珍しかったのだろうか。
だが、さすがの綾波もここまで寒い日が続いたためか体調を崩してしまったようだ。。

「あ、ならそのまま寝といてよ。暖かいものと薬持ってくるから。」

僕は台所に降りるとハチミツと砂糖漬けのフルーツを使って即席の暖かいレモネードを作った。

が、僕も何か調子が悪い。熱っぽいし寒気がする。
さては、二人で仲良く風邪を引いてしまったようだ。

出来るだけこのような事態を避けるために努力してはいたのだが、無駄だったか。
風邪をこじらせないように一日中暖まっていたほうがいいのかもしれない。

僕はとりあえず綾波にレモネードを持っていった後、僕自身も隣で布団にくるまった。


394:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/23 08:29:13
「碇君…?」

「ごめんよ。僕も風邪引いちゃったみたいだ。
 今日は一日寝て治そう。」

「ええ…碇君も寒いの?」

小さく咳き込みながら綾波は僕に話しかけた。

「うん…。」

部屋は温めているはずなのに、なぜこんなにも寒いのだろう。
布団は何枚も重ねているのに。

そのまましばらくの間、僕は寝付けなかったので目だけつむっていた。

「碇君…寝ていたらごめんなさい。」

綾波が小さな声で呼びかけてきた。

「どうかしたの?」

「寒いの…碇君の布団で一緒に寝てもいいかしら。」

「…!」

…嬉しくないわけではないのだけれども。


395:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/23 08:29:57
でも、綾波は本当に寒そうだった。
断るわけにもいくまい。

僕は掛け布団を綾波の寝床に寄せてそこに潜り込むことにした。

「あたたかい…」

綾波がポツリと言った。
数分も経たないうちに隣で安らかな寝息が聞こえた。

一方僕はというと…案の定、眠気が吹き飛んでしまっている。
我ながら単純な男だと思う。

綾波が突然寝返りを打って顔を僕の胸に押し付けてきた。
さらさらした青い髪が何本か僕の顔に触れて、暖かい吐息が僕にかかった。
全てを僕に委ねたような、無防備な寝顔だ。

反射的に片手を綾波の背中に回してしまった。

これはマズい。
落ち着け、落ち着けよ俺。

もう安眠は期待できなさそうだ。
事実、そうなった。


396:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/23 08:32:00
私は部屋の中に一人座っていた。
ベッドと、医療機器と、ビーカーと薬の空き箱だけが転がる殺風景な部屋だ。

突然、赤木博士が部屋に入ってきた。
ノックも何も無かった。

唐突に赤木博士はこう切り出した。
鋭い棘を含んだ声。

「あなたは何のために生きているの?レイ。」

「何故そのようなことを訊くのですか?」

「あなたの存在意義が消えたからよ。
 サードインパクトの誘発があなたの役目だった。
 そしてあなたは役目を果たした。
 あなたはその時点で消え去るべきだったの。
 それなのにあなたはまだ未練がましく生きている。
 だから訊いてみたのよ。」

「違う。まだ消えてないわ。
 私にはまだ碇君がいる…」

私の声は嘲笑に遮られた。

「ふふ…まだ碇君がいるの…そう…。
 確かにあなたは碇君に対して尽くしてきたわね。
 折角手に入れた肉体を捨ててまでも。
 あなたと碇君で好きなだけ愛し合えばいいわ。
 それはそれで結構。」

397:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/23 08:33:17
「あなたは何が言いたいの。」

自分の声が震えているのを感じる。
赤木博士は構わず言葉を続けた。

「でも碇君はいずれ死ぬわ。あなたもいずれ死ぬ。
 そして、あなたは人間との間には決して新しい生命を宿すことはできない。
 あなたも知っているはずよ。」

「どんな下等な動物でも子孫を残すことくらいはできる。
 彼らはそれで未来に希望を残すのよ。
 でもあなた方にはそれができない。
 人間の最後の生き残りと、人の容姿をした化け物の間にはいかなる形の生命も許されないのよ。」
 
「私は…私は…化け物じゃないッ…」

怒りと恐怖で部屋がぐらぐらと揺れているような感覚がする。

「そして、あなた達が死に絶えた後には赤い海だけが残るわ。
 これが正しい世界の形よ。」

突然目の前の赤木博士の像に歪みが走った。
声も次第に変調されてゆく…

赤く蠢く口腔だけが異様に拡大された赤木博士はとどめの一言を付け加えた。
「せいぜい碇君を大切にすることね。」

不快な笑いがはじけ、世界が砕け散った。

398:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/23 08:37:02

僕が片手で抱き寄せていた綾波の体がびくん、と痙攣した。

「綾波…?」

突然、綾波は目を大きく見開くと僕の腕を払いのけた。
同時に胸に鈍い衝撃を感じ、息が止まるかと思った。
綾波が僕の胸を渾身の力で殴りつけたのだ。
息が荒い。

「綾波!?どうしたんだよ!」

綾波は再び僕の胸に顔をうずめるとさめざめと泣き出した。

普通、ただの夢でこれほどまで取り乱すことはない。
これはただごとではない、と直感した。

綾波はしばらくの間、話せる状態ではなかった。

僕はそっと綾波の頭を撫でながら、言った。
この数ヶ月間、言いたくても言えなかった言葉。

「綾波はこれまで何度も僕を助けてくれた…今度は僕が君を助ける番なんだ。
 綾波が…君が…本当に辛くて耐えられないくらい心が張り詰めた時は僕が力になるって誓ったんだ。
 もし…もしそうなら…僕に…その苦しみを分けてくれないかい?」


綾波は僕に全てを話した。
全てを。


399:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/23 08:39:37
今日はこれくらいで。
ストック使い果たしちゃいました…
また書かなきゃ。

400:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/23 11:35:00


いいとこで切れちゃったな

401:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/23 15:23:58
つか、この荒らし何時までやる気なんだ?
マジで鬱陶しいんだが

402:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/23 15:49:24
もう荒らすの日課なんじゃね?よっぽどなLAS厨なんだろ。無駄だからほっとけ

403:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/23 16:03:57

URLリンク(www.geocities.jp)

第五集はさっきので終わりです。
まだ校正の余地ありだけど一応うpしときました。

今、結構正念場なんで次の投稿は明後日以降になりそうです。


404:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/23 21:51:51
つか、宣伝は余所でやれよ。

405:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/24 01:06:15
結構いい感じ?

>>404
Not found

406:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/24 13:32:04
角死ね

407:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/24 14:38:04
>>404
ログ読めよ馬鹿

408:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/24 20:20:55
私…寝てしまったの…?

私が全てを碇君に話した後、私は彼の胸の中で気が済むまで泣いた。
彼は私を抱きしめながら一緒に泣いてくれた。
結局、泣き疲れて眠ってしまったようだ。

部屋の中は真っ暗だった。

汗で湿った寝間着や布団のシーツは寝ている間に新しいのに取り替えられており、額には濡れたタオルが当てられている。
熱は大分下がったようだ。身体のだるさも無くなっている。

だが隣に碇君の姿はない。
台所のほうからか、扉の隙間から微かに光が漏れている。

探しに行かないほうがいいのかもしれない。
私はそう感じた。

409:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/24 20:21:41
真っ暗な天井を見上げていた時、私は初めてかつて彼を襲った絶望が何であったのかを知った。

彼がかつて自分自身を消そうとしたのはたった独りだったことが寂しかったからではなかった。
自分が仮に今を生きぬいたとしても、未来に何も残すものが無いと悟ったからだ。
いや、どうあがいても何も未来に残すことはできない。
彼はそう考えたに違いない…そして…

今の私達も同じだ。

私はこれまでそのことを考えもしなかった。
いや、ただ考えることから逃げていただけかもしれない。

私が彼に全てを捧げ互いに愛し合ったとしても、またそれがいかに幸福であったとしても。
それはただの退廃的享楽だ。

私も、彼も、年老いて死んでいく。
夢の中の赤城博士が言ったように、未来に希望をつなぐことさえ許されない。
誰の記憶の中に残ることもない。

私たちは滅びの宿命を背負っているのだ。
フィフスや他の使徒達と同じように。

410:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/24 20:22:56
しばらくして、碇君が暖かそうな雑炊を作ってきてくれた。
上に、細かく切った野菜が乗っている。

「熱いから、ゆっくり食べてよ。」

彼も自分の分を用意してきたようだが、全く箸をつけようとしなかった。
そして、私も同じだった。食欲が湧かないのだ。

私はぽつりと、言った。

「ごめんなさい…私が…私が人間じゃないせいで…」

「何を言うんだよ…」

「私が…私が人間だったら…こんなことにはならなかったのにっ…」

私は布団の上に座り込んで噛み殺すように嗚咽した。
その時、突然碇君が立ち上がって部屋から出て行った、と思うと、すぐに戻ってきた。
片手に何かスケッチブックのようなものを抱えている。

411:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/24 20:24:20
彼はそれを私に差し出した。
「それ、読んで。」

突然のことでしばらく呆気にとられていたが、彼の言うとおり読むことにした。

「私の…顔…?」

私の寝顔がスケッチブックに大きく描かれていた。
鉛筆一本で描いたようだ。

髪の毛の一本一本まで丁寧に描写されている。
微かな乾いた涙の跡までしっかりと。
本当に安らかそうな寝顔だ。

私…こんな顔して寝ていたの…

「さっき…ちょっとした悪戯心で描いたんだ。」

彼は少し照れながら言った。

「前のページもみてみなよ。」

次は場面が変わった。
私が釣りあげた魚を手に、晩秋の渓流を背景に微笑んでいた。

「君が初めて魚を釣り上げた時のことを思い出して描いたんだ。」
 
あの時、私は知らずに微笑んでいた…

412:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/24 20:25:14
「悲しんだり、泣いたり、笑ったりすることができるのは人間だけだよ。
 君にはちゃんと人の心があるじゃないか。
 それに僕は君を一人の人間として考えているんだ。
 だから、自分が人間じゃないなんて考えるのは間違えてるよ。」

私は何も言えなかった。
心の中で凝固していたものが次第に溶けていくのを感じた。

彼は一呼吸置いて、また話し出した。

「さっき君が話していたことについてなんだ…
 僕達にはこれは運命だって諦めることも出来るんだ。
 何も出来ずに死んでいく運命だからってね。
 綾波はどう思う?
 僕達はこのまま生きていても意味が無いって思う?」

「…」 

「でも、まだ結論を出すのは早すぎるよ。
 僕はもうちょっともがいてみようと思うんだ。この世界で。
 一つお願いがあるんだ。
 君が…もしそれでも構わないと思うのなら…僕と一緒に…」

彼はそのあとの言葉は続けなかった。

私は「ええ。」と言った。

413:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/24 20:27:33
今日はこれくらいで。
なかなか微妙な場所なんで書きにくかった。
明日こそは多分投稿できません。

414:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/24 20:44:57
乙。
……あの、「正念場」を台無しにするなよ? よけいな御世話だけどな。

415:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/24 20:53:22
>>414
SSが、じゃなくて仕事が、ですw

416:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/24 21:10:54
乙。淡々としてるけどこういうの好きだ。

417:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/24 22:44:33
>>415
うん。
「正念場だから投稿きびしー」って話だったけどな……って思ったわけだ。
まぁ乙。

418:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/24 23:28:07
ニート頑張れ

419:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/24 23:46:23
ここなのか?

420:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/25 00:52:03
↑なにがここ?

421:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/25 00:53:42
りっちゃん怖えーな

422:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/25 01:17:19
2016年8月14日

最近、雪も以前ほど降ることは無くなった。
依然、積雪はあるもののもう冬は終わりかもしれない。
木々に積もった雪は次第に溶け出していた。

日中の最高気温が氷点を僅かに上回る程度の日がこれまで一ヵ月半ほど続いていたのだ。
晴れた日の明け方の空気は肌を刺すようだった。一体どれほど冷え込んでいたのか想像もつかない。
ひどいときは屋根が軋むほど雪が積もり、数回ほど雪掻きで屋根に登る羽目にもなった。
家から余り出なかったので綾波は読書、僕はその様子をスケッチしたりして暇を潰していた。

だから、僕達は次に訪れる春に期待に胸を膨らませていた。

この日の朝、綾波が痺れを切らして言った。

「碇君、久しぶりに外にでましょう。
 身体がなまってしまうわ。」

「うん。ちょっと遠くまで行こうか?」

「ええ。以前釣りに行った山なんてどうかしら。
 今なら朝も早いし歩いて行けるわ。」

「そうするかい?じゃ、弁当でも作ってくるよ。」


だが、多少見込みが甘かったらしい。

423:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/25 01:18:51
以前通った山道は完全に雪に埋もれていた。
どうもあの渓谷には辿りつけそうに無い。
平地には春の兆しが見えているのに、山はまだ完全な雪山の様相を示している。
このまま無理をしたら遭難してしまう。

この時点で膝の上まで雪で埋まるほど積もっている。
そろそろ疲れてきた。
仕方ないのでこの辺りで昼食にして帰ろうか、と考えていたとき、

ぼすっ、という心地よい音とともに僕の後頭部に雪球が命中した。
反射的に振り返ったところ、二個目が顔面に命中した。

「ぶわっ!!?」

雪が鼻腔まで入ってきた。

雪まみれの顔を拭うと綾波が笑っていた。三個目の雪球を片手に握りながら。

「碇君…その顔…くすっ…」

「奇襲なんてっ、ズルイぞ綾波!」

僕が慌てて雪をかき集めている僕の横顔に三個目が命中した。
速球だ。

上手い。どこで練習したんだろう。



424:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/25 01:20:49
「お返しだっ」

僕も負けじと投げ返した。
綾波の青い髪が一瞬で雪まみれになる。

「やったわね…」

綾波が復讐を宣言する。直後に四個目と五個目の雪球が飛んできた。


数分後、僕も綾波は雪に大の字になって倒れこんでしまっていた。
二人とも頭から爪先まで雪まみれだ。
笑いながら走り回ったせいか、息も上がっている。

「たまにはこんなのもいいね…」

「ええ…」

「そういえば…さあ…僕達、ここに来てからよく笑うようになったよね。
 昔はこんなことなかったのに。
 でも最近、心の底から遠慮せずに笑うことができるようになったんだ。」

425:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/25 01:22:44

「私も…そうね。
 昔、初めて碇君が私のアパートに来た時…
 あの時のこと…覚えてる…?」

えっと…
僕がミサトさんに頼まれてカード届けに行ったときのことだよな…
………!!

「今考えてみるとあの時ほど面白かったことはなかったわ。
 碇君、真っ赤になって、意味の分からないことばかり言っていたわね。」

今更あのことを蒸し返されるとは思わなかった…

「でも、あの時は何も感じなかったの。
 嫌だとも感じなかったけれど面白いとも感じなかった。
 そもそも面白いというのが何かということさえ知らなかったのよ。
 でも、あなたに逢ってから何かが変わったの。」

一瞬、綾波と僕の目が合った。
赤い瞳に何か普段とは違う感情が宿っていた。

426:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/25 01:23:46
綾波は目を逸らすと、思い出したようにこう言った。

「あ、碇君、さっきこんなの見つけてきたの。
 雪の下に生えていたのよ。
 これ食べられるかしら。」

綾波はポケットから緑色の塊のようなものを取り出した。

「それってフキノトウじゃない?食べたこと無いけれど天ぷらとかにできるらしいよ。」

「フキノトウ?」

「そう。冷たい雪の下でずっと春を待ち続けるんだ。何ヶ月もね。
 だからいまの季節が一番美味しいんだよ。」

「私たちみたいね…」

「え…?」

綾波がポツリと言った…ような気がした。
それともただの聞き違えだったのだろうか。

427:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/25 01:25:36
春が来た。

2016年9月。

地表を覆っていた雪は消え、黒い土壌が再び現れた。
川には澄んだ冷たい雪解け水が勢い良く流れていた。

春のうららかな日差しの下、冬の間抑圧されていた植物が再び活動を始めた。
始めは小さな若芽から。次は低木が。

桜だ。桜が咲いた。
セカンドインパクト後の十五年間、桜は春を奪い取られていた。
桜の木は一年中緑を絶やすことはなかったが、常に情けないくすんだ色の花を幾つか枝につけていただけだった。
その鬱憤を晴らすがごとく、今年は本当に見事な花を咲かせた。

綾波が桜並木の間を歩いている。
しばらく歩くと立ち止まって上を見上げた。
桜吹雪が綾波に降りそそいでいる。

綾波も僕も、春を待っていた。
そして本当の意味での春は僕達にはまだ訪れてはいない。
でも、待ち続けるしかないと思うんだ。
雪の下で春を待ちわびるフキノトウのように。

428:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/25 01:26:52

そして夏が来て…年が代わり…その夏も暮れてゆき…秋が過ぎ去り…冬が…

時は、2018年。

僕達は「あの日」を迎えた


429:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/25 01:28:38
#なんか脊髄反射で明日のぶんまでかいちまった。
#だから明日は投稿できそうにありません。
#全く何やってるんだ俺は。

430:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/25 02:23:58
>>429
乙。

431:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/25 03:00:43
角さん乙です。レイはいいよな。本当に・・
続き期待です

432:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/25 07:03:49
同じく期待

433:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/25 21:53:27
次は明日の深夜または明後日になりそうです。
一気に最後まで行きたいと思います。
ちょっと量はかさばりますが。

434:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/26 01:39:40
オ~、激しく期待

435:綾にゃみレイ
06/07/26 02:20:58
気持ち悪いスレ‥‥‥

436:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/26 12:50:27
最近、野茂とホモの違いが分からないとよく耳にします。

完投して喜ぶのが野茂、浣腸して喜ぶのがホモ
打たれるのをいやがるのが野茂、打たれるのを喜ぶのがホモ
野茂はホモを狙わないが、ホモは野茂を狙うことがある
好プレーするのが野茂、チンプレーするのがホモ
家族で楽しく見るのが野茂のプレー、家族で楽しく見れないのがホモのプレー
お尻を見せて球を投げるのが野茂、お尻を見せて玉を揺らすのがホモ
フォークが得意なのが野茂、トークが得意なのがホモ。
アメリカで観戦するのが野茂、アメリカで感染するのがホモ。
野茂は講演に行くが、ホモは公園に行く。
野茂はカレーが好きだが、ホモは彼が好き。
野茂のプレーは素晴らしいが、ホモのプレーは凄いらしい。
優勝して感動するのが野茂、融合して浣腸するのがホモ。
タマを投げてチームを守るが野茂、タマを触って彼を攻めるのがホモ。
野茂はバーモントカレーが好きらしいが、ホモはバーの元彼が好きらしい。
野茂は投手、ホモは同種。
野茂はお尻を向けて投げるが、ホモはお尻を向けて誘う。
野茂はあまり喋らないが、ホモはよくしゃぶる

437:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/26 12:54:43
第壱話    谷岡、襲来
第弐話    見知らぬ、ベンツ
第参話    帰らない、免許証
第四話    四つんばい、脱いだ後
第伍話    TDN、尻のむこうに
第六話    決戦、汚い尻の穴
第七話    後輩の造りしもの
第八話    HTN、来襲
第九話    瞬間、竿、しゃぶって
第拾話    ンギモヂイイ!!
第拾壱話   静止した菊門の中で
第拾弐話   挿入の価値は
第拾参話   TDN、侵入
第拾四話   DB、ホモの座
第拾伍話   嘘と沈黙
第拾六話   死に至る絶頂、そして
第拾七話   四人目の適格者
第拾八話   命の選択を
第拾九話   男の戦い
第弐拾話   竿のかたち 玉のかたち
第弐拾壱話 イサキ、誕生
第弐拾弐話 せめて、人間らしく
第弐拾参話 精液
第弐拾四話 最後のアッー!
第弐拾伍話 終わる選手生命
最終話    世界の中心でアッー!を叫んだけもの

438:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/26 13:11:27
うーん……このスレまだ落ち着いた状況になってみたいだな。
でもそんな状態でも投下してくれる角さん乙。
焦る必要はないので頑張ってくれ。

439:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/26 13:24:28
>>438
日本語でOK

440:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/27 13:23:26
ば、バームクーヘン

441:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/27 18:03:45
#予想以上に長くなりそうなんで、ちょっと先に出来た分投稿しときます。

僕達は今年で17歳を迎える。

綾波と共同生活を始めてからそろそろ二年が過ぎようとしている。

僕は今、育ち盛りだ。声も少し低くなったようだ。
以前は動かすことも出来なかったであろう荷物を苦もなく持ち上げることができる。
今では綾波とも頭一つ分近く身長が違う。

綾波は以前と変わらず、華奢だ。
でも、紅い瞳に宿る強い意志の光は決して消えることはなかった。

僕達はこの二年間に畑を耕し、まだ実験的ではあるが食物を自給自足することを学んだ。
そのこと自体、かなり身体に負担を強いるものだった。
二人だけで生きていくのは本当に難しいのだ。

だが、初めて作った野菜類を収穫したときの達成感は決して忘れられない。
何が悪かったのか、収穫前の最後の段階でスイカが虫に食われてしまった。そのときの悔しさも。

綾波に負けない大物を釣り上げたときの喜び。
一方、半日糸を垂らしたのに全く釣れなかったときは忍耐力を鍛えることが出来た。

失敗を繰り返すたびに僕達は貴重な経験を得たし、成功は自信に繋がった。


442:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/27 18:05:09

仕事の合間をぬって効果的にストレスを解消することも学んだ。

僕は今、木工版画に取り組んでいる。
面倒くさいが、完成したときの達成感は相当なものだ。
勿論、仕上げの段階で失敗したときなど、放り出したくなるような衝動にかられたものだった。
いずれにしても良い気晴らしになる。

綾波も綾波なりの趣味をみつけた。
荒れていた庭を精魂こめて手入れするようになったのだ。
彼女の剪定のお陰で庭は元のカタチを取り戻しつつある。
天気の良い日の午前中は心地の良いハサミの音が聞こえる。


二人だけで生きることは全く辛くなかったといえば嘘になる。
気持ちが張り裂けそうになったことがこの二年間で何度あったのだろうか。
両の手の指でも数え切れない。
でも、綾波と一緒だったからこそ、僕は耐えられないような困難だって乗り越えることができた。

本当に満ち足りた日々だった。

だが、それも今日で終わりだ。
確証はない。ただそんな気がするだけだ。

2018年3月2日。

443:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/27 18:06:37
私は帰路を急いでいた。
ついつい図書館で長居してしまったようだ。
日が暮れる前に帰らなければ碇君が心配してしまう。
穏やかな秋の夕暮れだ。

「…?」

何か人の声がしたような気がしたのだ。
私は足を止めた。

誰も通らなくなって久しい大通りの上を落ち葉が風に吹かれて舞っている。

気のせいだったのかしら。
私は歩き出そうとした。

こんどこそ聞こえた…ような気がした。
私は振り返った

「誰か…いるの?」

返事は無かった。
すっかり葉を落としたポプラの木々が枝を揺らしているだけだ。
誰の姿もない…
再び前を向いたその時。

誰かが呟いているような声。
だがその呟き声は間違いなく私に向けていた。

気がついたとき、私は駆け出していた。

444:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/27 18:08:00
涼しい風が真っ暗な部屋を吹き抜けている。

決して寝苦しい夜ではないのに、私も碇君も全く眠ることができない。
布団に仰向けになって天井を見上げているだけだ。

「綾波…」

碇君が口を開いた。

「ええ…碇君も…」

やはり、彼も同じなのだ。
そういえば、今日の私たちは言葉少なめだった。

「変な気分がしてたんだ…一日中…
 虫の予感ってよく言うけど、違うんだ。
 何かが僕の心の中に小さな声でしつこく話しかけてくるような感じがするんだよ。」

「でも、声に耳を傾けようとするとそれは消えてしまう…」


445:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/27 18:10:00
「僕も全く同じなんだ…
 それに…それに…」

彼は一瞬、言葉に詰まった。

「それ以上は言わないで…」

これ以上、碇君に喋って欲しくない。
彼が考えている事はきっと私と同じ…

「明日…明日で…もう綾波に会えなくなってしまうような気がするんだ…
 まさか…気のせいだよね…アハハ…」

部屋の中の暗闇がいきなり深くなったように感じられた。

私はかすれるような声で言った。

「あなたの考えていること…多分間違えてはないわ…」

「…!!」

彼が息を呑む気配が伝わってくる。

「明日、何が起こるかは私にも分からない。
 でも…私はもうこの世界には留まれない…
 そんな気がするの。」


446:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/27 18:11:39
そして、その日が訪れた。

僕も綾波もたった一晩の間に憔悴しきってしまった。
その日は一日中、僕達はは全く物事に集中できなかった。
奇妙なな脱力感に見舞われていたのだ。

僕は部屋の片隅に座り込んでいるだけで何をするでもない。
綾波は時折思い出したようにすすり泣くだけだ。
僕達は互いにほとんど言葉を交わさなかった…

447:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/27 18:13:10
「綾波、君を描きたいんだ」

日もかなり傾いてきたころ、僕は覚悟を決めて綾波に話しかけた。

「…今?」

綾波の声はこれ以上ないほど微かだった。
今にも消えてしまいそうな声だ。

「ああ、今しか出来ないんだよ。お願いだ。」

「でも…こんな姿、描いて欲しくない…」

「構わないんだ。そこに座ってよ。」

僕は半ば力ずくで綾波を庭の隅に座らせて、スケッチブックを広げた。
綾波が特に気にかけて手入れしていた梅の幼木の前だ。

綾波は確かにこちらを向いてはいるが、みるからにやつれている。

これは多分、僕の最後の作品だ。
そう思って僕は筆を手に取った。

手の震えを無理やり押さえつける。
もう、僕と綾波に残された時間は余りに少ない…

448:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/27 18:14:38
碇君は一気に描ききった。
丁寧に、かつスピーディに。

「出来た。みてごらんよ。」

彼は私に出来上がったスケッチを見せてくれた。

絵の中に私がいた。
庭の片隅にちょこんと座りながらこちらに顔を向けている。
絵の中の私に笑顔はなかった。
だが、夕日に照らされたその顔に悲しみや憂いはもはや存在しない。
その目には強い意思の光だけが宿っている。

「これが私なの…私はこんな顔をしていたの…?」

「違う。違うんだよ綾波。
 これはスケッチじゃないんだ。
 これは僕が君に望む姿なんだよ。」

「私に望む姿…」

絵の中の綾波レイはまっすぐと私を見据えていた…


449:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/27 18:17:25
「僕の事なんか忘れてくれても構わない。
 でも…この絵だけは…忘れないでくれないか?
 君には最後まで自分自身を見失って欲しくはないんだ…。」

「ありがとう…碇君…」

「この先…何が起ころうとも…ね…」

搾り出すような声で碇君が言った。


鮮やかなオレンジ色の空に刷毛で掃いたような雲が浮かんでいる。
その空の彼方で何かが鋭く光った。


#十行書いては八行消してる状態です。
#最後の投稿は今日中か明日になると思います…



450:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/27 18:20:03
>>449
乙。

唐突な展開。警告は覚えてるけど、恐いね。

451:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/27 19:00:23
なんだこれ
長いだけで内容が糞
自己陶酔型の馬鹿はマジで鬱陶しい

452:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/27 19:10:52
>>451

>>197

453:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/27 19:24:46
>>449

>>452

え、>>451 っていつもの無条件罵倒粘着じゃないの?

454:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/27 20:25:50
>>449

ただこの作品全体を通して、場面場面が切り変わるの早いように思う
いい場面がきて、おっと思ったらすぐ翌日になってたり

455:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/27 21:38:08
荒らしに構うから荒れるんだよ^^

456:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/27 21:52:55
>>454

だよなあー

我ながらそう思います。
さっさと終わらせなきゃって生き急ぎすぎてたとこがありました。

次、何かを書くとしたらの話だけれど、大きな反省点だとは思います。


今?
うまいこといったら夜中の三時ぐらいまでには書き終わってうpできると思います。

457:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/28 00:15:41
お願いします。待ってますよ

458:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/28 00:29:38 +rgezqBi
うむ

459:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/28 01:31:33
何かが炎の線を残し、信じられない速度で空を横切ってゆく。

僕達はその光景をただみつめていた。
うまく思考がまとまらない。

次の瞬間、鼓膜が破れるような雷鳴がこだました。
窓ガラスが衝撃で次々と破裂していく様子が見える。
超高速の物体に風穴を開けられた地球の大気があげる悲鳴だ。

僕はとっさに地面に伏せた。
そして再び顔を天に向けたその時…

紫の鬼神が炎の翼を広げて天を下ってくる。
千もの光の欠片をまき散らしながら。

「エヴァンゲリオン…初号機…」

綾波が呟くのが聞こえた。


460:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/28 01:32:34
エヴァンゲリオン初号機はA.T.フィールドの羽根を展開して急激に減速すると、僕達の家から少し離れた緑地公園に着地した。
腹の底に響くような地響きとともに巨大な土埃が舞い上がる。

遅れて落下してきた巨大な槍が公園の傍らにある市庁舎を粉砕する。

ウォォォォ…ォォ…ォ…ォ…ォォ…

咆哮だ。エヴァがあらん限りの力で咆哮している。
奇跡的に生き残っていた窓ガラスまでが割れていく音が混じる。

エヴァが僕達を呼んでいる。
何故だかそう感じた。

「行きましょう、碇君…。時間が来たわ…」と綾波が言った。


461:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/28 01:34:09
周囲の木々は衝撃で薙ぎ倒されていた。
根元から引っこ抜かれているものもある。

僕と綾波は公園の入り口に並んで立ちながら、一言も口を利かずに前方を凝視している。

僕達の視線の先、土埃の雲の中から初号機が現れた。
その色褪せた装甲には無数の傷がついており、コアも露出しているが、その威容は以前とは全く変わっていない。

ただ、頭部装甲は完全に剥がれ落ち、素体の頭がむき出しになっている。
それは…まるで…

「母さん…」

その頭部は疑いも無く僕の母親のものだった。
茶色の長髪が腰まで伸びている…

だが、その表情は人間性というものを全て捨て去っている。
まるで能面だ。
そして、その目にも全く感情はこもっていない。
黄色く光る目は確かに僕達の方向を向いている…だが本当に僕達を見ているのだろうか?
そして、喉元からは低い唸り声のようなものが聞こえてくる…

初号機が突然、地面に片膝をつき右手を僕達に差し出した。
まるで、乗れとでも言っているような…そんな仕草だ。


462:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/28 01:35:06
「やっぱり…」

綾波が小声で呟いた。

「綾波、何か知ってるの!?」

「たぶん…エヴァは…生命を創造しようとしているの…」

「生命を…?」

「ええ。いくら知恵の実と生命の実の両方を所持していたとしても…
 エヴァには自由に生命を創造する力は無いわ…」

「そして…だからこそ…エヴァには…私の…身体が必要なのよ…
 私は直接リリスから生み出された存在だから…」

「だから…どうだって…」

声に力が入らない。
足元がぐらつくような感覚に襲われる。

綾波が震える声で言った…

「だから…私は…行かなくてはならないの…」



463:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/28 01:36:31
まさか、こんなカタチで彼と別れなければならないなんて想像もつかなかった。

エヴァは私のカラダを利用して無限の創造力を手に入れようとしている。

そして、私がこのカラダをエヴァに捧げれば、私もまた無限の可能性を手に入れることができる
考え方を変えれば、これが私の存在を活かす最大にして唯一の方法なのかもしれない。
私がこの二年間、求めていたものが目の前にあるのだ…

私は無意識のうちに半歩、前に進んでいた…


でも、私がいなくなった後、碇君はどうなるの…?
彼はこの世界に独り取り残されて…そして死んでいくのよ…

心の中で冷静な声がした。

その通り。駄目だ。
私は行ってはならない。
絶対にそれだけは許されない。


私は碇君を心の底から愛している。
今でもその気持ちは全く変わることはない。
彼のためなら私はどんな犠牲を払っても構わないと思っている。

それなのに、こんなにまで揺れ動いている私の心が憎かった。
何故、私は迷っているの?

464:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/28 01:37:33
「碇君…」

私は彼の名前を呼んだ。
まるで彼に縋るように。

「私は…本当に…行くべきなのかしら…」

彼なら、私が行くのを踏みとどめてくれる。
そして力づくでも私を引き戻してくれるだろう。

そう私は期待していた。
だが…

「僕は君じゃない…
 それは君が自分で考えることだよ。」

碇君が静かな声で言った。

私はその言葉に動揺した。
彼が…私を突き放した…?

465:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/28 01:39:16
「いいかい?
 君は君が正しいと思う道に進めばいいんだ。」
 
「でも…」

「いいんだよ。
 僕は僕のしなければならないことを見つけたんだ。」

「…」

「僕は全てを見届ける。
 君が何を選択しようとも、ね。必ず。
 これが僕がここに存在している理由なんだ。」

彼はきっぱりと言い切った。
私は選択しなければならない。自分の意思で。

永遠にも等しい時間が流れた。


「あなたの絵…忘れないわ…」

「ありがとう…綾波…」

紫色の巨人はその間、みじろぎもせずに私たちを見下ろしていた。

466:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/28 01:40:49

「碇君…」「綾波…」

私たちは同時に互いの名を呼んだ。

「あ…綾波から言っていいよ…」

「いえ、碇君から言って…」

「え…えっと…君を…抱きしめてもいいかい?」

「ええ…」

私たちは最後の抱擁を交わした。

「さようなら…碇君…」「さよなら。綾波。」

私の首筋に何滴か、涙が落ちたのを感じた。

467:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/28 01:43:18

私はエヴァンゲリオン初号機の手のひらの上に乗った。
途端に音も無くその腕が上にあがる。

地面で私を見上げている碇君の姿がどんどん小さくなっていく。

黒光りするコアの表面が近づいてきた。
こうしてみると巨大な壁だ。
奥に微かな光が踊っているのがみてとれる。

コアを目の前にしてその手が止まった。
そのまま入り込めということらしい。

硬質にみえるコアは私が入り込むその瞬間、液体のように振舞った。
指先が、手が、肩が、吸収されていく。

私は最後に碇君を振り向いた。
その顔は例えようもなく、穏やかだった。

さようなら。


コアの奥には、光が満ちていた。


468:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/28 01:45:00
真っ白な光に満ちた世界。

その中に一人、私は立っていた。
服はどこかに溶けて消えてしまったようだ。

暖かい。そして音も無い。
そこに存在するのは光だけ。

その彼方から音も無く人影が近づいてくる。
はじめはぼんやりとしていたが、次第にはっきりとしてきた。

背の高い人間の女性だ。
その顔には神秘的な微笑を浮かべている。
全ての不安を消し去ってしまうような微笑みだ。

私によく似た女性だ。
ただ、その髪は茶色で目の色は赤くない。

「あなた…誰…?」

その女性は何も言わなかった。
ただ、微笑んでいる。

「碇君の…お母さん…?」

469:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/28 01:46:17
『シンジのお友達ね…
 そして、あなたは本当に大切な私の子供…』

今まで生きてきた中で聞いた事もないような優しい声だ。
反響するものもないのにいろんな方向から声が聞こえてくる…

「何故…あなたはエヴァと一緒に生きているの?」

『人類の進化の行方をこの目で確かめるためよ。』

「でも…その人類は滅んでしまったわ…
 残っているのは碇君だけ…」

『あなたも人類の可能性の一形態よ。
 もちろん、このままではあなたはいずれ滅んでしまう。」

「だから…人類を…私を…人工進化させるのね…あなたの望む形に…」

『エヴァは人類に真の福音をもたらす存在ですもの。
 あなたの力があれば私は人類の歴史に新たな1ページを刻むことができるわ。
 私は再び人類の母となるの。』


470:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/28 01:47:21
『私とひとつになりましょう…』

いつのまにか、「彼女」は私のすぐ前に立っていた。
次の瞬間、「彼女」は私を力いっぱい抱きしめた。

暖かい。

私の意志に関わりなく、私のカラダが「彼女」のカラダに融合しはじめた。
手が…肩が…乳房が…

私は自分自身がカタチを失ってゆくのを感じた。
心が生きることの重荷から解放されていく…
霧がかかったように視界がぼんやりとしてくる…

471:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/28 01:48:34
本当にこれでいいのかしら…?
薄れ行く意識の中で小さな疑問が生まれた。

「彼女」との融合が止まった。
既に半分近くが「彼女」に吸収されているが、私は辛うじて自我を保っていた…

『どうかしたの…? 
 心を開いて…さあ…』

様子がおかしいことに気がついたのか「彼女」が声をかけてくる。
その拍子に弱った自我が崩れそうになる…

でも、私は声を振絞った。

「嫌…」

『どうして嫌なの…?』
 
「あなたは勝手よ…
 生き物の誕生や進化に個人的な意思を影響させてはならないわ…」

その女性の優しい声に微かに感情がこもったように聞こえた。

『いい?人類は今滅びかけている…
 もし神に等しき力を得ることが出来るのならば、その力を人類のために使うのは当然のことよ…
 だからあなたは私に協力する義務があるわ…』

「でも、あなたのそれはただの人間の傲慢よ。
 あなたに生命を弄ぶ権利はないもの…
 私やフィフスのような存在は二度と生まれてはならないの。」

472:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/28 01:52:08
『あなたが協力を拒めば、人類の未来を潰すことになるのよ。
 あなたは自分の可能性を最大限活かすべきだわ…』

「私のカラダを返して頂戴…」

これ以上話をしても得るものはない。
私は無理矢理手を振りほどき、からだを引き抜いた…



473:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/28 01:53:28
恐ろしい悲鳴が周囲にこだました。
周囲の空間そのものが絶叫しているようだ。

「彼女」はのた打ち回って悲鳴を上げていた。
私と融合していた部分は彼女の身体から完全に抜け落ちていた。

『どうして…どうして…私を…私を拒絶するのっ…!』

「私と碇君は…人間として自分の運命を決める権利があるもの…
 あなたの好きにはならないわ…」

自らの体積が半分以下になってもなお、力を振絞って「彼女」はこちらに顔をむけた。
その目は真っ赤に充血し、顔の半分は消えうせている…

『私を消せば…あなたもお終いよ…!それでもいいの!?』

「私は分かったの。
 私は…人間が犯した過ちを振り出しに戻すために存在しているのよ…
 さようなら。碇君のお母さん。」

私は「彼女」を消した。

世界が、崩れてゆく…

同時に私の意識は光の中に溶け込んでいった…


474:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/28 01:54:54
突然、エヴァンゲリオン初号機が吼えた。
エヴァの咆哮ではない…長々とした人間の悲鳴だ。

僕の母親の顔をした頭部は苦痛に歪んでいる…

どこからか、大量の水滴が僕に降りかかった。
僕は一瞬にしてびしょぬれになった。

懐かしい匂いがする…血の匂い…?
これは…L.C.L…?

一体エヴァに何が起こっているんだ?
僕は思わず後ずさった。

振り乱されたエヴァの頭髪が先端からだんだんと溶けてゆく…
装甲の間からも勢いよくL.C.Lが流れ出ている。
エヴァは絶叫しながら地面をのた打ち回っていた。

エヴァが、死にかけている…

蜘蛛の巣状のヒビがむき出しになったコアに入ると同時に、
エヴァの頭部が一瞬透き通ったかと思うとオレンジ色のL.C.Lの塊となって地面に落下した。

数瞬後、コアが砕け散り、エヴァはL.C.Lを撒き散らしながら地面に崩れ落ちた。
後には捻じ曲がった外部骨格とL.C.Lの水溜りだけが残った…

公園の傍らに突き刺さっていたロンギヌスの槍も、もはやただの金属の塊と化している。

475:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/28 01:56:07
「綾波っ!」

ショックから辛うじて立ち直った僕はエヴァの残骸に駆け寄った。


数分後、ぐしゃぐしゃになった胸部装甲の下で力なく横たわっている綾波を発見した。
僕は綾波を蒸気を上げる装甲の下から引きずり出した。

その身体は信じられないほど冷たかった。
まるで氷のようだ。

僕は彼女を抱きしめた。

「死んじゃ駄目だ!死んじゃ駄目なんだよ!綾波!」


476:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/28 01:57:04
まだ生きている…
僕が強く揺さぶると、綾波は勢いよくL.C.Lを吐き出してゆっくりと目を開けた。

「ゴホッ…う…い…碇君…!?」

「綾波!しっかり!」

「私…生きてるの…」

次第に頬に赤みがさしてきた。
綾波は気管に残るL.C.Lに咽ながらも僕に訊いた。

「エヴァは…エヴァはどうなったの…?」

僕はエヴァの残骸をあごでしゃくった。

「エヴァは…死んだよ…」

「そう…」

綾波は目を閉じるとそれっきり喋らなくなった。

477:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/28 01:58:18
私は碇君に背負われながら家に向かっていた。
月の光が誰もいない街に降りそそいでいる。


478:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/28 01:58:45
終わったか?



つまんねえよ




マジで糞



479:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/28 01:59:12

「ねえ…綾波…?」

碇君がそっと私に呼びかけた。

「なに?碇君。」

「エヴァの中で…何があったの?」

「私が存在している意味をみつけだすことが出来たの。」

これでは答えにはなっていないと思ったけれど、碇君はある程度は納得してくれたようだ。

「君は…馬鹿だよ…」と、彼が言った。でも、優しい声で。

「いいの。もう取り返しはつかないから。」私は明るい声で言った。

「それは…そうだね。」

彼は吹き出した。
そして、私もつられて笑い出した。

「いずれ、後悔するよ?」

「その時はその時よ。」

私たちは大笑いした。
その様子を青白い月の光が照らしている。

いまの二人は、ただの人間だった。


480:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/28 02:07:50
これで終わりです。
駄作に最後まで付き合って頂きまことにありがとうございました。

一応、下のURLに原稿うpしときました。
読みにくかった場合はどうぞ。
URLリンク(www.geocities.jp)
URLリンク(www.geocities.jp)


481:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/28 02:09:08
>>480 乙。

482:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/28 02:11:10
なんか切ない終わりでしたね。
でも乙です。また機会があったら
書いてほしいです。

483:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/28 02:44:23
角気持ち悪いわ、マジ死んでくれよ

484:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/28 14:52:21
せつねえーw

485:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/28 22:41:21
舌噛んで死ねばいいのに

486:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/28 23:20:49
角さん乙です
毎回楽しみに読ませてもらいました。
ラストはレイがいなくなるか心配だったんですけど
僕的には嬉しいかたちで完結してくれて
とても満足してます
機会があったらまた書いてくださいね

487:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/29 00:51:39
自演がとても気持ち悪くてひさしぶりにゾクゾクしました

488:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/29 08:52:13
読んで下さった皆様、ありがとうございました。


今回投稿した中編LRSについて少し。

「会話シーンを無駄に増やさない」「シンジ、レイの心理描写を出来る限り増やす」という二点にこだわって書きました。
お陰でかなり重い?作品になってしまいました。
もうちょい軽くしてもよかったのかな?

場面展開が速すぎるという指摘がありました。
個人的にはもっと落ち着いて書けばよかったかなあ、と少々後悔しています。
まだ構想段階ですが、次回作では決してそのようなことがないよう、心がけたいと思います。

なお、個人的には「登場人物の片方を舞台から退場させる」という結末にだけは出来るだけ収束させたくなかったのです。
そのお陰でこのような終わり方になってしまいましたわけですが。


無計画、行き当たりばったりに書き始めてしまったSSですが、皆様の応援とご指摘のお陰で最後まで書き終わることが出来ました。
本当に感謝しています。






489:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/29 12:51:55
糞コテ死ね!

490:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/29 13:33:57
>>488
乙かれさん

491:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/29 13:55:11 sLD9kvi+


492:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/29 15:06:06


493:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/29 15:40:25
後付けの弁明はマジでウザイ
何なんだこの馬鹿は…

494:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/29 21:46:52
>>478 >>485 >>487 >>489 >>491-493
  楽  し  い  か  ?

>>478
深夜帯まで本当にご苦労様です。
最近の中学生はガッツあるな。気に入ったよ。





495:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/29 22:14:50
角さん、次回作待ってます

496:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/30 00:43:18
乙です!

497:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/30 04:51:10
自分だけ擁護カプキメエ

498:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/30 04:56:16
ヤバい、本当に糞コテぶっ潰したい

499:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/30 05:11:31
>>498
コテハン叩きはルール違反ですよ あんた


500:綾にゃみレイ
06/07/30 05:16:07
角気持ち悪い・・・・

501:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/30 08:40:29
>>499
夏厨にルールもへったくれも通用せんよ。

皆さんも分かりきってる事でしょうが、ブラウザの読み込み段階で消すのが得策。

ホットゾヌ2の設定でage入力してる奴は大抵消しちゃう。
46個のレスを消去しました、って出てきて結構スレが綺麗になる。
後は一つ一つ手動で消していけばおk

すっげえスレが綺麗になる。
夏厨ども、だからお前らのやってることは無駄なんだよwwww
ブラウザサイコー

502:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/30 12:26:38
脳内ルールを押し付ける馬鹿はどこにでもいるよなぁ…

503:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/30 14:03:22
角キモイよ死ね!








これでいい?wwww

504:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/30 18:31:44
気になった事二つだけ
>>462>>463への些か突然な視点変更
・「蒸気をあげる装甲」の下にいた綾波が信じられない程冷たいっていうのも…
何かくだらないところで質が少し落ちているような。

とはいえGJ、ストーリーとか完璧だと思う



505:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/30 20:29:18
>>504
wwwwwwwwwwwwwww
必死に熱く語ってやがるwww







やっぱコテじゃないやつもキモイな、死ねよ!

506:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/30 20:44:49
だって自演だもん
コテ消しても体臭までは消せないさ

507:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/30 21:11:07
くっせーーーーーーーーーーー505

508:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/31 08:31:24
なんかできたので明日かあとで投稿します。

とりあえず相談したい事↓

・リナレイはスレ違い?
・僕の好きに書いてもいいですか?

509:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/31 11:47:20
書くならば早くしろ、でなければ帰れ。

510:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/31 13:11:43
>>508
お前馬鹿じゃねーの?きめぇんだよ帰れ!

511:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/31 13:32:31
書かなくて良い、帰れ

512:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/31 15:17:54
>>509
逃げちゃ駄m(ry

513:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/31 15:18:54
第二新東京市国際空港の特別搭乗口前に僕は立っていた。

窓の向こうには翼をきらめかせながら政府専用X-33超高高度飛行艇が待機している。
流れるような流線型で矢じりのような形のその特異なフォルムは否応でも人目を引く。
詳しいことは知らないけれど高度110kmをマッハ十いくつで飛行可能なのだそうだ。
科学も進んだものだとつくづく思う。

「おっまたせ!シンジ。ずっと待ってくれてたの?」

山吹色の髪の少女が荷物を転がしながらこちらに駆けてくる。
息がかなり上がっているようだ。

「うん。でも時間ギリギリだね。
 もう飛行機出ちゃうよ?」

「大丈夫よ、私たちが乗らないと意味ないんだから。
 あ、シンジのお父さん達なら後から来るよ!
 シンジのお父さん、荷物検査で引っかかっちゃってね。」

「え、なんで?」

「金属探知で反応が出てね、係員に呼び止められちゃったの。
 そしたらポケットから文鎮が出てきちゃったのよ、信じられる?」

目の前のアスカは腹を捩じらせて大笑いしている。
いい年して何やってるんだ父さん…

「それで質問の嵐に遭っちゃったんだけど、『ぶ…文鎮って英語で何ていうんだ…?ユイ?』だって!
 お父さん、しどろもどろしちゃってさあ、アハハハハハハハ…ヒイヒイ…」

514:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/31 15:20:02
アスカが父親の声色を真似た。
もう情けなくなってくる。

「あ、そう…
 向こうって結構寒いんでしょ?
 風邪ひかないよう気をつけてね。」

とりあえず話題を変えなくては。

「当ったり前でしょう!
 それに、私のこと心配するのもいいけどね、アンタこそ新しい学校でイジメられるんじゃないわよ!」

そんなに僕、イジメられたこと無いけどな…




515:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/31 15:21:20
あ、お父さん達来たみたいだよ!こっちこっち!」

グラサンを光らせながら父親がこちらに向かって歩いてくる。
後ろに必死で笑いを噛み殺している母親と、若い研究者達が続く。

「シンジか…」

「あ、父さん…」

「…」

「…」

「…なんで文鎮なんかポッケに入れてたの?」

母さんがプッと吹き出した。

「…お前には関係のない話だ。」

精一杯威厳を保とうとしているように見えるが、全く効果を発揮していない。

「私も知りたいな。碇。」

「…!
 冬月先生…やめて下さい…」

飛行艇の後部からは白い霧のようなものが漏れている。
燃料補給も完了したようだ。

516:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/31 15:22:41
「これがジオフロントへの通行証だ。常に身に着けておけ。」

父親が僕に赤いIDカードを手渡した。
裏に僕の顔写真が張ってある。

ジオフロントとは箱根山地下数百メートル付近で十五年前に発見された巨大地下空洞だ。
空洞内部は大型の粒子加速器が数台設置されている他、多数の研究施設が林立している。
まさに、「最先端科学の街・第三新東京市」の象徴ともいえる存在だ。
その中心部に両親の勤務先である人工知能研究所の本部があるが、僕は一度も行ったことがない。
ちなみにジオフロントは一部区域を除き、一般人の立ち入りは厳しく制限されている。
これがあることは、空洞内部を自由に歩き回ることが出来ることとほぼ同義だ。

「研究所の赤木博士には何度か世話になるだろう。
 着いたらあいさつのひとつくらいしていけ。」

「あ、ありがとう父さん。」

「礼には及ばん…」

そろそろ出発時刻だ。
アナウンスが聞こえる。

「行きましょうか、あなた。」

「ああ。」

「シンジ…
 二年間、本当に迷惑をかけるけれど…」

母さんの目が潤んでいる。


517:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/31 15:24:30
「別にいいんだよ。母さん達も研究頑張ってね。」

アスカが言った。「夜、寂しくって泣くんじゃないわよ!」

「な、何言ってるんだよアスカ…」

彼女は僕の手を握りしめてきた。

「それと…手紙出すの忘れたらコロスからねえっ!
 覚えときなさい!」

アスカは泣いていた。
僕の手の上に涙が何滴か落ちた。

「…うん。
 また会えるからさ、泣かないでよ?アスカも。」

「あんたなんかに言われたくないわよっ」

寂しいんだろうな…アスカも…いくらお母さんの用事とはいえ…

僕もその手を握りかえした。力いっぱい。


最後に、搭乗ゲート越しに僕はみんなに手を振った。

「それじゃ、いってらっしゃい!」

518:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/31 15:25:16
ロケットエンジンの白煙が青空に吸い込まれていく。
彼らはもう行ってしまった。

「さてと。」

バスがもう出てしまう。
僕は床に置いてあったボストンバッグを担ぎあげた。
今後の生活用品一式が入っているのだから仕方ないのだが、重い。

明日からは新学年が始まる。

第三新東京市第一中学校…か…
僕はうまくやっていけるだろうか。

そんなありきたりのことを考えながら僕はバスターミナルに向かった。

そういえば、僕が第三新東京市に着くよりもずっと早く彼らは向うに着いてしまう。
何か不思議な気分だ。

519:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/31 15:27:13
『当機は飛行高度80kmで現在上昇中です。安定飛行に入るまでは、シートベルトをお閉め下さい…』

機体の後部では凄まじい轟音と共にロケットエンジンが燃焼しているが、機内の騒音は割と静かに抑えられている。
窓の外の空は既に真っ黒だ…あれは星だろうか…

さきほどまでは落ちこんでいたアスカは、今では窓に頬を押し付けて下を流れる風景に夢中になっている。

「本当にこれでいいの…あなた?」

ユイがさきほどとは打って変わって厳しい表情で夫に尋ねた。

「ああ…」

ゲンドウはシートの上で目を閉ざしている。

「もし…シンジが知ったら…きっと私たちを許してくれないでしょうね…」

「シンジは私たちの仕事を尊敬しているからな…」


520:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/31 15:28:01

ユイが静かに言った。「わざと…でしょう?」

「シンジはもう大人だ。
 私たちにはシンジに本当のことを伝える義務があるからな…」

「私達が、いかにおぞましい人間かということを…ですね?」

「シンジには私たちのような人間になって貰いたくはないからな。
 だが、シンジが私たちの仕事を尊敬し、その道を進もうとしている以上は…」
 
「シンジにはその心構えをさせておく必要があるということね。」

「ああ。」

突然、メインエンジンの騒音と機体の振動が小さくなった。
飛行艇が次第に水平になってゆく。

『当機は飛行高度90kmで安定飛行に入りました。
 南極・コロンブス基地までわずか二時間程度ではありますが、ひとときの空の旅をお楽しみ下さい…』

521:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/31 15:29:13
これ以上無いくらい最悪なタイミングだ。
私は受話器を取ったことを後悔した。

『レイちゃん?夜遅くにごめんなさいね。』

「大丈夫よ…まだ起きてるつもりだったから。」

『そう。ところでお姉ちゃんは今いるかしら?』

やはり。来た。

「もう寝てしまったみたいよ。今日は疲れてたから。」

私は出来るだけ冷静に、状況を悟られないように、話を続けた。

『そう…
 明日から、当分の間はお姉ちゃんと二人っきり。
 お姉ちゃんから聞いているわよね…」

「ええ。知っているわ。」

今初めて知りましたなどとは口が裂けても言えない。

『…あんなお姉ちゃんだけれど、しばらくの間は面倒をみてやってね…
 本当にごめんなさい…』

「ええ…」

522:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/31 15:31:11
この辺りで電話を切る潮時ね。
姉と同居生活の件はあとでじっくりと考えればいい。
そう思ったその時…

「そこにいるんでしょぉ~?
 一杯くらい付き合いなさいよ~?ケチィ~」
 
隣の部屋から大声が聞こえてきた。
かなり自我境界線が曖昧になっているような声だ。

私は咄嗟に受話器の送話口を手で抑えたが、しっかりと相手には聞こえてしまった。
受話器の向こうで相手が頭をかかえこむ様子が目に見えるようだ…

『あの馬鹿娘ッ…
 ちょ…ちょっと!ミサトを出しなさい!ミサト!』

やはり爆発してしまった。
耳が痛い。
仕方がないので居間まで姉を連行しに行くことにした。

「お姉ちゃん…電話…」

だが姉は畳の上で安らかな寝息を立てている。
周囲には何本もの空き缶が散乱していた。

「お姉ちゃん…寝てるわ…」

『…っ!』

523:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/31 15:32:47
「起こしてもいい?」

『もういいわ…大声出してしまってごめんなさいね…』

もう諦め声だ。
この時点でこの後の展開はほぼ予想がつく…

『お姉ちゃんは生活無能者だし…
 あの人も家族のことも考えないでまた出ていっちゃうし… 
 その上、私は当分第三新東京には帰れないわ。
 全く…あなたにどう詫びたらいいか…』

鼻をすする音が混じる。

「大丈夫よ…お母さん…」

『お願いよ…レイちゃんだけが頼りなの。
 あなたがいなかったら…お姉ちゃん、ゴミに埋もれて死んじゃうわ。』

受話器を通して啜り泣きが聞こえてきた。
姉の現状を省みれば、あながち冗談にも聞こえないのは気のせいだろうか。


524:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/31 15:33:47
20分後、電話は切れた。

居間に戻ると、先ほどまで寝ていたはずの姉がテレビを観ながらケラケラと笑い転げていた。
狸寝入りとはこのことらしい。

「電話終わったぁ~?
 ビィルどぉ~、冷たくて美味しいわよ~」

「…」

「な、なによその目は…
 私なんか悪いことでもしたァ?
 ……
 う…は、話は変わるんだけどさァ、明日転校生来るの知ってる?
 男の子らしいよォ?」

興味のない話だ。

「もう寝るわ。おやすみなさい。」

「ちょ、ちょっと待ちなさいよッ
 まだ話が…」

私はベッドに倒れこんだ。

今夜はよく眠れそう。

525:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/31 15:35:30
交通渋滞で到着が遅れてしまった。
もう夜の十時過ぎだ。
早々、迷惑を掛けてしまうことになる。

「葛城…ここかな。」

僕はインターフォンを鳴らした。

十数秒後、ガチャッとドアが開いた。

「夜遅く申し訳ありません…いか…!」

「夜遅く非常識よアンタァ、酒くらいゆっくり飲ませなさいよォ!!」

勢いよくドアが閉ざされた。

何が起こったんだ…?

葛城博士が言うところの「聡明で溌剌とした自慢の娘」が今の…
そんなはずはあるまい。家を間違えたのだろうか。

だがしっかりと表札には「葛城」と書いてある。
恐る恐るもう一度ドアをノックしてみる。

526:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/31 15:36:20
ドアが開いた。

「夜遅く申し…」

「あなた誰?」

「いやっ…しばらくの間、葛城博士の家に住まわせて頂くことになっている碇と申しますが…」

「聞いていないわ。」

「えっ」

「私、眠いの。さよなら。」

「わー、ちょっとレイ!ストップストップ!」

先ほどの酔いどれ女が慌ててやってきた。

「そうそう!そういやシンジ君、シンジ君だよね!
 入って入って!」

僕は二の腕をつかまれて部屋の中に引きずり込まれた。
後にさっきの女の子が続く。

居間には大量のビール缶が散乱している…

527:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/31 15:37:26
「もォ~それならそうと言ってくれればいいのに~
 黙ってるからセールスマンか何かだと勘違いしちゃったわ。」

まさか…この人本気で…
かなり酒が回っているらしい。
 
「あ、あたしミサトって言うのよ、ミサトって呼び捨てでいいわよ!」
 
「ミ、ミサトさんでいいですか?」

「辛気臭いわね~まあいいや。
 あ、これ学生服!」

ミサトさんは僕に学生服を放って寄越した。

「あ、ありがとうございます。
 ところでちょっとお聞きしたいことが…」

「なになに?全然オッケーよん。」

「その…今、ここに住んでるのはもしかして…さっきの女の子と葛城…ミサトさんだけ…」

「そ!いい勘してるわね~
 普段はお母さんもいるんだけどね、当分の間は戻れないそうよ?
 お父さんも南極行ってるし~」


528:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/31 15:39:17
嫌な予感がする。

「さっきの髪の青い女の子は…」

「レイのこと?私の妹よ、可愛いでしょ!
 えっと…たしか…シンジ君と同じクラスだったっけ…」

「え?」

「そうそう、二人ともあたしの受け持ちのクラスよ。
 2年A組!
 学校ではミサト先生って呼びなさいよ~?」

「ええ!?」

「レイ!ちょっち出てきなさいよ~」

返事は無かった。

「寝ちゃったのか…仕方ないか。
 あ、そこがシンジ君の部屋だから~自由に使っていいわよ。」

「あ…ありがとうございます…」

「まだ早いからさぁ、寝る前にちょっち付き合わない?」

ミサトさんがビール缶を僕に突き出して来た。

「お断りします…」

529:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/31 15:40:37
頭の中の混乱は既に限界に達しつつある。
部屋の中で落ち着いて要点を整理しよう…

僕は部屋を閉め切ってベッドに座り込んだ。
と、尻の下にぐにゃりとした感触が…

「ギュッ、グエーッ!ギャー!!」

「う、うわあああああああっ」

猛然とそれは部屋を飛び出していった。

「あら、尻に敷いちゃったの…
 そのトリね、ペンペンっていうのよ。
 昔、お父さんが貰ってきてね。
 レイによくなついてるのよね~」

「は、ハハ、そ、そうですか…」

なにやら凄いことが起こりだしているらしい。
この家で二年間…

530:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/31 15:42:33
なんか結構長くなりそうです。
夏中一杯かけてのんびり書いていきますので。
よろしくお願いします。

531:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/31 18:10:46
角さん、コテハン乗せたまま>>512みたいなことかいたら叩かれちゃうよ
気をつけてね。

532:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/31 21:47:10
>>509は褒め言葉じゃない?

533:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/31 23:22:23
何なんだこのニート
粘着すんなよ、気色悪い

534:角 ◆uTN4HfUPlw
06/07/31 23:39:23
>>513なんですが、冷静に読むと色々変なコトが分かってきます。
その辺は余り追求しないで下さい…

ちなみに文鎮ネタは自分の過去の経験に基づいています。
数年前、フィンランドのヘルシンキ国際空港でやらかしました。
荷物のレントゲン撮った直後に突然雰囲気が慌しくなりましてね…
いかつい係員に呼び止められて荷物引っくり返されました。
あ~終わったァって思ってまた機械通したらまた反応するんですわ。
拘留時間は十五分位でしたが永遠のように感じました。
結局文鎮は返して貰えましたが…

それにしても何で文鎮なんかがリュックサックに入ってたんだろう…日本でたときはなんともなかったのに。
最後に書道をしたのは中学時代だったわけです。
我が人生最大の謎の一つです。
世にも奇妙な何とやらですよ。


535:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/01 00:03:34
角さえ居なくなりゃ消えるんだよこのハゲ!

536:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/01 00:04:48
角さえ居なくなりゃ消えるんだよこのハゲ!

537:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/01 00:08:39
>>535
ふかわのAAつかって再度投稿し直すことをおすすめします

538:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/01 00:21:56
角さえ居なくなりゃ消えるんだよこのハゲ!

539:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/01 00:29:46
人間関係がどうなってんのか?
名字すらよくわからん。

540:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/01 00:59:48
角さえ居なくなりゃ消えるんだよこのハゲ!

541:角 ◆uTN4HfUPlw
06/08/01 02:21:39
「知らない…天井だ…」

やはり夢では無かったようだ。
運悪く。

窓から、晩春の暖かい日差しが差し込んでいる。

まだ朝は早いけれど、とりあえず起きてみよう。

台所から軽やかな包丁の音が聞こえる。

女の子が朝食を作っていた。葛城…レイ…だっけ。
空色の髪に赤目なのに、不思議と違和感を感じさせない。

味噌汁かなにかの野菜を刻んでいる。

ふと、目が合った。

「あ…お早う。」

「…」

女の子は全く表情を変えずに調理に戻ってしまった。
気まずい沈黙が流れている。

「あのさ…えっと、僕、しばらくここで暮らすことなったんだ。
 何か、手伝えること無いかな?」

「別に無いわ。」

542:角 ◆uTN4HfUPlw
06/08/01 02:23:15
僕、嫌われちゃったのかな…?

とりあえずミサトさんが飲み散らかしたビールくらい片付けよう。
その張本人は居間の真ん中で大の字になって寝ている。ヒドい寝相だ。
缶を一通りビニール袋に放り込んだ後に、とりあえず布団を掛けておいた。


新聞を郵便受けまで取りに行く。
スポーツ新聞と真面目そうな経済新聞が一部づつ入っていた。

「朝ごはん、出来たわ。
 それ頂戴。」

女の子はスポーツ新聞を手に取ると向こうに行ってしまった。

543:角 ◆uTN4HfUPlw
06/08/01 02:24:40
一方、経済新聞の方はというと…

『二十一世紀最大の発見』『第二の巨大地下空洞が南極に』

一面は大見出しに覆われている。
経済新聞が経済ネタを一面に全く置かないのは恐らく初めてではないだろうか。

人工衛星からのものとみられるカラーの重力の分布図が掲載されている。
図面の中央付近で、完全な円形を描くように色が黒褐色に変色している。

大空洞の直径は15km程度。ほぼジオフロントと同じだ。
そして、大空洞内部の60-75%程度は氷塊に埋まっている可能性が高いという。


544:角 ◆uTN4HfUPlw
06/08/01 02:25:35
僕はテレビをつけた。

そこには母さんがいた。

雲一つ無い青空、真っ白な氷原の真ん中に父さんと立っている。
重そうな耐寒服を着込んではいるが、その目は輝いていた。

南極からの中継らしい。

母さんの誇らしげな声がテレビから響いてくる。

『…これは人類の科学の勝利です!
 厚さ2000mの氷と3800mの岩盤さえも私たちの目を欺くことは出来ませんでした。
 そして私たちにはそこに到達することが可能なのです。』

母さんは父さんにマイクを手渡した。
南極でも相変わらずグラサンを手放さないようだ。

『私は確信しています。
 あの人工的に造られた空洞の中に存在するものが何であれ…』

父さんは一度、言葉を切った。

『それは間違いなく我々人類のルーツを解き明かしてくれることでしょう。』

#今日はこのへんで。
#お休みなさい


545:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/01 02:40:25
角は悪魔のようなやつだな
人が嫌がってるのに平気で投下を続けるのか、氏ね!

546:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/01 02:44:06
角さんめげずにがんばってくれ!
俺は待ってるぞ

547:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/01 02:47:54
角は死ねよハゲ!

548:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/01 08:51:15
多分、こんどの投稿者はめげない。
ここまで荒らされても冷静な奴は久しぶりww

549:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/01 11:45:27
角ガンガレッ!!

550:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/01 12:57:30 gWE8ahAm
>>504
ストーリーとか完璧だと思う



    完    璧    だ    と    思    う









頭足りてない(´・ω・`)テラカワイソス

551:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/01 13:12:12
  / ̄ ̄ ̄`⌒\
 /          ヽ
 |  _,___人_   .|
 ヽ|´ ┏━ ━┓`i / ここは私のスレになりましたよっ!
  |  《・》 《・》  |   
 (6|   ,(、_,)、  |6)  
  ヽ  トェェェイ  /   
   ヽ ヽニソ /   
     `ー一'


552:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/01 13:13:16
  / ̄ ̄ ̄`⌒\
 /          ヽ
 |  _,___人_   .|
 ヽ|´ ┏━ ━┓`i / 
  |  《・》 《・》  |    がんばりますからヨロシクっ!
 (6|   ,(、_,)、  |6)  
  ヽ  トェェェイ  /   
   ヽ ヽニソ /   
     `ー一'


553:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/01 13:16:57
  / ̄ ̄ ̄`⌒\
 /          ヽ
 |  _,___人_   .|
 ヽ|´ ┏━ ━┓`i / 
  |  《・》 《・》  |    恋人募集中ですっ!
 (6|   ,(、_,)、  |6)  
  ヽ  トェェェイ  /   
   ヽ ヽニソ /   
     `ー一'


554:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/01 13:18:22
  / ̄ ̄ ̄`⌒\
 /          ヽ
 |  _,___人_   .|
 ヽ|´ ┏━ ━┓`i / 
  |  《・》 《・》  |    モー娘。の矢口真理大好きですっ!
 (6|   ,(、_,)、  |6)  
  ヽ  トェェェイ  /   
   ヽ ヽニソ /   
     `ー一'


555:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/01 13:19:22
  / ̄ ̄ ̄`⌒\
 /          ヽ
 |  _,___人_   .|
 ヽ|´ ┏━ ━┓`i / 
  |  《・》 《・》  |    でも、やっぱり女の子ならなんでもいいですっ!
 (6|   ,(、_,)、  |6)  
  ヽ  トェェェイ  /   
   ヽ ヽニソ /   
     `ー一'


556:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/01 13:20:24
  / ̄ ̄ ̄`⌒\
 /          ヽ
 |  _,___人_   .|
 ヽ|´ ┏━ ━┓`i / 
  |  《・》 《・》  |    見ました?今ぴったり1分でしたっ!
 (6|   ,(、_,)、  |6)  
  ヽ  トェェェイ  /   
   ヽ ヽニソ /   
     `ー一'


557:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/01 13:21:25
  / ̄ ̄ ̄`⌒\
 /          ヽ
 |  _,___人_   .|
 ヽ|´ ┏━ ━┓`i / 
  |  《・》 《・》  |    なんだか楽しくなってきますねっ!
 (6|   ,(、_,)、  |6)  
  ヽ  トェェェイ  /   
   ヽ ヽニソ /   
     `ー一'


558:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/01 13:23:12
  / ̄ ̄ ̄`⌒\
 /          ヽ
 |  _,___人_   .|
 ヽ|´ ┏━ ━┓`i / 
  |  《・》 《・》  |    角さんって学生ですかっ!?私と同じですねっ!
 (6|   ,(、_,)、  |6)  
  ヽ  トェェェイ  /   
   ヽ ヽニソ /   
     `ー一'


559:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/01 13:25:32
  / ̄ ̄ ̄`⌒\
 /          ヽ
 |  _,___人_   .|
 ヽ|´ ┏━ ━┓`i / ちなみにっ!荒らされると良スレっていうのは昔の話なんですっ!
  |  《・》 《・》  |   
 (6|   ,(、_,)、  |6)  
  ヽ  トェェェイ  /   
   ヽ ヽニソ /   
     `ー一'


560:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/01 13:26:52
  / ̄ ̄ ̄`⌒\
 /          ヽ
 |  _,___人_   .|
 ヽ|´ ┏━ ━┓`i / 
  |  《・》 《・》  |    顔うpしてくださいよっ!うpうpっ!
 (6|   ,(、_,)、  |6)  
  ヽ  トェェェイ  /   
   ヽ ヽニソ /   
     `ー一'


561:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/01 13:29:28
  / ̄ ̄ ̄`⌒\
 /          ヽ
 |  _,___人_   .|
 ヽ|´ ┏━ ━┓`i / 綾波レイですかっ?それより角さんですねっ!
  |  《・》 《・》  |   
 (6|   ,(、_,)、  |6)  
  ヽ  トェェェイ  /   
   ヽ ヽニソ /   
     `ー一'


562:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/01 13:30:31
  / ̄ ̄ ̄`⌒\
 /          ヽ
 |  _,___人_   .|
 ヽ|´ ┏━ ━┓`i / 
  |  《・》 《・》  |    角さんセクースセクースしましょうっ!
 (6|   ,(、_,)、  |6)  
  ヽ  トェェェイ  /   
   ヽ ヽニソ /   
     `ー一'


563:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/01 13:32:07
  / ̄ ̄ ̄`⌒\
 /          ヽ
 |  _,___人_   .|
 ヽ|´ ┏━ ━┓`i / 
  |  《・》 《・》  |    今度会えるといいですねっ!また来ますからっ!
 (6|   ,(、_,)、  |6)  
  ヽ  トェェェイ  /   
   ヽ ヽニソ /   
     `ー一'


564:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/01 13:34:47
うんこぶりぶり角ぴゅーぴゅー

565:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/01 13:45:25

 ノ     ∧     /) ∧
  彡  ノW \从/V  W \   ミ
  (  ノ        |      ノ \)
  ∩V      、、 |       >V7
  (eLL/ ̄ ̄\/  L/ ̄ ̄\┘/3)
  (┗(      )⌒(      )┛/
   ~| \__/ |  \__/ |~     
    爻     < |  ;     爻    
    ~爻     \_/  _, 爻~     
     ~爻__/⌒ ̄ ̄ ̄~~ヽ_ 爻~
     /    ー ̄ ̄\_ ̄\
  _一‘     < ̄ ̄\\\J
<\       ー ̄ ̄ヽ_ヽJ   ̄\_
  \     _ニニニヽ )       ~\
   \  _/⌒|\ ヽ_~~ ~⌒\_
  __/~    V \_|     ~\_
うんこぶりぶりおしっこちゃー

566:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/01 14:09:37
URLリンク(pr1.cgiboy.com)

私と遊んでね~

567:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/01 14:20:19
グロ注意

568:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/01 14:51:13
や、やめて…。ト、トウジぃ~っ…、やめてよ…、これ以上中に注入されたら…、うんち出ちゃうよぉ…

え、ええやんか、我慢せんと出せ出せシンジ…。ワシも…、出すぞっ! 精子かんちょう発射ッ! うっ!

ピュ

ブリブリッブチュチュバチュッ!!!ビチャビチャボトボトボトっ

はあっはあっ…、でちゃったよぉ…、うんち出ちゃったよぉ…
ヒックヒック

569:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/01 14:57:48
糞まぁいはスカトロがお好き

570:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/01 15:09:11
角はスカトロマニア

571:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/01 16:43:11
20 個のレスを消去しました。

本当に夏だな。

572:角 ◆uTN4HfUPlw
06/08/01 21:32:14
ミサトさんが起きだしてきたようだ。
心なしか、足元がふらついている。

「イタタ…ちょっち飲みすぎたわ~」

と、頭をパカパカ叩きながらミサトさん。

「おはようございます。」

「あ、おはよ~、そんっな堅っ苦しいあいさつなんてしないでいいわよ~」

「え…じゃ…」

「オハョーでいいわよオハョーで。」

「あ…は…はい…」

酔いが覚めてもこの人はこんなキャラなのだろうか。

テレビ画面ではメガネのニュースリポーターが興奮気味に喋り散らしていた。

場面は変わって南極の氷原の上を何台もの大型ヘリが飛び交っている。雪上車の往来も激しい。
世界各国の調査隊が次々と到着しているらしい。
一週間以内に大空洞に向かって掘削が開始されるそうだ。


573:角 ◆uTN4HfUPlw
06/08/01 21:36:12
「それにしてもすっごいわね~、これ。
 シンジ君のお父さんたちも行ってるんでしょ?南極に。」

「はい。二人とも。
父なんて『人類の歴史が変わる』とか言いながらはしゃいでました。」

「あのすっごいいかつそうな人よね?お父さんって。
 全く、想像もできないわね。」 

僕も、あんなに父さんがはしゃいでいた姿はみたことがなかった。

「そういえば、葛城博士も南極に向かっておられるって聞きましたけれど。」

「うん…そうなんだけど…」

不意に、ミサトさんの顔が曇った。

「あ、何でもないわ。さっさと朝ごはん食べて学校行っちゃいなさいね。」

表に出た感情を隠すように再び明るく振舞いだす。
なんだったのだろう、今の。

574:角 ◆uTN4HfUPlw
06/08/01 21:39:20
レイと呼ばれた女の子が作った朝食はおいしかった。
味噌汁に魚の干物を焼いたものだ。

「レイ、今日も朝食ありがと!
 それじゃ、ワタシ職員会議あるから先に学校行ってるわ。
 あ、それとシンジ君?学校来たら一旦職員室まで来てね!」

「あ、は、はい。」

そうだ、今日は僕が新しい学校に通う最初の日だったんだ。

「それじゃ、行ってきまーす。出る前に鍵ちゃんと閉めてってね。」

ドアがバタンと閉まった。

「朝食おいしかったよ。ありがと。」

「…そう。」

女の子は全く表情を変えることなく、空の食器を流しに持っていってしまった。
しばらくして水を勢いよく流す音が聞こえてきた。


575:角 ◆uTN4HfUPlw
06/08/01 21:40:57
始業式が終わってしばらくして、姿を消していた姉が戻ってきた。

教室に入ってくるなり消しゴムを投げ合っていた鈴原と相田を一喝した。

「静まれー!
 てんこうせいをしょうかいするー!
 ささ、入って入ってぇ。」

一気に教室が静かになる。

腕を掴まれながら転校生が教室に引きずり込まれてきた。

「あの…碇 シンジです。
 よろしく…お願いします…」

「きゃー、かわいいー」「優しそうー」「ちっ」「…いい顔をしている」

転校生は、クラスの反応が以外だったのか、かなり戸惑っているようだ。

「いわゆる、人畜無害っちゅうやっちゃな」

「鈴原!黙りなさい!」

「ぐほッ」

思うがままにコメントを述べた鈴原が洞木さんに殴られた。


576:角 ◆uTN4HfUPlw
06/08/01 21:42:06
「じゃ、席なんだけど、どこ空いてるかなーっと。」

「ミサト先生、一番前が空いてますけれど。」

「そっか。じゃ鈴原、ココ来なさい。」

「な、なんでやねん!ワイなんもしてないで?」

「今学期はね。
 でもアンタと相田がひっつくとロクなことないのよ。
 ホラ、さっさと来る!」

「セ、センセ…」

「鈴原、諦めなさい。」と洞木さん。

「それじゃ碇君、席空いたからそこ座ってね~」

「あ、は、はい…」

鈴原は一瞬、これみよがしに転校生を睨みつけてから前の席に移動していった。

転校生の席は私の隣だった。

577:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/01 21:43:14
や、やめて…。ト、トウジぃ~っ…、やめてよ…、これ以上中に注入されたら…、うんち出ちゃうよぉ…

え、ええやんか、我慢せんと出せ出せシンジ…。ワシも…、出すぞっ! 精子かんちょう発射ッ! うっ!

ピュ

ブリブリッブチュチュバチュッ!!!ビチャビチャボトボトボトっ

はあっはあっ…、でちゃったよぉ…、うんち出ちゃったよぉ…
ヒックヒック



578:角 ◆uTN4HfUPlw
06/08/01 21:43:25

「よお、転校生。
 俺相田ケンスケっていうんだ。よろしくな。」

休み時間に隣のメガネの男の子が話しかけてきた。
アイダ…どこかで聞いたことのある名前だ。

「あ、よろしく…
 ところでアイダって名前…今朝、ニュースに出てた…」

「ああ。親父が南極に行ってるんだ。
 昨日電話したら、ニュースリポーターやっててこんなに嬉しかったことはないって言ってたよ。」

『歴史が変わる瞬間に立ち会える』だったっけ…なんだか興奮気味にそんなことを喋っていたような気がする。
そういえば相田もキャスターのお父さんにそっくりだ。

「ところで…碇ってさ、どこに住んでるの?」

「ミサトさんのマンションに居候させて貰ってるんだ。」

ケンスケのメガネがきらりと光った。

「俺は学校終わったら碇の家に遊びに行く。いいな。」

「だ、駄目だよ…」

「もうこれは決まったんだよ碇。あきらめな。」

「え…えええ?」

579:角 ◆uTN4HfUPlw
06/08/01 21:44:22
駄目だ。
このメガネの狙いがなんであれ、あの散らかった室内だけは見せられない。

「じ…じゃあさ、代りにジオフロントでも行かない?
 僕も行くの初めてだし…」

「甘いなぁー碇。一般人はあそこには滅多に入れないんだよ。
 だから俺だって行ったことないんだ。残念ながらね。
 碇はいいよなあー、親御さんが関係者で。
 俺なんて何回も申請出してるのになぁー」

ケンスケは残念そうにため息をついた。

「だったら一緒に行こうよ。」
 僕、今日あそこに用事があるんだ。」

「お、おい碇。何言ってるんだよ。」

セキュリティレベルが低い区域なら三名の随行者が許可されると書いてたから…
彼らでも空洞内を出歩くこと位はできるんじゃないかな。

「三人くらいまでなら、身分証明があれば僕と入れるよ…カードがあるから…
 うん。やっぱりそうだ。」

「ホントかよ!おいトウジ!」

トウジと呼ばれた背の高いジャージが弾かれたように飛んできた。

580:角 ◆uTN4HfUPlw
06/08/01 21:45:38
「碇のやつがジオフロントに連れてってくれるらしいぜ!」

「ほんまかい!早速世話になるで転校生!」

トウジは目を爛々と輝かせている。

「これで二人かあ…そうだ、委員長!」

委員長と呼ばれたそばかすの女の子がこっちを振り返る。

「今日、俺とトウジと一緒にさ、ジオフロント行かない?
 碇が連れてってくれるらしいんだ。」

委員長は不意に顔を赤らめた。

「え…ご…ごめんなさい…
 今日、忙しいの。」

「いいじゃんか、ちょっと付き合ってくれたらいいからさ。」

委員長はしばらく考え込んでから返事をした。

「…ええ。お願いするわ、碇君。」

話を聞いていた周りの生徒達はワケを知っているらしい。
なぜか笑いを噛み殺している生徒も数人いる。

581:角 ◆uTN4HfUPlw
06/08/01 21:46:49

「でも…ここに来るの初めてだから。
 どうやって行けばいいのかなあ。」

「大丈夫だって!俺が案内してやるから。
 放課後俺について来いよ。」
 
ケンスケが明るく言った。


#今日はこのへんで。
#あんまり進まないでごめんなさいね。

582:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/01 22:00:53
やっぱりZEEBRAは最高だね!

583:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/01 22:17:18
下手の横好きってヤツだな。
こういう馬鹿はマジで鬱陶しい。
劇の台本の様な描写ばかり。
そのくせ改行多過ぎ。
もう少し勉強してから来いよ。

584:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/01 23:00:47
>こういう馬鹿はマジで鬱陶しい。
>もう少し勉強してから来いよ。

こんだけ余分。
お前のが鬱陶しい。

585:角 ◆uTN4HfUPlw
06/08/02 02:21:02
「ふえー、キビシイねぇ」

ケンスケも参ってしまったようだ。

「テロ対策じゃないかしら。
 南極であんなのが見つかった後だから、ここだって何が起こるか分からないわ。
 研究施設だってあるし…」と洞木さん。

言うことが筋道立っている。
かなりしっかりしたタイプらしい。

「イインチョは頭ええなあ、意外と。」

「い、意外とって何なのよ…」

洞木さんは言い返しながらも顔を赤らめた。
やっぱりこの二人、何かあるのかな?

僕達の車両には誰も乗っていない。
不意に周囲が明るくなった。

人類以外の何かが残した大空洞…ジオフロント。

空洞、というよりは地底にもう一つ世界があった、というほうが正しい。
本で何度も読んだことはあるけれど…ここまで大きいとは思わなかった。
なんと、湖や森林まである。

リニアは真っ暗なトンネルの中を螺旋を描きつつ降下している。
もうかなりの深さのはずだ…


586:角 ◆uTN4HfUPlw
06/08/02 02:22:14
不意に周囲が明るくなった。

人類以外の何かが残した大空洞…ジオフロント。

空洞、というよりは地底にもう一つ世界があった、というほうが正しい。
本で何度も読んだことはあるけれど…ここまで大きいとは思わなかった。
なんと、湖や森林まである。

天井はきれいな丸みを帯びており、その天井のあちこちからオレンジ色の日光が漏れてきている。
地下400mの大空洞は夕日に照らされていた。

「地底でも夕暮れがあるんだ…」

思わず声が出る。

リニアは天井から吊るされた細いレールの上を走っている。
すごい高さだ。
1000mほど下に、豆粒のような研究施設が点在している。

587:角 ◆uTN4HfUPlw
06/08/02 02:24:15
空洞の周りを円形を描いて走ってる細い線が欧州物理学研究所の粒子加速器かな…
それで、あれが…

誰もいない車内に乾いたシャッター音が響く。
ケンスケが写真を撮っているらしい。
洞木さんとトウジはというと、声も無くこの光景にみとれている。

「なあ碇、碇の親父さんってあのピラミッドに勤めてるんだよな?」

ケンスケは脇目も振らずに写真を撮っているようでも、冷静に会話が出来るらしい。
ケンスケが指差す先には小さなピラミッドがあった。

「あ…うん。あれが多分、人工進化研究所だよ。」

「へえ…」

何かケンスケは気になる事があるらしい。
それっきり黙りこくってしまった。シャッター音も消えた。

588:角 ◆uTN4HfUPlw
06/08/02 02:25:38
「えらいとこきてしもうたなぁ、のう碇?」

トウジが上を見上げながら呟いた。
この光景に圧倒されっぱなしで口数が少なかった。

今、僕達は人工進化研究所のシンボルであるピラミッドの前に立っている。
彼らの権限ではこれ以上進むことは出来ない。

この空洞に来てからかなり時間が経つ。
大空洞もかなり薄暗くなってきた。

細い光の線となったリニアが大天蓋をゆっくりと移動している。
パッ、パッ、と道の傍らにある背の低い照明に光が点った。

「じゃあ、もう遅いし帰りましょうか。
 ありがとうね碇君。本当に楽しかったわ。」

「ありがとな碇。
 こんなトコ来たの初めてや。ホンマに感謝しとる。
 また今度どっか遊びに行こうや。」

589:角 ◆uTN4HfUPlw
06/08/02 02:27:42
トウジが仰々しく言った。

「あ…うん。僕のほうこそありがとうね。」

「あ、そや。ミサトセンセと同居しとるんやて、碇?」

ケンスケ、やはり喋ったのか。
確かにミサトさんは美人…見た目は…

「今度ワイ、碇んち行ってもええか?」

「フケツ…」

洞木さんの顔が一瞬にして強張った…
完全に頭に来てしまったらしい。

「この馬鹿!さっさと帰るわよッ!」

「イタタタタ!
 じゃ、碇、ケンスケ、明日学校でな!」

洞木さんに耳を掴まれたトウジが引きずられていった。

「じゃあまた明日ね!」「じゃあな、トウジに委員長!」


590:角 ◆uTN4HfUPlw
06/08/02 02:28:37
二人は帰ってしまったようだ。

「なぁ、碇。」

ケンスケが話しかけてきた。

「え、何?」

「何があるんだ、人工進化研究所には?」

「何って…僕…何も知らないけれど…」

「本当に?」

事実だ。父さんも母さんもそんなことを言ったことは無かった。

「うん…」

「なら仕方ないな…
 碇なら知ってると思ったんだけど…」

ケンスケはうつむいて考え込んでしまった。

「…なんでもない。じゃあな碇!
 また明日!」

「うん…じゃあね。」

ケンスケは走り去っていった。
一体彼は何を知りたかったんだろう。


591:角 ◆uTN4HfUPlw
06/08/02 02:30:01
僕が考えていたその時、研究所の巨大なピラミッドから小さな人影が出てきた。

ミサトさんの家にいた青い髪の女の子だ。

「あ…葛城さん…」

女の子は少し驚いたような顔をした。

「…何故あなたがここにいるの?」

「あ、父さんがここの関係者だから…
 さっき、トウジやケンスケも連れてきたんだ。」

「そう…」

「もう暗いからさ、僕が送ってくよ。
 懐中電灯持ってるし。」

「ええ。」

僕は前を歩く。その後ろを女の子がついてくる。
二人の間を沈黙が支配している。

参ったな、駅まだ1kmくらい歩かなければならないや。
何か話さなくちゃ…

そんなコトを考えていると女の子が話しかけてきた。

592:角 ◆uTN4HfUPlw
06/08/02 02:31:41
「あなたを、どう呼べばいい?」

「え…?」

僕は戸惑った。
どう呼べばって…いきなり言われてもな…

「ん…シンジでいいよ。」

アスカも僕をそう呼んでいた。
別に問題はあるまい…

「シンジ…」

女の子は小さく呟いた。

「君の事は…なんて呼べばいいのかな…?
 葛城さん…とか?」

「レイ…」

「それなら、レイって呼んでいいかい?」

僕はアスカをファーストネームで呼んでいた。
この場合、少し恥ずかしいが…

「ええ。」

僕は、初めてカタチになった会話が出来た、と内心喜んでいたのだがこの後の会話は全く無くなってしまった。

593:角 ◆uTN4HfUPlw
06/08/02 02:33:10
ようやく、リニアの駅に着いた。
既にリニアは駅に停車している。

「シンジ。送ってくれてありがとう。」

女の子は無表情にそう言って、硬直している僕の前を通り過ぎた。

駄目だ、やっぱり恥ずかしい。
が、今となってはもはや訂正は不可能だろう…そんな気がする。
俗に言う手遅れってやつだ。

リニアが小さな空気が抜けるような音を立てて、ゆっくりと発車した。
そしてゆっくりと高度を上げてゆく。
下界がどんどん小さくなってゆく。

オンナの…もとい、レイはリニアの座席にもたれて、静かに文庫本を読み出した。
暗黒の中に色とりどり宝石を散りばめたような下界の景色にも全く頓着していない。

もしかして、レイは物凄い大人物か、変人なのかもしれないな。
ふと、そう思った。

それにしてもレイは何故、たった一人で人工進化研究所にいたのだろう…

#今日はこれくらいで。
#お休みなさい。

594:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/02 05:19:22
角気持ち悪いから死んでくだちい。

595:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/02 05:32:29
>>593


596:角 ◆uTN4HfUPlw
06/08/02 18:40:30
家に帰り着いた時は八時を過ぎていた
ミサトさんが出迎えてくれた。今日は酒を飲んではいないようだ。

「おかえりなさい、遅かったわね~」

「あ、遅れてすみませんでした。」「ただいま…」

「ねぇ、二人でどこいってたのかなぁ~?」

悪戯っぽい顔をしながらミサトさんが検索してきた。

「シンジとジオフロントに…」

夕刊に目を通しながら、レイがさらりと言う。

「えぇ~お二人さん、仲がいいのねぇ~」

「ちょ…ちょっとミサトさん…」

「ね、ね、ね、レイ、シンジ君はレイのこと何て呼ぶのォ?」

危ないくらいのニヤケ顔でミサトさん。

「レイ…」

「…!」



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