04/02/09 02:43 3nR6Jyqt
>>1
キール・ゲンドウも女になるんだぞ?
3:名無しが氏んでも代わりはいるもの
04/02/09 03:07 WSt1BUWL
ゲンコ(ゲンドウの女版)に逆レイプされる、
新進気鋭の科学者「赤木リツオ」
・・・・見たくないなぁ。
4:名無しが氏んでも代わりはいるもの
04/02/09 20:12 ZpScIDo3
アスカとレイが男になるワケだ・・・
うん、アスカ(明日香)が男になってトワ(永久)
レイ(霊)ならレイジ(零士)
・・・レイジとトワの801ハァハァ
5:名無しが氏んでも代わりはいるもの
04/02/10 15:19 eYisf9on
シンジ>レイ
レイ>シンジ
アスカ>アスカ
ミサト>ミサト
リツコ>リツ
リョウジ>リョウ
マヤ>マヤ
マコト>マコト
シゲル>トモコ
トウジ>ユウキ
ケンスケ>サトミ
ヒカリ>ヒカリ
ゲンドウ>
コウゾウ>チヅル
ユイ>ユイ
ナオコ>ナオキ
カヲル>カヲリ
…雰囲気似せて変えてみたが、名前違うだけで全然違うキャラだ。
あと、ゲンドウの女性版の名前なんか思いつけない。
6:名無しが氏んでも代わりはいるもの
04/02/12 16:25 OBCSTgET
する必要あるかわからんが、保守。
7:名無しが氏んでも代わりはいるもの
04/02/14 01:46 gBUKuoLR
性別全員逆でまったりエヴァFF書いてみようかな。
FF書くのは初めてなんで見苦しいかも。
とりあえず第壱話の前半まで。
8:名無しが氏んでも代わりはいるもの
04/02/14 01:47 gBUKuoLR
第壱話 使徒、襲来
『現在、非常警報が発令中ですので、電話を使用することができません。
お近くのシェルターまで早急に避難してください。現在――』
「ダメだ―やっぱり、来るんじゃなかった」
ショートカットの少女は受話器を置き、写真を手に取り一言そうつぶやいた。
写真には、ラフな格好をし笑みを浮かべている美形の男が写っている。
『俺が迎えに行くから、待っていてくれ』そう、走り書きがあった。
「待ち合わせは、無理か。シェルターへ行こう」
あきらめ辺りを見渡すと、道路に水色の髪の少年が立っているように見えた。しかし飛び交う
戦闘機に一瞬気を取られ、改めてその方向に視線をやると、すでに少年の姿は消え去っていた。
「……目の、錯覚?」
不思議に思ったが、気のせいにしてシェルターを探す。そのとき、爆撃音と共に
戦闘機と異形の物体が目に見えた。
「なにあれ…?」
―ネルフ本部 中央作戦室発令所―
「―15年ぶりだね」
老齢の女性が、直立不動の姿勢のまま声を発した。半ば以上髪に白いものが混じっているが
物腰はやさしく、穏やかそうな印象を放っている。
「ええ、間違いない」
椅子に腰掛け手を前で組んでいる、先程の女性よりは一世代ほど若そうな
眼鏡をかけた女性が無表情のまま答えた。
「使徒よ」
異形の物体に驚く間も無く、爆撃戦が始まり少女の目の前に戦闘機が墜落してきた。
「キャッ!」
思わず目を閉じ手を頭を守るように前へ突き出す―が爆風も破片も飛んでこない。
「……?」
おそるおそる手を下ろし目を開ける。車が目の前にあった。素早くドアが開く。
「すまん、遅くなった。さあ、乗ってくれ」
サングラスをつけてはいるが、写真の男性がそこにいた。
9:名無しが氏んでも代わりはいるもの
04/02/14 01:48 gBUKuoLR
使徒と呼ばれたそれは、戦闘機をものともせず確実に第3新東京市へと歩みを進めていた。
「ええい、なにをしてるの!」「総力戦よ! 全機行って、出し惜しみは無しよ!」
国連軍の女性高官が矢継早に命令を出している。
命令を受けて、大型ミサイルが使徒へと投下された。しかし使徒は手でミサイルを受け止めると
紙のように切り裂く。爆発が起こった。
『……使徒に目立った損害はありません』
「なぜよ!? 直撃したのに…」
国連高官は怒りと焦りを隠しきれない様子だった。
「……ATフィールドだね」
「ええ、使徒に対し通常兵器では役に立ちません」
後ろでその様子を眺めながら二人は呟く。
「…くっ、n2地雷を用意しなさい! なんとしてもアレは我々の手で倒すのよ!」
少女を車に乗せ、戦闘地域から抜け出したあと、写真の男は望遠鏡で戦闘の状況を眺めていた。
と、戦闘機が全機使徒の周りから急速離脱していく。
「おいおい、まさか……n2地雷かよっ!? ―レイちゃん、伏せて!」
男は少女の頭を抑えて座席の下へと押し込むと、自分も身を伏せる。
―閃光!―
n2地雷が投下され使徒に当たるとともに、大爆発が起き使徒の姿は煙の向こうに消えた。
「仕留めた!?……悪いけどあなたたちの出番は無くなった様ね」
国連高官は勝利を確信した表情で、後ろを振り返りそう告げた。
二人は無表情で、電波障害で見えなくなったモニターを眺めている。
「……イッテテ……国連軍もずいぶんと派手なことをやるもんだな……大丈夫かい? レイちゃん」
「……ええ、なんとか。少し口の中がシャリシャリしますけど」
「そうか、それはなにより。じゃ、ちょっと車を動かすのを手伝ってもらえるかな?」「はい」
二人は協力して横転している車を元に戻す。作業を終えた後、男はサングラスを取って微笑んだ。
「ふぅ、ありがとう。俺は葛城ミサト。あらためてよろしく、碇レイちゃん」
「よろしくお願いします、葛城さん」
「ミサトでいいよ」
10:名無しが氏んでも代わりはいるもの
04/02/14 01:49 gBUKuoLR
『電波障害、回復します……爆心地にエネルギー反応あり!』
「―なんですって!? 我々の切り札が……化物め……」
地団太を踏んで悔しがる高官。使徒は傷を負ってはいるようだが生きていた。そこに電話の音が鳴る。
「―はい。……わかりました。では」
「碇ゲンドウ君、只今を以って本作戦の指揮権は君へと移った。お手並み拝見と行かせてもらいましょう」
「了解です」
「確かに我々の兵器では効果が薄いのは認めましょう。ですが、あなたたちなら勝てると言えるのですか?」
「ご心配なく。そのための、ネルフです」
眼鏡を指で押し上げ、含み笑いをしながらゲンドウは言った。
「―ああ、碇レイちゃんは無事保護。今ジオフロントへ向かってるから、最寄の直通カートレインを
使用可能状態にしておいてくれ。ナビも頼むよ」
ミサトは通話相手にそう言うと、電話を切った。
「―いいんですか? こんなことして」
レイは後部座席に視線を送りながら、ミサトへ質問した。バッテリーが山積みになっている。
「ん? ああ、いいのいいの。今は非常時だし、こう見えても俺は国際公務員だしな」
「……でも、これってやっぱり犯罪じゃ……」
「いいんだって。あまりなんでも気にかけてると、器も胸も小さい人間になるぞ?」
「………」
「あら、怒った?……まぁ、それはさておきお母さんからIDカード、もらってないかな?」
「あ、はい。これでしょうか?」
レイはミサトに母からの手紙を渡す。ミサトが中を確認するとIDカードとともにゲンドウから
『来なさい』という文だけが添えられていた。
(……司令も司令だが、この文で来るレイちゃんもたいしたもんだな……)
「オーケイ。これに目を通しておいてくれ」
ミサトはレイに『極秘』と書かれた小冊子を渡した。
「なーぶ?」
「ネルフだ。国連直属の非公開組織、特務機関ネルフ。君のお母さんが働いている場所。
お母さんの仕事、知ってるかい?」
「……人類を守る、大事な仕事だと先生からは聞いてます」
レイの表情は、硬い。
「結構言うねえ」多少あきれながら、ミサトは返事をした。
11:名無しが氏んでも代わりはいるもの
04/02/14 01:51 gBUKuoLR
「―それで碇さん、どうするつもりなの?」
国連高官たちが退出した後、白髪の女性がたずねた。
「初号機を起動させます」
「初号機? しかしパイロットがいないのでは」
「問題ありません。もうすぐ、予備が届きます。それでは冬月先生、後は頼みます」
そう告げるとゲンドウは、簡易エレベーターに乗って発令所を後にした。
冬月と呼ばれた女性が、ポツリとつぶやく。
「三年ぶりの対面か…」
『副司令、使徒活動再開、本部を目指し移動を開始しました!』
そこへ女性オペレーターからの報告がくる。
「わかった。総員、第一種戦闘配置に移行!」
間髪いれず、冬月は指示を飛ばした。
そのころ、ミサトとレイはカートレインに乗ってネルフ本部へ移動していた。
「―これから、母のところへいくんですよね」
重い口をあけて、レイが言葉を発した。
「ああ、そうなるな。お母さんは、苦手かい?」
「ええ、三年ぶりですし……私は、何かしなければならないんですか?」
レイはミサトに訊くが、ミサトは前方を向いたまま返事をしない。
「…そう、ですよね。何も用事が無いのに、母が私に手紙をくれるはずありませんし」
「ま、そう深く考えないことだ。俺も母さんは苦手だったさ」
ミサトがフォローともとれるようなことを言った。
そのとき閉鎖的な空間を抜け目の前に広大な景色が現われた。
「―すごい。これが、ジオフロント?」
レイの顔に感激の表情が浮かぶ。
「そう、これが俺たちの秘密基地ネルフ本部。世界再建の要、人類の砦となる所だ」
「……いい年した大人が秘密基地とか言うのはどうかなぁ。ミサトさんって案外
子供っぽいんですね」
「おい……」
ミサトは顔を引きつらせながら、うめいた。
12:名無しが氏んでも代わりはいるもの
04/02/14 22:29 gBUKuoLR
Episode:1 ANGEL ATTACK
数分後、二人はネルフ施設内を歩いていた。
「―さて、と」
ミサトは地図をにらみながら目的地を探している。
「あの、ここさっきも通りましたよ」
さっきミサトからもらった小冊子に目を通しながら、レイが言う。
「うっ……わ、悪いね。俺も最近ここに引っ越してきたばっかでさ」
「それはしょうがないとして、どうするんですか?」
「システムは利用するためにあるもんだ。まかせとけって」
そう言いながら、ミサトは携帯電話を取り出した。
『―技術局一課E計画担当の赤木リツ博士。赤木リツ博士。至急、作戦部第一課
葛城ミサト一尉までご連絡ください』
アナウンスが流れる。それが別場所で調整作業をしていた金髪の男性の耳に入った。
男性は作業をする手を止め、白衣を身にまとう。
「あきれた。また迷ったのか」
さらに数分後、ミサトとレイは誘導されてエレベーターの前にいた。
エレベーターが開くと、中には先程の金髪の男性がいた。男性は
ミサトに詰め寄り、口を開いた。
「なにをやってたんだ、葛城一尉。人手も無ければ、時間も無いんだぞ」
「すまん、リッちゃん…」
ため息をついた後、金髪の男性は横にチラリと視線をやり
「これが例の女の子?」
と、ミサトに聞いた。
「ああ、マルドゥックの報告書によるサードチルドレン、碇レイちゃんだ」
「碇レイさん、よろしく。私は赤木リツ」
「よろしくお願いします、赤木さん」
「リツでいいよ。さぁ行こう」
リツはきびすを返し歩みを進めた。
13:名無しが氏んでも代わりはいるもの
04/02/14 22:30 gBUKuoLR
「―国連軍は撤退、使徒はn2地雷の爆撃により傷を負うも自己再生を経て
進化、知恵も身に着けたと思われる、か」
ミサトが報告書を声を出して読む。
「ああ、すでに活動再開、こちらを目指し向かっているところだ」
「どうするんだい? 初号機は?」
「現在B型装備のまま、冷却中」
「ほんとに動くのか、それ? まだ一度も動いたこと無いんだろ?」
「起動確率0.000000001%、オーナインシステムとはよく言ったもんだな」
「あのなぁ…そんなのに運命を託さないとダメなのかよ。ま、どのみち
いまさら動きませんでした、じゃ済まされないんだ」
カーゴは目的地を目指し進んで行く。
その部屋に入ると、扉が閉じられ辺りには暗闇が満ちた。
「あの、真っ暗ですよ?」
レイが訝しげにたずねる。そのとき突然、明かりがつく。
「キャッ……顔?」
レイの目の前には、鬼のような形相の巨大な顔があった。あわてて
もらった小冊子をめくって詳細を調べる。
「探しても、載ってないよ。これが人の作り出した究極の汎用人型決戦兵器、人造人間
エヴァンゲリオン。その初号機。建造は極秘で行われた。我々人類の最後の切り札だ」
リツが説明を入れた。
「これも、母さんの仕事なんですか?」
『そうよ』
唐突にスピーカー越しに声がした。レイが見上げるとガラスを隔てた向こう側に
ゲンドウが立っていた。
「久しぶりね、レイ」
「……お母さん」
葛藤からか、レイは目を背ける。ゲンドウは何の表情も出さない。
「…出撃」
一言、命令を告げた。
14:名無しが氏んでも代わりはいるもの
04/02/14 22:31 gBUKuoLR
「出撃だって!? 零号機は、まだ凍結中だろ?…まさか、初号機を?」
ミサトがまくしたてる。
「それ以外に道は無いよ」
「だがしかし、シンジ君はまだ動かせないんだろ? パイロットがいないぞ」
「さっき、届いたじゃないか」
「…っ、本気なのか?」
驚くミサトを尻目に、リツはレイのほうを向く。
「碇レイさん、君がこれに乗るんだ」
「え?」
突然の事態に思考がついていかず、呆けたようにレイは返事をした。
「赤木博士! 綾波シンジ君でさえシンクロできるようになるまで7ヶ月も要したんだ。
今来たばかりのこの子に、できるわけないじゃないか!」
「座ってるだけでいい、それ以上は何も望まない。今、何が最優先事項なのか
わかっているのか? 使徒を倒すには、少しでもエヴァとシンクロ可能と思われる
人間を乗せるしか方法は無いんだよ、葛城一尉」
「くっ……」
ミサトは反論するが、逆にリツに説き伏せられる。
「……お母さん、このために私を呼んだの?」
しばらくして、レイがゲンドウへたずねた。
「そうよ」
「いやよ、そんなの……お母さんは私がいらないんじゃなかったの!?」
「必要だから、呼んだのよ」
「なぜ、私を」
「他の人間には乗れないから」
「そんなの…無理よ。見たことも聞いたことも無いのに、できるわけないじゃない!」
「説明を受けなさい」
「そんな…できっこない! こんなの乗れるわけないじゃない!」
「乗るなら、早くしなさい。そうでないのなら―帰って!」
「―っ!」
レイはゲンドウからの痛烈な言葉に声を失い、唇をかむ。
15:名無しが氏んでも代わりはいるもの
04/02/14 22:32 gBUKuoLR
そのとき活動を再開した使徒が第3新東京市に攻撃を仕掛けた。
「使徒め、ここに気づいたか」
ジオフロント全体が揺れる。ゲンドウが上を見上げ、つぶやいた。
レイは顔をうつむかせたまま、自問している。
「レイさん、時間が無い」
リツがレイに声をかける。レイは救いを求めるようにミサトを見た。
「……わりぃ、乗ってくれ、レイちゃん」
ミサトの返事に、レイは再び顔をうつむかせる。
「いやよ…せっかく来たのに、こんなことってない!」
「気持ちはわかる、でも逃げちゃいけない。お母さんから……そしてなによりも
自分自身から」
「わかってます! でも、できるわけないじゃないですか!」
ミサトの言葉に、感情を爆発させる。それを見ていたゲンドウはモニターに目をやる。
「冬月先生」
モニターに冬月の映像が出る。
「シンジを、起こしてください」
『使えるのかね?』
「死んでいるわけではありません」
『…わかった』
冬月の映像が消える。
「シンジ、予備が使えなくなった。もう一度、いけるわね?」
『…はい』
抑揚の無い返事がした。
「初号機のシステムをシンジ君に切り替えて再起動、作業を急げ!」
リツが指示を飛ばす。
「私は、いらない人間なのよ…」
レイは昔の情景を思い浮かべながら、沈み込んだ表情でうつむいている。
16:名無しが氏んでも代わりはいるもの
04/02/14 22:33 gBUKuoLR
ストレッチャーが運ばれてくる。ベッドの上には包帯を巻き、スーツのような
ものをまとった水色い髪の少年が横たわっていた。少年は苦しそうに身を起こす。
「っつ……はぁ、はぁ、はぁ……」
レイはそれを物悲しい表情で見ている。と、そこへ使徒の攻撃が再び
ジオフロントを襲った。防衛施設の装甲を抜け、ジオフロントにまで被害が及ぶ。
施設内が激しく揺れ、天井にある照明がレイの上へ勢いよく突然、落ちてきた。
「―キャァァァッッ!!」
「レイちゃん!」
ミサトが緊迫した声を出す。レイはとっさに腕を上へあげ、頭をかばう。
誰もが助からないと思えた、しかし。
「……あれ?」
エヴァンゲリオン初号機の腕が伸びて、照明からレイを守っていた。
レイは呆然と初号機の手のひらを見つめている。
「まさか!? ありえない! エントリープラグも挿入していないのに」
「インターフェイスもなしに反応している……というより、守ったのか? 彼女を」
リツとミサトが互いに驚きの言葉を発する。
「……いける!」
ミサトは確信を持った表情で言った。驚きから覚めたレイは、先程の少年が
ストレッチャーから滑り落ちて、地面に横たわっているのが見えた。
慌てて駆け寄り、抱き起こす。
「くっ……はぁ、はぁ、はぁ……」
少年は息も荒く、まともに口を聞けないような状態だった。レイは抱き起こした
手を見てみると、赤い血が付着している。
「……逃げちゃダメ、逃げちゃダメ、逃げちゃダメ、逃げちゃダメ、逃げちゃダメ!」
自分に言い聞かせるように繰り返すと、レイはキッ、と顔を上げて言い放った。
「―やります。私が、乗ります!!」
17:名無しが氏んでも代わりはいるもの
04/02/14 22:34 gBUKuoLR
レイが決心した後は早く、流れ作業のようにトントン拍子に進んでいった。レイは頭に
インターフェイスをつけ、制服のままエントリープラグへ入り初号機の中へ挿入された。
レイと同じぐらいの髪の長さの若い男性オペレーターが、リツと共に起動作業の
指揮をとっているようだ。
『エントリープラグ、注水』
アナウンスが、流れる。同時にエントリープラグ内に、赤い液体が満ちていく。
「わ、わわっ! なんですか、この液体は!?」
「大丈夫。肺がLCLで満たされれば、直接血液に酸素を取り込んでくれるから」
しばらくは息を止めていたが、リツのその声に従いレイは口を開く。
「うっ……おいしくない」
「レイちゃん、我慢してくれ」
その後も順調に起動作業は進む。
「シンクロ率、41.3%。ハーモ二クス、すべて正常値」
「すごいな、これは。ミサト、いけるぞ」
ショートヘアの男性オペレーターの報告を受け、リツがミサトに声をかける。
「発進、準備!」
ミサトはうなずき、命令を下す。拘束具が除去されていく。
『安全装置、すべて除去終了。現在初号機の状況はフリー』
「了解。初号機、射出口へ」「発進準備、完了」
射出口へと移動していく初号機を眺めた後、ミサトは振り返る。
「かまいませんか?」
「ええ、もちろん。使徒を倒さぬ限り、我々人類に未来はありません」
ミサトの問いかけに、ゲンドウは即答する。
「碇さん、本当にこれでいいの?」
冬月が声をかける。ゲンドウはただ組んだ手で隠した口元を歪ませただけだった。
「発進!」
ミサトが号令をかける。
「くぅっ!」
全身に強烈な重力を感じ、思わずレイはうめき声を上げる。しかし数秒後には
すでに地上へ出ていた。眼前には、使徒が見える。
「レイちゃん、死ぬなよ」ミサトが、つぶやいた。 ―to be continued―
18:名無しが氏んでも代わりはいるもの
04/02/14 22:46 gBUKuoLR
コソコソ...
第弐話以降はキッズステーションで今度やるのを録画して
それを見てからかな(Test TypeのDVDだけ持ってるので)
あ、でもあまり忠実にやり過ぎると著作権とかヤバイのかなぁ
まぁ、性別違うし、同じストーリーでも展開全然違うだろうけど…
19:デッパッパ ◆N2pKVDbn6s
04/02/14 23:58 6KDlHCmY
乙!
20:名無しが氏んでも代わりはいるもの
04/02/15 17:00 xuDuDgwo
男になったノリコやカズミがあの服着るのか・・・
男になったナディアがあの服着るのか・・・
21:名無しが氏んでも代わりはいるもの
04/02/15 18:01 QFEKiIlz
シャア板の方にもこうゆうスレあったが流行ってるのか?
何しろ>>8~>>17
good job!!
22:名無しが氏んでも代わりはいるもの
04/02/15 22:52 sLZSgy74
シャア板の方と同一人物が立てたんだろ
23:名無しが氏んでも代わりはいるもの
04/02/17 12:10 MePbMDvh
ゲンドウの女版はラーゼフォンに出てる
24:あげ屋さん ◆P1AWcg9OTs
04/02/18 00:15 peNyaQ+2
(・∀・)age!
25:名無しが氏んでも代わりはいるもの
04/02/18 00:52 mzI/tjMt
>>23
確かに雰囲気はあるよね。
結構面白かったので職人さんガンガレ
26:名無しが氏んでも代わりはいるもの
04/02/18 19:29 6ccp/5Bu
良スレあげ
27:名無しが氏んでも代わりはいるもの
04/02/19 07:20 1SIuGAo5
女にゲンドウなんて名前も無理があるだろ。
そのままユイと入れ替えればいいんじゃないか?
28:名無しが氏んでも代わりはいるもの
04/02/19 16:39 9BBoxwl8
女ケンスケって、可愛いとか思う人いません?
29:名無しが氏んでも代わりはいるもの
04/02/19 18:22 hx1WxqE+
>>28
美少女ケンスケ、かわいいと思うな。
ちょっと大人ぶっててミリタリーマニアでたまに迷彩服を着てる眼鏡っ子…、うん可愛い。
女子更衣室にカメラを持ち込んで写真撮影、それをお馬鹿な男子に売ってカメラ代やプラモ代を稼いでいる、と。
そして友達はジャージの似合う熱血関西弁美少女。
30:名無しが氏んでも代わりはいるもの
04/02/19 20:09 x4orIdew
>>29
可愛い女の子なら全て許されるのか?
31:7
04/02/19 23:21 yRZL9DSN
>>27
確かにゲンドウって名前には無理があるね。
でも、ユイと入れ替えは個人的にはダメだと思う。
なんというか、ユイにはユイという既存のイメージがあるんで
オリジナルのゲンドウみたいな性格のユイがいたら、違和感ありそう。
初号機の中に取り込まれたがゲンドウってのは個人的に……だし。
一応基本は、「登場人物の性別が全部逆」ってだけなんで
明らかに男・女な名前じゃない限り、そのままにしておきたい感じ。
そっちのほうが判りやすいしね。
ゲンドウは思いつけなかったから、そのままにしておいた。
んでは、第弐話。>>17からの続き。
32:7
04/02/19 23:22 yRZL9DSN
地上へと出た、エヴァ初号機。少し離れたところに使徒が見える。相手は
様子をうかがっているのか、二つに増えた頭をこちらに向けて動きを止めている。
『レイちゃん、いいな?』
「は、はい」
「初号機、リフトオフ!」
ミサトの掛け声とともに、初号機を固定していた輸送台が外れる。
「ど、どうすればいいんですか?」
『レイさん、落ち着いてくれ。エヴァはパイロットの思考を読み取り、自動的に
行動に移す。まずは、歩くことだけに集中してくれ』
とまどうレイに、リツがアドバイスを送る。
「あるく…歩く」
助言に従い、歩くイメージを頭の中で描く。すると初号機は一歩前に進んだ。
『おおっ!!』
実際にエヴァがパイロットの指示通りに動くのを見て、歓声が沸き起こる。
しかし、次の一歩を踏み出すととバランスを崩したのか、初号機は地面に倒れこむ。
「―っ!」
軽い衝撃を受けたレイは、パニックに陥り操縦桿をめちゃくちゃに動かす。
『レイちゃん、とりあえず起き上がって!』
ミサトが指示を出すが、焦ったレイには聞こえない。そうしている内に使徒が
初号機の前にまで迫ってきている。使徒は左腕で初号機の頭をつかみ、持ち上げた。
それと同時に、右腕で初号機の左腕を折りにかかる。
「くぅぅぅっっっ!!」
左手に異様な圧迫感と痛みを受け、レイは右手で左手を押さえつける。
「エヴァの防御システムは?」
「シグナル、無反応」
「フィールド、作動しません!」
「ダメか!」
リツは問いかけるが、男性オペレーター、マヤと女性オペレーターの返答に思わず天を仰ぐ。
使徒はなおも持つ腕に圧力を加え続け、ついに初号機の左手がいやな音を立てた。
「――!?」
声にならない叫びを、レイは上げる。痛みと共に意識が遠くなりかける。
33:7
04/02/19 23:23 yRZL9DSN
初号機の左腕を折った使徒は、そのまま高く持ち上げ、左腕に装着されている
杭のような物を、勢い良く初号機の頭に打ちつけ始めた。
「レイちゃん、避けるんだ!」
ミサトの指示もむなしく、初号機は動かない。レイは次々と襲い掛かる痛みに
為すすべも無く、右目を押さえたまますでに意識は朦朧としていた。
「装甲が、もう持たない!」
リツが叫ぶ。初号機の装甲が徐々に削れていく。使徒はトドメとばかりに
杭を打ちつけ、杭は初号機の頭部を貫通し初号機はビルへと叩きつけられた。
「頭部破損、損害不明!」「パイロット、反応ありません!」
初号機の頭部から激しく血のようなものが吹き出る。レッドランプが灯り
オペレーターの緊迫した報告がミサトの耳に入る。
「レイちゃん!」
ミサトが渾身の声で呼びかけた。
「――はっ!?」
レイが目を開き体を起こすと、そこは病室だった。自分がひどく寝汗を
かいていることに不快感を感じ、再び仰向けになると一言つぶやく。
「知らない天井か」
第弐話 見知らぬ、天井
「―使徒再来、あまりにも唐突じゃありません?」
「15年前と同じです。災いは何の前ぶれもなく訪れるものです」
「幸いとも言えます。我々の先行投資が、無駄にならなかった点においてはね」
「それはまだわからないんじゃなくて? 役に立たなければ無駄と同じよ」
常闇の満ちる部屋に、パネルから放射される明かりだけが各人の顔を照らしている。
パネル越しに合計6人の女性が浮き上がっていた。ゲンドウ以外はいずれも初老の域に
達しただろう、欧米人の容姿を持つ婦人たちだ。
「零号機に続き、あなたが初陣で壊した初号機の修理費。国が一つ傾きますわ」
「全く、人、時間、そして金。親子二人でいくら使えば気が済むのよ」
左右に座っている四人からの愚痴が、ゲンドウに降り注ぐ。
34:7
04/02/19 23:24 yRZL9DSN
「まあいいわ。碇君、"人類補完計画"、これこそが、あなたの急務です」
「左様。その計画こそがこの絶望的状況下における、唯一の希望なのです。我々のね」
「…いずれにせよ、使徒再来における計画スケジュールの遅延は認められません。
予算については考えておきます」
ゲンドウの反対に位置している、まとめ役らしいバイザーをつけた婦人が、宣言した。
「それでは、あとは委員会にお任せを」
「碇君、ご苦労様」
その宣言とともに、ゲンドウの左右にいた4人がそれぞれ、ねぎらいの言葉をかけ
パネルが消えうせる。あとに残ったのは、正面の婦人だけだ。
「碇さん、後戻りはもうできないわよ」言い残し、パネルが消える。
「ええ、わかっています。人間にはもう時間は残されていないのですから」
いつもの様に手を前で組んだまま、ゲンドウは自分に言い聞かせるように声を出した。
レイは特に外傷も見受けられず、体調的に問題は無いようだった。セミの声が
聞こえる中、病室から廊下へと歩みを進め、窓から外をぼんやり眺め、レイは
物思いにふけっていた。
(私は…いったい…どうなったんだろう)
記憶の糸をたどろうとするが、途切れてしまったのか、思い出せない。
たたずんでいるレイの耳に、ストレッチャーが運ばれてくる音が入った。
振り返ると、水色の髪の少年が横たわっているのが遠目に見えた。
いまだに体のそこかしこに包帯を巻き、痛々しい様子だった。
(しんじ…綾波シンジ君だったかな)
ミサトがそう言っていたのを、覚えていた。どうやら初号機に乗って少ししてから
の記憶が無いだけで、それ以前の記憶はあるようだ。
(声を…かけなきゃ)
漠然と、その思いが募った。そう思っているうちに、音が迫ってくる。
「あの――」
声をかけようとしたとき、シンジと目が合った。澄んだ、赤い瞳。その目は
確かにこちらを見ているようだったが、何も見ていない様でもあった。
感情の類が、浮かび上がってこない。レイは息を呑む。
そのまま、音は遠ざかっていった。レイは立ちすくんだまま、しばらく
その場から動けなかった。
35:7
04/02/19 23:25 yRZL9DSN
その少し前、ミサトはリツと共に作業服を着込み、事後処理にあたっていた。
「―発表はシナリオB-22。また真実は闇の中に、か」
「広報部は喜んでいたぞ。やっと仕事ができたってな」
「気楽なもんだな」
うちわを扇ぎながら、テレビに流される虚偽のニュースを見ていたミサトが
洩らした言葉に、リツが合いの手をいれる。彼らを尻目に、初号機の頭部が
着々と回収されていく。
「ふぅ、クーラーこそ至宝。科学の勝利だな」
回収作業を終え、ネルフ本部へと向かう車両の中、ラフな格好でミサトは
一息ついていた。
「…ああ、わかった。それでは。―ミサト、レイさんの目が覚めたらしいぞ。多少
記憶に混乱が見られるそうだが特に外傷は無し。いたって健康だ」
ミサトの横で電話に応対していたリツは、受話器を置くとミサトに告げた。
「目が覚めたのはいいことだが、記憶に混乱が見られるってのはどういうことだ?
まさか、精神汚染じゃないよな?」
不安気にミサトはリツに質問する。
「いや、精神汚染の心配は無いらしい。少々脳神経に負担がかかったためだそうだ」
「脳神経ねぇ…心、の間違いじゃないのか?」
「さあ、ね…」
ミサトの追及をリツは涼しい顔でかわした。訝しい表情をミサトはとっていたが
気を一新させ、外を見回す。そこには対使徒用の武装が備え付けられていく様子が
見て取れた。
「……エヴァとこの街が完全に稼動すりゃ、いけるかもしれないな」
ぼそっ、と口に出しただけだったが、その表情は自信に満ちている。
「ミサト、お前って本当に楽天的だな。本当に勝てると思っているのか?」
ミサトのつぶやきを耳にしたリツは、皮肉をこめて言った。
「おいおい、希望的観測こそ人が生きていく上で大切なことじゃないか」
「そう…だったな。私には無い考えだ。ミサト、お前には時々助けられるよ」
「ふん、おだてても何もでないぞ。まあいいさ、なんであれ使徒は再び来たんだ。
俺たちはそれを撃退しなけりゃならない。でないと人類は終わり。簡単なことさ」
こともなげに言い、ミサトは前を見据えた。
36:7
04/02/19 23:26 yRZL9DSN
「よぉ、レイちゃん、お待たせ」
ミサトはネルフへ戻ったあと、すぐにレイを迎えるべく病院へと足を運んだ。
「どうも、ミサトさん」
先の件を気にしてか、レイの表情は心もち、暗い。
「ん? どうした、元気が無いぞ?…ああ、記憶はすぐに戻るさ。そう気にするなって。
さあ、行こう。今後の身の振り方を決めないとな」
気落ちしているのは記憶が無いため、と早合点したミサトがレイをなぐさめる。
座っているレイをうながし、立たせた。
エレベーターの前で二人はドアが開くのを待っていた。階数を示すランプが徐々に
上がってくる。そしてドアがようやく開く。
「――っ」
中には、ゲンドウが一人佇んでいた。
レイの中で様々な感情が沸き起こり、思わず顔を背ける。言いたいことがあるのに
言い出せない。そして、その感情が声に出せるほどまとまる前にドアは閉まり
ゲンドウは眼前から消えた。
「レイちゃん……」
ミサトはレイにかける言葉を持たなかった。
「……おい、それはいったいどういうことだ?」
ミサトが声を荒げる。二人がいるその部屋は一面ガラス張りになっていて
ガラスの床越しにネルフ本部、ピラミッド型の建物が見える。
「どういうことと申されましても、今述べたことが全てです、葛城一尉。
初号機パイロット碇レイは、ネルフ側で用意してある住居に一人で住むように
とのことです」
黒服の女が、再び命令書を読む。
「それは、碇司令の意思なのか?」
「そうです」
返事に思わずミサトはレイを向き、質問をする。
「それでいいのかい? レイちゃん」
「……ええ。それでかまいません。どこにいても同じですから」
覇気の無い返事に、ミサトは眉をひそめる。それで話は終わりのようだった。
37:7
04/02/19 23:27 yRZL9DSN
「―本当に、いいのかい?」
会見後、廊下を歩きつつミサトがレイに再び問いかけた。
「いいんです、ミサトさん。私は一人でもやっていけますから」
レイは答えると、精一杯の微笑みをする。しかしミサトにはそれは悲しい表情にしか
見えなかった。ミサトは備え付けの電話の受話器を取り、どこかへと電話をかける。
「……ああ、リッちゃんか? 俺だ、ミサトだ。悪いが、ちょっとたのまれて
くれないかな? レイちゃんを俺の家に引き取ろうと思うんだが、上の許可の
方を頼む。大丈夫、手を出したりはしないさ。じゃ、ヨロシク」
『何言ってんだ、ミサト! そんなの当然だろ! おい、お前聞いてるの―』
「あー、うるせ。ジョークの通じないやつだなぁ、ホント」
ぼやきつつ電話を切ると、振り向き、笑顔でミサトは言った。
「さ、帰ろうか、レイちゃん」
「おっと、忘れるところだった。すまないが、ちょっと寄り道させてもらうよ」
コンビニで食料や生活必需品を買い込んだあと、車を運転しながらミサトは
レイに言った。物言いたげなレイに何も答えず、しばらく運転して止まった場所は
峠の展望台だった。辺りはすでに夕焼け空が広がっている。
「……なんだか、さびしい街ですね」
一望し、レイが感想を述べる。たしかに高層の建物は何も無く、ガランとしている。
「まぁ、見てなって。…時間だ」
ミサトが言うと共にサイレンが鳴り響き、山々にこだましていく。
「……すごい! ビルが…生えていく?」
音と共に、市内各地から地下に格納されていた高層ビルがその姿を現した。
その光景に、レイは驚きを隠せない。
「ああ、これが『使徒』専用迎撃都市、第3新東京市。俺たちの街だ」
ミサトは説明し、間をおいて言う。
「―そして、君が守った街」
38:7
04/02/19 23:28 yRZL9DSN
Episode:2 THE BEAST
展望台で光景を眺めたあと再び車に乗り、二人は葛城家へ着いた。
"コンフォート17マンション"と名前がついているマンションの一室のようだ。
「さぁ、入ってくれ。レイちゃんの荷物も、もう届いているはずだ」
ミサトがレイに入るように促す。
「は、はい。おじゃまし…」
「ちょっとまった、違うだろ? 今日からここは、レイちゃんの家なんだ」
レイの他人の家に入るかのような物言いに、ミサトがケチをつける。
「た、ただいま」
「おかえりなさい、レイちゃん」
慌ててレイは言い直し、ミサトは満足して温かい言葉を返す。
「まぁ、なんだ。引っ越してきてすぐだし、少々散らかってるが我慢してくれ」
ミサトがそう言う通り、控え目に見ても部屋は散らかっていた。特にビール
の缶やビンがそこかしこに置いてあり、雑多な印象を受ける。レイは
少々面食らったが、男の一人暮らしはこんなものなのだろうと思い直した。
「あー、その袋の中の食べ物を冷蔵庫に入れておいてくれないか?」
自分の部屋へ着替えに行こうとしたミサトが、顔だけレイのほうを向けて言う。
それを聞いてレイは冷蔵庫を開ける。
「………」
中に入っていたのは氷、おつまみ、缶ビールだけだった。
『んぐっ、んぐっ、んぐっ……ぷはぁっ! かぁ~っ!』
「いやぁ、やっぱ人生、このときのために生きてるようなもんだな」
缶ビールを一気飲みし、次の缶のフタを開けながらミサトは言い放った。
テーブルの上にはインスタント食品と缶ビールが並んでいる。レイはあまりの
ミサトの飲酒量に呆れ、またこれからの生活に不安を感じざるを得なかった。
「ん? どうした、食べないのか?」
「え? あ、はい、いただきます」
二本目も空け、三本目に手をかけたところでミサトはレイが料理に手を付けて
いないことに気付き、指摘した。レイは我に返り、箸を動かす。
39:7
04/02/19 23:30 yRZL9DSN
「どうだい? 誰かと一緒に食べるのもいいもんだろ?」
三本目を飲み干し、ミサトはレイに聞いた。
「は、はい…」
「おいおい、辛気臭いな。女の子なんだからほら、笑って、笑って!
せっかくの顔がもったいないじゃないか」
「は、はぁ…」
言われてレイは、ぎこちなく笑ってみる。
「よろしい! 笑うことは大切だぞ」
言うと、いつの間にか手に持っていた四本目を一気飲みした。
「…もぐ…ところでミサトさん、いつもインスタント食品なんですか?」
箸を進めながら、レイはミサトに質問した。
「ああ、料理できないわけじゃないんだが、時間が無くてな」
料理をつつきつつ、五本目をちびちび飲みながらミサトは答えた。
「なるほど…私が料理しましょうか? 家庭科で習ったこと以上はできませんが」
「そうかい? ジャンケンで決めようと思ってたが、そうしてもらえるとありがたい」
レイの申し出を、ミサトは快諾した。
「ところで、ジャンケンで何を決めるつもりだったんですか?」
ミサトとの会話で疑問に思ったことを、レイは聞いてみた。
「朝食、夕食の準備、ゴミ捨て、掃除の当番ってとこだな」
「…それってミサトさんが今までやってなかったことばかりじゃないんですか?」
「す、鋭いね…まぁ、何分、じ―」
「時間が無くてもそういうことはキチンとして下さい」
「うっ……ははは…」
同じ言い訳をしようとするミサトを先読みし、レイは口を挟んだ。ミサトは乾いた笑いを
上げ、誤魔化す様に六本目に手を伸ばす。レイは部屋の中を見回しながら付け加える。
「…この様子だと、掃除も私がした方が良さそうですね。ミサトさんはゴミ捨てを
お願いします」
「わ、わかった…レイちゃんはキレイ好きなんだな」
「女の子ですから」
仏頂面で答えた。
40:7
04/02/19 23:31 yRZL9DSN
「―さて、イヤな事は風呂に入ってぱーっと全部流しておいで」
食事も終わり、食後のビールを飲みつつミサトが言った。
「いいんですか? ミサトさん先に入らなくて」
「いいのいいの。風呂は命の洗濯だぞ。ゆっくり入ってきなさい」
言われてレイは着替えを手に浴室へのカーテンをくぐる。真っ先に目に付いたのは
男性物の下着だったが、見なかったことにした。服を脱ぎ、タオルを手に浴室の
ドアを開ける。と、目の前に何やら変な生物がいた。レイは立ちすくむ。
『―っきゃぁぁっ!!』
今日最後の一本を飲んでいたミサトは、浴室のほうから聞こえてきた叫びに
何事かと缶を置いて立ち上がる。声を上げる前にカーテンが開いた。
「み、み、みさ、ミサトさん! あ、あ、あれは!?」
「ちょっと落ち着いてくれ、一体どうしたんだ?」
あわてふためいているレイの横を、例の生物が歩いていく。それを見て
ミサトは、安心したように腰を下ろした。
「あー、悪い悪い。紹介するのを忘れてた。もう一人の同居人、温泉ペンギンという
種類の動物で、名前はペンペンだ。性別はメス」
騒ぎの張本人、ペンペンは彼女の住居、小さい冷蔵庫のドアを開け中へ入った。
「そ、そうなんですか…」
「ああ。…ところでレイちゃん、そのカッコはお兄さんには目の毒なんだが…」
「え? あ、あは、あははは…」
前をタオルで隠しただけだったレイは、誤魔化し笑いをしながらカーテンを閉めた。
ミサトは缶を手に取り、一気に飲み干してからポツリとこぼした。
「…ちょっとはしゃぎ過ぎたかな…まぁ、いいさ。あんなことがあったあとじゃな」
「お風呂は命の洗濯、か」
湯船につかりながら、レイはぼんやりとつぶやいた。
「葛城ミサトさん、悪い人じゃないんだ。ズボラだけど……でも、お風呂って
イヤなこと思い出すほうが多い」
レイの脳裏に浮かぶのは、第3新東京市に来てからのこと。ゲンドウ、そして
「綾波、シンジ君…」
水色の髪と赤い瞳を持った少年のことだった。
41:7
04/02/19 23:32 yRZL9DSN
「―ここにいらっしゃいましたか。シンジ君はどうでしたか?」
同時刻、ネルフ内らしき場所。しかしその場所は一面荒れ果てており、割れたガラス
が散乱していた。赤木リツ博士は目的の人物を見つけ、声をかける。
「午後、病院に行かれたのでしょう?」
「…ええ、あと20日もすれば動けるそうです。それまでには、凍結中の零号機の
再起動を取り付ける予定です」
前を向いたまま、リツの問いに答えたのはゲンドウだった。
「つらいでしょうね。あの子たち」
リツも割れたガラス越しに見える光景を見ながら、言った。眼下には赤い透明感のある
液体のようなもので下半身を固められたエヴァが見えた。
「エヴァを操れる人間は他にはいません。生きている限り、そうしてもらいます」
「本人の意思を踏みにじっても、ですか」
リツの問いかけにゲンドウは無言を通した。
お風呂から上がったレイは、SDATから流れる音楽を聴きながら自室のベッドに
寝転がっていた。部屋にはまだダンボールに入ったままの荷物が散乱している。
傍目からは何を思っているのかは窺い知れない。
「…あんな出来事のあとだぞ。素直に乗ってくれるとは思わないがな」
湯船につかりながら、ミサトは誰かに電話をかけていた。
『彼女のメンタルケアも同居人である、お前の仕事だろ』
電話から聞こえてくるその声は、どうやらリツのようだ。
「そう言われてもなぁ、どう接したらいいかわからない。怖いんだ」
『おい、もう泣き言を言うのか? お前が大見得を切ったんじゃないか』
「ちっ、いうよな。まぁ、また明日」
そう言うと、電話を切る。リラックスしながら、ミサトは考えにふける。
(俺はあのときレイちゃんを完全に使徒撃退のための道具として見ていた。
なんてことはない、俺もリツと同じだったわけだ)
「しかし、せっかく使徒を倒せたのに、うれしくねぇな…」
ぼんやりと天井を見上げながら、ミサトはひとりごちた。
42:7
04/02/19 23:33 yRZL9DSN
レイもそのころ、部屋の天井を見上げていた。
(また知らない天井か。当たり前のことだよね。私が知ってる場所なんて
この街のどこにもないんだから。…なんで、私ここにいるんだろ…)
『なぜ私がここにいるか』、そのことに思いがたどりついたとき
忘れていた記憶が戻る。テープの再生ボタンを押したかのように。
「―――!」
レイの瞳が揺れ、瞳孔が最大限に見開く。
「レイちゃん!」
ミサトが懸命に呼びかけるが、初号機の反応は無い。
「パイロットの状態は!?」
「モニターできません。生死不明!」
眼鏡をかけたショートカットの女性オペレーター、マコトが報告をする。
「ここまでか…パイロットの保護を最優先させる。エントリープラグの強制排除を」
「ダメです! 完全に制御不能!」
「なんだって!?」
レイの命を優先させようとミサトは指示を出すが、初号機が全く何も受け付けない。
と、そのとき初号機の目に淡い光が宿った。
『初号機、再起動』
「まさか…」「暴走か?」
ミサトとリツの思いが重なる。
「…勝ったわね」 冬月がつぶやく。
それからの初号機はまさに鬼のようだった。遠吠えを上げると立ち上がり使徒目掛け
大きく跳び、使徒に膝蹴りを食らわせる。体をつかんできた使徒をいなすと再び蹴りながら
後ろへ跳びこんだ。そしてそのまま獣のように使徒に走り寄る。ところが赤い
バリアーのようなものに行く手をはばまれた。
「ATフィールド! やはり使徒も持っていたか」
リツがモニターを見ながら言う。そのとき初号機は折れたはずの左腕を掲げる。
「左腕、復元!」
「信じられない…」
一瞬にして折れたはずの部位が直ったことに、一同驚きを隠せない。
43:7
04/02/19 23:34 yRZL9DSN
「しょ、初号機もATフィールドを展開! 位相空間を中和していきます」
「いや…これは中和なんてものじゃない。侵食だ」
リツがマヤの報告に意見を述べる。たしかに初号機はモニター上から見ると、まるで
使徒が展開したATフィールドを両手で左右に引きちぎろうとしているようにしか見えない。
フィールドを引き裂いた初号機は、しかし使徒から反撃の、光線の直撃を浴びた。
余波が後方まで吹きすさぶ、激しいものだったが、初号機は意にも介さず使徒の腕を
つかみ握り潰し、後方へ蹴飛ばす。そのまま駆け寄り使徒にショルダータックルを
食らわせた。ビルを巻き込んで押し流す。
そのまま初号機は、使徒の体の中央にある赤い光球を目掛け、殴り始めた。
途中、使徒の体を引きちぎり、引きちぎった部分を武器のように使い再び光球に
全力を込める。と、使徒は急に初号機に絡まり、丸いボールのような形になった。
「まさか…自爆する気か!?」
ミサトが使徒の目的に気付き、声を上げたその瞬間、使徒は初号機を巻き込んで
大爆発を起こした。モニターが見えなくなる。
モニターの視界が回復すると、そこには初号機が炎を背に歩みを続けていた。
「これが…エヴァの本当の姿か」
恐怖に押しつぶされそうな衝撃を受け、ミサトは押し殺した声を出した。
『パイロット、生命反応確認!』 『パイロットの保護を最優先!』
エントリープラグ内で、レイは茫然自失の体を晒していた。瞬きを忘れたかのように
目は見開いたままだ。ふと、物音が聞こえた気がして顔を横に向ける。
そこには、頭部が落ち剥き出しになった初号機の緑色の目があった。
「き、キャアアアアアアアアァァッッ!!」
「――」
何が起きたか鮮明に思い出し、脂汗が額ににじみ出る。レイは横向きになり
虚ろな表情をしていた。
「…レイちゃん、いいかな? 開けるよ」
そこに風呂から上がったミサトの声がかかる、レイは戸に背を向けたまま動かない。
「ひとつ、言い忘れていたが、君は人にほめられる立派なことをしたんだ。胸を張っていい。
それじゃ、おやすみ。レイちゃん、がんばれよ」 戸が閉まった。 つづく
44:女ケンスケ君の学校生活
04/02/20 17:06 qK5pk+oO
>>5さんの名前を使わせてもらいます
ついでに性別反転してるのはケンスケだけです
今日は月曜日……
時計を見ると、時間は五時……
しまった、寝過ごした!?
くそっ、今日は早めに学校へ行ってカメラ仕掛けるつもりだったのにぃっ!!
登校中
最近、トウジが学校に来ない……
ヒカリもそのことで相談してきたりした、今度トウジの写真でもあげようかな?
そういえば今日は転校生が来るんだったな……
どんな奴だろ……
つづく
ほとんど別人……
つづかないな、これ……
45:名無しが氏んでも代わりはいるもの
04/02/22 18:54 l77ODkCu
キターーーーー!
46:7
04/02/26 12:48
まったり
パチもんっぽい関西弁です。
登場人物の名前は大体>>5に準拠。
ちなみに>>5=>>7です。
1カキコあたり縦32行の横40文字ぐらいを目安にしてますが
見にくいとかあったらどうぞ。
男の「うわあぁぁぁっ!」の代わりになる女性の叫び声って無いなぁ。
47:7
04/02/26 12:49
『―いいか、レイさん。もう一度説明するぞ。通常エヴァは外部から電源を
接続して行動できるようになっている。電源プラグが外れ体内電池に
切り替わると、蓄電容量の関係でフルで一分、ゲインを利用しても五分しか
活動できない。これが今の時点での科学の限界だ。わかったかな?』
「はい」
ネルフ内、レイはスーツのようなものに着替え、エントリープラグの中にいた。
今日はどうやら訓練日のようだ。
『それじゃ、昨日の続きから行こう。インダクション・モードだ。エヴァの出現位置、
非常用電源、兵装ビル、回収スポット、すべて頭の中に入っているかな?』
「たぶん…」
『よし、では開始! レイさん、カーソルがセンターにそろったら、スイッチを押すんだ』
リツの宣言と共に、レイの視界にこの前戦った使徒の姿が映し出される。
『目標をセンターに入れて、スイッチ・オン』
そろったときを見計らって、スイッチを押す。銃弾はわずかに使徒の上を通り過ぎた。
『落ち着いて! 目標をセンターに入れて』
「スイッチ」
次に発砲された銃弾は見事に使徒に当たった。
「……しかし、良く乗ってくれる気になりましたね、レイちゃん」
マヤがモニターから目を離し、リツの方を向いて発言した。
「そうだな。人の言うことには従う。それがあの子の処世術なのかもな」
リツが答える。ミサトはその後ろで厳しい目をしながら、シミュレーション訓練を
行っている初号機を見つめていた。
「目標をセンターに入れて、スイッチ」
「目標をセンターに入れて、スイッチ」
「目標をセンターに入れて、スイッチ」
うわごとのように同じ言葉を繰り返す、レイ。その目には生気がない。
「目標を、センターに入れて、スイッチ」
第参話 鳴らない、電話
48:7
04/02/26 12:49
「……ミサトさん、朝ごはんできてますよ?」
朝、レイはミサトの部屋の戸を開け、ミサトに呼びかける。
「ぅ…ふわぁぁ…悪い…当直でさっき帰ってきたとこなんだ…今日は
夕方までに出頭すればいいから…ラップでもかけておいてくれ」
布団に潜ったまま、ミサトが返事した。
「今日、木曜、燃えるゴミの日なんですけど…」
「出しといて…くれないかな? 頼む!」
布団から手だけ出して、両手を合わせ拝むような仕草をした。
「……ふぅ、わかりました。それじゃ、学校に行ってきます」
「ありがとう…行ってらっしゃい」
拝んだ手をヒラヒラさせて、ミサトはレイを送り出した。
レイが学校へと出かけていってからしばらくして、電話の音が葛城家に鳴り響いた。
ミサトは再び手だけを布団から出し、手探りで音が鳴っている原因を探り当てる。
「もしもし…あぁ、リッちゃんか。何の用?」
寝ぼけた声で応答する。
『なんだその声は。ちゃんと起きてるのか?…彼女と上手くやってるか?」
「彼女…レイちゃんか。…そうだな…電話、そう電話だ」
『電話?』
不思議気な声が上がる。
「ああ、必須だから携帯電話を持たせたんだが、自分からかけたり、他から電話が
かかってくる気配が無くてさ。ひょっとして彼女、友達いないんじゃないかな」
「まあ、彼女は友達を作るのには不向きな性格かもしれないな」
リツは自分の研究室でコーヒーを飲みながら、ミサトに電話をかけていた。
灰皿にはタバコの山ができており、机の上には猫の置物がある。
「……ヤマアラシのジレンマを知っているか?」
『ヤマアラシ? いいや』
「ヤマアラシの場合、相手に自分のぬくもりを伝えたいと思っても、身を寄せれば
寄せるほど体中の棘でお互いの身を傷つけてしまう。人間にも同じことが言えるだろ。
今のレイさんは心のどこかで痛みに脅えて、臆病になっているんだろうな」
『……大人になるってことは、傷つかずに済む距離に気付くことさ』 ミサトが答えた。
49:7
04/02/26 12:50
ゴミをゴミ捨て場に置き、学校へと歩いていくレイ。その視線はうつむき加減であり
登校していくレイに声をかける生徒は、誰もいないようだった。
第壱中学校。レイが転入した中学校だ。レイは2-Aの教室へ入る。生徒はいるが
皆それぞれ友達との会話や私事に夢中で、誰もレイに気付かない。レイはちらっと
窓際後方に眼をやった。そこには、まだ肩から右腕を吊り、右眼に包帯を巻き
窓から外を眺めているシンジの姿があった。外を眺めたまま、微動だにしない。
レイは首を振ると自分の席へと歩み寄り、座った。
『ギューン! ドドドドドド、ドカーン!』
レイの後方にビデオカメラを左手にかまえて、右手に持っている戦闘機のプラモデルを
映している、メガネをかけたショートカットの女子生徒がいた。どうやら彼女の趣味の
ようだ。そのときファインダー越しに別の人の姿が映る。
「ん? あ、委員長。なに?」
ビデオから眼を離すと、目の前に男子生徒が立っていた。
「相田さん。昨日渡したプリント、鈴原に渡しておいてくれたかな?」
そばかすが目立つ、委員長と呼ばれた男子生徒が質問する。
「あ、え、ええ。えーと、家に行ったんだけどなんか留守みたいで…」
傍目から見ても、動揺した声だとわかる。相田と呼ばれた女子はカメラを
持っていない方の手で、机の中身をコッソリ奥に押しやった。
「相田さんも、鈴原のことが心配じゃないのか? 親友だろ? もう二週間も
学校に来てないんだけど」
委員長が表情から事実を読み取り、言葉を返す。
「どうしたんでしょうね。やっぱり、この前の騒ぎでケガでもしたのかな」
「例のロボット事件? まさか! ニュースじゃ怪我人はいないって…」
委員長が心底驚いた表情をする。
「そんなはずないじゃない。委員長も鷹巣山の爆心地を見たでしょ? 入間や小松だけ
じゃなくて三沢や九州からも部隊がでてたみたいだし、10人や20人じゃきかないはずよ。
死人だって―」
話をしていると、教室の扉が開く。そこには、ジャージを着込んだ女子生徒がいた。
「ユウキ…」
「鈴原…」
50:7
04/02/26 12:50
「……なんや、えらい人減ったんやね。サトミ、イインチョもおはようさん」
「お、おはよう、鈴原」
「おはよう、ユウキ。疎開よ。そ、か、い。みんな転校していったわ。街の中で
派手に戦闘してたみたいだし、こんな場所にいたら、巻き添えを食うって
慌てるのも無理は無いわね」
ジャージの女子、鈴原ユウキは教室を見渡すと、彼女のことを話していた二人の
方へ寄ってきた。相田少女の名前はサトミというらしい。
「まぁ、生のドンパチ見て楽しめるんは、サトミ、アンタぐらいなもんやね」
「ふふっ、ほめ言葉として受け取っておくわ」
軽い感じで会話を続ける二人。
「……ところで二週間も何してたの? 見たところケガはしてないみたいだけど」
ビデオカメラを向けながら、サトミがユウキに聞く。
「ん、ウチじゃあらへん。サトミも知ってるとは思うけど弟がおるやん? それがこの
前の騒ぎのときにガレキの下敷きになってケガしよってな。命は助かったんやけど
入院してるんや。ウチんちはおとんもおじいも研究所勤めで、ウチが見舞いに
いけへんかったら弟はひとりぼっちやから」
「そうだったの…」
サトミはカメラを下ろし、真面目な表情でユウキの話を聞いていた。
「しかし、あのロボットのパイロットは、ほんまヘボやな。めっちゃ腹立つ!
味方が暴れてどないするんよ、いったい」
ユウキは会話途中に怒りをあらわにして、しゃべりたてる。
「それがさ、パイロットに関して噂があるのよ。ほら、あの転校生」
「転校生?」
サトミは前にいるレイを指す。
「そ、彼女、ユウキが休んでる間に転入してきたんだけど、例の騒動の後よ。
怪しいと思わない?」
ユウキは、言われてじっとレイを見つめる。レイはSDATをつけて黙々音楽を
聴いているようだ。
そこへ年老いた女の先生が入ってきた。
「起立!」
委員長、洞木ヒカルが号令をかける。
51:7
04/02/26 12:51
「―これが世にいう、セカンドインパクトです―」
黒板には、数式が書かれているにもかかわらず、先生がしている話は
セカンドインパクトに関するものだった。生徒たちは聞き飽きたといった表情で
勝手なことをしているのもいた。レイはぼーっと先生の話を聞いている。
「?」
レイの机に備え付けられている端末が電子音を立てる。メールを着信したらしい。
レイが中身を確認すると、
『碇さんってあのロボットのパイロットだってホント? Y/N』
と書かれていた。周囲を見渡すと、後ろのほうで手を振っている男子生徒
二人がいる。うち一人が何かを端末に打ち込む仕草を見せた。
『なあ、そうなんだろ? Y/N』 再びメールが来る。
レイはしばらくの間考えていたが『YES』とタイプして返信した。
「ホント!?」「すげー!」「マジ?」
クラス全員の端末へ表示されたらしく、瞬時にレイを取り囲む人垣ができた。
「おい、ちょっと、みんな! 授業中だぞ!」
ヒカルが一人声を張り上げているが、誰も聞いていない。
「―そのころ私は根府川に住んでましてね―」
先生は窓から空を見上げながら、自分の世界へ入り込んでいた。
「どうやってパイロットになったんだ?」「操縦席ってどんなの?」
「え、えーと…そういうのは機密で…」
とまどいながらレイが答えると、ブーイングが起きた。
「じゃ、あのロボットはなんていう名前なんだ?」「必殺技、ある?」
「ネルフの人はエヴァとか初号機って呼んでたような…必殺技は、なんとかナイフ
っていう…えーと…振動が…超音波みたいな」
レイの説明は要領を得ないが、みんな盛り上がっている。サトミは後方でレイが
話したことを逐次端末へ書き込んでいた。ユウキは厳しい顔でレイをにらんでいる。
シンジは相変わらず無関心なようだ。と、鐘が鳴る。
「……あら、もうこんな時間ですか。それでは授業を終わります」
「起立! 礼!……ちょっとみんな最後ぐらいちゃんとしろよ!」
終わりを告げる先生にヒカルが号令をかけるが、やはり誰も聞いていなかった。
52:7
04/02/26 12:52
学校の裏庭らしき場所。セミの音が鳴り続いている。授業中に先生が話した内容に
よれば、20世紀の最後に起きたセカンドインパクトで海面の水位が上昇、地軸が曲がり
現在の日本は常夏の国になったらしい。
その澄んだ青空の下、突然乾いた音が響き渡った。
「――っつ…」
レイが左頬を手で押さえている。頬を張られたようだ。
「……かんにんな、転校生。ウチはアンタをはたかなあかん。はたかな気が済まんのや」
平手打ちをした張本人、ユウキは言葉を吐くと、去ろうとする。
「ごめんね。あの子、例の騒動で弟さんがケガしちゃって…そういうことだから」
付き添いで来たらしい、サトミはレイになぐさめの言葉を言うとユウキを追いかける。
「……私だって…私だって、乗りたくて乗ってるわけじゃないのに…」
レイが言葉をこぼす。それを拾ったユウキが振り返り、サトミを押しのけレイの肩をつかみ
にらんだ。レイは眼をそらし、視線を合わそうとしない。結果、再び乾いた音がした。
「……非常召集、先、行くから」
二人が去り、一人裏庭で叩かれた頬を押さえながら呆然とたたずんでいたレイに声が
かかった。顔を声がしたほうに向けると、シンジがいた。シンジはそれだけ伝えると
振り返り走り去る。
レイは立ちすくんだまま、去っていくシンジを見ていた。
『ただいま東京地方を中心とした関東、中部の全域に特別非常事態宣言が発令
されました。すみやかに指定のシェルターに非難してください。繰り返します―』
サイレンの音と共に、アナウンスが市内に鳴り響く。
そのころ海上より第三新東京市を目指し、飛行を続けている物体があった。全身は
赤黒く、表面は昆虫を思わせるような光沢のある殻と魚に似た目、裏にも胸部に
赤い球体と、節足動物の足に似てるものがついていた。
53:7
04/02/26 12:53
Episode:3 A transfer
「目標観測、領海内に進入しました」
ロングヘアーの女性オペレーター、青葉ハルカが報告を入れる。
「総員、第一種戦闘配置!」
ゲンドウがいないのか、冬月が指揮をとっている。指示を受け第三新東京市中央部の
ビル群が地下に収容されていき、代わりに兵装ビルが地上へと姿を現す。
「非戦闘員及び民間人は?」
「すでに退避完了との報告を受けています」
ミサトの問いかけにハルカが答えた。
『小・中学生は各クラス、住民は各ブロックごとに避難してください』
「……はぁ、また報道管制、か」
「どしたん? また見えへんの?」
シェルター内、アナウンスが聞こえる中、サトミとユウキがシートの上に座っていた。
「はい、見てみて。あ~あ、一大ビッグイベントなのになぁ…」
「サトミだけや、そんなん思ってんの。物好きなやっちゃなぁ」
絵と文字しか映っていない携帯テレビを見てから、あきれたようにユウキは言った。
「碇司令の居ぬ間に、第四の使徒襲来。意外と早かったな」
「前は15年のブランク。今回はたったの3週間ですからね」
モニターをにらみながら発言したミサトに、オペレーターのマコトが合わせる。
「こっちの都合はおかまいなしか。ワガママな女みたいだな、まるで」
ミサトが軽いジョークを入れた。
悠然と第三新東京市を目指し、飛行している使徒。もちろん国連軍もただ黙っている
だけではなく、銃撃、砲撃を繰り返しているがまるで効果が無いようだった。
「……税金のムダ使いね」
その様子を見た冬月が、苦言を呈する。
「委員会からエヴァンゲリオンの出動要請が出ています!」
「ったく、うるさいなぁ…言われなくてもだしますよ」
ミサトがぼやいた。
54:7
04/02/26 12:55
『初号機、エントリー開始』
(……お母さんもいないのに、どうしてまた私は乗ってるんだろ…人に叩かれてまで)
先程の情景を思い出しながら、レイは心のうちでつぶやいた。
「ねぇ、ユウキ、ちょっと話があるんだけど…」
「ん?」
再びシェルター内、サトミが周りを気にしながら口を開いた。ユウキは顔を向けて
続きをうながす。
「ちょっとここじゃ…他の人に聞こえない場所に行きましょ」
「なんや?…まぁ、ええよ。おーい、イインチョ!」
ユウキは立ち上がって、ヒカルに声をかける。
「なに? 鈴原」
「ウチら、ちょっと席はずすから」
「なんで?」
「答えなあかん?」
「……ご、ゴメン。行ってらっしゃい」
勘違いで勝手に察してくれたヒカルが赤面しながら言った。
「―で、話ってなんやの?」
女子トイレの洗面所で手を洗いながら、ユウキがたずねる。
「上に行ってみない?」
「サトミ…本気でそれ言うてんの? 死ぬかもしれへんよ」
「そんなの、ここに居ても一緒よ。私は見逃したくないの! お願い。
ハッチを開けるのを手伝ってくれない?」
「そんなん言われても…何のためのネルフなんよ」
とまどいながら、ユウキが言葉を返す。
「そう、ネルフよ。でも、ネルフの決戦兵器って誰が動かしてるの? あの転校生
でしょ。彼女がユウキに叩かれたせいで、ロボットに乗らない、なんて言い出したら
私たち、死ぬわよ。ユウキには、彼女の戦いを見守る義務があるんじゃない?」
「……ふぅ、せやね。つきおうたるよ。しかしサトミは自分の欲にほんま素直やなぁ」
「ふふっ」
一気にまくしたてたサトミに、ユウキが観念して応じた。
55:7
04/02/26 12:57
「初号機、発進準備完了」
『いいか? 練習でやった通り、相手のフィールドを中和してパレットの一斉射撃だ』
「はい」
「よし、初号機、発進!」
マヤの報告とレイの返事を受けて、ミサトが指示を出した。
変わって、地上。外へ出たユウキとサトミが境内の階段を駆け上がっている。
「はぁ、はぁ…ふぅ、間に合ったかしら?」
上りきった二人は、見晴らしのいいところから、街を見下ろす。そこに使徒がいた。
「すごい! 苦労した甲斐があったわ…」
「転校生のロボットはどこなん?」
「もうじき出てくるはずよ」
ビデオカメラを回し始めるサトミ。使徒は飛行を止め、立ち上がった。
「目標をセンターに入れてスイッチ。目標をセンターに入れてスイッチ…」
『作戦通り、いいかい? レイちゃん』
「はい」
リツに言われたことを反芻しつつミサトに返事するレイ、そしてシャッターが下りる。
「っ!」
素早く身を翻し、使徒へ向き合う形になったあと、構えた銃、パレットライフルから
勢い良く銃弾を発射する。銃弾は次々に使徒へと着弾していった。
「馬鹿ッ! 爆煙で敵が見えないぞ!」
様子を見ていたミサトが叫ぶ。銃弾が煙を生み使徒の姿を隠してしまっていた。
「はあっ、はあっ、はあっ……―キャッ!?」
銃を撃ちつくして、息をついていたレイは前方を見据えていた。すると突然二本の
赤い鞭のような物体が煙を裂いて躍り出る。鞭は初号機が手に持っていた
パレットライフルとビルを切り裂いた。初号機は地面に後ろから倒れこんだ。
「慌てないで、レイちゃん! 代わりのライフルを出すから受け取って!」
懸命にミサトが励ますが、レイはすっかり脅えきっていて操縦桿を持つ手は震えていた。
「…いや…こ…来ないで! いやぁぁぁっっ!」
使徒から少しでも離れるように、後ろ向きに駆け出す。
「レイちゃん!」
56:7
04/02/26 12:57
「……なんや、転校生逃げとるやん」
戦闘を見ていたユウキが言う。
「脅えてるみたいね…やっぱユウキのビンタが効いたんじゃないの?」
「かっ、関係あらへん! そんなこと」
茶々を入れるサトミに、動揺しつつ強がりを言う。
使徒は鞭でビルを次々に切り裂きながら、初号機を追いかけていた。
そしてついに、一振りが初号機の電源ケーブルを裂く。
「アンビリカブルケーブル、断線!」
「エヴァ、内蔵電源に切り替わりました」
「活動限界まで、あと4分53秒!」
「ちっ!」
オペレーターたちが報告を入れる。ミサトが思わず舌打ちをする。追い討ち
をかけるように、使徒は鞭で初号機の足を捕らえ、高々と放り投げた。
「―っきゃああああああぁぁ!」
「…こっちに…向かって…来とらへん?」
放り投げられた初号機を呆然と見上げ、ユウキがつぶやく。
「う、うん…というか…ひ、」
『ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぁぁぁっ!!』
二人のいる場所へ、飛ばされた初号機が落ちてきた。
「初号機の状態は?」
「大丈夫、いけます!」
ミサトが素早く状況を尋ね、マコトが答える。
「…ぅ…うーん……えっ!?」
衝撃でのけぞっていたが、気を失うまではいかず体を起こすレイ。しかし、エヴァを
動かそうとしたそのとき、左手の間に誰かがいるのに気付く。
「レイちゃんのクラスメート?」
「なんでこんなところに!」
瞬時にピックアップされたIDを見て、リツとミサトが声を上げる。
57:7
04/02/26 12:58
使徒はトラブルが起きてもおかまいなしに、初号機を追いかけて飛んできていた。
初号機を捕らえられる位置まで飛行すると、鞭を再び振りかぶって放つ。
レイはとっさの判断で、二本の鞭を両手でつかんだ。
「くうっ!」
初号機の手のひらが融解していく。
「な、なんで戦わへんのや?」
「私たちがここにいるから…自由に動けないのよ!」
ユウキの疑問に、サトミが叫ぶ。
「初号機活動限界まで、あと3分28秒」
「レイちゃん、その二人を操縦席へ! いったん退却して出直そう」
刻々と迫るタイムリミットに、ミサトが決断を下す。
「おい! 許可のない民間人をエントリープラグに乗せられると思っているのか!?」
「俺が、許可する」
「越権行為だぞ! 葛城一尉!」
リツがミサトを強く非難する。
「活動限界まで、あと3分」
「エヴァは現行命令でホールド。その間にエントリープラグを排出、急げ!」
『そこの二人、乗るんだ、早く!」
ミサトはリツを無視し、命令を下した。そしてスピーカー越しに二人に呼びかける。
「う、み、水? お、溺れてまう!」
「あぁぁ、カメラ、カメラが~」
エントリープラグの中へと入り込んだサトミとユウキがそれぞれ勝手なことを言う。
「神経系統に異常発生!」
「異物を二つもプラグに挿入したからだ。神経パルスにノイズが混じっているぞ!」
マヤが異常が起きたことを報告すると、リツが原因を簡潔に述べる。そしてその間も
ずっと使徒の鞭を握り締めていた初号機は、反動を生かし使徒を押し戻した。
「よし! レイちゃん、回収ルートは34番だ。山の東側に後退してくれ!」
間髪いれず、ミサトから指示が飛んだ。
58:7
04/02/26 12:59
「……ちゃ、ダメ…」
「どしたん? 逃げろ言うとるで、転校生」
うつむいて、堪えるような仕草を見せているレイに、ユウキが問いかける。
「……げちゃ、ダメ……逃げちゃ、ダメ!」
レイが顔を上げると、そこには何かを決心したような表情があった。
「初号機、プログレッシブ・ナイフ、装備!」
マコトが報告を入れる。
「レイちゃん? 命令を聞くんだ、レイちゃん!」
「活動限界まで、あと1分!」
「このぉぉぉぉぉぉぉぉっっっ!」
初号機はミサトの指示に反して、山すそを一気に滑り下りナイフを手に使徒へと
突進する。使徒も黙ってはおらず、鞭をふるうと初号機の腹部を貫いた。
「ぅうっ!…くぅぅぅううううぅぅぅ!」
一瞬痛みで息が止まり涙がにじむが、貫かれたまま使徒の赤い球体を
目掛けナイフを突き刺す。接触面から火花が飛び散る。
「うぅぅぅぅぅっ…このっ!…このぉぉぉっ!」
「活動限界まで、あと30秒…28、27、26……」
「レイちゃん…」
マヤの時間を告げる声とレイの叫びが響く中、ミサトはポツリとこぼした。
「くううううぅぅぅぅぅぅぅぅっっっ!!」
「…14、13、12、11、10、9、8、7、6……」
場を占めるのは、カウントダウンの声とレイの叫びだけだった。
「うぅぅぁあああぁぁっっ!…このぉぉぉぉっっ!!」
「…5、4、3、2、1、0。 初号機、活動を停止!」
「使徒、完全に沈黙しました」
初号機の動きが止まる前に、使徒の胸部にあった赤い球体にヒビが入り
使徒が動かなくなった。辛うじて使徒を殲滅できたようだ。
「…っぅ…うぅ…ぐすっ…ひっく…」
電源が切れ、暗くなったエントリープラグ内では、レイが嗚咽を洩らしていた。
ユウキとサトミの二人に、かけられる言葉は無かった。
59:7
04/02/26 13:00
「―あれからもう、三日やね」
「うん? ああ、私たちがこっぴどく叱られてから?」
「ちゃう、転校生が学校に来いひんようになってからやん」
第壱中学校、2-A教室内。シンジは相変わらず窓から外を眺めていた。レイの
姿はない。ユウキは物憂げに言い、サトミが端末を操作しながら答えた。
「心配なんだ?」
「そ、そんなことあらへん!」
意地悪そうに聞くサトミに慌てて否定する。
「…もう、ユウキも不器用で強情なんだから。あのとき、最後に転校生にあやまって
おけばいつまでもぐずぐず悩まずに済んだのに…はい、どうぞ」
「なんや? これ」
「転校生の電話番号。気になるなら、電話してみたら?」
サトミが紙切れをユウキに渡した。促されユウキは教室を出る。外は
雨がしとしと降っていた。
ユウキは緑電話の受話器を取り、ボタンを押していく。しかし何を思ったのか
途中で押す手を止め、しばらく躊躇したあと、受話器を置いて、その場を去った。 つづく
60:名無しが氏んでも代わりはいるもの
04/02/29 22:55 SsvswOEM
キタ---!
61:名無しが氏んでも代わりはいるもの
04/03/02 22:09
もしかしたら入りこみスマソ
7氏のような同人誌でも出たらエロじゃなくとも買うのになぁ・・むしろエロじゃないほうがいいかもね。
62:名無しが氏んでも代わりはいるもの
04/03/05 01:02
age
63:名無しが氏んでも代わりはいるもの
04/03/05 01:20 kEXWZvsu
同系統(逆行系も混じっているがのFFに
REBIRTH~いまひとたびの~@J.U.Tylor
がある、いや、あった。
今は閉鎖されたので○ーカイブをうまくつかわなければ見れないが
確か
キール・ローレンツ→カーラ・ロレンツ
だったな。
鋼鉄のボーイフレンド編までやってほしい。
しかしあれだな。
アダム…雄
リリス…雌
だろ?
24話
ついにセントラルドグマに到達する渚カオル(14歳♀)
「違う!これはアダム!」
になるのか?
64:名無しが氏んでも代わりはいるもの
04/03/05 08:04
その設定だとEVAのストーリーがめちゃくちゃになるな。
最初から作り直してもらおうw
65:名無しが氏んでも代わりはいるもの
04/03/12 00:10
性別を転換すると、ネット上に多々存在するハーレムものEVAFFがド偉い事に。
男レイと男アスカと男マナと男マユミと男ミサトと男リツコと女カヲルに妊娠させられる女シンジ君・・・
(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
66:名無しが氏んでも代わりはいるもの
04/03/12 02:33
>>65
おなご二人に竿六本で丁度良いね。
67:名無しが氏んでも代わりはいるもの
04/03/12 07:54
>>65
総受けの本領発揮ですな。
しかし、女カヲルも攻めなのかw
68:7
04/03/13 00:52
少し間が空きました。
見切り発車なので、つまづいたらそのとき考えます……
どっかで性別を変えたことによる齟齬がでそうな気もするんですけどね。
とりあえず今はいけるとこまでいこうかなぁ、と。
>>59からの続き。
69:7
04/03/13 00:53
雨が降り続ける、第3新東京市。あるマンションの部屋の一室で、めざまし時計の音が
鳴り響く。間を置いて、その部屋の中央にある布団から探るように足だけが飛び出した。
しばらくして音が止む。
「……ぅん……朝か……」
ボサボサの頭をかきながら、のっそりミサトが起き上がる。洗面所で歯を磨き顔を洗う。
歯を磨きながら空いた手で横腹をボリボリと掻く仕草が、妙にオヤジ臭い。タオルで水気
を払いさっぱりしたところで、ミサトはレイの部屋の方に視線を送った。
(彼女、今日も休むつもりなのかな……)
ぼんやりとそのことを思う。足を進め、レイの部屋の前にミサトは立った。
「……おい、レイちゃん。いつまで学校を休んでいるつもりなんだ? もう五日目だぞ?
初号機はとっくに修理が済んでるんだ。パイロットの君がそんなことで、どうする」
ふすま越しに呼びかけるが、返事はない。
「レイちゃん?」
ミサトはふすまを少し引き、隙間から部屋を覗く。部屋はガランとしていて、机の上にレイ
のIDカードとミサト宛ての封筒があるだけだった。
「……家出か。無理も無いな……」
部屋をしばらく眺めたあと、ひとりごちた。
第四話 雨、逃げ出した後
70:7
04/03/13 00:54
黙々と出勤の準備を進めていた葛城家に、インターフォンの音が鳴り響く。
「レイちゃん!?」
ドアを開けるミサト。そこには二人の女生徒、ユウキとサトミがいた。
「あ、あの……えっと……」
「碇さんと同じクラスの、相田と鈴原と申します」
ミサトを前にして口ごもるユウキに、サトミが手を貸す。
「相田と鈴原……」
想像していたのと違い、拍子抜けした感じでミサトはオウム返しをした。
「は…「はい、そうです! ウチ……いえ、私が鈴原です!」
サトミが答えようとするが、ユウキの勢いにかき消される。
「ああ、もしかして先の戦闘のときにエントリープラグに入った二人?」
「そ…「そうです! その節は本当に申し訳ありませんでした!」
「じ…「実は、あの戦闘から転校せ…いや、碇さんが学校に来てらっしゃらないんで、一体
どうしたのかなと気になって、寄らしてもらったんです」
思い出し、声を返すミサトに、サトミが答えようとするが、サトミが声を出そうとするたびに
ユウキが大声で先を越す。サトミは思わず、横目でユウキをにらんだ。
「いや、もう終わったことだしいいよ。レイちゃんは今ちょっとネルフの訓練施設にいてね。
家にはいないんだ」
「はぁ、そうだったんですか」
「あ、これ机の上にたまってたプリントです。碇さんによろしくお伝えください」
事情を聞き、納得気な表情をするユウキ。サトミはミサトに紙の束を差し出した。
「ありがとう。伝えておくよ。それじゃ、またね」
笑顔で紙の束を受け取るミサト。お辞儀をする二人の前で、ドアが閉まった。
「……ユウキ、意外な展開になったわね」
しばらくして顔を上げたサトミが、つぶやいた。
「せやね……まさか転校生があんなえらくカッコのいいお兄さんと住んではるとは」
ユウキはうわの空で、生返事をした。
一方、ドアを閉めたミサト。思わずため息をつく。
「はぁ……レイちゃん、いったいどこへ行ったんだ……」
71:7
04/03/13 00:57
『―次は長尾峠、長尾峠。お出口右側に変わります。御注意下さい―』
アナウンスが流れる。座席の隅に、顔をうつむかせたままのレイがいた。どうやら電車
の中にいるようだ。SDATから流れる音楽を外部から隔絶する壁のようにして、ただうつ
むき、時が流れるままに身を任せていた。車内は混雑しており、通勤通学の時間帯なの
か、会社員や学生の姿が見受けられる。
しばらくすると会社員や学生は降車し、主婦や仕事が無いのか新聞紙を車内に持ち込
んで読んでいる男性が乗車してきた。そのまま刻々と時間は過ぎていき、乗客は次々に
入れ替わる。帰宅する学生が、会社員が乗っては降りていく。レイは微動だにせず、ただ
ひたすらSDATから流れる音楽が、延々耳へと入り込んでいくだけだった。
『―本日は第七環状線を御利用いただき、まことにありがとうございました。この電車は
当駅を持ちまして回送電車となります。お忘れ物なきよう、続いて御降車して下さい―』
幾度となく乗降車を繰り返し、ようやく終電を告げるアナウンスが、駅内に響き渡った。
ただ一人車内へ残っていたレイはそのアナウンスに顔を上げ、口を開く。
「……おりなきゃ」
行く当てもなく、繁華街をとぼとぼ歩くレイ。辺りはネオンサインが目にまぶしく、盛んに
呼び込みの声が聞こえてくる。中学生の少女が一人で歩くには少々危険な時間帯と場所
だが、本人はまるで気にかけていないようだ。歩く内にレイの目に付いたのは、終日放映
を行っている映画館の看板だった。
『先生、脱出しましょう!』
『いえ、私にはここにとどまる義務があります―』
スクリーンに、緊迫感あふれる場面が展開されている。セカンドインパクトを映画化した
作品らしい。館内にはまばらな人影しかなく、レイは最後列の席に座って虚ろな目で映像
を見ていた。と、レイの目の焦点がどこかに合わされる。前方の席に座っていたカップル
がいちゃつき始め、それが視界に入ったようだ。不快そうな表情を顔に出す。
72:7
04/03/13 00:59
結局そのあとすぐに席を立ち、ロビーの長椅子で一夜を過ごしたレイは、夜が明けると
すぐに映画館を去り、朝焼けの空の下、歩みを進めていた。いくらか歩いたあと、唐突に
足を止め顔を上げる。朝焼けが目に付き、辺りを見回すと周辺全体がレイを覆いつくそう
とざわめき、迫ってくる錯覚にとらわれる。レイは耳を塞いで、その場を、走り去った。
再び、葛城家。昨日のだらしのなさは微塵も無く、布団から顔を出して天井を見つめて
いるミサト。しばらく何かを真剣な顔つきで考えたあと、身を起こす。
真っ先に向かった場所はレイの部屋の前だった。躊躇することなく、ふすまを引く。当然
ながら、部屋には誰の姿も無かった。
そのころレイは、郊外でバスから降りていた。朝焼けであったにもかかわらず、青空が広
がっている。そのままバス停から山道を進んでいき、ひまわりが当たり一面に咲き誇こる
野原を抜け、少し霧が出始めても気にせず、切り立った崖のある場所で足を止めた。
崖から見下ろすと、第3新東京市が一望できる。レイは中学生とは思えないような遠い
目でその景色を眺めていた。
「―14歳だしなぁ。人類の存亡を背負わせるのは、やっぱ酷なんだろうな」
ネルフの一室で、ミサトとリツが向かい合っている。ミサトは壁を背にして、佇んでいた。
リツは椅子に座りモニターを見ている。となりの部屋では、シンジが検査用ベッドに仰向け
に乗り検査を受けている。
「でも、私たちはエヴァの操縦を14歳の子供たちに委ねざるを得ないんだ」
「わかってるさ」
端末を操作して検査を続けながらのリツの返事に、ミサトは苦々しい顔で応じた。
「それで? レイさんから連絡は? ないのか?」
「……ない。彼女、もう戻らないかもしれない」
「どうするんだ?」
「さぁ……戻らないなら、そのほうが彼女のためかもな」
「なぜ?」
ミサトの返事に、初めて視線をモニターから外し、ミサトに横目を送る。
「こないだの戦闘のあとにさ―」
リツの問いかけに、ミサトは先日の出来事を話し出す。
73:7
04/03/13 01:01
『―どうして、命令を守って後退しなかったんだ?」
「……ごめんなさい」
先の使徒戦後、まだパイロットスーツ姿で座っているレイに非難めいた口調で詰問して
いるミサトの姿があった。無表情に謝るレイ。
「作戦責任者は俺だ。命令は守ってくれないと困るんだ、わかるよな?」
「はい」
「君には、俺の命令に従う義務がある」
「はい」
「今後こういうことがないように。いいかい?」
「はい」
「……本当にわかってるのかい?」
「はい」
「何でもはいはい答えればいいってもんじゃないぞ!」
レイの無気力な態度に、思わず声を荒げる。
「わかってますよ。勝ったからもういいじゃないですか」
それでも、レイは態度を変えようとしない。
「そうして表面で他人に合わせていれば楽かもしれないが、そんな気持ちでエヴァに乗っ
てたら、死ぬぞ!」
「いいんです、それでも」
「いい覚悟だ、と言いたいところだが、ほめられたものじゃないぞ、碇レイさん」
あえて他人行儀な呼び方をしたが反応は無く、なげやりな口調でレイが締めた。
「ほめるも何も、私しか乗れないじゃないですか。乗りますよ―』
「……なるほどな」
一部始終を聞いて、リツが口を開く。
「彼女にとってエヴァに乗ることが苦痛でしかないのであれば、乗らないほうがいい。絶対
いつか死ぬからな」
重い表情でミサトが言う。
「しかし、パイロットは必要だぞ」
冷静にリツが指摘をした。
74:7
04/03/13 01:02
『ダダダダダダ!』
すすきが目立つ、野原。人影が夕日を背に声を張り上げながら、駆けていた。
『ドワーン! うっ!』
人影はうめき声をあげると、その場に倒れこむ。
「し、小隊長殿!?」
「相田……先に行け」
傷を負ったらしく、小隊長殿と呼ばれた影は苦しそうに声を絞り出す。
「そ、そんな! 私には、小隊長殿を置いて先に行くことはできません!」
「いいから、行くんだ!」
とまどう隊員を一喝する。
「しかし……」
「自分の事ぐらいはわかる。助かるような傷じゃない」
「わたしは……私はあなたのことが……」
「……幸せになれよ」
「っ! 小隊長殿……」
涙ぐみながら、後ろを振り返らずそのまま駆け出す。しかし数歩進んだ所で、足を止めた。
顔を上げる。目には大きな夕日が映った。その目には、涙は流れていない。それも当然
で、今までの会話は全てサトミの一人芝居だった。
カラスの鳴く声が聞こえる。サトミはむなしさを感じ、帰ろうと振り向く。
「あれ?……転校生?……お~い、碇さ~ん」
サトミの視界に山道を歩いているレイの姿が入った。呼ばれて、レイが顔を上げる。
75:7
04/03/13 01:03
Episode:4 Hedgehog's Dilemma
「ほんとうに、驚いた。振り返ったら、碇さんがいたんですもの」
サトミが口を開く。すでに日は落ち、辺りには暗闇が広がっている。二人はサトミが持ち
込んだテントの前で、たき火を囲っていた。
「ユウキさ、反省してた。弟に、説教されたんですって。『僕たちを守ってくれたのは、あの
ロボットなんだよ』ってね。小学校低学年に説教されるなんて、恥ずかしいわね」
レイは体育座りの姿勢のまま、黙ってサトミの話を聞いていた。うなだれたまま、顔を上
げようとしない。じっとたき火をみつめたままだ。
「……夜は良いわね、あのうるさいセミが鳴かなくて。小さいころは静かで良かったけど
年々増えちゃって」
反応が無いので、サトミは話題を変える。
「生態系が少しづつ戻ってるって、ミサトさんが言ってた」
レイがようやく口を開き、相づちを打つ。
「ミサトさん、か……あ~あ、うらやましいな。私もあんなカッコいいお兄さんと一緒に住ん
で、思う存分エヴァンゲリオンを操縦してみたいな」
「やめておいたほうがいいよ……その、お父さんが心配するでしょうし」
「それなら、大丈夫。私、そういうのいないから。……碇さんと、一緒よ」
思いがけない言葉に、レイは声を失う。
「……ごはん、食べるでしょ?」
「え、ええ」
少し気まずくなった空気を払おうと、サトミが声をかけた。たき火の上にかけていた飯盒
が、勢い良く泡を吹いていた。
「相田さんは、いつもこんなことを?」
テントの中で、レイが質問をする。
「ん~、まあ暇なときはね」
「ゲリラ戦になったときの訓練とか?」
「まさかぁ。こんなオモチャじゃ本物の戦闘の役には立たないわ。ただの趣味」
軽い口調でサトミが答える中、夜は更けていった。
76:7
04/03/13 01:04
次の日。朝霧が辺りを覆う中、サトミは何か物音を聞きつけた気がして、目を覚ました。
テントの入り口を開け、顔を出す。するとどこから来たのか、テントを囲うようにして、数人
の黒服の女性がそこにはいた。レイが続いて、テントから顔を出す。
「―碇、レイさんですね?」
レイを目にした黒服が、口を開く。
「……はい」
「ネルフ保安諜報部のものです。保安条例第8項により、あなたをネルフ本部へと連行し
ます。いいわね」
「はい……」
サトミは、ただ連行されていくレイを見送ることしかできなかった。
「―サトミ。それでアンタはなんもせずに、転校生が連れ去られるのをただ黙って見てた
だけっていうん!?」
「そ」
2-A教室内。今朝の出来事をサトミはユウキに話したらしい。ユウキは顔を真っ赤にして
怒鳴り散らかすが、サトミは気の抜けた返事しかしない。
「アンタ、それでも女かいな! もうちょい根性すえて相手ひっぱたくとかしたらどうなん?
相手が男やったら、思いっきり股ぐら蹴り上げるとか、いくらでもやりようはあるやない!」
「(うっわー、痛そ……)」
「(女なのに、はしたないヤツだなあ、鈴原は……)」
大声で力説するユウキに、教室内から男子たちがこそこそ小さな声で会話するのが聞
こえてくる。ユウキの耳には届いていないようだ。
「……あのね。みんな女性だったし、ネルフ保安諜報部、ようするにプロの人間なのよ?
かなうわけないじゃない。男とか女とか、関係ないの。わかる? 勝てないとわかってる
ケンカを挑むのは、バカだけよ」
少し顔を赤くしつつ、サトミが答えた。
77:7
04/03/13 01:05
場所は変わって、ネルフ本部。レイが薄暗い部屋に一人座り込んでいる。相変わらずの
無表情だ。そこへ光が差し込む。扉が開き、ミサトが部屋へ入ってきたようだ。
「よう、しばらくぶり。この二日間外へ出て、気分は晴れた?」
「……いえ、別に」
「そうか。エヴァの準備できてるんだが、乗るかい?」
「……叱らないんですね、家出のこと。そうですよね、ミサトさんにとって私は他人なんで
すから。……もし、私が乗らないって言ったら、初号機には誰が乗るんですか?」
「シンジ君が乗ることになるだろうな」
「彼に全部押し付けるわけにはいかないじゃないですか。可哀想ですよ。乗ります」
「乗りたく、ないのかい?」
「それはそうですよ。第一、私には向いてません。でも、シンジ君やミサトさんやリツさんや
お母さ―」
「いいかげんにしろ! 他人のことは、関係ないだろ!? レイちゃん、君が嫌ならここから
出て行ったほうがいい。前のところに、帰りなさい。……君みたいな気の持ちようのままで
エヴァに乗られるのは、こっちとしても迷惑なんだよ」
一気にまくし立てて、ミサトは扉を閉めた。呆然と目を見開く、レイ。
「―サードチルドレンは、明日第3新東京市を離れます」
「そう。それじゃ、初号機のデータはシンジに書き換えを」
ベルトコンベアの上。リツとゲンドウが会話を交わしている。すぐ後ろには、いまだに
包帯で右腕を吊り、顔を覆ったシンジがいる。
「……しかし……」
リツが口ごもる。
「零号機の再起動実験の結果のいかんによらず、初号機での実験に移ります。……
マルドゥック機関の報告によると、フォースチルドレンはまだ見つかっていません」
「つまり、パイロットの補充は利かないということですか」
ゲンドウの口から、聞きなれないことばが出る。リツには判るらしく、返事をした。
レイのIDカードがプレスにかけられ、登録を抹消された。
「……あの、ミサトさんはどこに? 最後にミサトさんにひとことお別れの言葉を」
「あなたはすでにネルフの人間ではない。従って、どのようなことも教えられません」
問いかけに、冷たい言葉が返ってくる。レイは、顔をうなだれた。
78:7
04/03/13 01:05
保安諜報部が運転する車によって、新箱根湯本駅へ移動してきた。車から出て、黒服
に駅に入ることをうながされる。顔を下に向けたままの、レイ。
「碇さん!」
「お~い」
そこに声がかかった。顔を上げ、呼ばれた方を向く。そこにはユウキとサトミがいた。
「これ、忘れもん、ほい」
ユウキはそう言うと、ボストンバッグを放り投げる。レイは慌てて受け取った。
「あの、ちょっといいですか?」
レイは黒服のほうを振り返り、たずねた。黒服は時計をチラッと見たあと、黙って首を縦
に振る。それを見て、レイは二人のほうへ歩み寄った。
「あ、ありがとう」
「……ほら、何か言うことがあるんでしょ?」
レイが声をかけるが、ユウキは腕を組んだまま返事をしない。それを見かねて、サトミが
ユウキの背中を押す。たたらを踏んで、ユウキが前に出る。
「……碇さん、ウチをはたいたって!」
「え?」
きょとんとする。
「こないだは、事情も知りもせんと二発もはたいたりして、ほんまウチが悪かった。こうでも
せえへんと、ウチの気が済まへんのや。さ、早く! 時間、あんまないんやろ?」
「で、でも……」
レイは戸惑い、救いを求めるように後ろに居るサトミに視線を送る。
「いいの、思い切ってやっちゃって。ユウキはこういう性格なのよ」
「……わかったわ」
「よし、きばってき!」
サトミに言われて、それでも数拍黙り込んでいたが、意を決したようにボストンバッグを
地面に置く。そして、手を振りかぶる。
「まった!……手加減なしやで」
振り下ろす寸前で、ユウキから待ったがかかる。真剣な顔で言われ、レイも真面目な顔
でうなずく。再び振りかぶり、手をしならせて振り下ろした。乾いた音が響き渡る。
「っ……ありがとさん」
痛くないはずは無いのだが、気丈にもユウキは笑顔を見せた。場が和む。
79:7
04/03/13 01:07
「どうして、ここが?」
「勘よ。私たち、たくさんの同級生をここで見送ってきたの。碇さん、様子がおかしかったか
ら、ここに来てると思って」
疑問符を浮かべているレイに、サトミが説明をする。
「碇さんが……」
そしてユウキが口を開く。
「碇さんがおらんようになったら、いずれウチたちもここから出て行かなアカンようになるやろ。
だけど、ウチたちには碇さんを責めることはでけへんし、決してせえへん。ウチらは碇さん
が戦ってるところを生で見て、碇さんがどんな恐ろしい思いをしてたか知ってしまったんや。
もしグダグダ文句を言うヤツがいたら、ウチがパチキかましといたる! だから、安心しとき」
ユウキの言葉に、レイは衝撃を受ける。手が震え、瞳が揺れる。
「そない、辛気臭い顔せんで。元気でね」
「がんばってね」
「あ、あの―」
続いて二人から送られた言葉に、意を決して返事をしようとしたが、そのときレイの肩に
手が置かれた。
「―時間です」
黒服だった。肩を落とし、言葉を飲み込む。
黒服に連れられて駅へと続く階段を上っていくレイを、ユウキとサトミは下から見送って
いた。そしてレイの姿が二人の視界から消えていく……と、レイは黒服を振りほどこうともがき
だし、二人のほうに顔を向ける。
「―はたかれなきゃいけないのは、私よ! わたしは……私は、卑怯で……臆病で
……ずるくて……弱虫で……」
「これ以上手間をかけさせないで。いくわよ」
最後は涙声になりながら思いつくまま心から湧き上がる言葉を吐くレイを、黒服たちは
ひきずるようにして連れて行く。下で見ていた二人は、ただ呆然としていた。
80:7
04/03/13 01:08
「行っちゃったな。これでよかったのか?」
ネルフ内、初号機のケージの前をミサトとリツが歩いていた。
「……ヤマアラシのジレンマ、か」
リツの問いかけに答えるそぶりも無く、ミサトはぽつりとつぶやいた。歩みを止める。
「身を寄せるほど相手を傷つける。あの子、こういう形でしか気持ちを伝えられないんだな」
先日、リツが口にした言葉を反芻する。
『―まもなく、二番線に4時20分発厚木行の政府専用特急リニアがまいります。危険で
すので、黄色い線の内側までおさがり下さい。なお、一般のご乗車は堅く禁じられていま
す。御留意願います―』
アナウンスがあってしばらくして、リニアが駅へと到着した。頭をうなだれたままのレイの
前でドアが開く。レイは動かない。
『がんばれよ』
そのときレイの脳裏に、ミサトの声がこだました。はっ、と目を見開く。
一方、ベンチに座って見送っているユウキとサトミ。リニアに隠れてレイの姿が見えなく
なる。そこへエンジン音を響かせながら、車がやってきた。急ブレーキで駅前に止める。
「あれ? ユウキ!」
「ん、どしたん?……あら、あれは碇さんと一緒に住んでたカッコいいお兄さんやない」
車から出てきたのは、ミサトだった。ミサトはリニアを見上げるが、すでにリニアは動き始
めていた。
「……ちっ、間に合わなかったか」
舌打ちをすると、リニアを背に車にもたれて天を仰ぐ。リニアが駅を離れた。ミサトは気
付いてないが、遠目に駅内に人影がいるのが見える。ため息をつき、ミサトが振り向い
た。その視線が一点に釘付けになる。
人影は、レイだった。ゆっくりと顔を上げる。レイも、ミサトに気付いたようだ。そのままお
互いにしばらく見つめ合う。
「―た、ただいま」
少し恥ずかしそうに、レイが言った。ミサトは笑みを含んだ顔で、返事をした。
「―おかえり」 つづく
81:7
04/03/13 01:11
改行制限のほかに、文字数制限もあるのか。
82:デッパッパ ◆N2pKVDbn6s
04/03/14 09:23 E6flQhKC
キターーー!
83:デッパッパ ◆N2pKVDbn6s
04/03/21 19:22 ZCgm6kx0
上げ
84:名無しが氏んでも代わりはいるもの
04/03/21 19:59
( ゚д゚)ポカーソ
85:名無しが氏んでも代わりはいるもの
04/03/24 22:23
>>5
ゲンドウ→言動→言葉→コトハさんとかどうだ?
86:名無しが氏んでも代わりはいるもの
04/04/06 13:52 u+cuRHk7
期待あげ
87:迷ってます。
04/04/07 23:38 4tLQQoQ7
まほろさんムキムキ
あ、悪夢・・・
88:迷ってます。
04/04/07 23:39 4tLQQoQ7
まほろさんムキムキ
あ、悪夢・・・
でもちょっと面白そう
89:名無しが氏んでも代わりはいるもの
04/04/08 21:24
なんか、名前通りのキャラにしか見えない・・・
シンジはシンジだなぁ
90:名無しが氏んでも代わりはいるもの
04/04/10 00:22
まほろさんムキムキ
あ、悪夢・・・
91:名無しが氏んでも代わりはいるもの
04/04/12 10:23
勝手に続き書いてもいい?
A:書くなら早くしろ、でなければ帰れ!
B:ダメ、7君を待ってる。
92:名無しが氏んでも代わりはいるもの
04/04/12 23:57
読みたい。>91
しかし全キャラひっくり返すと流石にムリが出てくる予感。
93:91
04/04/14 06:11
書きました。最初に謝っておきます。
・時系列めちゃくちゃです。
・無駄に長いです。
・そもそも本編とずれてきてます。
・ごめんなさい7氏
94:91
04/04/14 06:11
レイの解任騒動があった間も、ネルフはきっちり仕事をしていた。
第4使徒解体作業場(仮設)。一部にはバレバレであろうと、あのような巨大物質をおおっぴら
にしておいて良いものでもない。とはいえ、急ピッチで進められた作業場建設にようやく
解析用の機材が運ばれたのは解任騒動も落ち着いた頃になってからであった。
「敵を知れば百戦危うからず、だ」と現地に誘ったのはミサト。断る理由も無いのでレイは
素直についてきた。もっとも、その言葉には大事なものが欠けているのだが。
「これが、私の倒した使徒……」
レイの見つめる先には横たえられた巨大な物体。それを取り囲むように鉄骨が組まれ、
上ではリツをはじめとする科学者たちがせわしなく動き回っていた。
「コア以外はほとんど無傷。本当、理想的なサンプルだな」
「んで、そのサンプルから、何かわかったのか?」
「ほれ」
下りてきたリツが端末にデータを打ち込み、解析結果をミサト、レイに見せる。
「……なんだ?この601って」
「解析不能を示すコードナンバー」
「つまり訳わかんないって事か。コーヒー返せ」
「なにケチくさい事を……。でも一つだけわかった事がある。これだ」
端末を操作し、別の解析結果をディスプレイに出す。
「これは……!」
「使徒の固有波形パターンだ。構成素材の違いはあっても、人間の遺伝子と酷似している。
……99.89%な」
「……それって!」
95:91
04/04/14 06:12
解析結果に興味を示す二人とは違い、レイはすでに興味を失っていた。
会話の内容が自分が理解できる範疇をとうに超えてしまっていたからだ。
手持ちぶたさで周囲をぼんやりと見渡す。その中に、知っている人物がいた。
(お母さん……)
ゲンドウ、冬月の両名が数名の研究員とともにコアを自ら調査していた。
ゲンドウは普段している白手袋をはずし、丹念にコアを調べている。
「コアはサンプルとして保存。他はすべて廃棄して」
クレーンで吊り上げられていくコアを目で追いつつ、ゲンドウが後ろに手を組む。
その手のひらについている醜い傷跡。
(火傷……?)
幼い頃に離れたものの、自分の知っている限りでは母にそのようなものは無かったはず。
(ここに来る前のお母さんのことなんて、何も知らないんだな……)
レイの気持ちが沈む。
96:91
04/04/14 06:13
「なに見てんだ?レイちゃん」
「きゃっ!」
ポンッ、とミサトに肩をたたかれレイは我に帰った。かわいらしい悲鳴付きで。
「お、おどかさないでくださいよ」
慌てつつ視線を先ほどの位置に戻す。どうやら二人はすでに別の場所へ行った様だった。
悲鳴が聞こえて無くてほっとするレイ。
「勝手に驚いたんだろ……んで、どうしたんだ?」
「え、イヤ、別に……」
「あのなぁ、そんな顔して『別に』なんていわれたって、『心配してください』
『かまってください』って言われてるようなもんなんだがな」
「あ、あの、その、お母さん手に火傷してるみたいで……それで……」
「火傷?リツー、なんか知ってるか?司令の手の火傷の事」
「ああ……、お前とレイちゃんがまだここに来る前、機動実験中の零号機が暴走した事が
あったんだ。聞いた事はあるだろ?」
「あ、はい」
「暴走した零号機はこちらの指示なしでエントリープラグを射出。パイロットを閉じ込めた
まま、プラグは天上、壁にぶつかり……床に落下した」
「!……パイロットって、綾波君ですよね」
初めて会ったときのシンジの姿をレイは思い出す。(じゃああの怪我は……)
「そう……。碇司令が、助け出したんだ。加熱したハッチを素手でこじ開けて。手の火傷は、
その時のものだ」
「お母さんが……」
(あのお母さんが、そんなにまでして助けた……綾波君を……)
レイの気持ちはまたゆっくりと沈んでいく。だがその理由は、本人にも良くわかっていなかった。
97:91
04/04/14 06:14
作業場見学に来たものの、理解できたのは使徒が自分の範疇を超えたものでしかない、
ということだけだったレイは、午後から学校に行く事にした。
5時間目は体育。男子は水泳、女子はバスケ。
「あーもう、何でうちの学校は校庭にバスケ場があるかなあ」
「ほんまやな。日差しきつうてかなわんわ。ったく男子がうらやましくてしゃーないわ」
試合の順番待ちの間、サトミとユウキは愚痴り合っていた。隣に座っていたレイは少し離れたプール
に視線をやる。目をとらえたのは、一人男子の輪から離れしゃがんでいたシンジの姿。
「お、なに熱心な目で見とんねん?」
「へ?あ、いや」
「ひょっとして、綾波~っ?」
「ち、ちがうわよっ」
サトミの言葉に慌てつつ反論するレイ。
「赤い顔してるくせに、あ・や・し・い・な」
「あ・綾波の顔、綾波の腰、「綾波のふくらはぎぃ~」」
最後はハモりながら、じわじわとレイに詰め寄るサトミとユウキ。その行動が逆にレイを冷めさせる
結果となり、レイは何とか落ち着きを取り戻せた。
「だから、ちがうって」
「じゃあどうしたのよ?」
「……どうして彼、いつも一人なんだろうって」
「何だそんな事」
「そういや、一年のときに転校してきてからずっとやな。ほんまは性格悪いんと違う?」
ユウキがシンジの方を見ながら結構ひどい事を言う。
「パイロット同士なんでしょ、レイの方が知ってるんじゃない?」
「そりゃそうや」
「……ほとんど話、しないから」
ピピーー
試合交代の合図。この話題はここで打ち切られた。
98:91
04/04/14 06:15
学校が終わったレイは、ネルフでシンクロテストをする事になっていた。
プラグに乗り込み、テスト開始の合図を待つ。
モニターを見ていると、少し離れた先で零号機のプラグをチェックしているシンジが見えた。
そして、シンジに近づく一人の女性の姿。
「お母さん……」
ゲンドウに気づいたシンジはプラグから離れ、彼女のもとへと行く。
シンジは、笑っていた。ゲンドウもまた、シンジと楽しそうに話している。
二人とは対照的に、レイの気持ちはまた、深く沈んでいった。
99:91
04/04/14 06:16
その日の晩。
「ま、せっかくだしうちで晩飯でもどうだ?」
という誘いを受けたリツはミサトの家に来ていた。やるべき事は山積み、しかもそれは分刻みで
増えていくのだが、他愛の無い誘いの裏にあるものを察し、しかたがないな、と友人の元へ駆け
つけたのだ。
ちなみにリツのしかたがない、という判断のためにマヤは残業を強いられて泣いていた。
「なんだよこれ!」
「なんだって、見りゃわかるだろ。カレーだカレー」
「相変わらずインスタントな飯だな……」
「ただ飯食らうやつが文句を言うな」
「あの、ミサトさんの分は?」
すでに自分とリツの分の盛り終えたレイがミサトに尋ねる。
「あ、俺の分はこれに入れてくれ。ダバーーーーッと」
そういってBIGサイズのカップ麺をレイの前に差し出すミサト。
「……本気、ですか」
「本気も本気、こいつがうまいんだって」
「じゃあ……」
「ふっふっふっ、あらかじめスープを少なめにしとくのがコツだぞ。二人とも」
おそらく生涯使う事のないだろう無駄な知識を埋め込まれたレイ、リツをよそにうれしそうに
カップ麺をかき混ぜるミサト。それを放っておいて二人もカレーを口に運び、
「……」
「うっ……」
固まった。
「……これ作ったのミサトだな」
「お、わかるか?」
「味でな!」
(レトルトを原料になぜここまで味を変えられるんだお前は!)
「……今度呼ぶときにはレイちゃんが当番のときに頼む」
「あの、普段は私が作ってるんですけど、『カレーだけは任せておけ!』ってミサトさんが……」
100:91
04/04/14 06:17
そんな様子を一部始終眺めていたものがいた。振り返れば自分の食器に盛られた今晩の食事。
野生の感が危険を知らせるが、空腹に負けて一口。瞬間、
(#$%&@*+!)
体中の感覚がなくなり、小さな音を立てて倒れる。
(今日は……お風呂……入れないや……)
そんな事を考えながら、ペンペンの意識は闇に落ちていった。
「やっぱり引っ越したほうが良いぞ。こんな生活破綻者と一緒にいたらレイちゃんの身がもたんぞ」
「もう……慣れましたから」
カレーをなんとか胃に詰めながらレイが答える。
リツが「腹壊すぞ」といっても「せっかく作ってくれたんだし」と、レイは食べ続けていた。
「そうだ、人間の環境適応能力を侮っちゃあいかんぞ。第一手続き面倒だろ、レイちゃん新しい
セキュリティーカードもらったばっかなんだから」
「あ、とまた忘れるとこだった」
そういってリツはカバンをあさりだし、カードを取り出すとレイに渡す。
「レイちゃん、シンジ君の更新カード渡すの忘れちまってさ。悪いんだけど明日本部に来る前に彼に
渡してくれないかな?」
「あ、いいですよ」
「アリガト、んじゃいまシンジ君の家の地図書くから……」
メモ帳を破り、地図を書き出すリツ。その間、レイはカードに張られたシンジの写真をじっと見ていた。
「ん~~っ、ずいぶん熱心に見てるな~、レイちゃん」
「へ?あ、え、あの」
「ひょっとして、レイちゃんシンジ君の事が」
「ち、ちがいます!」
「慌てちゃってぇ、からかいがいのある奴」
「ミサトと同じだな」
「……てめえ」
「私は、ただ……同じパイロットなのに綾波君のこと良く知らないから……」
「あぁ……いい子だぞ、とても。司令に似て、不器用だけどな」
「不器用?なにがです?」
「……生きる事が、かな。んじゃ、そろそろおいとまさせてもらうな」
101:91
04/04/14 06:17
「お、んじゃ送ってくか」
「ミサト、お前何本ビール飲んだかわかってるか?」
「大丈夫だって、もし捕まったってこいつ見せりゃ済む話だ」
そういってネルフの身分証をぴらぴらさせる。
「じゃ、レイちゃんは風呂にでも入ってな。ちょっくら送ってくるから」
「お、おい」
ミサトはリツを引っ張って出て行ってしまう。
一人残されたレイは唖然としつつも、風呂に入る事にした。
湯船に漬かっていると、昼間のモヤモヤが薄れている事に気づいた。
(楽しかった……かな。でも……)
何かが心に引っかかる。
(なんか忘れてるような気が……ま、いっか)
その日、やはりペンペンは風呂には入れなかった。
「今日はアリガトな」
「なに、俺は別に何もしちゃいないよ」
「いや、俺だけじゃちょっち厳しかったわ。んで、家で良いのか?」
「ああ、ネルフに……いや、やっぱ家でいい」
「りょーかい」
レイを元気付けるのには成功した。しかしリツはそのために泣かした部下をどうなだめるか
頭を悩ませ……とりあえず先送りにする事にした。
102:91
04/04/14 06:19
ー翌日ー
レイは地図を便りにシンジの住む部屋の前まで来ていた。
(本当に……ここに住んでるの?)
荒廃した団地住宅。その一室が綾波シンジの部屋だった。
意を決してインターホンのボタンを押す。
……カチ
カチ、カチ
「……壊れてる?」
留守を確認するためにドアノブをひねってみるとすんなりとドアが開いた。
「……あの、碇だけど……綾波君、いる?」
戸口から声をかけてみるも、返事はない。
「……あの、入るね」
別段悪気はないのだが、気配を殺しつつ部屋に入るレイ。
(え……!)
殺風景な部屋だった。
小さな冷蔵庫。こじんまりとした箪笥。パイプベット。キャスター付きのイス。
ゴミ箱として使ってるのか、冷蔵庫のそばに置いてあるダンボールには血の付いた包帯が無造作に
投げ入れられていた。
ぼんやりと、部屋を眺めるレイ。その視線が、箪笥の上にあるメガネをとらえる。
(……綾波君のかな?)
何の気なしに手にとり、かけてみる。
その時。
103:91
04/04/14 06:20
シャッ
背後からアコーディオンカーテンの開く音がした。
レイが振り返る。そこにはシンジが立っていた。シャワーを浴びていたのか、何も着けないままで。
固まるレイ。
「……あ、き、きゃぁぁぁぁぁっ!」
ようやく自体が飲み込めたレイは思わず悲鳴をあげてしまった。
レイを見ても相変わらず無表情だったシンジだが、彼女がかけていたメガネを見ると、
不快な表情を浮かべレイに近づいていく。
「あ、あの、その」
裸のまま近づいてくるシンジに動揺したためか、足がすくんで動けなくなってしまっているレイ。
どうにか顔をそらす事は出来たが、シンジの手はその顔に伸びる。
シンジの手がメガネに触れたとたん、レイの体から力が抜けた。
「うわ、あ、わあ!」
バランスを崩し、レイはシンジを巻き込んで床に倒れてしまった。
奇妙な光景だった。
生活の匂いがしない部屋で。
制服姿の少女が、裸の少年の上に倒れこんでいる。
上に乗った少女は、少年の胸元に頭を乗せ、動かない。
そこだけ時間が止まったのかのように。
104:91
04/04/14 06:31
「……どいてくれる?」
シンジの言葉とともに、止まった時間が再び動き出す。
「え?あ、きゃあ!」
自分が何をしたのかようやく理解したレイは慌てて飛び起きて、すぐに後ろを向く。
体の自由を取り戻したシンジは、倒れこんだ際に転がったメガネを大事そうに拾い上げる。
「何の用?」
ベットに投げ出していた下着を身につけながらシンジが尋ねる。
「へ、あ、その……なんだっけ。……カード、そうカード!」
何とか答えるも、動揺したままのレイの頭はうまく回っていない。
「リツさんがカード渡すの忘れて、綾波君のところに来て、それで、チャイム押しても反応なくて、
ドアも開いてて、悪いかと思ったけどそのまま中に入って……ごめんなさい……。だから、そう
いう気で来たんじゃなくて、あの」
バタン
ドアの閉まる音がした。
レイが振り向き、あたりを見回したが、そこにシンジの姿はなかった。
慌てて飛び出すと、シンジはまだ近くを歩いていた。数メートル前まで走ってきたものの、
レイはそこから近づくことができず、シンジと同じ速度で歩いていた。
駅までの道のりのあいだも、地下鉄に乗っている際も、その距離は縮まらなかった。
ネルフへのゲート入り口。
シンジはいつものようにカードをくぐらせるが、ゲートは開かない。
その横から、シンジの更新カードをくぐらせるレイ。
「これ、新しいカード。リツさんが届けてって」
レイはそのままカードを差し出す。シンジは黙って受け取ると、そのままゲートを抜けていった。
105:91
04/04/14 06:33
本部へと続く長いエスカレーター。
先ほどまでとは違い、だいぶ距離は縮まったものの、二人に会話はなかった。
(気、気まずい……何か話さないと)
「あ、あの、これから零号機の再起動実験だよね?」
「うん」
(良かった……答えてくれた)
「今度は、うまくいくといいね」
「うん」
「……」
「……」
「……ねえ、綾波君は怖くないの?」
「何が?」
「また……エヴァに乗ること」
「何で?」
「だって!……また、暴走するかもしれないんだよ」
「君、碇司令の娘さんでしょ」
「ええ」
「信じられないの?お母さんの仕事が」
「!……」
レイは黙り込んだまま下を向く。
(何で……綾波君は信じられるんだろう)
(何で……私は信じられないんだろう)
二人の会話はそこで終わった。
106:91
04/04/14 06:34
「これより、零号機再起動実験を行います」
ゲンドウの言葉に、施設場にいるチーム全員の顔が引き締まる。
「シンジ、準備はいい?」
「はい」
「第1次接続開始」
「主電源コンタクト」
「稼動電圧臨界点を突破」
「了解、フォーマットをフェイズ2に以降」
「パイロット、零号機と接続開始」
「パルス及びハーモニクス正常」
「シンクロ、問題なし」
オペレーターの発言に、シンジはゆっくりと息を吐き、エントリープラグの隅に引っ掛けていたメガネを
見る。彼を良く知るものであれば、先ほどまでより落ち着いた雰囲気が見て取れただろう。
「オールナーブリンク終了。中枢神経素子に異常なし」
「1から2590までのリストクリア」
「絶対境界線まで後2.5……1.7……1.2……」
部屋に緊張が走るのがわかる。マヤの声もこわばってきているが、淡々と状況を報告していく。
「1.0……0.8……0.4……0.3……0.2……0.1……ボーダーラインクリア!零号機、起動しました」
先ほどまでの緊張感がわずかに薄れる。完全に解けるのは今日の実験が終了してからだろう。
「引き続き、連動試験に入ります」
プルルル……プルルル……
突然、試験場に内線電話のコール。
「ええ……わかったわ。碇さん、未確認飛行物体がここに接近中。おそらく、第5の使徒ね」
「テスト中断。総員第一種警戒態勢」
冬月の報告にゲンドウは即座に指令を出した。
「零号機はこのまま使わないの?」
「まだ戦闘には耐えられません。初号機は?」
「380秒で準備できます」
「では、出撃」