究極の愛 それがトウジ×シンジat EVA
究極の愛 それがトウジ×シンジ - 暇つぶし2ch348:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/30 18:48:43
まだ友達同士でトウジ→シンジな段階の2人という設定で。

「シンジの味噌汁めっちゃ美味いなぁ!」
「そ、そう?別にこんなの普通だよ…」
「いや、かなりの腕やと思うで。シンジはええ嫁さんになれるやろな~」
冗談ぽく笑うトウジに一気に恥ずかしくなってシンジは真っ赤になる。
「なっ…なに言ってんだよ!バッカみたい」
トウジの言葉が妙に嬉しかったことに戸惑って、シンジは慌てて目をそらした。
「…本気で言うてたら、引くか?」
「え…?」
急に真剣な顔つきになったトウジに一瞬ドキッとする。
「どうしたのトウジ…今日、ちょっと変だよ…?」

349:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/30 18:50:31
トウジは言いたかった。
『ワシの嫁はんになってくれ、シンジ!!』
と、ずっとずっと言いたかった。
でもさっきまで笑っていたシンジの表情が、自分を心配そうに見ていることに
決心は揺らぐ。
自分の気持ちを伝えてしまったら、きっと今までみたいに友達として付き合うことも
できなくなるかもしれない。
あんな無愛想だったシンジが、この数日間でやっと自然に笑ってくれるようになった
のに。
微妙なバランスで成り立っている今の友達関係を壊したくはない。
それほどシンジは繊細で、自分が一番苦手なタイプだとトウジはよくわかっていた。
だけど、放っておけない。
目が、離せない。
コイツの笑顔が見たい。
シンジを笑わせると、今までにないくらい最高に満足する自分がそこにいた。
「…シンジのメシ美味すぎて、ギャグ思いつかへんわ」
結局、想いは自分の心に押し戻す。
でも次の瞬間、トウジの一番好きなシンジの笑顔が見れた。
「もう。驚かさないでよ。急に真剣な顔するから心配しちゃったよ」
「あんなぁ、ワシかて真剣になる時もあるっちゅーねん」
(ホンマに…真剣に、好きやで、シンジ…)

350:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/30 19:25:02
可愛いね

351:348
06/08/31 03:12:02
(今日のトウジ、やっぱり何か変だったなぁ…)
シンジはトウジが帰ってからも、そのことがやたらと引っかかっていた。
今までは一緒にいて楽しい、としか認識してなったけど、それはトウジが慣れない気を使って
シンジが親しみやすくできるように頑張っていたからだった。
なるべく間を作らないように、シンジの入りやすい話題、シンジが構えないでいられる適度な距離、等々。
当のシンジはそんなトウジの苦労も知らず、その居心地の良さに多少は不信に思いながらも
流されていた。
だから気付かなかった。
(そういえば、僕はトウジのこと何にも知らないや)
シンジにとってトウジもまた、苦手なタイプだった。
だからあまり関わりたくなかったし、興味もなかった。
だけど、トウジ特有のまっすぐな眼差しがいつしかシンジに忘れていた感情を与えていた。
自覚はしていなかったけれど、それは勇気とか希望とか、自信だったのだろう。
シンジがこの学校に来てから少しずつ明るくなったのは間違いなくそのせいだった。
シンジはこの時初めてトウジという存在が自分の中で大きくなっていることに気付いた。
トウジがおかしいと、こんなにも調子が狂う。
(明日、もっかい聞いてみようかな…はぐらかされたら、ケンスケに聞いてみよ)

352:348
06/08/31 03:14:35
翌朝、シンジはいつもの3人分の弁当にもうひとつ弁当を用意して行った。
もちろんそれはトウジの分。1日ぐらいならミサトにはバレないだろう。
こんなことをすると、トウジのことだから気を使いそうだけど、昨日自分の手料理を喜んで食べて
いたのが嬉しかったので、ついやってしまった。
「よっ!センセ、おっはようさん!」
いつもの明るい挨拶が葛城家に響く。
「おはよう。トウジ、ケンスケ」
(はぁ…シンジ、今日もかわええなぁ…)
トウジは相変わらず平静を装っていた。
(トウジ…いつも通りだ)
いつもの道を3人で歩きながら取り越し苦労だったかな、とシンジは安堵する。
(でもお弁当は渡そう。せっかく作ったし…)
「トウジ、今日お弁当作ったんだけど食べない?」
その瞬間、トウジとケンスケの動きが止まった。
トウジの脳裏に今のシンジの言葉がリピートされる。
固まったまま動かないトウジにシンジが不安になる。
「もしかして…迷惑だったかな…?」
「いや…コイツ、たぶん嬉しすぎて半分気絶してんだよ」
ケンスケは真面目に言ったがシンジは冗談と思い笑ってみせた。

353:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/31 03:35:57
GJ!

354:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/31 07:33:37
乙彼
いいね、ほのぼの待ってた

355:348
06/09/01 02:49:12
授業が始まっても、トウジはシンジの作ってくれた弁当のことで頭がいっぱいだった。
(シンジがワシのために弁当作ってくれるやなんて…ひょっとしてこれ、夢ちゃうか?)
実際トウジはそんな夢をもう何度も見ていた。
自分の席から見えるシンジの後姿から目が離せない。
もしかしたら、シンジも自分のことを好きなのかもしれないと期待してしまう。
(いや、落ち着けワシ。そないな都合のいい話あるわけないやろ!けど理由ぐらい聞いてもええよな?
それにしてもシンジの手料理が今日も食えるんかぁ~。ワシめっちゃ幸せや~~)

そうこうしているうちに昼休み。
3バカトリオはいつものように屋上へ。
予告通りシンジはトウジに弁当を渡した。
「はいトウジ、お弁当」
「シ、シンジ…ホンマにワシが食うてええんか?」
「うん。だってトウジのために用意したんだから」
「な…なんで…?」
「え?なんでって…」
困ったような顔をするシンジに、余計なことを聞いてしまったかと焦るトウジ。
シンジはただ、昨日のようにトウジに美味しいと喜んでもらいたかっただけだった。
でもそれを正直に言うのはかなり照れくさいと気付いて、答えられなかったのだ。
その時、焦っているトウジと目があってしまい、シンジは顔を真っ赤にしてごまかした。
「だ、だってトウジいっつもパンだし今日は期限切れの材料いっぱい余ってたから、
処理してもらおうと思って…!!」
「あ~そ、そうやったんか!ほな急いで食わなアカンな!!」
(何やってんだよ、コイツら…)
トウジとシンジの明らかに不自然な会話に、ケンスケは1人冷静に呆れていた。

356:348
06/09/01 02:51:23
ケンスケは、トウジの気持ちを知っている。
別に言われたわけではないが、トウジの態度を見ていたら一目瞭然だった。
ケンスケにとって、トウジもシンジも友達以外の何者でもない。
本来友達ならトウジを応援してやるべきなんだろうけど、相手がシンジとなるととてもそんな気には
なれなかった。
それはシンジが男だから、という理由もあるが、シンジの内面自体に問題があると感じていたから。
察しのいいケンスケにはシンジがどれだけ深い愛情を求めているのか大体わかる。
(女だったら相当面倒臭いタイプだな。ま、俺は友達だからいいけど)
それがケンスケのシンジに対する本音だった。
トウジが迫ったところで、シンジが受け入れるとも思えないし、ただ見守るだけに徹しようと
ケンスケは思っていた。
(でもシンジがトウジに弁当作ってきたのは予想外の展開だったな…)
シンジの本音を知りたくなったケンスケはちょっと探りを入れてみることにした。

一方、シンジは戸惑っていた。
自分がトウジに弁当を作ってきた理由が口に出したら恥ずかしいことだと思った時、
今までにない感情が自分の中にあると気付いた。
でもそれがはっきりとわからなくて、もどかしい。
(なんだろう…こんな気持ち初めてでよくわからない…どうかしてる)
シンジの頭の中で、そのことと先程のトウジの顔が順番に回っていた。
焦りながらも、弁当を口にした途端感激していたトウジの顔。
嬉しかった。
他の誰よりも、トウジに食べてもらうことが一番嬉しいと思った。
大袈裟に誉めてくれるからとかじゃなくて、食べた瞬間の表情がたまらなく好きだと思った。
(あ。そういえば、トウジに昨日のこと聞きそびれちゃった…)
そんな雰囲気じゃなかったこともあって、シンジはケンスケにそれとなく聞いてみようと思い
放課後を待った。

357:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/01 06:51:06
(゚Д゚)ウマー
つづき待ってますー

358:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/01 12:01:57
ぐっじょぶ!


359:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/01 17:39:06
トウジがアホで、ケンスケが冷静な傍観者でイイ!

360:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/01 22:09:51
 今日は早起きして、お弁当を作った。
 アスカはまだ寝てて、ミサトさんはネルフ。
 僕は二人とペンペンの昼食と夕食を作ると、冷蔵庫にしまって、アスカを起こさないようにゆっくりと家を出る。
 マンションを出ると、そこにはトウジが待っていて
「おはようさん」
 なんて、声をかけてくれた。
 いつものジャージ姿じゃないトウジは、どこか別人みたいで、僕はちょっとトウジと目が合わせられなかった。
「これなぁ、妹が病室で選んでくれたんや」
 僕が顔を見上げるとは、トウジは照れ臭そうに頬を掻いている。
 やっぱりいつものトウジだったことに、僕は笑った。
「でもエヴァのパイロットっちゅーんは忙しいんやろ?」
「うん、でも今日は平気」
 チルドレンが遠出できないことも知ってたけど、僕はミサトさんに無理を言った。
『仕方ないわねぇ…でも使徒が来たらすぐに帰ってくるのよ』
『じゃあ…』
『楽しんできなさい』
『本当ですか!?やったぁ…』
『ふふっ。でもシンジ君が遊びに行くなんてねぇ』
『え…?』
『最初の頃はそんなこと考えもしなかったんじゃない?』

361:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/01 22:12:24
 ミサトさんの言葉は図星も図星で、昔の僕じゃ本当に考えられないことで…
「これって、トウジのおかげなのかな」
「ん?なんか言うたか?」
「あ、うぅん!なんでもない」
 笑って誤魔化すと、トウジはちょっと納得いかない顔をする。
「ごめん」
「謝らんでもええわい」
 申し訳なくて謝ったら、頭をくしゃくしゃされた。
「イジワル…」
「誰がイジワルや」
「そういうことをするトウジ!」
 僕は頭をくしゃくしゃするトウジから逃げた。
 嫌だったわけじゃない。だから、悪戯っぽく笑ってみせる。
「ちょっ、くぉら、待たんかい!」
「早くしないと間に合わないよ!」
 そんなこと言い合いながら、僕等は駅まで走った。

「えっと、9:30か…あと5分くらいだね」
「なら売店でなんか買っていこうや」
「お弁当作ってきたんだけど」
「ちゃうちゃう。朝飯や朝飯」
 そう言うとトウジは売店に行ってしまう。
 仕方なく、僕は二人分の切符を買って、売店で店員のおばさんと話しているトウジを横目で見ていた。
プルルルルルル
『まもなく3番線に9:30発の…』
「トウジ、早くしないと!」
「せ、せやかて…ちょっと待ってぇな!」

362:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/01 22:15:34
 売店で急いで買い物をして、トウジは僕と階段を駆け上がった。
 列車が到着する音が聞こえる。
「乗ります!ワシら乗ります!」
 大声を上げて、僕より後に来たのに、トウジは先に行ってしまった。
「ま、待ってトウジ!」
「はよせんかい!」
 無理だよ。
 トウジが早すぎる…
 トウジが列車に乗り込んだ。
 ドアが、閉まる。
「トウジ!」
 僕が叫ぶと、トウジの手が延びて、僕を引き寄せた。
「あっ…」
「アホ…遅いわ」
 引き寄せられてそのまま抱き締められた。
 列車は、ゆっくりと走り出す。
「遅いから罰や、もう少しこうさせぇ」
 トウジに抱き締められてドキドキした。
 トウジも顔を赤くしてて、でもやめる気なないみたい。
 幸い、僕達の乗った列車には誰も乗ってなくて…
 僕はその時、ずっとこうしていたいと思った。

363:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/01 22:20:47
リアルタイムで見れた
いいねぇ、可愛いねぇ

364:348
06/09/02 02:13:40
「シンジ、ちょっと手伝ってほしいんだけど」
「あ、ケンスケ。何?」
「倉庫から新しい掃除用具取ってこいって頼まれてさー。いいだろ?」
「うん」
放課後、トウジよりも早くシンジに話しかけることに成功したケンスケは、呆然とするトウジを横目に
シンジと倉庫へ向かった。
「…ちょうどよかった。ケンスケに聞きたいことあったんだ」
「へ?俺に?」
「うん…。トウジさぁ、最近なんか変だと思わない?ケンスケなら知ってるかなって…」
「…………」
シンジがトウジの気持ちに気付いてないのはいいことなんだろうけど、本当に全く気付いてないのも
凄いな、とケンスケは絶句した。
(ここまでお子ちゃまとはね…。だったら今日の弁当は一体どういう意味なんだ?)
「う~ん…その前に俺も聞いていい?」
「え?…うん」
「シンジってさ、誰かを好きになったことある?」
「は、はぁ!?何だよそれ!?」
「関係あることだから答えてほしいんだけど」
「??……ない…よ…多分…」

365:348
06/09/02 02:14:57
「やっぱり…」
「やっぱりって何だよ…」
ケンスケは大きくため息をついた。
ここで本当のことをシンジに伝えるのは簡単だけど、それはトウジへの裏切りになってしまう。
でもシンジのこの鈍感さにケンスケは同情して、少しヒントを与えることにした。
「あのな、シンジ。恋をすると、誰でも今のトウジみたいになるもんなんだぞ」
「え…」
シンジの胸がちくりと痛む。
ひどく衝撃を受けているのに、妙に冷静になっていく自分がいた。
「じゃあ、トウジ…好きな人いるんだ……」
「ま、そーゆーこと」
「………」
明らかな作り笑いをして黙り込んだシンジに、ケンスケも黙ってしまった。
(シンジ…マジかよ…)
本人さえまだ気付いていないシンジの気持ちを見抜いたケンスケは、やっぱり見守るだけに徹しようと
再び決心した。

366:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/02 12:35:32
GJ!

367:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/02 19:48:10

投下速度早くていいね

368:348
06/09/03 03:40:26
掃除用具を抱えて教室に戻った2人を、トウジが待っていた。
「おう、ごくろーさん。何やえらいかかっとったなぁ」
シンジが目を合わさないようにしているのにトウジはすぐ気付いた。
話しかけようとした瞬間、ケンスケがさりげなく遮る。
「ちょっとひっくり返しちゃってね。トウジも掃除当番だろ?ほい」
ケンスケが適当にごまかしながら、トウジにほうきを放り投げて目で合図を送った。
トウジはケンスケの意図がわかった訳ではなかったが、シンジに話しかけるのをとりあえず諦めて掃除にかかる。
(ケンスケの奴…シンジに何か言うたんか…?)
一向にこちらを見ようとしないシンジはまるで、転校してきたばかりの暗い雰囲気に戻ったかのようだった。
「さー掃除や掃除!ちゃっちゃと終わらすでー!!」
わざと明るい声を出してみてもやはり同じだった。
「ちょっと鈴原!!口だけ動かしてないで手を動かしなさいよ!!」
委員長がすかさずいつもの絡み合いにやって来る。
「あ~…うっさいのが来た…」
「うるさいとは何よ!!あんたのせいでしょ!?」
「ちゃんとやってるやんけ~!そこジャマやからのいてんか」
「なんですって~!?」
ぎゃあぎゃあと普段通りの口喧嘩をする2人を見て、シンジはハッと気付いた。
(トウジの好きな人って…委員長……?)
色恋沙汰に鈍いシンジは、何の根拠もなく、ただトウジに近い異性の存在=委員長という安直な発想でそう
思い込むことにした。
そして、トウジへの想いに気付き始めていた心を無意識に閉ざしてしまった。

369:348
06/09/03 03:42:09
一方トウジはシンジに気付かれないように、ケンスケに小声で問い詰めていた。
「おいケンスケ!お前シンジに何か言うたやろ!?」
「べっつに~?」
「しらばっくれんなぁ!!」
「ス・ズ・ハ・ラ~~~!!!」
終わらない委員長とトウジの鬼ごっこを無視して、シンジは黙々と掃除を続けていた。
「ちょっとシンジ!」
そこに現れたのはアスカだった。
「ミサトったら今日も仕事で帰れないって言うのよ!?」
「そ、そう…大変だね」
「あんたバカ!?誰がミサトの心配しろっつってんのよ!!」
「…は?」
「この私が、なんで2日も連続でアンタなんかと2人っきりで夜を過ごさなきゃなんないワケ!?
昨日は昨日でそこの熱血バカ男も夕飯タカりに来るし、むさ苦しいったらないわ!!」
「そんなこと言われても…」
「という訳でヒカリィ~~!今日泊めてくれない?バカシンジのだっさい和食なんかより、ヒカリの作った
パスタが食べた~い!!」
委員長はあっさりOKして2人は仲良く帰っていった。
(なんだよ…別にいいけど)
一部始終を聞いていたトウジは、シンジにもの欲しそうな顔で目線を送っていた。
「………」
シンジはそれに気付いたけれど、今はトウジと顔を合わすのが嫌だった。
でも、どうしてそう思っているのかがわからない。
昼間はあんなにトウジのリアクションが嬉しかったのに。
これからずっとトウジを避けるわけにもいかない。
もしかしたら、また料理を食べてもらえば元の自分に戻るかもしれない。
そう自分に言い聞かせて、シンジはトウジを見た。
「……トウジ…今日も、ごはん食べに来る…?」
それを聞いた途端、トウジはおあずけから開放された犬のように喜んで、何度も首を縦に振った。

370:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/03 06:29:10
ワンコかわいい

371:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/03 14:29:28
ケンスケ…。
YOU!言っちゃいなYOー!!

372:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/03 23:03:08
GJ!

373:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/04 01:19:58
続きマダー?

374:348
06/09/05 02:22:03
「お、おじゃまします~~」
シンジと一緒に帰宅したトウジは浮かれていた。
昨日と違って今日はシンジと2人っきりなのだ。
「アスカもいないし、今日はもう残り物で簡単なのしか作らないよ」
「かまへんかまへん。シンジの作ったのやったら絶対美味いしな」
「………」
ぶっきらぼうに言ったはずの言葉にそう返されて、シンジは言葉に詰まる。
(トウジの…バカ。そんなこと、素で言われたら恥ずかしいよ……)
「なんや照れてんのかシンジィ~~~?顔赤いで?」
「そっ…そんなんじゃないよ!!」
これじゃトウジのペースだ。
トウジに乗せられて、さっきまでの気まずい感覚が薄れて嬉しくなっていく。
胸がドキドキして、何かを求め始める。
(でも、僕は何を期待してるんだろう…トウジに喜んでもらいたいなんて…本当にそれだけなのかな?)
ふとトウジを見ると、勝手にテレビをつけてけらけら笑っていた。
気が抜けたシンジはため息をつくと、エプロンをつけて料理にかかった。

タンタンタン、と手馴れた包丁の音が聞こえる。
うしろを向けば、エプロン姿のシンジが見える。
この状況にトウジが興奮しないはずがなかった。
(っくぁ~~~!!!ええなぁ!!まるで新婚夫婦みたいやん!!こう、うしろから抱きしめてやな…)
『あっ…トウジ、危ないよ。今包丁使って…』
『すまんなぁ、シンジのエプロン姿があんまり可愛いさかい、つい…』
『もう…何言ってんだよ。ばか…』
『シンジ…好きや』
『トウジ…僕も……』
互いの唇が触れ合う瞬間(トウジの妄想内)遠くからシンジの声が聞こえた。

375:348
06/09/05 02:23:33
「トウジ!トウジってば!!」
「へっ!?な、何や?」
「できたよって、さっきから言ってるのに」
「もうできたんか?えらい早いなあ」
「だって湯豆腐だし」
何故この暑いのにそんなメニューなのかはさておき、シンジの得意な和食を存分に味わうトウジだった。
「やっぱシンジ料理美味いわ」
「だから、普通だって…」
「普通ちゃうて。今日の鍋も出汁自分で作ってんねやろ?」
「う、うん…。粉末だと味変えられないしね」
「昨日の味噌汁も最高やったし、あと、だし巻きと揚げ出し豆腐も絶品やったな~」
「………」
照れくさそうにしていたシンジが、だんだん無口になっていくのにトウジは気付いた。
「…どないしたんや?シンジ」
「うん…。僕の料理ってアスカ達の口にはあんまり合わないらしくって、トウジみたいに喜んでもらったこと、
ないから…」
「そら…もったいないなぁ……」
寂しげに話すシンジの姿にドキっとする。
「トウジには、本当に作り甲斐があって嬉しいよ。…ありがと」
シンジの、かなり貴重な満円の笑顔。
トウジの心臓はすでに爆発寸前だった。
「シ、シンジ…」
「ん?」

376:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/05 15:09:56
トウジがアホっぽくていいな

377:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/05 18:49:59
そこがトウジの良いところだから

378:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/05 20:11:51
純情なんだよ

379:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/06 02:12:05
すれ違ってもいいから、最終的に幸せになっておくれ

380:348
06/09/08 03:18:51
「これからも…その、時々でええからお前のメシ食わしてくれるか…?」
「…いいけど……」
「ほ、ほんまか!?」
トウジが喜んでも、シンジは決まりが悪そうに俯いていた。
「シンジ…やっぱ、迷惑か?」
「あ、そんなんじゃないよ!ただ…」
「ただ…何や?」
「トウジ…本当は僕じゃなくて、委員長にそれ言いたいんじゃないのかな、って思って…」
「…は?」
トウジはシンジから思いがけないことを言われてまぬけな声を出した。
「は?って…。だって、トウジは委員長のこと…好き、なんだろ?」
シンジは自分で言って、泣き出しそうになっていた。
「ちょ、何でそないな話になってるんや?」
その泣きそうな表情に思わずトウジはシンジの肩を掴んで問い詰める。
「大体、見てたらわかるよ…」
「アホ。ええかげん気付けや…」
「え?」
「ワシが好きなんは、お前や。シンジ」

381:348
06/09/08 03:19:47
まっすぐに向けられた、トウジの言葉。
シンジの涙が、頬を伝った。
何も言えないでいるシンジを、トウジは力強く抱きしめる。
「お前はワシが守ったるから…せやからもう泣くな」
シンジは答えられなかった。言葉が出てこなかった。
涙だけが溢れ出して、ただ震えていた。
だけど涙の理由はもうわかっていた。
(嬉しいんだ…僕。嬉しくて泣くって、こんな気持ちなんだ……)
そう確信したシンジは、遠慮がちにトウジの背中に腕を回した。
その瞬間トウジの鼓動が大きく跳ねる。
シンジが自分の想いを受け入れてくれたと判断したトウジは、ゆっくりと腕をほどいて
至近距離でシンジの目を見つめた。
「シンジ……」
「トウジ…本当に、僕でいいの…?」
トウジはシンジの涙を指で拭う。
「あたりまえやんけ」
優しく笑うトウジに、今度はシンジの方がドキドキする。
ドキドキしすぎて、トウジの顔がまともに見れなくなって俯くと、またぎゅっと抱きしめられた。
トウジは腕の中にすっぽりとおさまってしまう頼りない感触に、愛しさが込み上げる。

382:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/08 15:12:35
キタ!

383:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/08 19:05:49
良かった。でもシンジ、意味わかって言ってるのかな?w


384:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/08 19:15:07
ああっ!!最高だ!!このスレ!!ネ申万歳!!

385:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/08 21:03:07
このままチューくらいできるといいね

386:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/12 01:49:35
続きは?

387:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/13 03:46:01
あげ

388:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/18 01:29:25


389:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/18 04:15:54


390:348
06/09/19 01:26:18
(何でだろう…ドキドキするのに、凄く安心する。トウジだから、なのかな…?)
シンジは抱きしめられる感覚にしばらく浸っていたが、相手が慣れ親しんだ友達だということを
ふと思い出し、我に返った。
ばっと勢いよく顔を上げてトウジの腕から離れると、一気に恥ずかしくなってトウジから顔をそむけた。
「あ…あの…、ごめん……」
「な、何がや…?」
トウジはシンジが逃げてしまいそうで、その手をぎゅっと握った。
そのことでまた、シンジの鼓動はドクンと跳ねる。
「…触られるの…その…苦手だから……」
「…ウソや」
「えっ…?」
トウジはシンジの腕を引き寄せると、またぎゅうっと抱きしめた。
「お前は人の体温を、誰よりも求めとったやろ?せやけど、それを隠そうと必死やった」
「どうして…」
「わかるわ。シンジは全部、顔に出とる」
シンジの肩が震えた。きっとまた泣いてる。それがわかってトウジはシンジの背中をポンポンと優しく叩く。

391:348
06/09/19 01:27:12
「はっきり言うけどな、ワシは本気でお前に惚れとる。シンジのことしか、頭にないんや。
気色悪いって言われんのも覚悟しとる。それでも、お前がめっちゃ好きでどうしようもないねん」
「トウ…ジ…」
涙が止まらないシンジの震える唇に、そっとキスをした。
「あ……」
「す、すまん…勝手に……。嫌やったか…?」
真っ赤になって慌てるトウジがおかしくて、シンジは首を横に振って微笑んだ。
「嫌じゃないよ。トウジなら…」
「シンジ…」
シンジの言葉に嬉しさを隠せないトウジ。
もう一度シンジを抱き寄せて、真剣な眼差しで見つめる。
「ほな、もっかいしてもええ…?」
「うん…」
緊張気味に目を瞑るシンジに、もう一度ゆっくりと唇を重ねた。
幸せだと感じた。
お互い別々に抱えていた悩みも迷いも全て忘れてしまうほど幸せだった。
もっと、ずっと一緒にいたいと心から思った。

392:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/19 01:33:53
キター!起きてて良かった

393:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/19 12:24:49
ちゅーできて良かったね

394:348
06/09/20 14:02:54
「トウジ……」
「ん?」
「帰らないで…」
「!!!」
(シンジ…それはつまり…誘ってるってやつなんか!?)
トウジの妄想が広がるのは致し方ないことだった。
好きになってしまった相手がシンジだということ以外は標準の、いや標準以上の健康的な中学生男子だ。
トウジは自分の気持ちに気付いてからというもの、性の対象はシンジであったことは事実だった。
友情や親愛の延長線でシンジを好きになったのなら、まだ格好はつくが、トウジの場合は一目惚れ的な
部分もあったのだ。
つまり、初めて会った時から『可愛えなぁ…シンジって』状態だった。
ベタ惚れである。
しかし相手は間違いなく男で、別にそういう趣味だったわけでもないトウジは苦しんでいた。
男なんだから、友達として接するのが一番だと信じて頑張ってきた。
しかし、シンジの持つ独特の繊細さやネガティブ思考、甘えたいのに甘えられない不器用さにますます
トウジは深みにはまって、結局シンジに惚れこんでしまった。
そんなシンジのことを、想わない夜はなかった。
毎晩、毎晩、罪悪感とともに…。
「ええで。ほんなら今日は、泊まっていくわ」
精一杯平静を装って言ったが、トウジは全身が震えるほど緊張していた。
シンジにそれがバレないように、さりげなく離れて。
しかし、当のシンジは全く何も考えていなかった。
男同士でHをするなんて思考は残念ながらシンジにはまだなかったのだ。
ただ、トウジともっと一緒にいたかっただけだった。
「うん。あ、じゃあリビングに布団敷いて寝よっか」

395:348
06/09/20 14:03:44
「あ、ああ…せやな…」
(こんな広いとこで!?まあ2人きりやからええけど…)
「あ!」
「ど、どないしてん!?」
その時風呂場のカーテンが勢いよく開いて、ペンペンが出てきた。
「ごめん!ご飯用意するの忘れてた!」
「クェ~~~!!」
(……せや…2人きりやなかった……)
トウジはがっくりと肩を落とした。
しかし、ペンペンが寝てしまえばこっちのものだ。
「トウジ、お風呂入っていいよ。沸いてるから」
「…ほな入らしてもらうわ」

風呂に入ると、さっきのキスのことを思い出してしまう。
シンジの拒絶ではない涙と、自分を受け入れてくれた言葉。
そして、
『帰らないで…』
シンジは自分を求めてくれている。
両想いだと…思う。
でも、好きだとは言われていなかった。
シンジはただ、受け入れただけだ。
(ほんまに…このままヤってええんかな…)
繊細なのに、どこか投げやりなシンジの癖がトウジを悩ませる。
環境に流されてるだけでは同意とは言えない。
こういうことは、ちゃんと気持ちが通じ合っていないと駄目だ。
トウジは舞い上がっていた気持ちを落ち着かせて、風呂場を出た。

396:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/20 15:54:11
乙です。そしてGJ!

397:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/20 17:10:16
トウジ、若さで押すのもいいけど失敗しないようになww

398:348
06/09/22 01:45:20
「シンジ、風呂あいたで」
「あ、うん。じゃあ僕も入ろうかな」
リビングにはいつのまにかテーブルや座布団が片付けられて、布団が2つ敷いてあった。
それを見てトウジはリアルにドキドキしてしまう。
(シンジの奴…可愛い顔してめっちゃ大胆やなぁ…)
ペンペンも寝ている。この状況下でトウジのエロ妄想が止められるはずもなかった。
たった今、冷静になってシンジに気持ちを確認しようと決めていたのに、これでは意味がない。
トウジは1人で色んな顔をしながら首をブンブンと振ると、両手で頬をバシッと叩き気合を入れた。
シンジは意外と早く風呂場から出てきて、布団でごろごろしていたトウジはどんな体制でシンジを
迎えるべきか決められずにうつ伏せで寝たフリをするしかなかった。
「トウジ…?寝ちゃった?」
シンジが近づいてきて、トウジの背中を軽く揺すった。
トウジは起きあがるタイミングが掴めないで困っていた。
「まだ寝ないでよ…僕、トウジと……」
「シンジ…!!」
シンジの寂しそうな言葉に我慢できなくなって、トウジは本能のままシンジを押し倒してしまった。
「トウジ…ごめ…起こしちゃった……?」
驚きながらもトウジに気を使うシンジ。
「最初っから寝てへんて。シンジのこと待っとったから…」
そう言うと、トウジは早急にシンジの唇を奪う。
さっきよりも深く、深くシンジの唇を貪って舌を侵入させた。
「…っん……、ふ……」
シンジの唇から苦しそうな吐息が漏れる。
押さえつけたシンジの肩が、緊張で強張っていることに気付いて、トウジはハッと我に返り唇を離す。

399:348
06/09/22 01:46:13
シンジは息が乱れて、目に涙を浮かべていた。
「シンジ…すまん…ワシ、また勝手に……」
「い…今のはちょっと、びっくりしちゃった…」
照れたように笑うシンジがあまりにも可愛くて、トウジはシンジをそのまま抱きしめて首筋に顔を埋めた。
「ぁ…ちょ、トウジ?」
焦ったようなシンジの声。
「シンジ…お前、いちいち可愛すぎやねん」
「トウジ…」
「アカンわ、ワシもう我慢できん…」
「な、何が…?」
「何て…決まっとるやん」
トウジはシンジの腹部に張り詰めた下半身を押し付けるようにした。
「えっ…ウソ…」
「…シンジ…嫌か…?」
シンジの頭は混乱していた。
トウジのことが好きだから、抱き合うのもキスをするのも自然にできたのに、それ以上の行為は想像も
しなかった。それは延長線上にあるはずの行為なのに、シンジの頭からはすっぽりと抜けていた。
無意識のうちに男同士で恋愛することを否定していたのかもしれない。
それとも、そんなことをしなくても心が通じ合えば十分だと思い込んでいたのかもしれない。
自分の気持ちがわからないまま、シンジは今すぐ答えなければいけないこの状況にただ混乱していた。
「トウジ……あの……」

400:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/22 02:11:28
ここで切るのか!!

続きをwktkして待つ。

401:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/22 07:05:13
wkwktktkwkwktktkwkwktktkwkwktktk

402:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/22 16:01:48
やっちまえよ

403:348
06/09/24 01:46:53
「…ごめん……」
「……………」
目を伏せてシンジは呟いた。
トウジはその言葉にショックを受けると同時に冷静さを取り戻した。
シンジの上から離れて、後ろ向きに座り込む。
「すまんシンジ…ワシ、最低やな。お前の気持ちも考えんとこんなことして……」
「違うよ!トウジは悪くない!」
シンジは慌てて起き上がると、トウジの背中に向かって叫んだ。
「本当は嬉しいよ。トウジが僕を求めてくれてることが凄く嬉しい。だから、その…嫌じゃないんだ。
でも、こういうことする前に、僕はもっとトウジのことをよく知りたい。今までよりもっと、深い話が
できる関係になりたいんだ。それからじゃ、ダメかな…?」
シンジは必死に話した。自分の気持ちをごまかさずに、はっきりトウジに伝わるように、丁寧に。
トウジはそんなシンジの想いを知った途端、自分の行動が恥ずかしくなってしまった。
これではまるで、シンジの体だけを求めているように思えて。
確かにシンジの体に今一番興味があるのは事実だ。
でも、そこにシンジの心が伴っていなければ、一生後悔することは目に見えている。
(シンジを守りたいと思ってる自分が、シンジを襲ってどないすんねん!)
黙って後ろを向いたままのトウジに、シンジは悲しい表情でまた誤る。
「ごめんね…僕の言ってること、自分勝手だよね……」
「いや…間違ってるんはワシの方や。告白して、いきなりやるやなんておかしいやろ」
「トウジ……」

404:348
06/09/24 01:49:07
「すまんかったな、シンジ」
やっと振り向いたトウジの表情は照れくさそうで、優しかった。
シンジは自然に微笑んで、小さく首を振った。
「ありがとう、トウジ」
誰にも見せたくないと思うほど、綺麗な笑顔だった。
多分、普段のシンジからは想像できない素直な姿だろう。
一番大切で、一番欲しいと思っているものが、トウジの中ではっきりとわかった気がした。
あのシンジが、本気で心を開きかけている。
それを確信した時、トウジは自分の身勝手な欲望を振り払っていた。
「よっしゃ」
トウジは突然気合を入れたかと思うと、灯りを消して布団に寝転がった。
そして座り込んだままのシンジに手招きをする。
「……?」
シンジは少し緊張しながらトウジの顔に近づいた。
「シンジ…さっき、ワシともっと話したいって言いたかったんやろ?」
「…うん…」
「ええで。何でも話してみ」
そう言ってシンジの手をぎゅっと握った。
「うん…トウジの話も聞きたい」
シンジは安心してトウジに寄り添うように横になった。

405:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/24 05:32:05
あー、可愛いな。この二人。
でもトウシンの何が辛いって結局バル戦が待ってるってことなんだよな…

406:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/24 18:15:04
トウジが先走らなくて良かったような、残念だったようなwww

407:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/25 21:35:41
あお

408:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/25 22:19:38
このスレはageないで

409:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/27 04:55:17
暇なので投稿してみます。


気がつけば3人でいる事が多くなっていた。

そう、僕が逃げようとしたあの日から。

友達?

僕の中にその概念がなかったのか、不思議な感じがした。
人の心に土足で入り込んできては、大人とは違う真っ直ぐな言葉を投げてくる。

正直それを疎ましいとも思ったが、どこかで心地良さも感じていた。

特に鈴原トウジに対しては。

こいつは僕を殴った。
何か理由があるらしかったが、そんな事はどうでもいい。

僕はあの得体の知れないに乗って戦った。
誰かを守ったはずなのにどうして殴られなきゃいけない?

その時は、頬から伝わる痛みと矛盾に、ただ腹が立って仕方なかった。

そう、自分に

410:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/27 07:37:35
おお!頑張ってくれ!
このスレ人増えて凄い嬉しい

411:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/27 21:01:55
そんな僕達が仲良くなるのにあまり時間はかからなかった。

初めは一歩引いたとこから見ていたけど、次第に打ち解けていく自分がどこかおかしくもあった。

だけど時々罪悪感に苛まれる事がある。

トウジの妹の件だ。

トウジは頻繁に病院に顔を出している。もちろん原因を作ったのは僕だ。

だけどトウジは何も言わなかった。
いや、むしろ僕を気遣う態度さえ見せてくれた。

トウジ…。トウジ…。

気がつけば僕はトウジの事ばかり考えている。

そう。この時すでに僕の中にある気持ちが芽生え始めていた。

412:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/27 21:24:57
乙。期待してる。
続きものなら348氏みたいにコテ名かタイトル付けたほうが分かりやすくない?
個人的な意見ですが。

413:ash
06/09/28 06:00:34
そうですね。コテ入れます。


僕達はいつもの様に三人で帰っていた。

「あ~あ、最近戦闘がないからつまんないなぁ」
「何言うてんねん。平和んなんが一番やないかい!なぁ、シンジ?」
「…えっ?あっ、うん、そうだね」
「何や気のない返事やなぁ…。パイロットがそないな事でどないすんねん!」
「ははっ、そうだね」

しばらく歩くとケンスケが
「じゃあ僕は寄るとこあるからここで!」
と足早に帰っていった。

トウジと二人。
考えてみればあまりなかったかもしれない。

「しっかしお前も可哀想な奴やなぁ」
「えっ、なんで?」
「あの無愛想な綾波とじゃじゃ馬に挟まれとるからじゃ。かなわんな~ホンマ」
「確かに…。でも綾波もアスカもそんなに悪い子じゃないよ」
「優しいな~お前は」

何気ない話がいつもより楽しく思えた。
少し前を歩くトウジの背中はどこかガッシリしていたのを僕は今でも覚えている。

414:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/28 07:51:49
乙。何か久々に見たら人増えてたww

415:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/28 12:59:24
GJ!シンジ視点いいね。
そして348氏の続きも待ってます。

416:ash
06/09/28 17:29:18
その夜ベッドに寝転び天井を見上げていた。

月明かりに照らされた部屋で僕はトウジの事を想っていた。

トウジの事を…?
何故僕はトウジの事を考えてるんだろう。ただの友達に過ぎないあいつを。

友達?
だったらケンスケだって。

いや違う。
トウジとそれ以外では明らかに違う“なにか”があった。

でもそれが何なのかは分からなかった。
いや、分からない振りをしていただけかもしれない。

嫌だ…もう寝よう。
明日になればきっといつもの僕達だ。

僕は無理矢理目を閉じた。明日が早く来るのをひたすら願った。


だけど、本能はいつまでも正直に僕を突き動すのをやめなかった…

417:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/28 23:54:59
gj!

418:ash
06/09/30 00:00:54
それからは妙にトウジの存在を意識するようになってしまった。
トウジの行動、仕草がいちいち気になって仕方がない。目を一瞬合わせるだけでも心が高鳴る。

僕はやっぱりおかしいのかな…
トウジにこんな感情持つなんて…。

シンジは葛藤を繰り返した。それは、もはや理屈では説明の仕様のない衝撃だった。

思えばこの街に来てから色々あった。ありすぎるくらいあったものだから、14歳の心ではなかなか整理できずにいた。

それでも日々は繰り返される。時が経てば使徒だってまた襲ってくるに違いない。そんな時、気持ちを乱していたらきっとエヴァにだって乗れない。

だが、そう簡単に割り切れる問題でもなく、シンジはただもがくしかなかった。


そしてこの後、シンジの気持ちに拍車をかける出来事が起きる事になる。

419:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/30 04:08:29
おっつ。



職人が増えていいね

420:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/30 15:08:46
次、バル戦か?

421:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/30 15:19:26
いいんちょの弁当かもしれん

422:ash
06/10/01 01:57:35
ある日、ミサトさんの昇進祝いをうちで行う事になった。ケンスケが最初に気付かなければ僕では分からなかっただろう。

昼休み。
「全くケンスケもたまには役に立つもんやなぁ」
「なんだよたまにはって。まぁ今回は感謝して欲しいくらいだけどね!」
「ははっ。今日はやけに機嫌がいいんだね」

「当たり前やないかい!あのミサトさんにお近付きになれるチャンスなんて滅多にないで~。あんな美人と一緒に暮らしとんのにお前はな~んも感じんのかいな?」
「確かにミサトさんは綺麗な人だとは思うけどあの姿を見ると何とも言えないよ…」

「何やその意味深な発言は!あ~なんか腹立ってきたわぁ。もうお前なんかこうじゃ!ほれっ!」
「いっ、痛いよトウジ!ごめん、ごめんってば!」


思えばこんな風に人と戯れた事はない。
相手がトウジだと余計にそれが印象づけられる。

そして何よりトウジが、健全な14歳、男子、という事実が僕には気になって仕方がなかった。

そして、その日の夜が来た。

毎回粗末な文章と展開が遅くて申し訳ないです。

423:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/01 18:56:58


424:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/02 03:24:45 Oxy6jvyT
シンジが片思いなトウシンもいいな

そして348氏の>>404の続きも待っている

425:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/02 03:25:52
あげちゃった…。すまん…

426:ash
06/10/02 11:57:10
アスカも一緒に暮らす事になり急遽歓迎会も兼ねて、パーティーは始まった。

その後、加持さんや委員長も加わって賑やかになってきた。

元々大勢で群れるのは好きじゃない。それは僕自身が扉を開けてなかったからだ。

でもその日は違った。
楽しかった。
何も難しいことは考えずに、場に溶け込んでいる自分がどこか心地良い気がしていた。



…何時間ぐらい経っただろう、ふと目が覚めた。薄暗い部屋を見渡すとミサトさんと加持さん、それにアスカの姿がなかった。他の皆は騒ぎ疲れたのかぐっすりと眠っている。

側ではトウジが寝ている。
その無邪気で無防備な姿を眺めていると、僕の中で何かが動めいた。

「触れたい」


僕はトウジの頬にそっと手を添えた。

427:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/02 17:47:09
キタ!?

428:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/02 22:07:07
キスでもかませ

429:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/02 23:58:14
>>404の続きはまだかな…

430:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/03 02:10:53
早く早くぅ

431:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/03 03:40:06
どっちも続きをwktkして待ってる

432:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/04 20:01:12
続き町

433:ash
06/10/05 02:11:49
右手から微かに伝わる体温が僕の体を駆け巡る。
それは今まで人との関わりを避けてきたシンジにとって、衝撃であり感動であった。

続いて左手も添えてみる。起きる気配はない。そしてシンジにある一つの気持ちが生まれる。

「もっとトウジを感じたい」

シンジの中で欲望と理性が対峙していた。

「このままずっとこうしていたい。いや、もっと別の場所で、もっと違うものを感じてみたい。」
「…ダメだ。ここを踏み越えたらきっと元には戻れないよ。だってトウジは男だし、男を好きになるなんてありえない」
「ありえない?だって現にこんなにも興奮しているじゃないか。それでも自分を否定するの?」
「否定?だってトウジは友達で…」
「友達を好きをなっちゃいけないのか?人を好きになっちゃいけないの?」
「だって…こんなの…」
「自分の気持ちに素直になるんだ。誰も僕を責めたりはできない筈だから…」
「すなおに…しょうじきに…」

そして理性が失われた瞬間、シンジは目を瞑り、その唇はトウジのそれと重なりあった。

434:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/05 02:15:35
起きてて良かった。

やっちまったなシンジ

435:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/05 02:24:39
トウジの口調が激しく違和感

436:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/05 02:52:05
本編でもそんなもんだwww

437:348
06/10/05 03:21:30
「ねえ、トウジ…」
「ん?」
トウジとシンジは手を繋いだまま暗闇の中で話し始めた。
さっきまでは恥ずかしくて、トウジと目を合わせることができなかったシンジだが、この暗闇なら
トウジと密着していても不思議と羞恥心よりも安心感の方が上だった。
そのせいか普段なら絶対にタブーだと思っていたことを質問する。
「トウジは最初僕のこと恨んでただろ?今は?」
「男はな、拳で解決するモンや。それに、エヴァの中で苦しんでるお前を見てからは…ワシの方が悪かったって
反省してんねん。まぁそれもお前に殴ってもらってチャラにしたつもりや」
「そっか…。僕トウジのそういうとこ好きだよ」
「さ、さよか…そらおおきに…」
思いがけないシンジの言葉に心臓が跳ねて、握っていたトウジの掌に汗が滲んだ。
シンジはそのことに気付いたけど何も言わなかった。
嬉しくて、もっとトウジを好きだと言いたかった。
だけど、やはりどうしてもトウジが自分を好いてくれていることが信じられなかった。
コンプレックスの塊で、自分には何の魅力もないと思い込んでいるシンジにとって、それは仕方のないことだった。
トウジもケンスケも友達として、学校で会うだけの薄い関係だと思っていたし、いつかみんな離れ離れになって
時間が経てば忘れていく。それでも別に何とも思わない薄い関係、だったはずなのに。
シンジの、トウジの手を握る力がふいに強くなる。

438:348
06/10/05 03:23:00
「シンジ…?」
「本当に…僕でいいの?トウジ……」
「…お前、何回おんなじこと聞くねん」
「だって…僕なんかのどこがいいんだよ?全然わかんないよ」
「全部好きや」
――。
息が止まった。
声が出せなかった。
気が付いたら、そのままトウジにキスされていた。
また涙が溢れて止まらなかった。
トウジはシンジの涙を拭うように瞼にもキスをして、シンジの顔を覗き込む。
「これでわかったか?」
トウジの優しい声に、シンジは何度も頷いてトウジの胸元に顔をうずめた。
トウジは何も言わずに、ただシンジをあやすように抱きしめた。
「…どこにも行かないで、トウジ…ずっと僕のそばにいてよ……」
「お前がええなら、ワシはずっとシンジのそばにおるで」

その夜、シンジはずっと子供のように泣きじゃくっていた。
トウジはシンジが泣き疲れて眠りにつくまで、ずっと抱きしめていた。

439:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/05 08:17:10
二人とも来てた!
ash氏、348氏、乙

440:ash
06/10/05 09:51:44
どれくらいだっただろうか。少なくともシンジにとっては果てしなく長い時間のように思えた。
起こさない様に慎重に。息すら止めて触れ合わせた唇が熱くなっていくのが分かった。

初めてのキス。
いや、これはキスとは言えないかもしれない。ただ強張らせた唇と唇がぶつかっているだけ。向こうは気付いてすらいない。
でもこれでよかった。これ以上を求めたら、僕は僕のままで居られない気がしたから。
僕はそっと唇を放し、急いで眠ろうとした。
「トウジ、ごめんね。ありがとう」
心でそっと呟いて、その日は終わった。

それから数日、僕はいつも通りの日常を送っていた。僕自身もっとトウジに対して引け目を感じるかとも思ったが、それはなかった。
むしろ、いままで以上にトウジと真っ直ぐ向き合って話をする事ができる様になっていた自分に驚いた。

いま、シンジの心は満たされていた。

441:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/05 12:30:42
348氏待ってたよ!
ash氏乙!

今日は何かたくさん投下されて良い日だ…

442:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/05 16:09:02
こんな日がずっと続きますように

443:ash
06/10/05 17:56:08
学校。いつもの風景。
「なぁ、セ・ン・セ!」
「なんだよ気持ち悪い声出して。宿題なら見せないよ」
「んなっ、何て事言うねんな!いつもなら見せてくれるやないかい!」
「いつもならね。でも…僕が知らないとでも思ってる?」
「な、なんのことや?」
「テスト。確かトウジ君の平均点は…」
「わぁぁぁ!!ちょい待ちぃ!なんでセンセが知ってんねや!?」
「ふん、僕に分からない事なんて何もないよ。大体いつも見せてもらおうって考えが甘いんだよ」
「な、なんや今日のセンセはごっつ厳しいなぁ」

からかって慌てるトウジもまたいじらしく感じた。
今のシンジにとってはそれで十分だった。
ただトウジの側にいる事がシンジの幸せでもあったから。

「あれ、二人ともどうしたの?」
ケンスケが買ってきたパンを片手にやって来た。
「な、何でもない!はよ屋上行くで!」

444:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/05 23:35:59
どちらも続きをwktk

445:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/06 01:36:57
wktkwktkwktkwktk

446:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/06 17:48:00
ここって何気に良スレだな

447:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/06 21:29:38
何をいまさら

448:ash
06/10/07 00:46:28
「あーはっはっはっ!」
清々しい青空にケンスケの笑い声が高らかに響き渡る。

「そりゃトウジの負けだね!」
「笑い事やないで~ホンマ。惣流の性格移ったんちゃうかと思たわ」
「な、なんて事言うんだよ!(あれは比較になんないって…)ケンスケからも何か言ってやってよ」
「う~ん、そこまで心配してあげてるならシンジが教育してあげれば?」
『きょ、教育ぅ!?』

その発言にはさすがに僕も驚いてしまった。
「そ、そんなに驚かないでよ。シンジがトウジに直接教えてあげればいいじゃないか」
「僕が…直接…」
「トウジだって文句はないだろ?」
「そりゃ…まぁな」
「はいっ、決まり!」

勢いで話は進み、結局僕がトウジの勉強を見ることになった。
時間は放課後。
僕の方に特に用事が無い時は、大体毎日勉強会を開いた。

449:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/07 02:32:17
乙。
何か進展がありそうですね

450:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/07 06:33:35
いいねほのぼの展開

451:ash
06/10/07 16:30:15
とある日の放課後。教室にて。
「あかんっ!もうダメや~」
「なんだ、もう疲れちゃったの?」
「こないな数字ばっか見よったら頭が痛なるわ」
シンジはすかさずトウジのノートを覗きこんだ。
「(薄々気付いてたけど間違いばっかりだな…)んっ?・・・トウジ、これ何?」
「見て分からんか?シンジの似顔絵や!どやっ、結構似てるやろ?」
「・・・」黙って俯くシンジ。
「あっ、あれ?」
「・・・」
「もしかして怒ってらっしゃる…?」
「ト~ウ~ジ~!!」
「スマン!スマンて!あっ、脇はあかんっ!あひ、ぎゃははははは!か、堪忍してや~」

その時教室のドアが開いた。
「…あんた達、何してんの?」
そこにはアスカと委員長がいた。

「何ってトウジの勉強見てたんだよ。アスカこそ帰ったんじゃなかったの?」
「アタシはヒカリの仕事を手伝ってあげてたのよ。ったく、そんな馬鹿に教えても時間の無駄じゃないの~?」
いきなりの毒舌っぷりはさすがだ。

「んなっ、馬鹿とはなんや!馬鹿とは!」
「ほら、そうやってす~ぐ頭に血が上る。だから猿みたいだっていうのよ」
「な、な、なんやて~!」
「なによっ!!」
「ほらほら、もうそこまでにしときなよ!」
シンジとヒカリは似た者同士だと思った事を、さすがに口にはできなかった。

452:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/07 22:44:32
乙!GJです!これからも頑張って下さい!

453:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/07 23:59:42
両想いな348氏
片思いなash氏

両方続き待ってる

454:ash
06/10/08 13:58:54
「碇君って鈴原と仲良いよね」
トウジとアスカが睨み合って最中に委員長がボソッと言った。
「えっ、そうかな?まぁ結構一緒にいるからかな?」
「なんか羨ましいな、そういうの」
「そういう委員長だってアスカと仲良いじゃないか」
「あっうん、そうね、そうよね、ははっ」

「ヒカリっ!そろそろ帰るわよ!シンジっ!あんた今日夕食当番なんだから早く帰りなさいよ!」
「あれっ?アスカまだ帰んないの?」
「女同士だと色々あんのよ。じゃね~」

そして嵐は去って僕達も帰ることにした。

「ホンマ性格悪いな、あの女。よくもまぁヌケヌケと言えるもんや!」
「まぁね。でも意外と気が合ってるように見えたけどなぁ…」
「どこがや!しかしお前も大変やな。家事ほとんどやらされてんのやろ?」
「まぁ。ていうか僕がやらないとほとんどやらないから、あの人達」
「かぁぁ!男って弱いもんやなぁ…。おっとワシこっちやさかい、ほなな!」
「うん、また明日」

夕陽に照らされたトウジの背中。
そういえばこの背中を見てからだっけ、トウジに惹かれ始めたのは。

しばらく忘れていた感情が久々に顔を覗かせた瞬間だった。

455:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/08 19:47:32

期待してるぞ

456:ash
06/10/08 21:43:46
「うーん、なんかいまいちね。あんた手抜いたんじゃない?」
「…文句言うくらいなら食べなきゃいいじゃん…」
「な~によ、文句があるならはっきり言いなさいよ!あっ、思い出した。あんた気付いてた?」
「何のこと?」
「ヒカリよ、ヒカリ!どうやら恋してるみたいなのよね~」
「恋?誰に?」
「ほんとに分かんないの?馬鹿によ!」
「馬鹿?もしかして…僕?」
「だ~れがあんたを好きになるってのよ!バカシンジ!」
「あイタっ!(馬鹿って言ってんじゃないかよ…)」
「鈴原によ!す・ず・は・らに!」
「…トウジに?」

シンジの中で一瞬時間が止まった。

「やっぱり気付いてなかったのね」
「い、委員長がそう言ったの?」
「言わなくたってわかるわよ。一日に一回は必ず話に出てくるもの。あれは相当入れ込んでるわね~」
「そ、そうなんだ…あっ、僕風呂に入らなきゃ…」

アスカの思いがけない発言にシンジは動揺していた。

委員長はトウジの事が好きらしい。どうって事ない話なはずなのに、やけに苦しく感じられた。

委員長ならトウジと普通に結ばれるかもしれない。でも、僕がいくら想ったとしてもそんなことはありえない。

シンジはそこに超えられない壁があると改めて思い知らされた。

457:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/08 23:16:27

なんかちょいリアルな話だな

458:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/09 02:02:47
乙。
これからの展開が楽しみだ

459:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/09 22:43:18
トウシンはトウジが馬鹿で初々しくて可愛いところが好きだ


460:ash
06/10/10 20:21:23
翌日僕は何もなかったかのように学校にいた。
普通に授業を受けて、普通の話をして、普通に振る舞っていた。
あの事を考えたらきっと深みにハマッてしまう。
昔みたいな自分に戻ってしまうのが何より怖かった。

このままで…。
このままの日常を何より大切にしたいと、心から思っていた。

それから数日後。
「碇君っ!」
委員長が僕を呼んだ。
「今日の放課後この教室ちょっと使いたいんだけど…」
「そうなんだ。いいよ。今日はやめとくから」
「ほんとごめんね~」
「ううん、気にしないで」

去っていく委員長を見つめていると、トウジが話しかけてきた。

「なんやなんや、デートの相談かぁ?」
「ば、馬鹿いうなよ!そんな訳ないじゃないか!」
「おっ、否定するんがまた怪しいなぁ…」
「もう勝手に言ってろよ。教室使えないんだって。今日はやめとこっか」
「何ぃ?ほんまかいな~。せっかくやる気になっとったのになぁ」
「またまたご冗談を…」
「なっ、ほんまやで!せやっ!今日はお前んちでやろか!」
「どうせミサトさんに会いたいだけだろ…。残念だけど今日は無理なんだ」
「ほなんか~。じゃうち来るか?」
「えっ、トウジの家で?」
「せや。何や

461:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/10 21:45:19
GJ!
でも最後の方なんか切れてない?

462:ash
06/10/10 22:04:35
「せや。なんや嫌か?」
「えっ?いや、そんな事ないよ」
「ほな決まりやな!」

シンジは不覚にもちょっと動揺してしまった。

すいません。ここまででした。

463:ash
06/10/11 00:43:59
思い返してみれば友達の家に行った事などほどんど記憶にない。
それ故か、心はまるで幼い子供みたいに興奮していた。それと同時に緊張もしていた。

「お、お邪魔します…」
「そない他人行儀な事言わんとくつろいでってや」
「う、うん…」

もっと汚れた部屋を想像していたが意外と片付けられていた。

「今日は誰もいないの?」
「ん?あぁこの時間はな。ほな始めよか」

それから僕達はいつものように勉強を始めた。
2時間程経っただろうか。

「ふい~終わった終わった!」
「へぇ、トウジもやればできるじゃないか」
「まぁこれがワシの実力や!ちぃ~とだけセンセのおかげでもあるけどな!」
「素直にありがとうって言えないのかな…」
「なんか言うたか~?このやろ!」
「イテテテっ!や、やめろよ!」

閉ざされた空間に二人きりだと戸惑うかと思ったが、すんなりと馴染めたのはきっと、今までの繋がりが間違いではないことの証明だと思った。

…プルルルルル…
…プルルルルル…

この電話が鳴るまでは

464:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/11 08:05:17

毎日読めて嬉しいよ

465:ash
06/10/11 08:58:48
こういうの初めてなもので拙い文章で長々となってしまいすみません…
読んでもらえて幸いです。

466:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/11 10:38:08
初めてなのかv文章うまいよ
がんがれ~

467:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/11 12:04:41
いいなあ…この二人
アニメと貞版の前半見るたび思う

468:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/11 12:22:07
最初敵→仲間ってなパターンが何気に好きだな

469:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/11 12:31:18
貞版のわざわざ屋上まで押し掛けてシンジに絡むトウジが好き
そして相手にされないトウジ…

470:ash
06/10/12 02:28:17
「」

471:ash
06/10/12 03:06:56
「トウジ、電話鳴ってるってば!」
「ほんまや、こんな時間にかけてくるなんて誰やろ…」

トウジはリビングで鳴ってる電話を取りに行った。僕はトウジの手の感触が離れず、その場を動けずにいた。
すると、ドア越しから微かに漏れた声が聞こえてきた。

「はい、そう…けど。えっ!?ホン…すか?はい、はい。ほんで…は?はい、わかりました。…行きます」

…所々が聞こえずに、内容がいまいち掴めずにいたらトウジが戻ってきた。

「…シンジ、ほんますまんねんけど今日はもう帰ってくれるか?」
「えっ?あっ、うん。そうだね、もう遅いし」
「勝手言うて悪いな。ちょっと用事ができてしもたんや。また明日学校でな!」
「うん、また明日」

そう言って僕はトウジの家を後にした。
いや、そうするしかなかった。

トウジのあんなに神妙な顔は始めて見る。
そして僅かながら、唇が震えていることにも気が付いた。

「どうしたの?」

その一言が言えなかった。
どうしても言ってはいけない気がしてならなかった。

472:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/12 15:58:35
GJ!

473:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/12 18:07:46
モツカレー

474:ash
06/10/13 00:01:51
翌日、学校にトウジの姿はなかった。
昨日の顔が頭に浮かんだが、なるべく考えない様にと努めていた。

昼休み。
いつも賑やかな屋上が今日は静かだ。

「こうやってケンスケと二人きりっていうのもなんか久々だね」
「そうだな~。このところ碇とトウジがラブラブすぎて俺が入りこむ隙なんてなかったからな」
「ちょ、何言ってんだよ!そんな事…」
「ジョークだよ!ジョーク!相変わらずだなぁ」
「わ、わかってるよ。ちょっと大袈裟に言ってみただけだよ」
シンジは頬を赤らめながら食事を進めた。

「そういえばトウジも大変だよな」
「何のこと?」
「えっ、碇聞いてないの?」
「だから何のことだよ!」
「今日トウジが休んだ訳だけど…」
「いや、何も聞いてない…」
「そっか」

嫌な予感がした。
その先を聞いてはいけないと思ったが、次には聞いてる自分がいた。

「何かあったの?」
「・・・トウジの妹。急に容態が悪くなったんだって」

475:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/13 01:41:57

いい感じな修羅場展開に

そして348氏の続きはまだかな…

476:348
06/10/15 02:58:20
翌朝。
シンジが目を覚ました時、突然目の前にトウジの寝顔があったことに驚いてしまった。
(…夢じゃ、なかったんだ……)
しっかりと握られていた手もそのままで、トウジの気持ちをいつまでも疑っていたシンジの不安を
力強く包み込まれている気がして、シンジは嬉しかった。
「トウジ……」
ドキドキしながらそっと顔を覗き込むと、トウジは幼い子供のように無邪気な寝息をたてていて、
自然に愛しさが込み上げてくる。
(好きって、こういうことなのかな……)
シンジは今まで誰かを好きになったことがなかった。
性的な意味で女性に興味を持つことはあっても、愛しいと思ったことはなかった。
父親や、周りの人々に必要とされない精神的孤独の生活の中で、愛されることを知らないまま
育ったシンジにとって、人を愛する心を知らないのは当然だったのかもしれない。
初めてのことで、たくさん戸惑ったけど、自分はトウジが好きなんだとシンジはだんだんと
自覚してきたのだった。
トウジが委員長を好きなんだと勘違いして胸が痛んだ理由も今ならわかる。
「好きだよ………」
小声で呟いて、トウジの頬にキスをした。
そんなことをする自分が信じられなくて、目の前にいるトウジの存在が確実に自分の心を
変えている事実にシンジは不思議な運命を感じた。
(あ…そういえば今、何時だっけ…)
ふと時計を見ると朝の6時をすぎた所だった。
ちょうど目覚ましが鳴る1時間前だったので、シンジは起きることにした。

477:348
06/10/15 02:59:20
どこからともなくいい匂いがしてきて目が覚める。
トウジは握っていたはずの手がはずされていることに気付いてがばっと起き上がった。
すぐに台所で料理中のシンジを見つけて安心するが、トウジもまた、昨夜のことが夢だったんじゃ
ないかと疑った。
確認する方法はひとつしかない。
「シンジ…」
「あ、トウジ起きた?朝ごはんもうちょっと待ってね」
新妻のようなシンジの台詞に瞬殺されたトウジは、昨日の妄想をまた思い出してしまった。
(後ろから抱きしめたい!!!)
本能のままにトウジはその行動をとっていた。
「あ…」
シンジは突然のことに驚き小さな声を上げた。
心臓が急速に加速して、トウジの腕に伝わっていく。
「シンジ…ゆうべのこと、夢ちゃうよな…?」
「うん……」
「そぉか……よかった」
更に強く抱きしめて、シンジの首筋に顔をうずめると、シンジは慌てて抵抗した。
「ト、トウジ!作業できないよ」
「すまんすまん」
本当はこのままあの妄想通りにしたかったけど、昨夜Hを拒絶されたことを大分気にしていて
トウジは踏み込めなかった。
シンジは意外とあっさりトウジが離れていったので少し寂しかった。

478:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/15 05:59:54
GGGGGJJJJJ!!!!!


479:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/15 13:20:19
乙です

480:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/15 17:25:30
GJです!
ash氏もまだかな~

481:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/16 02:20:44 tZJzQszu
期待age

482:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/16 02:26:31
あげないで

483:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/16 20:29:08
関西弁のエセ具合はともかく、関智の演技は素晴らしいと思う
パチキかましたる!とか

484:ash
06/10/16 22:45:50
それを聞いた時、一瞬意識が遠のく様な感覚に襲われた。

「碇?」
「あっ、ちょっとびっくりして…」
「まぁ命に関わるような事じゃないみたいだからそこまで心配しなくてもいいみたいだけどね」
「そっか…」

僕はただ呆然とする他なかった。こんな事態を引き起こしたのは僕自身だし、ずっとどこかで責任を感じていたのもわかっていた。

だけどそれより何よりこの心がモヤモヤする感じはなんだろう…。
怒りや悲しみに似た感情。
まるで何かに裏切られたような衝撃。

そして思い浮かべたのはあのトウジの顔。
ケンスケはトウジは僕の事を完全に許してると言ってたけど実際のところはどうなんだろうか。
僕に事情を話してくれなかったのはまだ許してくれてはないからではないのか。
心の底ではまだ…。

次々と溢れ出す後悔と不安が、僕をまた暗闇へとひきづり始めていた。


485:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/16 23:04:22
乙です!

486:ash
06/10/17 01:48:55
次の日、トウジは学校に来た。
そして何事も無かったかのように話しかけてきた。

「おーっす、センセ。おはよーさん!」
「う、うん。おはよ…」
「なんや素っ気ない返事やなぁ。もっと盛り上げていこうや!」

どうして…どうしてそんなに明るく振る舞っていられるんだ。本当は僕にまた殴りかかりたいくらいムカついているんじゃないのか?

一度生まれた猜疑心は日を重ねる毎に強さを増していき、この日以降僕はトウジを避けるようになっていった。

「シンジ、飯食い行こうや!」
「ごめん、ちょっとやっておきたい事があって…」

「シンジ、また勉強教えて欲しいとこあんねんけどな」
「ごめん、今日も本部に行かなくちゃいけないから…」

「なぁ、シン…」
「あっ!ケンスケこの前貸したやつだけどさ…」

トウジに関われば関わる程嫌いになっていくのが怖くてたまらなかった。

487:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/17 02:07:47
GJ!

488:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/17 10:12:22


489:ash
06/10/17 14:18:21
トウジとろくに話をしなくなって一週間が経った。

自分が馬鹿な事をしてるって分かってる。
どんなに餓鬼っぽいかも分かってる。
だけど今はこうするしかないんだと言い聞かせるしかなかった。
毎晩ベッドの上ではそんな事ばかり考えていた。

「シンジく~ん!夕食食べないの~?」
「・・・」
「最近元気ないわね、あの子。シンクロ率も落ちてきてるし…。アスカ何か知ってる?」
「多分、鈴原との事が原因ね」
「鈴原君との事?」
「あいつ、最近鈴原を避けてるみたいなのよ。端から見ててもわかるわ。何でかは知らないけどね」
「そうなの…。最近忙しくてちゃんと見てあげられなかったから…。でもまぁ大丈夫でしょ!」
「どうしてよ?」
「だって今まであんなに仲良かったでしょ?それが急にってことは何か理由があるのよ。
それにあの子、本当にどうでもいいことに対しては無関心じゃない?でも避けてるってことは意識しているからこそやってることなのよ。
だからきっと大丈夫!今のシンちゃんなら自分でなんとかできるでしょ」
「どうかしらね~。あのバカシンジのことだから自分で勝手にややこしくしてるんじゃないかしら…」

いまのシンジは幼い子供同然だった。
“拒絶”という壁を作って自らを守ることだけで精一杯だった。

490:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/17 15:20:42
おぉっ!乙!
悩めるシンジのその後気になるw

491:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/17 17:22:58
乙です
二つとも続きが気になる

492:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/18 01:21:17
乙です

493:ash
06/10/18 01:51:17
晴天、雲一つ無い空、帰り道。
終礼後は一番に教室を出るのがここ最近の癖だ。
誰もいない通りが空虚な僕の心みたいで少し救われてる気がした。
俯き加減に歩いていたら誰かの影が目に入ってきた。
顔を上げると、そこにはトウジがいた。

「何か…用?僕急いでるから…」
「待てや」
振り切ろうとした僕の腕を、トウジが掴んだ。
「なんだよ!」
「何でや!何でワシを避けんねんな!」
「そんなこと…そんなことどうだっていいだろ!!」
「お前がよくてもワシは納得できんのや!白黒はっきりさせんとムシャクシャすんねん!言いたいことあるんやったら面と向かって言ってみぃや!」
その言葉で僕は激昂した。

「…そういうのが…」
「あん?聞こえんわ!」
「そういうのが鬱陶しいんだよ!」
「なんやて?」
「もう友達ごっこは疲れたんだ。楽しくないのに笑ったり、嬉しくないのに喜んだり。そういうのもう、疲れたんだ」
一瞬間が空いてトウジが口を開いた。

「…ほんまに、ほんまにそないなこと思っとんたんか?」
「あ~そうだよ。その通りだよ!」
僕がそれを発したと同時にトウジの拳が僕の頬をぶった。僕は体がよろけて倒れこんだ。
「…殴れよ。それで気が済むならもっと…」
「もう…ええわ。お前がそないな奴とわ思わんかったわ。じゃあな」

そう言うとトウジは去っていった。
僕は不意に、大切なものを失った喪失感に襲われ、その後ろ姿を見つめることしかできないでいた。

494:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/18 05:00:40
シンジー!!

495:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/18 06:33:25
なぁに?

496:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/18 09:36:36
wktkwktk

497:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/18 15:03:57
うわうわうわうわ

498:ash
06/10/20 03:44:01
嘘。嘘。全部嘘だ。

ごっこだなんて思った事はこれまで一度だってない。むしろ親友とさえ思っていた筈だ。
なのにくだらない意地を張って、関係を断つ様な事を言ってしまった。

シンジは心底自らの不甲斐なさを恨んだ。翌日はどうしても学校へは行けなかった。
でも、その一方でトウジもまた考えていた。

「碇が本当にそんな事言ったの?」
「せや。まさかあいつがあんなん思うとったとはな。ほんま腹立つわぁ!」
「ふ~ん…」
「ふ~ん、てそれだけかいな!!お前は腹立たんのかい!!」
「なんか碇がそういう行動とる時って引っ掛かるんだよね…。碇がトウジを避けだしたのっていつからだっけ?」
「いつからってそんなん覚えてないわ。まぁ2、3週間前からやった気もするけど…」
「…トウジ一度学校休んだだろ?病院に行った時」
「あぁ。せやけどそれが何や?」
「確かそれ碇には言わなかったんだよね?」
「そうや。お前にしか言ってないで。学校休むて先生か委員長に言ってもらおう思うたしな」
「もしかして、その時のことかな…」
「何やねんな!」
「あいつ、お前の休んだ理由知った時、必要以上に驚いてた」
「そ、それがどないしたんや…。ていうかあいつに話したんか!?」
「まぁ…成り行きでちょっと」
「ちょっとやあらへんがな!」
「とにかく聞けよ!」

499:ash
06/10/20 04:25:23
更にケンスケは続けた。
「トウジが休む前の日、一緒にいたんだろ?」
「ワシの家で勉強教えてもろうとった」
「もしかして…だけど病院から連絡があったのはその最中?」
「その通りや。なんやはっきりせんなぁ。何が言いたいねん!」
「その時碇には何て言った?」
「何て…。用事ができたさかい帰ってくれるか?って言ったな」
「正直に言わなかったの?」
「んなもん言えるかい!」
「そうなったのが碇のせいだから?」
「そういう訳やあらへんけど…」
「やっぱりね…」
ケンスケは悟った。

「どういうことやねんな!」
「あいつきっと、トウジに責任を感じたんだよ」
「責任?どうしてそんなもん…」
「トウジが碇に理由を話さなかった事、トウジにしてみたらそれが優しさだったのかもしれないけど
碇はそれが逆に辛かったんだよ」
「何でや?」
「かぁぁ!分かんないかなぁ!トウジは同情されるのって嫌いだろ?そんな感じだよ」
「同情?別にそんなつもりじゃ…」
「ま~これらはあくまで推論だけどね。これからどうするかは自分で考えなよ」
「なんやワシが悪いみたいやんけ!」
「全くどっちも子供なんだから…」

この日は、さすがにトウジも夜はなかなか寝付けなかった。

500:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/20 13:54:31


501:ash
06/10/20 14:07:06
何時間くらい寝ていただろうか。その次の日も僕は学校を休んでいた。
今はどうにも誰の顔も見れる気がしなかった。

喉が渇いて水を飲もうと体を起こした時、机の上の携帯が光ってることに気が付いた。

「6時、学校近くの公園で」
ケンスケからだ。
今は5時半。迷った。だけどケンスケとなら何か話せるかと思った。

急いで着替えて僕は家を出た。夕陽に照らされた道をただ駆け抜けた。余計なことを考えるとこのまま足が止まってしまいそうで怖かった。

10分も前に到着した。辺りに人影はない。どうやらまだ来てないらしい。僕はベンチに腰をおろして切らせた息を落ち着かせた。
ケンスケはもうトウジに言ってしまった事を知ってるだろう。
僕はどう接していいか困惑していた。

また酷い事を言ってしまうかもしれない。傷つけてしまうかもしれない。でもやっぱり前みたいに付き合っていきたい。
正直に言えるかな…。
そんな事を考えていた時、後ろから声がした。

「来たか」

聞き覚えのある声。
振り返るとそこにはトウジが立っていた。

502:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/20 17:00:25
頑張れ、トウジ。男を見せろ

503:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/20 19:53:34
この二人にエロスは必要かな?

504:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/20 19:59:49
エロでもプラトニックでも職人の好きな展開にまかせる
でもトウシンってほのぼの多いな

505:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/21 07:03:37
age

506:ash
06/10/21 22:49:36
「トウジ?なんでここに…」
「メール、送ったのワイやから」
「だって…」
「ケンスケの携帯ちょっと拝借したんや。ワシが呼び出したかてお前は来ん思うてな」
「そう…」
急な事態に僕はただ驚くばかりだった。心は乱れる。

「で、用は何?やっぱり許せない?」
「・・・」
「そりゃそうだよね。あんなこと言ったんだ、当然だよ」
「・・・」
「言いたいことあるなら全部言ってよ。殴ったって構わないよ。それでトウジの気が済むなら僕は…」
「すまんかったな…」
「・・・えっ?」
一瞬聞き取ることができなかった。

「すまんかった」
トウジが改めて照れ臭そうに言った。
「ちょ、ちょっと待ってよ!なんで、そんな…」
「最初はな、メチャメチャ腹立った。顔も見とうなかったわ。
でもケンスケに言われてん。お前がワイを避けんのはワイにも問題があるんやないかってな」

「(・・・違う)」

「んな訳あるかい!って思うたけど…もしそうやったらワイ自身納得できへんからな」

「(・・・違うんだ!)」

「殴っといてまぁなんやけど…悪かったな。今日言いたかったんはそれだけや。ほなな」
トウジが背を向けて歩き出す。

黄昏に染まるトウジの背中。ずっと憧れていたもの。去り行く背を前に、僕はもう嘘をついてはいられなかった。

507:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/22 06:07:25 ndmUfB1j
おおおお!

508:ash
06/10/22 08:09:39
「待ってよ!トウジ!!」
自分でも驚くくらいの声で呼び止めた。足が止まり振り返るトウジ。

「な、なんや、そない大きな声出してからに…」
「違うんだ…」
「えっ?」
「違うんだよ!!」
トウジはきょとんとした顔で僕を見つめる。

「トウジは何一つだって悪くない。悪いのは全部僕なんだ…。勝手に怒って、勝手にイライラして、それで無視して、傷つけて…」
次々と言葉が溢れ出してきた。

「最低だ。謝らなきゃってどっかで思ってたけど、できなかった。また自分が変なこと言ってしまいそうで怖かったんだ。なのに…ずるいよ」
一滴。また一滴。
「トウジから謝ってくるなんて…ずる過ぎるよ!!」
「な、なんやねんな!ワシかて…」
そして、今までずっとせき止めていた気持ちが言葉と共に流れ始める。

「好きなんだよ!!」
「・・・はっ?」
「好きだったから!ずっと辛くて…」
「えっ、ちょ、ちょっと待ちいな!急に何言うて…」
「知り合ってしばらくしてからずっと思ってた。だけど、自分でも訳分かんなくなってきて…。トウジは男だし、僕だって…。
だけど!!こういうのって理屈じゃなくて…」
「シ、シンジ、お前…。ワシ…」
「ははっ、何言ってんだろ、僕。ごめん…ごめん!!」
「あっ、おいっ!!」

どうしてあの状況下で言ってしまったのだろうか。

僕はまた、逃げ出した。

509:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/22 09:09:15 ndmUfB1j
シンちゃんついに!言ったあああああ

510:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/22 09:14:53
きたあああああ!!
けどageないで

511:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/22 16:20:54
>>510すまんすまん

512:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/23 07:25:23
age

513:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/23 08:48:03
かわいい…

514:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/23 17:22:41
シンジから告るのって少ないよな。すげぇいい。

515:ash
06/10/24 14:42:10
こういう時、見慣れたこの部屋は僕に優しい。
暗闇に紛れていれば世界から切り離されたみたいで誰も邪魔をしないから。
でも今日ばかりはそうもいかない。

ずっと友達のままでいようと決めたのに。側でその笑顔を見ているだけで幸せだったはずなのに。

綺麗事を取り繕っても結局はその先を欲していた矛盾に気が付いた時、自身を咎めずにはいられなかった。

いくら手を伸ばしたところで届く事のない想いはいつしか衝動に姿を変えて、僕は僕を解き放つ。


「…はっ…はっ、くっ!あっ…。…ジ、ト…ジ、トウジ…!うっ、あぁっ!!」


後に訪れる想像以上の虚無感。本能に抗う術などなかった。
僕は頭の中でトウジと成される筈のない形を、今できる精一杯のイメージで繰り広げていた。
そして冷たくなった手に涙が次々と零れ落ちる。

その微かな温もりさえも僕を慰めてはくれなかった。

516:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/24 15:01:59
キター!
シンジやっちまったな。

517:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/24 21:09:05


518:ash
06/10/24 22:02:30
学校。今は一番聞きたくない言葉だ。しかし本分が学生である以上行かなくてはいけない。

トウジにどんな顔をして会ったらいいんだろう。会えばきっとギクシャクするよな…。

シンジは学校へ向かう途中、今更ながら後悔の念に苛まれていた。
そして扉の前に立つ。一息ついて意を決する。

─ガラッ─

辺りを見渡すがトウジの姿はない。ホッとした。すると誰かが後ろから肩を叩いた。

「よっ!!碇」
「うわっ!なんだケンスケか…。おはよ」
「なんだよ!その残念そうな顔は…」
「なんでもないよ!なんでも…」

結局昼休みになってもトウジが来る気配はなかった。

「トウジが休むなんて久々だな」
「うん、そうだね…」
「碇が相手にしてやんないから拗ねちゃったんじゃないのかぁ?」
「ち、違うと思うよ!一応仲直りした訳だし…」
「あれ?そうなの?」
「うん、まぁね」
半分ホントで半分嘘だ。

「な~んだ!一件落着か!」
「ははっ、嬉しそうだね」
「そりゃそうさ!二人とも扱い難いから板挟みの俺は大変も大変で…。何はともあれよかったな、うん!」

こいつとはずっとこのままでいたいな。
ふと友達の大切さを痛感した瞬間だった。

519:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/25 00:08:34
乙。続きが楽しみ

520:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/25 00:17:37
乙。
この先の展開が楽しみ
348氏の続きも楽しみ
まだかなwktk

521:ash
06/10/25 00:43:29
下校時、委員長に呼び止められた。

「碇くん!ちょっと待って!」
「委員長、どうしたの?」
「鈴原、休みだったでしょ?今日の分のプリントを渡しに行って欲しくて…」
「僕が!?い、委員長が直接行った方がいいんじゃないかな?」
「それが今日どうしても外せない用があって…。ごめんね、よろしく!」
「あっ!ちょっと…」
駆けてく姿を呆然と見つめることしかできなかった。

「あ~あ、ヒカリも馬鹿ねぇ。みすみすチャンス逃すなんて…」
「あっ、アスカ!丁度いい所に…」
「い・や・よ!!アタシも暇じゃないんだから。じゃ~ね~♪」
「そ、そんな…」

なんとか説得してケンスケに付いてきてもらう事になり、トウジの家へと向かう事になった。

この時ばかりは、あまりのタイミングの悪さに神をも恨んだ。…と思う。

「なぁ、碇」
「な、何?」
「お前緊張してんの?」
「な、な~に言ってんだよ、そんな事ないよ!」
「…ふ~ん」

緊張しない訳がない。
シンジは正気を保つのに必死だった。

ただ、断ろうと思えば断れたはずなのに、それを受け入れた自分はどこかでトウジに会いたいと思っていたのかもしれない。

522:ash
06/10/25 01:36:04
さすがにドアの前まで来ると一気に緊張はピークに達した。
今なら逃げる事もできる。だがトウジの顔を一目でもみたいという欲望の方が勝っていた。

─ピンポーン─
チャイムが響く。30秒経っても出てくる様子はない。ケンスケがもう一度押す。

─ピンポーン─
またも反応は無い。
「居ない…のかな?」
「みたいだね。プリントは新聞受けに挟んで…」

直後、鍵の開く音と共にドアが開いた。

「なんやねんな…」
不機嫌そうな顔で目を擦りながらトウジが出て来た。
「なんだ寝てたのかよ。ほら委員長に頼まれたプリント。持ってきたよ」
「あぁ…せやったんか。そりゃごくろうさんやったな…。ん?もう一人おるんか…」
「碇だよ」
「なんやシンジか…」
「あっ、うん…」
昨日の今日というのにトウジは嫌という程冷静だった。

「ちょっと…上がってくか?」
「あっ俺今日やりたい事あるから帰る。碇は寄ってけよ!」
「えぇ!!ちょっと待って…」
「んじゃ明日な!!」
颯爽と帰っていくケンスケ。

「どないすんねんな?」
「えっと、じゃあ、お邪魔します…」

状況はどう見ても最悪だった。

523:ash
06/10/25 01:42:52
なんか長々と書いてしまい申し訳ありません。
一応完走できたらと思ってますがよろしくお願いします。

524:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/25 01:47:47
乙です。頑張って下さい

525:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/25 01:49:26 4tgrrgI9
>>523
俺を犯してください

526:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/25 07:58:44
うひゃ~>>523頑張ってください

527:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/25 10:38:24
シンちゃん頑張って!

528:ash
06/10/26 03:56:01
「何も無いねんけど、茶でえぇか?」
「うん、ありがとう…」
二人の間に微妙な空気が流れる。トウジはどういうつもりなんだ…?
シンジは戸惑っていた。

「うっ、ゲホッ!ゲホッ…ゴホッ…」
「…?大丈夫?」
「あっ、ああ。平気や…」
改めてトウジの顔を見てみる。普段よりもだいぶ赤くなっている事に気付いた。
「もしかして…」
シンジはトウジの額にさっと手を当てた。明らかに平熱とは異なる温度が伝わってきた。

「ちょっと熱があるじゃないか!」
「大したことあらへんて…」
「この熱さで大丈夫な訳ないだろう!寝てなくっちゃ…」
僕はトウジをベッドまで連れていった。

「家の人、誰かいないの?」
「明日の朝まで誰も帰ってこんねん」
「そうなんだ…。何か食べた?」
「いや、何も食いとうないねん」
「ダメだよ、ちょっとだけでも食べなくちゃ!僕、作ってくるよ!」

夢中になっていた僕はいつの間にか、さっきまで不安がっていた事など忘れていた。

529:348
06/10/26 03:59:37
(…本当はもっと触れてほしいって思ってるのに、心の準備ができなくて嫌がったりするなんて、
勝手だよね…)
シンジは自分を責めた。自分で突破口を開かなければ、トウジは呆れて離れていってしまうかもしれない。
トウジはシンジとHがしたいという想いは勿論あったけれど、今はシンジが自分を好きだと言って
受け入れてくれたことがあまりにも嬉しくて、そのことは我慢することができた。
しかしシンジの方は何とかしなくちゃ、と気持ちが焦る一方で両思いを素直に喜ぶ余裕がなかった。
さっきのことで1人気まずくなっていたシンジは、緊張気味に朝食の用意を終わらせると
洗面所で顔を洗っていたトウジに声をかけようとして、ふと何かに気付いたように息を呑んだ。
上のジャージを脱いで、タンクトップ姿で顔を洗っていたトウジにドキドキしてしまった。
今までそんなにまじまじと見たことがなかったトウジの体型は、自分とは違って少し大人びていて
男らしい。昨日自分を抱きしめてくれていた腕はこんなにも逞しい腕だったんだ、と思うと
トウジの体に釘付けになってしまった。
トウジが顔を上げると、慌ててタオルを投げて渡した。
「あ、あの…これ使って」
「おう」
「ご飯できたから…」
「朝からシンジの手料理食えるなんて最高やな~」
「トウジは大袈裟なんだから…」
「大袈裟ちゃうて!ほんまに最高や、シンジのエプロン姿も拝めるし…」
「な、何言って…あ…」
トウジに抱き寄せられて、心臓が爆発しそうになる。

530:348
06/10/26 04:00:45
「トウ…ジ……」
「シンジ…ちゅーしてもええ?」
「………うん…」
初めてシンジが自分から目を閉じてキスを待っている姿を見て、トウジは興奮した。
興奮しないわけがなかった。荒くなる息を必死に抑えてシンジの唇に近づいたその時…
「ただいまぁ~」
「!!!」
突然帰ってきたミサトに驚いて、シンジはトウジの腕からすり抜けて玄関へ走り去った。
トウジは、いやシンジもかなり残念だったが何もなかったようにミサトを迎える。
「お帰りなさいミサトさん。今日は随分早いんですね」
「もうとにかく寝たくてね~…悪いけど夕方まで起こさないで」
徹夜明けのミサトはそれだけ言うとさっさと部屋に入っていった。
2人が呆然と立っていると、ミサトの部屋が突然開いて、
「あんたたち!ちゃんと学校行きなさいよ!」
と言ってまた閉められた。
2人は自然に笑い合うと、朝食を済ませて一緒に学校へ向かった。
(あーあ。結局ちゅーできんかったな~。けどシンジが笑ってるからまぁえっか…)
トウジはそんなことを考えながら、朝日の下で輝くシンジの笑顔を見つめていた。

531:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/26 04:11:13
うはっ!ダブルで来てた!
両氏とも乙!

532:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/26 08:55:20
両氏乙!GJ!

533:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/26 14:32:58
オイラもトウジたんに抱きしめられたい(;´Д`)ハァハァ

534:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/26 15:52:01
続き町

535:ash
06/10/27 12:16:14
「トウジ、できたよ!鍋焼きうどん!」
「な、鍋焼きうどん!?」
「これなら食べられるかと思って。熱いから別によそうね」
トウジが驚くのは目に見えていた。正直、自分でもやりすぎたかなと思っていたから。

「はい、どうぞ」
「なんや食べさせてくれんのかいな」
「えっ!?ちょ、何言ってんだよ!」
「冗談やって!ほないただくわ」
思わせぶりな態度はシンジを困らせた。

「おっ!こりゃうまい!さすがセンセやな!」
「ホントに?実はあんまり自信無かったんだ。よかったよ」
久々に“センセ”と呼ばれた時、以前の僕らに戻れた気がして嬉しかった。
だけど問題は依然解決してはいない。この先の一歩、引くか進むか。シンジは岐路に立たされていた。

洗いものを終えて部屋に戻ると再び静かな時間が流れる。

「なぁ、シンジ」
均衡を崩したのはトウジだった。
「うん、何?」
「いや、まだ帰らんでもええんかな思て。風邪移ってまうかもしれんし…」
「そうだね、ミサトさんが心配するといけないし。帰るよ」
鞄を手に取り立ち上がって振り返ろうとした時、トウジが僕の手を掴んだ。

536:ash
06/10/27 12:49:26
「シンジ!」
「トウジ…」
「明日、学校休みやろ?ワシ今日中に風邪治す。せやから明日、あの時間に、あの場所で、言わなあかんことあるさかい…」
「わかった。待ってるから」
「あぁ。あと鍋焼きうまかったで。サンキューな」

真剣な眼差しが胸に突き刺さった。
逃げてはいけない…。
自分に言い聞かせた。

土曜日。雨の音で目が覚めた。
緊張とか興奮とかはなく、至って普通な目覚めだった。
無心というか、開き直りに近い感じだったと思う。
今日で気持ちにサヨナラを。そんな覚悟だった。

5時。
どしゃ降りの公園に人影などなく、シンジはベンチに座って待っていた。
その間は否が応にも、トウジの事が思いだされた。

始めて会っていきなり殴られて、なんだかんだで仲良くなって。そしていつしか惹かれていった。
少なくとも僕が今まで生きてきた中で一番輝いていた。そんな日々だった。

想いをぶつけた時のトウジの困った顔は忘れもしない。
だけどそれも今日で終わる。

約束の時刻は迫っていた。

537:ash
06/10/27 13:23:32
「おっす」
「あっ、トウジ…」
「なんや辛気臭い顔してからに」
「ちょっと考えごとしてて…」
そのまま横に座った。

「雨、すごいな」
「そうだね。体はもう大丈夫なの?」
「当たり前や!あんなもん一晩寝たらコロッと治ったわ」
「ははっ、トウジらしいや」

そして訪れる沈黙。真上の屋根より響く雨音が時々それを助長させる。
話を切り出したのは僕の方だった。

「後悔は…してないよ。いや、ちょっとしてるかな?言わなければもっと気楽でいられたのに、とか。まぁ勢いとはいえ言っちゃったものは取り消せないんだけどね」
気付かない内に饒舌になっていた。

「シンジ…」
「あの時はなんていうか…ノリ?ノリみたいなものでさ…」
「シンジ!!」
急に怒鳴られ、我に返った。

「ワシの話、聞いてくれるか?」
「うん…」
そしてトウジは話し始めた。

538:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/27 13:30:39
ノリ…笑

539:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/27 13:31:43
大量投下乙!

540:ash
06/10/27 23:02:17
「あれ聞いた時、はっきり言うてビビったわ」
「・・・」
「いきなりやったからな。それに相手が誰であれあんな事言われたん初めてやったし…」
「うん…」
「メチャメチャ考えたわ。熱が出たのも多分そのせいや!」
「・・・」
「あのな…ワシ、やっぱり…」
「もういい…」
「最後まで聞けや」
「もういいって!!」
シンジは思わず立ち上がった。

「もう…いいから。わかったから。ありがとう」
傘を差すのも忘れて駆け出した。
あの時と同じように。
シンジにとって、事実を事実として向き合う事は恐怖以外の何物でもなかった。

だがその直後、何か大きな力に引き止められた。
背中から肩を通して、胸の前で組まれた手は僕を閉じ込めた。

「ちょ、何するんだよ!離せ!離せったら!」
「そうやってまた逃げるんか!?いつもみたいに!!」
「…うるさい…うるさい!!うるさ…」
最後の言葉を発したと同時にトウジの手が緩み、よろめくシンジの体勢を戻して二人は向かい合う。
そして間髪入れずにトウジが動いた。

その先の言葉を遮るように、自らの唇をシンジに重ねた。

541:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/27 23:28:32
トウジやっちまった

542:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/27 23:35:53
きたぁぁぁぁ

543:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/27 23:37:24
何で俺の唇には唇を重ねてくれないんだ、トウジたん

544:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/27 23:39:44
キスキタ━━!!!

545:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/27 23:39:49
おっつん

546:ash
06/10/28 01:45:56
「……んっ…うっ……」
体が強く締めつけられるのを、渾身の力で抜け出した。

「な、何するんだよ!!」
「これがワシの答えやねん!」
トウジが何を言っているのかわからなかった。

「これが…ワシの答えや」
「嘘だ…そんなの嘘に決まってる!!」
「嘘なんかやあらへん!!」
困惑するシンジをトウジが一喝する。

「言うたやろ、メチャメチャ考えたて」
「・・・」
「おとといなんかよりずーっと前から考えとったわ」
「…えっ?」
「…パーティーがあった日、お前が何したか忘れたとは言わせへんで」

ミサトさんの昇進祝いとアスカの引っ越し祝いを兼ねてパーティーをした。そして僕はその時確かにトウジの寝顔にキスをした。

でもトウジは起きていた…?
僕は愕然とした。

547:ash
06/10/28 02:52:34
「…そんな…」
「ほんまにビックリしたんはあの時やな」
「じゃあ…ずっと僕の気持ち、知ってたの?」
「まぁあんな事されたら…な」
思い出を辿るのが、急に恥ずかしく思えてならなかった。

「ワシ自身、忘れようとしたんや。何かの間違いや思うてな」
「…うん」
「ほんで何度か忘れることもできたんや。お前もそれ以来そんな素振り見せんかったし」
「…うん」
「でもお前がワシを避けてた時あるやろ?あん時からおかしくなってきたんや。いくら押さえつけてもお前のことばっか考えてしまう…」
この感じ…どこかで…

「ほんでおとといのあれや。もう、頭痛なってな。けどなんとなくわかったんや。これが“好き”っちゅうやつなんかなて」
「トウジ…」
「ワシかて理屈なんかわからん。ただお前の気持ちに応えたい思た。せやから今日呼んだんや」

わかった。僕がトウジを想っていたのと同時に、トウジも僕のことを考えてくれていたんだ。

きつく絡まった糸が解けていくように。
素直になれた瞬間、涙が止めどなく流れてきた。

548:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/28 02:55:36
乙!
そして、おめでとう

549:ash
06/10/28 03:33:40
雨が降り続く中、俯いて泣くシンジを今度は優しく抱き締めた。

「もう泣くやな~」
「…ごめん…ごめん…」
「ええから」
しばらくそのままで。
そして僕が落ち着き始めた時、トウジが言った。

「ワシ、お前の抱えとるもん全部は背負ってあげられへんかもしれん。けど少しなら持ってやれると思う。
なんや難しいことはよう言われへんけど…。倒れそうなったら支えてやる。逃げとうなったら受け止めてやるさかい、ワシの側に居てくれるか?」
「ほんとに…僕でいいの?」
「他に誰がおるっちゅうねん!当たり前や…!」

嗚咽がなかなか止まらない僕を、トウジはずっと抱き締めてくれていた。

「っっくしゅん!!」
「…トウジ?」
「うぅ、ちょっと寒なってきたわ…」
「えっ!ど、どうしよう…。そうだ!とりあえず学校に行こう!」

雨が弱くなるまで、僕達は学校に避難することにした。

550:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/28 11:56:16
シンちゃんかわいくて
トウジカッコよすw

551:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/28 16:30:39
佐賀県

552:ash
06/10/29 02:04:02
「ここも閉まってるや…」
門より中に入れたものの施設には鍵がかかっていた。
「体育館の裏の倉庫なら多分開いてるで」
その通りだった。とりあえず僕達はそこに腰を下ろした。

「大丈夫?寒くない?」
「あぁ、平気や。お前かてびしょ濡れやないか」
「このぐらい大丈夫だよ」
シンジは未だに夢の中にいるような気がしてならなかった。

「シンジ、どないしたんや?黙りこんでから」
「なんか信じられなくてさ」
「そか…。実はワシもや。ガラにもなく緊張しとる」
「トウジが?ははっ!似合わないよ!」
「な、なんや!ワシかてそんぐらいするわ!
…シンジ、手ぇ握ってもええか?」
「あっ、うん…」
そっと差し出した手に絡ませるようにトウジは手を握ってきた。

「トウジの手、あったかいね」
「そうか?お前のはまだ冷たいな」
トウジと始めて繋いだ手。
僕の手よりも少し大きく逞しく感じられた。
この時の沈黙は少しも嫌じゃなかった。

「あ、あのな!」
「何?」
「もういっぺん、キ、キス、してもええか…?」
少し考えた後、返事をせずにトウジの顔を見つめ返してシンジは静かに目を閉じた。

553:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/29 03:03:01
よし、トウジ押し倒せ

554:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/29 03:23:04
俺も許す。男を見せやがれ

555:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/29 09:06:12 d+encPCp
にやにやしちゃうw

556:ash
06/10/30 01:28:52
3度目のキス。
もう拒む理由も無く素直に受け入れることができた。

初めはお互いに仕方がわからず、固く結んだままの唇がただ触れ合っているだけだった。
しかし、徐々に舌が僕の唇をこじ開けようとしてきて、僕は知らない間に唇を緩めた。
そしてキスは深いものへと変わっていく。

時折目を開けて、トウジの顔を見てみる。
眉間にしわを寄せて夢中になっているトウジを見る度、急速に愛しく思える自分がいた。

左手は腰に、右手は僕の後頭部を支えていて、時々痛くなるくらいに僕を締めつけた。

舌と舌を絡ませるのも、最初は抵抗があったけど次第に慣れてきて、それがいつの間にか当たり前になっていた。

男同士のこんなこと、本当はいけないのかもしれない。
だけどこの“好き”という気持ちに、偽りなんて微塵も無い。

間違いなく僕はトウジを愛している。

迷いを全て吹っ切るように、僕もトウジを抱き締め返した。

557:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/30 02:14:45
乙。やっちまうのか。やっちまうのか

558:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/30 04:50:19
体育倉庫でふたりきり…エロスぅー

559:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/30 20:34:55
初めてが体育倉庫か…。エロいな

560:ash
06/10/31 00:50:03
トウジが急に焦ったように唇を離した。

「トウジ?」
「す、すまん…ワシ夢中になって…。あんなん嫌やなかったか?」
シンジはクスっと笑い、首を横に降った。
「そ、そうか。ほな良かったわ…」

外はまだ雨が止む気配はなかった。
「雨、まだ降ってるね」
「せやな。まぁこのままでもワシはえぇけどな!」
「もう何言ってんだよ…っくしゅん!」
「おいおい!大丈夫か?震えとるやないか!」
「ううん、これくらいなんとも…」
「あかんて!早う脱がな風邪ひくがな!」
「うん…」

ためらいがちに上を脱いだシンジの上半身があらわになった。
その雪のように白い肌を見た途端、トウジは思わず顔を背ける。

「あっ!いやっ、ワシはそんなつもりで言うたんやないんやで!」
「もう、わかってるから改まって言わないでよ。恥ずかしいじゃないか…」
「すまん…」
「へへっ、また謝った。…トウジだって病み上がりなんだから脱いだ方がいいよ」
「せ、せやな…」

561:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/31 02:43:20
ひゅー
待ってました乙

562:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/31 03:49:49
雪山では裸で暖めあうんですよ奥さん

563:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/31 06:28:23



564:ash
06/10/31 14:12:47
始めて見る訳じゃないのに、薄明かりの中で目に映るトウジの体はやけに大人びて見えた。

同じ14歳にしてはしっかりした骨格と、引き締まった体に所々で発達した筋肉は頼もしくもあり、羨ましくも思えた。

「ねぇ…」
「ん?」
「トウジは僕の…その…どこが好き?」
「なんや、またえらい急やなぁ」
「ごめん、なんか気になっちゃって…。僕なんかのどこがいいんだろうって…」
「そうやなぁ、強いて言えば頼りないところかな」
「…なんだよ、それ」
そう言うとまたトウジは僕を引き寄せた。
今度は体全体から熱が伝わってくる。
そして耳元で囁く。

「なんちゅうか守ってやりたくなってん。お前どっか危なっかしいしな。苦しんどる時とか側に居てやりたい、そう思たんや」
「トウジ…」
「まぁ、全部好きやで!ワシはシンジが好きや!」
「うん…僕もだよ」

今度はシンジからキスをした。
そして、きつくきつく体を結んだまま、二人はマットに倒れた。

565:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/31 15:50:37
きゃああああキタァ!!!

566:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/31 19:01:47
落ち着けw
よし、トウジ心置きなく襲え

567:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/31 19:58:45 QAxXigb7
キタコレw

568:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/11/01 02:32:17
ヒャッホゥ~ぃ!

569:ash
06/11/01 16:44:54
トウジはそれから体を起こすと、ちょうど肩の横に手をつき真上からシンジを見つめた。その憂いを湛えた瞳に胸が熱くなった。
シンジも決してその目を逸らさなかった。

「シンジ…ワシ今、お前が好きで好きでたまらん」
「・・・」
「そやから、ようわからへんのやけど…もっとお前に近付きたい」
「…うん」
「でもな、お前が嫌言うならワシもこれ以上は…」

そしてシンジははっきりと言い切った。

「嫌なんかじゃないよ。僕だってもっと…トウジを知りたい、触れ合ってたい。だから…だから全部、トウジに預けるよ」
「…シンジ!!」

トウジは意を決したかの様にシンジの首筋に口を当てた。まるで女性を思わせる素肌の滑らかさが、トウジを一層奮い立たせた。

「あっ!…くっ…」
思わず声が漏れてしまう。そんな自分に驚いた。

そして、徐々に二人は加速していった。

570:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/11/01 17:56:50
GGGGGGGGGGGGGGGGGGGJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJJ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

571:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/11/01 23:16:03
乙。
348氏の作品に次いで、両思いになれて良かったな

572:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/11/02 07:21:58
期待age

573:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/11/02 12:12:15
ageなくていいから

574:ash
06/11/02 22:16:09
少しずつその顔をシンジの体に押し当てながら下へ向かっていく。
やがてトウジの口は、まだ淡く薄桃色の乳首を捕えた。

「あぁぁぁっ!あっ!うんっ…あぁ…!!」
今まで味わった事の無い快感と、生まれて始めての経験が、シンジの中に刻まれていく。

トウジもまたシンジの喘ぐ声に感化され、止まらなくなっていった。
右の乳首を口で覆い、唾液で濡れた突起を舌で転がす。
左はトウジ自身の手で優しく摘む。

「はぁぁああっ…はぁっ、はぁっ、くっ…ぅあっ!!トウジ…、トウジ…!」
最早、言葉に出さずにはいられない。

心だけじゃない、体同士の繋がり。
本当はずっと、そのどちらをも求めていたのかもしれない。
こんな事、馬鹿げていると思っていたけど愛し合う二人にしてみれば当然の行為なんだ。
本能でそう感じた。

更にトウジはその手を下に伸ばす…

575:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/11/02 22:24:00
おっつん

576:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/11/03 00:34:28
喘ぎ声が雄々しくていいですな

577:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/11/03 00:41:42
俺もイキそう…

578:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/11/05 21:52:43
職人二人の続きはまだかな

579:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/11/06 18:07:26
age

580:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/11/07 02:07:02
つ…続き…

581:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/11/07 09:51:25
トウシンていいな
ホモは嫌いだけどこれだけはいける

582:ash
06/11/08 01:11:02
シンジのいきり立つそれを、トウジの人指し指が触れた。

「あっ…!!」

体全体に電気が走った様にビクンと動き、思わず体を起こした。

「す、スマン…。つい…」
「ううん、違うんだ!ただ…そこだけはまだちょっと…」
「スマン…いきなり過ぎやったな…」
「謝ら…ないで…」

くちづけでトウジを塞ぐ。
そして今度は、さっきとは逆の体勢をとった。

「シンジ…お前…」
「僕は…守られるだけじゃ嫌だから」

再び唇を重ね合う二人。
シンジの前髪が睫毛に当たる度、こみ上げてくる想いがあった。
そしてシンジも行動に移す。

左手を乳首、右手は首の裏へ。
舌で胸板をなぞる。

「ぐぁぁぁ!…あっ、あぁ!!」

少し筋肉質なトウジの肌は敏感に、シンジの不器用な愛撫を感じ取った。
シンジもまた、トウジの野性的で猛々しい叫びに、いとおしさを隠さずにはいられないでいた。

583:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/11/08 08:07:18


584:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/11/08 22:12:03
ヤッヂマイナー

585:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/11/08 22:57:20
イークーヨー!
キナー!

586:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/11/11 01:50:34
続きまだかな。二つとも続きが気になる

587:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/11/12 00:58:28


─ねぇ、トウジ。君が目の前から居なくなって暫く経つけど、相変わらず蝉達は去ってく夏を惜しむみたいに泣き続けてるよ。

初めて君に殴られた時の頬の痛みも。
一緒に昼食を食べた屋上も。
ふざけて笑い合った学校の帰り道も。

互いを隅々まで求め、幾度も愛し合ったあの夜さえも。
まるで昨日の事みたいに思い出すんだ。

だけど君はもう居ない。
この手で触れる事さえ叶わない。

君は今何を考えてるの?誰を想ってるの?
恨んでる?憎んでる?それとも僕を許してくれる?

ねぇ、トウジ。君が僕の全てだったんだ…─

588:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/11/12 01:05:03
新作!?

589:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/11/12 01:26:16
とりあえずGJ。続くようならコテかアンカをお願いしたい

590:587
06/11/12 03:15:16
>>587

僕がこの中学に来たのは、桜の花が散って木々が緑に染まるその頃だった。

長年音信不通だった父にいきなり呼び出されたと思いきや、フィクションの様な機械に乗って街を破壊する謎の生物を倒せという。
そして入院したと思ったら今度は僕を迎えに来た女・葛城ミサトが同居人になるという。しかも一回り以上歳が離れている。

これからの人生において起こるであろう問題が、全てこの短期間に起こった様な気がして僕は混乱していた。

だが、この学校にて出会う一人の人間がその後自分の中でこんなにも大きな存在になるとは当時は知る由もなかった。

名を、鈴原トウジといった。

591:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/11/12 22:06:03
乙!バルディエル戦後のトウシン読んでみたかったので期待してる。
しかし職人三人か…。いいスレだ。

592:587
06/11/13 01:16:45
>>590

周囲が僕を珍しそうに見つめる中、一際鋭い視線を向けていた。
そして中庭に呼び出された後、いきなりあいつは殴ってきた。

僕が乗ったあのロボットが妹を傷つけたという。知るもんか。こっちだってそんな余裕は無かったんだ。しかも妙な関西弁だし。

印象はお互いに最悪だった。

当時の僕は極度に他人との関わりを避けていた気がする。傷つき傷つけ合う関係にうんざりしていたから。

だがそういった場面において、トウジの拳は最も効果的だったのかもしれない。
懸命に張っていた心の壁の内側に、見境なく飛び込んできたのはトウジが初めてだった。

あの時の頬の痛み、そんなに嫌じゃなかったんだ。


593:587
06/11/13 02:34:12
>>592

梅雨が過ぎて夏の気配が漂い始める頃になると、僕達は一緒に居ない日は無いくらいの友達になっていた。

街に馴染めず逃げ出そうとした事も、パイロットを辞めて元の生活に戻ろうとした事もあった。
そんな僕を引き止めてくれたミサトさんや、トウジにケンスケ。
ほんの少し自分の居場所を見つけられた気がした。

「…シンジ」
「………」
「シンジッ!」
「…えっ?」
「なにボケっとしてるのさ?」
「ううん、何でもないよ」
「っとこの隙にエビフライもらったぁ!!」
「あっ!ちょっとトウジ!」
「あ~ん…。くぅ!やっぱセンセの弁当はうまいなぁ!」
「…このぉ!」
「あたたたた…すまん!すまんって!」

この場所を守る為ならエヴァにだって何にだって乗ってやる。戦ってやる。
僕はそう静かに誓った。



594:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/11/13 10:00:39
新人さん?
wktk

595:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/11/13 18:31:13
なんか切ないけどいいね
がんばれ

596:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/11/13 21:17:56
乙!
他の職人の続きも待ってる

597:587
06/11/14 00:56:56
>>593

「ねぇシンちゃん。もうさすがに学校には慣れたでしょ?」
「えぇ、まぁ」
「どう?好きな子とかできた!?」
「な、何言ってるんですか!そんなのいませんよ!学校行ってきます!」
「あらあら顔赤くしちゃって…。ふふっ」

恋。そんなものした事なかった。今まで自分を守る事で一生懸命だったから他人にはずっと無関心だった。
恋をするとどんな気持ちになるんだろう…。想像もできなかった。

「よっ!シンジ!おはよーさん!」
「あっ、トウジ。おはよう」
「なんや暗いなぁ。悩みごとか?」
「ちょっとね…。トウジってさ、好きな子とかいるの?」
「はぁぁ!?いきなりなんやねん!」
「あっいや、気にしないで。ははっ…」
「おかしなやっちゃなぁ」


初恋が最高の思い出へ。
そして残酷な記憶への道を辿るのは、もう少し後の事だった。





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