06/05/06 00:42:38
>>125>>127 >>392>>394>>399>>401>>402
心臓の音ばかりが耳に響くような気がして、自分がどんな声を出したのか、
どんな表情を作っていたのかさっぱりわからない。
シンジは目を見開いて驚いたような表情で凍りついたままだ。
沈黙が、ミサトの心にわずかな冷静さを取り戻させる。
訳のわからない熱に浮かされて、慣れない雰囲気を壊そうとして、
本当に下手な冗談を言ってしまったのではないかと気づく。
触れてはいけない傷口に触れてしまったのではないだろうか。
高揚感と不安感の均衡が急速に崩れていく。心が急速に冷めていく。
顎を乗せていた手をおろすと、シンジの顔もそのまま俯いてしまう。
だいたい、大丈夫なわけが無いのだ。
心を傷つけられて、裏切られて、沢山の死に直面して、最後には一人性別が変わっていたのだ。
サードインパクトを乗り越えるために、シンジだけが失うものが多すぎたのだ。
表情が見えないと沈黙が余計に怖い。
せめてレイが自爆した夜のように、はっきり拒絶してくれれば良いのにとまで思ってしまう。
近づきすぎて、かえって人を傷つけてしまう。自分はいつもこの繰り返しだ。
「……シンジ君、ごめんね」
小さく謝ると、ミサトは居た堪れなくなって、シンジの腰にまわしていた腕をほどいて、
その場を後にしようとした。