葛城ミサトの日記 2冊目at EVA
葛城ミサトの日記 2冊目 - 暇つぶし2ch100:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/03/23 09:30:28
乙です


ここのミサトさんも情感こもってますね。

101:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/03/25 01:52:38


102:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/03/26 08:57:14
乙~

103:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/03/27 22:56:17
まち

104:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/03/29 01:02:02
wktk

105:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/03/30 13:02:42
ミサトさん

106:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/03/31 22:09:53
この日、他に記すべき事無し

107:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/03/32 16:51:43
葛城さん

108:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/04/03 09:32:33
まち

109:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/04/04 22:07:42
この日、他に記すべき事無し

110:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/04/05 00:12:55
お風呂からあがって全裸のまま布団の中に頭だけつっこんで
「ぷーさんでーしゅ!ぷーさんでーしゅ!」
「はちみつがたべたいでしゅー!」
「うわあー!穴から頭が抜けなくなっちゃったでしゅー!」
とひとしきり熊のプーさん気取りで遊んだ後
普通に服を着てスキンケアして寝た

111:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/04/05 19:57:28
この日、他に記すべき事無し

112:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/04/06 09:50:56
稲荷町

113:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/04/08 01:08:31
十日町

114:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/04/08 19:20:30
ミサトさん

115:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/04/10 14:44:08
この日、他に記すべき事無し

116:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/04/11 01:46:43
まち

117:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/04/12 11:40:36
まち

118:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/04/13 09:12:25
ミサトさん

119:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/04/14 10:59:51
この日、他に記すべき事無し

120:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/04/15 18:26:01
まち

121:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/04/16 21:17:21
ミサトさん

122:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/04/17 12:56:56
まだ?

123:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/04/18 05:52:44
この日、他に記すべき事無し

124:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/04/20 01:55:26
まち

125:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/04/20 10:00:13


126:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/04/21 09:28:00
十日町

127:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/04/21 20:38:24
オラ腹へったぞ

128:alter ego
06/04/22 19:45:32

2016年 3月某日

週末は予定があるのに、仕事が終わらない。
どうしよう………、やばい。

2016年 3月某日

仕事、終わらなかった。
明日は午前中にネルフに寄ってから式場に行く予定。…間に合いますように。

それで、その式に着ていく服が今日夕方、通販からようやく届いた。
時間も無かったことだからとは思っても、試着もせずに買った服は、
いまいち体に馴染んでない気がして、少し損した気分。
その服に合わせてピアスや靴、小物などを揃えていたらアスカが見に来て、色々と批評をしていった。
彼女はいつもより饒舌で、特に香水に関心があるみたい。「女の子」なんだなと思う。

…「アスカに迫られて、困るよ」と茶飲み話に加持が零していたのを思い出す。
その時は「手を出したら銃殺刑よ」と脅しておいたけれど。

アスカが心の深くで「女であること」を嫌悪しているのを知っている。
でも、そんな無意識にみせるその潔癖さとは裏腹に、
まるで見せ付けるように「女」を押し出して甘え縋りもする。
精神と肉体のアンバランスなバランス。
緊張と焦燥を持て余す彼女の不安定さ。
それらは、私にも嫌と言うほど身に覚えがあるから、わかってしまう。

虚構を演じる醜さに、目を背けたいと思う気持ちと同時に、
この腕に抱きこんで「大丈夫よ」と、宥めてあげたいと言う欲求にも駆られる。

…あの子は過去の私ではないのだから、これは本当に意味のない衝動。

129:alter ego
06/04/22 19:48:11
2016年 3月某日

加持リョウジ。
ばかなひと。
嫌いじゃない。でも、好きだなんて、…言えない。

………ほんとうに。

突き放してくれればいいと、思う。
知らん顔して、冷たくしてくれたらいい、って。
お前の我儘なんて聞けないって、
逃げることしかできないずるい女はもう嫌だって、切り捨ててくれたら。

そうしたら。
抱きしめて欲しいなんて思う自分の弱さを、憎まずにいられるから。

2016年 3月某日

ファントムペイン ―「存在しないはずの痛み」を探すことにも似た。
こんな熱帯夜に私は今も、凍えるような、夢を、見る。

眼に焼きつくように白い、硬く筋張った男の手。
だらりと力なく垂れ下がったそのツメタイ手が、一度だけ、私の頬を撫でていく。

離さなければよかった、と。
強く握って抱きしめて、その手を暖めることができたなら…。

髪を撫でてくれる手に、傷跡に触れる唇に。
生きて、私の傍らにいてくれるアタタカイ男に、すべてを預けられたのに。


130:alter ego
06/04/22 19:50:30
2016年 4月某日

エイプリルフール。

子供たちの嘘には、騙されたふり。
加持の嘘は、聞かないふり。

狼少年はゴメンだから、仕事場でのジョークは期待していなかった。
軍上がりの…より技術者の多い職場だから、私の感覚とは少し違うみたいだし。
でも、男ばっかりでユーモアとは無縁かと思っていたうちの部署にも、
気の利いた人間が一人ぐらいは居たようで。

午後の会議にお茶請けに出されたクッキー。
それが、エイプリルフール仕立てという代物だった。

ココア色のクッキーが、イチゴ味。
抹茶色のは、キャラメル味。
他にもいくつかあって、色と味の組み合わせがサプライズ…、というもの。

持って来てくれたのは、日向君で。
技術部の子がお礼を言っていたところから見て、
他の女性職員からの差し入れというわけでもないらしい。
感謝して美味しく食べたけれど、………まさか手作りじゃないわよね。

2016年 4月某日

ねむくてねむくて、死にそう。
この場で倒れたい。視界がぐるぐるまわってる。

来るはずのデータが、…まだ届かない。


131:alter ego
06/04/22 19:53:08
2016年 4月某日

「嘘の日」の余韻を、あの男と重ねる。
嘘はいくら重ねたところで嘘でしかなく。
百回吐いても、嘘は嘘のままかわらない。
でも、嘘だから護れるものもあって。

たった一つの真実が、すべてを壊すことだってある。

2016年 4月某日

シンジ君の調子がいい。…エヴァの、初号機パイロットとして。

先月末の司令との対話で何か吹っ切れた…?
それはやはり精神的な変化が同調率に強く作用するということ?

数値で識別する、こと。
「人」ではなく、軍事力として見られること。
一見非人道的に聞こえるけれど、それに対し別に嫌悪感は沸かない。…私は。
戦場では、メンタルすらも戦力数値に置き換えられ、
個人である必要も隙間も最初から存在しない。

でも。
迷うこと、希むこと。
内面への干渉、その内側への支配さえもが、意味を持つ特殊兵器。

彼らはその機体のパイロットで、私はその戦闘指揮官。

132:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/04/22 22:20:22
乙です

抑制された中に込められた心情の表現がとてもいいですね。

133:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/04/23 21:27:17


134:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/04/23 23:37:33 x9aOxn2m
オッテュ

135:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/04/24 09:11:28
まち

136:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/04/25 17:08:13


137:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/04/26 09:20:44
ミサトさん

138:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/04/27 03:11:48 Z9ZscKzU

ミサトみたいに拳銃一丁で屈強な自衛隊員殺して
主人公を守ってくれるやさしくて強いお姉さんの
一日履いて汗の染み込んだストッキングにご飯詰め込んでイカ飯みたいにして食べたい
クソ野郎がwwwwwwwwwwwwwwww


139:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/04/28 00:09:48
この日、他に記すべき事無し

140:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/04/29 09:21:22
稲荷町

141:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/04/30 10:32:01
ミサトさん

142:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/05/01 12:04:44
まち

143:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/05/03 01:44:04
十日町

144:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/05/04 08:37:25
この日、他に記すべき事無し

145:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/05/05 06:17:48
まち

146:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/05/06 11:53:54
稲荷町

147:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/05/07 00:17:20
ミサトさんまち

148:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/05/08 00:19:59
十日町

149:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/05/08 06:57:23
まち

150:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/05/08 13:02:53
この日、他に記すべき事無し

151:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/05/09 01:23:29
ミサトさん

152:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/05/09 22:14:33
稲荷町


153:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/05/10 20:45:49
ほす

154:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/05/11 22:08:12
待機

155:alter ego
06/05/12 20:43:50

2016年 5月某日

彼は言う。
「迷うな」と。
それって、何よりもやさしく、残酷な睦言じゃない?

逢瀬を重ねるごとに募るのは、愛しさ?それとも憎しみ?

優しい言葉。
でも、イタイ。

何も言わずに抱いてくれたらいいのに。

囁かれるたびに、指先が、痺れるように疼くから。

2016年 5月某日

丁度日付の変わった頃から、雨の音がしだした。滴る水音。
心塞ぐような、全て覆うような、束縛されるような、感じ。

シンジ君が、ナンバーワン。
実戦における戦歴も、テストでの数値でも。
名実共に、彼は、一番。

私は褒める。「あなたは、優秀な兵士。優秀な兵士。優秀な兵士」
ねぇ、ほんとうに。…私が喜んでいると思うの?
あなたに私の気持ちがわかるの?
何でアスカが怒ったかわかろうともしない、あなたに。

窓を叩く雨が描く直線は、鉄格子。………どこにもいけない。


156:alter ego
06/05/12 20:45:29
2016年 5月某日

先日の戦闘で、技術部はパイロットより初号機を優先させると言う判断を下した。
指揮権は容易く移された。作戦部から、技術部へと。
事実、作戦の失敗という形で責任を取らされるとすれば、更迭でもおかしくはなかった。
初号機が自力生還を果たしたことで、その責任の所在も有耶無耶という結末だが。
 【世界に三体しか稼動実例のない機体と、それに適合する稀なパイロット】
上層部を動かせるか否かを別にすれば、その決定に意見することは可能だった。
もっと強く、反論することもできただろう。

けれど、しなかった。できなかった。ならば、その理由は何か?

作戦の勝率や不確定要因に対する是非。
作戦部を預かるものとしての、自負と計算。

そして、それとは別に、………心のどこかにあったのではないか?

提言を躊躇わせたもの。
私心がないとは言い切れない、不透明な心情。心理的な引け目。それゆえの、疑心。

近づけばそれだけ情が移るとわかっていて手元に置くことを選んだのは、私。
いまさら突き放すことなどできないほど、そばに。
寄り添う想いを厭いたい訳ではない。けれど、こんな風に躊躇う自分を許すこともできず。

迷って自分に問い。応え。傷つき、苛立ち。怒り、悲しみ。また、迷う。
それでも、問わずにいられない。
まだ私は、「葛城ミサト」は、前に進みたいと思い続けられる?
目を閉じることなく、耳を塞ぐことなく、顔を上げ立ち向かえる?
無傷で得られるものなんてないと、わかっていても、…まだ。


157:alter ego
06/05/12 20:48:10
2016年 5月某日

夜勤でもないのに、今夜も作戦課の一室。
でも、ここは私に与えられた場所。
今はどうしてもあの部屋に、帰る気になれなくて。

パイロット達も定期診断を兼ねた検査入院という名目で、本部居住区。
…顔をあわせる事などないとわかっていても。

地下。ネルフ。二重スパイ。アダム。
コピー。エヴァ。シンクロ。子供。――使徒。

手に入れた、キーワード。
解けないパズルを弄り回す子供のように、徒に時間を浪費していく。

ノイズ交じりの思考。
どうしたって集中なんかできやしない。
わかってる。
こんなのただの悪あがきだって。

眼裏に映るのは、闇に飲み込まれていくエヴァ。

技術部から提出されたレコーダー。
初号機から回収されたそれ。
耳を澄まさなければ聞き取れないほどに、不明瞭で小さな音。

幾度も聞いたのに、まだ何か聞き落としているような気がして。
もうやめようと思いながらも、回し続けてる。

途切れ消えていくあの子の声は、私の名前を、繰り返す。


158:alter ego
06/05/12 20:49:34
2016年 5月某日

「碇シンジ ――カウンセリングを希望
   ・技術部から、安定剤他、薬剤の使用に制限
    エヴァとのシンクロに対する影響を示唆」

シンジ君が匂いに敏感になっている。

「LCLにもなれちゃったよ」と、
笑いながら私に教えてくれたのは、いつの事だったろう。

肉料理を減らし、和食をメインにメニューを調整するように業者に手配。
洗剤、芳香剤などを微香性のものに切り替えた。

アスカも気づいているはず。けれど、彼女は何も言わない。

2016年 5月某日

査問会への出廷。
与えられたシナリオを読み上げるだけの、茶番。
ネルフ上層部、さらにその上部組織との駆け引き。

弱ってるところ見せれば、肉食動物に目つけられる。
だから、獲物であることを自覚するものは元気なふりが上手い。

遅れていた7次建設にも完成の目処がつき、
エヴァは3体が稼動可能な状態にある。
迎撃都市としての威容は整いつつあるというのに。

弱った獣。――私の心象から、その影が拭えない。


159:alter ego
06/05/12 20:53:49
2016年 5月某日

3人そろっての、しばらくぶりの外食。快気祝いの代わり。
その席で「…ミサトさん。なんか花火みたいな匂いがする」と、シンジ君に言われた。

――学部を卒業して。何かに追われるように、ドイツに赴いた。
インパクト以前から火種を抱えていた近隣諸国との競り合いが、
その影響によりさらに厳しくなっていたあの国へ。
常時派兵を余儀なく続ける軍への出向。
ドイツ第3支部配属とは名ばかりに、経験を積ませてもらった。
アスカと知り会ったのも、その頃。
たぶん今より頻繁に、私はこんな匂いをさせていたはず。
もっとも彼女には隠すつもりもなかったけれど。

「花火の匂い」は、硝煙の匂い。

職員規程の訓練。説明するのは、不味いことではない。
…なのに言えずに、帰り道、まるで誤魔化すように花火を大量に買い込んだ。
匂いの意味を知るアスカも何も言わず、共にマンション下の公園で花火に興じる。

綺麗過ぎて、泣けるような…花火。
二人の笑い声。
滲んだ水の幕の向こうで、光が重なり溶けていく。

煙が沁みるせいなどと下手な言い訳にも気遣う顔をしてくれるから、余計に……。

私らしくもない衝動のままに、得られるはずもない、奇跡を祈った。

このまま時が止まればいい、と。
もうこれ以上、誰も傷つけずに。


160:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/05/12 21:24:26
乙です


ここのミサトさんは知的で癒し系ですね。

161:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/05/13 11:40:41


162:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/05/14 09:07:37
GJ

163:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/05/15 00:22:31
まち

164:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/05/15 13:00:19
ミサトさんまち

165:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/05/16 10:50:29
この日、他に記すべき事無し

166:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/05/17 06:28:57
稲荷町

167:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/05/17 20:19:22
まち

168:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/05/18 05:28:25


169:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/05/18 10:09:26
まち

170:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/05/19 20:28:01
十日町

171:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/05/20 09:25:38
alter egoまち

172:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/05/21 01:47:16
まだ?

173:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/05/21 19:01:44
ええ話や

174:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/05/22 01:59:55 LRLjNUDo


175:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/05/22 11:27:39
ミサトさんまち

176:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/05/23 09:29:10
この日、他に記すべき事無し

177:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/05/23 23:18:02
まち

178:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/05/24 12:21:27
小悪魔ミサトさんもまち

179:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/05/25 04:54:11
十日町

180:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/05/26 03:23:00
ミサトってガサツなA型だから、業務上で報告書は書くが日記まで書くかは疑問?ましてや激務で堕落した生活してるのに日記って・・ ありえへん

>>1指数低くてかわいそう(´・ω・`)

181:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/05/26 16:42:16
投下待ち

182:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/05/26 19:12:06
まちぃ~

183:alter ego
06/05/26 21:07:17
 2016年 6月某日

本日も晴天なり。

布団を干したのはいいが、枕が行方不明に。
予備がないわけでもないのだけれど、アスカの要望もあって三人でデパートへ。
私にとってはいいストレス発散になった。
でも、私とアスカに連れまわされたシンジ君はヘロヘロ。

ちょっとかわいそうだったから、明日は加持君たちも呼んで焼肉でもするかな?

 2016年 6月某日

食堂で、怪しい会話を聞いた。黒魔術の呪文みたい。

「マヨラー」って、何?
「ケチャパー」って…?

夕食の席でシンジ君は知っているかと話題に出したら、
「カップラーメンには、入れないでくださいね」だって。

私はそこまで悪食に見えるのかしら。やーね。


184:alter ego
06/05/26 21:08:16
 2016年 6月某日

第二支部の消失。半径89キロ以内の関連施設すべての、消滅。
研究されていたのは、S2機関。…スーパー・ソレイド・エンジン。
基礎理論ですら推測に過ぎない、未知のエネルギー。

「戦いに勝つために」人はそう言って、いつだって簡単に枷をはずしてしまう。
そのことによって負うリスクを、見ない振りしてやり過ごして。

抱えているものは、ここだってそう変わらない。
誰も言わないだけ。
はだかの王様を、誰も止めない。

遠い場所で起きた悲劇、と。
他人事と思う意外に、心を守るすべなんてないことを知っているから。

 2016年 6月某日

支部消失の情報は未だたらず。原因は不明。未解析。
でも究明されたとしても、そう詳しい情報が流されるとも思わない。
機密は、機密。
失われた人間の情報さえ、おそらくこのまま手に入らずに終わる。

「これが私の戦闘服」そう言ってくるりと回って見せたら、笑ってくれた人。
………それが、苦笑いだったとしても。
特注の赤いジャケットの背を叩いて見送ってくれた彼は、研究員だった。
アメリカ支部に配属になったとも、言っていた。
歳のせいか、少しだけ、…父に似ていた人。

たぶん、もう、あえない。


185:alter ego
06/05/26 21:09:04
 2016年 6月某日

何もない日。
忙しさはいつもどおり。

お昼ごはんをシンジ君たちと食べた。
全員、何故かそーめん定食だった。
ピンクとかミドリとか、白に混ざった色付の麺を喜んでる姿に和む。

薄氷の上の、平和。

 2016年 6月某日

コード 707。
都合よく見つかった、フォースチルドレン。
綿の中の針。隠された悪意に気付いてしまったような不快感。
…悪意?
でもほんとうに“悪意”なのだろうか?

鈴原トウジ…。シンジ君の友人。

もしかしたら、救いになるのかもしれない。
あの子の支えになれるのかもしれない。互いに支えあって、戦って…。

…なんで私の頭はこんなにも自分勝手な馬鹿なことを考えるんだろう。

浅薄なきれいごと。こんなの、逃げだ。
本当は汚いくせに。ずるくて、弱くて、汚い。
きたなくて、やだ。


186:alter ego
06/05/26 21:10:21
 2016年 6月某日

戦力の増強。それは喜ぶべきこと。
パイロットたち、個々の負担の軽減は何にも況して重要な課題。

シンジ君のシンクロ率が落ちてきている。

わかっている。私情を挟む余地はない。
………慎重にならなければ。でも、どう伝えればいい?

 2016年 6月某日

「アスカには伝えた」との加持の報告を読む。
3号機も無事、アメリカを発った。私も明日、松代に行く。

明日の朝、シンジ君に告げよう。
「大丈夫」だって言おう。

初号機も、零号機も、二号機も、ちゃんと稼動している。
「心配ないから」って、言おう。

「いいライバルができるわね」って。
「両手に花とはいかなくなっちゃうけど、
 肩身の狭い思いもなくなるでしょ?」って。

毅然として。
明るく笑って。

不安なんて絶対、あの子には見せない。

187:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/05/26 23:51:27
乙です

ささいなことの重みが伝わってきます。

188:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/05/27 02:43:32
オッテュ

189:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/05/27 02:53:34
なりふりかまってらんないのよね

190:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/05/27 19:13:02

毎回なんかしんみりできる(´・ω・`)

191:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/05/29 00:10:35


192:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/05/29 17:55:33
良作ですな。

193:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/05/30 06:40:54
まち

194:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/05/31 07:51:22
大樹

195:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/06/01 06:25:17
ミサトさん

196:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/06/01 11:17:32
この日他に記すべき事なし

197:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/06/02 08:38:25
しみじみ

198:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/06/03 06:55:15
稲荷町

199:alter ego
06/06/03 19:31:33
 2016年 6月某日

その姿は、悪魔。
具現化した、悪夢。

でも、本物の悪魔はどちらなんだろう、と。

使徒による汚染を受けたエヴァ。
3号機の破棄を決断し、使徒殲滅に切り替えたネルフ。

子供達を生贄に、生にしがみつき喘ぐ醜い生き物。
私もまた同じ穴の狢。

沈黙は、罪。――私は。

彼を。

裏切ってしまった。

 2016年 6月某日

呼吸するたびに今も、肋骨が軋む。
それは、生きているということ。

傷つきでもしなきゃ、やってられない。
痛いくらいがきっと丁度いい。

他人を追い詰めて、自分を傷つけて。

楽になんかなれるはずがない。…なりたくもない。
仕事ができれば、問題ない。

200:alter ego
06/06/03 19:35:23
 2016年 6月某日

シンジ君の意識が戻ったと聞いたけれど、面会は不可。
彼の処遇が決まるまでは、私も指を銜えて見ているしかない。

命令違反。
エヴァの私的占有。
本部への恫喝。

今までの功績を鑑みても、功罪の天秤は容易く揺れる。

しかし、庇う為の具申は彼をエヴァへと繋ぎ止める鎖に他ならず。
エヴァに乗る限り、戦いは避けられない。
また同じことを繰り返さないと誰が言える?

手放したくなんかない。………でも、それは私の我侭。
彼は家族も同然。………そう思っているのは、私だけかもしれない。

彼がここから「出て行く」と言うのなら、私に引き止める権利はない。

 2016年 6月某日

最悪の使徒の襲来。

本部は、その機能の3割を失った。




シンジ君は、エヴァは、………………。

201:alter ego
06/06/03 19:40:14

 2016年 6月某日

マギシステムの移植が終わり、初号機の本格的な調査が始まった。
現在も初号機は、熱、電子、電磁、地化学エネルギー、全てにおいて反応なし。
S2機関は依然、沈黙したまま。

リツコはアレを、「人の造りだした、人、に近い形をした物体」だと言う。

嘘ばかり。アレは化け物のコピー。

シンジ君をかえして。
シンジ君は、どこ?

 2016年 6月某日

レイの退院は、未定。

アスカは、…傷ついている。

彼女は戦闘後、帰宅してから外出を拒否。
本部への出頭にも応じない。
慰めの言葉など、今のアスカにはただ傷を深めるだけだとも思う。
二号機の損傷も激しい。
必要なのは、時間。
どちらにも。

……正直言って、なにもできずに待つことは苦痛。
なんて役立たたずなのか。
それとも、こうして自分の無力さをかみ締めることが、罰だと言うの?

202:alter ego
06/06/03 19:42:07

 2016年 6月某日

シンジ君のサルベージ計画が技術部より提出される。
彼は今、エヴァの中を漂っているのだと、リツコは説明してくれた。

自我境界線を失って。
原始の海に抱かれて。

シンジ君、痛くない?
シンジ君、怖くない?

あの子はまた、私の名を呼んでいるかもしれない。
ディラックの海に飲み込まれたときのように。

はやく、はやく、たすけて。
彼まで、奪わないで。

――統括部署の再編に着手。失ったものは少なくない。

 2016年 6月某日

初号機。エヴァ。人の意思がコメラレテイル、使徒のコピー。

人の意思って、何?
それが、彼を奪ったの?
人を呑み込むの?
ゲージに佇む、アレは、何なの?

自分の仕事の合間に、初号機を見に行く癖がついた。
アレの装甲を抉じ開ければ彼を助け出せると言うのなら、
誰が止めようと、私は躊躇ったりしないのに。

203:alter ego
06/06/03 19:43:40
 2016年 7月某日

…サルベージ計画に進展は、無し。
初号機は、変わらず。

シャフトの補修。
特殊装甲の搬入準備。

今、使徒が来たら、人類は終わり。

 2016年 7月某日

…サルベージ計画に進展は、無し。
初号機は、変わらず。

少し、アスカと話をした。
表情がなかった。

 2016年 7月某日

…サルベージ計画に進展は、無し。
初号機は、変わらず。

破棄が決定された試験場を封鎖。
回収された遺品の整理。

204:alter ego
06/06/03 19:44:52
 2016年 7月某日

…サルベージ計画に進展は、無し。
初号機は、変わらず。

部屋に帰れば、シンジ君がいるような気がする。
ペンペンも寂しいのか、居間で寝ているみたいだった。

 2016年 7月某日

…サルベージ計画に進展は、無し。
初号機は、変わらず。

大破した零号機、弐号機の修復経過を提出。
ヘイフリック限界値を超過。
しかし限界を超えてなお失われない、怪物[エヴァ]。
        ・
        ・
        ・

 2016年 7月某日

サルベージ計画の要綱が提出された。
後は計画が確実に実行できるように、準備をするだけ。

これで、もう、眠れない夜は終わり。

エヴァ、はやく、シンジ君をかえして。

205:alter ego
06/06/03 19:49:42
 2016年 7月某日

シンジ君が帰ってきた。
確かにあの子を抱きしめたのに、その感覚ですら幻のような気がしてしまう。
幾度も、同じ夢を見たから。
シンジ君が帰ってきて、嬉しくて飛び起きて、それが夢だと知って突き落とされる。

繰り返される焦燥、歓喜、安堵、そして、絶望のループ。

神様なんて信じていない。
けれど、「シンジ君を帰して」と。
この一ヶ月、見えない何かに縋り続けた。
私は後どれくらい、この思いを味わえばいい?

許しを求めることも、助けてという資格も、
私にはないことは、わかっている。………わかっている。

ただ、苦しくて。…苦しくて。壊れてしまいたいとさえ思うほどに。

シンジ君が帰ってきてくれて、こんなにも嬉しいのに。

くるしいの。
どうして?………自分の心がわからなくて、…こわい。

もう、何も考えたくない。
逃げでしかなくてもいい。
一時でいいの。
だから、誰か。

わたしを、めちゃくちゃにして。

206:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/06/03 19:51:49
オッテュ

207:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/06/03 20:22:13
乙です


知的で、そしてどんどん追い詰められていくミサトさんが情感深く描かれてますね。

208:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/06/04 14:20:55


209:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/06/05 19:17:12
おつ

210:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/06/07 00:39:28
ミサトさん

211:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/06/08 05:55:20
ええ話や

212:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/06/09 09:26:32
この日他に記すべき事なし


213:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/06/10 02:57:34
まち

214:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/06/11 00:19:30
まち

215:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/06/12 21:50:48
切ない

216:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/06/14 06:44:39
乙です

217:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/06/14 11:38:54
ミサトさんまち

218:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/06/16 02:34:46
稲荷町

219:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/06/17 11:19:21
十日町

220:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/06/18 13:08:58
ミサトさん

221:alter ego
06/06/18 22:05:20
 2016年 7月某日

加持の目に映る私。
私の演じる、私。

情欲に溺れる女、自堕落な女。
それとも、その欲すら利用しようとする狡猾な女?
目を閉じて口付けるのは、相手の粗を見ないためだと言うけれど。
ならば、加持が見ようとしない私は、どこに行くのだろう。

機密。情報。…アダムの存在。司令の目的。
寂しさを埋めるための、人肌のぬくもり。

混乱している身体と心を持て余して、欲しいものに手を伸ばしているだけでも。
少しは大人の女に見えるように、演じきれていればいい。
つりあわなくても、相手の存在を遠くにありすぎると感じなければいい。
泣きついて慰めを求められるほど、素直にはなれなくても。

目を閉じてひと時のぬくもりに溺れる。
私は、今の自分をきっとこの先も好きにはなれない。
それでも、そんな私を許してくれるあなたを。
たぶん、私は…。                …………愛してる。

 2016年 7月某日

顔を合わせる職員たちが皆、口を揃えて「よかったですね」と言う。
 「サルベージに成功して」 「シンジ君が無事で」
そして、「葛城さんにも笑顔が戻って」
私が周りを見る余裕もなかった時にも、気にしてくれた人たちがいる。
ああ、ほんとうに。ほんとうに、よかった。

222:alter ego
06/06/18 22:06:24
 2016年 7月某日

シンジ君のお見舞いに行った。

彼は、眠っていた。
幼い顔だった。

まだあどけなくて、稚げな、頼りない、少年の寝顔。
でも、この子が皆を救ってくれた。

頭を撫でてあげたかったけれど、私が触れたら汚してしまいそうで。
起こすことも躊躇われて、私は静かに病室を出た。

ねぇ、シンジ君。
目が覚めたらもう一度、「ただいま」を聞かせてね。

 2016年 7月某日

部屋の掃除をした。

窓を開けようとしたところ上手く開かず。
よく見ると、桟の部分に埃の塊がつまっていた。

布団を干した。
ソファーのクッションも、干した。

一番仕事をしたのは、掃除機。
私の部屋、居間、キッチン、廊下。
そして、………シンジ君の部屋。

223:alter ego
06/06/18 22:07:34
 2016年 7月某日

夜、仕事を終えて帰宅。
手探りで照明のスイッチを入れたときに、ふと気付いたこと。

常夜灯のついた玄関とは別に、人の気配のする居間…とか。
自分以外が作った食事を外食でなく口にすること、とか。
洗われたお皿の数、玄関に投げ出された靴。
………何時からか感じなくなった、他人の匂い。

重なり積もる、日常の瑣末。
記憶が変化を訴えても、肌は違和感を感じず受け止めていた。

独りでいた日々は、怖いほどに遠い。

 2016年 7月某日

シンジ君の経過は順調。
レイの退院も決まった。

復帰祝いは、やっぱりパーティーでしょう。

でも、そのメニューを考えたとき。彼の好物が何か、浮かばなかった。
何でも食べる子だから…なんて。
見ているようで、見ていなかったのかもしれない。

知らなかったことは、これから知っていけばいい。
つまらないことでも、他愛無いことでも。

家族、なんだから。

224:alter ego
06/06/18 22:08:46
 2016年 7月某日

今日のお昼頃、エヴァのゲージから出てくるアスカを見かけた。
こちらには気がつかなかったのか、会話は無し。
走っている様子からは、体調の悪さなどは感じられず。

アスカと、エヴァ。アスカの弐号機、……初号機。

半月ほど前。
まだ赤く染まったままの状態の初号機を、アスカは見上げていた。

大破した二機の補修、シンジ君のサルベージ計画。
本部の修復作業と仕事が重なり、初号機を洗浄する余裕さえもなかった頃。
幾度目かの呼び出しでようやく本部に出てきたアスカが、向かった先。
使徒戦後、本部では話す時間をとれず、家にも私は帰ってなくて。
何か話さなければならないことがあったというわけでもないけれど、
気がついたら私は彼女の後を追っていた。

そして、あの初号機の前。
アスカが私に見せたのは、長い沈黙と、一言だけの、問いかけ。
「エヴァって、何なの?」と。
その背中を硬い気配で鎧わせて、他者の存在を強く拒みながら…。

あれから状況も変わり、
今は夕食時に顔を合わせればアスカから話しかけてくることもある。
まだ以前のようにとはいかないのは、仕方のないこと。

それでも、彼が、シンジ君が、もうすぐ退院してくる。
そうすれば、また、あの日常を取り戻せる。
すぐには無理でも、また、きっと、――笑いあえる日が来る。


225:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/06/18 23:05:55
乙です

ここのミサトさんは素敵ですね。

226:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/06/18 23:26:14
オッテュ

227:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/06/19 11:04:48


228:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/06/19 23:40:08
乙おつ
これから先の展開が鬱……
作者がんばれ超がんばれ

229:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/06/20 10:37:36
おつ

230:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/06/21 09:54:44
稲荷町

231:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/06/22 23:11:45
しっとり系のミサトさんですね。

232:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/06/23 18:05:16
GJ

233:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/06/25 01:32:19
この日、他に記すべき事無し

234: alter ego
06/06/25 21:06:08
 2016年 7月某日

狐の嫁入り。
晴れた空から降る雨を、見た。

リツコと呑みに行く約束をする。
なんだか、久しぶり。

 2016年 8月某日

暗いところは苦手だった。
今も、嫌い。
イヤなことばかり、浮かんでくるから。

加持との関係を根拠に留められた一室。
静かに蹲ること以外、することがない。
この拘束が解かれるのは、私が要らなくなったとき。

私が要らなくなるのは、何時なのか。
私が要らなくなるのは、何故なのか。

考えるのは、怖い。
目を閉じることも。

暗闇の中では、………イヤなことばかり、浮かんでくる。


235: alter ego
06/06/25 21:07:36
 2016年 8月某日

また、「さよなら」を聞けなかった。
昔、私が彼をおいてドイツに発ったときと、同じ。
加持君は最後まで、「さよなら」を、私に、…くれない。

ばかなひと。
言いたいことだけ言って、「約束」なんて、果たせないくせに。

私は待たないから。
待つ必要なんて、ないもの。
だって…、もうどこにも、いないんでしょう?

まだ泣けるのかと、他人事のように思う。
心も頭も麻痺したように、遠く、感じる。
どこか乖離した場所から、虚ろな自分を、見ている。

何故、私は生きているの…?

こんなに何もかも、真っ暗なのに。
こんなにも壊れてしまいたいと、願うのに。

 2016年 8月某日

シンジ君にも、アスカとも、…顔を、あわせたくない。

「仕事忙しいの、ごめんね」、と。
帰れない言い訳を留守電に入れようとして、指が震えた。
新しいトラウマが、できちゃった?

置手紙をキッチンのテーブルの上に置いてきたけれど、気がついてもらえただろうか。

236: alter ego
06/06/25 21:08:59
 2016年 8月某日

私が好きになったから、あの人は、…シンデシマッタ…の?

南極に行く前、私は父が嫌いだった。
母を泣かせるから。
私に気付いてくれないから。
それでも、父は私をあの場所へ誘い、私はそれを承諾した。

初めて見た、父の一面。
私の父親として以外の、男の顔。
仕事に携わる真剣なその姿に、私は…。
私は、父に対する想いを、変えはしなかった?
だめな人。
そう一概に決め付けていた自分の視野の狭さに気がつきはしなかった?

そして、どこかで。

父を。

誇らしいと………。

「愛している」と気がついたのは、失ってからじゃない。
「愛している」と気がついたから、私は失ったのではないのか、と…。

こんな考えはおかしいと、理性は告げる。

でも、やめられない。
止められないのよ。

加持君が死んだのは、父が死んだのは、……ワタシノセイ?


237: alter ego
06/06/25 21:10:33
 2016年 8月某日

昔は、すべてを拒絶することで、自分を守っていた。
そして今は、日常を装う。

無関心でいてほしい。同情も慰めも要らない。
いつもと変わらぬ態度で接して、私も同じだと演じさせて。

やさしくされるのが、なによりもつらい。

 2016年 8月某日

閉め忘れた窓から入ってくる、朝の風が冷たい。
もう少ししたら、まだ遠く小さく見えるあの光が、世界を染め替えていく。
………夜の終わりなんて、永久に来なくてもいいと思うけれど。
けれど、光が。いっそ暴力的なまでに夜明けが闇を剥ぎ取っていく。
それは、圧倒的な強さで。

この壁の向こう。廊下を隔てた部屋に、あの子達がいる。
…シンジ君も。アスカも。時間が来れば起きてきて、「おはよう」と言ってくれる。

誰かがいなくなっても、何を失っても。
あの時と同じように朝が来て太陽が昇り、一日が始まる。

加持君は、いない。もう会えない。

それでも。生きている。
目も耳も閉じて、声を殺しても、私は。

…呼吸することを忘れることはできない。

238: alter ego
06/06/25 21:12:23
 2016年 8月某日

自分のことばかり、気にしていてはいけない。
私にはするべき仕事がある。

アスカのシンクロ率が思わしくない。
シンジ君も…。
安定しているとはいえ、レイのそれでは決定打に欠ける。

頭を切り替えて、生き残ることを考える。
それが、仕事。
私の選んだ、仕事。

この人がいなければ生きてゆけないなんて一時的錯覚。
人間はもっと図々しく、薄情な生き物のはず。
そうでなければ、とっくに滅びている。
…何も失わずに生きられるほど、平和な時代じゃない。

私は嘘吐きだもの。
これまでも、これからも。

私は上手に自分を騙せる。そうよね、大丈夫。

 2016年 8月某日

エヴァシリーズ。アダムより生まれたもの。

仕事の合間に情報を集め始めた。
無駄かもしれない。………でも、知りたい。彼の求めた真実も。
そして、まだ、足りない。


239:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/06/25 21:24:52
乙です


ミサトさんが本編より素敵。そして、切なく鬱な展開です。

240:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/06/26 06:14:54


241:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/06/26 14:58:19
おつ

242:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/06/28 01:20:23
ほんとにしっとりしてますねーGJ

243:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/06/28 23:54:14
かなりいい・・・

244:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/06/30 07:46:57
結末が待ち遠しい。

245:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/01 11:19:47
ミサトさん

246:alter ego
06/07/02 21:22:03
 2016年 8月某日

家族…、からの電話。

夕食時にアスカにかかってきたそれを、シンジ君が羨ましそうに見ていた。
私は、アスカの実家の実情を知っている。…彼女の強がりも。

人は誰もないものねだりが、上手。

 2016年 8月某日

最近、冷え性になった。
手足の先が冷たい。

リツコほどとは言えないけれど、
慣れたはずのボードを叩く手がもつれやすいような気がする。
暖めようと唇に押し当てて、氷みたいなその温度に驚いた。

人は眠らなければ死んでしまう。
でも、泥のような眠りに絡めとられることを不快に感じる。

するべき事があるのに、体が追いつかない。
時間が足りない。

見えないところで何かが動いている。
非公式な戦力の増強。
裏にあるのは………、何?


247:alter ego
06/07/02 21:23:35
 2016年 8月某日

あの子達は別々に学校に出て行く。
週明けにした食事以後、同じテーブルに着くこともない。
顔をあわせないようにしているのか、少しずつ時間をずらしているようだ。
食事も、お風呂も、…私と言葉を交わすことも。

彼らが伝言を託すように、けれど言葉無くペンペンに触れ、
静かにドアから出て行く背中を見送る毎日。

相手が居なくとも同じ所作をするのは、ユニゾン訓練の名残?
それとも、一年近くなる共同生活の中で相手に馴染んだから?

でも、そんなこと、あの子達はわかってなどいないだろう。
きっと、わかろうとも、…しない。

明日もまたシンクロテストが行われる。
結果如何によっては、何らかの結論を下す必要もでてくる。

何が幸いなのか。

アスカ、シンジ君………。 彼らを、どうしたら…。

 2016年 8月某日

エヴァ各機の換装終了。
最終調整の時間配分にミス。
二時間のロス。

その間、同じ部屋の中、三人のパイロットが会話した形跡はなし。

248:alter ego
06/07/02 21:24:31
 2016年 8月某日

一つずれた歯車は不協和音を奏で、軋んでいく。

シンクロ率の低下。
けれどそれだけが全てではない。

シンジ君が退院したとき、私は迎えに行けなかった。
ネルフに、拘束されていたから。
「お帰りなさい」と彼にかけるはずの言葉さえ、
加持の留守電に見失ってしまった。

そして、逃げた。

アスカの緊張と屈託を知っていたのに、
フォローすることなく二人を置き去りにして。

シンジ君も…。彼にもまた、苦しい嘘をつかせたまま。
………加持のこと、シンジ君はきっと気が付いている。
私が言わないから。
何でもないふりをするから。
あの子はただ、黙るしかない。
泣くことも悲しむことも奪って、慰めることもせず、日常を強要する。

酸素の足りない金魚のように、暖かい水の中で喘いでいる。
無理に平穏を装っても、繕っても、息苦しさはお互いを追い詰めるばかり。

帰宅してから一度も、あの子達の笑顔を、見ていない。


249:alter ego
06/07/02 21:26:04
 2016年 8月某日

使徒襲来。殲滅に成功。
弐号機、パイロット共に損傷は軽微。

軌道衛星上に使徒を確認したのは二度目。しかし降下接近する様子はなかった。
使徒は射程距離外より心理攻撃を行い、弐号機は精神汚染を受ける。

使徒を倒した武器の存在。地下に眠る『アダム』と呼ばれる存在。
使徒同士、あるいは『アダム』とエヴァの接触によるサードインパクトの危険という事実。
今回の使徒戦により暴かれた、欺瞞の幾つか。それは重ねられた偽り。
けれど追い詰められれば晒される他はない、砂上の楼閣でもある。

それでも隠すのは何故か?  知られたくないから。
都合が悪い?     それは誰にとって?

職員も馬鹿ではない。
積み重なれば上層部に対する不信は否応なく膨らむ。

そして…、出撃を許されなかった、初号機。
あの機体には、司令の拘る理由がある。 …それは、何?

 2016年 8月某日

諜報部から、アスカの所在について報告を受ける。
友人宅にて確認とのこと。



楽しかった家族ごっこも、……………ここまで。

250:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/02 22:32:39
超乙かれ
シンジとアスカがそれぞれ別々にペンペンに触れて出て行くところ、泣けました
鬱展開が続きますが、作者頑張れ超頑張れ

251:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/03 00:07:38
オッテュ

252:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/03 07:34:44
乙です

いいですよー。がんばって。

253:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/03 08:34:25
乙です。

254:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/03 17:51:07
悲しい

255:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/04 17:37:27
gj

256:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/04 20:33:49
ぜひ最期まで

257:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/04 22:23:05
>>256
最後じゃなくて最期なんだよな……悲しい

258:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/05 23:53:06
すごく下がっているので保全あげ

259:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/06 21:32:13
前スレが見れないけど、どんな内容でしたか?

260:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/08 05:31:41
補完されたシンジの脳内世界でのミサトさんの波瀾万丈の話
学生時代の三人の笑いネタ話
などがありますた。

261:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/08 21:05:43
>>260
ありがとう

262:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/08 21:21:57
みみずん(重いけど)
URLリンク(mimizun.com)

263:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/09 01:22:52
>>262
トン
にくちゃんねるにのこってなかったんで諦めかけてたんです。
ありがとうございます!

264:alter ego
06/07/09 21:00:19
 2016年 8月某日

午後に変更になったシンクロテストは、僅か40分ほどで切り上げられた。

…私がそう思うほど、傍からは悪く見えないようだったけれど。
アスカとシンジ君の顔色は思わしくなく、視線は暗かった。
データ上に現れるものは、軽い疲労程度でしかなくても、
俯きがちな表情は堅く、口は結ばれ、冗談の一つにも笑える雰囲気ではなかった。

テスト結果は、すでにパイロット達に通達されることではなくなっている。

業務連絡にも乏しいほどの一言二言の後。
黙って出て行く彼らを引き止める言葉が続かない。

初号機は事実上の凍結。
弐号機のパイロットは、起動可能なシンクロ率さえ、割った。

 2016年 8月某日

「貴女ばかりが、負うことはないんです」
…直属の部下の青年の、やさしい言葉が心の表面を上滑りする。

危険を承知で引きずり込んで、共犯者であることに「諾」と言わせた。
私にとって、それだけでも充分に、罪を重ねたに等しい行為。

だから、労わってくれなくていい。
恨んでくれればいい。
そのやさしさの代わりに。

差し出せるものなど、この手にはもう何も残っていないのだから。


265:alter ego
06/07/09 21:01:52
 2016年 8月某日

本日の会議の議題は、防衛ラインの見直し。
議場はまるでお通夜のような暗さだった。
先日のシンクロテストの結果がもたらすものは明白。
人の口に戸は立てられない。
戒厳令を敷いたところで不安は解消されず、これといった打開策もない今。
使徒の攻撃は激しさを増し、より巧妙になりつつあると、誰もが感じている。

勝てていたからこそ、口を噤んでいた者達。
人の心は弱い。でも、そこに付け入る隙がでてくるのも事実。

切り札となるカードがほしいと、渇望ばかりが胸を焼く。

 2016年 8月某日

もしも……


もしも、あの時……


もしも……


使徒襲来。
使徒殲滅に、…成功。

零号機は大破。
パイロットの生存は………


266:alter ego
06/07/09 21:03:22
 2016年 8月某日

セックスなんて、手段でしかない。高ぶった身体を鎮める手っ取り早い方法の一つ。
自分を明け渡して、小さな死を味わう。一旦全て失くして、再構築するために。

命を張って神経をすり減らして、極限まで追い込まれた心。
「涙も出ない」と茫然と見上げる彼に、私が差し出したもの。

『エヴァに乗る』ということで目隠しされていた『死』との駆け引き。
今までの戦闘で、それに気付かずに居られたことのほうが奇跡なのだと。
たぶん、彼は。
シンジ君は知らなかった。
私が、…私達が、教えなかったから。
どんなに危険があっても最後には帰ってこられるのを当然のこととして、
彼らを受け入れて見せていた。………次の戦闘への出撃を、拒否されないように。

揺りかごは、檻。 あたたかくてやわらかなそれは、原始の闇。

溺れてくれればいいと、願った。
怖いならしがみついてと、望んだ。
雛が餌を強請るように、子犬が母犬の胸元に擦り寄るように。
甘えて、縋って、この腕の中で眠ってくれたら………。
忘れさせてあげるのに。
たとえひと時でも、その痛みも悲しみも。

けれど、彼は私の手を取らなかった。

拒絶したシンジ君の潔癖さに私が抱いたのは、より深い愛おしさと哀しさ。
叶わないと知っていて、なお祈る。
どうか、このまま汚れないでいて。  あなただけは。

267:alter ego
06/07/09 21:05:08
 2016年 9月某日

「レイの生存を確認」との一報。
嬉しい。 そう思う心とは裏腹に、疑念も湧く。
――事実確認に、どうしてこんなに時間がかかっているの?

技術部はリツコの統括。
主力の実働部隊部分には、私も手を出せない。
前の組織を引き継いだ、その実態には不明な点が多い。

リツコの動向は要注意事項。
心配だから…、なんて可愛いことは死んでも言うつもりはないけれど。
彼女のポーカーフェイスは、私以上に自虐的だから。

 2016年 9月某日

レイに会いに行ったはずのシンジ君が、さらに落ち込んで帰ってきた。
レイの怪我は重くはなく、ただ「軽い記憶の混乱がある」とのこと。
シンジ君に直接聞くのも憚られて、病院に問い合わせたところ、
面会では特に問題があったわけではないとの返答。
仕方ないことなのかもしれない。
シンジ君にも、レイに対し何か思うこともあるだろうし。

でも、そのこととは別に、病院への問い合わせは思わぬ問題を浮上させた。
アスカが、病院から、ロスト。…そんな報告は受け取っていない。
彼女が居なくなってから、すでに二日目になると言う。
アスカの立場は、今とても微妙な位置だ。
けれど、私情だろうと何だろうと、いまさら放り出すなんて無責任なことはさせない。
できるだけ表立たないよう、心当たりを探す。
………まったく、あの子はどこに行ったのよ?


268:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/09 21:24:39
オッテュ

269:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/09 22:58:45
otu

270:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/09 23:11:24
乙。

271:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/09 23:30:27
だっふんだ

272:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/09 23:49:22
>271
よぅ志村

私見だが、このスレのミサトさんは数有るSSの中でも
放映時に庵野が描きたかったミサト像に一番近いんじゃなかろうか。
強くて弱く、冷徹で優しく、熟れていて幼く、狡くて素直。
マコっちゃんじゃなくとも惚れます。

つーかシンジ、口説け。

273:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/10 00:17:38
乙です

うーむ。確かにいい女だ。続き期待してます。

274:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/11 00:28:48
職人さん乙カレー

時々見返すと、これは本人が付けた日記なんじゃないかと
たまに錯覚するよ

275:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/11 01:42:31
アスカが病院から失踪ってのは、オリジナル展開?

276:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/12 06:53:19


277:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/12 12:09:02
ミサトさんまち

278:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/13 18:36:20
職人うますぎる
それほどミサトさんが好きなんだね?

279:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/15 00:41:02
この日、他に記すべき事無し

280:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/16 12:50:24
ミサトさん

281:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/17 13:58:25
病院からいなくなって廃墟みたいなとこにいたのではなかったか

282:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/19 09:17:34
この日、他に記すべき事無し

283:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/19 18:49:36
文字だけでエヴァの世界が再現できるとは思わなかった

284:alter ego
06/07/22 21:19:34
 2016年 9月某日

入手した、機密。マギを出し抜くには「人」を信じるしかない。
けれどそれは、関わった人間を危険に晒すことにつながる。
でもどこかに、他者を矢面に立たせ影で見ているやつらが居る。
それに憤っているのは私だけではない。許せない。許さない。
そして、私はもう守られているだけの小娘ではない。

だから、今度は、私の番。

生き残ってみせる。
生き残らせてみせる。 
その為にならなんだってしよう。
取引するカードが必要だというなら手に入れる。
隠されているなら暴いてみせる。
『アダム』を縫いとめていたロンギヌスの槍、だろうと。
秘密裏に製造されているらしい量産型『エヴァ』、だろうと。
使えるものなら何だって使って。 …加持がくれた『鍵』も。

あの最果ての海で、父に譲られた命。
加持に託された、彼の求めていた真実。

受け取ったのは、私。

無為を悔やむより、選ぶ誇りを。
過去は堕ちる為にあるわけではない。
痛みの記憶さえ、今の私になるための礎。
足掻き苦しんでも受け入れて「ここ」にいることが、私の得た力。

私の選択、許してくれるわよね?  加持君。…父さん。

285:alter ego
06/07/22 21:22:31
 2016年 9月某日

ネルフの抱えた闇、その一つ。

シンジ君を呼び出したリツコを追った私に。
彼女が晒して見せたのは、ダミープラグの生産プラント。
……あるいは、綾波 レイの、それ。

人の形をした、ヒトではないもの。  
ヒトに近いもの。  魂の容れ物。 
 『エヴァ』と、『レイ』

綾波レイという少女は、確かに異質だった。私もどこかでそれを感じていた。
でも、私には、レイは人に見える。人だと思う。本当は、違うものだとしても。
だから、リツコを責めることは容易い。彼女のしたことは、命への冒涜だ。

けれど私に、彼女を責める資格などない。

エヴァに取り付かれた人々。
その闇は私の中にもあるから。

「自分のためでしょ、あなたの使徒への復讐は」
過去にリツコが私に言った言葉。 私の、闇。
今現在、その目的の先が変わっても、「力を望んだ」ことは事実。
それが同じでないと、どうして言えるだろう?
自分の欲望のために、私は、シンジ君や、アスカや、…レイを。
『エヴァ』という存在を、利用したのではないと…。

彼女が断罪を望んでいたのだとしても。
私には、何も、………できなかった。

286:alter ego
06/07/22 21:23:28
 2016年 9月某日

………彼女は破滅を願っていたのかもしれない。


何もかもを手に入れようと思うのは、傲慢、なのだろう。
それはまるで、両手で水を掬うようなもの。
手を揃え、零すまいと必死になっても。
手の内に残る水よりも、流れ零れゆく方が多い。…多いと、思えてしまう。
それでも。
飢え渇く者の前では、零れたものを嘆くより掬えた分を生かすべきなのだ。
たとえそれが、どんなに遣る瀬無い選択でも。

あれから、リツコとの連絡は途切れたまま。

アスカは、まだ見つからない。

 2016年 9月某日

大破した零号機の為の代替部品の請求を作成。
これでもう、…3度目。
弐号機の両腕の場合、ドイツからの返答は即日。
運搬予定はその翌朝に通達という早さだったのに。
零号機のパイロットは居る。部品を出し渋るなんて不可解。
危機感が薄いなんてことは、無いはず。ならば、別に理由が?
 
追記 :本部からフィフス・チルドレン派遣についての連絡。
_ _ _ _ 到着は明日未明。

部品、ではなく、パイロットを送ってくるなんて。
零号機は破棄。 弐号機は操縦者変更ということか…。


287:alter ego
06/07/22 21:26:40
 2016年 9月某日

諜報2課から、アスカを無事保護したとの一報。
栄養失調を含む過度の疲労、意識の混濁あり。
そのまま病院に搬送、退院予定は不明。

シンジ君には、アスカの行方不明を告げなかった。
彼がお見舞いに行ったようすはないから、それを知った可能性は低い。
何も知らず気付かずに、あの子達はまだ、すれ違ったまま…。

そして、そのシンジ君も、今日は帰ってこない。

正体不明の、フィフスの少年。
(…レイと同じモノかもしれない。あまり似てはいないけれど。)
表立った敵対行為は無いから監視のみの、彼と。…一緒。

私は、一年とちょっと前と同じように、ペンペンと二人。
部屋のベランダから明かりの減った夜景を眺め、夕食には缶詰を開けた。
夜が更けても、最後だと思うからか手を離すのが辛くて引き止めた。
私の膝の上、眠ってしまった彼は、仄かに暖かい。
危ない目にはあわせたくないから、明日からは……ペンペンともしばらくお別れ。

さらさらと流れる思考は、砂時計を落ちる砂にも似て。
どこにも引っかからず、影さえ残さず、すり抜けていく。
ただ静かで、穏やかで、からっぽで、とても、………

何で人は。
自分のために生まれてきたのではないものを、こんなにも大切に思ってしまうのだろう。

こうしていつかかならず、思い知らされる時がくるのに。

288:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/22 21:32:55
なんて切ないのだろうか
甘甘なSSや笑えるSSもいいが、
こういうシリアスなのは
なかなか見たことなくて新鮮でいい

289:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/22 22:01:55
嗚呼……

290:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/23 01:54:29
オッテュ

291:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/23 07:02:55
乙です

懸命に生きているミサトさんが素敵です。

292:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/23 22:42:49
GJ

293:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/25 10:00:33
この日、特に記すべき事無し

294:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/26 02:03:36 mUVdmSlZ
この女サイアクだよな
セカンドインパクトのせいでひどい目にあったからって、
命令以外なにもできない自分を棚に上げて
シンジにおしつけてるだけじゃねーか
わかってないくせに、全部わかってるようなしゃべり方してさ

295:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/26 03:04:07
> わかってないくせに、全部わかってるようなしゃべり方してさ
> わかってないくせに、全部わかってるようなしゃべり方してさ
> わかってないくせに、全部わかってるようなしゃべり方してさ
> わかってないくせに、全部わかってるようなしゃべり方してさ
> わかってないくせに、全部わかってるようなしゃべり方してさ

296:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/07/26 06:40:40
>>294 何もここで書くことないんじゃ…
ま、夏か 厨は断罪モノでも読んで自己満に浸ってろ

297:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/01 10:16:19
投下町

298:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/03 13:29:53
この日

299:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/03 22:18:33
何の日

300:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/03 23:08:17
気になる日(気になる日~)

301:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/04 20:13:59


302:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/05 22:51:01
書くの難しいところだと思うけどがんばってください。

303:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/06 02:13:45
またシンジ君がオナニーしてる

304:alter ego
06/08/06 03:56:29
 2016年 9月某日

フィフス・チルドレン、二度目のシンクロテスト。
技術部による徹底的な事前メンテにより、外部からの介入の可能性は限りなくゼロだという状況下。
それでもフィフスの少年「渚カヲル」は、前回と同じ数値を叩き出した。

やはり『彼』はレイと同じ、『エヴァを操るために人工的に造り出された存在』なのか?
でも、たとえそうだとしても。
忌むべきは自分達の都合の良いように『ヒト』を造る者達の方であって、造られた彼らではない。

それに『彼』は、………シンジ君と仲がいい。
学友の殆どが疎開し、アスカやレイとも距離を置く今。
シンジ君にとって、唯一とも言える心許せる相手なのだろう。
久しぶりに聞いた、シンジ君の笑い声。
その目的が判らないからと言って、二人を隔てるのは正しいこと?

追い詰めたいわけじゃない。
ただ、            …守りたいだけ。

 2016年 9月某日

通常業務を遂行。

それから。
シンジ君に、安全他諸事情により本部内に一室を用意した。
一時的な措置と言いたいけれど、期間は未定。

あの部屋の鍵は三つ。
アスカとシンジ君と私の手に、一つずつ。
いつか皆であの部屋に帰れる日が来ることを、信じて。


305:alter ego
06/08/06 03:57:25
 2016年 9月某日

リツコに面会。
出来ないとは思わなかったけれど、あっさり許可された事にも少し驚いた。

「…『彼』は、最後のシシャ」

リツコから得られた情報はこれだけ。
それしか言えなかったのか、それとも、それ以上の何者でもないということか…

酷く疲れていたが、意識は気味が悪いほどにはっきりとしている。
気分が高揚しているためだろう。
内側からざわめくような、奇妙な興奮が私を支配している。

これは、『恐怖』?
私は、何を恐れているの?

『終わり』?

それとも………

 2016年 9月某日

使徒襲来。
セントラルドグマへの侵攻を許すも、初号機による殲滅に成功。
弐号機及び、初号機の損傷は軽微。

使徒戦後、興奮状態にあった初号機パイロットには安定剤を投与。
現在、病院施設内にて保護監査。


306:alter ego
06/08/06 03:58:35
 2016年 9月某日

シンジ君はまだ、眠っている。

彼が目覚めたところで、待っているのは残酷な現実。

意識を失くし、痛みも苦しみも覚えず眠る、無防備な寝顔。
この眠りをただ守れるのなら、どんなに良かっただろう。
目を覚まし『今』と向き合うとしても、少しでも幸せを差し出してあげられるのならば…
けれど、そんなことは叶わない夢。
覚醒は、絶望的なまでにリアルに、不幸も、醜さも、
その手が成した罪さえも暴き出す。

「あなたがしたことは正しいこと」
「私が命令したのだから、あなたに罪は無い」

嘘ではない。けれど彼にとっての真実には遠く聞こえるだろう、奇麗事。
こんな言葉でシンジ君の心を守りきれると考えられるほど、オメデタくはなれない。

“自分自身を見つめ、自分の成したことを受け止める”

それはとても辛く苦しいことだと知っている。
けれどそれから逃げてしまったら、人形も同然。
そんな風にシンジ君をしてしまいたくない。

自我を捨てないで。
『今』から逃げないで。
自らの意思無しには喜びも悲しみもまたありえない。

許された時間は、あと少し。


307:alter ego
06/08/06 04:00:53
 2016年 9月某日

「生き残るのは、生きる意志を持ったものだけ。 彼は死を望んだ。
 生きる意志を放棄して。 見せ掛けの、………希望に縋った」
結果、『彼』は死に、シンジ君は帰ってきた。
そして私は、それを、喜ぶ。 冷酷な、傲慢な心で。
嘘吐くことない私の心は、安堵に緩む。
――彼が、シンジ君がここに居る、と。 生きてかえってきた、と。
     その『生』が、『使徒』の『死』の上にあるのだとしても。

今更隠しようもなく、私はそんな人間でしかないということ。
「人類を守る仕事」そんな大義名分を掲げていても、
今この現状の中で最も優先しているのは、私情以外の何ものでもない。

シンジ君を、アスカを、…誰かを守りたいと願うのは純粋な気持ち。
けれど綺麗なその想いに酔って、
自分を正当化し続けるなんて器用な真似は出来ない。
私は自分の狡さも、弱さも、醜さも知っているから。
それでも、こんな私にも出来ることがあり、僅かばかりでもこの手が役に立つなら。
それさえも私自身の存在価値とかそういうものを満足させたいと思っている、
エゴを満たそうとしているだけでしかなくても。

そうね、私はシンジ君が言うとおり「冷たい女」で、ただのエゴイストでいい。
何も出来ずに後悔するくらいなら、悪い人間になったほうがいい。
守りたい、失いたくない。加持君や父さんの時のように泣きたくない。
失うのはもう嫌。 それはとても怖いことだもの。………怖い、とても、こわいこと。

だから、私はあがく。
どんなに不様であっても、 きっと最後の瞬間まで。
でもそれが『人間』なのだと思うから。

308:alter ego
06/08/06 04:02:19
 2016年 9月某日

『最後の使徒』の齎したものは、…数多の疑心暗鬼。
『人型の使徒』の存在に感じる、潜在的な恐怖。
あるいは、生理的嫌悪とも言うべきもの。
『渚カヲル』という少年を間接的に知る者の方が多い中、
これを払拭することは困難と思われる。

そして、それは連鎖的に、別の者達へと向かう視線を変えていく。

オーナインシステムと呼ばれるエヴァの操縦適応確率。
その特異性が、パイロットに対する不信を助長する。
「あの子達は人間だ」と声を嗄らして叫んだところで、
他人の心の奥底までは拭えない。

静かに、緩やかに、高まりつつある緊張。

パイロットを隔離するだけで治まるような、根の浅いものではない。
できるだけ早急に打つ手考え、実行する必要がある。

…シンジ君も、アスカも、レイも。
子供なのよ。
普段は、普通の、どこにでも居るような、ただの子供。
何も、何も悪いことなんかしていない。

私もそうだけど、人間ってホント馬鹿な生き物。
それとも、組織という集まりが暴走を許すの?

止まる事を知らない鳥が、飛ぶのを止めた途端、落ちて死ぬ。
今のネルフは、それに似ている。


309:alter ego
06/08/06 04:03:26
 2016年 9月某日

モラルと効率。
戦場では、その狭間に悩むことがあっても、
「そのことによって仲間が死んだら責任が取れるのか」
という一言の元に、思考を停止させてしまう。
戦時下においては、僅かな躊躇さえ命取りになることがあるからだ。
真面目であること、正しいと思われることが正解とはならない。
その狂った倫理の中で「勝つため」「生き残るために」にと自分を誤魔化して、
心のどこかを麻痺させて日々を送れば、いつか人は歪んでいく。

『使徒』という脅威との戦い。

毎度の戦闘は綱渡りで、…失われたものは戻らない。
形ばかりとりなしても、昨日までそこに居た同僚が居ないこと…。
壊されたシェルター、封鎖地区の拡大、情報統制…。
被害の増大に人員は追いつかず、
二次災害を防ぐために切り捨てなければならないものもでてくる。
日常と非日常。正気と『狂気』を交互に抱え、
それを上手く使い分け続けられるような人間なんて、いない。

自分はまともだと言い始めた時から狂気は始る。

アスカは病院。 レイはたぶん司令のもと。
シンジ君にはかわいそうだけれど、行動に制限をつけた。
けれど、それで守りきれるとも思えない。
エヴァという『使徒』の力が、このまま存在するかぎり………。

いつか堰は切れる。
カウントダウンは、………幻聴じゃない。

310:alter ego
06/08/06 04:38:35
 2016年 9月某日

孤立無援。

ぎりぎり紙一重で、それに近い状況。 
本部に近ければ近いほど、周囲との隔絶が厳しい。
今、ネルフの外は敵ばかりなのだろう。
「補完計画の遂行」という題目のみが、
ネルフに詰める職員の意識を支えていると言っても過言ではない。

状況は悪化の一途。
現在、外部との連絡手段の多くが遮断されたまま。

残る手段はマギだけ。
虎穴に入らずんば…か。

 2016年 9月某日

自分の持ち物を整理した。
身辺整理の真似事。

そんな中。
執着…、なんて言葉とは縁遠いと思っていたのに。
捨てられないものが、幾つも見つかる。

なんて言えばいいだろう、「たからもの」?

でも、本当に大切なのは、「物」より「記憶」

311:alter ego
06/08/06 04:40:18
 2016年 9月某日

加持の残してくれたコードに、感謝。
リツコが居ないことも、このことに限ってはプラス要因。

マギが吐き出したのはまだ一部。
より詳しく探るには内部に潜り込むしかなさそう。
それでも、新たにわかったことが幾つかある。
まだ氷山の一角にも足りないだろう計画の外枠だけれど。

壮大なまでに馬鹿馬鹿しい、一部の人間による無謀。
エヴァシリーズによる【人類補完計画】
職員に知らされていたよりさらに具体的な内容が描き出した、
未来図は………。

人工的な人類の進化。

誇大妄想狂が悪夢を他人に押し付けるんじゃないと言いたい。
まったくもって、大きなお世話でしょ? 
人間を、馬鹿にしているとしか思えない。
生きることの意味を、他人に決められて誰が嬉しいと思うのだろう。


312:alter ego
06/08/06 04:41:22

間違えて、苦しんで。
傷つけて、後悔して。
ぬか喜びに自己嫌悪を重ねて。

それでも私は、前に進んできた。

私の抱いた傷は、私のもの。
痛みも苦しみも喜びも、私自身が得てきたもの。
傷つける怖さも、失う脆さも、知って、それでも。
私が自分で決めて、自分で進んできた。

安易に誰かに埋めてもらいたいなんて思わない。
自分の価値は、自分で決める。

溶けあえば補われるなんて、簡単なものだなんて思われたくない。

『人』の『生』は、遊びじゃない。
やり直しはきかない。
リセットもなし。
楽しいことばかり連ねて生きられないなんて、誰だって知ってること。

それでも『生きる』の。
それが、『人』だから。

それが、『生きる』ってことだから。

私達は、玩具じゃない。

313:alter ego
06/08/06 04:43:14
 2016年 9月某日

誰と居ても心の奥から寂しさは拭えない。
独りじゃなくなっても、homeに私を迎える明かりが灯っていても。
それでも私は前よりは癒されたのだと思う。
闇の中であがきながら、「復讐」への拘りを捨てられず、人との関わりに怯え、
見せ掛けの友好の裏で高い壁を築いていた頃よりも。

彼らとの関わり合いが、私を変えた。
加持君、シンジ君、アスカ、レイ、リツコ…。
それから、日向君をはじめ、たくさんのネルフのスタッフ達。

残された時間は、僅か。

最後に賭けられるものは、心しかない。
身体など、いつだって脆いものだから。
自己犠牲なんて考えてはいない。
でも、『犠牲』とは本来、生贄の雄牛を指す言葉。
望みを叶えるために捧げる交換の品。

自分の限界を超える分を。
何かを諦めることによって掴むのもまた一つの選択なのだと思う。
差し出すことに怯える気持ちも嘘じゃない。
それでも、それを越えた一歩が、人を救う可能性を生むのだと――
私は、知っているから。

何度も繰り返した言葉を、無意識に唇が、無言のままに綴っているのに気付く。
その時が来たら、私は上手に言えるだろうか? 彼をちゃんと送り出せるだろうか?
今はただ、あの子にこの声が、私の言葉が、優しい音に聞こえることを願う。
これは私が見出した、世界で一番愛しい音。
                         「いってらっしゃい」と、あの子に。

314:alter ego
06/08/06 04:45:29
 2016年 9月某日

――現在第2層Bブロック通過。
810管区より、ベークライトの注入開始。36、25、18%、以上続行。
C-17 にて交戦を確認。…時間が惜しいわ、最短ルートは?
………わかった。アリガト。なんかあったらよろしくね。

ここからプライベートモードで録音。
ミサト・葛城、コード******。
解除モードの変更を登録。
シンジ・碇、コード******の声紋認識に切り替え。
…………まだマギ、動いてるわよね?ちゃんと録ってくれてるといいんだけど。

シンジ君、あなたが、この場所にたどり着くと信じてた。
今はちょっち時間が無いからね、肝心なことだけ言うわ。

シンジ君、『生きなさい』

あなたが好きよ。
私だけじゃない、たくさんの人がそう思ってくれている。
あなたは、ちゃんと、愛された子供。

だから、『生きて』

…どうしてこんなことになったか、時間があったら説明したいんだけど。
ああ、でも、もしかしたら、私にもう聞いてるかもしれないわね。
詳しいことは私のファイルの***-*に入ってるから。
解除キーは*******。
どう使うかはあなたの自由よ。
使わないことをあなたが決めたのなら、それも一つの選択。


315:alter ego
06/08/06 04:46:54
今、状況がかなり厳しいから……ね。
縁起でもないのはわかってるけど、これだけ…聞いて。

最初は、少し不安だった。お互い様だと思うけど。
でも、嫌じゃなかったわ。似てるとこもあったし、
…もちろんそうじゃないところも多いけどね。
そういえばずいぶん喧嘩したりもしたわね。
でも、…でも、家族だと思ってた。ほんとよ。

あなたにあえてよかった。

シンジ君の笑顔が好きよ。
もちろん人間だもの、笑えない日も、悲しい日もあると思う。

でも。

『生きて』

何のためにここにきたのか。

何のためにここにいるのか。

自分で考えて、答えを出すために。

『生きる』ことにしがみついて。
それは、少しもかっこ悪いことじゃない。

シンジ君、愛してるわ。
だからあなたも、自分を愛してあげて。
                     ――――以下音声切断

316:alter ego追補 : 葛城ミサトの独白
06/08/06 04:48:55
私ね、もう、後悔などしない。
誰かに許しを得ようとも思わない。
私は私の生きた軌跡を引き摺って、罪も過ちも全て抱え込んで、
それでも少しはね、前に進んで来られたと思うの。
本音も建前も、綺麗も汚いも全部、…全部が私自身だってこと。

ねぇ、こんなに痛いのに…。
私、まだ、死のうなんて考えてないわ。
私は、生きたい。

『満足して迎える死』なんていうほど、生きてないもの。まだ、若いんだから。
それに、そんな『死』はホントは美しいものじゃないってことも知ってるから。
美しいって言うのはそう、どれだけ自分の人生に対して誠実であったかということの方。
生きてる限り懸命に、自分に対しても、相手に対しても、『命』ってものと向き合うこと。

人は弱いものだから。
何度も何度も、心揺れることがあるのは当たり前だけれど。
それでも過去の出来事を糧にして、前に進もうと力をためる。

自分を嫌いだった過去の私。
今はその『過去の私』も自分自身だと認められる。

見失っていたものもきっと、いつか戻ってくるのね。

自分の言葉を失っても、人の言葉に惑っても。
自分自身のカタチを創り出すのは、最後は「自分自身の心」だけ。

やっと、わかった。だから私ね、もう『生きる』ことを怖がるのはやめたの。

ねぇ、加持君。………わたし、………これで……………
.                                 ~終劇~


317:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/06 04:50:13
alter ego あとがき

一月開始から、およそ七ヶ月に及ぶ連載となりました。
当初からつけていただいた幾つものレスに励まされてここまでこれました。
ありがとうございます。
エヴァを見た人の数だけ、その人なりの『葛城ミサト』が存在すると思います。
それでも、この日記につづられたミサトもまた、少しでも読まれた方の記憶に残れることを願って。

これで『alter ego』は終わりです。どうもありがとうございました。

318:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/06 05:09:52
乙!とっても素敵なミサトさんでしたっ!!

319:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/06 11:53:29
お疲れ様。
今はまだこの話の余韻に浸っています。

320:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/06 13:16:49
とてもとても魅力的なミサトさんでした。
読んでいて、なんども言葉を失いました。

お疲れさま。
いいもの読ませてくれてありがとう。

321:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/06 14:06:17
オッテュ
ありがとうございました

322:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/06 22:29:53
今まで読んだ中で一番心に残る作品でした

323:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/07 20:59:09
FFで泣いたの初めてです(´;ω;`)
職人さん、すてきな作品有り難う。

324:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/08 19:36:51
乙でした!

325:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/08 20:51:01
alter egoさんが書いた作品はこれだけですか?
もし他にもあったら教えてほしいです。
また、今後作品を書く予定はありますか?

326:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/10 00:08:41
もし今後書く予定があるのならば楽しいやつをお願いします。

327:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/11 11:53:47
乙です。切なくて面白かったです
ただ、24話冒頭のリビングでのシンジとアスカの喧嘩は無し…?

328:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/13 01:05:54
GJ

329:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/13 13:50:22
GJ

330:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/14 09:48:08
今度はどんな日記がくるかなあ。楽しみ。

331:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/15 21:31:21
稲荷町

332:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/18 07:55:37
職人さんまち

333:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/18 12:08:51
この前まで書いてた人がすごすぎて書きづらそうだな・・

334:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/20 12:55:01
ミサトさんまち

335:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/23 01:38:47
十日町

336:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/24 21:05:00
この日他に記すべき事なし

337:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/26 01:01:42
稲荷町

338:La vie en rose 
06/08/26 08:03:12
 転任 月 辞令 日 (祝、単身赴任!!…とか言ってもみたいけれど)

日本への転任辞令が出た。
あまりにも急なことで驚いたけれど、残していく家族も恋人もいない悲しい独り身。
上からの命令なのだし、もちろん二つ返事で引き受けた。
転任先は生まれ故郷なのだから言葉に不自由はないし、与えられた地位にだって不満はない。

でも、そのはずなんだけど………。
物足りなさがどこかにある。それは胸の奥の方にすかすかと穴でも開いているような感じ。

…よく考えなくとも、私がドイツに居た期間は長く、
大学卒業してからずっとこの地で生きてきたといっても過言ではない。
友達もたくさん出来たし、懐いてくれた部下も居た。
それから、短い間だけど日系の女の子の面倒みたりなんかもして。
ここ(ドイツ)での暮らしは、ただ思うより充実していたのかもしれない。
だからきっと、こんな風に胸に隙間を感じてしまったりするのかもしれない。

それでたぶん一番の気がかりなのは、私が居なくなった後のあの子のこと。
彼女は、私が担当からはずされてからは直接会うような機会も少なくなってしまったし、
日本行きが決まってからは口も利いてくれない。
それでもほんとうは、寂しがってくれているんじゃないかとも思う。
生意気で、意地っ張りで、強がりで、我侭で、そして………、一人で泣くことのできない子だったから。
お互いの立場の壁を最後まで崩せなかった事を、私は今も悔やんでいる。
私のことなどすぐに忘れてしまってかまわないから、同年代の友達でもつくって元気にしていてくれればいい。

思うことはいろいろ有るけれど、「思い」を引き摺るのは好きじゃない。
日本に着いたら、何か新しい「潤い」でも探さなきゃ。ぼやぼやしてたら大台まですぐ。

でも日本………か。
帰るつもりなんて、なかったんだけどな。

339:La vie en rose 
06/08/26 08:04:40
 住居 月 不定 日 (無事到着は、したけれど)

今日未明。
私が入居予定だったネルフ独身者専用アパートは、…倒壊してしまった。

アパートから1キロ弱離れたところに建設中の迎撃ビルからの誤射だった。
クレーンの一部が何らかの理由によって倒れ、調整中の制御機械を壊したらしい。
被弾は一階部分を少し崩した程度だったのに、当たり所が悪かったのか時間差で完全倒壊に至ったんだって。
避難が間に合ったおかげで死人は出ず、軽傷者のみ若干名。

空港でいくら待っても迎えが来なかったのは、それが理由。
馬鹿みたいに手続きに時間取られたから、迎えの人が帰っちゃったのかと思ってあせったのだけれど。
でも、それがあっさり終わってたら、私もその怪我人の一人だったかもしれないし。
運がいいのか悪いのかわらない。「人生万事塞翁が馬」ということ。

でも、住むとこが、なくなっちゃった。
それはそれで困ったことなんだけれど、もう一つ。

迎えに来てくれたのは、日向君という眼鏡をかけた若い子だった。
私の直属の部下になる予定の子らしいのだけれど。
彼も予定外の事態に困っているのが判ったから、しばらくは仮住まいでもいいかと思い、
「いいホテルあったら知ってる?」と尋ねてみたら、真っ赤になって硬直してしまった。
あまりの初々しさにくらくらする。
下ネタなんか言ったら、失神したりして。
人の良さそうな感じはするけれど頼りなさ過ぎて、ちょっち心配。

追記
仮の宿は、本部の仮眠室に決まった。
早くちゃんとした部屋が欲しいな。


340:La vie en rose 
06/08/26 08:06:51
 友人 月 再会 日 (仮眠室暮らしはなかなか好調、…でもない)

仮眠室を私物化してからまだ三日。なのに……。

「持ち込んだ私物を床に積むな」と怒られたり、
「布面積の少ない服を着て柔軟体操などするな」と怒られたり、
「飲食物を溜め込むな」と怒られたり、
「ペットは不可」と怒られたりしている。

「いいじゃないの、個室なんだから。
 外出するときは、複数のせてる猫バッチリ。
 有能な作戦部長代理『葛城ミサト』を一部の隙なくこなしているでしょう?」

とは思ってるんだけど、言わない。

私を叱るのは古い友人で、赤木リツコという才媛だ。
今も昔も私にあんな風に文句を言ってくれるのは、彼女と、…もう一人だけ。
リツコなんてほんと大学時代から、ぜんぜん変わらない。
わざわざ私の部屋まで見に来ては、ぶちぶちと煩く言う癖が特に。
そして、口煩く言うくせに何度でも来てくれる人も彼女しかいない。
私がどんなに素っ気無くしても。
いい顔しなくても、楽しくできなくても、傍に居てくれる大切な友達。

だから本当に煩いのだけれど、私は彼女が来るのを歓迎している。
だってなんかリツコの小言って、お母さんみたいだ。
そんなことを言ったら彼女はまた怒るのだろうけれど。
でも、言われるのは「面白いから」、理由なんてそれだけのはずなんだけど…。
でも、もうちょっと聞いていたいとも、いつの間にかそんな風に思ってしまっている。

341:La vie en rose 
06/08/26 08:08:51
 類友 月 宿無し 日 (怖いのは、地震、雷、火事、砲弾?)

リツコの住居が焼けた。

火事の火元は不明とのことだが、絶対配電盤事故だと思う。
リツコは必死に否定しているけれど、怪しい。

でもこれで仲良く宿無し同士だ。

…なんて、仮眠室仲間に引き摺り込みたかったが、実はそうも言っていられなくなった。
総務から苦情が来ていると、こっそり日向君に教えてもらったから。
まだ表立って非難されてはいないけれど、そうなってからでは遅い。
部署を完全に掌握していない状態で、少なからず弱みを握られるのはまずい。

とは言っても、住む場所を見つけるのはあまり容易いことでもない。
セキュリティの問題などで主に。
上級職ともなると、本人がよくても周りが許さない。
なのに、独身者用のそれには今「空きがない」ときている。
どうしよう………困ったな。

追記
『独身者用』はない。ならば、『ファミリィ向け』ならあるわけだ。
リツコも宿無し。
これを天の采配と言わずしてどうする?

コンフォート17、…なかなか良さそうなところだった。


342:La vie en rose 
06/08/26 08:12:46
 引越し 月 手伝い 日 (冷蔵庫って、なんだっけ…)

今日は、引越しの手伝いに行った。

リツコの部屋は焼けていなかった。
彼女の言い訳は正当だったわけで、疑って悪かったと思う。
火元はリツコの二階下の部屋で、その階ともう一つ上のフロアは完全に使えなくなったらしい。
火は届かなかったそうだが、リツコのところもかなり焦げ臭くはなっていた。

それで、手伝いとは言っても私に出来ることはそれほどあるわけじゃなく、
やれる事と言ったら要らなくなったものの片付けや、梱包材の詰め込みなんか。
放水のせいで駄目になったものが少し。匂いが移ったせいで使いたくなくなったものが少し。
後はその部屋にあったことすら忘れられていたものを除けば、
それほど新しい部屋に持っていく荷物も残らなかった。
私だってそんなに物持な方ではないけれど、
引越し荷物がダンボール4,5個で全部って言うのは女として少し詫びしいんじゃないかしらね。
「実家に置いてあるのよ」なんて言っていたれど。

片付ける前から、片付いていた部屋。
生活感のなさそうな空間は、同類としての居心地悪さばかりを刺激された。

こんなこと(火事)がなければ、リツコの生活はここでずっと続いていたはずなのに。
………引き摺るものは何もない。明日に続くイメージのわかない部屋。

だってね、冷蔵庫、空っぽなわけよ。何にも入ってないの。
「いつから?」 と尋ねたら、帰ってきた応えは 「忘れた」 の一言。
オレンジの灯りの点いた空間は清潔でやけにさっぱりしてたけど。
私が開けるまで、この冷蔵庫はただ空気を冷やす箱だったというわけ。少し、あきれた。

これからの共同生活、ちょっち不安です。

343:La vie en rose 
06/08/26 08:16:12
 現状惑い 月 先行き不安 日 (…時には真面目に考える)

本部でも開発されている(ドイツでもそうだった!)ロボット…じゃなく、エヴァンゲリオンとか言うもの。
パイロットを恐ろしく選り好みする実用性に全く向かなそうな玩具に、
どうしてああまで夢中になれるのか?

地下に眠る『トップシークレット』の、守護者。
最終秘密兵器。

でも、使い勝手、悪そうだし。
それに、動かなければ意味ないし。

なのに防衛ラインの構築は、全部エヴァ前提って言うのが解せない。
リツコみたいに現実主義で合理性に重きを置く人間が、
それに何の疑問を抱いていないのも不思議。
まぁ、ほんとうはそれ以上に、来るかどうかもわからない「使徒」とやらの対策に、
こんな大金かけているという前提事態がおかしいのか…。

それでご飯食べてる私が言うことじゃないかもしれないけど。

今度、司令の御子息が本部を見学に来る。
リツコは「パイロットの適正があるかも…」などと言葉を濁していたけれど、
そんな都合のいい話があるはずもない。
私が言い付かったのは、その御子息の御案内。

時々、自分は何やってんだろう?って、不安になる。
今してることに意味はあるんだろうか…って。

「使徒」は父の敵。
私はその幻(使徒)と戦うために、ここ(ネルフ)にいる。

344:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/26 08:31:00
いい感じ乙

345:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/26 14:32:04
オッテュ

346:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/27 04:21:14
GJ

347:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/27 21:39:32


348:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/28 02:16:29
おつ

349:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/28 02:58:08
お、何か始まってる。乙です。期待してます。

350:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/30 01:22:48
gj

351:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/31 08:53:22
この日他に記すべき事なし

352:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/02 03:15:12
ミサトさんまち

353:La vie en rose 
06/09/03 21:27:02
同居記念 月 酒宴 日 (人生色々、男の趣味は蓼食う虫~) その一

二人の仕事の都合があわなくて、延期していた同居祝いの宴会をやっと開催。
伸びた理由は私もリツコも程よく飲めるほうなので、翌日が休みじゃないと楽しくないから。
どうにか予定を繰り合わせ、半休が勝ち取れて、今日に決まった。

ディナーは、外食好きではないリツコの紹介の店にしては驚くほど上出来な味の店だった。
当然の二次会は外でハシゴしてもよかったけれど、まだ開けていないドイツ土産のワインを思い出した。
それで、入居祝いでもあることだし、本格的に飲むのは部屋に帰ってきてからということになった。

ワインを飲み干し、引っ越し祝いに買った日本酒も空け、エビチュで肴を少し減らして、
〆にと出されたリツコの秘蔵の焼酎で何度めかの乾杯をした後くらいの頃だったと思う。
いいかげん酔っ払ったリツコが、一升瓶相手に愚痴をこぼし始めたのは。
その時はまだ、私はもう少し飲めるかなという感じで、
今回は珍しく彼女が先に酔ったんだなと、ぼんやり見ていた。

リツコはどちらかというと物事には冷静に対処するし、派手な感情表現も好まないようだけれど、
でも本当はかなりの激情家だということを私は知っている。
普段は理性が勝ちすぎてるからか平坦で、怒りなんかは遅れてやってくると言うか…。
(………単に鈍いだけ、とも言えるかも。)
それで、やはりお酒が理性の箍を外すのは万人共通なのも事実で、
リツコも日常抑えている分、余計に酔っ払うと色々と正直になってしまうことがある。
勿論私もそうだし、迷惑の度合いは三七でこちらの分が悪いので文句を言うつもりはないけれど。

ただとても重要なのは、私は【酔ってした事】を忘れないが、【彼女】は【忘れる】ということだ。

飲んで騒いだ挙句、迷惑かけた事実を綺麗さっぱりデリートしてくれちゃうので、
私ばっかり迷惑かけてることになってしまう。…でもそれは、偶にの事だからもう諦めてもいる。
それに今日は自分の家で飲んでいるわけだし、そんなに困ったことにはならないという計算もあった。


354:La vie en rose 
06/09/03 21:28:24
同居記念 月 酒宴 日 (人生色々、男の趣味は蓼食う虫~) その二

上記のことを前提に、だからしばらくリツコの一人芝居を見ていた。(放置していたとも言う)
人生相談が恋愛相談になって、その相手も酒瓶、箸袋、柿の種と転々とした後、
さらに私に替わって………。


――まさか、泣くとは思わなかった――


「好きなのに…」と言った。

「身代わり」だとも。

「役に立つから…、利用されてるだけ」………。

「捨てられたら…」と縋りつかれたときは、相手の男を絶対一発殴ろうと決めた、…けど。

 「…………ゲンドウさん…」って、リツコ?

私が加持とくっついた時、散々男の趣味が悪いといった人は誰でなく、この人だ。
あんな悪人面のおっさんのどこが好いのか、私にはさっぱり分からない。
性格もアレだし(陰謀とか好きそう、ストーカー気質も有りと見た)、
歳だって(まだ現役なの?って感じ)随分上だし。

私の酔いはその名前を聞いた時点で一発で醒めて、思わずリツコを問い詰めてしまった。
でも、酔った人間を揺さ振ったら、さらに酔いが回ると気付いたときには少し遅くて。
赤ちゃんみたいにムニムニ言っているリツコから聞き出せたのは単語だけだった。

「子供」、「不器用」、「…ダル」、「かあさん」?

355:La vie en rose 
06/09/03 21:30:01
同居記念 月 酒宴 日 (人生色々、男の趣味は蓼食う虫~) その三

リツコの言葉の断片から推測し総括すると、【碇ゲンドウ】という人は、

子供っぽくて、 不器用で、
ダルに似ていて、(ダルは正式名【だるま】、リツコが昔飼っていた、
.          すごく不細工かつふてぶてしさ300%だった雄猫。
.          リツコは可愛いと言っていたが、絶対間違っている)
それに、リツコの母にも似ている(は変か?)…………………………人。

…私は、リツコはもっと良い人を好きになるのかと思っていた。
こっそり彼女を「隠れロマンチスト」と呼んでたくらい、リツコにはどこか乙女なとこがあったから。
物語に出てくる王子様のような、そんな人を好きになるんじゃないかと思っていた。
てっきりリツコが晩生なのは、理想が高いからだと…。

でも現実は、アイツが言ったとおり………。

「リッちゃんみたいなのは、悪い男に引っかかりそうだな」

あの馬鹿の予言が現実になるなんて、なんてリツコのお母さんにお詫びすればいいのか…。
「これからもリツコのことよろしくね」と、就職祝いも下さったのに…。
お葬式のときも、ちょっちやばい作戦が展開中で帰国できなかったっていうのに…。

もう遅いのかもしれないが、でもまだ間に合うかもしれない。
リツコが幸せになれるように勤めるのは、友達として当たり前のことではないだろうか。
同居人は家族も同然で、それが不幸になるのを見過ごすなんて普通はしないはず。

リツコはだから絶対幸せにならなくちゃいけない。

だって、同居祝いの乾杯を12回もして、………………私の家族になったんだから。


356:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/03 23:28:31


357:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/04 23:51:15
gj

358:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/05 01:14:34
オッテュ

359:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/05 10:23:25
GJ

360:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/07 00:17:45
保守

361:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/08 06:38:16
しみじみしますね

362:La vie en rose 
06/09/09 19:58:48
二日酔 月 遭遇 日 (赤い瞳の不思議ちゃん) その一

…やはり朝起きたらリツコは昨日のことを忘れていた。
彼女は、「よくもこんなに飲んだわね」なんて、他人事のように言う。
半分確実に飲み干したのは、リツコなのに。

しかしその半分の酒量でも若い頃とは違うのか、
自分ではそんなに飲んでいないと思うのに頭が痛かった。
太陽も、ちょっち黄色っぽく見えた。
それで、リツコに「頭が痛い」と言うと、彼女は二日酔の薬を出してくれるよう医局に電話を入れてくれた。
貰った頭痛薬は良く効いたので、視察ついでに医局を廻ることにする。
その医院には、本部で長くテストパイロットとして勤めている少女も入院していると聞いていたから。

本部所属のパイロット、名前は【綾波 レイ】
年齢は、ドイツのあの子と同じ14歳。
書類記載のプロフィールには、これと言った特徴は無し。
しいて言えば、食糧事情は悪くないネルフに居て、やや痩せ気味。

歩き回る必要も無く、発見したレイの部屋は西向きの窓の広い個室だった。
胸部骨折、その他打撲などで包帯ぐるぐる巻き状態だったが、
意識ははっきりしているようだったので声をかけた。
上司として赴任することを告げ挨拶すると、マニュアルのような返答が返ってくる。
白に近い髪質に、白い包帯、白い肌。真っ赤な目だけが酷く目を引く。
その目で、小さな子供のように逸らされることなくじっと見つめられると些か戸惑う。
少し神経質そうにも見える。あるいは繊細そう、か?
もう一人と比べると、極端に表情を削り落としたような対応が板についていた。

ただ、ぶつ切りの応答では、会話なんて続かない。

363:La vie en rose 
06/09/09 20:00:00
二日酔 月 遭遇 日 (赤い瞳の不思議ちゃん) その二

状態を聞いても「問題ありません」 
気分を聞いても「問題ありません」

(……あの子だったら「退屈!」とか何とか言うんじゃないかと思う。)

痛いはずなのに「痛くありません」とも言う。
不思議な子だ。痛覚がないわけでもないだろうに。

少し壊れているのかもしれない。

べつに「痛い」と言ったからといって、何が変わるわけでもないが。
(ドイツのパイロットも感情を見せるのを良しとしなかった。あっちは分かりやすかったけれど。)
こっちの「不思議ちゃん」は、無表情に年季が入りすぎている。
感情を消したポーカーフェイスがうまいうまい。…まるでそれが、真実のように。

どこかしら体が痛いって言うのはいいことじゃない。痛みに気をとられては判断が鈍る。
それでも、鼓動の変わりに痛みが脈打っている様なのも悪いばかりとは言えない。
【痛み】は【生きている】ことを突きつけるから。
(手も足もついてて、体に穴が開いているなんてことも無い時に限っては…だけど)

【痛み】は最も【本能】に近い。それを無視しようとするのは良くない兆候だ。
                                 (…経験者として)
彼女は稀少なパイロットで。
使い捨てには出来ない兵士。

…………まだ若いこの少女は、どんな軌跡を辿って大人になるのか。

私と同じように? それとも、全く違う道を選んで…?

364:La vie en rose 
06/09/09 20:01:52
二又 月 誘惑推進 日 (子猫襲来?)

朝から司令観察に勤しむ。
私の視線に反応するように警告の殺気がとんでくる。敏感だ。
有刺鉄線のように棘々だ。 ………嫌ーね、心の狭いオヤジって。
時機を見て、撤退する。

その後、他に目ぼしい男は居ないかとリツコの部署もついでに見まわす。
皆さん頭は良さそうだけど、業が深そう。何か憑いてますよ…って、感じ。
すぐに、撤収する。

うちの部下では話が合わないだろうし、外部業者じゃスパイがやばい。
そんなこんなを色々考えながら仕事をしていたからか、今日は時間が驚くほど早く進んだ。
それで、夕刻。夜ご飯の話でもしようかとリツコのとこに行こうとして、彼女に捕まった。
…目の大きな(童顔)オペレーターに。

「………先輩と同棲してるって本当ですか?」

深刻な顔をして通路を塞ぎ、決意を固めた後は掴みかからんばかりに激しい……でも、
…子猫ちゃんだ。どう見ても、…子猫ちゃんだった。
なんだかんだと一生懸命言っていたが(聞き流した)、恫喝にはほど遠かった。
誰だって、子猫が多少怒って尻尾膨らませたところで怖がるのは難しいと思う。

それでも彼女は、本日初めてリツコの相手として浮上してきた対抗馬だった。
小猫 or オヤジ この選択肢の無さは辛い。(マニアックだ。私だったらどちらも嫌。)
でも、思いつめやすいリツコをこのまま一点集中させておくのは危険極まりない。

だから、あの【伊吹さん】を応援することを(仮)決定とする。
恋愛までいかなくてもいいからリツコの気を少しでも逸らせるように、
情報は流してあげるから頑張って誘惑してみてちょーだい、ってことだ。

365:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/09 20:21:16


366:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/10 02:39:47
GJ

367:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/10 03:14:59
オッテュ

368:La vie en rose 
06/09/10 21:06:53
千客 月 万来 日 (招かれしもの、招かれざるもの) その一

怒涛の一日は、迷子探しで始まった。
碇シンジ君到着予定時刻、本人は行方不明。代わりに使徒襲来。

某リツコの(秘密の)恋人に、似ているようで全く似てない 碇シンジ 君。
どうも父親より可愛げがある分、差っ引かれた能力があるようで、危機管理能力に疑い大。
何もこんなときに来なくてもいいのにという使徒襲来の只中、あっちへうろうろこっちへうろうろ。
見知らぬ人間を向かいに遣らせて(誘拐疑惑等に)下手な時間はかけられなかった。
仕方なく私が行けば、その迷子探しに空けた僅かなタイムラグに軍にN2なんか撃たれる始末。

無事発見後、彼(シンジ君)との会話で何も聞かされてなかったことが判ったけれど。
何であんな大事大事に過保護に育てたんだろう?と首を傾げたくなるほど、
本当に司令の子かと疑っちゃうほど、恐ろしく普通な、飢えた印象のない子供だった。
あんな人間性ギリギリ親父の息子なんだから、もっと殺伐としているかと思ったのに。

彼は、「命の危険」にもほとんど反応しない。

多かれ少なかれ誘拐の危険や、大人達の思惑に巻き込まれたり等、
地位ある身内を持っていればその手の能力は開発されるのではないだろうか。
私だって、崩壊寸前の家庭+父は家庭を顧みたりしない人だったけれど、
厄介ごとに巻き込まれたりしないだけの用心深さは幼い頃からの経験で身につけた。
大切に隠してしまいこんで囲ってたってどこかから情報なんてのは漏れるものだし。

それでも、あの「甘々」なのか?

エヴァに乗ってくれた理由が、「女の子(レイ)を守るため」っていうのは、ある意味凄かった。
(その辺は父親似なのかも。
 ロマンチストな女の子(例えばリツコ)だったら、恋に落ちそうなシチュだ)
私も唆した自覚は有るけど、でも、よく乗ってくれたと思う。……あんな怪しいものに。


369:La vie en rose 
06/09/10 21:07:50
 千客 月 万来 日 (招かれしもの、招かれざるもの) その二

私は全くもって善人じゃないから、初対面の子供を乗せて傾くような天秤の持ち合わせはない。
彼一人の犠牲で助かるなら、その選択は私の仕事だとも思っている。
誰の息子か…というのは、躊躇いがないかと言われればそれは有るに決まっているが。
ただそれに拘って大局を逃したら、失うものは贖いようなどない多くの命なのだ。
作戦司令部、戦闘担当部署を受け持つこと。
「命」を軽く見るのではなく、その対価を計算するのが私の責務だ。
戦場に立っていれば、一般人や大人子供の差なんて誰も気にしてはくれない。
等しく唯一つの「命」を懸けるしかない。それは、私も同じこと。

そして、この地(第三東京市)は、【使徒】が来た瞬間から【戦場】となった。

彼が生き残こる確率は、とても低かった。
長年エヴァに従事してきたテストパイロットの【レイ】、
又は、弐号機パイロットでさえ戦力として使うには不確定要素は取り払えなかっただろう。

理論上可能なA・Tフィールドの中和装置としての役割が、私があの時エヴァに求めた全てだった。
倒れようが這いずろうが、あの「使徒」のフィールド中和距離で起動していてくれればいいと思っていた。
フィールドを崩しさえすれば、攻撃は有効になる。

だから私は選んだ。
彼【碇 シンジ】を、【生贄の子羊】として。


    けれど、そこで見せ付けられたのは、【エヴァ】という【力】



370:La vie en rose 
06/09/10 21:09:00
 千客 月 万来 日 (招かれしもの、招かれざるもの) その三

動かないはずの機体が動いたという僥倖。
オーナインシステムとの一致という奇跡。
すでに二つ奇跡は起きていた。

もしこれ以上に幸運が重なるとしたら、それは何から齎されるものなのか。

理論上でしかなかった【戦力】としての【エヴァの威力】

エヴァを見ていると、私たちが手を引いて連れ出したのは悪魔なのかもしれないとさえ思わされる。
使徒の異相よりも嫌悪を感じたのは、エヴァの暴走に対してだった。

【人に似て、人に異なるもの】………エヴァ。

けれど、私たちは勝つことを選択した。種として生き続けることを。
人という生き物の救い難さは、歴史的事実だ。
手を貸してくれたのが悪魔でも、それでもいいと思うエゴはこの胸に宿る。
ありがとう。私の大切なものを守ってくれて、と。

そして、【碇 シンジ】君にも感謝を。

あの少年は生き残った。
私が、彼に負った、莫大な負債。
何も知らない彼を【代価】に差し出したこと。
誰が知らなくても、私自身は知っている。そして忘れることもない。

――償いはするつもり。この先、彼に伝えることなくとも。


371:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/10 21:54:23


372:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/10 23:23:28
日記はこういうほうが、ミサトさんらしいね

373:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/11 00:16:30
オッテュ

374:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/12 14:06:38
GJ

375:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/15 07:36:11
gj

376:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/17 07:55:39
「この日、他に記すべき事無し」

377:La vie en rose 
06/09/17 20:12:46
弱点 月 決断 日 (新人さんいらっしゃい) その一

「やられた」と、思うことがある。
計算しない何気ない一言や、他者の目を気にしていないさりげない振る舞いに。
そんなときは素直に白旗を揚げるに限る。
心残りを引き摺ってたら人生楽しめないし、…潔く死ねなくなるから。

それで…、例えば、意外に見えるかもしれないが、私は一生懸命で痛々しいものとか、
的外れなところでけな気に振舞う生き物にとても弱いという弱点がある。

現在、私の家族の一員でもあるペンペン(鳥)との出会いもまさしくそこを突かれた、そんな感じだった。

―ある研究施設で、私はあの温泉ペンギンとであった。

研究として行き詰ったのか、それとも単にいらなくなっただけか。
あまり掃除もされてなさそうな観察用の部屋の片隅に、ペンペンは居た。

皮膚がかさかさして、所々禿げた、黒い雑巾みたいな鳥………それが第一印象だった。

ガラス窓のこちらから覗いてる私に気がついて、よたよた寄って来た彼が触れたのはキーボード。
幼児ほどの知能がある彼にはそういう教育がなされていたらしい。
こちらをちらりと見ると、頼りない手(羽)つきで、文字を打ちだした。

小首をかしげるように頭を傾けると皺が目立った。それは、酷く痩せているから。
いつか見た写真の中のペンギン達は、ころころとラグビーボールのようだったのに。

それでも、もし、彼の打った文字がアレで無かったら、
例えば、「エサ」や「ミズ」といった要求の文字だったら、

………私は、彼を引き取ろうなどとは思わなかっただろう。

378:La vie en rose 
06/09/17 20:14:00
弱点 月 決断 日 (新人さんいらっしゃい) その二

自分のこととて満足に構えないときもある日常に、手間のかかる生き物なんていらない。
動物園の檻を眺めるように、ペットショップを素通りするように、
「可哀想ね」と一瞬は思っても、すぐに忘れていたはずだ。

彼が、
ペンペンが、
         「こんにちは」   なんて打たなければ。


「エサ」も「ミズ」も理解している生き物が、ボロボロの姿で投げかけてきたもの。
やせっぽっちの飢えたペンギンが、求めたもの。

理解した瞬間、「欲しい」と思ってしまった。「絶対この子を手に入れよう」と。
それから、ずっと、ペンペンはうちに居る。


何が言いたいかというと、私にはツボがあるということだ。
「どうしても~したくなっちゃうツボ」ってやつが。

それで、それにはまっちゃったわけだ。 ………彼、【碇 シンジ】君が。

だってさ、病院で、私の顔見ての第一声が、
 「…父さんは?」 なんて言うんだもの、あの子は。

あんな酷い目にあって、生きるか死ぬか分からない状態に追い込まれて、
それで目が覚めてどうしてあの親父なのよ?
私に向かってだって、恨み言の一つもあるんじゃないかって思うのが普通でしょ?
そう思うからこそ、何を言われようと受け止める、そんな覚悟をしていったのに。



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