06/05/15 02:03:02 y42KjgYD
「それがお父様の意思、だからか?」
「話の腰を折らないで、黙って聞いてなさい」
真紅が眉を吊り上げて糾弾した。
このやるせなさは何でしょう、とジュンは床に両手を付いて落ち込んだ。
「“住”は今まで通りにするとしても……“衣”、“食”については極力自分達でしていかなければならないのだわ。問題なのは、お金ね」
先立つものはやはり金だった。場に重い雰囲気が流れる。
真紅は苦虫をつぶしたような顔をしたまま、何も言わない。
「……皆の意見を聞きたいのだわ」
ようやく言った言葉はそれだった。
つまり、真紅でも具体的にどうすればいいのか分からないらしい。
「アルバイトなんてどうだろう?」
「私達は戸籍が無いのよ?年齢不詳、出身地不明、過去経歴無し」
「そんな怪しい奴をぉ雇う合法的な所なんて、今の御時世あるのかしらねぇ」
真紅と水銀燈の連携ツッコミが炸裂した。さすが姉妹。
「障害は多いわね」
真紅がため息をつく。
「できるだけ早急に策を練らなければね。このままだと人間になった意味が無いわ」
会議はこれにて終了のようだ。真紅はかぶりを振って部屋から出て行った。
「食費に関しては人形だった時からバクバク食ってるから問題無い……」
髪の毛鞭が飛んできた。如雨露も飛んできた。とどめに鋏が飛んできた。
全段命中。ジュンは動かなくなった。
「ねぇ、黒の服着てる人と黄色の服を着ている人」
何事も無かったかのようにのりが尋ねる。
「貴女達の名前は?」
水銀燈はチラとのりを一瞥し、さも面倒臭そうに、
「水銀燈……」
端的に呟いた。
一方で金糸雀は
「ローゼンメイデン一の策士、金糸雀かしら!」
元気に自己紹介。
「へぇ~水銀燈ちゃんに金糸雀ちゃんね。貴女達も此処に住まない?」
さっきまでピクリとも動かなかったジュンの指が突如動いた。
ガバッ! とジュン復活。
「まるでゾンビですぅ」
「ゴルァ洗濯のり!! どういう事だ!」
「え……だって、一緒に暮らした方が賑やかかな~って」
「是非ともお願いするのかしら!」
金糸雀が土下座した。
「お前はミーディアムが居たんじゃないのか」
「みっちゃんは……」
「うぐっ」
ジュンは水銀灯のミーディアムがどうなったかを思い出した。
もしかして、コイツも……
「とにかく、ここに住まわせて欲しいのかしら!!」
「賑やかになるわねぇ。よろしくね、二人とも」
「私はまだ何も言ってないわよぉ」
「さて、夕御飯の準備をしなくちゃ。何人分?ひぃふぅみぃ……
のりは指を折りながら台所に消えていった。
「あの……ちょっと?もしもーし」
水銀燈の声は、のりに届くことは無かった。