霧島マナの日記at EVA
霧島マナの日記 - 暇つぶし2ch283:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/11 23:15:51
○月某日

あれから一ヶ月。
私はすっかり回復した。これが若さというものかしら♪
ひとまずミサトさんのマンションに戻ってきたんだけど、迷ってるのがこれからの身の処し方。
いつまでもミサトさんの厄介になるのも気が引けるし、かといって
親無しの身で戦自の職も失った今、一人で生きていくことができるかどうか。
そうやって考えを巡らしていたところ、
「ね、マナちゃん」
ミサトさんが声をかけてくれた。
「これからのことなんだけど……。ずっとウチに居てもらってもいいのよ」
「そう言っていただけると、すごくうれしいんですけど、これ以上ご迷惑おかけするわけには……」
「やぁーねー、迷惑なわけないじゃない」
「でも、金銭的なこととか……」
「だいじょーぶ。ネルフから退職金たっぷりもらったから」

私も、本音はこれからもここでシンジやアスカたちと暮らしていきたい。
でも、ミサトさんもいずれお嫁に行かなくちゃいけないだろうし、
私たちみたいなコブ付きで本当に大丈夫なんだろうか。ちょっと心配。
同時に、彼女もやはり孤独を恐れているのではないか、とも感じた。
「もう少し考えてみます……」
とりあえず、そう答えておいた。

284:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/11 23:18:11
「ねぇ、アスカはどうするの?」
シンジが尋ねる。
「あたし?あたしはもうしばらくミサトのところにご厄介になるわよ」
「へぇ、ちょっと意外だな。アスカのことだからすぐドイツに帰っちゃうのかと思ったよ。
 もしかして、日本のことが結構気に入ったの?」
「まーね。日本のゲームって割と面白いのよ。洋ゲーにはない味があるわ」
「洋ゲーって、アスカ、ドイツ人でしょ。すっかり日本のゲーマーだね」
ゲームがどうのと言ってるけど、本当はシンジと別れたくないのに違いないわ。
アスカは好きだけど、ちょっとライバル心が頭をもたげる。
「あたしが居なくなったら、ペンペンが寂しがるし」
「それに……、お義母さんとしっくりいかなくて、ね」
その言葉でちょっと場の雰囲気が湿っぽくなる。

「ま、そんなことはどうでもいいっか。ね、ミサト、いいでしょ? お金ならあっちから送ってもらうわ」
「もちろん、OKよ。で、シンジ君は?」
「ぼくは………」
「父さんが、一緒に暮らさないかって言ってるんです」

「えっ?」

285:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/11 23:20:17
あの髭を生やしたこわーい顔のお父さんがそんなこと言ったとは。
でも、考えてみると肉親と暮らすのが一番いいのかもしれない。私にはもういない、血を分けた家族……。
「どうしようか、迷ってるんだ。あの父さんとうまくやっていけるかどうか……」
「迷うことないじゃない。お父さんと暮らしなさいよ」
私は心とは裏腹にそう言った。本当はこれからもシンジと暮らしたいんだけど。
「マナの言うとおりよ。ってか、この家はあたしとマナでいっぱいいっぱいよ。
 さっさと出て行って欲しいもんだわ」
アスカも、とても素直じゃない言い方で促す。

「そうだよね。うん、決めた。ぼく、父さんと暮らすよ」

286:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/11 23:22:20
○月翌日

結局、私はアスカとミサトさん宅に居候、シンジはミサトさんのマンションを出て、
彼のお父さんと暮らすことになった。
そうそう、綾波さんは、今まで通りマンションで一人暮らし。
遠い親戚が仕送りをしてくれるのでお金の心配はないらしい。
よく分からないけど、彼女は三人姉妹の末っ子だそうだ。やっぱり、ご両親は亡くなったのかな……。

ミサトさんはネルフを退職後、国連軍事参謀委員会・日本代表の副官に就任した。
さすが、できる女は違うわね。
できる女と言えば、リツコさん。
NERVは解体され、軍事部門は消滅、研究部門はMAGENとして再編されたんだけど、
そのMAGENの所長としてリツコさんが抜擢されたそうだ。
そして、さらに驚くべきことに副所長は碇ゲンドウ氏、つまりシンジのお父さんなんだって。
かつての部下であるリツコさんの下で働くことになったわけだけど、
シンジの話ではお父さんは別に気にする風でもないらしい。
ま、もともとポーカーフェイスだしね、あの人。

こうして、私たちの新しい生活が始まった。シンジが引っ越して行っちゃったのは寂しいけど、
彼にとってお父さんとの和解がすごく大切なことだと思うから……。
それに、毎日学校で会えるしね♪
って、今は夏休み、当分会えないかもしれない。とほほ。

287:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/11 23:24:36
夏月盛日

山岸マユミちゃんは私が入院している間にアメリカに引っ越して行ってしまった。
せっかく仲良くなれそうだったのに残念。他にも、ネルフ解体に伴って親が転勤になった等の理由で
何人かのクラスメートが去っていったみたい。

それから、あのエヴァンゲリオン初号機と弐号機。あれは戦自が専用長距離輸送機ごと接収して、
三沢基地に持って行ったらしい。「研究目的」、だそうだ。
アスカが、あの弐号機はあたしのなのにと悔しがっていた。
でも、あんなもの、パイロット無しでどうするつもりかしら。
第一、「使徒」が居なくなったこの世界でエヴァンゲリオンなんて無用の長物のはずなのに。
でも、こんなこと私が気にしても仕方ないわね。

288:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/11 23:26:12
夏月15日

お盆。
ミサトさんは国連軍事参謀委員会・日本代表の副官とは言っても、
目立った軍事紛争の無い今、「別命あるまで待機」とのことで、案外暇らしい。
と、いうわけで家の中でゴロゴロしている私たち三人娘………。

「うん、じゃ、夕方6時、鳥居の前でねっ」
さっきから、アスカは寝っ転がったままあちこちに電話をかけている。
「アスカ、どっか出かけるの?」
「何言ってるのよ、あなたも一緒に来るのよ、マナ」
「どこへ?」
「夏祭りへよ。お盆と言えば、盆踊りでしょ。マナ、浴衣持ってる?」
「へ、? 持ってないよ」
「そっか。あたしも持ってないから、今から一緒に買いに行きましょ」
さすが、アスカ。行動力のある子だわ。それに、お盆と言えば盆踊り、って。
来日して日が浅いのに、一体どこでそんな知識仕入れてきたのやら。
「いいけど、私、着付けできないよ?」
「ミサトがいるじゃない」
「あたしもできないよ~」
元気よく答えるミサトさん。
「困ったわね。そうだ、試着してそのまま着て行っちゃえばいいのよ」
なるほど。

289:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/11 23:28:02
「ねぇ、誰が来るの?」
「ん?誰に声かけたかってこと? えっとね、ヒカリとシンジとファースト。
 それと、おまけで鈴原と相田も呼んじゃった」
ちゃんと綾波さんを呼んだのは感心感心。仲悪いのにね。

計画通り浴衣を買って着せてもらい、そのまま街をぶらついて、夕方、待ち合わせ場所へ向かった。
「ここでいいんだよね?」
「ええ、じきみんな来るはずよ」
アスカの言葉どおり、参道の入り口で待っていると、まずヒカリちゃんが来た。
「ひさしぶりね」
「うん、おひさしぶり」
挨拶をかわしているうちに、鈴原君や相田君も来た。
「よっ。シンジはもう来よったんか?」
「ううん。まだ」
「なんや、女待たせてしょーがないやっちゃな」
と言いながら、二人は勝手に屋台の方へ向かった。やっぱり女の子に囲まれると恥ずかしいのかな。

「遅いっ」
シンジと綾波さんがなかなか来ないのでしびれを切らすアスカ。いやーな予感がする……。


290:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/11 23:29:32
「ごめん、遅くなって」
「…………………………」
予感的中、シンジと綾波さんは一緒に来た。
「なんで、あなたたちが一緒にくるのよ」
ご機嫌ナナメのアスカ。と、私。
「綾波が浴衣の着方分からないって言うからさ、リツコさんに聞きに行ったんだよ」
「ふーん、それでアンタが着せてあげたわけ?」
「そ、そんなわけないだろっ。からかわないでよ、もう」
リツコさん……、少し意外。なんだかリツコさんって怖そうな印象のある人だけど。
それに、かつてネルフで一緒に働いた仲とはいえ、
現在、綾波さんとどういう接点があるのかもよく分からない。
「まあ、まあ、いいじゃない、アスカ。さ、屋台を見て回ろうよ」
ヒカリちゃんは、形ばかり取りなすと、人混みに消えていった。ははーん、鈴原君ね。

結局、シンジとアスカと綾波さん、そして私の4人で夜店を回った。
アスカがぐいぐいシンジを引っ張っていってしまうので、自然、私と綾波さんが一緒になる。
「その浴衣、素敵ね」
「………ありがとう。あなたのも素敵だわ」
「あの、少し息苦しそうだけど大丈夫?」
「ええ、人混みが苦手なの。ごめんなさい、ちょっとあっちで休んでくるわ」
と言って、人気のない方へずんずん行ってしまう。
「待ってよ、綾波さん」
心配になってついて行く。ガラの悪い人にからまれたらどうするつもり?

291:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/11 23:30:51
「少し帯をゆるめたらどうかな」
綾波さんがあまり苦しそうなので、少しだけ帯をゆるめてあげる。
思えば私もいらぬ世話をしてしまったものだわ………。

突然、雷鳴がとどろき、にわか雨が降り出した。それはもう土砂降り。
キャー、ワーとみんな軒下や木陰に走る。中には傘を差す用意のいい人もいる。
わたしも急いで木の枝の生い茂っているところを見つけ、その下に入ったのであまり濡れずにすんだ。
と、綾波さんの方を振り返ると、びしょ濡れになっている。要領の悪い子……。
雨はあっというまに止み、人々は何事もなかったかのように歩き出す。

「すごい雨だったね。マナ、綾波、濡れなかった?」
間の悪いことに、シンジがあたし達を心配してこっちへやってくる。
「………………!」
綾波さんを間近で見て、急に黙り込むシンジ。薄暗いけど赤くなっているのが分かる。
綾波さんは………濡れそぼり、浴衣の裾をしどけなく乱れさせている。
もう、色っぽいにも程があるよ、綾波さん。そんなの反則!!

案の定、シンジは彼女を気遣い、もう帰ろうと言い出した。
仕方がない。帰るとしますか。
アスカは家に帰って床につくまでずーっとぶーたれていた。
私はもっと重症で、すっかり凹んでしまった。

292:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/11 23:31:48
夏月Σ日

綾波さんは、あんなに濡れて風邪をひかなかったかしら。つい心配になって電話してみる。
「………はい、綾波です」
「えっと、霧島です。綾波さん、もしかして具合悪い?」
「ええ。ちょっとね。でも大丈夫だから……」
弱々しい声。言葉とは逆に、本当に具合悪そう。
「待ってて。すぐ行くから」
「…………………………」
彼女は、別段断る様子もない。
「じゃ、着くまで寝てて。ね」
私はそう言って電話を切ると、綾波さんのマンションへ向かった。
途中で氷嚢と風邪薬を買う。場所は、昨日送っていったので分かっている。

293:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/11 23:33:48
「入るわよ」
鍵を開けておいてくれたようなので勝手に入った。
部屋の様子に愕然とする。
打ちっ放しのコンクリートの壁、汚れた床、粗末なベッド。
とても失礼だけど、殺風景としか言いようがない。

「大丈夫?」
おそるおそる声をかけながら、洗面台でタオルを濡らし、絞る。
彼女はベッドの上で苦しそうな息をしていた。
タオルで顔を拭いてあげる。そして、冷蔵庫から氷を出し、
氷嚢に入れて綾波さんに手渡す。
「それで、額や腋の下を冷やしてね」
「ありがとう…………」
「それじゃ、お粥作るから、お米ある?」
「うちにはお米も鍋も炊飯器もないわ」
「困ったな……。じゃ、コンビニで買ってくるわ。なにがいい?」
「アイスクリーム………」
「オッケー。じゃアイスクリームとインスタントのリゾットを買ってくるね」
「うん…………」

戻ってきて、アイスクリームを一緒に食べ、薬と水を枕元に置いてあげた。
さて、そろそろ帰ろう。
「リゾットはチンして食べてね。お薬、ここに置いておくからね」
「うん…………」
「それじゃ、お大事にね」
そう言って玄関を出ながら、思い出した。
シンジもこの部屋に来たことがあるらしく、殺風景なので驚いたと聞いたことがあるのを。
そのときは、シンジが綾波さんの話をするだけで腹が立ってきてよく聞いてなかったけど。
乙女の部屋がこれじゃあんまりよね。今度、お花でも持ってきて飾ってあげよう。

294:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/11 23:35:05
夏月Τ日

シンジとアスカがなにやら言い合っている。
「ね、決まり。ちゃんとお父さんにミサトんちに泊まるって言っておきなさいよ」
「もう、勝手に決めないでよ」
「せっかく呼んでやってるんだから、黙って来りゃいいのよ」
「なんだよ、それ…。なんでだよぅ」
「だから、久しぶりにあんたの手料理が食べたくなったって言ってるでしょ。
 ペンペンもあんたに会いたがってるわよ」
なるほど。シンジに泊まりに来いって言ってるのね。アスカ、ナイス!と心の中で叫ぶ。
それにしても、ペンペンまでダシにつかうとは。
「いいわね。明日は夕食を作りにくること。以上、決まり」
「しょうがないなぁ」
いつものように、シンジが折れる。ちょっと頼りない………。
でも、やっぱりシンジが来てくれると思うとうれしい。思わずニヤついていると、
"Der Wülfel ist gefallen."
アスカがドイツ語でなにやら呟くのが聞こえた。

295:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/11 23:36:19
夏月翌日

「オーッス、シンちゃん、ひさしぶり」
約束どおり、シンジが来て夕食を作ってくれた。いつぞやの思い出料理、ギョーザ。
ミサトさんと私、そしてアスカで大喜びして食べる。

夜。みんなで花火を見に行く。シンジ、私、アスカ、そしてもちろん綾波さんも。
アスカが行楽を計画するときは必ず綾波さんも呼ぶことに決めているようだ。
たぶん、抜け駆けしたと思われたくないからかな。
あるいは綾波さんに勝つ絶対の自信があるのかもしれない。
いずれにしても、プライドの高いアスカらしい。
でも、私だって負けるわけにはいかないんだから。
この前買った浴衣を着ていく。着付けは、本を買ってきてアスカと猛練習の末、マスターした。

296:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/11 23:37:50
川縁の土手に左からアスカ、シンジ、私、綾波さんの順で陣取る。ようし、シンジの隣ゲット。
綾波さんごめんね、と右の方を向いた途端、パッと煌めく花火の光に彼女の顔が照らされる。

あまりの美しさに、思わず息を呑んでしまった。

そして、またもやちょっぴり落ち込む。彼女は神々しいまでに「美しい」のに比べて、
私はどんなに頑張ってもせいぜい「かわいい」のレベルだもんね。

「どうしたの、霧島さん。」
「えっ?」
「なんだか元気がないみたい。大丈夫?」
「ううん、なんでもないの。心配してくれてありがと」
「………………………」
「………………………」
「あなた、ギョーザ食べたでしょ」
「えっ? うん。食べたけど。分かる?」
「ええ。……ふふっ」
綾波さんがなんとも言えない表情で微笑む。
「もうっ、いじわる」

「この前はありがとう」
「えっと、なんだっけ?」
「看病しに来てくれて」
「ああ、あれね。どういたしまして」

綾波さんの美貌はちょっと罪作りだけど、綾波さん本人には罪はないもんね。
私は妙に納得した。

297:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/11 23:39:17
綾波さんとは途中でお別れ。シンジは今晩うちに泊まるわけだから、当然一緒に帰宅する。
帰ってくるなり、アスカが、
「汗かいちゃった。お風呂入りたーい」
とのたまう。
「どうぞ。でも、こういうときは殿方から先に入れるものよ」
とミサトさん。シンジが先に入ることになった。
アスカは日本の馬鹿馬鹿しい風習とかなんとかぶつぶつ言っている。
ところが、シンジは風呂場へ行ったかと思ったらすぐに戻ってきた。
「お風呂、水じゃないですか。」
「あ、ごめーん。沸かすの忘れてた」
「そ、それに………」
「それに?」
「いや、なんでもないです………」
シンジ、顔が赤い。
「あ、ごめーん。あたし達の下着も干しっぱなしだったわ」
「大中小のブラが並んでるの見て興奮してたんだ。いやらし~」
アスカがからかう。
もうシンジったら、大中小のブラが並んでるのを見て……
って、「小」が私?………orz.

298:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/11 23:40:36
不月吉日

今日も街に繰り出してショッピングやら、食事やら。
ただし、綾波さんは「暑い」と言って来なかったので、私とアスカとシンジの三人のみ。

交差点で信号待ちしていると、突然となりのシンジがガクガクと震えだした。
何!? 日射病?
数秒後、何と、アスカまで慄然として道路の向こうを見ている。
二人ともどうしちゃったの?
信号が青になるやいなやシンジは飛び出していき、向こう側の歩道にいる男の子に大声で呼びかけた。

「カヲル君!!」
「誰だい?君は」
カヲルと呼ばれた少年は青い髪に赤い瞳(近寄ってみると分かった)、
そう、綾波さんと似た風貌だった。
ただ、綾波さんに比べてなにか冷たい感じがする、私にはそう見えた。
「僕のことを忘れたの?シンジだよ。碇シンジだよ!」
シンジの顔がひどく青ざめている。
「あんた、シンジに殺されたんじゃなかったの」
アスカがギクリとするようなことを言う。
「ああ。ごめんよ。覚えていないんだ。僕は二人目だから」
シンジの目に衝撃が走る。
「なにわけわかんないこと言ってんのよ!」
「いや、アスカ。いいんだ。」
シンジは、今にもカヲルという人につかみかかりそうなアスカを腕で制し、
「ごめん、アスカ、マナ。僕は気分が悪くなったんで帰るよ」
と、片手で頭を抱えながら言った。
「あんた、大丈夫?」
「ああ」

そして、気がつくと、そのカヲルという人もどこかへ行ってしまった。

299:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/11 23:41:55
家に帰ってカヲルという少年に会ったことを報告したときの
ミサトさんの険しい表情が忘れられない。なんというか、とてもイヤな感じのする、
今までわたしに見せたことがない表情だった。

「なんですって!? 渚カヲルに会った?
 ………そう。分かったわ。ちょっと一人にさせてちょうだい」
ミサトさんはそう言うと、シンジと同じように頭を抱えて自分の部屋へ入っていった。

300:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/11 23:43:22
不月快日

珍しい人が訪ねてきた。赤木リツコ博士だ。
「久しぶりね、ミサト」
「夕ご飯食べていくでしょ、リツコ」
ミサトさんはもう平常に戻っている。もっとも、外見だけかもしれないけど。
「ええ、よばれていくわ」
「じゃ、買い出しにいってくる。ここで、この子たちと待ってて」
「あたしも、一緒に行くわ」
アスカもついて行くと言う。もしかすると、ミサトさんがいない場所で、
リツコさんと長時間一緒にいるのが気詰まりなのかもしれない。

しばし、リビングでリツコさんと二人きり。
私はふと思い出して聞いてみた。
「あの、デア ベルフェル イスト ゲファーレンってどういう意味ですか?」
「あら、マナちゃん。難しいこと聞くわね。"Der Wülfel ist gefallen." は
 英語に直訳すると "The cube is thrown." よ」
「すみません。突然変なこと聞いて。前にアスカが言ってたものだから……
 ザ キューブ イズ スローン……、賽は投げられた、ですか?」
「そういうことね。参考になったかしら?」
「は、はい。ありがとうございます」
たしか、アスカがこう言ったのはシンジに泊まりに来るように誘った時だった。
私は、アスカに対する醜い感情が芽生えたような気がして、必死にそれを打ち消そうとした。

301:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/11 23:45:23
不月安日

最近、気が滅入ることばかりでいけない。
私は、気分直しに初めてシンジの家に遊びに行くことにした。
(前にも書いたけど、シンジは今、ミサトさんの家を出てお父さんと暮らしている)

「どうぞ」
シンジが照れながら迎えてくれる。
「おじゃましまーす」
ミサトさんのマンションより立派かも。ミサトさん、車貧乏だからね。
「今、お茶淹れるから」
「あっ、おかまいなくー」
ままごとのように応対する私たち。
「お父さんは、今日、いないんだよね?」
「うん」
「二人きりだね、私たち」
「うん。…………そうだね」
「シンジの部屋見せて」
「い、いいよ。散らかってるけど……」

302:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/11 23:47:21
私はシンジの部屋に入るなり、机の上に置いてあるペンダントを見つけた。
これは初めて会った頃、私があげたペンダントだ。
「まだ、持っててくれたんだ、うれしい」
「実は、あのとき…………」

あのとき?
私はフラッシュバックのようにムサシが私を守って死んだことを思い出した。

「マナが、そ、その……死んだと思っちゃって……
 これ、芦ノ湖の畔に埋めに行ったんだけど……
 マナが生きてると分かって、もう一度掘り返しに行ったんだ」
うれしくて、涙が出そうになる。
「…………埋めた場所探すの大変だったでしょ」
「うん。でもマナからもらった大切なものだからね」
「うれしい、シンジ。ありがとう。」
そう言って、彼の胸に顔をうずめた。
彼は、いったん強く抱きしめた後、
私の頬に手を添え、顔を引き寄せて優しくキスしてくれた。
幸福感に浸る。

しかし、アスカのことを思い出し、少し胸がチクリとした。


303:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/11 23:50:13
戦月争日

抜け駆けみたいなことをしてしまって、ちょっと反省。でも、後悔はしていない。
恋の戦いには仁義はないんだもんね。

いつもの面子で新熱海海岸に海水浴に来ている。
私の水着はオレンジ無地のホルターネックワンピース。アスカは赤いビキニ。
綾波さんは白のワンピース。シンジは……、シンジの水着はどうでもいいよね。
ヒカリちゃんも誘ったんだけど、来なかった。
アスカの話では鈴原君とデートらしい。うぐ………。
そのかわり、今日はミサトさんが一緒。ただし、
トシを考えて水着はやめとくって。まさか、太ったのかな?そうは見えないけど。

304:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/11 23:51:20
突如、新熱海海岸に轟音が響き渡る!!
「何事!?」
焼きイカを取り落として叫ぶアスカ。
あちこちで悲鳴があがり、海水浴客たちが散り散りに逃げていく。
この独特の作動音は、まさか…………

激しく波を涌きたてながら、水中から巨大な物体がせり出してくる。
なんと、それは、私も昔乗っていたトライデント、戦自の陸上軽巡洋艦だった。
なぜ?今、ここで?
やがて耳をつんざく轟音が止むと、ハッチが開き、パイロットが降りてきた。
彼は…………。

彼は、そう、あまり親しくはなかったけど確かに見覚えがある。
パイロット候補生時代の戦友だ。

「マナ!!」
そのパイロットは私の名前を呼んで、そして、砂浜に倒れ込んだ。
急いで駆け寄って、かかえ起こす。ひどい怪我をしている。
「しっかり!」
「マナ、モニターに君の姿が映ったので浮上したんだ」
「ごめんなさい。あなたの名前を思い出せないの」
「いいんだ。聞いてくれ、マナ」

305:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/11 23:52:31
彼の話はこうだった。
戦自の一部が軍事クーデターを起こそうとしたのだ。
反乱軍はエヴァ初号機及び、弐号機を駆り、まずは現状でエヴァに対抗しうる
唯一の兵器であるトライデントをすべて破壊せんと部隊を急襲。
仲間はほとんどやられたが、彼だけがかろうじて逃げてきたのだという。
「でも、エヴァは……チルドレンにしか動かせないのよ?
 いったい、どうやって?」
私が尋ねると、
「ダミープラグね」
ミサトさんが口を挟んだ。
「詳しいことは分からない………
 ただ、二機のエヴァンゲリオンが動いているのははっきりと見た」
そのパイロットは苦しそうに言った。
「マナ、連中を止めてくれ。もう、君だけしか残っていない……」
それだけ語って、彼は息絶えた。

ミサトさんは車から持ってきた携帯無線機でしきりにどこかと通信している。
「やはり、ゼーレのダミーシステムは破壊されずに戦自に引き継がれていたのね」
「畜生、胸クソわるい!」
「ええ、渚カヲルが再び現れたときに全てに気がつくべきだった」
「彼らはどこかの工場でまだ作り続けているのよ。魂のない肉体を」

306:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/11 23:54:46
数時間後。
反乱軍のエヴァ2機は、いまや首都となった第三新東京市に迫っている。
要求が通らない場合には住民の巻き添えも厭わないという。
政府はJA改というロボットで対抗しようとしたが、ほとんど足止めにもならなかったらしい。

私は、命を弄び、命を踏みにじる反乱軍、そして戦自そのものへの怒りが心の底からこみあげてきた。

「私、行きます」
「だめだ!」
私に飛びかかってでも止めようとするシンジの手をかわし、
トライデントのハッチへと走る。
「マナ、行っちゃだめだ!だめだぁぁっ!!」
ミサトさんに腕を引っ張られ、私を追ってこれないシンジは狂ったように叫んでいる。
ごめん、シンジ。
私は、コックピットに滑り込むと、全ジェットノズルを作動させ浮上しつつ、
全速で第三新東京市を目指した。
震動は相変わらずで、内臓すべてを揺さぶられるようでとても気持ち悪い。

「マナちゃん、聞こえる?」
ミサトさんの声だ。
「はい、聞こえます」
「目標現在位置はN35°14’ E139°01’よ」
「了解。目標現在位置N35°14’ E139°01’予想会敵時刻は6分03秒後です」
「了解。目標を視認したら必ず弐号機、赤い方ね、のケーブルが繋がったビルを破壊して」
「了解。弐号機の電源ビルを第一ターゲットに設定します」
「それからね、弐号機自体には脇目もふらずに周囲の電源ビルを全て破壊していくの」
「わかりました。外部電源を断って、活動停止に持ち込むんですね」
「そうよ。で、問題は初号機。コイツはS2機関を搭載してて活動限界がないから、
 トライデントで停止させるのは不可能よ。今、対策を審議中だから、ちょっち待っててね」
「了解。弐号機撃破に専念します」

307:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/11 23:57:59
あっという間に目標を視認できる距離まで到達した。
作戦どおり、電源ビルをミサイルでロックオンし、破壊していく。
周囲の全ての電源ビルを破壊し、しばらく遠巻きにしていると弐号機は停止した。
「ナイス、マナちゃん。ま、所詮、なーんにも考えてないダミープラグだからねー」
ミサトさんは何故、戦いの最中にこんなに明るいんだろう。
そっか、私を勇気づけるために決まってるわよね……………。

「弐号機活動停止。初号機撃破に向かいます」
「待って、マナちゃん!初号機はムリよ!」
ミサトさんが叫ぶ。
しかし、初号機はさきほどからほとんど暴走状態で、
第三新東京市を手当たり次第に破壊している。なんとかして、止めないと。

「マナ、連中を止めてくれ。もう、君だけしか残っていない……」
そう言って死んだ戦友の顔が脳裏に浮かぶ。

私はポジトロン砲にエネルギーを充填する赤いスイッチの蓋を開け、押した。
「命令よ!攻撃を中止しなさい!」
コックピットにミサトさん声が響き渡る。
ブゥーンと音を立てて砲身が青く光り出す。オレンジ色の光がゲージを登っていき、
数秒後、発射可能のインジケーターが点灯した。
「発射!」
トリガを引く。
青い光線がエヴァ初号機へと伸び、一瞬の閃光の後、轟音が鳴り響いた。


308:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/12 00:02:28
濛々と立ちのぼる爆煙が消え去ると…………。
そこには、全く損傷を受けていない初号機の姿があった!

「ぐおぉぉぉォォーーーーーー」
雄叫びを上げなら初号機がこっちへ向かって来る。逃げ切れない。

死んだ。

そう思った刹那、
赤い巨人が私の前に立ちはだかり、ガキィーンと金属音をたてて初号機を受け止めた。
「遅くなってゴメン、マナ」

…アス…カ………?
「よっしゃー、間に合ったー!」
無線機から再びミサトさんの声。
「説明してる暇はないわ。アスカ、初号機のATフィールド中和を開始して!」
「了解!まかせといてっ!」
アスカの弐号機は初号機の前で分厚いビニールを引き裂くような動作をしている。
「マナ、ポジトロン砲のエネルギー再充填急いで!」
と、アスカ。
「いい、マナちゃん。初号機胸部中央を狙い撃ちするのよ!」
「了解!」
ブゥーン。再び青い光が集まり出す。
「今よ!」
「発射!!」
青い光芒は、今度は初号機の胸を貫き、遙か彼方まで伸びていった。
「やった!胸部装甲板を貫通したわ!」
「コア破壊を確認。初号機、完全に沈黙しました」
ミサトさん以外のオペレーターの声まで聞こえてくる。一体どういうこと?

309:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/12 00:05:31
「マナちゃん、アスカ。おつかれさま」
「マナちゃん、びっくりしたでしょう。あのね、今、旧ネルフの発令所からなんだけどね」
へ?ネルフってなくなったんじゃなかったっけ?

指定された駐機スペースへと飛行しながら聞かされた話はおよそ次の通り。
政府の要請でジオフロントに結集した旧ネルフスタッフが弐号機を一旦回収し、
アスカが搭乗して電源を再接続、出撃したのだった。
エヴァを失った反乱軍は包囲され、全員投降。意外に少人数だった模様。

とにかく、任務は無事果たせた……ということかな?
肩の荷が降りて安心すると、私の困った体質が戻ってきた。そう、乗り物酔い!
「うっぷ…………」
「大丈夫?マナちゃん」
「気持ち悪いです。吐きそう……………」
「あちゃー。でも、もう任務完了したし、別にゲロちゃってOKよ?
 どばぁーっていっちゃいなさい、どばぁーって」
無責任なことを言うミサトさん。
駐機スペースに到着し、なんとか機体を停止させると、駆け寄ってくる人影が見える。

シンジだ!

シンジは外からハッチを開け、グロッキーになった私を抱き上げ、機体からおろしてくれた。
これが、お姫様抱っこというやつね!天にも舞昇るような気持ち………。

「よくやったね、やっぱりマナは凄いや」
シンジがそう言うのを聞いたアスカはなにか言いたそうだったが、ぐっと飲み込んだようだ。
「エヴァのコア、バラバラになっちゃったもんね」
ミサトさんも褒めてくれた。

310:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/12 00:07:50
「初号機のコアには母さんの魂が入ってたんですよね………」

ミサトさんがしまったという顔になる。
「そうだったわね。ごめんなさい、無神経なこと言って」
「いいんです気にしないでください」

「ねぇ、どういうことコアに魂って?」
気になって尋ねる。
「エヴァにはね、人の魂が埋め込まれてるんだって。
 それでエヴァは動けるんだってさ。で、初号機の魂は僕の母さんのものだった」
「それじゃ、私はあなたのお母さんの魂を破壊してしまったの?」
わたし、なんてことを……………。
身体が震える。

「そうかもしれない。でも、いいんだ。母さんは、僕の心の中にいる。
 僕には初号機のコアなんかよりマナの方がずっと大事だ」

シンジ……………。

このとき、自分がどんなにこの人が好きか、はっきりと分かった。
私、やっぱりシンジが好き。もう迷わない。
私は、私を見つめるシンジを、晴れ晴れとした顔で見つめ返した。


                   完



311:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/12 14:46:55

できれば後日談キボン

312:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/12 16:54:03
>>291
> 綾波さんを間近で見て、急に黙り込むシンジ。薄暗いけど赤くなっているのが分かる。
> 綾波さんは………濡れそぼり、浴衣の裾をしどけなく乱れさせている。


URLリンク(www.i-paradise6.jp)



313:282
06/08/12 22:56:16
>>311
サンクス。もうマナ物は思いつきそうもないので、
おまけとして、直接は書かなかった脳内設定を挙げとくね。

>>286 綾波は三人姉妹の末っ子? → マナが「三人目」を誤解している。
     MAGENって?         → Gehirn(脳)→Nerv(神経)→Magen(胃)の三段オチ。
>>287 零号機と3号機・5号機は? → 零号機は二人目のレイが自爆したときにロスト(本編通り)
                         3号機はバルディエル戦で破壊された。(トウジは無事)
                         5号機以降も殲滅されている。→>>261

>>307 電源ビルは偽装されているのに
    なぜ簡単にロックオンできる? → 戦自とネルフは一応協力して対使徒戦にあたっていたので、
                          戦自もエヴァ支援施設の地図を持っていた。
                          トライデントの航法コンピュータにもその地図が入っている。

あと、前半を見る限りムサシは死んでないようにも読めるんだけど、
シリアスさを出すために(ゲーム通り)死んでいることにさせてもらった。

まとめると、
>>14-160 が第一部(作者未詳)
>>252-262 が第二部、
>>283-310 が第三部って感じだと思う。
第二部と第三部を俺が書かせてもらったけど、
第一部の作者の方の着想を生かし切れなかった部分がけっこうある。
例えば、>>160でヒカリは何と言おうとしたのか、とか。残念。

以上です。燃え尽きました。m(__)m

314:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/12 23:33:21 SZ12yHBr
乙age

なにげに>>312 GJ

315:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/13 00:18:38 7FSeeALP
話にケチつけちゃうけど中学生は「~わよ」とかつけないぞ。

316:282
06/08/13 00:35:44
>>315
なるほど。
ま、誰のセリフか分かりやすくするために過剰に女言葉を使ってるっていう面もある。


317:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/13 18:16:07 1vPSuRVU
全読した。はてしなく乙

↓今から読む人のためのガイドとしてコピペ推奨。
>>14-160  第一部
>>252-262 第二部
>>283-310 第三部

第四部ができるといいね。

318:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/13 23:29:28
>>313
そこまで考えていたんなら、一つ突っ込ませて貰うよ。

バルディエル戦以後、初号機(ユイ)はダミーを受け付けなくなっているはずだが、
その辺はどう考えているんだろう?
初号機はリリスベースのハズだから、"カヲル(アダム)のダミー"では、なおさら
受け付けないと思うのだが?

野暮かな? と思って昨日は書かなかったんだけど。

319:282
06/08/14 01:00:33
>>318
突っ込み、サンクス。
突っ込んでくれるってことは、読んでくれたってことで、マジうれしい。

1.正直、初号機がダミーを受け付けなくなっていたのは忘れてた。(汗)

2.思うに、ダミーシステムといものは「魂のないボディ+思考をシミュレートする回路」なので、
  反乱軍は初号機に「カヲルのボディ(素体)+レイの思考をシミュレートする回路」を使った。
  バルディエル戦のときレイの素体無しでも動いたのはシンジの身体が載っていたから、とすれば、
  ボディは何でも良いと考えられるので。

まぁ、いろいろ苦しいところはあるけど、戦自の技術者が研究を引き継いで
なんとか動かせるようにした。と、そういうことで。

320:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/15 19:16:24
          _,、 -‐;_‐‐ _ー;- 、
        ,/  / `'´  \`ヽ、
       /   冫       丶 \
      / 〃 /     l     、  ヽ
     / /   lイ     |    ヽ  ヽ ';、i'、   霧島マナです。
    / l     /!    l、   ',  l, iヽト'、  たい焼きちょうだい♪
     |i | !   i.| | l、  ! l|、iヘ | ';.、 |;l ヽ!
    !| |k  |!{‐'_Lヽ ト, l ゞ''」_トk'|、l l   !|
     ヽ リヽ |,:ィ゙i,ィl` ヾ\! ゛i,ィj Y !}レl   l′
      >'/l 〉' ` `´       `゛ リハ\イ
     ´/イ ,ハ     '゙'      /!ヽ〈`
      'ヘ l |ヘ,   く ̄,>   /´| イヾ
        リ| ノ>,、   `゛  ,.ィ'′ /′
         ヾ!、l |` 、._ /| ! イ/!
             ,..>┤     トィ!′
        ,、‐' ( ノ     丶 )ヽ、
      ィ_´   \      /  `ヽ、
   ,、 '´  \    ヾ-  ‐/    ,、‐'¨'‐、
  r'´      ヾ;.、_  '、 / _,、ッ'´    `ヽ、
  〉'ー- 、_     ヾ-`_'ィ'〈'二イ     _,、 -イ
  { ' '´ ヽ `'、イ   〉'´/'r〈 \/     /〆 ` l
  |     ヽ \! / イ ハヘ、 〉ハ l /'´    |

321:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/16 00:15:34
>>319
いや、素体の有無を何処で判断しているのか知らないけど、バルディエル戦で使われたダミーには、
レイの素体が使われているはずですよ?
パイロットとは完全に切り離されている(シンジとシンクロしていない)のですから、素体がなければ
ダミーはシンクロしません。
ゼルエル戦で使った物も基本的に同じなのに、パイロット無しで起動などしようとしたでしょ?

それと、カヲルのダミーじゃなおさら受け付けない云々は、初号機がダミーを受け付けないと言うのを
承知の上で書いたのなら、どう考えているのか知りたかっただけなので、それを忘れていたとのことで
あれば、こじつけの理由は無理に要らなかったのですが、解りにくかったかな?
(忘れていたなら考えていなかったでしょうし)

322:282
06/08/16 00:38:27
>>321
> いや、素体の有無を何処で判断しているのか知らないけど、バルディエル戦で使われたダミーには、
> レイの素体が使われているはずですよ?

それはどうだろう。身体らしきものが乗っていて、思考は電気回路でシミュレートされている、
だから、エヴァンゲリオンはパイロットが乗っているとだまされる、そう考えることも可能でしょ。

> こじつけの理由は無理に要らなかったのですが、解りにくかったかな?

なぜ、そんなに喧嘩腰なの?
もし自覚がないなら、そういう物言いは人を苛立たせると知っておいたほうがいい。

323:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/16 21:57:37
>>322
喧嘩腰のつもりはありませんが、こじつけのつもりはないと言うことでしょうか?
だとしたら、私とあなたの間では、シンクロシステムに対する理解に、かなりの
隔たりがあると思われます。

と言うか、レイ自身も受け付けなくなっていたのも、忘れているのではないですか?
だから、"ボディは何でも良い"などと思いつくのだと思いますが?

324:282
06/08/16 22:24:05
>>323
あなたが敬体を好むようなので敬体で書きます。

仰るとおり忘れていましたが(そのことは>>319の最初に書いた)
あなたの指摘を受けて思い出したわけですよ。
で、その指摘に沿う形で自分なりに合理的説明を試みたわけです。
それに対して「こじつけ」と言われるのは心外なのですが。

一般に、とくに真偽を意識せずにある命題を提示し、
後から、それを証明したとしてもそれをこじつけとは言いません。
証明として成立していないときにこじつけと言うのです。
(「名前」の語源は英語の"Name"だと言うが如きものを指すのです(笑))

さて、私は俄エヴァオタなもので、確かに作品理解の至らないところは
たくさんあると思います。

なので、あなたに逆に質問。
バルディエル戦でレイの素体が使われていたっていう説は一般的なのですか?
エントリープラグ内のシンジや視聴者に見えないところに
レイの素体が押し込められてたってことですか?

もう一つ。
>>319の2.の説明は、後付けではありますが十分合理的だと思うのですが、
どこが間違っているのでしょう?

一日おきにレスするのもかったるいので、できれば今日中にお願いします。
催促してごめんなさい。

325:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/17 00:42:58
          _,、 -‐;_‐‐ _ー;- 、
        ,/  / `'´  \`ヽ、
       /   冫       丶 \
      / 〃 /     l     、  ヽ
     / /   lイ     |    ヽ  ヽ ';、i'、
    / l     /!    l、   ',  l, iヽト'、  たい焼きないなら帰るね♪
     |i | !   i.| | l、  ! l|、iヘ | ';.、 |;l ヽ!
    !| |k  |!{‐'_Lヽ ト, l ゞ''」_トk'|、l l   !|
     ヽ リヽ |,:ィ゙i,ィl` ヾ\! ゛i,ィj Y !}レl   l′
      >'/l 〉' ` `´       `゛ リハ\イ
     ´/イ ,ハ     '゙'      /!ヽ〈`
      'ヘ l |ヘ,   く ̄,>   /´| イヾ
        リ| ノ>,、   `゛  ,.ィ'′ /′
         ヾ!、l |` 、._ /| ! イ/!
             ,..>┤     トィ!′
        ,、‐' ( ノ     丶 )ヽ、
      ィ_´   \      /  `ヽ、
   ,、 '´  \    ヾ-  ‐/    ,、‐'¨'‐、
  r'´      ヾ;.、_  '、 / _,、ッ'´    `ヽ、
  〉'ー- 、_     ヾ-`_'ィ'〈'二イ     _,、 -イ
  { ' '´ ヽ `'、イ   〉'´/'r〈 \/     /〆 ` l
  |     ヽ \! / イ ハヘ、 〉ハ l /'´    |

326:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/17 02:02:54
>>313
いまさらなんですけど、突っ込み。
>戦自がネルフと協力
ネルフ×陸海空自衛隊=UN第2方面軍
だった気が。戦自はどっちか、つーかかなり、敵かと。

327:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/17 02:04:15
ついでに、

つ><lll'>
たい焼き。

328:282
06/08/17 12:33:59
>>326
なるほど~。
国連軍に委譲した陸海空自衛隊と戦自は別組織なのね。
エヴァヲタとしてのステージが一つ上がったよw
御教示感謝。

329:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/17 16:40:00
>>328
何しろ管轄が違いますから。
自衛隊<防衛庁
戦略自<国防省
(使い分けミスの、仕様という話もありますが・・・)

330:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/17 23:03:51
>>323
貞本版では、ゼルエル戦でレイが初号機の起動に失敗した後、
ゲンドウがダミープラグで再起動させろと言っている。
つまり、レイ自身も受け付けない状態でもダミープラグで起動できる可能性はあった。

331:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/18 00:17:17
>>330
もともと鋼鉄のガールフレンドがどこまで本編に準拠していたかもはっきりしてない。

332:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/21 22:29:25
災月厄日

今日は一人でショッピング♪

今まで、居候の身で贅沢は敵とばかりに、
服や身の回りの品は最低限に抑えてきたけど、
若い娘があんまり同じ格好でいるもんじゃない、と
ミサトさんが特別にお小遣いをくれたの。

アスカは金欠でパス、綾波さんは夏バテでだるいのでパスだって。
シンジは……、女の買い物に付き合わされるのは苦痛だろうから誘わなかった。

商業地区に到着。
さっそく着飾ったマヌカンたちを見て回る。
……けど、あまり気に入るのがないし、気に入ったのは高いし。うーむ。
行ったり来たりしているうちに時間ばかり過ぎていく。
とはいえ、わざわざお小遣いをくれたミサトさんの手前、
義理にも何か買って帰らないわけにはいかない。
結局、いまいちパッとしない服を一着だけ買って、
帰りの電車に乗るころには日もすっかり暮れていた。とほほ。

333:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/21 22:32:06
ちょうどラッシュアワーに重なったこともあって、かなり混んでいる。
買い物に行って値段が高いからって気に入ったものが買えないなんて、
すっかり貧乏性が身についちゃったよ。
しょんぼりとして吊革につかまっていると、腋の下に違和感を感じる。
「ん?」
そうかと思うと今度はおっぱいをむにゅっと揉みあげるような感触……
「☆△○■◎★?!!」

次の瞬間、私の後頭部が痴漢の鼻っ柱を強打していた。
「ふごっ?!」
間髪入れずに男のみぞおち目がけて肘鉄を喰らわせ、
流れるような連続技でまだ私の胸の上にある男の手をつかむと、
薬指を関節とは逆の方向に思いっきり曲げてやった。
そして、振り返りざまに金的を一発お見舞いする……のがセオリーなんだけど、
ちょっと場所が狭いので無理みたい。
戦自仕込みの護身術をたっぷり味わった痴漢は、鼻血を出しながら悶絶している。

ああ、怖かった。もう一人で電車に乗るのはイヤだなぁ。

334:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/21 22:35:13
夏月風日

「ねえ、ねえ、依然強い勢力を保ったまま、
 伊豆諸島・青ヶ島付近を北上中なんだって!」
お昼からずっと、アスカはテレビにかじりついて、
私たちに刻一刻と台風情報を教えてくれている。
「中心付近の気圧は942ヘクト・パスカル、最大風速は40メートルだってよ!」
「中心から半径300キロ以内では風速25メートル以上の強い風が吹いてるって」
「うひゃー、大島じゃ現在までの雨量が 400mm 超えたって」
「うーん、台風から湿った空気が流れ込んで前線が活発になってるのよねぇ♪」

顔を見合わせる私とミサトさん、とペンペン。
「ねぇ、アスカ、もしかして台風が珍しくて興奮してるの?」
「バ、バカねぇ、そんなわけないでしょ。このあたしがたかが台風ごときで」
ちょっと赤面するアスカ。図星みたい。

「ま、無理もないわ。ドイツには台風なんて来ないもんね」
「そ、そうなのよ。だから、アジアモンスーン気候の脅威がどれほどのものか
 ちょっと見てやろうってわけ」
「モンスーンっつっても、今じゃ常夏だけどね」

宵の間。
もの凄い雨・風が吹き荒れる。とうとう新熱海に上陸しちゃったみたい。
テレビの画面では真っ直ぐ箱根の方角へ向かっている。やばい、直撃コース?
ヒューッ…ガタッガタッ、ガタン、ゴンッ!
「Oh mein Gott! なに?!今のゴンッって音は?」
怯えるアスカ。
「ああ、どっかの看板が剥がれて飛んできたんでしょ。よくあることよ」
ミサトさんがこともなげに言う。
「よくあるって……。ったく、近所迷惑もいいとこだわ」

335:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/21 22:37:08
突然、真っ暗になった。

「えっ、何?何?」
「あー、停電ね。ま、仕方ないわね。使徒に壊されまくったもんだから、
 第三新東京市の送電システムはボロボロなのよ。」
「ったく。基礎的なインフラさえいまだ復興できてないなんて、
 この国の社会施策プライオリティはどうなってるのかしら」
って、アスカ?
口ではキツいこと言いながら私にしがみついてくるのはなぜ? 怖いの?

ヒューッ…ガタッガタッ…ビュォォーー……
依然、風雨の声はものすごい。
一瞬、辺りが青白く光ったかと思うと、バリバリバリッと雷鳴が轟く。
"Oh, es läßt mein Haar stehen am Ende...."
アスカはずっと私に抱きついている。カワイイ……♥

って、あれ? ミサトさん?
「いやぁ、あたしも暗いのちょっと苦手でさ……」
ミサトさんまで私の腕にしがみつく。
何なの、この人たち……。


漸く明かりがついたのは夜も半ば過ぎた頃だった。

まったく、あぶなく何かに目覚めてしまうところだったよ。

336:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/22 01:15:42
支援物資投下!

URLリンク(www.i-paradise6.jp)

337:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/22 10:08:54
>>336
勝手におっぱいつけてみたw

URLリンク(www.i-paradise6.jp)

338:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/24 23:23:42
職人様、乙です。
ここ最近新作が立て続けに貼られてて非常に嬉しい。
今まで長いこと待ってきたかいがあったというもの。

339:282=332=337
06/08/25 00:30:22
>>338
ありがとうございます。
読んでくれる人がいると思うとやっぱり嬉しい。

340:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/25 00:33:13
晩月夏日

「"Kannst du erraten, was ich essen will?"(今、あたし、何が食べたいと思う?)」
アスカが唐突にドイツ語でなにやら問いかけてくる。
「……バ、バウムクーヘン?」
「"Genau!"(その通り!)」
私のドイツ語通じたみたい。

「さ、作りましょ」
「えっ?何を?」
「バウムクーヘンに決まってるでしょ」
「バウムクーヘンって買ってくるものじゃないの?お家で作れるの?」
「大丈夫、半筒形なら簡単らしいわ」
「らしいわ、って、作ったことないの?」
「ないわよ。だから挑戦するんじゃない」
と、私に泡立て器を手渡すアスカ。

「まずはボールにバターと砂糖を入れて白っぽくなるまでかき混ぜる」
「卵黄を1個ずつ入れて丁寧に混ぜていく」
「卵白に粉砂糖を混ぜてツノが立つくらいに泡立てる」
「薄力粉とさっきのやつを半量加えて、さらに混ぜる……」
ちょっと、アスカ、全部私にやらせてるじゃない……。

「型にバターを塗り、タネを薄く流し込む、と」
「熱したオーブンに入れて、焼き色がついたらまたタネを流し込む」
「焼いては流し、流しては焼き……層を作っていく。もう、メンドクサイわねっ」
面倒なのは私だよ……。
 
最後に湯煎で溶かしたチョコレートを塗っていく。

341:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/25 00:37:38
「できたっ!」
切ってみると、ちゃんと層になってる。しっかりバウムクーヘンだ。半筒形だけど。
「あーら、美味しそうじゃない」
さっそく一口つまむミサトさん。
「うん、おいしい」
「本当?よーし、全部切り分けちゃおう」
アスカは、できたてのバウムクーヘンに包丁を入れてキレイに切り分けると、
三切れづつ二つのお皿に取ってラップをかけた。
「これはシンジとファーストにおすそ分け」
「えらいっ、アスカ。シンちゃんはともかく、レイにもちゃんとあげるなんて、友達思いだね~」
「なに言ってんのよ。いつもわびしくカップラーメンかなんか啜ってるアイツに
 家庭の味ってやつを見せつけて自慢してやるのよ」
例によって、とっても天の邪鬼な反応を示すアスカ。
まぁ、お菓子作りの腕前を自慢するつもりなのは、あながち嘘じゃないみたいだけど。
 
「家庭の味か……」
ミサトさんがポツリと呟く。

「………やぁねぇ、なぁにしんみりしちゃってるのよ。
 ささ、お茶淹れて、バウムクーヘン食べましょう。そだ、あたしはブランデーでいただこうっと」
急に多弁になるミサトさん。
 
「うん、おいしいじゃない」
「おいしいね」
口々にそう言い合ってバウムクーヘンを頬張る。

家庭。
家族の集うところ。
そう、私たちは本当の家族ではないけれど、私たちを結びつける絆は本物。
私は、なぜ私がシンジばかりでなく、アスカやミサトさん、
そして綾波さんに強く惹かれるのか分かった気がした。
孤独という共通項が私たちを結びつけ、お互いをかけがえのないものにする、そうに違いないわ。

342:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/25 01:13:21
>>339-341
乙。つーか、>>337のおっぱいもあんたのしわざかよw
ちくしょう、萌えるじゃねーかww

343:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/26 02:44:59
   _  ∩
  ( ゚∀゚)彡 おっぱい!おっぱい!
  (  ⊂彡
   |   |
   し ⌒J


     _
   ( ; ゚д゚) ひ、貧乳・・・
   し  J
   |   |
   し ⌒J

344:282=332=340
06/08/30 23:03:33
ちょっと間があいてスミマセンm(__)m
完結編のプロットが殆ど完成したので、今日から順次投下します。

345:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/30 23:04:52
貧月乳日

夏休みも、残り少なくなってきた。
今日はお花を買って綾波さん宅に遊びに行こうと思う。
たぶん、花瓶もないだろうから一緒に買っておいた方がいいよね。
乙女の部屋があんな殺風景じゃあんまりだもの。とりあえず電話してみる。
「もしもし、綾波さん? あの……、突然電話してごめんね。
 今から遊びに行っていいかな?」

「………ええ。いらっしゃい」
彼女は少し驚いた風だったけど、来ていいと言ってくれた。
「じゃ、行くね。待っててね」

道すがら、綾波さんとどんな話をしようかと考えながら歩く。
彼女と二人きりになると、いつも、何を話せばいいのか分からなくなるから。
うーん、学校の勉強の話をしようかな?
いや、そんなことは話したくないよね、お互い。
じゃ、シンジのこと………。
ううん、まだ綾波さんとシンジのことを落ち着いて話す自信ない。
色々考えているうちに、お花屋さんまで来てしまった。

さて、どのお花にしようかな。
そうだ、カンパニュラがいいわ。
それから、花瓶と。
お財布と相談して小さな磁器製の花瓶を2000円で買う。
さあ、準備OK。

346:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/30 23:07:25
結局、綾波さんのマンションに着くまで、話題を一つも思いつかなかった。
ええい、なるようになる、よね。
ちょっと緊張しながら呼び鈴を押す。

「いらっしゃい……」
綾波さんはすぐに出てきて中に迎え入れてくれた。
「おみやげよ」
カンパニュラの花束と花瓶を見せる。
「……ありがとう」
やっぱり、驚いてるみたい。ちょっと唐突すぎるもんね。
「どこに飾ろうか?」
花瓶に水を入れながら尋ねる。
「……それじゃ、この棚にお願い」
そう言いながら棚の上の本を片付けてスペースを作る綾波さん。
「うん、じゃ、ここに置くね」

「……………………」
「……………………」
お花を飾り終えると、気まずい沈黙が訪れた。
さて、と。

「あのね、えと……、どうやったら綾波さんみたいにバストが大きくなるのかな」
「えっ?」
「あの、いや……私、なに言ってんだろ。ごめんなさい……」
「……………………」
「……………………」
「胸だけを温めるといいらしいわ」
綾波さんは、急にポツリとそう言った。

「本当?綾波さん、やってるの?」
「わたしはやったことないけど、そう聞いたことあるから……」
「わかった。やってみるよ。ありがとう」

347:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/30 23:10:04
家に帰り着くなり、今日仕入れた耳寄り情報をアスカに教えてあげる。
「聞いて、アスカ。胸だけを温めると大きくなるんだって!」
「はぁ?」
怪訝そうな、アスカ。
「誰から聞いたの?そんな話」
「綾波さん」
「へ?ファーストがそう言ったの?」
一瞬ポカンとした顔をしたアスカは、クスクスと笑い出した。

「それは以前、あたしがシンジをからかって言った冗談よ。
 暖めて大きくなるわけないじゃない」
「えぇ~、そうなの? せっかくいいこと聞いたと思ったのに」
「いやぁ、笑わせてくれるわ。アレ、ファーストも聞いてたのね。
 しかも、マナに受け売りするなんて。くくく……」
おかしくてたまらないという表情のアスカ。

「あんた、胸が小さいのそんなに気にしてたの?」
図星をつかれて、ちょっとグサッとくる。
「そんなことないよ~だ。アスカのいじわる」

あ~あ、明日は携帯用カイロを買い占めに行こうと思ったのに。
むぅ、アスカめ。自分がガセネタの情報源のクセして、あんなに笑うことないじゃない。
ちょっと、傷ついちゃったよ……。

348:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/30 23:11:49
食月欲日

『…今日は、二十四節季の一つ、処暑。暦の上ではもうすっかり秋です……』
「うーん、食欲の秋ってか♪」
チリソーセージを肴にビールジョッキを傾けながら、テレビにあいづちをうつミサトさん。
セカンドインパクト以後に生まれた私には、「秋」がどんなものかはピンと来ないけど。

前々から不思議に思っていることが一つ。
ミサトさんっていつもジャンクフードばっかり食べてるのに、
なんであんなにスタイルいいのかな?

それはそうと、困るのはつい私もつられてパクパクとタコ焼きだのたい焼きだのを食べてしまうこと。
と言うわけで、私の体重はまたもや少しヤバめ……。
ダイエットしなきゃ。

ようしっ、今日からご飯はお茶碗に半分!
おやつは一切なし!
まずは、この辺から始めてみようっと。

349:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/30 23:52:18
キタ━━━(゚∀゚)━━━ !!!!!


350:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/31 00:01:34 F1dFJ6Gs
ageますね。
今から読む人のためのガイドとしてコピペ推奨。

>>14-160       第一部
>>252-262    第二部(おすすめ)
>>283-310    第三部
>>332以降    第四部?



351:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/31 23:13:52
始月業日

色々なことがあった夏休みも終わり、学校が始まった。
今日は始業式なので午前中だけ。

放課後、鈴原君や相田君を中心に、シンジやアスカ、
それに綾波さんまでが一緒になってなにやら相談している。
私も急いで輪に加わった。

「……と、いうわけさ。みんなでその廃坑を探検してみないか?」
どうやら、相田君がどこかを探検しようと提案しているらしい。

「パス、服が汚れちゃうわ」
アスカが、開口一番に拒否する。
「ワイも反対や。迷ったらシャレにならんで」
「やめとこうよ」
鈴原君やシンジも反対みたい。
「そんなことして、何が楽しいの?」
意外にキツい綾波さん……。

相田君、さんざんな言われようだね。
なんだかよく分からないけど、探検の話はボツになったみたい。

352:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/31 23:17:15
家月事日

アスカは、シンジと二人のときは家事全般をろくにやらず、
全部シンジに押しつけてたらしい。
だけど、私と暮らすようになってからはそんなことは一切なく、
きちんと自分の分担をこなしてくれる。

もしかすると、我がままを言うのはアスカの愛情表現なのかも。
そう言う意味では、私には我がままを言ってくれないのは少し寂しい。

ところで、残念なお知らせ。

私はまた、ダイエットに挫折してしまった。
うぅ、一週間ぶりのたい焼き、おいしぃ………。
とほほ。

353:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/31 23:19:54
温月泉日

週末を利用して温泉に行くことになった。と言っても手近な箱根湯本温泉。
一緒に行くのは、ミサトさんとリツコさん、アスカと綾波さんと私、
シンジとお父さん、そして、誰だか知らないお爺さん、それから、ペンペン。
旧ネルフ御一行様って感じ。

二台の車に分乗して旅館に到着。
みんな浴衣に着替えるとさっそくお風呂に向かう。
「しっかし、夕食もまだなのにもうお風呂入るわけ?」
アスカが不思議そうに言う。
「うむ、宿に着いたらまず一風呂。そして宴会が済んだら一風呂。
 寝る前にまた一風呂。朝起きたら一風呂。それが日本の温泉だ」
白髪のお爺さんが横から答える。
「へーぇ、ずいぶん風呂好きなんですね、日本人は」
苦笑するアスカ。
いや、いくらなんでもそこまでお風呂好きなのはお年寄りだけだよ……。

354:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/08/31 23:23:51
大きな岩に囲まれた湯船は、まん中で男湯と女湯に仕切られている。
「あれ?ペンペンは?」
「アイツはオスだから男湯よ」
「へー、そうなんだ」
「ってか、ペンギンって温泉に入れて大丈夫?」
「なにしろ、新種の温泉ペンギンだからねー。温泉大好きなのよ」

「クェー、クク、クヮーッ」
噂をすれば影、男湯の方からペンペンの嬉しそうな声が聞こえる。

「温泉、水滑ラカニシテ、凝脂ヲ洗フ。分かるか、碇。白楽天の……」
あのお爺さんも上機嫌みたい。

「レイもこっちの方に来なさい」
「いえ……」
綾波さんは湯船の隅っこの方に一人でつかっている。

「ほら、ミサト、見なさい、アスカとマナちゃんのお肌。
 うらやましいわ、若さって……」
はは……、始まっちゃったよ、リツコさんの愚痴……。
「リツコさんのお肌も綺麗じゃないですか」
「そう?ありがと。お世辞でも嬉しいわ」


しばらくゆったりとお湯につかっていると、本当に身も心も洗われる気がする。
ところで、ここのお湯、銃創にも効くのかな?
ときどき、古傷が痛むのよね。
って、私、ババくさいかしら。

355:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/01 00:40:16
マターリ

356:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/01 08:35:11
このスレに貼られてる画像流れてるのが多いんで、
JaneViewのキャッシュから起こしてまとめてみた。
GJ俺。

URLリンク(kunekune.breeze.jp)

357:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/01 22:43:23
苦月悩日

先日の温泉旅行って、そもそも誰が企画したんだろう。
それに、MAGENの同僚であるシンジのお父さんとリツコさんは分かるけど、
ミサトさんや私たちまで一緒に誘われるのもどうも解せない。
あ、そっか。ミサトさんってシンジのお父さんの元愛人なんだっけ。
っていうか、もしまだ二人が繋がってるとすると、
ミサトさんが私のお義母さんになるのかな?
うーん、私としては不満はないけど、ミサトさん、初婚で後妻に入るってのはどうかなぁ。

あれこれ考えていると、ちょっと知恵熱が出てきた。
ふとアスカの方を見ると、彼女もなにか考え中のようだ。

「アスカ、どうしたの? なにか考え事?」
「うん、ちょっとね」
「話してみて。相談に乗るよ」
「えっとさ、マナって戦略自衛隊にいたのよね?」
「う、うん……そうだけど」
「実は、あたし、戦自にさそわれてるんだ」
「……アスカが?」
戦自に強い不信感を持つ私は、直感的にやめた方がいいと思った。
「……戦自で何をするの?」
「筑波の研究所でね、弐号機のテストパイロット」
「そっか……。で、どうするの?」
「乗りたい気持ちはあるわ。でもまだ迷ってる」

アスカがエヴァのパイロットであることをすごく誇りに思ってたことはよく知っているけど……、
対使徒戦ではなく軍事用にエヴァが使われることを考えると、素直に賛成できない。

結局、私は何一つアドバイスできなかった。

358:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/01 22:44:20
接月吻日

私のシンジへの想いは日々深まってくる。
最初はスパイするために近づいた罪悪感の反動だったかもしれない。
でも、今ははっきり言える。私はシンジが好き。

放課後。
「今日もいい天気だね」
「そうだね」
最近、私とシンジはよく二人で屋上にいる。
そういえば、初めて会った頃、ここであのペンダントをシンジにあげたんだっけ。
あれから色んなことがあった。
そして、彼は今でもペンダントを大事にしてくれている。

「シンジ……」
私は甘えるように彼にもたれかかった。
彼はいつだったかと同じように優しく私を抱き寄せ、そしてキス……

「あーら、仲のおよろしいことで」
急に背後からアスカの声が。……見てたの?
「やれやれ、日本では珍しい人前キスですか。お熱いわね~」
「だって、誰もいないと思って」

「ごめんなさい、アスカ……」
思わず口から出た言葉が"ごめんなさい"だった。
アスカの顔から笑いの表情が消える。

「なんであんたが謝るの?」
「だって、アスカの気持ち知ってて、私………」


359:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/01 22:45:23
「うぬぼれるんじゃないわよっ!!」
アスカは私の頬を平手で強く叩いた。

「アスカ!」
シンジが厳しく咎めるような口調でアスカの名を呼ぶ。
「ふん。あんたたちがどうなろうと、あたしの知ったことじゃないわ」
そう言って踵を返すと、去っていくアスカ。

私はただ、呆然と腫れた頬に手を当てていた。

「アスカ! マナに謝まりなよ」
シンジはアスカを追いかけていく。

私は一人、屋上に取り残された。

数分後。
「アスカ……シンジ……アスカ……」
とりとめもなく思いを巡らしながらぼんやり遠くの山を眺めていると、
背後に人の気配を感じた。
「シンジ?」

360:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/01 22:46:24
振り返ると、鈴原君だった。
「悪いと思うたけど、今の、見とったで」

「そう、なんだ……。私、どうすればいいのかな」
「……迷うことあらへん。シンジが好きならシンジのことだけ見てたらいいんや。
 惣流に遠慮して身を引いたりしたら一生後悔するで」
「うん」
「それにな、そないなことになったら、惣流かて不本意な筈や」

「………………」
「なんや。どないしてん?」
「……鈴原君がそんなこと言うの少し意外だったから」
「ああ。ガラにもないこと言うてもうたわ」
「ありがと……」
私は、少し涙ぐみながらお礼を言った。

「罪なやっちゃ……」
去り際に鈴原君がそう呟くのが聞こえた。


361:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/01 22:49:17
暗月雲日

ニュースによると、先のクーデターにショックを受けた政府は、
反乱軍と関わりのあった戦自幹部を洗い出し、全て更迭するとともに、
改正法案を国会に提出し、シビリアンコントロールを強化しようとしている。

ここから先は私の想像だけど、
危機感を強めた戦自が切り札として使おうとしているのが、
アスカの乗るエヴァンゲリオン弐号機ではないだろうか。
この仮説を補強する材料として、
最近、戦自研がついに弐号機へのS2機関搭載に成功したことが挙げられる。
本来は最重要機密の筈だけど、先日、温泉でリツコさんが教えてくれた。
MAGENと戦自研とは多くの技術者を交換しているので、そういう情報も入ってくるらしい。
(彼女は純粋に技術的に興味があるだけ、と言っていた)

ミサトさんの話では、半永久的に活動でき、
しかも通常兵器によって破壊不可能なエヴァンゲリオンは、
世界のパワーバランスを崩しつつあるという。

362:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/01 22:50:25
「あたし、筑波の戦自研に行くことにするわ」
そんな中、ついにアスカは戦自のテストパイロットの件を受けることを決めた。

「ミサト、マナ。今までお世話になったわね。さようなら」
「向こうで部屋借りるんなら、保証人とかいるんじゃないの?」
「大丈夫。しばらくは宿舎に入るから。身一つで来いって言われてるの」
「アスカ……、本当に行っちゃうの?」
私は、アスカと別れるのが悲しいのはもちろんだけど、
アスカが、人を殺すための「兵器」となったエヴァに乗ることにも違和感がある。

「もう決めたの。あたしの荷物は処分してちょうだい。それじゃ、飛行機に遅れるから」

こうして、私たちの共同生活は、あっけなく終わりを告げた。


363:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/01 22:51:35
相月克日

今や、世界に暗雲がたれこめている。
アメリカ・中国の連合軍は、
「日本は現存する唯一のエヴァンゲリオンを保有し、世界征服を企んでいる」
との主張を始めたらしい。
ミサトさんは国連軍事参謀委員会に出席するためニューヨークへ飛んだ。
(国連安保理の常任理事国である日本は国連軍事参謀委員会に代表を送っており、
 ミサトさんはその副官だ。現在、国連本部は日本に置かれているが、
 軍事参謀委員会はニューヨークで開かれる。
 日本の軍事力突出に対する国際社会の目は厳しく、委員会では四面楚歌だという)

せっかく、使徒という人類の敵が消えたというのに、
今度は人間同士が争い始めるなんて……。
しかも、その争いの種がアスカの乗る弐号機だと思うと、
胸が張り裂けそうになる。

あれから、3ヶ月。アスカは一通の手紙も電話もくれない。

大人に囲まれ、エヴァンゲリオンの部品の一つとなることを求められる生活。
今のアスカが幸せな筈がないと思う。

それだけじゃない。
ニュースは連日、エヴァンゲリオンが国際危機の原因となっていることを伝えている。
もしかするとアスカの身が危ないのではないか、
そう考えると、いてもたってもいられなくなる。

364:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/01 22:52:41
恐月怖日

エヴァを巡る国際情勢は混迷の度合いを深めている。
アメリカ・中国を主体とする国連軍は、日本に対して、
国連の査察のもとでのエヴァンゲリオン破棄を要求してきたという。

「例の査察、日本は拒否するらしいぜ」
緊張の面持ちで相田君が言う。
「米・中連合軍はニューギニアのジャヤブラ湾に集結、戦自と一触即発のにらみ合いだ。
 戦自がエヴァンゲリオンを使うのも時間の問題かもな」

「そんな……それじゃ…アスカは………」
思わず絶句してしまった。
「ごめん。霧島は心配だよな、惣流のこと。でも、大丈夫さ。
 N2爆雷だろうと、ポジトロンライフルだろうとエヴァを破壊することはできないんだ。
 エヴァの中は世界一安全と言ってもいいくらいだよ」
「そうだよね。それに、アスカは強いもんね」
私は、そう言って調子を合わせた。

でも、対テロ戦術を長年学ばされた私には分かる。
本当に怖いのは暗殺……。
じとり、と、嫌な汗が背中をつたった。

365:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/01 23:35:43
>>356

404

>>357-364

あぁもう何が何やら…



366:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/02 01:52:12
>>365

URLリンク(www.dotup.org)

367:252=283=332
06/09/02 10:12:56
残り一挙に投下しますm(__)m


368:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/02 10:14:31
開月戦日

私は今、戦自の巡洋艦に乗っている。

米・中連合軍はマリアナ諸島グアムの戦自基地を攻撃、
一方、戦自の太平洋艦隊はニューギニアに向けて既に出撃したという。

ミサトさんはニューヨークで拘束されてしまった。
そして、私にはまたしても戦自から出頭命令が来た。
戦自はエヴァンゲリオンを使ってニューギニアに集結している米・中連合軍を叩き、
一挙に戦局を有利に展開する計画だが、作戦の要であるエヴァンゲリオン弐号機のパイロット、
つまり、アスカが、頑なに命令を拒否しているそうだ。
そこで、アスカに最も親しいとされる私が説得を命じられ、
冒頭に述べたように巡洋艦に乗って、先発した太平洋艦隊を追いかけているというわけ。

実は、私はアスカにエヴァで米・中軍と戦うように説得するつもりはまったくない。
ただ、もう一度アスカに会う、その為だけに戦自の命令に従っているフリをしている。
あんな風に、気まずく別れたままってのがすごくイヤだったから……。

369:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/02 10:16:31
一昼夜が過ぎ、太平洋艦隊に追いついた。アスカの居る護衛艦へと乗り移る。
アスカの部屋の前には憲兵が二人、立哨していた。

「久しぶり……だね」
「久しぶりね、マナ。何しに来たの?」
「戦うように説得しろって言われて……。でも、そんなことどうでもいいよ。
 本当は、アスカの顔が見たくて来たの」
「どうでもいい、って、この部屋は盗聴されてるのよ。
 嘘でも説得するフリくらいしないと、あんたの立場が悪くなるわよ。
 ま、いいわ。みんなどうしてる? ミサトは?」
「ミサトさんは、アメリカで拘束されたって」
「ふーん。あの人も色々大変ね」

「ねえ、アスカ……、あの……」
「なによ?」
「戦うのを拒否してる理由って、アスカがアメリカ国籍だからなの?」
「そんなの関係ないわよ。あたしはエヴァに乗れりゃなんだっていいの。
 でも、弱いものイジメはまっぴらよ」
「弱いものイジメ?」
「そ。エヴァで軍艦だの戦車だのをやっつけるのって弱いものイジメでしょ。
 そういうの、性に合わないの」
「そっか、アスカらしいね」

それからしばらく雑談した。
アスカが意外にも屈託のない様子だったので、少し安心。
でも、一番言いたかったシンジとのことは結局言えずじまいだった。

370:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/02 10:18:46
戦月禍日

私の耳にもどんどん戦況が伝わってくる。
核弾頭を搭載した米・中のミサイルが日本各地に多数飛来し、甚大な被害を受けたらしい。
「エヴァを悪用し暴走する戦自から、日本国民を守る」という、
米・中の主張に完全に矛盾する無差別殺戮に怒りがこみ上げる。
もっとも、名分に欠けるのは戦自も同じ。
そもそも、エヴァ保有に固執したことが戦争の原因なんだから。
戦自も報復として、米・中の各都市に向けてミサイルを発射したそうだ。
一体、何千万、いや何億の人命が失われたのだろう。
背筋が冷たくなる。
そして、一つの悪魔的な考えが脳裏に浮かんだ。
誰かが、アスカを殺してしまえば、この悲劇は終わるのではないか、と。
私は、自己嫌悪の余り吐き気を催した。

午後。
今日も、アスカと私は艦橋に呼び出された。
「惣流君。今までとは状況が変わった。
 先刻帰投した偵察機が、敵のエヴァンゲリオンを撮影したのだ」
「敵の? 弐号機のほかにも残っているエヴァがあるんですか?」
「これがその写真だ。偵察衛星からの映像も敵エヴァンゲリオンの存在を裏付けている」

「エヴァシリーズ!」
写真を見たアスカは言った。
「なるほど、面白くなってきたわ。相手にとって不足はない、ってわけね」
「分かりました、提督。命令があり次第、出撃します」
「おお、やってくれるか。頼んだぞ、惣流君」

371:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/02 10:20:16
戦月闘日

艦内に警報が鳴り響く。
何と敵エヴァンゲリオン10機以上がこちらへ向かっているらしい。
とうとう、アスカが出撃することになった。

「パイロットと弐号機、接続を開始」
「パルス及びハーモニクス正常」
「中枢神経素子に異常なし」

「発進準備完了!」

ネルフの発令所とそっくりの艦橋にオペレータ達の声が響く。
私は、ただ見守ることしかできない……。

約1時間後。

「敵エヴァンゲリオンを肉眼で確認!」
アスカの声が聞こえてきた。
「何度見ても虫酸が走るブッサイクな連中ね。あたしが引導を渡してやるわ!」

372:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/02 10:21:55
艦橋に戦闘の様子が映し出される。
戦場は、ここから数十キロ離れた珊瑚礁で、
エヴァの巨体から見れば「浅瀬」と言っていいようなところだ。

弐号機の動きは明らかに敵のそれを上回っている。
しかし、敵の量産機は数で勝る上に、前に見たときよりも性能が向上しているようだ。

「くっ、頭からっぽの量産機のクセに……ちょっとは学んでるみたいね」
モニターの一つにアスカの苦しそうな顔が映る。

「シンクロ率低下!」
「敵機影、更に3体増えました!」
苦渋に満ちたオペレータ達の声からも状況が我々に不利なことが分かる。

そして、ついに量産機の1機が弐号機を羽交い締めのようにして捕らえた。
他の量産機がわらわらとやってきて、剣とも槍ともつかない武器を構える。

「もはやこれまで、か……」
アスカの諦めの言葉が聞こえてきた。

そんな………!!

アスカが絶体絶命となったそのとき、
突如として全幅200メートルはある巨大な輸送機の影が私たちの艦を覆った。

373:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/02 10:23:47
私の目の前で理解を超えた光景が繰り広げられる。

何と、綾波さんの零号機とシンジの初号機が加勢に来たのだ。
3機が力を合わせて、みるみる間に敵の量産機を撃破していく。

「提督、赤木リツコ博士から通信が入っています」
「繋げ」

「博士、今降下してきた2機は一体なんだね?」
「MAGENで再生した零号機と初号機です」
「再生?そんなことが可能だとは聞いてないが」
「いいえ、理論的可能性は以前から指摘されてましたわ。
 今回は、胚性幹細胞に零号機・初号機の肉片から採取した体細胞の核を移植し、
 それを分化させることで、再生しました。
 初号機はコアが破壊されていたために少々手間取りましたが……」
「……技術的解説は結構。それでは、敵のエヴァンゲリオンも
 同じようにして再生されたものなのかね?」
「おそらく」
「分かった。協力に感謝する」

通信が終わる頃には、敵の量産機は全て殲滅されていた。
意気揚がる艦内。水兵達は飛び上がって喜んでいる。


しかし………。

374:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/02 10:25:27
「アスカ、相談があるんだ」
モニターからシンジの声が聞こえてくる。

「わたしの零号機と碇君の初号機にはN2爆雷が搭載されているわ」
今度は綾波さんの声。

「エヴァのせいで何億もの人たちが死んだ……」

「もう使徒はいないのに、いいえ、使徒がいなくなったからこそ、
 人はエヴァを巡って争い続ける」

「エヴァなんてものがこの世にあってはいけないんだ!」

「そして、わたしたちチルドレンも」

「三人で自爆しよう、アスカ」

「呪われた運命を断ち切りましょう」

シンジ、綾波さん、あなたたち、なんてことを言うの………。

「なるほどね。実はあたしも思ってたんだ。
 あたしさえ死ねば戦争は終わるんじゃないの? ってね。
 いいわ。あんたたちと一緒に死んであげる」

アスカ!!

「でも、その前に…………」

375:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/02 10:27:24
「マナ、聞こえる?」
「ええ、聞こえるわ。だめっ、アスカ、シンジ、綾波さん! 自爆なんて絶対だめ!!」
「いいから、聞いて。マナ」

「あのときはごめんなさい」
「あのとき?」
「屋上でのアレよ。あたし、どうかしてた」
「いいの。とにかく自爆なんてやめて! すぐにエヴァから降りて!」

「あなたと一緒に暮らせて楽しかった。
 あたしたち本当の友達、いいえ、家族よ。ね、そうでしょ?」

「……うん……私たち………家族…………」
あとは言葉にならなかった。

「よかった。家族ができて」

「いいわよ」
「いきましょう」
「うん」

3機のエヴァが肩を組んだかと思うと、次の瞬間、正面スクリーンの映像が途絶えた。

「いやあぁぁぁぁっっ!!!!」

私は声の限りに叫んだ。

376:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/02 10:31:12
絶月望日

艦が日本へ向かう間、私は抜け殻のように自室のベッドの上で丸くなっていた。
三人が望んだ通り、戦争は終結へと導かれた。
互いに切り札を失った戦自と米・中連合軍は、停戦に合意し、
それぞれ停戦ラインまで撤退を始めた。
ミサトさんは拘束を解かれ、一足先に日本へ帰り着いたらしい。

しかし、全てが遠い宇宙の出来事のように感じる。
唯一心の中を占めているのは、あんなに簡単に死を選んだ三人への怒りにも似た感情。

シンジは最後まで私に声をかけてくれなかった………。

フラフラと甲板に出てみる。波が高い。落ちたら助からないだろう。

絶望、それは死に至る病。

このまま身を投げてしまおうか?
何度もそう思ったけど、結局できなかった。


377:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/02 10:32:49
帰月郷日

私の抜け殻が日本に戻ってきた。
日本のあちこちが焼け野原になったと聞いたけど、
第三新東京市及び幾つかの主要都市だけは、
鉄壁の迎撃ミサイルシステムのお陰でほぼ無傷だ。

ミサトさん宅までの道のりで何度もため息をついては立ち止まり、
ようやく帰り着いたのは、日もすっかり暮れた頃だった。

玄関の明かりがついている。
ミサトさんはもう帰ってきてるみたい。
「ただいま……」
「お帰りなさ~い」
私を迎える明るい声。玄関にはたくさんの靴。
そこにはなんと、ミサトさんだけでなくシンジ、アスカ、綾波さん、
そして、リツコさんまでが居た!!

「みんな……………!?」


378:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/02 10:34:31
あの自爆の映像は合成で、あらかじめ作られたものだった。
ただし、エヴァ3機が全て破壊されたのは本当。

「びっくりしたわよ。いよいよと思って目をつぶったのに、全然爆発しないしさ。
 で、恐る恐る目を開けたらエントリープラグが強制排出されちゃって」

つまり、映像が砂嵐になった時点ではまだ爆発していなくて、
数分後、脱出完了してから爆発したのだった。
映像は時間表示を細工して世界に発表され、厭戦ムードを作り出すのに一役かった。
特にアスカの最後の言葉は世界中の人々の紅涙を絞ったという。
こうして、世界にエヴァとチルドレンは永久に失われたと思わせ、
エヴァを巡る争いに終止符を打とうとしたわけ。

筋書きを書いたのはシンジのお父さん。
そして、リツコさんやマヤさんがその意に従って動いていたらしい。

「黙ってて本当にごめん」
「ひどいよ、シンジ………ひどいよ…………」
言葉で表しようのない熱いものがこみ上げて来る。

「シンジ君とレイを責めないであげて。味方をも欺くのが作戦の中核だったの」
「そうよ、マナ。それに、あたしなんかすっかり死ぬと思いこまされて、
 こっぱずかしいこと口走っちゃってさぁ。もう、いい面の皮よ。
 それに比べたらあんたなんかまだマシよ」

私たちは、泣きながら抱き合った。

今後、シンジ・アスカ・綾波さんの三人は名前を変えて別々の街に移り住むという。
「仕方ないのよ。世界中で死んだと思われちゃってるもんね」

379:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/02 10:36:17
旅月立日

あれから一週間。

「本当にごめんなさい」
今日も国連ビル内で開かれる会議に出席しないといけないミサトさんは、
三人の見送りができないことを残念がっていた。
「シンジ君、アスカ、レイ。笑顔でお別れしましょう。さようなら」


第三新東京国際空港の国内ターミナル。
三人はそれぞれの街へ向かって出発する。
「さようなら。碇君、アスカ、霧島さん。あなたたちのことは忘れないわ」
「さようなら、レイ」
アスカはこのとき、初めて綾波さんを名前で呼んだ。
「さようなら、綾波さん……」
「綾波……。さようなら、元気で……」
綾波さんは微笑みを浮かべ、そして、搭乗口へ消えていった。

「僕も、ここで……」
「…さようなら、シンジ……」
覚えず涙が頬をつたう。
「なに、メソメソしてんのよ、あんたたち。
 シンジ、レイを見習いなさい。アイツはもうとっくに行っちゃったわよ」

何とか笑顔を作ろうとしているのに、次から次へと涙があふれ出てしまう。
「うん、さようなら、マナ。さようなら、アスカ」
 そう言って私たちに背を向け歩き出すシンジ。

「あたしは、国際ターミナルだから見送りはいいわ」
私の泣き笑いの表情をしげしげと見つめながら、アスカが言った。

380:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/02 10:38:47
「そんな……最後まで見送らせてよ」

「あんたはシンジを追いかけなさい」
「えっ?」
「だ・か・ら、シンジを追いかけて捕まえなさいってば。
 そして、捕まえたら首根っこに齧り付いて離さないことね」
「でも、私……航空券も持ってないし」
「飛行機がダメなら電車でもなんでも使って二人で駆け落ちすればいいじゃない!
 今を逃したら、永遠に会えなくなるのよ」

「う、うん。そうだよね。ありがとう! アスカ。さようなら!」
両手でアスカの手を握りしめ、感謝と別れの言葉を口にすると、
即座に走り出す私。


「シンジ!!」
あたりかまわず大声で叫ぶ。
「マナ!!」
私は、驚いて振り返った彼の胸に飛び込んでいった。


                 完



381:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/02 13:59:40
別スレから飛んできますたよー。以下感想。

長えぇ!けど、簡潔にサクサク読めます。
カブ話の裏で黒々した話がずっと続いてるのがええ按配でオモシロス。

粗探しすればテンポよく進む分、肝心のシリアス部分が唐突というか、
何の取引材料もなく子供にお願いする大人達とか、魂うんぬんを
突然解説してあっさり受け入れる子供達とか、カヲルなんで散歩
しとるねん、とか、細部でちっとひっかかるかも。
アイシールド21みたいな感じ。

正直、本編チックな分、鋼鉄2漫画よりよっぽど面白かったですよ。
エヴァ壊すってのは映画後日談の落としどころとして、一番納得
できるもんのひとつなんじゃないかしら。

以上、感想垂れ流し失礼。つーか批評とか無理ぽ。

382:252=283=332
06/09/02 14:46:53
>>381
(敬語じゃ媚びてるっぽくなるので、タメ口で書きます)
語らんか?スレで批評をお願いしたのを見て来てくれた人だね。

なるほど、確かに、読者はエヴァ見たことあるという前提に甘えて
説明不足のところあるかな。うーん、難しい。
説明しすぎてもウザったくなるしね。

カヲルに関しては、ダミーシステムが温存されていたことによる
「副産物」みたいなイメージで書いた。
一人目のカヲルの魂が素体の一つに宿って、
水槽から脱走して街をフラついてる、みたいな。

383:252=283=332
06/09/02 15:13:40
補足。

一番問題なのは↓だよね。
> 何の取引材料もなく子供にお願いする大人達

マナに唐突に命令が来るのは「非常時特例」であり法律に則った措置である、
ということにしているんだけど、
シンジとレイに、名前を変えて他の街に移り住むというようなことを
納得させるだけの動機が描かれてない。
強いて言えば、アスカを助けることと、戦争を終わらせることかな。ちと弱いね。

384:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/02 16:28:27
いやー所詮、粗さがしなもんで。名作名作。

あんまし動機とかギチギチに理詰めにされると、それはそれで
流されるだけのキャラに見えるっぽいし。本作みたいにコメディ
部分でキャラ描いておいて、シリアス部分で一気に動かす、
ってのが賢いやり方なんじゃないですかねえ。
島編あってのナディア終盤、みたいな。

385:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/03 12:17:31
完結したな。
とにかく乙。

386:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/04 04:33:11
完結したのはいいけど、もう続きないの?

(´・ω・`)

387:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/05 03:05:41
(´・ω・`)

388:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/05 08:58:58
ここまでのマナ画像まとめ。

URLリンク(www.dotup.org)

389:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/06 10:23:58
今から読む人のためのガイドとしてコピペ推奨。

>>14-160       第一部
>>252-262    第二部(おすすめ)
>>283-310    第三部
>>332-380    第四部


スレ冒頭から続いた物語りは完全に終わったね。
新しい職人をまったり待とう。

390:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/06 21:35:05
長かったぜベイベ

391:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/09 06:11:05
>>389
㌧クス
今度は通しで読もうっと

392:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/12 01:49:55
age

393:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/12 01:58:50
agaってるので、前読んだとき引っかかった点を一つ。

>>294
gefallenは~に甘んじるとかいう意味だよね?
なんで賽は投げられたになるわけ?

394:252=283=332
06/09/12 02:28:24
>>393
ラテン語の"Alea iacta est"をドイツ語に直訳すると"Der Würfel ist geworfen"だけど、
ドイツでは"Der Würfel ist gefallen"の方が人口に膾炙してるんよ。
↓参照。
URLリンク(de.wikipedia.org)

実は、ゲームのなかでアスカはこの台詞("Der Würfel ist gefallen")を
全く別の文脈で言っている。>>294はそのパロディ。

395:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/12 03:01:39
>>394
おお、ご丁寧に解説有り難うございます。
ドイツ語かじった程度なので難しいですが、wikipediaのぞいてみます。

396:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/12 03:07:34
>>394
新シリーズ書いて。
名探偵霧島マナとかw

397:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/13 15:13:12
          .'⌒⌒丶  たいやき、ちょーだい
         彡从 从ミ
*・゜゚・*:.。..。.:*・゜ ソゝ^ヮ^v ゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*
         ⊂ヽ∀)⊃
          <,/_|」>
           し'i_ノ

398:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/14 23:05:34
マナってたい焼きが好物だったのか?
そんな設定あったっけ。
なんにしても楽しませてくれた252=283=332の方に感謝。

399:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/15 09:50:47
>>398
鋼鉄のガールフレンド内にはそんな設定なかった。
たぶん、>>28の影響。アスカのハンバーグ好きみたいなもんやねw

400:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/15 11:56:07
          .'⌒⌒丶  今川焼きも好きよ~
         彡从 从ミ
*・゜゚・*:.。..。.:*・゜ ソゝ^ヮ^v ゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*
         ⊂ヽ∀)⊃
          <,/_|」>
           し'i_ノ

401:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/15 13:41:50
今から読む人のためのガイドとしてコピペ推奨。

>>14-160       第一部
>>252-262    第二部
>>283-310    第三部
>>332-380    第四部


まったり投下街

402:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/15 23:20:16
>>399
なるほど、そゆ訳ね。


やっぱマナが一番可愛いよ♥ 
今川焼き  つ○ 

403:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/15 23:31:41
たいやき つ><lll'>

404:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/16 03:24:34
っていうかマナは何でも食いそうだ

405:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/19 22:23:32 zkygTPCc
唐揚げうまうま

406:アスカ
06/09/22 08:21:35
霧島マナはスパイよ!

407:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/22 15:07:30
>>406
懐かし~

URLリンク(www.dotup.org)

408:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/25 00:57:59
保守

409:252=283=332
06/09/27 22:21:43
久々に投下します。>>283-380のどこかに入る話です。
今後はこんな感じでぼちぼち書いてみようかと思っています。
できれば、ですが。

410:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/27 22:23:12
初月秋日

「あーあ、タイクツゥ~」
最近、アスカは暇をもてあましてるみたい。

「そだ、ゲーセン行きましょ、ゲーセン」
「でも、ゲーム機うちにあるじゃない。お金もったいないよ」
「家庭用とアーケードじゃ全然モノが違うのよ。いいから、行きましょ。さぁ」

と、いうわけで最寄りのゲームセンターに到着。

「よぉ、アスカ、ひさしぶりじゃん。その娘は?」
顔見知りらしい数人の男の子が早くもアスカを取り巻く。
いわゆるゲーセンクイーンってやつね。さすが、アスカ。
「友達よ。ゲーセン初めてだから色々教えてあげて」
「へー、そうなんだ。君、名前は?」
「マナ」
「そっかぁ、マナちゃん、どんなゲームが好き?
 格ゲー? 音ゲー? コインとか?」
アスカの取り巻きの大半が私の方に来る。
なんなの……、このモテっぷりは。まぁ、悪い気はしないけど。


411:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/27 22:24:47
「そ、それじゃ……これやってみようかな」
とりあえず目についた台を指さす。
「フライトシムか、シブいなぁ。さぁ、どうぞ、どうぞ」
男の子たちの一人がわざわざコインを入れてくれる。
えへへ、得しちゃった。
ゲーム自体は超簡単。
トライデントはもちろんのことジェット練習機と比べても、
レスポンスはリニアだし震動はないしで楽勝って感じ。
ただし、敵の数はやたらに多い。

しばらくの間ゲームに興じ、気がつくと
周囲はちょっとした人だかりになっている。
中高生や大学生やフリーターやオジさんたちの注目を一身に浴びながら
黙々と画面の中の敵機を撃破していく私。
「うぉ~、すげ~」
歓声が上がり、急に恥ずかしくなって手元が狂ってしまった。

―ゲーム・オーバー。

「惜しかったねー、でも女の子で14面まで行ったの初めて見たよ」
「本当に初めて? 実はゲーセン荒らしなんじゃないの?」
男の子達がむやみにちやほやしてくれる。
「えっと、私、連れが待ってるからもう行くね」
急いで立ち去りながら、アスカの姿を探す。

412:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/27 22:27:01
彼女は格闘ゲームのコーナーにいた。

「やっぱ、ストレス解消はこれに限るわね」
「でも、このコーナーちょっと怖くない?
 なんか、熱くなってケンカしてる人たちもいるし」
「格ゲーのあとでリアルファイトに発展するのもまた一興よ」
そっか~、リアルファイトも強いからね~
って、アスカ、それ、女の子の台詞とは思えないよ……。

その後、私もちょっと格闘ゲームしてみたり(やっぱりアスカにボコられた)、
プリクラ撮ったりして家路についた。

夕闇の迫る団地へと続く坂道。
「いやぁ、マナがウザーい男共を引き受けてくれたから今日はゲームを堪能できたわ」
やっぱり、私を連れて行った目的はそれだったのね。
「もう。アスカの男よけの役ならもう一緒に行ってあげないよ」
「そんなこと言わずに、また行きましょうよ、ねっ」
そう言って、しなだれかかってくるアスカ。
「そんなにくっつかないでよ、恥ずかしい」
思わず赤くなってしまう私。
「"Ich werde mich nicht langweilen, mit dich."
 (まったく、あなたといると退屈しないわ)」
アスカが耳元で何か呟く。
「バ、バウムクーヘン?!」
とりあえず、知っているドイツ語で応答してみる。

「ほら、ね」
アスカは上機嫌で私にウィンクした。

413:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/27 22:41:24 S1BYK0Zk
薩摩揚げ

414:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/28 15:58:05
支援投下age

URLリンク(www.dotup.org)

415:414
06/09/28 16:02:52
>>411-412
言い忘れたけど、乙。

416:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/28 22:01:35
麻月雀日

「ただいま~」
今日は日直でちょっと遅い帰宅。
ん、この男物の靴は加持さんかな?

「ちょうどいいところに帰ってきたわ、マナちゃん。
 麻雀しよ、まーじゃん。面子が一人足りないの」

と、いうわけで私とアスカ、それにミサトさんと加持さんとで
麻雀大会と相成った。

「点5なんてかったるくてやってられないわ。
 今日は点ピンでいきましょ。いいわよね、ミサト」
アスカはお小遣いを増やすチャンスとばかりに張り切っている。
でもね、アスカ。減ることもあるんだよ………。

「望むところよ」
ミサトさんも自信満々。

「まいったなぁ、こりゃ。ま、お手柔らかにな」
加持さんは弱気なフリをしているけど、一番強そう。

うーむ、これは厳しい戦いになりそうね。

417:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/28 22:03:59
一半荘目、ラス。その後三半荘三着・ラス・ラス……。
マズい、マズすぎるよ! お小遣いなくなっちゃう。

加持さんが、カチャ、カチャッと手慣れた様子で牌を並べながら、
シュボッと格好良く煙草に火をつける。
もう部屋中煙だらけ。格好いいけど煙いよ加持さん……。
他の男が同じことするとアスカにぶっ飛ばされるだろうけど、
アスカは、加持さんにだけはなにも言わない。

煙いし、和了れないしで涙目になりながら打ち続ける。

………ん? ふと気がつくとかなりいい感じの配牌な気がする。
  ___________________________  __
 │一│一│一│九│九│九│五│八│九│  │  │  │一│|九|
 │萬│萬│萬│萬│萬│萬│索│索│索│◎│◎│◎│索│|索|
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘└─┘

こ、これはもしかして!?

418:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/28 22:06:21
「ロン!!」
数順後、ミサトさんが一索を捨てたのを見逃すわけもなかった。
  ___________________________  __
 │一│一│一│九│九│九│九│九│九│  │  │  │一│|一|
 │萬│萬│萬│萬│萬│萬│索│索│索│◎│◎│◎│索│|索|
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘└─┘

「四暗刻・清老頭です」
「「「どひゃ~」」」

ミサトさんには悪いけど、これで一気に挽回。
私はトップになった。バンザーイ。

「あちゃぁ~、今日はイケると思ったのに」
口惜しそうなミサトさん。
「こりゃ、例のやつはお預けかな?」
加持さんがよく分からないことを言う。
「なんの、勝負は下駄を履くまで分からないわよ~」
と、ミサトさんが袖をまくる。
「なに、なに? 何の話?」
アスカが興味津々で尋ねるが、
「大人の話よ」
と、はぐらかされてしまった。
なぜかアスカは怒ったような恥ずかしがるような、妙な表情になる。

その後私はツキにツキまくり、終わってみると私がトップ、
アスカが二着、加持さんが三着、ミサトさんが四着だった。

419:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/28 22:08:07
「むき~、もう寝る」
ビリになったミサトさんはふてくされて寝床へ入っていく。
なんだか、ほんとにミサトさんに悪いことしたみたい。

「俺も帰るよ。またな」
「え~、帰るの? 泊まっていってよ、加持さん」
加持さんを引き留めるアスカを尻目に、私は今日の稼ぎを勘定する。
しめて\35,000也。いひひ、儲けちゃった♥

それにしても、ミサトさんと加持さん、お金以外に何か賭けてたのかな?
なんだか知らないけど、急にミサトさんとアスカの機嫌がわるくなって、
針の筵だよ……。とほほ。

420:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/28 22:56:29 xoEVWOm0


一発賭けてたなw

421:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/29 12:24:40
なんで麻雀できるん?

422:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/29 18:15:40
>>421
脱衣補完計画

423:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/29 23:59:50
>>422
マナ出てないじゃんw

424:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/30 04:02:49
毎度お馴染み支援投下。
ただし、マナはいない。。

URLリンク(www.dotup.org)
URLリンク(www.dotup.org)

425:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/30 15:09:57
>>424
他のキャラのもキボン

レイとかマヤとかリツコとか…

426:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/30 16:21:24
>>425
レイとリツコ。
マヤは「その他」に押し込められて表情集がない。

URLリンク(www.dotup.org)
URLリンク(www.dotup.org)

427:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/30 16:40:52
麻月雀日
夜、ミサトさん、レイ、アスカと麻雀をやった。
アスカの奴、やたらついてやがったがきっといかさまにちがいねェ。
私たちをばかにしやがって。


428:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/30 16:42:44
人月造日
今日、研究員のおえら方から新しい化け物の世話を頼まれた。
皮をひんむいた人間のような奴だ。
生きたえさがいいってんで、使途を投げこんだら、奴ら、足をもぎ取ったり内臓を引き出したり
遊んだあげくやっと食いやがる。


429:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/30 16:45:08
事月故日
今朝5時頃、全身タイツみてえな防護衣を着たアスカに突然たたき起こされて私も全身タイツを
着せられた。なんでも、研究所で事故があったらしい。
研究員の連中ときたら、夜も寝ないで実験ばかりやってるからこんな事になるんだ。


430:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/30 16:47:31
蒸月濡日
昨日からこのいまいましい全身タイツをつけたままなんで、背中がむれちまって妙にかゆい。
いらいらするんで、腹いせにあのペンギンの飯を抜きにしてやった。
いい気味だ。


431:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/30 16:49:00
背月痒日
あまりに背中がかゆいんで医務室にいったら、背中にでっけえバンソウコウを貼られた。
それから、もう私はプラグスーツを着なくていいとリツコさんがいった。
おかげで今夜はよく眠れそうだぜ。


432:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/30 16:51:33
腫月物日
朝起きたら、背中だけでなく足にも腫物ができてやがった。
人造人間のオリがやけに静かなんで、足引きずって見に行ったら数が全然たりねえ。
めしを三日抜いたくらいで逃げやがって。
おえら方に見つかったら大変だ。


433:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/30 16:53:53
巨月乳日
昨日、この本部から逃げ出そうとしたオペれーたーが一人、射さつされた、て はなしだ。
夜、からだ中 あついかゆい。
胸がはり うれしくなって もんでたら 肉がくさり落ちやがた。
いったいわたし どうな て

434:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/30 16:55:02
月 日
やと ねつ ひいた も とてもかゆい
今日 はらへったの、エヴァ のエサ くう


435:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/30 16:56:13
か月ゆい日
かゆい かゆい シンジーキタ━━ヽ(゚∀゚)ノ━( ゚∀)ノ━( ゚)ノ━ヽ( )ノ━ヽ(゚ )━ヽ(∀゚ )ノ━ヽ(゚∀゚)ノ━━!
ひどいかおなんで ころし
うまかっ です。


436:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/30 16:58:09
存日
かゆい
うま


437:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/09/30 21:42:02
・・・・・・。ま、どんなSS投下しようと自由だしな。
気をとりなおして、口直し物資投下。


URLリンク(www.dotup.org)

438:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/01 12:28:49
とても小さいけどマスコットマナの六態。

URLリンク(tamago.donburi.org)

439:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/01 18:00:56
>>438 kwsk

440:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/01 20:42:03
焼月蕎麦日

今日の食事当番はミサトさん。
でも、夕方の7時を過ぎてもまったく支度する様子がない。
もう、おなか減ってきちゃったんだけど。

「あの、ミサトさん……? お夕飯の準備は?」
「あぁ、準備なんか必要ないの。今夜は特製カレーラーメンよ」
「って、カップラーメンにレトルトカレーをかけるアレですか?」
「そそ♪」
「えぇー、またぁ? いいけど、カレーかけるのはミサトだけにしてよね」
「私もやっぱり普通のラーメンの方が……」
「なーんだ、あなたたち、カレー味嫌いなの? ま、いいわ。
 カップラーメンいっぱいあるから、好きなの選んで食べなさい」

とほほ。
しかし、こんな食生活でどうやってのあのプロポーションを維持しているんだろ、ホント。
いっぺん秘訣を聞いておきたいよ……。

「うーん、あたしの好きなやつがないなぁ」
と、アスカ。へぇ、アスカにもカップラーメンの好みとかあるのね。ちょっと意外。
「アスカの好きなのって何?」
「えっとね、漢字読めないから商品名はよく分かんないんだけど、
 カップが四角くてね、スープがソースを薄くしたみたいでね、マヨネーズかけて食べるの」

アスカ、それって………。

441:■
06/10/01 23:17:29
[´∀`]<僕のことだな!

442:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/01 23:19:29
>>441
ヤキソバン乙w

あと、マナの中の人、いつもご苦労様です。

443:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/02 00:58:03
ペヤングじゃんww

444:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/02 03:15:33
焼きそば弁当では?と、思う俺は北海道民…

445:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/02 18:43:03
意表を突いて、焼きうどん弁当とか
URLリンク(store.yahoo.co.jp)

446:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/02 23:34:40
>>439
「鋼鉄」のコレクターズディスクに入ってるアクセサリー。
起動させるとちびマナがデスクトップ上に現れる。
通常は白ワンピ姿で、クリックするとランダムで五つの内どれかの服装になり、
ちょっとした動きをする。

447:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/02 23:43:55
>>446
ありがと。レアアイテムっぽいね。

448:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/10/04 22:36:34
宿月題日

「ねぇ、マナ。あなたこの前、風邪で学校休んだじゃない?」
アスカがいつになくそわそわした様子で話しかけてくる。
「う、うん」
「あのね……、渡し忘れてたんだけど……、はい、これ」
と、数枚のハンドアウトを手渡された。
これ、学校の宿題じゃない。しかも、今週いっぱいで締め切り。
しかも、今は日曜の夜8時。もう間に合わないよ……。

「"kein Problem!!"」
アスカが私の肩を叩く。
「二人で手分けすればまだ間に合うわ」
「って、アスカもやってないの?」
「そうなのよ。さ、口を動かしてても始まらないわ、リビングでやりましょ」

リビングのテーブルではミサトさんがたくさんの書類を広げている。

「ミサトも宿題?」
「ま、そんなとこよ」
ミサトさんは憮然としてPCのモニタを眺めながら答えた。

それから数十分、私たちは書類を読んだり鉛筆を走らせたりキーボードを叩いたり。


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