06/01/17 16:46:44
「…まいったな…」
加持は少し頬を赤らめながらそう呟き、ぽりぽりと頭を掻いた。
どうやらこれは、単なる火遊びで済みそうもない予感がする。
加持はなんとなくそう感じながらシンジの隣に寝そべると、彼の身体を抱きしめた。
「まさかここまでとは…。一体どこをどうしたらあの親父からこんな可愛いのが
できるんだか不思議だよ、俺は」
ついでにどうやったら、こんな可愛い相手にあそこまで邪険に出来るのか、秘訣でも聞きたい
気がして加持は複雑な笑みを浮かべる。
それから欠伸を一つすると、目を閉じ枕に顔を埋めた。
今夜はいい夢が見れそうだ。
久しぶりのその感覚に苦笑いしながら、加持もゆっくりと眠りに落ちて行く。
伝わってくるぬくもりが、とても嬉しい。
それを感じていたのは一体どちらなのか分からぬまま、夜は静かに更けていった。
601:569
06/01/17 16:48:50
加持が目を覚ますと、部屋には誰もいなかった。まさか昨夜の出来事は夢だったのかと一瞬
混乱するが、テーブルの上に書き置きを見つけほっと胸を撫で下ろす。しかしその内容を見て
再び加持の身体に衝撃が走った。
【お風呂行ってきます。 シンジ】
たったそれだけの走り書きだったが、加持は昨夜露天風呂のことを伝えた自分に軽く後悔する。
温泉地の宿泊客は総じて酔っ払いが多い。ここはホテルだからそれほどひどい客は居ないだろうが、
それでも万が一ということもある。それが昨夜シンジを風呂に行かせなかった理由のひとつでもあった。
朝自分と一緒に行けばいいだろうと油断した自分が恨めしい。
過保護かなとも思うが、昨日のシンジの脅え方を見たら誰でもそうせざるを得ないだろう。
ともあれ加持は慌てて部屋を飛び出すとシンジの後を追いかけた。
その頃シンジは風呂の脱衣所で入浴の準備をしていた。と、その肩を叩く者がいる。加持が来たのかなと
振り向くと、そこには昨夜の酒がまだ残っているのだろう、赤い顔をした男がにやにやと笑っていた。
「おじょーちゃん、女湯はあっちだぜ?それともおじさんと一緒に入るか?ん?」
酒臭い息に眉を顰めると、シンジは男に向き直る。
「僕は男です!…それから、気安く触らないで下さい」
そう言うと男の手を払いのけた。その態度に男の顔色が変わる。
「んだと?!可愛い顔してるから優しくしてやりゃ付け上がりやがって。男だってんなら
証拠見せてもらおうか?」
凄む様にそう言うと、男はシンジの身体を抱きすくめると浴衣の上から身体を弄る。
602:569
06/01/17 16:52:28
「…や…っ止めて下さい…!」
びくんと震えるシンジに、にやにやと男は顔を近づけ股間を弄った。
「…ぁ…っ嫌…っ!」
「へえ、ほんとに男だな。そのわりにゃ可愛い声出しやがって…」
はあはあと男の息遣いが荒くなってくる。シンジはびくりと身体を震わせると男の腕から逃れようともがいた。
「離してください!…やだ…っ!」
「色っぽい反応だな…どれ、おじさんが可愛がってやるよ」
舐め回すような目つきでそう言うと、男の手がシンジの胸を弄り、股間を激しく撫で回す。
その感触にシンジの全身が総毛だった。昨夜とはまったく意味の違う、まさしく嫌悪感で。
シンジはきっ、と男を睨むと怯んだように緩む腕の中から急いで逃げ出し男に向き直る。
昨日の痴漢男と目の前の男の姿がシンクロする。シンジは叫びだしたくなるような恐怖を覚えながらも、
あえてその場に踏みとどまった。
『逃げちゃ駄目だ。逃げちゃ駄目だ。…ここで逃げたら昨日と同じだ…!』
昨日の加持に見せた失態。シンジはあんな風に彼を困らせるのは、もう嫌だった。だから必死で男を睨みつける。
そして。
言い争いの声を聞きつけ、焦ったように脱衣所に飛び込んできた加持がそこで見たものは、股間を
押さえて蹲る男の姿と、乱れた浴衣を直しながらそれを見下ろすシンジの姿だった。
どうやらぶち切れたシンジに思いっきり蹴り上げられたらしい。加持は少しだけ男に同情すると、
シンジに声をかける。
「お見事。いや、たいしたもんだ。俺が焦って追いかけてくることもなかったな」
その言葉に振り向くとシンジの目が途端に潤む。
「加持さん…!」
ぽろぽろと涙を流す。どうやら一気に緊張が緩んだらしい彼の様子に背中をぽんぽんと撫でて
やりながら落ち着かせる。
それからどうせなら、と露天風呂にシンジを連れて行く。湯に浸かってだいぶ落ち着いたらしく、シンジも
気持ちよさそうに身体を伸ばした。
603:569
06/01/17 16:53:50
「僕…怖かったです」
ひと心地ついてシンジは俯きながらそう呟いた。加持は黙ってそれに耳を傾ける。
「でも、いつも僕のそばに加持さんに居て貰うわけにはいかないから…だから頑張って逃げませんでした」
シンジの言葉に加持はにこりと微笑んだ。やはり目の前の幼い彼は、それでも男なのだなと
嬉しくもあり、少々残念な気もする。
「よくやったな、シンジ君」
複雑な心境で呟いた加持の言葉に、シンジは嬉しそうににっこりと笑う。その笑顔を見ると、
やはりこれで良かったのだと思えてきた。
「いい眺めだろう。遠くに駒ケ岳、眼下に広がる湿原。…そうだ、姥子にある宿もいいんだぞ。
芦ノ湖が一望できる巨大露天風呂があってな、なかなか爽快だ」
話題をすり替えようとにこやかにそう言う加持に、シンジは楽しそうにふふ、と微笑んだ。
「へえ、今度連れて行ってくださいね」
シンジの言葉に加持は少しどきりとする。
「…それは、またお相手願えるって事かな?」
「それはお断りします。もう御免ですよ、加持さんしつこいし」
唇を尖らせる彼の姿に、加持は思わず噴出した。
しばらくそのまま二人で笑い転げる。
嬉しそうに笑うシンジの横顔に朝日が反射する。湯の中で火照ったその表情は思わず見とれて
しまうぐらい綺麗で、加持はなんとなく苦笑いした。
若さってのは、強さだな。
そう思ってしまう自分に歳を感じるのは、少々加持にとって不本意だったが、それでも彼の笑顔を
見ているとそれもどうでもいい事のように思えてくるから不思議だ。
加持は辺りに誰もいないことを確かめると、彼の身体を抱き寄せそっと、キスをした。
湯煙の中睦みあう二人を祝福するかのように、朝日がそっと二人を照らす。
沸き起こる愛しさに、加持は再びシンジに気づかれぬ様、苦笑いをした-----
604:569
06/01/17 16:57:13
「シンジ君、本当にいいのか?遠慮ならいらないから、やっぱりタクシー呼ぶか?」
なんとなくおろおろした様子の加持に、シンジはにっこり微笑みかける。
それもその筈、二人が立っていたのは昨日シンジが襲われたあの駅のホームだった。
その後のシンジの様子を思い起こせば、加持のその心配も無理のない事といえる。多少
吹っ切れたとはいえ、実際たった一晩であの心の傷が癒えるとは加持には思えなかった。
「大丈夫です。これから先も一人で電車に乗れなかったら、それこそ僕困っちゃいますから」
しかし、と呟く加持の手をシンジはそっと握った。
「…ほんとは怖いです。でも、きっと大丈夫です。…加持さんが、居てくれるから」
その手がふるふると震えていた。加持はそれに気付くと応えるようにその手をしっかりと握り返す。
「…そうだな。大丈夫だシンジ君。俺がついてる」
「…はい」
微笑みあう二人の目の前に、昨日と同じ電車が近づいてくる。
シンジは少しだけ溜息をつくと、きりと前を向き歩を進めた。
『大丈夫』
『加持さんと居れば、怖くなんかない』
『強くなるんだ、僕は。…加持さんみたいに』
そして、二人の目の前に扉が、開いた---
605:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/01/17 17:18:20
なんかもう、内容の割りに長い話ですいませんでした。
そして無駄にヒゲ親父の話題を出さずに居られない自分に乾杯。
そして次は何書こうかなあとまったく懲りてない様子です。
くっだらねえ話がいいな。すげえくっだらねえの。短めで。
トウジ×シンジって上の方にあったけど、ヒゲ親父の話の番外編みたいのしか
思い浮かばないや。どうもノーマルな気がして。トウジって。
また何か思いついたら投下します。読んでくださって有難うございます。
606:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/01/17 17:54:46
頼む!!トウシン書いてくれ!!!
誰でもいいから!!!!頼むーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!111
607:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/01/17 18:39:48
加持シン、GJ
トウシンスレ、前あったのに落ちたんだよなぁ。
あの続きが読みたいものだ
608:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/01/17 20:07:37
神マジGJGJ!!!完全に加持シンに目覚めた。
ハァハァした御礼にバファリン つ○
手が空いてたら是非トウシンも書いてくれw
609:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/01/17 22:46:57
トウシンは加持シンのようにエロくなく
友情以上恋愛未満くらいが好み
610:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/01/18 00:20:12
「なんやセンセ、ええ匂いがする…」
「ちょっ!やめてよトウジ!どこに顔近づけてるのさっ!」
「ええやんけ、ちょっとぐらい。ああ、ほんまええ匂い…なんや食べてしまいたいわ」
「やだ、ちょっ舐めないで…っ!」
「ええなあ、センセ可愛いわぁ」
「……やだって言ってるじゃないか!もう!いいかんげんにしてよ!」
すぱこーん!!!!
「いっつぅー!センセきっついわぁ…」
「知らない!トウジのバカ!」
横っ面を張られた衝撃を毛づくろいで誤魔化すロシアンブルー♂と
それを威嚇しながら逃げる雑種キジトラ♀
ウチの猫二匹が繰り広げる小劇場(実話)をトウシン目線でお送りしました。
親父話番外編トウシンは、没にしたネタをリライトして後日投下します。
気長にお待ちくださいませ。
つか他の人の話も読みたいぞー。投下キボンヌ。
611:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/01/18 16:03:21
>>610
GJ!!よくやった!!ほら、これでも飲んでくれ つ旦
とりあえずエロエロトウシン読みたい。
612:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/01/18 21:11:57
リライトしてみました。途中だけど。バファリンとお茶ありが㌧。
リク貰ったときゲンドウ×シンジの話に入れようとしたけど、どうもこれ入れると
話の主軸がぶれるし、広がりすぎてここに書き込めないくらいの長さになりそうだったから
没にしてました。これ入れるとヒゲに嫉妬とかさせなきゃイカンかったし、
それやるとまたややこしくなるからね。
なので日の目が見れてある意味良かったです。
「なあセンセ、頼む!一生のお願いや!」
「それ何回目の『一生のお願い』だっけ?…もう、しょうがないなあ。たまには自分でやりなよ」
毎朝の恒例行事のようなやり取りを経て、トウジはシンジから宿題のノートを受け取ると
いそいそと書き写す。やれやれという顔をしてシンジはそれを見つめると、ふと気付いたように
教室を見回した。
「あれ?ケンスケは?」
「んー?あいつならまたどっかに軍艦が来たから撮りに行ってくる言うてたで。 まったく
飽きんやっちゃなー」
こりこりと筆を走らせながらも律儀にトウジが答える。その言葉にふうん、と返事をすると
シンジは時計に目を走らせ慌ててトウジに声をかけた。
「あ、あと5分!写すなら早くしてよ?授業始まったらノート持って行くからね?!」
「嘘ぉん!もうそんな時間なんか?!そんな、殺生やで~」
ばりばりと筆のスピードを上げるトウジに、シンジは少し呆れ顔で
微笑むとはやくしてよ、と急かすように声をかけ自分の席へと戻った。
「今朝は助かったわ~センセ、ホンマおおきに。…なんや?昼飯教室で食わへんのか?」
何とか宿題を提出できたトウジが弁当をもって教室を出ようとするシンジににこやかに
声をかけてきた。
「うん。今日は天気がいいから屋上に行こうと思って」
「そっか、そりゃええな。…よっしゃ、ワシも付き合うたる。ちょお待っとってや」
そう言うとパンの入った袋を抱えてトウジも慌てて後をついて来た。それから二人で
屋上へと向かう。
613:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/01/18 21:14:58
「センセの弁当、美味そうやな~」
パンをかじりながらトウジは感心したようにそう呟いた。その言葉にシンジは照れくさそうに
微笑んでみせる。
「…そうかな。自分で作ってるから良く分からないけど…」
「おう。ワシはそういうちまちましたモンは、よう作られんからなぁ。尊敬するでホンマ」
素直な褒め言葉にシンジは嬉しそうに笑った。それから卵焼きを箸で掴むとトウジの目の前に
すっと差し出してみせる。
「自分で作ってると美味しいかどうか良く分からないんだ。…味見、してみてくれるかな…?」
「ええんか?ごっそさん!」
にか、と笑うとそのままトウジは目の前のそれをパクリと口に入れ、にっこり微笑んだ。
「うんまい!センセ料理上手やなー。ええ嫁さんなれるで!」
「…なんでお嫁さんなんだよ…」
憮然とした声を上げながらも、ちょっとだけ嬉しそうに微笑むシンジにトウジはちょっと真面目に声をかける。
「や、ほんま美味いって。でもセンセ、誰ぞ飯食わせたいヤツでもおるんか?」
「え?な…何で?!」
突然の言葉にシンジの顔が真っ赤に染まる。どこからどう見ても図星のようだ。
「はあ…分っかりやすいなあセンセは。何や?好きなヤツでも出来たんか?つうか料理で気を
引こうて、乙女の発想やでそれ」
トウジの台詞にシンジは益々真っ赤になる。それから慌てて首を振った。
「ち…違うよ!最近父さんの部屋に行ってご飯作ってるから…。父さん何も言ってくれないし、
僕の料理美味しくないのかなって…!」
意外な言葉にトウジの目が丸くなる。
614:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/01/18 21:16:40
「なんや、親父さんと最近上手くいってんのかいな?」
「…うん、帰れそうなときは電話かかってくるんだ。その時だけご飯作りに行ってる」
照れくさそうに、しかし嬉しそうにそう言うシンジにトウジも微笑み返し、彼の背中をばんばんと叩いた。
「良かったなあ!親子やもんな、やっぱ仲良え方がええよな!」
「…うん、ありがとうトウジ」
微笑んで礼を言うシンジの髪を、風がさわさわと揺らす。それにふと気付いたように、シンジはフェンスの
向こうに目をやりながらぽそりと呟いた。
「…いい風。気持ちいい」
目を細めて風を感じるその表情に、トウジの胸が一瞬どきりと弾む。
『センセ、何や雰囲気変わったか…?』
「どしたの?トウジ、顔赤いよ?」
シンジの声にはっと我に返るとトウジはなんでもないといった素振りでぶんぶんと腕を横に振る。
「な…何でもないて!さ、そろそろ昼休み終わるで。帰ろうや」
そう言って慌てて立ち上がる。その声にシンジも急いで弁当箱をまとめるとトウジの後を追いかけた。
『なんやこれ…センセがごっつ色っぽく見えた…ワシどっかおかしいんかな…?』
ふ、と横目でシンジを見る。細い首筋が妙に目に眩しく思えて、トウジの動悸がますます早くなった。
『や、気のせいやて。男が色っぽいて、そんな訳ないやろ』
トウジはその考えを頭から追い出そうとふるふると首を振った。
それが、初めてトウジが彼を意識した瞬間だった。
615:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/01/18 23:47:23
トウシンキター!!!(*´Д`)ハァハァ
神GJ!!やっぱり同い年同士だとほのぼのするなw
616:612
06/01/19 00:19:42
ゴメン一気にほのぼのじゃなくなった。
夢を、見た。
目の前でシンジが見知らぬ男と嬉しそうに話をしている。その顔は影になっているので良く分からないが、
彼の様子からそれが彼の父親であるということは何となく推測がついた。
と、その身体を男が好きに弄び始める。
「あ、父さん…駄目…」
恥ずかしそうに身を捩る。だが決して抵抗はしないシンジを、目の前の男はゆっくりと愛撫していった。
いつの間にか裸にされていたシンジは、その腕の中で頬を染め男の為すがままになっている。
「父さん、恥ずかしいよ…あぁ……っ」
腿を広げられあられもない格好でうっとりとするその表情に、動悸が激しくなってくる。
『センセ、あかんて!親子やろ?!なんでそんな…!』
思わず叫び出す。だがその声は目の前に居るはずの彼には届かない。
シンジの身体が目の前で男のそれに犯されている。潤んだ目でそれを受け入れ気持ちよさそうに
腰を使う彼の姿に、だんだん妙な気分をになってくる。
痛いような、もっとその表情を眺めていたいような。初めて感じる奇妙なその感覚に、慌てて頭を振って
それを振り払った。
「あ…いい…っ父さん…もっとぉ…」
それを嘲る様に目の前の彼は男に貫かれ、歓喜の表情を彼に見せつけた。胸の痛みが更に強くなる。
『あかん…あかんあかん!センセ、そんなヤツでそんな顔したらアカン……!』
彼がそう叫んだ途端、目の前が白く光った、気がした。
「夢……か。つか、なんちゅー夢見とんのやワシ…」
溜息をついてむくりと身体を起こした。妙な罪悪感で彼の胸がきりきりと痛む。と、何かに気付いたように
トウジは再びはあ、と大きく溜息をついた。
「最悪や…何しとんねん…!」
自らの性で汚れてしまった下着を見つめながら、トウジは情けなさそうに頭を抱えた。
617:612
06/01/19 00:21:35
「なによ、辛気臭い顔してうっとおしいったら!」
机に突っ伏して今朝の失態を反省するトウジにアスカがヒカリを伴ってそう声をかけてくる。
それにうんざりしたように溜息をつくとふと気付いたように彼はアスカに尋ねるように口を開いた。
「なあ、センセ親父さんと最近上手くいってるてホンマか?」
「ああ、碇指令の事?そうね。最近ちょくちょく会ってるみたい。一体何の風の吹き回しかしらね、
あーんなに邪険にしてたのに」
アスカの言葉に少しだけずきりと胸が痛んだ。そんなトウジに構わずアスカはそのまま言葉を続ける。
「そういえばこの間雨の降ってる日に、アイツが急に指令の部屋に行ってからね。風邪引いたとか
いって指令の部屋に泊ったのよ。指令から直接電話があったみたいで、珍しいこともあるモンだって
ミサトのやつが驚いてたもの」
「そっか、センセもよかったなあ」
何となく気持ちの篭らない声でそう呟く。
「アイツ張切っちゃってうっとーしいったらないわ。まあ元々ファザコン気味だからしょうがないけど、
あれ以来夕食当番ブッチして帰ってこないのよ時々。も、あったまくるったら!」
思い出したようにきい、と叫びだすアスカの言葉にトウジの胸が再びきりり、と痛む音がする。
『泊ってるて…いや親子やん、何も変なことないがな…』
トウジは必死で次々と浮かんでくる今朝の夢の内容を、頭から振り払うようにぷるぷると首を振り
再び机に突っ伏した。
「あれえ、珍しい。トウジ今日は宿題してきたんだ?」
そんなトウジにきょんとした顔でシンジがにこやかに声をかけてくる。可愛いなあ、と一瞬見とれた後、
その声にはっと気付いたようにトウジは慌てて顔を上げた。
『可愛いて、何考えとんねん!…じゃのおて!』
ぱち、と拝むようにシンジに慌てたように向き直る。
「あかん忘れとった!センセ、頼む助けて!」
「無理無理、もう授業始まるもん。諦めたら?」
くすくすと笑いながら席に戻るシンジの後姿に、泣きそうな声をあげる。
「そんなぁ~センセのいけずぅう~!」
振り返ってにこ、と笑うシンジの表情にトウジはずきんずきんと痛む胸を押さえ、必死で笑い返した。
618:612
06/01/19 00:24:06
教師の小言を聞き流しながら、トウジは横目でシンジの姿をふ、と見やる。苦笑いしながら
こっちを見つめる姿にどきりと彼の心臓が弾んだような音をたてた。
『今まで気付かんかったけど、客観的に見てもやっぱべっぴんやなあ…。綾波といい惣流といい、
エヴァのパイロットちゅうのは顔で選んでるのかいな』
心ここにあらず、なトウジの姿に教師の小言がますます激しくなる。トウジはそれに気付きもせず、
ただ呆然とシンジの姿を見つめていた。
教師の小言が終わっても、トウジはシンジから目が離すことが出来なかった。教師の話に耳を
傾けながら、時々ふと思い出したように窓の外を見つめている。
その横顔が、なんだかとても哀しそうな目をしている気がして、トウジの心に軽い痛みが走った。
『なんでやねん。センセ今、親父さんと仲良ぉ出来て嬉しいんと違うんか?
それなのに何で、そんな顔しとるねん…。』
見れば見るほどにシンジの事が異常に気にかかってしまう自分に、少しげんなりするとトウジは
軽く溜息を、ついた。
「災難だったね。ま、これに懲りてちゃんと明日から自分で宿題したら?僕だって
そうそう助けてらんないよ」
結局宿題三倍の刑を申し付けられたトウジに同情したような声でシンジが声をかけてくる。
それにああ、と気のない返事をするとトウジは再び机に顔を突っ伏した。
「駄目駄目、今日はずっとこんな調子。寝不足なのかね?」
ケンスケが手を振って代わりにシンジに答えた。と、教室にあるスピーカーから校長室に
トウジを呼ぶ声が聞こえてくる。
「鈴原ぁ、あんた何か悪さしたの?」
「んな訳あるかい。全然心当たりないわ。…何やろ」
ヒカリに返事しながらトウジは頭をひねりながら教室を後にした。シンジはなんとなくその後姿に
妙な不安を感じて、じっとそれを見つめる。
『どうしたんだろ…何か、変な感じ…』
不安を振り払うかのように頭を振ると、シンジはケンスケとの話題に戻り、わざとらしいくらいの
はしゃいだ声を、あげた。
619:612
06/01/19 01:14:30
昼休みが終わってもトウジは教室に戻ってこなかった。何となく彼の様子が気になって
ぼおっとしているシンジに教師が声をかける。
「碇、眠そうだな。目覚ましに資料室に行って世界地図のA-5Ⅲ持って来てくれ」
しまったな、という顔をしてシンジは、はいと返事をして教室を後にした。
『トウジ…どうしたんだろ…』
ふう、と溜息を一つつくとシンジは資料室の扉を開ける。持って来いといわれたそれは
棚の随分上の方にあり、シンジはそれを取ろうと爪先立ちをして必死に手を伸ばし。
「うわっ!」
取り損ねたそれが突然シンジの頭に降ってくる。尻餅をついてしまった彼がズボンを叩いていると、
奥のほうから物音に気付いたように誰かがのそりと現れた。
「なんやセンセか。相変わらずとっぽいなあ」
「…トウジ、ここに居たんだ。授業始まってるよ」
突然現れた姿に驚きながらも、シンジはそう言って彼に近づく。トウジはそれに気のない素振りで
ああ、とだけ呟いた。
「なんや、やる気せんでな。ここでサボっとったわ」
それだけ言うと溜息をつくトウジの姿に、シンジは何だかいつもの彼とは違う雰囲気を感じ、
おずおずと声をかけた。
「あの、さ。…何かあったの?」
シンジの言葉にいいや、とだけ首を振る。彼のそんな様子にシンジは少し哀しそうに目を伏せた。
「言いたくなかったらいいけど、僕に出来ることがあるなら何でも言って。何の役にも
立たないかもしれないけど…」
シンジの言葉にトウジは少しだけ微笑むと、ふうとまた一つ溜息をついた。それから、ゆっくりと口を開く。
620:612
06/01/19 01:17:52
「なあ、センセはエヴァに乗るの、怖くないんか…?」
「え?」
いきなり思ってもみなかった質問を投げかけられて、シンジは軽く目を見開いた。
「初めに会うた時、言うてたやろ。『好きで乗ってる訳じゃない』って。何でセンセはあの時
逃げんかったんや?別に悪いことでもないのに」
トウジの呟きにシンジは少しだけ目を伏せる。それからぽそりと呟いた。
「怖いよ。…今でも、すごく怖い」
「なら何で乗れるんや?正義感か?ワシにはよう出来ん。…センセは強いなあ」
トウジの言葉にシンジは少しだけ身体を震わせると、どこか遠くを見るような目で口を開いた。
「僕は強くなんかない。正義感なんかであんなのに乗れる訳ないよ。…僕は多分、
たった一人の人の為だけに、エヴァに乗ってる…」
「…親父さん、か?」
びくりとシンジの体が震えた。それから少しだけ、頷く。
「エヴァに乗ってるとね、…父さんが褒めてくれるんだ。その言葉が欲しいから、怖くても頑張れる。
他の人が聞いたら多分怒られちゃうけど」
シンジの夢見るような声音に、トウジは再びずきりと胸が痛む気がした。思わず自嘲気味に呟く。
「…親父さんが羨ましいわ。センセに、そんなに想って貰えて」
その言葉にシンジは驚いたようにトウジの顔を見つめる。それから恥ずかしそうに頬を染めると、
ゆっくりと口を開いた。
「僕はトウジのことも、すごく大事に思ってる。…初めてなんだよ、こんな事話せる友達が出来たのは」
シンジのその言葉に、トウジは思わず彼の身体を抱きしめた。少し驚いたような顔で自分を見上げて
くるシンジの姿に、トウジは頭のどこかが弾けるような感覚を覚える。
621:612
06/01/19 01:21:35
「…………っ!」
腕の中で、シンジが目を丸くしている。気がつくとトウジは、何かに吸い寄せられたように彼の唇を
己のそれで塞いでいた。
ふるふるとトウジの身体が震えている。シンジはそれに気付くと彼の背に腕を回し、そのまま
舌を入れ彼に絡ませた。
「…ん…ふぅ…ん…っ」
突然与えられた感触に、夢中でトウジはそれを貪っていた。シンジはそれを抵抗する事無く
受け入れると、少しくぐもった甘い吐息を漏らす。
その声に我に返ったようにトウジが、がばとその唇を慌てて離した。それから真っ赤になって目を伏せる。
「堪忍な…ワシ、どうかしとる。センセにこんな…」
と、その時扉の外からヒカリの声が聞こえた。
「碇君いるの?先生が遅いって怒ってるわよ?」
同時にがらりと扉が開かれる。気付くと二人は反射的に物陰に隠れていた。
「あら?いない。…これ、教材よね。持って行かなきゃ」
そう言うとヒカリはシンジが落としたままの地図を両手で抱えると資料室の扉を閉めた。
遠ざかってゆく足音にどちらともなくほう、と安堵の溜息をつく。それから近づきすぎた距離に、慌てて
ぱっと身体を離した。
「気持ち悪かったやろ…?悪かったな。虫がいいかも知れんが、忘れてくれや…」
目を伏せてそう呟くトウジにシンジはふるふると首を振る。
「気持ち悪くなんかない。平気だよ、僕は」
そう言って見上げてくるシンジの姿に、トウジははたと気付いた。背中にまわされた腕の感触。
差し入れられた舌の動き。それらは今日初めて体験したにしては、あまりにも巧みすぎた。
『初めてやないんか…?それにあの声。女相手であんな声出しよる男はおらん。まさか、ホンマに?!』
トウジはかっと頭に血が上るのを感じた。恐らくそれは、嫉妬。
「まさか親父さんと、いつもこんな事しよるんか…?」
震える声で口に出して初めて後悔する。幾らなんでもとんでもない言葉だったとトウジが
否定しようと彼を見つめた瞬間、目に飛び込んできたのは真っ赤に頬を染め狼狽するシンジの姿だった。
「…な…何で…?いつから…!」
その言葉にがつんと衝撃が走る。どんな言葉よりもその反応が、今の言葉が事実だと彼に知らしめていた。
622:612
06/01/19 01:23:47
「ホンマにそうなんか?!何でや?親子やろ?!アカンてそんなん。そんなんしたらアカン!」
思わず叫びだしていた。その剣幕にシンジは少し哀しそうな顔をして静かに目を伏せる。
「…分かってる。僕も、こんなの間違ってると思う。でも、どうしていいのか分からない。
だって初めてなんだ…父さんが僕を見てくれたのは。抱きしめて、くれたのは…!」
泣き出しそうな声にトウジの心がちくりと痛んだ。
「何でや…なんでそうなるんや。センセは親父さんに、子供として見て欲しいんやろ?なら何で
嫌やって言わへんのや」
「言えないよ…もしそれで父さんが僕のこと、また見てくれなくなったら、そっちの方が僕は
嫌だから…。それに、全く嫌なわけでもない。…父さんが僕で満足してくれてるの、見るの嬉しいから」
恥ずかしそうにそう呟くシンジの姿に、トウジは自分の中で何かが壊れる気がした。
「嫌や…センセがそんなん、ワシは嫌や!」
そう叫ぶとシンジの身体を力任せに押し倒した。突然の行為に腕の中でシンジの身体が暴れだす。
「トウジ、止めて…!駄目だよ僕は…!」
「親父さんのモノやからか?!…だから駄目なんか。嫌や!ワシは…ワシかてセンセの事…!!!」
口に出して初めて気がつく。ずっと彼の中で引っかかっていた感情は。それは多分。
『ワシ…好きなんか…?センセの事…』
トウジの振り絞るような告白に、シンジの身体が震える。驚いたような目をして見上げる彼の唇を、
トウジは再び乱暴に奪った。
「…!んっ!んんん…っ!」
首を振って逃れようとするシンジを押さえつけながら、乱暴に口内を弄る。シンジの指がふるふると
震えながら、トウジの肩に痛いくらいに食い込んだ。
623:612
06/01/19 01:26:55
そのまま、下腹部に指を伸ばす。夢で見たときと同じようにシンジはその瞬間ひくひくと震え、恥らう
ように身体を捩った。
唇を離し、そのまま首筋へと吸い付く。その瞬間シンジの口から甘い吐息が漏れ、その身体の力が
少し抜けた。
胸に掌を這わせ、腰を引き寄せ己の身体でシンジ自身を刺激する。たったそれだけの行為で
シンジは既に熱く勃ちあがり、甘い喘ぎ声を漏らしていた。
『センセ、慣れてる…全部、親父さんが覚えさせたんか…!』
トウジは深い憤りを感じ、乱暴にそれをシンジへとぶつけた。引き剥がすようにワイシャツを脱がせると、
シャツの下から手を入れる。胸の突起はそれを待っていたかのように硬く立ち上がり、震えていた。
そのままシャツを押し上げると、唇でむしゃぶりつく。
「嫌だ…っ!トウジ、止めて…お願いだから…!」
目尻に涙をためながらシンジが呟く。その姿に少し罪悪感を覚えたが、それでも激情は止まらない。
そのまま指と唇で刺激し続けると、シンジは甘い息を漏らして背を反り返らせた。
「あ…っあぁ…!トウジ…駄目ぇぇ…」
拒絶の言葉さえ、誘うような艶を帯びている。トウジが堪らずシンジのズボンに手を伸ばした、その時。
「あ………っ!」
シンジのポケットから携帯の着信音が鳴り響いた。その音にはっと我に返ったようにシンジは身体を震わせると、
トウジの身体を両手で引き剥がし腕の中からすり抜ける。
トウジの邪魔をしたそれは1コールだけ鳴ると、直ぐに留守電に切り替わる。こすこすと伝言が吹き込まれるような
音がして、それは直ぐにぷつりと切れた。
624:612
06/01/19 01:28:11
『親父さんからか…?』
トウジがそれを聞き出す暇もなく、シンジは既に出口の近くまで逃げ出していた。それから
ふと立ち止まるとシャツの裾の乱れを直しながらトウジの元を振り返り、ぽそりと呟いてみせる。
「ごめん…僕、トウジのこと嫌いじゃない。…父さんとこんな風になる前に、トウジが
言ってくれてたら…そしたら僕…。でも、もう駄目なんだ。本当にごめん…!」
きらりと目尻が光る。それを隠すようにシンジは資料室のドアを開けると、走ってその場を後にした。
その後姿を見送ると、トウジは盛大に溜息をついた。
「嫌いじゃない、か。ずるいでセンセ…。そんなんやったら、いっそ大嫌いやて、
言われた方がマシや…!」
トウジは完璧なまでの失恋にがくりと首を落とす。それからシンジの言葉をふと思い出したように繰り返した。
「たった一人の為に、エヴァに乗ってる。…か」
そう呟くと、トウジは遠い目をした。
「流石センセや、なかなかええ言葉やな。…なら、ワシもそうするとしよか。覚悟決めて行くで、
ええか、鈴原トウジよう?」
自分に言い聞かせるようにそう呟く。シンジがゲンドウの為にと言うならば、自分は彼の為に。見
も知らぬ誰かの為にという正義よりも。そして妹のためという道理よりもそれは、トウジの心に
勇気をくれるような気がした。
「見とれよセンセ。ワシは自分の息子に手ぇ出すような外道には、絶対負けへんからな!
必ず惚れ直させたる!」
トウジは叫ぶようにそう口に出すと、窓の外に向かって誰に向けるともなく握り拳を突き出した。
625:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/01/19 03:05:04
神だ…
626:612
06/01/19 20:19:04
資料室で落ちてきた地図に頭をぶつけて具合が悪い、と嘘をついて保健室で休ませてもらい
しばらく気を落ち着かせた後、既に授業もHRも終えて人気の少ない教室に戻ったシンジを
迎えたのは、何となく元気のないような様子のヒカリだった。
「あ、碇君…。具合はどう?」
「え?あ、うん。もう平気」
突然声をかけられて少し焦りながらも、シンジはそれを曖昧に誤魔化した。それに気付く様子もなく
ヒカリは思いつめたようにシンジに訊ねてくる。
「ね、碇君。鈴原って…アスカのこと好きなのかな?」
「え?!」
突然出たトウジの話題に先程の出来事を思い出してしまい、シンジの胸がびくりと高鳴る。
それからその言葉の内容に、再び彼は素っ頓狂な声を出した。
「えぇぇ?!アスカとトウジが?ないないない!それは絶対にないよ!何でそんな風に思うの?!」
「だって二人とも仲いいし…」
『あれ仲いいっていうのかな…どう見ても犬猿の仲なんだけど』
思わず苦笑いするシンジにヒカリはそっと目を伏せた。
「大体、何でそんなこと…あ、もしかして」
その言葉にびくりとヒカリの体が震える。それだけの仕草で、シンジは彼女の想いをあっさりと
悟ってしまった。
『何だよトウジのヤツ…僕にあんなことする前に、委員長の事もっと見てあげてれば良かったのに。
そしたらアイツだって元々女の子の方が好きなんだから、丸く収まってたのに…僕もトウジの事、
傷つけなくて済んだのに…』
なんとなく彼の想いを踏みにじってしまった罪悪感から、シンジはそんな想いにとらわれる。
そんな彼の背後から気配もさせず、いきなり聞きなれた声があがった。
627:612
06/01/19 20:21:42
「…誰と誰が仲いいですってぇ?!」
「うわっ!アスカいつの間に?!」
思わず飛びのくシンジの襟首を掴みながら、アスカはヒカリに焦ったようにまくし立てる。
「冗っ談じゃないわよ?!いい、アタシはもっと理想が高いの!あんなのと仲がいいなんて
誤解されちゃ、死んでも死にきれないわ!」
そんなアスカの剣幕に気圧された様にヒカリがうん、と頷いた。その返事にようやく安心したように
ほっと溜息をつく。
「ヒカリの趣味が分からないわ…なぁんで、あんなのが良いのよ?田んぼで食う虫は好き嫌いが
多いって言うけど、ほんとね」
「アスカ…ひょっとして蓼食う虫も好きずき、って言いたいの…?」
シンジの冷静なツッコミにアスカはきい、と喚くとシンジの胸倉を掴んで畳み掛ける。
「うっさいわね!もう、バカシンジはさっさとヒカリの恋の成就大作戦のアイディアでも
出したらどうなのよ!」
「…はあ?!なんでいきなりそんな話になってるんだよ?!」
アスカの突然の要求にシンジの目が白黒する。それを見下したような目で睨むと、腰に手を当て
アスカは踏ん反り返って更に厳しく言い放つ。
628:612
06/01/19 20:22:47
「女の子が困ってるのよ?!男が助けてやるのが筋ってモンでしょ?アンタそれでも男なの?!」
「何だよそれ?!全然理屈になってないって!…あ、そういえば」
そのまま激しい言い合いをしていたシンジが、ふと何かに気付いたように声を上げた。
彼の脳裏に一瞬浮かんだのは、自分の作った卵焼きを嬉しそうに頬張るトウジの笑顔。
「なあに?何か思いついたの?」
突然動きを止めたシンジに、アスカが声をかける。それにうん、と頷くと彼はヒカリに向かって提案する。
「お弁当、作ってあげたらいいんじゃない?ほらアイツ、いつもお昼パンとかばっかり食べてるし」
シンジの言葉に感心したようにアスカが頷く。
「成程ねー。古典的だけど、単純なアイツには結構効くかも。バカシンジの割には良い作戦じゃない」
アスカの言い草に一瞬腹が立つが、俯いて躊躇いがちに佇むヒカリの姿に何とか反論を思いとどまる。
「鈴原…喜んで、くれるかな…?」
「うん、大丈夫だよきっと」
彼の言葉に嬉しそうに微笑むヒカリの姿に、シンジは先程の彼との行為を思い出し少しだけ
罪悪感を覚えた。それからそれを振り払うように首を振ると、彼女に微笑みかける。
『大丈夫だよ。さっきのだってきっと、僕と父さんの事聞いて、急に変な気持ちになっただけなんだ。
それだけだよ多分。そうだよ…きっとそう…』
自分に言い聞かせるようにシンジは頭の中でそう繰り返す。そうであって欲しいと願いながら。
…本当はそうではないと心の隅で気付きながらも、彼はそう思い込むことで自分を納得させるしかなかった。
だがシンジがあの時、彼の想いを受け入れてやれなかったことを、死ぬほど後悔する事になるのは
それから数日後のことだった。
629:612
06/01/19 20:24:42
「はあ…これがワシのエヴァか…ごっついのぉ」
トウジは三号機を見上げながら誰に聞かせるともなくそう呟いた。
起動実験に呼ばれた彼は、あのままこの事実を誰に話すこともなくリツコに呼ばれるまま、
この松代向かっていたのだ。
勿論、それはシンジにも。
隠したことに特に深い意味はなかった。ただ彼のことだから、自分がエヴァのパイロットに
なったことを告げればこの実験のこともひどく心配してしまいそうだったから、だから全て終わって
自分がちゃんとエヴァに乗れるということ、シンジの頼りになる仲間として戦力になれるのだと
いうことをきちんと証明してから告げようと。
そう、思ったからに過ぎなかった。
「鈴原君、緊張してる?大丈夫よ今日は単なる起動実験だから」
そんなトウジに声をかけたのは、彼の緊張を解そうとなるべくにこやかに微笑んだミサトだった。
「大丈夫ですわ。ああそうや、ミサトはん…センセの親父さんて、どんなお人や?
司令官なんやろ?」
突然そう訊ねる彼に目を丸くしながら、ミサトは苦笑いしながら答える。
「碇指令ねえ…顔は全然似てないわ。怖くて、冷徹な人。何考えてるか良く分からないのよね。
でもシンジ君ともちょっと似てるかも。彼の素直でなくて、ひねくれてて。ちょっち人付き合いが
苦手みたいなところは指令に似たのね多分」
その言葉にちょっと意外な気になりながらも、出会ったばかりの頃のシンジの姿を思い出し
合点がいったようにトウジは頷いた。
「そっか…14年間親戚の元に預けたまんま会いにも来なかった言うてたもんな…」
「そうね。こっちに呼んだ時も一緒に暮らしてあげればいいのに、一人暮らしさせようとするんだもの。
あきれてモノも言えないわ。進路の事だって私に任せっぱなし。あれでよく父親面できるわよね。
…あ、それさえしてあげてない、か。親は選べないけど、シンジ君もとんでもない人の所に
生まれちゃったわよね。同情するわ」
ミサトの言葉にトウジの心がずきりと痛む。
630:612
06/01/19 20:26:36
『初めてなんだよ…父さんが、僕のこと見てくれたのは』
シンジのあの言葉が、本当に彼の心からの本音であったことを知り、トウジは彼にすまない
気持ちでいっぱいになった。それから改めてゲンドウへの怒りがむらむらと湧き上がる。
『センセにあんな顔させて、都合のええときだけ弄んで…ワシはそんなヤツ絶対認めへん。
待っときやセンセ、これからはワシがずっと傍に居たる。このエヴァでいつだってセンセを
守ってやる。これが終わったらあんな親父はんの事なんか、思い出さなくなるまで抱きしめて
やるんや。センセがもう寂しくないように』
きりと再びエヴァを見上げ、トウジはミサトに向き直る。
「さ、ちゃっちゃと実験済ませてしまおうかいのお!この、鈴原トウジがオトコ見せたるわ!」
あくまでも明るい彼の姿に、ミサトは微笑む。
『良い友達持ったわね、シンジ君。彼が傍にいてくれたら、きっと変わるわ。何かが。
…そんな気がする』
だが、ミサトのそんな予感は見事に打ち砕かれる事となることを、その時予想できるものは誰も居なかった。
631:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/01/20 04:30:50
トウジ切ないよトウジ
632:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/01/20 08:06:18
誰かさんへ
LOSスレに来ないでね
633:612
06/01/20 17:59:49
やっぱりベースになってる話が話なだけに、ほのぼのにも友情にも
できかんかったよ。ごめんよ。でもそっちの方が自分も好きだよ。
ともかくどんなに暗くても最後だけは幸せにするから、どうか
温かい目で見てやってくれると嬉すい。
「な…なんやこれ!!!何かがワシの中に入ってくる…これ、ええのか?!なんや分からん
…何が起きたんや!」
起動実験の最中、突然トウジはエントリープラグ内の異変に気付いて声を上げた。モニターに
焦ったようなリツコの顔が浮かび上がる。
「緊急事態よ!実験は中止、パイロットはすぐに脱出して!」
その声に緊急用のエントリープラグ排出ボタンを押す。だが、それは参号機を絡め取る『何か』に
邪魔され上手くいかない。
「あかん…駄目や…」
モニターがぶつりと途切れる。その瞬間トウジの意識が、何者かに喰われた、気がした。
気がつくと自分は初号機…シンジと戦っていた。はっきりしない意識のまま、トウジは叫びだす。
『アカン…なんでセンセ、抵抗せんのや…!…このままやったら…!くそっ止めろや、
止めろ言うてるやろ!』
そんな彼の意識とは裏腹に自分の掌が初号機の、シンジの喉を掴んで持ち上げる。
『センセ、頼むから逃げてくれや!…くそったれ、何でワシの言うこと聞かへんねやこのクソ腕が!』
トウジの叫びも空しく、己の掌の中でシンジの呼吸が小さくなってくる。その瞬間、泣き出したくなるような
恐怖が彼を襲った。
『嫌や…センセが…ワシの手でセンセが死んでまう!…お願いやから抵抗してくれや!なあセンセ!!
ワシに一番大事な人を殺させんでくれ!頼む…頼むから…!!!!』
トウジがそう叫んだその瞬間、回路が閉じてしまった筈のモニターから、小さく声が聞こえた。
「初号機のシンクロを全てカット」
と、同時に初号機が突然反撃を始める。安堵するトウジの耳に、聞きなれた彼の悲痛な叫びが聞こえてきた。
「やめて!父さんやめてよっっっこんなの嫌だよ!!!」
「役立たずはただ座っておればよい」
その言葉にトウジは苦笑いする。
『…ったく、酷いヤツやなぁ。噂どおりの冷酷非情や。でも、こればっかりは感謝するで…』
634:612
06/01/20 18:03:04
初号機に掴みかかられ、めちゃくちゃに殴られ腕をもぎ取られる。今まで体験したこともない痛みに、
トウジは思わず叫び声をあげた。
と、初号機の掌に全身が握られる感触がする。参号機からエントリープラグを引き抜かれたのだ。
『ワシ…死ぬんかな…でもええわ。センセの手で殺されるなら、本望や…センセ、構わんから
一気にいってや…』
トウジがそう願った瞬間、初号機の掌のそれはぐしゃりと握りつぶされる。薄れていく意識の端に、
シンジの悲痛な叫び声だけが、トウジの耳に聞こえてきた。
気がつくと病院にいた。傍らには悲しそうな目をしたヒカリの姿。
「なんや…センセが隣におった気がしたんやけどな…」
今までのことは夢だったのかと一瞬安堵する。だがあれは事実だったのだと告げるかのように、
ヒカリの口からこんな言葉が漏れた。
「碇君なら3日前に退院したわ…」
その言葉に彼の頭にがつんと衝撃が走る。はあ、と溜息をついてトウジはそっとその目を閉じた。
『最低や…ワシは、自分が絶対したくなかった事、センセにさせてしもうたんか…。センセはあんなに
嫌がってたのに。どう謝ってええか分からん…堪忍やでほんま…!』
トウジは後悔に苛まれながらそっと眠りに落ちていった。
『守りたかったんや…この手で、抱きしめたかったんや…!それなのにセンセ、ワシは…ワシは……!』
そんなトウジの心の叫びを聞けるものは、だれもこの部屋に存在してはいなかった。
635:612
06/01/20 18:06:05
一体どれぐらいの日にちが経ったのか。トウジはあ、と溜息をついた。退院にはまだまだかかりそうで、
正直うんざりする。
シンジがこの病室を訪れる事は、トウジが入院してから一度もなかった。彼の性格からして、この事で
きっと彼は自分を責めて深く後悔しているのであろう事は容易に想像できて、トウジは再び深く溜息をつく。
『センセが悪いんやない…ワシの力が足りんかったからや。謝らなアカンのは、ワシの方や。…センセに
あんな辛い事させて。…ああ、会いたいなあ。こんな姿見せたら、また哀しい想いさせてまうやろけど、
ワシ、センセに会いたいわ…』
トウジがそう願った瞬間、病室の扉が開き、その奥からおずおずとシンジの姿が現れた。
そして扉を閉めるとかちりと鍵を閉める。だが思ってもなかった彼の来訪に喜ぶトウジは、その事には
全く気付いていない。
「トウジ……」
すまなそうな顔をして目を伏せるシンジに、トウジは嬉しさを隠さぬ声でシンジに微笑んでこう言った。
「センセ、気にするなや!こうなったんはワシが抜けてたからや。それにあの時センセがワシを
傷つけとうない言うてたの、聞こえてたで。せやからセンセは何も悪くないんや!な、もう忘れてくれや!」
シンジはその言葉に虚ろな目で首を振る。その表情にトウジは何か奇妙な感覚を覚え、身体を震わせた。
「トウジは優しいんだね。…分かってたけど。だから、僕はきっとここに来たんだ。誰かに優しくして
欲しかったから…。でも、駄目だよ。トウジ、僕に優しくしちゃ駄目…」
焦点の合わない目でふ、とシンジが微笑む。それからトウジの失われた足を擦りながら、呟いた。
「僕の声が聞こえてたなら、尚更だよ。僕はあの時逃げたんだ…人を傷つけるのが怖くて。僕はあの時、
トウジとちゃんと戦わなきゃいけなかった。戦って、トウジを参号機から救出してあげなきゃいけなかったんだ。
それなのに、逃げた。逃げて…トウジに僕を殺してもらおうとしたんだ。ごめんね…使途に汚染されただけでも
辛かったトウジに、僕はそんな事までさせようとした…!」
636:612
06/01/20 18:10:27
「そんな…ワシは気にしてへん。殺してもらおて、逃げたのはワシかて同じや。あん時ワシは
諦めたらアカンかった。けど諦めてもうたんや…諦めて、センセに辛いこと全部押し付けてしもた…」
トウジの言葉にシンジはふ、と微笑をもらした。
「それだけじゃないよ。…僕は、トウジを裏切った。トウジの気持ちを知ってたのに…委員長を
応援するようなフリをした。トウジが委員長と巧くいってくれたら、僕がトウジの気持ちを傷つけたこと、
嘘にしてしまえるから。トウジを傷つけたことが辛いんじゃなくて、僕は自分が傷つくのが嫌だったから…
トウジの気持ちを嘘だと思おうとしたんだ」
「そんなん…ワシが勝手にセンセの事好きになっただけやんけ!何でセンセがその気持ちに
応えなならん義理があるんや。ワシが傷ついたのは、ワシの所為でしかないがな!」
焦ったような彼の言葉に、シンジはふるふると首を振る。
「違うよ。…裏切ったのは、その後。僕ね…好きな人が出来たんだ、父さん以外に…。 トウジの
気持ちには応えなかったくせに…トウジの気持ちを知ってたくせに。それを嘘だと思い込んで、
勝手に寂しくなって…勝手に辛くなって。そんな時に優しくしてもらって、嬉しくなって心を全部、
その人にあげた」
「…………!!!」
その言葉に、トウジの身体が震えた。そしてそのまま目を見開いてシンジの顔を見つめる。
「そして、裏切られた。使途…だったんだよ、その人。だからこの手で…大好きな、一番大切な人を
この手で、殺した…!」
637:612
06/01/20 18:12:41
くすくすと可笑しそうにシンジが笑う。その目はもう誰の姿も映してはいない事に気がついて、
トウジは目を見開き、ただ彼の言葉を聞いていることしか出来なかった。
「辛かったよ。大切な人殺すの、すごく辛かった。…今でも、すごく痛いんだ…心が。
そんな事があってようやく気付いたんだよ僕は。自分はトウジに同じ事をさせようとしてた、ってね。
酷いよね…トウジに会わせる顔なんか、ある訳ない。それなのに僕はトウジに甘えたくて、 優しく
して欲しくてここに来た。吐き気がするよ自分に。どこまで僕は、自分勝手なんだろうって、ね。
…だから、トウジは僕に優しくしちゃ、駄目なんだよ…!」
「センセ……そんな…嘘やろ…?」
トウジの言葉ににっこりと微笑む。そしてシンジはきっぱりそれを否定し、虚ろな目で自分の着ている
ものを一枚ずつゆっくりと脱ぎ始めた。そしてすべて脱ぎ終わり完全に裸になると、トウジの目の前に
その身体を曝け出す。
「嘘じゃないよ。…ね、トウジ。僕が憎いよね?僕のこと、もう嫌いになったよね…?だからさ…
こんな酷い僕に、罰を与えて…」
信じられないその言葉にトウジは目を見開き、彼の姿を呆然と見つめる事しかできなかった。
638:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/01/20 20:57:05
(*´Д`){シンジー!トウジー!
639:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/01/21 03:20:48
まさかトウシンが読めるとは…
良スレだ
640:612
06/01/22 02:48:38
ええと、二人ともえらい事になってます。でもこれ壊れてるだけなんで…。
こんなの違う!とお思いの方、その認識が正しいです。ええもう。
「なんでもいいよ。僕のこと、トウジの好きなようにして。どんな事でもするから…全部、トウジの言う通りに
するから。どんな酷いことでもいい…トウジの気が済むまで、僕を、虐めて…!」
振り絞るようなその声に、トウジはとぶんぶんと首を振った。
「アカン…アカンて。そんな事したらアカン…!何でそんな自分ばっかり責めてまうんや。ワシは構わん。
センセにならどんなに裏切られても、報われんでもええ。…憎いことなんかある訳ないやろ!ワシは
自分の意思でセンセに惚れた。せやから、どんな事があってもそれはワシの責任や。センセが気にする
ことやないんや…!」
トウジのその言葉に潤んだ目で首を振ると、シンジは震える声でトウジに向かって呟いた。
「僕はトウジにそこまで想って貰えるような人間じゃない。そんな資格なんてないんだ。…知ってるよね、
僕が…もうとっくに慣れきってること」
そう言うとシンジはベッドの横にある椅子に手を掛けると、トウジの前に自分の腰を突き出した。そして
脚を広げ最奥を彼に見せ付けるように自分の指で押し広げてみせる。
641:612
06/01/22 02:51:33
「ここに、何回男を咥えたか分かる…?何度も何度も、トウジの気持ち知った後も。僕はトウジ以外の
男に犯されて歓んだんだよ?トウジに告白されたあの日だって…あんな事があった夜にだって、僕は
父さんに抱かれた。それだけじゃない。父さんの目の前でトウジに犯される所想像して、興奮さえ
したんだ。父さんに恥ずかしい姿見られて、他の男で歓んでる僕に嫉妬してる姿想像して、何回もイった。
…最低だろ?軽蔑するよね?!こんな身体で、トウジのこと拒否できる資格なんかなかった。あの時
素直に抱かれてれば良かった。父さんに操を立てるふりして、綺麗なふりしてトウジを拒否なんかしなきゃ
よかったんだ…!どうせ、父さんにだって…僕の身体だけが求められてたんだから…誰にでも好きに
させておけば良かったんだよ!こんな僕がトウジに想ってもらう資格なんかない。トウジはこんな
汚れた僕を、好きになんかなっちゃいけない。もっと綺麗で、優しい人と幸せにならなきゃいけない人
なんだよトウジは…!」
「止めてくれセンセ!もうええ…もうええから…!!!」
堰を切ったように流れ出すシンジの言葉に、トウジは思わず耳を塞いでいた。その瞳からはぼろぼろと
涙が流れている。はあはあと息を荒くする彼の姿を、シンジは悲しそうな目でただ見つめていた。
「分かった…虐めたる。センセのその身体、ワシがめちゃくちゃにしたる。せやからもう、何も言わんでくれ…!」
トウジの振り絞るようなその声にシンジは泣き出しそうな顔で頷くと、鞄の中から何かを取り出した。
その手に握られていたのは男性器を模った電動式の玩具。
「父さんに渡されたんだよ、これ。自分が居ないときに使え、だって。…笑っちゃうよね、こんなの貰っちゃう
くらい淫乱に見えてたんだよ、父さんにも僕が」
自嘲気味な呟きにも、もうトウジは何も答えない。ただシンジが握るそれを、冷たい瞳で眺めているだけだった。
それから少しだけ鼻で笑うと、シンジに冷徹な声で命令する。
642:612
06/01/22 02:54:31
「…そんなモンまで咥えてたんか。ええで、ワシの前でそれ使ってしてみぃや。自分で入れるんや
…出来るやろ?」
トウジの言葉にびくんとシンジの体が震える。恥ずかしくて死にたくなる程のその要求に、シンジの頬が
みるみる染まった。
彼に自慰をしろと命令するトウジの瞳の奥は、冷たい炎が燃えているようにゆらゆらと揺れている。
「早うせえ…!虐めろ言うたんはセンセやろ。お望みどおり思う存分虐めたるがな…今更嫌やなんて
言わせへんで」
トウジの剣幕にシンジの身体が再び、びくりと震えた。それから目を伏せて恥ずかしそうにこくりと頷くと、
それを自分の奥へと導き躊躇う事無く差し込んだ。そしてスイッチを入れる。
途端、静かな病室にシンジの甘い喘ぎと低いモーター音だけが鳴り響いた。
「ん…ふぁ…んんっ」
「声、殺すなや。いつもはもっとやらしい声あげてんねやろ」
容赦のない責めにシンジの頬が益々真っ赤に染まってゆく。それを見つめながらトウジは促すように
顎を動かした。
「あ…あぁ…っ!トウジ…恥ずかしいよ…見ないで…!」
「そんな事言うて、ホンマは見られて歓んでるんやろ。センセのソコ、嬉しそうに咥えてるやんけ。ちゃんと
見てたるからワシの見とる前で、ワシの視線でイクところ見せてみろや…」
煽るようなその言葉に突然シンジの身体が激しく震えた。びくんびくんと腰を捩り、あられもないよがり声を上げる。
643:612
06/01/22 02:57:17
明らかに言葉で責められて歓んでいるその姿に、トウジはむらむらと卑猥な欲望が自分の中に
湧き上がるのを感じていた。
「せやけどその格好じゃアカンな。そやセンセ、そこの椅子座って股広げろてみろや。センセの
ビンビンになってるモンも、恥ずかしい顔も、そのやらしい下の口も。全部見せてみぃ」
トウジの責めに、シンジは頬を染めこくりと頷いてみせる。潤んだ目で椅子に座り膝を立て、脚を
広げてその全てを曝け出すシンジの姿にトウジは満足そうに頷いた。
「ええ格好やな…。どや、センセも気持ちええやろ?ワシに目で犯されて興奮してんやろ?なあ…
触ってもへんのにもうセンセのソコ、イってまいそうやな…?」
「あ…あぁ…!僕、おかしいよ…トウジに見られてるだけで…感じてる…どうにかなっちゃいそうだよ……!」
その言葉にぴくぴくと身体を震わせ、シンジは胸の突起と自分を貫くそれを同時に自分の指で刺激する。
自分の一番恥ずかしい姿を見られているという羞恥は、いつの間にかシンジの心と身体を麻薬のように
狂わせる。頭の中が掻き乱されるような感覚に、シンジはもう理性も何もかもかなぐり捨てて叫ぶように
トウジに呼びかけていた。
「トウジの視線が…入ってる…あぁ…もっと入れて…僕の中、もっとトウジで掻きまわして…」
激しい指の動きでぐちゅぐちゅと音が漏れる。モーター音と相まって、それは酷く扇情的に彼を刺激した。
「あ…っ!あぁぁ…っっイク…トウジ、気持ちいい…出ちゃう…!見て…僕のイクところ見てぇぇぇ…」
瞬間、シンジの身体が反り返り勃ちあがったそれから、白い液体が迸った。噴出したそれがシンジの細く
しなやかな身体を汚し、ひくひくと震えることでトウジをより深い欲望へと誘っていた。
「…もうイってもうたんか…やらしいのうセンセは。弄ってもおらんのに後ろだけで感じたんやな」
容赦ない責め言葉にシンジは恥ずかしそうに身体を捩る。その姿にトウジは満足げに頷くと、彼に手招きをした。
644:612
06/01/22 02:59:53
「こっち来いや。今度はワシの目の前でよがってみい。…出来るやろ?ワシを興奮させてみろや。
そしたらご褒美やるわ…センセの大好きなご褒美や。欲しいんやろ…ワシのモンが。のう?」
「あ…欲しい…トウジのが欲しいよ…!」
恥ずかしそうに口に出す。トウジの促すような目線に、シンジはふらふらと彼の寝ているベッドに近づくと
彼の身体に跨った。
「間近で見るとますますやらしいわ、センセのここ」
にやにやと笑いながらシンジを貫いたままの玩具を、指で動かしてみせる。それだけでシンジ自身は
再び勃ちあがりひくひくと震えた。
「そういや親父さんの前でワシにヤられて歓んだんやってな。ワシにも見せてくれるか?親父さんの
モン咥えて歓んでるセンセのやらしい姿…さぞかし乱れてくれるんやろなあ…?」
「……ぁ…そんな…あぁ…」
ふるふると首を振るシンジを赦す事無く更に言葉が追い詰めていく。
「どんな風にされてたんや?親父さんのモン、センセ大好きやったんやろ?ん?ええから咥えて
よがってみろや?興奮するんやろそれが。見せたいんやろホンマは…自分がヒイヒイいうてる姿を…!」
「やだ…ぁ…駄目…………父さん駄目ぇ…!」
シンジの身体がびくりと跳ねた。ゲンドウの幻影に絡め取られ、乱れてゆくその姿をトウジは冷たい目で
ただ見つめている。
「…父さん…駄目……そんなにしたら…ん…ぁぁ…!」
拒絶の言葉を吐きながらも、目の前のシンジの腰は激しくそれをくねらせ、淫らな音を立てていた。
トウジは戯れにそれを乱暴に掻き乱すと冷たい声で命令する。
「ようワシの前でそんなに歓べるなあ。こんなに腰ふって…そんなに美味しいんか親父さんのモンが。
ワシにもちょっとは愉しませろや。親父さんとワシ、二人がかりでセンセ抱いたる。嬉しいやろ?…
しゃぶれや。両方から咥えてみせろや…!」
「あぁ…っそんな…ぁ…っ駄目…!そんなの駄目ぇ…」
くねくねと腰を震わせながらシンジが哀願する。だがトウジはそれを決して赦さない。快感に震える身体を
反転させ、無理やり自分の股間へ押し付けた。
645:612
06/01/22 03:02:09
「ワシの言うこと何でも聞くんやろ?命令や…親父さんのモン咥えたまんま奉仕しろや。出来るんやろ…
ホンマはそうしたいんやろ?のう変態シンジセンセよお」
「あぁ…トウジ…!」
激しい言葉責めにシンジは甘い声でトウジの名を呼ぶ。そして観念したように彼の衣服をずらすと、
勃ちあがった野生を口に咥えた。
「…ん…ふう…んむ…」
ぺちょぺちょと音を立てて夢中でしゃぶる。トウジはそれに満足したように片頬を歪ませると、目の前で
ひくひくと蠢く玩具をちゅくちゅくと掻き回した。
「どうや…上の口と下の口、両方から可愛がられる気分は。ええやろ?輪姦(まわ)されて嬉しいんやろ…!」
その言葉に反応するかのようにシンジの腰が激しく動き、己を愛撫する勢いが加速する。より深くまで
味わおうとするその身体にトウジは堪え様もなく興奮していた。
「…最高や…流石センセ、すごいな…上手に咥えるわ…どんだけしゃぶったらそんな巧くなんねん…
もう出てしまうわ…!」
トウジの言葉にシンジの舌使いは更に勢いを増す。トウジのそれはもう彼の巧み過ぎる責めに、
耐えられそうもなかった。
「イクで…今からセンセの中にワシを注ぎこんだるからな。ちゃんと飲むんやで……っ!」
そのまま低く呻くと、トウジはシンジの頭を両手で抱え、口内へ性を吐き出した。そしてそのまま最後の
一滴まで注ぎ込む。
「んんん…っんむぅ…ふぅ…ん…!」
その瞬間シンジもトウジの目の前で絶頂に達していた。ごくりとシンジの喉が彼のそれを飲み下す音が響く。
そして唇を離しはあはあと荒い息遣いを漏らすシンジの身体を、今度は自分の方へと向けトウジは耳元で
囁きかけた。
646:612
06/01/22 03:04:16
「どや、気持ちよかったやろ…今度はワシの番や。センセのココで愉しませてみい。自分で動かして
ワシをイかせてみろや。…センセならお手のモンやろ?」
「あっ…ぁぁ…!」
そう言ってぐりぐりとシンジを貫くモノを乱暴に捏ね回すと、トウジはいきなりそれを引き抜いた。
「あっ!嫌…!」
「なんや、まだ欲しかったんか。なら本物の方がもっとええよな。大丈夫や…一本抜いたからてダメんなる
ようなヤワなモン持ってないからなぁワシは」
そう囁くとシンジの内腿に再び猛ぶった己のそれを押し当てる。硬く膨張した感触にシンジの口からああ、と
甘い溜息が漏れた。
その顎を掴み睨みつけると、シンジは虚ろな目でゆっくりと腰を沈めていく。やがて根元までトウジを
受け入れると、シンジはそのまま彼を締め上げた。
「…く…っ」
呻き声を漏らすトウジに構わず、そのまま腰をくねらせる。はあはあと息を吐き、腰を上下に蠢かしながら
シンジは堪らず喘ぎ声を上げた。
「あ…トウジ…気持ちいい…?僕の中、感じる…?」
艶がかった瞳でうわ言の様にシンジは問いかけてくる。それに冷たい笑みで答えると、トウジはシンジの
腰を掴み激しく揺さぶりかけた。
「あっ!あぁぁ…っ駄目…!トウジがイクまで駄目…っ!」
その瞬間そう叫ぶとシンジは夢中で頭を振った。トウジを受け入れる内部の締め付けがより強くなり、
まるで吸い付くように彼を刺激する。トウジはくう、と呻き声を漏らすと夢中でシンジの腰をぐいぐいと揺さぶった。
その瞬間、己のモノが弾けそうに膨らむのを感じる。
647:612
06/01/22 03:06:13
「出すで…!」
その呟きにシンジの瞳に歓喜の色が宿った。
「あ…っ!トウジ…トウジ…っっっ!!!」
その名を呼びながらシンジの背筋が反り返る。その身体にトウジは激しく腰を打ちつけ、激情のまま彼の
中に己を注ぎ込んだ。
「あっ!…んあぁぁ…っいい…トウジ、ぃぃ…!」
同じくしてシンジも己の性を吐き出す。トウジの身体を再びシンジのそれが白く汚し、その瞬間彼の身体が
がくりとトウジに雪崩かかった。そのまま互いにはあはあと息をする。
上気したシンジの横顔に、トウジは涙が出そうなほどの愛おしさを感じ、その身体をゆっくりと抱きしめた。
そのまま、唇を重ねる。深く、初めて重ねたときより熱く、それは何度も繰り返し互いを求めていく。
「もう離さへん…センセはもう誰にも渡さへん…!全部ワシのもんや。嫌や言うても、絶対にもう
逃がさへんからな…!」
シンジを抱きしめながら、トウジは啼くようにそう呟いた。
決意のような、命令のような。そんなトウジの言葉にシンジは何も答えない。ただ黙って彼の背中に腕を回し、
彼の鼓動を感じている。
「ワシの傍にいるんやセンセは。これは、命令や。…分かったな」
トウジの振絞るような言葉に、答えは決して返ってはこなかった。
648:612
06/01/22 03:07:51
互いの身体を清め終わると、シンジは部屋の隅に転がった自分の衣服を身につけた。そしてすっかり
身支度を整え終わると、鞄を持ちそのまま入ってきたときと同じように、無言で扉に手を掛ける。
その後姿に、トウジは焦ったように声を掛けた。
「センセ、明日も来るよな…?…明日も来るんや。分かったんか、なあ?!」
その言葉に振り向くとシンジはにこりと微笑んだ。それは、今にも消えてしまいそうに儚げで、トウジの心に
言いようのない不安が広がる。それを打ち消すかのように彼はもう一度叫ぶように問いかけた。
「返事しろや!明日も来い言うてるやろ…!センセは、ワシの命令何でも聞く言うたやろ!何でなんも
言わへんのや!」
その言葉に再びにっこりと微笑むと、シンジは哀しそうにその目を伏せる。
「駄目…その命令だけは聞けないよ、トウジ…」
「何でや!何でなんや…!許さへん…ワシはセンセを離さへんからな…!センセが言うたんやろ、
罰を与えろて。まさか一回で済むとでも思うてるんか?!」
叫ぶような言葉にシンジは首を振る。そして尚も追及の手を止めようとしないトウジに向き直ると、ゆっくりと
その口を開いた。
「トウジは優しすぎるよ…。どうしてそんなに僕の望みを叶えてくれるの?僕は、トウジに罰して貰いたかった。
罰してもらって、酷いこといっぱいしてもらって。それで赦されようとしたんだ…。許されるはずないのに、なのに
トウジはそれをしてくれる…。一番縋っちゃいけない相手なのに、僕はトウジに縋ろうとしてしまう。許して
くれるから…僕の事、甘えさせてくれるから…。だから、僕はもうトウジに、会っちゃ駄目なんだよ…!」
649:612
06/01/22 03:14:24
シンジの言葉にトウジは首を振る。だが、溢れてくる涙で思うように言葉が口から出てこない。
「ありがとう、優しくしてくれて。僕…トウジのこと好きだった。父さんとも、カヲル君とも違う…。どんな相手とも
全然意味が違うけど、でも僕はトウジが好きだったよ…」
トウジの身体に衝撃が走る。一番聴きたかった言葉は、一番聞きたくない状況で、誰より大切な彼の口から
トウジに突きつけられた。
「あかん、行くな…行かんでくれセンセ…!頼むから…」
トウジの泣き出しそうな声音に、扉の鍵を開け部屋から出て行こうとしたシンジが振り返る。そして再び微笑むと、
ゆっくりとその口が開き、言葉を紡ぐ。
「……………」
それはトウジの耳には、聞こえてこなかった。
たったそれだけの言葉を残して、そのままシンジはトウジの前から姿を消していく。トウジはまるで狂ったように
その後姿に叫び続けることしか出来なかった。
「嫌や、行ったらアカン…!ワシの傍からもう離れたらアカン!頼むから…頼むから離れんでくれセンセ…!
ワシは…ワシは…!!!」
叫び声は届かない。それでもトウジはただ呼びかけることしか出来なかった。
最も大切なその存在に向かって。決して戻っては来ないだろう、シンジに向かって。
シンジの残した言葉が何だったのか、それを知るものは誰も、いない。
650:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/01/22 04:05:56
す ご す ぎ る
正に神!!!!!!!!
651:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/01/22 14:38:31
神降臨。
崇め奉らねば。
652:612
06/01/23 01:49:37
ごめん書けたけど推敲がまだ出来てない。
今日は遅いのでまた後日…近日中に投下します。
難産だったよ…
653:612
06/01/23 19:06:37
ようやく終わりました。結局リライトというより全面改稿だったけど
とても楽しく書くことが出来ました。
トウジはたった一人で暗い病室にいた。
あれから幾日経ったのか、それとも数時間しか経っていないのか。それすらももう彼には分からない。
ただひとつ分かる事は、トウジは遂に一番大切な存在を失ってしまったのだということだった。おそらくは永久に。
「センセ………」
彼の名を呟く。もう何回呼んだのだろう、その名前を。トウジの目尻に涙が浮かぶ。
『どうしてや。なんでワシじゃ、あかんかった…。優しゅうして何がアカン。許して何が悪いんや。好いたヤツの
全てを受け入れて赦して、何がアカン言うねや…!』
---甘やかしてくれるから、だからもう会っちゃ駄目なんだ…。
シンジの言葉を心の中で繰り返す。トウジにはその意味などとても分かるはずがなかった。理解など、
出来る筈もなかった。
『甘やかすのの何が悪い。センセがそうして欲しかったんなら、いくらでもそうしたる。なんでそれを自分から
断ち切ってしまうんや。欲しいなら、遠慮のうくれるヤツに縋ったらええやん。何も返す必要なんかないやん。
ワシは何も求めへん。センセが傍におってくれたら、それだけで良かったんや…』
----もっと綺麗で優しい人と、幸せになるべき人なんだよ!
『幸せって何や!センセのおらん毎日の、何が幸せや。ワシはセンセがおったらそれだけでええ…。それ以外
何もいらん。何もいらんかったんや…!!!せやのに何でそれが分からんのや!』
ぼろぼろと涙が零れる。伝えたい言葉を聞いてくれる彼は、もう自分の隣には決して現れることはない。それが
トウジの心を今も深く苛み続けてる。トウジは幾度漏らしたのか分からぬほど繰り返した溜息を、再びついた。
と、突然部屋の空気ががらりと変わる。
654:612
06/01/23 19:09:13
「………?」
不審そうに部屋を見回すトウジの目の前が白く光り、いきなり彼の目の前に誰かの姿が現れた。
「……センセ…」
信じられない思いでトウジは彼の名を呼ぶ。
「これは夢か…いや、夢でもええ。センセ…!」
トウジの呟きににこりと微笑む彼は、まごうことなき彼の一番大好きなシンジの笑顔だった。
『ごめんねトウジ。寂しかったんだね。僕も寂しかったよ…。だから僕と…ひとつになろう…』
そう言って両手を広げてくる。トウジにそれを拒否する理由など一つもなかった。
「センセ………」
歓喜の笑みを浮かべ、トウジが彼の身体を抱きしめたその瞬間。
彼の身体はぱしゃり、と音を立てLCLに、溶けた----
自分が溶けていく。その奇妙な感覚に、トウジは身体を震わせた。
と、自分の中に誰かの心が溶けて混じってゆくのを感じる。それは、頬を染め微笑むシンジの姿。
『カヲルくん、…しないの?』
『ううん…僕も、この方が、いい…』
見知らぬ男の腕の中で幸せそうに微笑むシンジ。それはトウジの心に深い悲しみを与えた。だが、それ以上に
感じるのは、彼の心の流れ。彼の生きてきた時間と、その中で感じた彼の想い。
シンジの心の全てが、トウジの中に流れ込んでくる。
ゲンドウに捨てられ、涙を流す幼いシンジ。
親戚の元で大切に育てられはしたけれど、決して『家族』として受け入れては貰えなかったシンジ。
ネルフで父と再会し、その冷たい態度に心を閉ざしていくシンジ。
父が自分を愛してくれたと歓び、そして再び奈落に落ちていくシンジ。
自分の下から仲間達が消えていく恐怖に震える、シンジ。
寂しさに怖れ、恐怖に苛まれ。戸惑い傷つくシンジの心の全てが、トウジの中に流れ込んできた。そのあまりの
過酷さに、トウジは知らず涙を流す。
655:612
06/01/23 19:11:52
「辛かったんやな。ずっと一人でさみしかったんやな。…でもやっと受け入れてもらえたんやな。…センセは
ホンマにコイツのこと、好きやったんやな…」
…自分ではなく。
それはトウジにとって身を切られるように辛い感情だった。しかしそれ以上に彼が幸せになれた事を喜ぶ自分も、
彼の中には確かに存在していた。彼が嬉しいなら、それでいいと。
だが、そんなささやかな幸せさえシンジは掴むことが出来なかった。自分の手で、それを消してしまったのだ。
大切な人の命と共に。
涙を流すことさえ出来なくなったシンジの哀しみ。後悔。心を吹き抜ける冷たい風のような、冷たく凍った彼の感情。
『もう誰からも、僕は愛されちゃいけない。カヲル君の命を…未来を奪った僕は…もう幸せになんか
なっちゃいけない…』
トウジはその感情に、がつんと頭を殴られたような衝撃を感じる。
激しい後悔と、そして彼の贖罪。一生を孤独に苛まれることで、彼はその罪を贖おうとしていた。
その重さに、ようやくトウジは何かに気づいたようにああ、と溜息を漏らす。
『もうええ!もう何も言わんでくれ!!!』
己の発した言葉の冷たさに、トウジは今になってようやく気がついた。
「ワシは…センセの事、なんにも知らなんだんや…。センセの事好きや言う気持ちで一杯になって、センセが
どんな想いで居たかちゅうこと、何も気付かんかった。気持ちを押し付けるばっかりで、ワシはセンセの気持ちを、
何にも知ろうとせんかったんやな…。堪忍や…センセ、ホンマに堪忍やで…!」
トウジの後悔の念が辺りに満ちていく。と、ふいにその隙間から一筋の光のような情景が彼の前に差し漏れた。
656:612
06/01/23 19:14:03
それは、ひとつの風景。
アスカと、レイと。そしてケンスケやヒカリ達に囲まれ微笑むシンジの姿。そして一際大きく輝く、自分の…
トウジの笑顔。
きらきらとそれは、シンジの心の中で眩しい光を放っている。
ゲンドウやカヲルへの想いとは違う、しかしなにより明るい光となってそれは彼の心の中で輝いていた。
その風景に、トウジは我知らず涙を流す。
「センセ……!」
トウジの心に、シンジの言葉が蘇る。
『父さんとも、カヲル君とも全然違うけど…でも僕はトウジのことが好きだったよ…』
「ホンマやったんや…。センセはワシの事もちゃんと、想うてくれてた…。ワシがただ、それに気付かんかった
だけなんや…センセ…センセえ……!」
心に、歓喜が満ちていく。
大切な人は常に彼の元にあったのだと、トウジはようやくそのことに気がついた。
一つになる心。大事なその存在と、同化する歓び。
それがトウジの心に満ちていく。
補完は、確かにトウジの元にも訪れていた。
おめでとう。
おめでとう。
おめでとう。おめでとう。おめでとう。
トウジの心が…そして彼の…シンジの心が、喜びに満ち溢れていく。トウジはその感覚に思わず微笑んだ。
『よかったなあ、センセ…。やっと満たされたんやな。分かるで…センセが今、親父さんと全部分かり合えたこと』
シンジの心がようやく救われたことが、トウジには我が事のように嬉しく感じる。
しかし。
657:612
06/01/23 19:15:56
「けどな、センセ。これは違う…分かってるんやろホンマは」
辺りに不安が満ちる。シンジの心が戸惑っているのを感じて、トウジはふと、笑みを漏らした。
目の前の仲間と笑いあう風景がぐらりと歪んだ。それは、シンジの戸惑い。彼の不安。怖れ。自分自身への…不信。
『僕は…僕が好きじゃない…こんな僕なんて、誰もいらない…』
「冗談ぬかすな!ワシはセンセが好きや!センセはワシのこと、好いてくれてるんやろ?!ならワシの
好きや言う気持ちを…ワシの心を否定するなや!自分で自分を否定するなや!!!今は嫌いでも、いつかは
好きになれる日が来る!絶対に来る!センセが自分を許せる日が、いつかきっと来るんや!」
揺れる心。トウジの言葉にシンジの心がぐらりと揺れる音が聞こえる。
『ここにいていいの?僕は本当に、ここにいていいの…?』
愛されなかった不安。
大切なものが消えてしまうことへの恐怖。
離したくないという、欲求---
トウジは堪らず叫んでいた。
「当たり前や!センセはここに居てええ!いや、居てくれにゃアカン!ワシがそう決めた!せやから信じろや…
ワシを…センセ自身を…!センセが今、どうしたいのかを…!それが答えや!!!」
『ぼくは……』
シンジの心が震える。戸惑いに、怖れに。
『僕は…僕はここにいたい…』
その言葉にトウジはにっこり微笑んだ。
「なら、そうしたらええやん。それでええんや。…な?センセ」
トウジの言葉にシンジの心が涙を流す。
『僕は…僕はここにいていいんだ…!』
「そうや、ここにおってええ。ワシがセンセの居場所になったる。絶対に消えへん幸せな場所を作ったる。
…せやから…もう一度…ワシに会いに来てくれや…!ワシは…ワシは…」
震える心。それは、一体どちらのものだったのだろう。そして一つの言葉が心の中で形を作る。
『もう一度、会いたい----!』
その時二人の…トウジとシンジの心が重なった、気がした。
658:612
06/01/23 19:17:39
気がつくとトウジの身体は砂浜に打寄せられていた。何故だか事故で失われたはずの両足も、きれいに
元通りの姿になって。
彼が戸惑いながら辺りを見回すと、遠くに誰かの姿が目に入る。
「…センセ…!」
歓喜に満ちた笑みが浮かぶ。再び出会えた。その喜びはトウジを彼の元へと夢中で走らせていた。
「トウジ…!!!」
シンジが彼の姿に気付いたとき、彼はもうその直ぐ隣まで駆け寄っていた。一瞬、シンジの顔に喜びと
戸惑いの混じったような表情が浮かぶ。トウジはそれに構わず彼に言葉を掛けた。
「センセ、歯ぁ食いしばれや…!」
シンジが返事をする暇もなく、トウジの右手が彼の頬を捉え、そのまま彼の頬に拳を打ち込んでいた。
「悪いな…ワシはセンセを殴らなアカンのや」
その言葉にシンジの表情が暗く沈む。
「そうだよね…僕、トウジに酷い事したもんね…。当たり前だよ」
シンジの言葉にトウジは笑ってぽかりと彼の頭に拳骨を入れる。
「ちゃうわボケぇ!そうやない。センセがあんまりアホやからや」
「………え?」
驚いたように目を見開くシンジに、トウジは再びにっこり笑って彼の目を見つめる。
「あのな。センセが好きになったヤツは、ホンマにセンセが不幸になること、望んだんか?よう思い出せや」
「…………!」
トウジのその言葉に、シンジの肩が震えた。
『生と死は等価値なんだよ、僕にとっては。…そして君は、死ぬべきじゃない』
蘇ってくるカヲルの言葉。それは、多分。
「な、分かったやろ。センセは幸せになってええ。そんな事にも気付かんアホゥは殴らな直らんわ」
笑顔でそう言い放つトウジに、シンジの瞳から涙が零れ落ちた。
それは、カヲルを失ってから初めて流す、彼の心の涙だった。
659:612
06/01/23 19:20:28
と、そんなシンジにトウジが再び声をかける。
「ほな次はセンセの番や。思いっきりいってくれや」
そう言って自分の頬を指差す。ぽかんとするシンジに、トウジはにか、と笑い彼の耳元で囁いた。
「ワシもセンセにどえらい事してもうたからなぁ。…まあ、センセがしてくれ言うたからやけどな?」
その言葉にシンジの頬が真っ赤に染まる。そして小さくバカ、と呟くと、そのまま彼の拳はトウジの頬に
吸い込まれるように打ち込まれた。
「…っくぅ~。やっぱセンセの拳は効くのう…!」
頬を押さえ、トウジがにっこりと微笑む。その姿にようやくシンジの顔にも笑みが浮かんだ。
そのまま、見つめあう。ようやく開放された彼の心を、二人はただ相手の姿を…その目を見つめることで確認していた。
と、その後ろから不意に声があがる。
「…はっくしょん!!!!」
その声に思わず振り返る。そこにはがちがちと歯を鳴らすアスカの姿があった。そして不機嫌そうに
二人に向かって叫びだす。
「…あのねえ。仲が良いのは結構だけど!何でアンタ達、可憐な美少女が素っ裸で隣に居るのを無視して
殴り合いとか出来ちゃうわけぇ?!信じらんない!さっさと何か着る物持ってらっしゃいよ!バカ!」
その言葉に二人の顔に再び笑みが浮かんだ。…帰ってきた。その実感がようやく湧き上がり、トウジは何か
身にまとうものを探しに行こうとシンジを促す。と、そんな彼らの後ろから追い討ちのように言葉がかかる。
「あんた達自分の服も忘れないでよ?!そんなモノぶらぶらさせたまんま戻ってきたら、タダじゃおかないから!
この変態!」
その言葉にようやく自分達のいでたちに気がつき、二人は同時に真っ赤になる。仕方ないだろ!と思わず叫び
彼女に向き直るシンジに、きゃあ、こっち向かないでよ痴漢!変態!露出狂!等と叫びながら、アスカは
その辺りのものを手当たり次第に彼らに投げ始めたので、二人は慌ててその場を離れ駆け出した。
そしてそのまま、お互いを見つめる。
帰ってきた。
もう一度、会えた----
喜びを噛み締めながら、二人はどちらともなく笑いあう。
赤い海から反射する光はまるで、大きな深い誰かの愛情のように。
その姿を優しく、いつまでもいつまでも、包みこんでいた---
660:612
06/01/23 19:22:32
『ピンポーン』
呼び鈴を鳴らすと、慌てたようにシンジが扉の奥からその顔を覗かせた。トウジはにっこり微笑んで彼を促す。
「センセ、早よぉせな遅刻やで!」
「今行くよ!父さん、行ってきます」
言葉と共にシンジが飛び出してくる。その扉の奥からああ、という無愛想な返事が聞こえてきて、トウジは思わず
笑みを漏らした。
「相変わらずやなあ、あのオッサンは。行ってこいとか気ぃつけろとか、ちっとは言えへんのかいな」
「…まあね……」
トウジの言葉に苦笑いしながらそう返事をするシンジに、ふと悪戯心が芽生え、トウジは彼の耳元でひそ、と
囁きかける。
「…けど、ラブラブなんやろ?!」
「……!!!」
途端に真っ赤になる頬に、トウジはけらけらと笑った。それを上目遣いで睨みつけると、シンジはふと思いついた
ように真面目な声で彼に向かってぽそりと呟く。
「…確かに、今も僕と父さんはそういうコトしてるけどさ。でも、前とはちょっと違うんだよ、トウジ」
その言葉に、途端にトウジも真面目な顔つきになる。
「僕も父さんも口下手で…どうしていいか分からないんだ。これしか、知らない。…分かり合う方法…」
ぽそぽそと呟く声に、トウジは黙って彼の言葉に耳を傾けた。
「けど…多分いつか…そんな事しなくても、良いようになると思うから…だから…」
それだけ言うと、シンジは真っ赤に頬を染め俯いてしまった。トウジはそんな彼ににっこり微笑むと、その頭を
ぽんぽんと叩く。
「…ワシは待つのは慣れてるからな。気が済むまで、センセの好きにしたらええ。ワシはずっと
ここにおるから。…な?」
その言葉に潤んだ目で頷くと、シンジはふいにトウジの耳元に唇を近づけ、囁いた。と、見る間にトウジの頬が
真っ赤に染まる。
661:612
06/01/23 19:24:25
『僕も、ずっとトウジの傍にいたいよ…』
それは、あの時聞こえなかった、彼の言葉。
まごう事なき彼の本当の想い。
思わず固まってしまったトウジに微笑みかけると、シンジは遅れるよ、と彼に声をかけ恥ずかしそうに走り出した。
その後姿を見つめながら、トウジは少しだけ複雑そうに笑みを漏らし、彼の人の存在に思いを馳せる。
それは、シンジの心を彗星のように奪って消えた、もう一人の男の存在。シンジは決して彼を忘れは
しないだろう。いつまでもいつまでも、それは彼の心を深く苛み、後悔の渦に陥れていくのだろう。
しかし。
トウジはきりと空を眺めた。青い空は彼の心を映し出すかのようにただ広く、澄み渡っている。
『ワシはそれでもセンセが好きや。せやから、ずっと傍におる。どんだけセンセがアイツの事好きでも、
一緒におることを止めたヤツにワシは負けられへん。…いいや、ヤツの事好きなセンセを、そのまんまワシは
受け止める。センセの全部、丸ごと好きなんやからな…ワシは…』
ふ、と笑みを漏らすトウジに、シンジが振り返って再び声をかけてきた。
「なにやってんの、早く!もう、トウジ?!」
自分を呼ぶ声に笑顔で答えると、トウジもまた彼を追いかけ、駆け出した。
大切な仲間達の待つ、彼の通う学校の方角へ------
662:612
06/01/23 19:35:00
というわけでようやく終了しました。相変わらずクソ長い話ですいません。
かなり大変でしたが、しかしようやく469の話もこれで本当に終われたという
思いがしています。一度はお蔵入りにした話でしたが、今は本当に
書いてよかったと思います。当時リク下さった方にはとても感謝します。
そして読んでくださった方にも。
加持シンの時も少し思いましたが、この話は「読んでみたい」という人がいたから書けた話でした。
いつもは自分の萌えの赴くまま、誰に止められようと書かずにはいられぬ自分でしたが
このような形で書き始めた事で、また違った何かを掴むことが出来た気がします。
上記で「神」と表現してくださった方がいらっしゃいましたが、自分はただ何かに
突き動かされるようにこの話を世に送り出しただけです。そして読んでくださるみなさんが
いなければきっと、この話は形になることが出来ませんでした。
だからおそらくきっと「神」と呼ばれるそれは、みなさん自身なのだと思います。
本当にありがとうございました。
そして神であるみなさんと、トウシン萌えという新たな扉を開いてしまった自分に、乾杯w
663:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/01/23 23:27:01
ヨカ(・∀・)ター
664:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/01/24 00:41:38
GJGJ!!
いいもの読ませてくれてありがとう!!
665:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/01/24 21:48:38
ところで絵描きさんのための801用うぷろだとか絵掲示板とか
あったら良いと思うんだがどうかな
エヴァ板のは申し訳なくて使えないしなあ
666:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/01/26 23:54:48
いつの間にこんなに良スレ化していたんだ
読みふけってしまった
667:612
06/01/27 16:24:54
>665
元々絵描きなんであるといいなあとは思ったけど人稲杉w
需要ないかも。
しかも自分の持ってる使ってない絵板提供しても良いな、と思って
久しぶりに覗いたら当然だけど消えてやんのね。
なので思わず借り直してしまった。意味わかんね自分。
他にも誰か必要ならURL晒すよ。
とりあえず久しぶりにお絵かきしてみたのでデータだけ晒してみる。
hURLリンク(www4.oekakibbs.com)
668:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/01/27 19:54:14
>>667 小説も絵も神的に描けるなんてテラウラヤマシス
669:665
06/01/28 01:33:49
>667
うわ、既に用意されてた!ありがとうございます!!
ていうかもともと絵描きデスカ?!すごい…
でも本当に絵版需要なさそうですね…。
同意レスがいっこでもあったらこっちで用意しようかと思ってたけど
その必要もなさそうだし、661さんの絵が見れただけで良しとしときます。
670:665
06/01/28 01:42:53
661さんて何…
612さん、でした!すいません!
671:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/01/28 02:04:04
需要ある
少なくとも自分にとってはw
672:612 ◆8j5ndKku.M
06/01/29 02:19:21
うお、風邪全快記念にエヴァパチ打ちに行ってまったりしてたら
需要ありレスが。やた!自分以外の絵でも小説でもとにかく見たくて
仕方がなかったんだよ。すげえ嬉しいよ。URL晒すね。
絵のほうも褒めてもらって嬉しい。でも自分はいわゆる器用貧乏というやつなんで
どっちか一方だけを熱く追及できる人が羨ましいよ。
あ、一応絵板管理者用トリップつけました。文章投下はこれまで通り名無しでするけどね。
絵の投下に関しては一応わいせつ画像に関しては板削除対象らしいので
それだけは禁止の方向で。
その他のローカルルールに関しては皆で決めてください。よろしくー。
URLリンク(www4.oekakibbs.com)
673:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/01/30 02:35:59
おお、ありがとうございます
674:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/01/31 03:38:11
神のおかげでもうこんな時間だ。
良スレ!!カヲ×シン小説スレの二の舞にならないように祈りsage
675:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/01/31 08:23:21
あそこは厨のすくつだからねえ
好きなんだけどな>カヲシン
676:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/01/31 12:48:56
つかこの神引き出し広いな~
今某スレで書いてねえか?
文体っていうか変換癖とか表現とかで確信したよ
過疎スレ再生職人だなww
ところで絵板、カヲルの扱いどうするよ?カヲル可にしたら荒れるのかな?
677:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/01/31 13:23:34
過去ログに飛んじまうぞ~。
保守
678:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/01/31 14:21:01
sageても書き込みあれば大丈夫なんじゃないのか
679:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/01/31 15:07:38
>>672
感謝。
記念にシンジ投下しました。
至って健全だと言い張る。
680:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/01/31 16:51:02
カヲルは不可がいいなあ
荒れそうだ
681:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/02/01 15:16:01
>679
おつ!
682:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/02/02 21:49:46
>680
不可の方が無難だよなあ。好きな人には同情するし
個人的に何か思うところはないけど、荒れるのは怖い
まあカヲル絵はネットで検索すればいくらでも出てくるし
ここでは我慢してもらうしかないかな
683:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/02/02 22:26:17
カヲルがそんなにも荒れの原因になるという現実に愕然(´・ω・`)
まぁ一番好きなキャラがシンジな私はまだ救われた方か。
まぁとりあえず不可にしといて、後々様子見ていったらいいかもね。
684:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/02/04 22:05:47
なあ、何で最近801系単独スレが乱立してるんだ??
そろそろ801嫌いの人の目に余る感じになってないかー。
このスレとは関係ない話だけど、ちょっと不安だよ。
801出ていけみたいな流れにならないかなあ。
今だってお情けで置いてもらってるみたいなモンなのにさあ。
685:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/02/05 02:43:10
とりあえず流れを読まずに投下してみたり。
スレリンク(eva板)l50
【や、やめろ、シンジ。私達は親子だぞ……うぉッ!! 】
スレの>8-11の続きなどを。
いやあまりに801臭漂うFFを一般スレに投下する勇気は流石になかったよ。
あ、ちゃんと(?)シンジ受けにはなってるので御安心を。
686:685
06/02/05 02:44:45
「父さんがいけないんだ…やっと会えたと思ったのに、こんなに近くにいるのに、僕を無視するから…」
シンジの声が震えていた。狂気を帯びた瞳は今にも泣き出しそうに潤んでいる。
「だから、見てくれないなら…それなら僕の方からこうして父さんの目を、無理やりにでも向けさせるしか
ないじゃないか…!」
引きちぎられそうなほどの声音は、私の心をひどく動揺させた。
シンジがこれほどまでに何かに飢えていたことに、私は気付かなかった。
いいや、気付かぬふりをしていた。そんな余裕は私には残されていなかったからだ。目的のためには
全てを捨てると、私はあの日心に誓った。だからシンジを見捨てた。泣き出して自分を追いかけようとする
幼いシンジを。
『己の蒔いた種、ということか』
私は諦めにも似た感情を覚える。だが、それでも彼の好きにさせるわけにはいかなかった。
「止めろ…お前は…自分が何をしているのか、分かっているのか…!」
私の呟きに、シンジはくす、と笑った。
「当たり前だよ。僕は父さんを手に入れる。僕の事、もう絶対に忘れられないくらいに、ね?」
そうしてふふ、と漏らした笑みは忘れえぬあの妻と同じ、どこまでも美しい顔をしていて、私は思わず
息を呑んだ。
687:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/02/05 02:46:45
シンジの掌が後ろから私のそれをやんわりと包み込む。思いがけない感触に私は思わず呻き声を
上げていた。
シンジは楽しくてたまらない、という笑みを浮かべ私の耳に囁きかける。
「気持ちイイ?いいんだよ父さん。気持ち良くなってよ…ちゃんと全部撮っててあげる」
その言葉にビデオカメラの存在を思い出し、私はく、と呻き身体を捩った。
「無駄だよ。それにほら、もう父さんのこれ…気持ちよさそう。このまま全部見せてよ僕に…ねえ?」
そう囁くと愛撫を再開する。上下に扱きあげながら、空いた手でシンジは袋を揉みこんだ。
ぐう、と堪えきれず声が上がる。
耳元を舌で弄りながら、シンジは己の身体を私の腰に押し付けてきた。勃ちあがったシンジの感触に、
私の身体に衝撃が走る。
「父さん…もっと気持ちよくなってよ…そんな父さん見てると、僕もすごく気持ちイイ。ね?分かるでしょ?」
ぐいぐいと押し付けてくる。耳元に感じる吐息が荒くなってくるのを私は呆然と受け入れるしかなかった。
「あぁ…父さん…!」
甘い声が上がる。聞いたこともないシンジの艶じみた吐息に、私の体は再度震え、己のモノが
硬く膨れるのを感じた。
『息子の痴態に興奮したとでも言うのか…この私が』
嫌悪感と罪悪感が交じり合ったかのような感情が私を支配する。だがシンジはそんな私に構わず
更に勢いを加速していった。
688:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/02/05 02:50:17
「父さん…もうイっちゃいそうなんだ?いいんだよ?ね、ほら…」
囁きながら手の動きを強くする。限界寸前まで膨れたそれは、シンジの責めに耐えられるはずもなく
あっさりと弾けていた。
「あ…!父さん…!」
同時に私の腰に押し付けられたシンジのそれも爆発した。
甘い吐息を漏らしながら、シンジはそのまま私の身体に体重をかけるようにして屑折れた。
はあはあと荒い息を整える。ひと心地ついたようにシンジは溜息を漏らすと立ち上がりおもむろに
ビデオカメラのスイッチを切った。それから振り返り私に微笑みかける。
「いい格好。これでもう、父さん僕に逆らえないよ?こんなの世間に流れたら大変だもんね?」
くすくすと笑う。私は思わずかっとなりシンジを睨みつけた。
「怖い顔しないでよ、気持ちよくしてあげただけじゃない。それにココからが本番なのに、そんな顔
してちゃ楽しめないよ?」
シンジの言葉に唖然とする。屈辱を与えるためだけならば、ここまででもう充分だったはずだ。
私は信じられない思いでシンジの顔を見つめた。
「なんて顔してるの?言ったじゃない、僕の事忘れられないほど気持ちよくしてあげるって」
そう言うとシンジは私の下半身に顔を埋め、先程性を吐いたばかりのそれを口に含んだ。
689:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/02/05 02:52:07
「ん…ん…っ!」
シンジの甘い声が上がる。舌と口内で刺激され絡みつく感触に、私のものは再び熱を持ち始めていた。
それを確認するとシンジは顔を上げ満足そうに微笑みかけてくる。
「凄いね父さん。まだまだ元気みたいだ」
そう言うと私の身体に跨り、手早くローションを塗りつけるとシンジは自分の両腿の付け根を私に
押し付けてきた。
意外な行動に思わず目が丸くなる。
「ん…っ父さん…!」
甘い吐息が漏れた。入り口を掠めるようにシンジの腰が私のモノを刺激している。その感覚に
思わず私は呻き声をあげた。
「くぅ…!うぅぅ…!」
すっかり硬さを取り戻した私自身をシンジは自分の中へと導こうとしている。だがその先へは
どうしても進めない。
シンジの身体がぶるぶると震え、潤んだ瞳からはぽろぽろと涙が溢れていた。
「痛ぅ……っ!」
喉の奥から溢れるようなその声に私ははっと気付いたようにシンジの顔を見つめる。だがそれから
目をそらすと、強引に私を中へと埋め込もうと、シンジは腰を深く沈めた。
690:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/02/05 02:54:17
「やめろ!無理をするな…!」
私は思わずそれを押しとどめる。だがそんな私をシンジはきっ、と睨みつけてきた。
「煩い!邪魔しないで!!父さんだって嬉しいでしょ?!母さんにそっくりなんでしょ僕は!
だったら母さんだと思って僕の中に挿れたらいいじゃないか!満足させてあげるよ、他の誰よりもね?!」
ぼろぼろと涙を流しながら叫ぶようにそう言うシンジの顔を、私はただ呆然と見つめることしか
出来なかった。
「…あぅ…っ!」
やがて短く叫ぶと、シンジは私を根元まで咥え込んだ。ひくひくとその身体が震えている。激しい
締め付けに一瞬私のそれが固さを増した。
「あぁぁっ!!!」
背が反り返る。痛みに耐えるようにシンジはただ身体を震わせ、首を左右に振った。
「気持ちいいでしょ…?父さん僕の中、気持ちいいよね?…気持ちいいって言ってよ…!!!」
泣きながら、叫ぶ。私はその姿に頷いてみせた。
「ああ、最高だ…シンジ…」
私の言葉に満足げに笑うと、シンジは腰を蠢かせ始めた。その表情が苦痛にゆがむ。だが私には
もうそれを止める事は出来なかった。ぎこちない動きが、やがて激しいそれへと変わってゆく。
シンジは私のもので己の内部を深く掻き回しはじめた。
691:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/02/05 02:56:50
「く…ん…ふぅ…ぅぁ!」
びくびくと身体が跳ねる。だがシンジはそれでも自分への責めを止めようとはしなかった。と、
一瞬その身体がびくりと反応する。
「ひぁ?!あ…っあぁぁ!」
甘く叫ぶと、シンジは憑かれたように腰を上下し始めた。その表情が苦痛から次第に歓喜の
それへと変わっていく。
私はシンジが感じ始めていることに気がついた。
「あっ…父さん…あぁ…!」
吸い付くように自分を締め上げてくる。私は腹筋を使いシンジの腰の動きにあわせ、更に深くまで
貫きあげた。
「嫌だ…!父さん…!あっ…あぁ…!」
哀願のような言葉が漏れる。潤んだその表情に私は夢中でシンジを突き上げていた。
「シンジ…!」
私の呟きに、シンジがびくりと反応する。感じているのだ。この息子は私に貫かれ、今まさに
興奮と情欲の淵で限界寸前なのだ。
その事が私を深く欲情させた。激しく求めるシンジを、思うまま狂わせたいという欲求に私の理性は
既に絡め取られていた。
「シンジ…シンジ…!」
夢中でその名を呼ぶ。その声にシンジもまた甘い叫びを漏らしていた。互いに深く求め合う。より
深くへ、より激しく。
「父さん…父さん…!あぁ!ん、ぁぁぁ…!!!」
そうして、シンジの身体が再びびくりと跳ねたその瞬間、私達は同時に達していた。
白い飛沫が私達の身体を汚した。それはまるで罪悪の徴のように、私の心をひどく責め立てていた。
692:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/02/05 02:57:52
やがて息が落ち着くと、シンジは無言で私の戒めを解いた。
だがもう、私は何をする気にもなれなかった。その手からビデオカメラを取り返そうとも。
シンジは薄く笑うと、そのまま私の唇を塞ぐ。絡み付いてくる感覚に私もまた応えるように、
求めるようにそれを返すだけだった。やがて唇が離され、そのままシンジは私の耳元で囁きかける。
「もう、僕のものだよ父さん。忘れないで…僕はここにいる。父さんの傍で、ずっとずっと
父さんを縛る鎖になる。…いいよね、父さん?」
喉の奥から絞るようなその声音に、私は頷くことでしか答えることは出来なかった。
堕ちた魂は、再び天に還ることは出来ない。
私はシンジの身体を抱きしめると、その罪の重さをただ受け止めることしか出来なかった。
693:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/02/05 03:36:12
救いのない感じで終了。
シンジ受けにしたのは一応理由がありまして。
結局シンジは親父に抱きしめて欲しいのだろうから、たとえ攻めたとしても
最終的に「受け入れる」方を選んでしまうんだろうなと思ったから。
まあ親父の受ける姿をとても書けんという根本的な理由もあったけどねw
ところでトウジスレにかなり期待している自分ガイル。
あれが噂の。楽しみだあー。
694:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/02/05 05:14:29
うはwwww神wwwwwwwGJGJ!!!
トウジスレの神の再来には軽く感動を覚えた
695:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/02/05 16:46:09
どうしようケンスケ×シンジの鬼畜書いてみてえ。しかもトウジと三角関係。
つーか有り体に言えば3P。シンジ受けでな。多分一番かわいそうなのはトウジ。
正直幸せにする自信ねぇよw
ケンスケってあんまり他人に興味なさそうだったから無理かと思ってたんだが
よく考えたらこれほど鬼畜にむいてるキャラもなかったわ。
興味ない関心ない執着もない。それゆえに相手に何でもできるよなあ。と。
違う意見の人いたらごめんよ。
いやむしろその意見で教育しなおしてくれ。自分ヤバイ。宇宙ヤバイ。
696:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/02/05 17:39:37
おい、同意見だ。書くんだ、書いてくれ!
トウジも絡むなんて最高ですよ
昔ケンスケ×シンジの同人を読んだことがあるけど鬼畜で最高だった。
ネットじゃなかなか見ないよな
697:鬼畜ケンスケ
06/02/05 19:42:10
>696
おい誰が煽ってくれといったwこれじゃ誘ってるみたいじゃねえかw
ああもう、いいよ投下するよ畜生。その代わり後悔するなよ。
いつもみたいに最後は幸せになるとか言う期待は一切するな。
最初から最後まで最悪だ。一番後悔するのは書いてる自分だという
自信がありまくりだ。
透明あぼーんしやすいように、この名前欄で投下するから、頼むから
そういうの嫌いなヤツやトウジやシンジに幸せになって欲しいやつは
これを読むな。頼んだぞ本当に。専ブラじゃないやつは脳内あぼーん推奨だ。
忠告したからな。
あ、あと傾向としては最終的には ケンスケ→シンジ←トウジという感じのシンジくるくるだ。
分かったら今のうちにあぼーん設定してくれ。頼んだぞ。
698:鬼畜ケンスケ
06/02/05 20:55:51
おそらく最初に意識したのは、あの時自分のテントに彼が訪れたとき。
何かに失望したような暗い瞳と、それでも知り合いである自分を見つけて安心したような顔。
そして黒服の男達に見つかり、自分の前から連れ去られそうになったとき一瞬見せた、
助けを求める顔。その後慌ててその表情を振り払い大人しくなった彼。
男達に手をひねり上げられ痛い、と短く叫んだその声。
その全てが今でもケンスケの心に深く焼きついていた。それは彼が…シンジが再びこの街で
暮らすことに決めた今も、ケンスケの脳裏から消えない思い出となっていた。
「そういえば今日ミサトさん、徹夜で仕事とかいってたなあ。晩御飯どうしよう」
シンジが何気なく呟いた独り言に、ケンスケは内心喜びを隠し切れなかった。あの時から彼の
頭の中には密かに、一つの計画が練られていたからだ。ケンスケは少し間をおいてシンジにひそ、と
耳打ちをした。
「シンジ、俺さ…相談したいことがあるんだ。今日家にいっていいか?悪いけど、誰にも内緒で」
ケンスケのいつになく真面目な表情にシンジは少し驚きつつも、うん、いいよ。と即答する。
「じゃ、晩御飯一緒に食べよう。カレーでも作るよ」
シンジのその返事に悪いな。と謝りながらケンスケはにこりと笑ってみせた。その笑顔につられる
ようにシンジも、いいよ独りじゃ僕も味気ないし。と笑顔で答える。
だがその笑顔を何とも形容しがたい表情で見つめるケンスケの視線に、シンジは気付くよしもなかった。
699:鬼畜ケンスケ
06/02/05 20:58:33
『ピンポーン』
玄関のチャイムが鳴る。シンジはぱたぱたと小走りになりながら玄関に向かい、訪問者を受け入れた。
「いらっしゃいケンスケ。…なにその大荷物」
「ああ、明日あたりまたちょっとサバゲー行こうかと思ってさ。野宿用の荷物ついでに持ってきた。
悪いね、夜には帰るからさ、ちょっと置かせて」
呆れたような声を上げるシンジにケンスケは拝むような仕草をした。その姿に納得したように
微笑むと彼を家に招き入れる。
「いいよ別にそれくらい。ていうか、今日から野宿する気?だったら家に泊っていきなよ。
明日なんでしょ、そのサバゲー?だっけ」
ケンスケにダイニングの椅子を勧めつつシンジは夕飯の用意をしながらそう問いかける。
シンジの言葉にケンスケの顔がぱっと明るくなった。
「え、いいのか?悪いな気を使わせたみたいで」
その言葉にいいよいいよ、と微笑みながらシンジは彼の前に夕飯を並べていく。
エプロンをつけてまめまめしく立ち動く彼の姿を、ケンスケはただじっと見つめていた。
それから時間はあっという間に過ぎていった。夕飯を終え、風呂も済ませ寛ぐケンスケに、シンジは
おずおずと話しかける。
「ね、相談って…何?あんまり僕そういうの慣れてないから役に立たないかもしれないけどさ。
何でも言って。…あ、まだ言いたくなかったらいいよ?話したくなってからで」
労わるようなシンジの言葉にケンスケはにっこり笑った。
「サンキュ、シンジ。いいヤツだなお前」
「…そんなことないよ」
ケンスケの言葉にシンジは照れくさそうに頬を染める。その姿をまたしても彼の舐める様な視線が
捕らえていた。
700:鬼畜ケンスケ
06/02/05 20:59:58
「実はさ、俺写真が趣味だろ?結構頼まれるんだよ。何組の誰々ちゃんの写真撮ってくれ、
とかさ」
「へえー。そうなんだ」
意外そうに呟くシンジにケンスケは更に続ける。
「でさ、最近お前の…シンジの写真くれってヤツが多いんだよ。それもさ、相手は何故だか
上級生の男ばっか」
「へー、そうなんだ。…って、ええ?!僕?!」
こくりと頷くケンスケにシンジはぶんぶんと首を振った。
「駄目駄目駄目!やだよ僕、知らない人に自分の写真持たれてるなんて気持ち悪いよ!」
シンジの猛烈な勢いにケンスケは慌ててそれを否定した。
「違う違う。いくら俺でも友達売ったりしないって。そうじゃなくてさ」
「あ、ごめん。そうだよね。ていうか、…じゃなくて、何なの?」
シンジの言葉にケンスケは自分の荷物の中から一本のビデオテープを取り出した。
「何で男ばっかりなんだろうって気になったからさ、俺調べてみたんだ。そしたらどうも、
これのせいらしい」
その手に握られていたのは、アダルトビデオ。それも同性愛用のそのパッケージの表紙には、
シンジに良く似た少年の姿がくっきりと映っていた。
「…なにこれ…」
呆然とシンジが呟く。その姿にケンスケは慌てたように首を振った。
「いや、お前じゃないのは俺が一番良く知ってるって!でもどうも誤解されてるみたいなんだ」
そんな言葉もシンジの耳には入っているかどうか分からない。ふるふるとシンジはただ震えていた。
「僕知らないよ…何でこんなの…!」
真っ赤になって肩を震わせるシンジの姿に、ケンスケはわかってる、と呟きながら背中を黙って
擦ってやる。それからぼそりと呟いた。
701:鬼畜ケンスケ
06/02/05 21:02:20
「あの、さ。辛いかもしれないけどさ。…見てみない?見なきゃ反論も出来ないしさ。ホントは俺、
シンジにはこの事言いたくなかったんだけど…傷つくの分かってたし。でもちょっと最近、
空気やばいんだよ。だからお前の口から違うって言わなきゃ、収まらないかなと思って。
ほんとゴメンな!」
ケンスケの言葉にシンジはようやく笑みを浮かべた。
「…ごめん、取り乱しちゃって。ありがとうケンスケ。そうだよね。ちゃんと僕じゃないって証明すれば
いいんだよね」
「そうそう」
にっこりと笑うと、ケンスケは自分の荷物を手に持つと、TVの置いてある方へとシンジを誘った。
素直にシンジもそれに付き従う。それから二人で緊張気味にビデオをセットした。
『あぁっ!!やっ!あっ!あっ!』
あられもない嬌声が部屋中に響き渡る。慌ててボリュームを落とすとシンジはじっとその画面を
見つめた。 そこに映し出されている映像は、シンジの想像を遥かに越えたものだった。
複数の男達に押さえつけられ、無理やりにそれを咥え込まされている。体中に縄を掛けられ
四方から伸びた手が一人の少年を嬲っている。抵抗の言葉を口にする少年に、男達の容赦のない
卑猥な責め言葉が降り注いでいた。
涙を流しながら、男達の行為をただ受け入れるしかない様子のその姿は、確かに自分とよく似た
背格好の少年だ。まあ、顔も確かに結構似ている。でも当たり前だが自分じゃない。
だが自分とよく似た少年が画面の中で複数の男に弄られ、喘ぐ姿は見ていて気持ちのいいものでは
なかった。
702:鬼畜ケンスケ
06/02/05 21:04:28
「…やっぱり違うよ。ね、もういいよね。止めよう」
そう言ってビデオを取り出そうとするシンジの手をケンスケは押しとどめた。
「駄目だって。ちゃんと最後まで見なきゃ」
強引なその行動にシンジは眉根を寄せた。
「…ぼくはもういい。ケンスケ見たければ見てていいよ。僕自分の部屋にいるから」
そう言って立ち上がろうとするシンジを、ケンスケは再び押しとどめる。それからなに?!と声を荒げ
振り払おうとするシンジの腕を乱暴に引き寄せると、ケンスケは後ろからシンジの身体をがっちりと
押さえつけ座らせた。
「ちょっとケンスケ!離してよ!…怒るよ?!」
明らかに気分を害しているシンジの耳元で、ケンスケがねっとりとした声で囁いた。
「なんだよシンジ…こんなので興奮したのか?」
「……!!!」
シンジの頭にかあっと血が上る。ふざけないでよ!と叫び彼の腕を引き剥がそうとしたが、後ろから
しっかり抱え込まれていて、逃げ出すことは叶わなかった。
「やめて!離してよ!」
身体を捩るシンジの姿に、ケンスケはにやにやとただ笑みを浮かべている。
「お前分かってんのかよ?これお前だと思われてんだぜ?俺に写真を要求した男どもは、
こんな風にお前のこと犯したいって、思ってんだよ?ちゃんと見ろって。自分が男の頭の中で
どんな風に犯されてるのかをさあ?」
びくり、とシンジは身体を震わせた。信じられない思いでケンスケを見上げる。こんな彼の意地悪な
声をシンジは聞いたことがなかったからだ。
703:鬼畜ケンスケ
06/02/05 21:25:14
とりあえずはここまででやんす。
704:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/02/05 22:08:00
キタ━━(゜∀゜)━━ッ!!
これは…イイ!!続きが激しく楽しみだ。
705:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/02/06 00:50:29
>>703
今最悪は最高になった
706:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/02/06 02:43:24
キタキタ!!!!
707:名無しが氏んでも代わりはいるもの
06/02/06 12:00:43
期待
708:鬼畜ケンスケ
06/02/07 00:00:57
その表情にケンスケは楽しそうに彼を見下ろした。それから動きを止めたシンジの下半身に
自分の手を忍び込ませる。
「…ひゃっ!」
びくっと震えるシンジの股間をケンスケはわざと煽るように掌で撫で回し、耳元で意地悪く囁きかけた。
「勃ってんじゃん、シンジ。僕関係ないです、みたいな顔して、実はとっくに経験してんじゃないの?」
「ち…違う!ケンスケ、どうしたんだよ?!おかしいよ…!」
ふるふると首を振るシンジの頭を押さえつけて画面に向きなおさせるとケンスケは耳元に唇を這わせ
ながら、ねとりと再び囁きかける。
「ほらちゃんと見てみろよ。あれお前だよ、シンジ。お前あんな大勢で輪姦されて感じてるんだよ」
耳元にかかる吐息がシンジの身体を震わせた。その間もケンスケの手はシンジを撫で回し、
扱き上げている。そして空いたほうの手でシャツをたくし上げ胸の辺りを撫で回した。
初めて他人から受ける感触と、ビデオの中で喘ぐ自分に似た少年の姿がシンジの頭の中で混ざり
合っていく。まるで自分があんな行為を受けているかのような錯覚にとらわれ、シンジの唇からは
哀願の言葉と甘い吐息が漏れ始めていた。
「やらしい声あげちゃって。シンジ、もう抵抗しないんだ?何だよ男に弄られてこんなにメロメロに
なるんじゃ、ビデオと別人だなんて言い訳できないよ」
ケンスケの容赦のない言葉攻めに、シンジはふるふると首を振ることでしかもう抵抗できなかった。
逃げ出したくて仕方がないのに、ケンスケの掌の動きはシンジの理性を少しずつ奪っていて、今では
自分の意思で手を上げることさえ出来ぬほどに蕩けてしまっていた。
709:鬼畜ケンスケ
06/02/07 00:04:28
ケンスケはそんなシンジの姿を確認すると、自分の荷物を引き寄せ中から何かを取り出した。
「シンジ、いいものやるよ」
何事かとそれを見上げたシンジの表情が凍りつく。それは手錠と、首輪。それから妙な形をした
電動式の玩具だった。
逃げ出そうとする彼をケンスケは軽く押さえつけると、半分脱げかかっている上着を引き剥がし後ろ手で
シンジを拘束した。それからにやりと微笑むと、ゆっくりと下着ごとズボンを引き下ろしてゆく。
「やだ…やだよお…!ケンスケ…やめてよ…!」
シンジの哀願は彼には届かなかった。いや、それはむしろ彼を余計に煽る結果にしかなっていない。
「そんなこと言ってる割には…。シンジってやらしいな」
じろじろと露になった股間を眺めながらケンスケはにやりとシンジに微笑みかける。ほら、自分で
見てみろよ、と脚を広げさせるとケンスケはシンジの頭を掴むと彼の下半身へと向けさせた。そこには
勃ちあがったシンジの性がぴくぴくと震えている。
「嫌だ…!」
思わず顔を背けるシンジの頬を強引に掴み、尚も耳元で責めたてる。
「シンジが男に無理やり弄られて服脱がされて、挙句押し倒されても勃っちゃう身体だなんて先輩達が
知ったら、お前明日から学校一人じゃ歩けないよ?あっという間にあのビデオよりやらしいことされちゃう
かもなあ?」
ケンスケの言葉にシンジはびくりと震えた。
「やだ…!ケンスケ嫌だ…!お願いだから…」
その言葉にケンスケは満足そうににやりと笑いかける。
「黙っててやるよ。俺達、友達だもんな?」
びくんと震える。シンジは潤んだ目で彼の顔を見上げた。友達はこんな事したりしない、と叫びたかった。
しかしそれを言ってしまえばケンスケが本当に自分のこの恥ずかしい姿を、皆に言いふらしてしまうのでは
と思うと、どうしても言葉が出なかった。
「だからお礼くらい貰っても罰は当たらないよな?な、シンジ?」