葛城ミサトの日記 2冊目at EVA
葛城ミサトの日記 2冊目 - 暇つぶし2ch500:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/11/10 09:15:38
オツ

501:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/11/14 00:10:31
保守

502:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/11/15 11:53:55
23話の日記って無いの?

503:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/11/16 20:36:19
まち

504:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/11/18 10:37:32
待機

505:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/11/19 13:11:32
「この日、他に記すべき事無し」

506:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/11/21 07:54:55
保全

507:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/11/21 22:40:05
roseの作者さん

あなたの他作品も読みたいです。
未完や一次創作、ブログなどでも構わないんで
分野問わず教えてもらえませんか?

508:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/11/24 14:50:27
まだ?

509:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/11/27 08:24:45
保全

510:La vie en rose 
06/11/27 21:12:09
王様の耳 月 ロバの耳 日 (…どうしようもないこと) その一

       ―― ああ、思いっきり泣き叫べたら ――

………疲れた。
死にそうなくらい、疲れた。
それでもこうして日記を書いているのは、惰性ではない。
今自分が求めるものは間違いなく「ベット」だと思うけれど、書くこともやめられない。
その理由は唯一つ。
この心の中に渦巻くモノを少しでいいから吐き出したくて。
溜め込んだ不平不満、文句、泣き言を。………「穴を掘って」捨てたい。手放したい。


そもそも事の初めは「使徒」だった。
当たり前だが、【招かれざる客】 №1なアレ。

都市郊外での武装には大きな制限が課せられている我がネルフは。
使徒発見場所によって、政府関係機関に「識別確認」後、改めて「迎撃要請」を受けなければならない場合がある。
時間のロスが命取りになる事だって考えられるのに、お偉いさんと言うのは融通の利かないGさんばかりだ。
対使徒戦名目で、国連から独立武力行使特権をもぎ取ったと鼻持ちならないくらい自慢していたくせに。
現実にはろくに威力偵察もできないままネルフに丸投げで、挙句「エヴァ出せ、エヴァ出せ」と煩く急き立てるだけ。
少しくらい役に立って見せればいいのに。ハリボテじゃないんだから、何のための軍よ?と言いたくて(言えない、立場上)
死線に立つのは………と、考えて。「同じ穴の狢か」と自身を嘲笑って。
昔の仲間から来た「お悔やみ」まがいのメールまで思い出してしまえば、さらに気分は塞ぐ。
(…「子守ご苦労様」なんて。
 戦歴なしの素人軍人連中(チェリー)にでも突っ込まれたと思ってるんだろうけど。
 私が面倒見てるのは正真正銘本物の14歳チェリーなのよね)

それで(その要請に従い)初号機を出したら出したで、リフトオフ以前に大穴開けられちゃって。あれは、…。
………初号機パイロットに悪いことをしてしまった。


511:La vie en rose 
06/11/27 21:13:10
王様の耳 月 ロバの耳 日 (…どうしようもないこと) その二

初号機に搭乗するパイロット、碇シンジのシンクロ率はまだ斑が多い。
「起動数値」を割るほどにはならないようだけれど、そう高い位置を安定的に確保できるほどでもない。
だから、その数値を自ら安定させる方法を掴めていない彼のために、科学部がいろいろと調整を行っている。
「シンクロ値そのもの」には手を出せないが、それを不安定にさせる(と推測される)幾つかの要因について…。

そう、例えば、【痛覚】などを。

初心者も同然の彼に配慮し、特に「痛み」に関するフィードバックは極力抑えられている。
(そうでなきゃ普通の中学生が、お腹になんか刺さった状態で(意識的に)動けるはずもない)

それでも、一度殴られた人間は、殴られた痛みを【覚える】ものだ。
経験・認識は予測へと繋がり、―【どうされれば、痛いのか】を、気付かせる。
【痛さ】を想像すれば恐怖は増し、それがさらに実感としての【痛み】を増幅させることにもなる。

彼は、怖かっただろう。……攻撃を受けて。

エヴァの装甲版に大穴が開いても、シンジ君の肌には傷一つない。

それでも、怖かっただろう。あんなに、………泣き叫んでいた。

…………………。

結果として、彼に怪我はない。
その後の使徒戦で大破した零号機に乗っていた綾波レイにも。

リツコは言っていた。

「(シンクロシステムに関して)エヴァのパイロットが傷つくことがあるとすれば、
 …それは、エヴァそのものが失われる時」

512:La vie en rose 
06/11/27 21:15:33
王様の耳 月 ロバの耳 日 (…どうしようもないこと) その三

そう、機体がどれほど傷つこうと(理論的には)彼らは傷つかない。
エヴァの手足が失われようと、それらはパイロットに反映しない。………エヴァが、彼らを受け入れている限りは。
でもだからと言って、【傷つかない】わけでもないだろう。【心の傷】は、見えないだけ。
けれど、その苦痛をかわいそうに思っても、戦うことをやめさせることもできない。
エヴァが敗れれば、一蓮托生。どうしようと皆死ぬのだから。
言葉を濁しても隠しても無駄なことだ。目を瞑ったって結果は変わらない。
【使徒】は存在し、【サードインパクト】の危険は【ここ】にある。負ければ【死ぬ】。

――今回は勝った。人類は生き残った。――

エヴァは二機大破。
借り物のポジトロンライフルも大破。
隔壁には大穴。
電力系統の損傷は甚大、きわめて困難なトラブル発生との報告も有り。
本部内外を問わず本件に関する死傷者数は現在調査中とのこと。
復旧までの日程の算出及び被害額の概算は資料を確保し次第早急に会議。
都市部の被害は………………………………。

満身創痍。でもそれでも、生きてる。彼も、私も、リツコも、レイも。

たぶんこれはどうしようもないこと。
生命(いのち)あるものは、生き続けるしかない。他に選ぶ道なんて知らない。
無事であることを感謝して、失われたものに哀悼を示して…。
でも、生きてるのって辛いと思ってしまうのも少し本音。………誰にも言えないけれど。
消えない傷の痛みやとりかえしのつかない悔恨をいっぱい抱え込んで、その重みに喘いでる。
けれどそれを【外】に出して【流して】しまうことは私にはできないんだろうな。涙も、訴えも。

だから、思うだけ。願うだけ。――ああ、思いっきり泣き叫べたら、と。


513:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/11/27 21:22:31
>>507
一次創作、ブログ、HP、なし
葛城ミサトの日記1・2で連載を三本
そのうち二本は完結済み、今書いてるこれが三本目
他スレで稀に短編投下、一番最近のだとたぶん【333 ---初恋の人--- 】



514:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/11/30 14:56:22


515:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/01 19:39:37
GJ

516:La vie en rose 
06/12/01 21:22:12
 青少年 月 相談 日 ( ― キズナのかたち ― ) その一

積み重なった始末書にも、ようやく終わりの目処がついた。(←まだ終わった訳ではないけど)
もはや肩こりは通り越して石化じゃないかってカンジで、目はいくら目薬をさしてもチクチク痛い。
体力も気力もレッドゲージ、点滅中。
だから「終わる」というゴールが目の前にあるだけで、踊りだしそうなほど嬉しい。

そんな訳でしばらくぶりに早めに帰宅でき、気分の良かった今日の私。
夕食時に、そのヨクガンバッタ自分へのご褒美として「えびちゅ」を一本サービス、…するつもりだった。
いつもは食事に一本がお約束。もちろんそれを忘れたわけではないけど。
でも、リツコが「今夜は外食するから」と言っていたし。
ならば黙っていればばれないかと思ったのに、……しっかりシンジ君のチェックが入ってしまった。

――いいじゃないのぉ、今日くらい。
お疲れ様の乾杯したい…、と、猫なで声でねだってみたけど「ダメ」だと彼は言う。
「今度、リツコさんも一緒にやりましょう」なんて宥める言葉つきで。(ホント、二人とも仲良くなっちゃって)
シンジ君だけなら許してくれるかと思ったのに、甘かったらしい。
言い含められてでもいたのか、何だかリツコによく似た口調でお説教まがいのことまで言い出すし。
それが微妙に解説っぽい口調で、彼には全然似合わず、ちょっち笑えた。
あんな強気な物言いができるようになったのは、私たちに慣れたってことなんだろうなとも思う。
またそう考えれば、今夜は気も緩んでるから他愛ないことにも笑いがこぼれていい感じにもなって…。
つられたように向かい合わせに座るシンジ君も笑顔になれば、【団欒】って言葉も浮かんで。

ペンペンはかわいいけど、あの子は(鳥だから)笑わない。
リツコの「裏のない」笑顔は稀。(含みのある「微笑」は別)
追従や愛想笑いでも、やけになった空元気でもなく、……ただ他意なく【笑い合える】ということ。

【失わずに良かった】と思える瞬間(戦う理由)は、こんなにもありふれた日常の中に在るってことを思い出せた。

517:La vie en rose 
06/12/01 21:23:15
 青少年 月 相談 日 ( ― キズナのかたち ― ) その二

楽しかったのは食事と会話がセットになっていたから。

他にも色々とシンジ君には迷惑をかけているから、それについての話もした。
もちろん(家での会話なのだから)【パイロット】の彼にではなく、【家族】としての彼に。
最近は毎日帰りが遅い。(……場合によっては私もリツコも帰れない夜がある)
警備の人間は常駐しているし、マギのサポートが入ってるからそちらの面での危険を心配しているわけではない。
しかし、「学校」と「ネルフ」以外にも、【子供】である彼には【関係】が必要だと思っているから。
…友人や公の場での関り以外にも、【自分に関心を寄せる人間がいる】ということは重要なこと。

子供の頃って、そういうのが大切だったはず。私は、そうだった。

――今日何したの?
     あぁ、そんなことがあったんだ。

馬鹿みたいだけど、そんな意味もない会話を羨んだ。
たぶん、いつも尋ねられていたら、うるさくわずらわしく感るだろう言葉たち。
しかし、手にした事がなければそれはいつか【望み】に変わる。
自分を気にかけてくれる人の存在。……当時はそれを欲しがっていたことさえ認められないほど、私も幼なかったけれど。

【家】に【誰かがいる】生活を彼に。………代替行為なのかもしれない。

それでも、これはシンジ君と暮らし始め【思い出した】ことだ。
傍から見れば「偽善」と呼ばれる行為なのかもしれなくても、私が彼について真剣に考えた答えだ。
この記憶を引っ張り出したきっかけは、彼に何をしてあげたらいいだろうと慮ったところから。
そういう気持ちまで【汚いもの】だとは思いたくはない。

………? 何を言い訳を並べているんだろう?
書きたいのはそこじゃなくて、シンジ君の話についてだったのに。


518:La vie en rose 
06/12/01 21:24:18
 青少年 月 相談 日 ( ― キズナのかたち ― ) その三

忘れずに書き留めておこうと思ったのは、今日聞いた、【彼とレイ】の話。


「…綾波に、叩かれたんです」

粗方食べ終えたお皿を前に、困ったような、迷ったような、かなり複雑な表情を浮かべてシンジ君はそう言った。
でもその声にどこか拗ねた子供のような響きがあって。
真面目な相談なんだろうけど、私は不謹慎にも少し笑ってしまった。
それで彼はさらに憮然とした顔を重ねて見せた。

そんな拗ねる彼を突ついて詳しく状況を聞きだせば、彼女とシンジ君の父親…、碇司令について話していた時のことだと言う。
「叩かれるなんて思わなかった。……あの事は、怒らなかったのに」と、
少し顔を赤らめてぶつぶつ言っているところを見ると、私には話してないことが他にもまだ何かありそうだった。
とりあえずそこは突っ込まずにフムフムと聴いてあげていると、彼の抱いていた「レイの印象」を語ってくれた。
そういえば前に、彼はリツコにレイについて「不器用な子」だと言う前情報を与えられていたはず。

シンジ君の話はフラフラとあちこち脱線し(学校生活の一面なども覗かせてかわいいなァと思ったが)、あまり要領を得なかった。
それを端的に総括すると、彼の言い方を借りれば「不器用=おとなしい(内向的)子だと思っていたのに」と言う感じだろうか。

確かに彼女はコミュニケーションに問題ありのちょっち不思議ちゃんだと私も思う。
それに初対面のときの包帯グルグルはインパクトもあっただろう。
病弱で無口な(おとなしい)イメージが出来上がっていても仕方ないことかもしれない。

シンジ君の意見もわからないでもない。…【かわいい女の子に夢を見たい】ってやつよね?

でもねぇ?……全部同意してあげられないっていうのが残念なことに私の意見だった。


519:La vie en rose 
06/12/01 21:25:29
 青少年 月 相談 日 ( ― キズナのかたち ― ) その四

「綾波レイ」という少女の半生はネルフとともにあると言ってもおかしくはない。

そして、彼女は戦闘兵器の試験パイロットだ。それも先達のない未知の分野の。
(私の経験で語るには違いが大きすぎるかもしれないが)それは生半端な気持ちじゃ到底できないことだろう。

実際、私は「レイ」については詳しく知らない。けれど、ドイツのセカンドパイロットを知っている。
彼女の覚悟と努力を間近で見てきた。
レイの(彼と初対面のときの)あの怪我だって、それと同じ過程でついたものなのだ。
「危なくない」などとは間違っても言えないことだとわかるだろう。
度重なる試験や実験に耐える根性と、結果の見えない道のりでも目標を見失わない強さ。
本当の意味での芯の強さがなければ、いくら科学者達と二人三脚でも、長年勤めあげるなんてことはできない仕事だ。

何年にも渡ってテンションを維持し続けることがどれ程に難しいことなのか。
ある意味、(スポーツを好むわけでもない)普通の暮らしをしてきたシンジ君には、わかりにくいことかもしれない。

しかし、数少ないパイロット同士。付き合いが今日明日で終わる関係ではないから。

少しづつ知っていければいい。………人は見かけだけではわからないことも。

そんなこと諸々と「青春だねぇ」という思いもあわせて、アドバイスを考えた。相談相手に選ばれたことは素直に嬉しかったし。
でも自分の意見を何もかも言うのは正解じゃない気がして、少しひねったところをプレゼント。

――しょうがないって、兎だってホントは凶暴な生き物だもの。
    臆病で柔らかそうに見えたって、己を脅かす相手には暴力的にもなるのよ。
    ねぇ……シンちゃんもその時、何か酷いこと言っちゃったんじゃない?
    あの子が反撃したのなら、それが彼女にとってとても大切なことだったってことでしょ。

520:La vie en rose 
06/12/01 21:28:12
 青少年 月 相談 日 ( ― キズナのかたち ― ) その五

これだけの言葉から、シンジ君が【彼とレイの人生の違い】を考えるのは難しいかもしれない。
でも、彼の印象の向こうにはちゃんと【レイ】が居ること。そしてそのレイには【レイ自身の内面】があるということ。
それに気付いてくれればいいな、とは思った。

暗くするつもりはなかったから私の口調は揶揄うような軽いものだった。
にも拘らず、シンジ君はどこか神妙に受けてくれた。
多少の自覚はあったらしい。彼と話ができてもう一度よかったと思った。


………それに、シンジ君が女の子に手を上げられて逆上するようなタイプじゃなかった事にもこっそり胸を撫で下ろしている。
できればお互いに悪い印象は少ないほうがいいし。
パイロット同士が喧嘩で暴力沙汰を起こし、果ては険悪な関係にでもなられたらこちらも困る。
その後の作戦も、二人の協力があってこその成功だった。
共同作業を通じて、彼らの仲はさらに縮まったと見てもいいだろうと思う。
使徒の攻撃の盾になった彼女の姿に心動かされたらしいことは、彼の言葉の端々に見え隠れしている。

ただ、明確な好意をパイロット同士が抱くことについては、今後、検討が必要かもしれない。

仲良くして欲しい気持ちは本心。心と心の絆を大切にしてあげたいのも真実。

――でも、ごめんねシンジ君。

私は彼の【家族】だけではいられない。 
優しいお姉さんだけではいられない。 

どうあれば【使徒】に勝てるのか。――心の片隅で、私は、常にそう考えてしまう。

私は、            ネルフの、【作戦指揮官】だから。


521:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/04 18:11:13


522:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/04 23:32:55
オッテュ

523:La vie en rose 
06/12/05 22:07:21
 JA 月 暴走 日 ( 駆け引きの結末は… ) その一

肩書き背負っての公式の席と言うのは堅苦しいばかりでつまらないものと相場が決まっている、が。
今回ばかりはなかなかエキサイティングだった。(シンジ君まで巻き込んだ事については反省がないでもない)
今現在(日記執筆中)、体力的疲労六割、精神的疲労三割ってところ。

でも事後の後始末に時間がかかった為、夕食は伊吹ちゃんお勧めのケータリングで揃えて帰宅した。
その遅い夕食では、明日もリツコ共々揃って早出のため、えびちゅ(アルコール)を止められる。
私は簡単に頷いた。

――あのJAの中で。
    「最後の最後」で何があったのか、「あれ」を、……リツコは知ってたの? 

本部への帰送中もその後も、ひどく静かだったリツコ。その彼女の傍らで、私の頭の中から離れなかった疑問。
しかしストレートに尋ねても、彼女は答えてくれないだろうと思った。
でも酔ってしまったら安易に口が滑りそうで。だから、「飲むな」と言われてもごねられなかった。
いつもの私をよく知っているリツコにしてみれば、その辺わかり易い反応だったろう。
そしてそれを多少なりとも引け目に感じちゃうのは彼女の甘さで、利用しちゃうのが私の狡さで。
私は、夕食の席をちょっとした【駆け引きの場】にしようとしていた。

最初はシンジ君にお礼を言ったり、協力を労ったり。
彼に求められたように話しだした「説明会でのやり取り」は、軽いジャブのつもりだった。
もちろん主観入りまくりで、少し大げさなくらいの身振り手振り付き。

――だって、腹立つじゃない。あんなに馬鹿にされて。
    うちの子(エヴァ)はこーんなにお利口なんですよって、見せ付けてやりたかったんだもの。
    シンジ君だってわかるでしょ?

「あなたやレイの努力まで無駄なこと」と言わんばかりの彼らの言葉に腹が立ったの―と。
そう言い切れば、彼は恥ずかしそうに笑う。素直でよし。彼にはそのままでいて欲しい。


524:La vie en rose 
06/12/05 22:08:41
 JA 月 暴走 日 ( 駆け引きの結末は… ) その二

その後、話が進めば最初は黙って聞いていたリツコも参戦。

「でもそれだけでエヴァを動かすのはやりすぎね。
 越権行為よ。……今回は不問に付されたけれど。
 もう少し慎重に、 」

――あそこであのまま爆発されるわけにはいかないじゃない?
    あの距離で被爆したら、私もリツコも助からないわよ。

( ………それとも、その心配は最初から無かった? )

含みを持たせた言葉の裏を正確に読み取っているだろうけど、リツコに動揺はなし。
このくらいじゃもう揺らがないのね。……昔と違って。

「…それとこれは別。問題を摩り替えないで。
 エヴァである必要性が無いと言っているのよ。
 事故を防ぐことに対してでは、…ないわ」

――そう? 私は充分「有り」だったと思うけど。 
    エヴァの出動費用も暴走の損害賠償に当然追加でしょ?
    そうなればあの企業は完全にお手上げじゃない。
    系列企業も出資者も軒並み薙ぎ倒せるし。
    お義理だかなんだかで来ていたお偉方だって、ねぇ?
    目の前でああも【差】を見せ付けられたらもう肩入れなんてできないわよね。

( ………どう転んだってネルフは損をしないし、思惑通りだったと思うけど。 )

ちょっちビビッてるシンジ君をよしよしと撫でる。視線をやれば、…リツコは溜息。

525:La vie en rose 
06/12/05 22:10:07
 JA 月 暴走 日 ( 駆け引きの結末は… ) その三

溜息ついて、一呼吸おいて、組んだ手をテーブルに載せて、彼女は顔を上げる。
そして、真っ直ぐに私を見たから、少しは本当のことを話してくれる気になったのかと思った。……だけど。

「…確かに、利害はあるわね。でも、『別』だと言っているでしょう。

 ミサト。 エヴァは直せるけれど、人間は壊れたらそれでおしまいなのよ。

 エヴァを出動させれば、責任を取るのは貴女。
 本部とは違うわ。……指揮車代わりのあの機体の危険性はエヴァの比じゃない。
 ましてあんな軽はずみな行動をして、もし、何かあったら…。
 予想外のことが少しでも起きたら、貴女は確実に死んでいたのよ」

(人間なんていつかは誰でも死ぬし、私だって軍人だもの、人の生死をこの手に握ってきた。
 いつか自分の番が来るなんてのは当たり前じゃない?
 部隊の士気を挙げるためにはハッタリもかますし、必要だと思えば命も懸ける。
 見栄だって何だってなりふりかまわず生き残って勝ち上がってここまで来たんだもの。
 いまさら命を惜しんでかっこ悪いまねをしたら、これまで私が切り捨ててきた奴らにあわせる顔がない)
反論ともいえない言い訳が頭に浮かんだけど、言えなかった。言えるはずもなかった。

ネルフの裏を探ろうと考えていた私の向こうで、リツコは静かに怒っていたわけだ。……私を思って。
それを思い知らされたら、疑惑の追及ばかりに気をやってた私は馬鹿みたいだった。
完敗、まったく完敗です。駆け引きは終わり。私の負けです。ということで、…ごめんね、リツコ。

言葉を重ねたせいで渇きを感じて、飲み干したウーロン茶。
氷の浮いたグラス、アルコールは一滴も入っていないはずなのに、……喉を落ちるそれは焼けるように熱かった。

真面目な顔して、私への心配で指先を白くして、震える声で怒ってくれる親友に、乾杯。
ロジックロジック言いながら、その実、感情的で激情家なこのいい女が、私を見放さずいてくれることに感謝。

526:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/06 08:53:38
GJ GJ GJ

527:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/07 00:26:04
おつ

528:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/07 00:42:40
オッテュ

529:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/07 20:15:09
日記と名のつくスレ一覧(順不同)

アスカの日記って何か教えやがって下さい
スレリンク(eva板)
渚カヲルの日記
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【LAS】アスカの日記 8冊目【LAS】
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綾波レイの日記 3冊目
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アスカの日記 5冊目
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マナのまなまな夢日記 3冊目
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碇シンジの日記 3冊目
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エヴァ量産機の流浪日記
スレリンク(eva板)
霧島マナの日記
スレリンク(eva板)

530:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/07 21:37:36
いやがらせか

531:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/07 21:41:30
被害妄想か

532:La vie en rose 
06/12/08 21:13:01
突然 月 婚約 日 (酔っ払ってたのよ!) その一

JA暴走その後。
リツコの友情を確認してしまったり、それに感動しちゃったり、……して。
でも誤魔化された気もする、今日この頃。
だから、今夜こそ【リベンジ】と決意していた。
最近いろいろあったから、全体的に飲酒量減っているし。宴会は久しぶりだし。
目標「飲ませて吐かせる」もあることだし…、と、頑張ってしまった為。
破目が………外れた。

多少は事前調査ということで内部資料の読み直しなんかもしてあった。
でも、あっちゃこっちゃブラックボックスだらけでうかつに手を出せないことを再確認させられたというか。
切り崩すには手札(あるいは手駒)が必要だと思い知らされたというか……。
もともと胡散臭い組織だものね、【ネルフ】って。
セカンドインパクトの混乱期に設立されたってところからして怪しさ大。
当時乱立していた先進技術開発系の研究所を、いくつか統合する形で始まったらしいけれど。
国家予算が復興支援に向けられる中、「ぽん」と大金出してみせた上部組織というのも……。
【名前からして】ちょっちイっちゃってるカンジ。(私見だけど、宗教系ぽい?)
うちの司令だって「どこの秘密組織幹部ですか?」って、…。
(顔が。…コワイ顔、っていうか、いつも不機嫌そう。
 それでもリツコは、あのオヤジが好きなのよね??)

どちらにしろ真っ向からじゃ、勝負にならない相手。
ならば切り崩すのは身近な人間からが妥当。

と、ここまでは真面目に考えていた。
そのはず。でも………。

飲んで酔わせて話しをさせようと思いました。
手がかり足がかりだけでもいいから、少し下呂してもらおうかなと。


533:La vie en rose 
06/12/08 21:13:57
突然 月 婚約 日 (酔っ払ってたのよ!) その二

それがどうして、こうなってしまったのか?

私が悪いの?
だってシンジ君を仲間はずれにしちゃかわいそうだと思って。
でもやっぱり、私のせい?

――レコーダーから一部抜粋。(後日検証用にこっそり録音)

リツコ、なんか私に隠してることあるでしょう。教えなさいよぅ。
ゲンドウさん(仮名)と密談とか?
こっそり逢引してるんでしょう?…デートって柄じゃないわよね、あのオヤジじゃ。
何やってんのよ?……誤魔化そうとしてんの?えー喋っちゃいなさいよ。
私のこと?それとも、まだ他に?
じゃあ何よ?
へぇー、報告してんだ。
「シンジ君は今日こんなでしたよ」って?
ちょっち夫婦みたいよね~。ねっ、シンジ君もそう思うわよね?

ここで、シンジ君の反応は微妙。
【報告】の言葉に気をとられたのか(「観察日記(改・監督日誌)」のことがあるから?)
それとも、【ゲンドウさん】(名前呼び)に衝撃を受けたのか。
でもリツコの方は、すでにシンジ君を気にする余裕はなし。
老酒、白酒他、あまり彼女に馴染みのない中国系(強)をお勧めしたのが効いたらしい。
仄かな顔色の変化を「酔い」ではなく「照れ」のせいと決め付けて、私はさらに煽ってみる。

あー赤くなってる。赤い。赤い。リツコ、かわいー。
職場いっしょだもんね。「仕事している姿が好き」とか?
どのくらい?もう長いの?もしかして、もう秒読みとかじゃないでしょうね!


534:La vie en rose 
06/12/08 21:15:37
突然 月 婚約 日 (酔っ払ってたのよ!) その三

リツコ、そばにあった小瓶一気飲み。
――あああ、それは日本酒(清酒)とは言っても40度を超える度数を誇る「サムライ(仮)」じゃん、うわぁ。

これでリツコは【完全】酔っ払い化。(明日は【記憶がない】こと確実)
私の昔話を暴露しだす。……シンジ君も居るのに18禁話はダメでしょう。
慌てて話を逸らそうとしたら、続けて司令のかわいくて不器用なところ(リツコ視点)も暴露。
シンジ君の目が宙を泳ぐ。青少年には刺激強すぎ。
そして、気も漫ろな彼が手を伸ばしたのが、試しに飲んでみようと買ってきたカクテルで。
あまり不味かったんで卓上に放置されていたやつ。(薄かったんで焼酎足しちゃったのよ…)
これで、シンジ君まで酔っ払い。

私も「保護者としてどうよ?」などと考えられるほどの理性もすでになく。
……後は泥沼。たぶん、カオス。

ノリと勢いでリツコが交際宣言。シンジ君の声援。擬似家族結成式。(拍手、拍手)
仲間はずれが寂しいと訴えると、「じゃあ、役柄は…」とまるで【おままごと】のノリ。
私のリクエストは娘。【幸せな、娘】がいい。
不器用な父に。
情の深い母が居て。
それから、からかいがいのあるかわいい弟。………と。
でもここでシンジ君から反対意見。ちょっちショック。姉はいたんだって…預けられた家で。「いい思い出じゃないんだ」
そうか…。 じゃあね、シンジ君のお嫁さんでもいいかな。そしたらやっぱリツコが【お母さん】だし。
「歳の違わない義理の娘なんて嫌」「リツコのが年上で~す!!」リツコの反論は却下。(拍手、拍手)
まだ14だからとりあえず婚約ね。
「婚約者ですか?」「うん」
酔っ払いちゃんめ。ファーストキスだからって責任は取れないぞ。・ ・ ・ ・ ああ、結婚すればいいのか。

ごめん、私も………。そーとー酔ってました 〆


535:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/09 00:43:35
オッテュ

536:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/10 10:17:47


537:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/12 20:10:12
おつ

538:La vie en rose 
06/12/13 21:14:39
 覚悟 月 傷跡 日  (昨日、今日、明日) その一

昨日の馬鹿騒ぎは、………すべて、私の見た夢でした。

と、夢オチにできたらどんなにいいだろうと思う。がしかし、…習慣って怖い。
昨晩も律儀に私は日記を書いたらしい。(半分くらいは判別不可能)
勿論、翌朝確かめたところ、あの諸々を酔払いたち(シンジ君も!)は忘れていた。
しかし私には、これ(日記)があるため忘れることなど無理。
私事ながら内容は、×××(…自主規制)だ。
破目を外しすぎるにもほどがあると思う。反省しきり。
事の顛末を考えると、ほんとうに頭が痛い。
「禁酒」は出来ないけど、当分お酒は控えよう。

でも……、昨日のことを私は【夢の話】で終わらせるつもりだ。
           「証人は居ない」
皆が忘れているなら、なかったことにするのもまた一つの無難な選択だと思う。


とりあえずそのことはそれで【結論】として、今日(今朝)の話に戻る。


あのJA登りは、厚い防護服に護られていたにもかかわらず私のそこここに跡を残した。
もうほとんど治りかけだから、それ(打ち身跡)自体に痛みはない。
けれど、(お酒を)飲んだのが微妙に不味かったか、色鮮やかに浮き出て目にイタイ。
紫黄色(とでも言えばいいのか)の二重丸の中に、毛細血管が切れたのだろう赤い水玉模様。
自分で見てもちょっち不気味。
人目に晒すようなものでもないと思い、今までは濃い色のストッキングなどで隠していた。

しかしそれが…、酔ったリツコを私の部屋に寝かせた為に、彼女に見つかってしまった。

539:La vie en rose 
06/12/13 21:15:37
 覚悟 月 傷跡 日  (昨日、今日、明日) その二

私は今朝、太腿をぴしぴし叩かれて目が覚めた。(リツコは多少サドの気があるのかも?)
確かに打ち身としてはもう痛くはないけれど、そんな起こされ方は嬉しくない。
その上、半覚醒半眼状態で容赦なく問い詰められ、寝ぼけて頭の回らない私は馬鹿正直に応えてしまった。
彼女の二日酔も低血圧も縁のない頑丈な内臓はマジで見た目を裏切っていると思う。

それで、そんな寝起きの私を相手に、訊きたいことをすべて聞き出したリツコは何か悟ったらしく。
朝からヘビィな質問をぶつけてきた。まったくもって朝向きじゃない話題。

「貴女には、自傷癖があるの?」………と。

昔はそそっかしい子だと思ってた。あまり落ち着きもなかったし。
きっと手先も不器用なのだろう、と。
鉛筆をカッターで削って。
調理に失敗して。
遅刻しそうで走ったから。
本棚に本を片付けようとして。…貴女はそう言っていたわね。

いつも。幾度も。

ミサト。……あの頃の、加持君は、知っていたの?

――ぅん。…知ってた。

加持には、すぐばれた。
アイツ馬鹿だから。
慰め方を一つしか知らないのよ。 ……………。
後で私が処女だと分かってさ、責任取るとか言っちゃってさ……。
…今考えれば結構純情よね?青いわよねー。

540:La vie en rose 
06/12/13 21:16:53
 覚悟 月 傷跡 日  (昨日、今日、明日) その三

ねぇ、話してる私の声は明るいでしょ? 鬱には見えないでしょ?
だから、「……知らなかった」なんてそんな傷ついた顔しないで。
知って欲しくなんてなかった。全部昔のこと。今はこうして笑って話せる程度のこと。

「………………ばか」

――なによぉ、どうせ私は馬鹿ですよ~。

それにね、ただ自棄になってただけだから。…どうせ【傷物】なんだからって。
【自傷癖】なんて、呼ぶほどのものでもなかった。
それに、…向こう(ドイツ)で失敗したから。殴られて、殺されかけた。その時ね、死にたくないと思った。
だから、もうしない。………【傷を負うことで現実を確かめる】なんて、ことは。
だからね、これはただの怪我。
まぁ少しはね、慣れちゃったってのもあるから、【そんな風に見える】かもしれないけど。
でも意図して傷つこうとしているわけではないから。これからはもっと気をつけるようにするし。
…それに、それにね、今は責任ある立場だもの。わかってるから。もう平気。

生きるのよ。
これまでどおり。 これからも。


………三十路と三十路間近の女が二人。
煎餅布団の上に下着姿でぺたりと座って話す話じゃあなかった。
化粧もせず、寝癖のついたままの髪で、青痣を数えて。
それでも本人達はそれなりに真剣に…なんて、なんてシュールで喜劇的。

でもね、赤心から約束する。顔を見ては恥ずかしくて言えなかったけど。
   ――すべて見届けるまでは、生き抜いてみせるから――

541:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/13 23:29:33
オッテュ

542:Adrienne ◆HI8ebVe8lo
06/12/17 20:44:02
のんびり待ち。

543:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/19 10:16:36


544:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/23 15:29:38
おつ

545:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/23 20:46:38
GJ

546:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/25 01:05:57
ミサトさんめりくり

547:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/26 07:30:06
gj

548:La vie en rose 
06/12/27 21:46:46
 ドイツ 月 連絡 日 (…あの子が来る!)

 (本日分の日記本文は省略)

追記 ドイツ支部より、「艦載部品に欠品」の報告あり。
    それ以外は、ほぼ予定通り。

この連絡に対し腹立ち八分。
上層部でゴチャゴチャやりあった挙句、皺寄せをそこへ持っていく神経を疑う。
確かに頭越しに物事を進められてムカつく気持ちもわかるけど。
でも、「ばっかじゃないの?」と思うのが正直なところ。 
情報でも何でも最先端を自負したいなら、今の状況を正確に認識しときなさいって言うの。
うちの連中だって、そっちに【使徒】の情報を【現物込み】で毎度送ってやってるはず。
責任を果たしてこそ、他者は価値を認めるもの。プライドは、自らの価値を貶めて護るものじゃないでしょう?
「幼稚な腹いせ」の対価は「侮蔑」にしかならないことをどうしてわかんないのかしらね。
………と、ここまではただの愚痴。

そして本題。 ……【弐号機】が来る。
パイロット、【惣流・アスカ・ラングレー】と共に。

あれからどれくらい経っただろう? 一年?…もう一年も?
日本で過ぎた二ヶ月は、その十倍くらいの時間を感じる濃さではあったけれど。
だからかな、彼女の傍を離れてから随分と長く時が経ったような気がしている。
しかし、(シンジ君のことを含め)私自身が再び深くエヴァに関わり、エヴァに対し費やされた時間でもある。
その間中。 思考の裏に、推し測る基準に、…彼女のことを思い返したことが幾度あっただろう。
それは距離を得て、かえって感情的には近づいたのではないかとさえ思えるほどに幾たびも…。

そして、今回の決定で。
あの子は私の下に配属されることとなる。
                    ―― リ・スタート。 これは、チャンス。

549:La vie en rose 
06/12/27 21:47:41
 偶然? 月 不信 日 ( 疑うならばすべてを ) その一

海上にて【使徒№6】の襲撃。
国連艦隊の協力を得、その殲滅に成功。
戦闘は洋上の為、【使徒の残骸】は無し。
「お土産がない」と機嫌を損ねる科学部の連中には、ダブルシンクロのデータを贈呈。
艦隊との被害調整協議、厄介な交渉は全部、総務に進呈。(どうせうちの強面上司がどうにかするでしょうけど)

しかしそれにしても……、今回の遠足はサプライズが超過サービスだったと思う。

まず第一に、旗艦艦長に昔馴染みを用意するなんて気が利きすぎている。(←ユーモアのつもり)

久しぶりに会った彼は相変わらず嫌味なおっちゃんだった。(…けど、お元気そうでなにより)
でもあの彼の台詞、「ボーイスカウト引率の【お姉さん】」ってやつには、内心(ちょっちね)驚かされた。
あれはもしかしたら、私の成長を認めてもらえたということなのかもしれない…と思ってしまって。
「ここはガールスカウトじゃないんだぞ!JP(ジャップ)の【小娘】が!!」って。
そう何度も顔をあわせたわけじゃないけど、彼に会うたびに咆えられた記憶がある。
今回は子供連れだったし、私にも(それなりに)立場もあったから気を使ってくれたとか?
~?でも、そういう人でもない気もするし。ここは、……素直に喜んでいいのかな。

そして第二のそれは、私たちの着艦直後の【使徒の襲撃】  …偶然にしては出来すぎ。

単純に言えば、電源ソケットは新横須賀での「設置」でも良かったはず。
エヴァの非常電源は、「使用されなければ」港までは充分に持つ量だった。
それが【初号機パイロットを連れて】わざわざ【お迎え】の強行、そして…。

あの海洋生物タイプの使徒の襲来、だ。

………最も、その時私が一番に目を瞠ったのは、その【形態】だったけれど。
  ( 彼らの多様性。あれは【他種】なのか、それとも【進化】なのか?)


550:La vie en rose 
06/12/27 21:51:00
 偶然? 月 不信 日 ( 疑うならばすべてを ) その二

ここまでくると艦載部品の欠品さえも、最初から仕組まれたことのようにも思えてしまう。
無事成功した今回の使徒殲滅戦は、まさに僥倖と言うしかないから。
準備も対策も何もかもが不十分だった。………心構えすらも。
もし少しでもその可能性を検討していたなら、私がシンジ君の友人達を引率して行くことなどなかっただろう。

異種たる【使徒】。彼らに対し、研究班は「予測を立てるには未だデータ不足」と言う。
それは、【使徒】の形状を予測する範囲に地球上の現存生物を当てはめることに対しての異論が多いからだ。
これまでの分析結果からの推論では、【発生の根本が違う】というのが主流なのだそうで。
「どう違うか」を考える部分は私の仕事ではないから、曖昧さをもどかしく思っても口は挿めない。

…それにあまりに奇天烈な予想をされても、信憑性の裏づけが薄ければ対策に規模を割けないのも事実だ。

そう、いつか万に一つにでも…、何か特別に確実な、有効性の高い意見が出たとしても………。
それが可決され、試作にも成功し、さらに実戦に配備されるまでには多くのものが必要になる。
『技術力』、『費用』、『時間』、『資材』、今はこの手にないありとあらゆる物が。
秘密兵器がひょいとポケットから出てくるような、そんな都合の良いことなど現実にはあるはずないもの。

切り札は、【エヴァ】

このたった一枚きりの手札に全てを賭けて、人類は戦っていかなければならない。


551:La vie en rose 
06/12/27 21:51:58
 偶然? 月 不信 日 ( 疑うならばすべてを ) その三

【偶然】も重なれば、そこに隠れているのは何かしらの【意図】。
それが神様のものか人間のかは、わからないけれど。
でも、私が立つこの場が最後の一線であることに、間違いはない。

――だから私事に拘る余裕なんてないの。…あんな感情に心揺らされるなんてこと、も。

使徒戦の厳しい現状を鑑みての「戦力の拡充」、「各支部の協力強化」、「予備兵器の随時投入」……等。
他様々な政治的駆け引きの果て得たお題目を掲げ、日本に派遣されてきたのが、【エヴァ二号機】であって。
その専任パイロット「惣流・アスカ・ラングレー」と、随伴者にネルフ・特殊監察部所属の「加持リョウジ」

三つ目、最後のサプライズが、私と深い因縁のある関係の人間との、『願わぬ再会』……だったとしても。

552:La vie en rose 
06/12/27 21:52:57
 懺悔 月 決別 日 (――もう恋なんてしない) その一

今日は。 「釈然としない」とか、「すっきりしない」とか…。
言い訳とも愚痴ともつかない言葉を抱えて、リツコの執務室でダラダラと午前中を過ごした。
いつもなら早々に私を追い返す彼女がそれを許したのは、やっぱり何か後ろ暗いところがあるからではないかとも思いながら。
疑心暗鬼。
思うように行かないことばかりあると、それを数え上げてしまうのは私の悪い癖。
そんなことばかりしていては精神状態も悪いほうに収束してしまうのがわかっているのに。
二次元の背景があったら、縦線が入っていたかもしれないくらいの鬱を背負ってた。

でももちろん、リツコはそんな状態のままに私を放っておいたりはしなかった。

「『たいしたことはない』とか、『気にすることではない』とか、
 繰り返し口にするのが囚われている証拠よ」と、辛らつな親友殿は言う。まったくもって直球の切り口で。
その上、親切気に勧められたコーヒーには塩が入っているという念の入れよう。
そのあまりの不味さに舌を出したら、それを見咎めるように目を眇めて「まだ味はわかるようね」とにやり笑い。
どうも私の味覚があるかどうか試してくれたらしい。
――あーあーそうですとも、私は体のほうが正直ですよそうですよ。
本当にダメなときは体のほうが先に音をあげる。
ストレスを心配してくれてるんだってわかるけど素直じゃないし、ちょっち…、いやかなり意地悪い。

「彼はしばらく居るわよ。
 割り切っているなら、割り切っていると言う顔をしなさい。
 ………侵けこまれたいなら別だけれど」  

きつい言葉だけれど、彼女なりの励ましだ。(こういう時、慰めに甘いことを言わないところがいい)
確かにその通りなので、答え代わりに私も肩をすくめてみせた。
開き直れるのが女三十の強みとはいえ、少々混乱するぐらいは仕方ないじゃない?
アスカ、加持との再会は、あいたかった相手とあいたくなかった男があまりにも対極で。
どちらか一点に集中できれば、もっとうまく立ち回れるのにと歯噛みするしかない。

553:La vie en rose 
06/12/27 21:53:48
 懺悔 月 決別 日 (――もう恋なんてしない) その二

「成長した!」と胸を張ったアスカ。
強気な姿勢はそのままに、彼女は少し背も(胸も?)増して、少女らしく綺麗になっていた。
以前よりも流暢になった日本語は、私が居なくなった後、勉強したのだろうと思う。
それに、……他人に対し、僅かにでも触れてしまうこと全てを怖がっているような拒絶が見えなくなっていた。

子供は変わるし、変わっていける生き物なのだと五感全てで確認させられた。

けれど、【彼】は、変わっていない。
「昔」のままの物言いと、距離感を失わせる視線は健在だった。

私の気にしすぎなのかもしれない。
でも、意味ありげに目を向けられれば気にせずには居られない。どうしても。

アイツが、私の、【昔のオトコ】だったというだけのこと、――なのに。


――どんなつもりで付き合って、どんなつもりで別れたのか。

思い出せないのは、思い出じゃないからだ。
だって、………忘れられるはずも、ない。
忘れることさえ出来ないものを、「思い出す」も何もなくて。
考えようとしても未だ冷静にはいかないから、考えないようにしていただけなのだと突きつけられる。
彼に出会って言葉を交わせば、そんな無理を自分がしていたことを思い知らされる。

最初の接触が短い時間であったことに何よりも安堵したのは、私の方だった。

でもこんな未練がましい私にもわかっていることはある。
あれは【失敗だった】のだ。彼との関係は。
それだけは確かなこと。


554:La vie en rose 
06/12/27 21:54:36
 懺悔 月 決別 日 (――もう恋なんてしない) その三

あの頃は、相手に【溺れ】れば見たくないものから目を逸らすことが出来るかもしれないと錯覚していた。
溺れて、ただ溺れて、後は目を瞑っていれば、と。
……でも結局耐え切れなくなって、最後は、逃げたした。

きっと初めから無理していたのだと思う。上手くいくはずもないことだった。
相手に嵌って付き合っていると思っていた間でさえ、私は心の奥でずっと言い訳を繰り返していたのだから。

――バカバカしいのよ、こんなのは気のせい。この瞬間だけの気の迷い。
    この男と付き合っているのは、得難い快楽の為だけ。
    傍に居るのも離れたくないのも体の相性がいいから。気持ちいいから。

そんなことで自分を騙せるはずもないのに、殊更無軌道に振る舞って、自堕落ささえ演じてみせて。
そうして自分を偽って、限界まで我慢して、…………バカよね。

イヤだった。それを認めることを自分に許せなくて……。

  ――この感情、この関係が、【愛】や、【恋】だというものだと――

   彼のことを掛け替えのない人間だと認めてしまったら、
             失う怖さを抱えて生きていかなければならなくなる。

「愛した人」に……、「愛して欲しかった人」に似ている男。
思いが深くなれば深くなるほど、傍に居ることにさえ耐えられなくなっていった。
関係を持ったのも関係を切ったのも、私の責任で私のエゴ。
「加持君」に非はない。彼は、こんな我侭な私にはもったいないほど、やさしい、ひとだった。
――でもそんな人を手に入れてしまったら、後は【喪失に怯え続ける】ばかりではないの?
気付いてしまったら、彼との関係を維持できるほど当時の私は強くなかった。


555:La vie en rose 
06/12/27 21:56:20
 懺悔 月 決別 日 (――もう恋なんてしない) その四

愛も恋も諸刃の刃だ。
中途半端ならいっそない方がいい。
始まりの同情混じりの不純さを指摘されるまでもなく、私の心が恋愛に向いていなかったのだ。

父のこと。
過去のこと。
――セカンドインパクトを唯一人、生き残った子供――
そう呼ばれ続けた時間が私の半生だった。
呪縛となって絡みつくこの鎖が外れることなど想像もつかない。

学生時代。
未だ何も手にすることなく、唯やみくもに足掻いている中で縋ってしまった「加持君」

今の私は、ネルフと言う居場所を得て、戦闘指揮官という実質的な力も手にしている。
彼しかなかった昔の私とは違う。
目的も手段も、「幻」でも「夢」でもなく目の前に確かにあって。
あやふやな足元に不安だけを膨らませていた子供でも、もはやない。

………でも。
もう一度同じ過ちを繰り返さないと誰に保障できるだろう?

それに過去を引き摺って心動く自分も嫌だ。切れない鎖なんて一本で充分だとも思っている。

だから、彼がぜんぜん変わっていなくても、……もう恋なんてしない。したくない。

今、大事なのは――男より、仕事。


556:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/27 21:57:29
本年度投下はこれで終わりです。
それでは皆様、良いお年を。 
                   by 「La vie en rose みさと」


557:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/27 22:06:51
乙~

558:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/27 22:37:44
オッテュ

559:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/29 01:28:04
GJ

560:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/12/31 18:48:30


561:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/01/01 18:39:14
ミサトさん、あけおめ

562:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/01/01 23:20:42
ミサトさんことよろー

563:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/01/02 07:28:24
「昔馴染の旗艦艦長」と言う発想で、セリフの意味を大逆転。
感嘆しました。
GJ. GJ. GJ.

564:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/01/08 08:06:59
等価襠

565:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/01/09 14:45:15
おつ

566:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/01/13 08:39:25
稲荷町

567:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/01/14 10:43:05
十日町

568:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/01/15 14:56:28
ミサトさんまち

569:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/01/17 19:13:43
みさとさんまち

570:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/01/18 21:20:34
投下待ち

571:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/01/19 15:11:33
gj

572:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/01/22 16:52:55
みさとさん

573:名無しが氏んでも代わりはいるもの
07/01/24 09:37:26
みさとさんマダー


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