05/01/11 16:01:40
今日はどうやら真っ直ぐ帰るらしいアスカの後姿を見つめながら、シンジは美術室での出来事を反芻していた。
(とにかく、トウジには後で改めて謝ろう。
それから、沢山お礼を言わなくちゃ。
僕のためにあんなに怒ってくれたんだ。
・・・アスカはあんなだけど、それでも以前よりは前進してる気がする。
前はもっと、脈絡なんて全然ないくらいだったもんな。)
今のアスカが歪であれ彼に固執していることは、シンジ自身、気づいてないわけもない。
けれど、ゆっくりでも負の想いを吐き出し続ければ、いつしか気が済んで、彼女が彼に無感になる時が来るだろう。
アスカはそんなに馬鹿じゃないから、とシンジは思う。
そうやっていつか、彼女が快活さを取り戻すときが来るだろう。
そして離れていくだろう。
シンジの中にあるアスカを想う部分、それを苦しめるためだけに繰り返すデートの相手も、毎日の洋服のように取り替えるどうでもいい男達ではなく、きっと本物の恋人に替わるだろう。
その頃には、アスカは日本にさえいないかも知れない。
近いうちに全て終わるのではないか。そうシンジは感じていた。
アスカとの関係も。
彼の、虐げられる痛みも。
きっと。でも。
苦しみの終わりを、望んでもいいのだろうか?
それが、別の苦しみの始まりでないという保障があるだろうか?
シンジにとって確かなのは、他にどうしようもない、という事だけだった。
(第一話 了)