06/07/11 13:43:25
「…ただいま」
空き家となった木造一戸建てにシンジの声が響く。
もちろん返答はない。『馬鹿、僕は何やってるんだ』
シンジは苦笑しながら懐かしい藁の匂いを吸い込んだ。
ここが新しい僕の家。多少ガタはきているが僕一人で補修くらいは出来るだろう。
居間に上がったところで僕は凍りついた。
折り重なってくしゃくしゃになった四人分の服。
三人分は子供のもので一人分は母親のものであろう。
怯え、震える子供たちを抱き締めながら自らの形を失ったに違いない。
割れた窓から風が部屋を吹き抜ける。
僕はしばらくはショックで硬直していたが、丁寧に服を折り畳み部屋の隅に並べていった。
「僕には生きるためにこの家が必要なのです。しばらくこの家を貸してください…。」
シンジは一人呟いた。
最後にアスカのプラグスーツを同じく折り畳み、明るい窓際に置いた。