06/05/24 00:50:24 pMqv9Q7x
>>146
VIPに専門のスレがある
投下するなら向こうの>>1をよく読んでね
【夢の】ローゼンメイデンが普通の女の子だったら 【導くままに】
スレリンク(news4vip板)
148:名無しさん@お腹いっぱい。
06/05/24 01:00:25 Hq/VgxrG
>>147
㌧
行ってみる
149:名無しさん@お腹いっぱい。
06/05/24 20:06:53 J5BS6Q8O
前スレきれいにオワタ
150:名無しさん@お腹いっぱい。
06/05/25 18:00:04 ISFDLYf6
保守
151:名無しさん@お腹いっぱい。
06/05/25 19:33:10 XMMo4z3E
>>299
URLリンク(www.youtube.com)
これとか?www
152:名無しさん@お腹いっぱい。
06/05/25 19:38:35 XMMo4z3E
べ、べつに誤爆なんかじゃないんだからねっ!!
153:名無しさん@お腹いっぱい。
06/05/26 13:40:40 qrGHMOii
>>151-152犯したい
154:名無しさん@お腹いっぱい。
06/05/26 17:42:10 UjkhUjYU
上げますよ
155:名無しさん@お腹いっぱい。
06/05/28 17:25:16 ZuKYdCf/
保守
156:名無しさん@お腹いっぱい。
06/05/28 17:27:18 IRmHYfGB
リダイヤル
157:名無しさん@お腹いっぱい。
06/05/28 22:55:08 0U30zehO
いちいち保守しなくても職人来るから
158:吝嗇 ◆G.VR4wY7XY
06/05/31 03:34:40 BubtvRN7
全11話のお話を投下します
タイトルはICEの曲より頂きました
159:BABY MAYBE(1) Doll
06/05/31 03:37:33 BubtvRN7
僕は桜田ジュン
あの時、僕は引きこもりだった
あの時、僕は「ローゼン・メイデン」という、生命を宿した奇妙な人形と出会った
あの時、僕は何ひとつ気づかなかった
あの時、僕のたったひとつの指輪から、運命が動き出した
あの時・・・・・
160:BABY MAYBE(2) Doll One(前編)
06/05/31 03:39:45 BubtvRN7
!
皆が寝静まった真夜中、いつも通りネットを眺めていた僕は、それが窓に当たる音に気づいた
黒い羽根、僕は窓を開けた、黒い翼、空からやってきた黒い天使が、静かに僕の部屋に入ってくる
ローゼン・メイデン第一ドール水銀燈、真紅の宿敵、ドールの破壊者、そして胴体の一部の無いドール
最初に彼女がこうして部屋に来たのも、やっぱりこんな、とても寒い、月の綺麗な夜だった
彼女はある夜、僕の部屋にやってきた、何の前触れもなく、閉めた窓を抜けて僕の部屋に入ってきた
「・・・何の用だ?」
「アリスになるため・・・真紅をジャンクにするため・・・そのミーディアムを殺しにきたの・・・
偵察は基本でしょぉ?、隙を見せた時、油断をした時・・・あなたたちのママゴト遊びを壊してあげる」
水銀燈は嘲るような笑みを浮かべると、何をするでもなく僕の部屋を漂い、長居することなく飛び去った
彼女はそれから夜になると僕の部屋を訪れ、窓の外や中で黙って僕を眺めてから飛び去るようになった
ある夜、僕は懸賞で当たった温蔵庫から熱いミルクティの缶を出し、窓枠の所に置いておいた
彼女が真紅を壊そうとしてるのも、僕を殺そうとしてるのも、その準備の行動も気に食わなかったが
毎晩のように僕の部屋に来る水銀燈がとても寒そうにしているのは、それとは別の問題だと思った
熱いお茶の缶を窓枠に置いては、彼女が目もくれなかった冷たい缶の中身を自分で飲む日々が続いた
水銀燈が暖かい缶を手に取るのには何日もの時間がかかった、缶を開けるのにはもっと時間がかかった
最初は匂いを嗅ぎ、すぐに中身を捨てていたミルクティに口をつけるまでにはさらに時間がかかった
彼女が窓枠の上で甘いお茶を飲み「ねぇ人間・・・」と話しかけるまでには、余り時間がかからなかった
水銀燈はそれから、真夜中に僕の部屋を訪れ、少しの時間を僕と一緒に過ごす事が多くなった
その時も彼女は、姉妹達から奪い合い、壊し合う熾烈なアリス・ゲームを続けていたが
真夜中を二人で過ごす時、彼女は誰も傷つけなかった、アリス・ゲームを忘れるのが暗黙の了解だった
いつか、別室で寝かせていた真紅が、くんくんの人形を取りに来たことがあった、半分寝ぼけている
見られちゃいけない気がした、とっさにに水銀燈を掴み、デスクの下、僕の膝の間に押し込め、隠した
水銀燈の天敵、最も強力なローザ・ミスティカを宿したアリス・ゲームの最大の障害が、今ここに居る
真紅は寝ぼけ眼のまま、とても無防備な姿で僕の部屋に少し居たが、ふらつく足のまま部屋を出た
水銀燈は僕の腿の間で、ただ僕に頬を当てながら目を閉じていた、水銀燈を疑った僕が恥ずかしかった
僕たち二人は、ただ、静かに過ごすのが好きだった、時折、二人の濃密な時間を過ごすのが好きだった
水銀燈の胴体の無い体は、とても美しく、とても敏感で、とても情熱的で、そしてとても軽かった
涙が出るほど、軽かった
彼女がぽつぽつと話してくれる自分のミーディアム、もう永くは生きられないミーディアム
歌が好きなミーディアム・・・水銀燈は、彼女の歌がとても好きだと言っていた
僕はその「メグ」のように歌が唄えない、替わりに、水銀燈が来た時はいつもラジオをつけてあげた
昭和の歌謡が好きだった、時折お気に入りの歌が流れると、体を揺らしながら静かに唄ってくれた
「うまくないけどね」と苦笑いする水銀燈に「そんなことないよ」と言った、そう・・・そんなことない
恋は 私の恋は 空を染めて燃えたよ
夜明けのコーヒー ふたりで飲もうと あの人が云った 恋の季節よ
161:BABY MAYBE (3)Doll One(後編)
06/05/31 03:42:53 BubtvRN7
「ねぇ・・・人間・・・・この部屋には、カレンダー・・・・無い・・・・・・の?」
カレンダーなら、デスクの端に腰掛ける水銀燈のすぐ隣の壁にある
水銀燈が嫌がるので、普段は消したままの部屋の灯りを薄く点けてあげた、カレンダーを指差す
「そう・・・あるの・・・あるの・・・・・ないの・・・・・あるの・・・・・ないの・・・こないの・・・こないの・・・」
水銀燈はかすかな声で呟きながらカレンダーを見つめている、空間の腹を撫で、数字を追いながら
指を折って日にちを数えている「・・・すこし・・・おくれてるだけ・・・・よ、ね・・・・?」
その時、僕は何も気づかなかった、それでも彼女の様子から、何かいつもと違う雰囲気を感じた
「水銀燈・・・どうした?」
「うん・・・何でもない・・・ねぇ・・・人間・・知ってる・・?・・私たちのお父さまが言ってたこと
私たちローゼン・メイデンは・・・命をもった人形・・・ヒトと同じように動き、考え、感じる事が出来る
ヒトと同じように・・・感じる事が出来るの・・・・人とだって、愛を交わす事が出来るの・・・・・」
「知ってる・・・よ」
それが愛ならば・・・僕と水銀燈の、あまりにも身勝手であまりにも不毛な二人の背徳が、愛と呼べるなら
「でもね、人とどんなに愛しあっても、人の子を宿す事は出来ないって・・・・それがドールの宿命だって」
「・・・・・・そうか」
Et Alors・・・それがどうかしたか?ただその一言が言える強さが欲しかった、あの頃の僕、無力な僕
「そうなのよ・・・・そう・・・言ってたの・・・・そう言ってた・・・・その・・・はずなのよ・・・・・
水銀燈は自分のドレスの腹、空っぽの胴体を撫で、また「ないの・・・あるの・・・ないの・・・こないの・・・」
「水銀燈、何か悩みがあるのか?話して欲しい・・・僕・・・・力に・・・・なるから・・・僕、何でもするよ!」
水銀燈はそれを聞くと、ほんの一瞬瞳を輝かせ、すぐに首を振り、目を伏せると、早口で僕に言った
「ん・・・ん~ん!私は何とも無いわぁ!ダメよ私となんて!もしなんともなくなくなくなかったとしても
ジュンには絶対、迷惑かけないからぁ!わたしは一人で・・・だから、もう、わたしのことは・・・・うううっ」
水銀燈の涙の意味、なぜ僕はその時わからなかったのか、なぜ僕はわからないふりをしたんだろうか
「ねぇジュン!何でわたしなんかに優しくしたの?何でわたしをこんな気持ちにさせたの?・・・何でよぉ・・・
何でわたしと・・・出会ったの?・・・何でわたしを抱いたの?・・・何でダメっていった日に・・・中に・・・」
水銀燈は両手で顔を覆い僕に背を向けると、泣き濡れた紫の瞳を一瞬こちらに向け、そのまま飛び去った
「さよならジュン、わたしはどこか遠くの町で、あなたによく似た子をあやしながら・・・生きていきます」
水銀燈は飛んで行ってしまった、いつもは黒い翼を力強く羽ばたかせ、凛とした姿で飛び去っていくが
その日の彼女はなぜか、ひどくぎこちない姿で飛び去っていた
まるで自分の体を、何か大切な物を、一人では抱えきれないほど重い重い物を胸に抱いて飛ぶかのように
異変が始まった
162:BABY MAYBE (4)Doll Five
06/05/31 03:44:51 BubtvRN7
水銀燈との奇妙な夜が明けた翌日、僕は真紅と二人で、部屋に居た
別にお互い部屋に居るのが好きだし、二人きりだからどうだというわけでもないが
その日の真紅は、なぜかいつもより無表情な、どうにも感情の読み取れない顔をしていた
「ジュン、ここに座りなさい」
「もう座ってるって」
「いいから!キチンと背筋を正して!ここにちゃんと鎮座しなさい!」
真紅はいつもよりも機嫌が悪そうだったので、大人しく彼女の前の床に正座した
「いいこと?男というものは、何かあった時、責任を取らなくてはいけません」
真紅は時々、僕にこんな教訓を垂れる、「下僕の教育は主人の努め」と言って、僕に説教をくれやがる
「うん」
僕は逆らっても仕方が無いと思い、さっさと終わらせようとして肯定の返事をした
「わかってるの?ジュン?男は!男なら責任を取りなさいって言ってるのだわ!」
「そうだね」
真紅は僕の同意の返事の何かが気に障ったのか、時々見せるヒステリックな声を上げた」
「男はぁ!責任を取らなきゃぁ!っダメなのよ!カイショ無しのアンタでもそれくらい出来るでしょ?」
「大変だね、それは」
真紅はもう手のつけられない有様で、拳で床を殴り、名前通りの紅い涙を流しながらわめき立てる
「大変って言った?ねぇ、ジュン?大変って言ったの?大変なのは!ツラいのは!
あなただけじゃないのよ!わたしだってねぇ、元は自分の身の不始末と思い、一生の不作と諦めて・・・・」
血涙を流して床を殴り続ける様に僕の腰が引けたのを感じたらしい真紅は、一転して猫なで声を出した
「ごめんなさいジュン、どうかしてたわ、わたしの生涯のマスターにこんなひどいことを言うなんて
・・・どうしてもこの時期は不安定になるの、ブルーになるの・・・・・わかるでしょ?・・・・・
ジュン、覚えてる?、昔あなたに言ったこと・・・あなたの指はまるで美しい旋律を奏でるようだって・・・
これなら・・・今にその魔法の指で、王女のウエディング・ドレスだって作れるって・・・・・・」
言ったっけ?聞いた気もするし聞いてない気もする、聞いたけど内容が少し異なるような気もする
「だから・・・急がないと・・・・ジュン・・・でも・・・おなかの所は少しゆったりと作らないと・・・ね
その姿で写真を撮って、いつか見せるの、これはあなたを授かった頃の私、とっても幸せだった私って・・・」
僕は、横座りのまま腹に手を添えてうっとりとする真紅を置いて、部屋から逃げ出した
「・・・もちろん・・・夜のアナタも、魔法の指だったわ・・・」
猫嫌いの真紅の猫なで声
血涙絶叫より怖い
163:BABY MAYBE (5)Doll Six
06/05/31 03:46:35 BubtvRN7
雛苺はいつもと変わらないように見えた
ヒナは上機嫌な時、よく子供がそうするように、自分で作詞作曲した歌を大きな声で唄う
その時も大きな声で自分の歌を唄っていた、子供はそういうものだ
「♪ヒ~ナのおなか、ぽんぽ~ん!♪ヒ~ナのおなか、ぱんぱ~ん!
♪ヒ~ナのお~なかで、コビトさんがどんど~ん!」
雛苺は大きな声で自分の歌を唄っていた、子供はそういうものだと思っていた
164:BABY MAYBE (6)Doll Four
06/05/31 03:48:14 BubtvRN7
何となく姉妹達の異変を感じていた僕から見ても、蒼星石は最初、平静を保っているように見えた
その日も、居間の窓の前に座り、庭を見つめながらぼんやりとしてた蒼星石の横に何気なく腰を下ろした
「ジュン君、この庭に・・・・木の苗を植えてもいいかい?・・・木を・・・桐の木を植えたいんだ・・・」
庭師の能力を持つ蒼星石、草木を愛する蒼星石、やっとまともな会話を交わせる奴が居た事が嬉しかった
「キリ・・・?いいよ、蒼星石ならきっと、大切に世話してくれるだろ、いつか大きい木になるよ」
蒼星石は僕の言葉に過剰反応したように震えた、カラダの方ももう少し過剰に反応して欲しかったのだが
「大切に育てて・・・いつかは大きい木に・・・うぅ・・・その頃には、その桐で・・・
立派な箪笥をひと棹作り、持たせてあげられたらいいねぇ・・・・うううぅ~・・・・・」
真紅や水銀燈よりさらにわかわからん状態になった蒼星石、僕は腰を浮かせた、危険だ、非常に危険だ
「ジュン君・・・ううっ・・・つまらないものだねぇ、手塩にかけて、蝶よ花よと育てても・・・・いつかは
どっかのウマの骨とやってきて・・・・『今まで長らくお世話になりました』なんて・・・つまらないねぇ・・・」
「蒼星石・・・大丈夫か?、お前本当に大丈夫か?せめてお前だけは大丈夫でいてくれよ~」
「ご、ごめんね、ジュン君、めでたい門出にしめっぽくなっちゃって、そうだ、桐はやめて栗を植えよう
栗の木を、大きい実がなるように、甘ぁい実がなるように・・・決して・・・戦争なんかでなくさないように
・・・・かなしいねぇ・・・南方で行方知れずになった息子が・・・せっかく帰ってきたのに・・・・うぅぅ~」
動物としての直感が僕に逃げろと言っている、尻を浮かせたまま後ずさりした、僕はエビになって逃げた
165:BABY MAYBE (7)Doll Two
06/05/31 03:50:22 BubtvRN7
金糸雀は特に変わった様子は見られなかった、暗い廊下で自分の腹に向け呟いていた謎の呪文を除けば
「ふふふ、ローゼンメイデン一の頭脳は受け継がれるかしら、策士の血は一子相伝、ふははは!」
こいつ、わけわかんねぇ
人形師ローゼンは生きた人形を七つ作って、わけわかんねぇ奴らを並べて何がしたかったんだろうか
166:BABY MAYBE (8)Doll Seven
06/05/31 03:51:59 BubtvRN7
薔薇水晶は、僕の部屋の入り口から半分だけ姿を現し、半分だけの顔で僕の部屋をのぞいていた
半分だけでは、眼帯で覆われた瞳では何も見えないのに気づいたらしく、彼女は全身を戸口に晒した
ただ僕の目を見つめ、不敵な笑みを浮かべながら、聞こえるか聞こえないかの声で僕に囁く
「疑ってはいけない、それは偽りのないもの・・・・・私から生まれ出ずるモノ・・・それは間違いなくあなたから
生を享ける者・・・疑ってはいけない・・・・それは偽りのないもの・・・・・それは決して間違いのないもの」
囁き声は次第に大きく、僕を煙に巻くかのような、暗示にかけるかのような、低く凄みのある声に変わる
「たとえ槐に似ていても、ウサギに瓜二つでも・・・・疑ってはいけない・・・・それは偽りのないもの・・・・
血液型が怪しくても、黒肌アフロでも、体毛のない緑色の体でも・・・それはあなたから生まれ出ずるもの」
「お、おい待て!」
薔薇水晶は部屋の入り口からシュっと消えた
彼女の言った事が何ひとつ理解出来なかった、理解しちゃいけないような気がした。それにしてもお前・・・
167:BABY MAYBE (9)Doll Three
06/05/31 03:54:07 BubtvRN7
馬鹿な奴ってのは困ったもんで、普段が馬鹿だからホントに馬鹿になった時にわからない
翠星石は歌い踊っていた、僕ら人間社会では廊下で一人歌い踊ってる奴は、一般的に言えば・・・アレだ
「るんたった♪出来ちゃったぁ、出来ちゃったぁ、最初はちょ~っと出遅れた~と~思ったけ~れど
さ~すがわたしは翠星石♪一発逆転大当たり♪既成事実っ♪こ~れでわたしも勝ち組~ですぅ~♪」
僕の部屋にくるくる回りながら入ってくる彼女を見た時、正直な話、馬鹿に磨きがかかったか?と思った
刺激しないように、目を合わせないようにおそるおそる聞いてみた「馬鹿に磨きがかかったか?」
「もゥ!チビ人間ったら舞い上がっちゃって!先走り過ぎですぅ!こっちが恥ずかしくなるですぅ!
チビ人間は・・・どっちがいいです?公立か・・・私立か・・・やっぱりお受験とかさせた方が・・・」
この馬鹿、禁句を言いやがったな、絞首刑にしてやりたかったがどうやら相手は心神耗弱状態のようだ
「悪かったな、僕は公立だよ、しかも行ってねぇよ!」
「だ・か・らぁ~、チビパパ・・・じゃなくチビ人間みたいにダメ人間にならないようにぃ~
翠星石もちゃんと将来を考えてあげてるですぅ~、わたしたちの老後だってみてもらわなきゃ~」
ついに馬鹿が孵化したか、馬鹿はいよいよ常人には理解できない妄想世界にご出陣の様子
「でもぉ~、チビ人間はこれから忙しくなるです~お風呂にいれてあげるのはチビ人間の仕事です~
♪おむつを替えるのもぉミルクをあげるのもぉ、炊事洗濯なぁ~んでも、チビ人間がしてくれるです~
でもチビ人間はきっとキミはただ笑っていてくれればいいんだよって言ってくれるに違いないですぅ~」
翠星石は、きっと男なら例外無く不快を催すであろう内容の歌を、耳障りな高音でうたい始めた
「♪真赤なバラと白いパンジー 子犬のよこには あなた~、あなたぁ~~ あなたがいてほしい~」
音痴
どんな花よりも気高く、どんな宝石よりも輝く、一点の穢れもない究極の馬鹿を置いて僕は部屋を出た
遠くで馬鹿の雄叫びが聞こえた
「ヒッヒッフー!、ヒッヒッフー!いきんで、いきんで、ヒッヒッフー!」
困ったもんだ
168:BABY MAYBE (10)Doll Seven By・・・
06/05/31 03:57:05 BubtvRN7
「婆さんや、水銀燈婆さんや、わしのズタ袋を知らんかな?アレは大事なんじゃ、指輪入っとるんじゃ」
「ジュン爺さん、あたしゃ薔薇水晶でございますよぉ~、今じゃすっかり枝垂れ薔薇ですがねぇ
ヒャッヒャッヒャッヒャッ・・・真紅さんや、入れ歯そろそろ出してもいいんじゃないかい」
「ふひひんほう・・・カポッ水銀燈婆ァは、メグ婆さんと一緒にみのさん観にいっちゃったんですわ」
「しょうがないでふぅ、メグ婆さんは白寿まで生きられないって医者に言われてるでふぅ」
「アノ婆ァとっくに過ぎとるわ、フガフガ、この庭師の鋏も今じゃ鼻毛切りにしか使うておらんて」
「ああああのカッカカッカラスババァ人形、いいいつまであああんなゴッゴッゴッゴスロリ着るつもりかしらぁ」
「ヒ、ヒ、ヒナもみのに嫁のグチでも垂れたいの・・・の・・・なの~!・・・っ・・・ゲホゲホ!」
「で、え~と・・・お嬢ちゃんたちは・・・」
「もぅ!大爺ちゃん!ひ孫の名前を忘れるなんて!しっかりしなきゃ、私達のマスターさん!
わたしはローゼン・メイデン第463ドールTD05Hで~す!夢はもちろん、アリス!」
「私はローゼン・メイデン第1933ドールОбъект、アリスは世界の同志に赤い革命を・・・」
僕は桜田ジュン、今では2401個の指輪を持つミーディアム、オマエラ7人も生むなや
169:BABY MAYBE (11)Doll Zero ALICE
06/05/31 04:01:24 BubtvRN7
ぼくは、さくらだジュン、しょうがっこう2ねんせい
じつは、ぼくにはにんぎょうのおともだちがいるんだ、ないしょだよ
ありすっていうこなんだ、とってもきれいで、かしこくて、やさしくて、きもちいいんだ
でも、ありすちゃんといっしょにあそぶと、なんだかおちんちんがいたくなっちゃうんだ
そんなとき、ぼくはありすちゃんといっしょに、おちんちんあそびをするんだよ
ぼくのおちんちんと、ありすちゃんのおんなのこのおちんちんでいろんなことをしてあそぶと
いろんなことがおきて、とてもたのしいんだ、とてもおちんちんがきもちいいんだ、ないしょだよ
ぼくとありすちゃんで、おにんぎょうあそびしたりおちんちんあそびしたりしたりして、たのしかったよ
でも、あるひありすちゃんはいなくなっちゃった、ありすちゃんはさいごにぼくにいった
「ローゼン・メイデンは7人の子を産む、いつかきっと私の娘達が、あなたの前に現れる」
ありすちゃん、またあいたいな、ありすちゃんのむすめにもあいたいな、おちんちんあそびがしたいな
「ひー爺ちゃん、どーしたの?ぼやっとしちゃって!」
「あ、ああ、何でもないよ、ちょっと昔のことを思い出してただけで・・・え~と?」
「第1984ドール、ウォーカーギャリアよ」「第1995ドール、エステバリスです」
「ん、そーだ君ら仏間行っといで、アリス婆ちゃんにお供えしたうにゅー、二人で食べちゃいなさい」
「「わ~~~い!」」
「婆ちゃん達にはないしょじゃぞ?真紅婆さんに知れたら白髪チョップじゃ」
「「ハ~~~イ!」」
ありすちゃん
きみにはもうあえないけど、きみのようなおにんぎょうがたくさんいて、ぼくはしあわせだよ
ほんとうに、しあわせだったよ
(完)
170:吝嗇 ◆G.VR4wY7XY
06/05/31 04:03:40 BubtvRN7
あとがき
地上の王として君臨していた恐竜は、新たに現れた小型哺乳類にあっという間に絶滅させられました
隕石、天変地異、説は様々ですが、それはほんのきっかけで実際は生殖能力の差で滅んだんでしょう
最近、リアルの女に萌える事が少し減りました、末期の恐竜も同様の悩みを抱えていたんでしょうか
人間がしあわせだった統治の時を終え、何者かに、あるいはドールにその霊長の座を委譲するか否かは
ジュンのような、ドールや二次、ょぅι゛ょに萌える奴らのリビドーにかかっているのかもしれません
ではまた
吝嗇
171:こがね
06/05/31 04:07:31 NiNpxZmv
じゃあ続いて投下↓
172:引き籠もれ
06/05/31 04:10:18 NiNpxZmv
雛苺 「あ~ん真紅ぅ!! 翠星石がヒナの絵に落書きしたの~~!!」
翠星石「落書きとは失礼です! ヘタクソな絵をちったぁマシにしてやったですのに」
真紅 「どっちもどっちだわ」
ジュン「あ~うるさい!!! 遊ぶなら下でやれよなチビ共!」
雛苺 「うりゅ……怒られたぁ」
翠星石「チビ人間は細かい事でいちいちウルサイですぅ。部屋の一つや二つ黙って貸すがいいです」
ジュン「ここは僕の部屋だ。お前らの居るべき場所は下」
翠星石「真紅ぅ~、学校サボリまくりのひきこもりが何か偉そうですぅ…」
ジュン「なっ……にぃ!? もういっぺんいってみろこの性悪人形!!」
翠星石「ジュンこそ、部屋で引きこもってないで、学生が居るべき場所に、学校行ったらどうですかぁ?」
ジュン「ぼ…僕には必要ないんだよ。わかったらさっさと部屋から出てけよ!」
翠星石「べ~~ですっ! さっさと学校いっちまって、部屋を翠星石に明け渡すがいいですぅ」
雛苺 「翠星石、ジュンが学校に行って欲しいのぉ?」
翠星石「あたりめーですぅ。口うるさいのが居なくなれば、きっと清々するですぅ」
雛苺 「ヒナはやだなぁ……ジュンが学校行っちゃったら、ジュンと遊ぶ時間無くなっちゃうもん…」
翠星石「ば、バカ言うなですぅ。たかが学校くらいで、そんな……」
真紅 「そうね、雛苺の言うとおりになるかも知れないわね」
翠星石「……ぇ」
真紅 「日本の学生というのは忙しいらしいわ。学校で勉強して、家でも勉強して、休む暇も無いって話だけど…」
真紅 「私達ドールを構う暇なんて、当然無くなるでしょうね」
雛苺 「ヒナそんなのやだあぁ~! 翠星石も、やだよねぇ?」
翠星石「え…す、翠星石は…………翠星石は…」
173:名無しさん@お腹いっぱい。
06/05/31 04:12:05 NiNpxZmv
雛苺 「ジュン~~! 学校なんか行っちゃやだああぁ~~~!!」
ジュン「うわっ!? お前ら、まだいたのか?」
真紅 「あらジュン、机に教科書なんか広げてお勉強? まだ学校へ多少の未練はあったようね」
翠星石「―っ!?」
ジュン「ち、違う! これはその……ただの暇潰しだ」
翠星石「…学校、行っちゃうですか?」
ジュン「行かないっていってるだろ」
翠星石「じゃあ、じゃあっ……こんなもの、いらないですぅ!!!」
ジュン「な―っ!? な、何捨ててるんだよバカ人形!!」
翠星石「学校行かないなら、こんなもの必要無いはずですぅ!」
翠星石「お、お前は、いつもみたいに…この部屋にずっと、ずっと居た方が………お似合いですぅ」
ジュン「な、何だよそれ…」
真紅 「……ふふ」
雛苺 「やっぱり翠星石もジュンと一緒がいいんだ―!」
翠星石「ななな何いってやがるですかこのバカチビ~~!!」
翠星石「す、翠星石は別に……お、おちょくる相手が居ないとサビし…じゃなくて! …張り合いが無いだけで……」
ジュン「……お前ら」
真紅 「居場所があるのは良いことだわ」
ジュン「……」
真紅 「いつでも迎えてくれる人がいるのだから、焦る事はないわ。一歩ずつ進んでいきなさいな」
ジュン「…そうだな」
一歩ずつ、ゆっくりいけばいい。
皆が迎えてくれる、この部屋から…。
ジュン「一歩ずつ、ゆっくり……よーし、まずは…」
ジュン「勉強は明日にして、今日は遊ぶぜ――っ!!」
桜田ジュン 欠席
174:名無しさん@お腹いっぱい。
06/05/31 09:56:54 xuwC6DBC
>>172
(・∀・)イイ!!
タイトルワロス
175:名無しさん@お腹いっぱい。
06/05/31 12:27:06 PpCg/GjQ
>>172 は
わざわざ誰かが書いた後を見計らって
投下してるのか?
176:名無しさん@お腹いっぱい。
06/05/31 13:44:38 m0W7CFgd
>>170
「俺たちは大変な思い違いをしていた・・・。ローゼンの真の目的。
それは人類を駆逐し、地球を人形だけの星にすることだったんだよ!!」
あなたの銀ちゃんへの愛は伝わりました。
177:名無しさん@お腹いっぱい。
06/05/31 18:12:48 BUVRrmqJ
な、なんだってー!
178:名無しさん@お腹いっぱい。
06/05/31 18:51:04 zLsZsTAM
壮大な作戦ですね
179:名無しさん@お腹いっぱい。
06/05/31 20:13:24 KROHz3GR
>>170問題は人形の子供にオトコノコがいたのかどうかだ。
180:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/01 01:08:02 8ZiWJGcB
_,,:-ー''" ̄ ̄ ̄ ̄`ヽ、
,r'" `ヽ.
/ ::. ヽ
. / :: ヽ
.| :: |
__,,__,|__,,____,,____,,____,,___,,____,,____,,____,,___,|____,,___,
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.| ヾミ,l _;;-==ェ;、 _;;-==ェ;、 ヒ-彡|
〉"l,_l||;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;)=f';;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;||゙レr-{
| ヽ"::ヾ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;i, iヾ;;;;;;;;;;;;;;;;;;/ r';' } ニカッ
. ゙N l ::.ヾ====イ;:' l 、====/ ,l,フ ノ
. |_i"ヽ;:...:::/ ゙'''=-='''´`ヽ. /i l"
.| :゙l.''(<T''T''T''T''T'T>)゛|'",il"|
.{ ::| 、 \工工工工/ , il |
/l :|. ゙l;:ヽ========ノ ,i' ,l' ト、
/ .| ゝ、゙l;: ,,/;;,ノ | \
'" | `'ー--─'" ,| \_
181:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/01 02:43:51 vxa/X/VW
>>170の凄まじいカオスと図ったように連投した>>172-173に吹いた
ひ孫の名前ににウォーカーギャリアとかアリエナスwww
182:うた
06/06/01 04:38:41 D+gOn6ij
ここに特別につくってあるの貼るよ。<a href="URLリンク(info.from.jp)薔薇乙女達のお屋敷</a>って名前で一時期結構楽しんだよ。
ちなみに、蒼星石の会話が結構萌えたかな。携帯の人はパケ死注意。
183:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/01 15:46:03 Z3nUU1gV
なにこのマルチ
184:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/01 19:13:10 CcPtRMP9
URLリンク(rozen.my.land.to)
趣旨はこんなの
暇ならどうぞ
185:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/01 19:35:09 L466ZcIg
>吝嗇 ◆G.VR4wY7XY
せめて「。」くらいつけろ
186:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/01 20:57:00 hOBNMxZO
俺は蒼の子とオチソチソアソビが出来れば滅んでも悔いなしw
187:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/01 21:34:15 k2jpaNFj
>>170
恐竜の絶滅と萌えを括るとは
やるなーにーちゃんw
188:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/01 23:14:40 Z3nUU1gV
>>185
吝嗇はそういったアドバイスや指摘はことごとくスルーするタイプっぽいから、言うだけ無駄。
気に入らないならあぼんすればいい。
189:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/01 23:49:38 L466ZcIg
>>188
嫌いじゃないがずっと前から見にくいと思っていてな。
190:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/01 23:53:41 k2jpaNFj
>>185
>>188
つけろ、とか
言うだけ無駄、気に入らないなら~、とか
何様だよあんたらw
191:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/02 00:01:49 i6aC60SF
>>185を見て「。」が無い事に初めてきずいた……orz
192:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/02 00:57:13 zrxvfZVy
>>190
いや、何様とかでなくてさ。
エロパロでも投下した後に「。」つけろっていってたヤツがいたから。
また変な論争呼ぶのも嫌だし。
>>191
きずいた、じゃないことには気付いてないのか?
193:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/02 02:20:40 hdF4/yHu
>>1を読むんだ。
194:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/02 13:01:59 i6aC60SF
>>192ごめん(´・ω・`)
195:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/02 19:44:39 m2+UtKT7
>>166
薔薇水晶…なんて恐ろしい子。
「本気のしるし」の浮世さんみたいだw
「ラジオ深夜便」が聞こえてくる、演歌の薫り漂う銀様にGJ!
196:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/02 20:53:17 bvGEJiwN
「。」くらいつけろって思うよ。
小学生の作文ばかりなんだしさ。
197:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/02 22:10:16 nRn8i3d3
まったく気にならなかった俺は小学生以下ですかそうですか
198:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/02 22:21:22 GlUE/4yV
気にも止めない俺は幼稚園児でいいや
199:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/02 23:39:57 i6aC60SF
きずいただと思った私は赤ちゃんでいいや(^_^;)
200:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/03 00:56:27 M0WJNg8H
はい雑談ストップ。
大人しく次の投下を待とうぜ。
201:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/03 12:42:51 x2c3x+fx
そもそも批判するなってのが無理だと思うんだが。
不特定多数の人間が見てる以上は尚更。
202:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/03 13:34:10 gZYy8Ocu
それがこのスレのルールだろ?
ルールを守るのは当然だと思うが。
203:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/03 16:56:28 RLPPzwCz
批判してもたいして技術向上に役立たない所か、モチュベーションまで下がる。
他のSS書きへの牽制にもなって投下数が減る。これが一番痛い
つまらない作品にはシカトで充分だと思うよ。
204:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/03 23:12:23 x2c3x+fx
>>202
俺の言ってる言葉もう少し理解しろよ。頭悪いやつだな。
205:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/03 23:23:12 gZYy8Ocu
なんでおまえの言葉なんて理解せにゃならんのだ?
>>1を読んでROMってろよ。
206:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/03 23:51:06 Yu55eo3u
どうでもイイヨ
207:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/04 00:53:48 VcpLuf3K
つまらない議論を読む為に覗いてる訳ではない
>>1を読んで欲しいね
208:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/04 03:50:37 C7o/QZik
あんたらの意見を聞くところでもない。
職人は黙って書けばいい。
209:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/04 07:21:46 bkIxgrk1
難燃性素材にアスベストを織り込んだ特殊繊維製のオムツに船舶用高粘度B重油を滴り落ちるほど
滲み込ませて、ドレスをビリビリに引き裂いて素っ裸にしたクソ雛苺に装着。
燃焼途中で脱落せぬよう鋼鉄製の超細型コイルにてしっかりと固定しガスバーナーで点火。
JR渋谷駅前にて拘禁を解き明治通りを走らせる。
オムツから不気味なオレンジ色の炎をメラメラ燃え上がらせ、激しい黒煙を振りまきながら短い足で
全力疾走するクソ雛苺。
「ああああ熱いのおおおおおおおおおお~」と白目を剥いて叫びながら、
「雛、なんにも悪いことしてないの~」
と、完全に誤った自己認識に基く主張を行なって恥じることのないクソ雛苺の醜悪な姿。
ゲラゲラ哂いながら携帯を向ける女子高生。クソ雛苺に向い指を指して子供を諭す若い母親。
空缶やペットボトルを投げつけるDQN中学生。更には「売国人形」を轢き潰そうと迫る街宣車。
尻に火の点いたクソ雛苺、表参道方面へ向かって走る、走る、走る。
なるほど弱いだけのことはある。逃げ足だけは天下無敵だ。
自らを励まそうとしてか或いはオムツの燃える熱さに耐えようとしてか、無意識に
「あいとっ、あいとっ」と泣きながら自らに掛け声をかけるクソ雛苺の姿は実に陳腐だ。
ところでクソ雛苺をはじめドールの体組織は堅固とは言い難い。
それ故オムツを装着されていた臀部付近が竹下通りに差し掛かった折に崩壊してしまう。
高熱と高速運動の負荷に耐えられなかったのだ。
脚を失い、松明(たいまつ)の如く燃えるオムツを回転させながらクレープ屋の前を転げまわる
クソ雛苺。
それでも一生懸命「あいとっ、あいとっ」
修学旅行の中学生に蹴飛ばされても「あいとっ、あいとっ」
佐川急便に轢き潰され、ぺしゃんこにされても「あいとっ、あいとっ」
雛ちゃんほんとに強情だねえ。
だから苛められるんだよ。
210:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/04 07:47:04 VPjreG6l
なんだ。向こうの批判厨がこっちに流れてきたのか?
211:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/04 08:56:45 1i6eVOzj
人に歴史あり
アルバムの中にはその人の去来が詰まってる、今となっては恥ずかしくも温かい、人の歴史
柴崎老人のアルバムでは安田講堂のバリケードで笑う赤ヘルメット姿の元治が笑ってる
槐のアルバムでは坊主頭に瓶底眼鏡の槐がボードレールを小脇に抱えてソルボンヌを歩いてる
そして、ラプラスの魔
幾多の時を跨いで生きるラプラスの分厚いアルバムには、白人の大男と写る白崎が居た
その後ろには、プールで濡れた白い水着もはちきれんばかりの豊満な美女達が並んでる
「あの頃は僕も若かったですから、新しい雑誌を興すのに燃えてたんですよ」
白崎と白人大男は、それまでの雑誌の常識を打ち破る新しい雑誌を作るべく青春を費やした
二人の助平男は絶世の美女を集め、世界の助平男のための雑誌を世に送り出す
その後白崎は病に倒れ世を去り、運命の悪戯でラプラスの魔としての命を与えられる事となる
白人の大男は若くして散った助平な雑誌編集者、白崎の墓の前に一冊の創刊誌を供えた
「お前は生きる、たとえお前の命は消えても、お前のエロはわたしの雑誌の中で永遠に生きる」
その白人の大男の名はヒュー・ヘフナー
雑誌「プレイボーイ」の創始者にして、稀代のスケベ男
今週も週刊プレイボーイをめくる白崎の顔は、寂しそうで、どこか照れ臭そうに見える
212:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/04 09:40:20 5Lr/YZ2M
何やってんだよ、ラプラスwwww
213:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/04 19:36:54 PNkMhHrk
それでは投下させていただきます。
相変わらず、おいらはトロイメントしか見てないので、
1期で一樹とじじーに起きた物語なんぞ知る由もなし。
なので、設定に間違いがあってもご愛嬌ってことでひとつ…
調べてから書きたかったけれど、それもこれもレンタル屋のせいなのさww
214:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/04 19:38:03 PNkMhHrk
その年の冬は訪れが早く、晩秋には雪が降り出した。
大地が霜に覆われる季節の訪れとともに、元治は体を壊し入院した。
老いは誰にも止められない。
そんな元治を心配そうに見舞う翠星石。
「おじじ、大丈夫ですか、どこか痛いですか?何かして欲しい事はないですか?」
元治とマツは、そんな翠星石の気遣いに感謝していた。
「大げさな事じゃないから、そんなに心配しないでおくれ」
老いぼれた夫婦を気にかけてくれるのは、世界で彼女だけになってしまった。
いや、もう一人彼女の妹がいるのだが、どこに行ってしまったのかさっぱり音沙汰がない。
夫婦にとっては、その安否だけが一番の気がかりになっていた。
お見舞いに来た翠星石に、それとなく尋ねた蒼星石の行方。
「きっともうすぐ帰って来るです…だからおじじは元気になって待ってるですよ」
そう言って彼女は寂しそうに困惑するだけだった。
「せめてもう一度、一樹に会いたいものだ」
元治はそう、誰に語るでもなく呟いた。
翠星石の気持は複雑だった。
いま、この瞬間に蒼星石に会わせてあげられたら、どんなに二人は喜ぶだろう。
しかし、誰よりも蒼星石に会いたいと願っていたのは彼女だったかも知れない。
彼等を喜ばせたい一心から、翠星石は悲しみを胸に押し込めて、ジュンに一つの計画を提案し、協力を求めた。
「寒い季節に心温まる話を持ってゆくのです。そうすればきっと体だって良くなるです」
「お前、僕に蒼星石の名前で手紙を書けって言うのかよ…」
「だーいじょーぶですぅ、妹の癖は姉である翠星石が一番良く知ってるですから絶対ばれねーですよ。
ジュンは大船に乗った気で協力するです」
「おい、そういう事じゃなくてだな……」
それは、ほんのちいさな思いやりだった。
『前略、マスターへ。……』
不器用なやさしさが込められた手紙は、元治たちの下に届けられ、彼らの慰めとなった。
この手紙によって、彼らの心はどれだけ癒されただろうか。
こうしてジュンと翠星石による、手紙の病気見舞いが始まった。
215:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/04 19:40:01 PNkMhHrk
「おじじ、蒼星石からの手紙を持ってきてやったです」
新しくしたためた手紙を持って、翠星石は元治の病室を訪れた。手紙はこれで何通目になるだろうか。
『前略、マスターへ。……』
元治は、手紙を一通り読み終えると、何度も最初から読み直す。
それを傍から見て微笑む翠星石。そんな光景が繰り返されて1ヶ月が過ぎようとしていた。
病床にて蒼星石安否を心配する元治の症状は一向に良くなる兆しを見せない。
「そうか、かずきは元気にしておるのか…」
そんな言葉を聞くたびに、本当のことを隠している翠星石の心は傷むのだった。と同時に羨ましいとも感じていた。
翠星石は蒼星石が帰って来ないことを知っている。
故に、素直に待ち続ける元治に、彼女は少し嫉妬していたのかもしれない。
『もう蒼星石は帰ってこないです』……その一言がどうしても言えなかった。
『おじじになにかあったら、蒼星石に申し訳が立たないです』
そう思って元治達の事をあれこれ心配してはいるものの、
本当は翠星石も、蒼星石がいない寂しさを紛らわせていたのかも知れない。
こうした彼女の思いとともに、もう一通、もう一通と蒼星石の便りは増え続けていった。
216:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/04 19:40:53 PNkMhHrk
「チビ人間見ぃつけたですぅ~!」
翠星石は下校途中のジュンを待ち伏せていた。
ジュンが巴と一緒だった事にムッとして、急いで彼女から引き離す。
少々ぷりぷりしながらも、早速ジュンに協力を強要する。
「チビ人間と翠星石は一蓮托生呉越同舟なのですぅ、さぁ、とっとと家に帰って手紙を書くですぅ」
「お前、言葉の意味を分かって言っているのか?」
「ジュンはあんな女とイチャイチャしてる暇なんかないのです!そんな暇があったら翠星石に付き合うです!」
「イチャイチャって…あのなぁ、お前……」
「おじじの病気はきっと治してみせるです。だからジュンも頑張って協力しやがれです!」
ぐいぐいとジュンの袖を掴んで家路を急ぐ。
はやる気持から赤信号に気付かずに、翠星石はジュンを交差点に引っ張り出す。
突如鳴り響く急ブレーキのけたたましい悲鳴。
「さ、桜田君、大丈夫!?」
驚いて駆けつけた巴に付き添われ、ジュンは救急車で病院に搬送された。
こんな時、翠星石は自分が無力だと痛感せざるを得ない。
巴が近くにいなければ、事故の対応さえする事が出来ずに、きっと呆然とするだけだっただろう。
どうしていいか解らずに蒼ざめる翠星石。
「だいじょうぶ、だいじょうぶだから…」
と言いながらも辛そうな表情を浮かべるジュンの右手は、血の気が失せて妙な方向にひしゃげていた。
217:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/04 19:41:48 PNkMhHrk
その夜、ジュンに謝りに行った翠星石は、それから元治の心の中を訪れた。
おじじの心の樹さえ治すことができれば、きっと元気になる。それが彼女にできる唯一のことだった。
だが、翠星石が元治の心を覗いた時、既に心の樹は枯れかけていた。
生い茂る枝葉とは裏腹に、根元はそれを維持するだけの能力を失っていたのだった。
庭師の彼女は、それがその樹の寿命だということを瞬時に悟った。
「そんな…そんなのダメです!」
ジョーロを取り出した彼女は、瀕死の樹に手当てを施し始める。
「おじじにはもっと幸せを見つけて欲しいです」
しかし、いくら努力しようとも、樹の生命力は快復することがなかった。
決められた時の中で生きる者に必ず訪れる生命の終焉。それは逃れられない運命なのだ。
懸命に樹を救おうとする翠星石、しかし、どうにもならない現実が彼女をひどく落胆させた。
「こんな時、蒼星石さえいてくれれば…救えるかもしれないのに…」
その時、翠星石は、何故か懐かしい手に抱かれた様な気がした。
ふり返る翠星石に『もういいんだよ』と誰かが語りかけた様な気がした。
明け方、ふと目を覚ました元治は、傍らに看病疲れで眠るマツを目に止めた。
「ばあさんや…夢をみたよ。明日、一樹が帰ってくると言っておったよ。
もう待たなくても良いと言ってくれたよ。ばあさんには面倒をかけたね…」
218:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/04 19:42:35 PNkMhHrk
「ジュンー!お願いです、あんなおじじ見てられねーです、後生ですから一通だけでも書いてくれですー!」
「無理言うなよ、それよりも、いつまでこんな事続けるつもりなんだよ」
翌日の午後、右腕を骨折したジュンがギブスを巻いて帰ってきた。
翠星石もジュンを酷い目にあわせてしまって申し訳ないとは思っていた。自分が酷い事を言っているとも理解していた。
でも、彼女が頼りにできるのはジュンしかいなかったのだ。
「いつまででもです、いつまでもいつまでも…おじじが良くなるまで続けるです!」
「ねーちゃんに書いてもらえよ、僕には無理だ」
「それじゃ代筆だってばれるです、チビ人間の字じゃないとダメなのです!」
ジュンだって書ける物なら書いてあげたいと思っていた。それは翠星石も重々承知してはいるのだが、
日に日に生気を失って行く元治を目のあたりにして、居ても立ってもいられなかった。
元治は病床で蒼星石の便りを、心の支えにして待っている。
だから彼女は、例え嘘でもその願いを叶えてあげたいと、必死だったのだ。
「もうチビ人間なんかに頼まねぇです、おじじに何かあったらチビ人間のせいです!」
ジュンの態度に業を煮やし、彼女は夕暮れの街に飛び去っていった。
「やっぱり、翠星石には蒼星石の代わりは無理なのかな…」
あても無く街をさ迷いながら、元治の事をぼんやり考えていた。
翠星石は途方に暮れていた。非力な自分が悔しかった。
どんなに頑張ってみたところで、容姿が似ているだけでは埋まらない溝の存在を、嫌と言う程感じさせられていた。
だけど、だからといって、諦める事など出来はしない。
「そんな事はねぇです、こうなったら自分で何とかしてみせるです!」
不安を払拭するように、そう自分に言い聞かせると、彼女はその夜遅くまで手紙を書き綴った。
219:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/04 19:43:26 PNkMhHrk
時が止まったかのような深夜の白い病室に、廊下から聞こえてくる足音だけがこだましていた。
やけにはっきりとした意識の中で、元治はその足音の主人を待っていた。
やがて病室の扉が音も無く開くと、扉の向こうに青年が現れた。
彼は元治を見つけ、静かに彼に語りかける。
「ただいま。おとうさん」
それは紛れも無い、元治の一人息子、一樹の姿だった。
記憶の中の一樹が、夢にまで見た自分の息子が今、目の前に立っている。
全ての重荷から解放された様な表情を青年に向けて、元治は目を細めた。
「おかえり、一樹……ようやくおまえに会う事ができたのか」
そして、青年の右腕に抱えられた人形の懐かしい笑顔が、元治の目に写る。
「そうか…蒼星石や、君が連れてきてくれたんだね」
蒼星石は照れた様に微笑んで元治を見つめている。
元治は久しく忘れかけていた笑顔の作り方を思い出していた。
「長い道のりだったよ…一樹、もっと良く顔を見せておくれ…」
眩しい青年の笑顔、ありのままに、あの頃の様に。
「帰りましょう…おとうさん。僕達の家へ」
一樹と蒼星石の手が、元治に向かって差し出される。その手を握る彼の頬に熱い涙が伝った。
万感の想いを込めて、彼はゆっくりと目を閉じた。
『そうじゃよかずき、わしはずっとお前達に会いたかったんじゃよ。わしは、わしは……』
220:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/04 19:44:15 PNkMhHrk
「とても安らかな寝顔でしたよ。いったいどんな夢を見ていたんでしょうかねぇ…」
翌朝早くにやって来た翠星石に、マツは元治の死を告げた。
遺体は既に運び出され、この部屋にもう彼はいない。
翠星石の手から手紙がはらりと落ちた。
彼女の努力は実らず、彼は蒼星石の思い出と一緒に去って行った。
元治を励すために翠星石が懸命に書い手紙は、もう永遠に届かない。
永遠の様な一瞬、朝の静寂の中で、昨日までの出来事が翠星石の脳裏をよぎって流れて行く。
やがて、いつか伝えようと思っていた本当の事を、彼女は告白した。
「おばあさん、聞いて欲しいです…じつは、蒼星石は…」
もう遅いかも知れないけれど、言わなければきっと後悔する。
その事実をただ黙って聞いていたマツは、謝りながら話し続ける翠星石をそっと抱き寄せる。
「本当は解っていたのよ、あの人も私も。でも、もしかしたら…って思っていなかった訳じゃないわ」
二人は嘘だと知りながら、それでもやはり、彼女が自分たちを思い、手紙を書いてくれた事が嬉しかったのだ。
「翠星石ちゃんだって妹を亡くして辛かったでしょうに…
あの人に夢を見せてくれてありがとう。だから、悲しまないでおくれ」
マツの腕の中で、黙って俯く翠星石の肩は悲しみに震えていた。
「そんな…そんな約束なんて、できねぇです…」
彼女の瞳から涙がこぼれだし、いたたまれなくなって病室から飛び出した。
翠星石の去ったがらんとした病室の中で、
マツは彼女の落としていった手紙を開き、元治の居ないべッドに向かって語りかける。
「おじいさん、私達の娘は本当に優しい子でしたねぇ…」
そして、翠星石の想いのこもった手紙を、シーツの畳まれたベッドの上にそっと乗せた。
『どうか、げんきになれますように』
お世辞にも上手いとは言えない文字の中に、彼女の飾らない心が綴られていた。
221:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/04 19:45:09 PNkMhHrk
いつしか外は雪が降り出していた。
ジュンは無言で戻ってきた翠星石を心配し、事の顛末を察して歩み寄る。
彼女は庭先に立ち尽くしながら、ずっと舞い落ちる雪を眺めていた。
「もう中に入れよ…さむいだろ」
翠星石は振り帰らずに、ただ、枯れ木を飾る雪を見続ける。
「冬は嫌いです、雪は植物達には無情すぎるです…」
ジュンは黙って彼女に降りかかった雪を払い落とし、自分の上着でそっと包む。
「チビ人間…恨むです」
翠星石は素直になれなかった。
今、ジュンに優しくされてしまったら、叶わなかった願いの全てを彼のせいにして、
思いっきり泣いてしまいそうだった。
ジュンになら、それは許される甘えだったかもしれない。でも、自分が抑えられなくなりそうで怖かったのだ。
「手紙、間に合わなかったです…」
「…ごめんよ、僕は…」
翠星石は寂しそうに振り向くと、小さな声で精一杯の言葉を口にした。
「ジュン…お願いです、翠星石を一人にして欲しいです…」
222:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/04 19:45:56 PNkMhHrk
「……恨んでなんかいないです。むしろ感謝してるです。でも…今は」
ジュンの去った後、舞い落ちる雪を両手に受けながら、翠星石は本当の気持ちをつぶやいた。
雪の結晶は、彼女の落とした涙の雫に混ざりあい、ちいさな手のひらで溶けて消えてゆく。
庭先に立ち尽くす翠星石をいたわるかのように、
雪は静かに、終る事の無いワルツを奏でながら降り積もってゆく。
「辛い…辛いですよぉ……蒼星石ぃ……」
記憶の中の愛する人たちを思い続けながら、ジュンの温もりが残る上着を引き寄せて、
込みあげてくるせつなさに耐え切れず、翠星石は暗い空に向かって号泣する。
溢れ出す思い出が、彼女の胸に傷みを刻んで、涙が止まらなかった。
その心を癒そうとするかのように、雪はゆっくり、ゆっくりと翠星石を包み込んで、世界を白く変えて行く。
悲しみは時を経て、いつか空へと昇って行くものだから…と。
凍った世界を風が吹き抜けてゆく。
春はまだ遠く、いまだ雪は降り止まない。
223:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/04 19:46:55 PNkMhHrk
えー夏コミケに受かってマンガが忙しくなってしまったので、おいらは当分SSから脱落します。ROMります。おいらのSSなんて大して面白くもないでしょうけどw
3期があったとしても、元治は多分登場しないでしょうねぇ…。
一緒に時を刻んだジュークセイコーの話とか、一樹の名前で届くダイレクトメールの話とか織り交ぜたかったけど、長くなりすぎるのでやめました。
1期見てれば話も変わっただろうけど。
それから、安西先生ごめんなさい。あきらめが肝心との教えを破りました。(わかる人だけ解ってくだちい)
224:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/04 19:54:51 1KjB+1VC
>>223
仮に蒼星石の復活があるならジジィも出番必須だと思った。
それはともかくお疲れさま、気が向いたら暇つぶしにでも
またSS書いてくれると読み手の方も楽しみが増えるというもの…。
では。
225:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/04 20:11:09 l8xGRauv
>>223
切ない話だけど、楽しませてもらったよ。
でだ、
はっはっは、何を言ってるんだ
蒼星石は帰って来るに決まってるじゃないか。
俯きながら「長い間留守にしてごめんなさい」って元治に言うんだ。
でもって、「お帰り、蒼星石」って温かく迎えるシーンがきっとある筈さ。
そんな訳でいつか、また気が向いたらSS書いてくれ。
待ってるから。
226:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/05 03:08:07 9GCCTPvZ
>>211
ラプラスよ、あのプレイメイトの蝶タイ姿のウサギはお前だったのかw
ところで白崎よ、週プレは平凡パンチの後継誌で、PLAYBOYとは何の関係も無いぞwww
>>223
夏コミでの活躍を期待してます。
227:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/06 12:45:17 7zaUP+88
良作SSの保管庫への収録が待ち遠しい。
2ちゃんねる小説保管庫も再開したみたいだし、いっちょお願いしてみるか。
保管の可否については、収録の時にスレで報告って形でいいよね。
228:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/06 19:53:38 jWsRln6f
良作じゃないやつはゴミ扱いか。
229:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/06 21:59:58 2FSCwdr9
>>227
ヨロ
230:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/07 22:17:28 vFUMtliO
アゲてみる
231:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/07 22:49:33 plII4jUJ
いちいちあげてるやつウザいよ。
焦らなくても職人来るんだから待て。
232: ◆vJEPoEPHsA
06/06/11 00:48:16 ETEFBj60
はじめまして。
エロパロ板の保管をさせていただいているものです。
さて、あちらの現行スレ(9)の146さんからこちらのSSの保管依頼があったのですが、
こちらの方々的には如何でしょうか?
233:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/11 00:53:04 wUj07WQB
是非お願いします。
234:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/11 02:38:05 5wU16yck
>>232
よろ
235:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/11 11:22:15 bhg8UfX0
>232
とてもありがたいです。
よろしくお願いします。
236:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/11 23:50:05 r1ETWZRY
できれば総合スレのも保管してくれれば。
237: ◆vJEPoEPHsA
06/06/13 05:02:37 Udxgw3Q+
作業終了しました。現行スレについては使い切るか落ちるかしてから保管という事でお願いします。
URLリンク(rinrin.saiin.net)
間違いとかがないかチェックをお願いします。
また掲載について不都合などがあれば削除しますので連絡を下さい。
>>236
総合スレは私もたまにROMっていますが、まとめサイトと保管庫の両方があったかと思います…
とりあえず近いうちに向こうのスレに確認に行きます。
238:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/13 18:42:35 /oYtCoMw
>>237
モツカレー&サンクス
239:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/14 16:19:41 97I5/SHY
>>237
乙ー
240:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/15 21:05:25 HCuR3m5T
>>104
居たねー、気色悪いリーダーの使いかたしてたキモい文章書いてたのがw
あんなのがまた出てきたら徹底的に叩いて潰すしか無いってモンよ。
241:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/15 21:58:01 hOqKlYvv
亀レスにも程がある
242:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/16 00:23:44 2Mb/M0BN
>>240必死だな
243:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/16 12:19:42 iKJLT2GE
どうでもいいから書けよ
244:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/16 18:08:18 FM9aJ6NF
>>240
たしかにあれは酷かった
変な間ばっかり空けて書いてたし内容のレベルが低杉
245:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/16 19:38:03 0XWD3x85
叩きなどどこ吹く風で何一つ作風を変えず淡々と投下を続けた職人と
投下の完結にしたがってファビョり出す叩きクンの必死さが笑えた。
職人叩きに孤軍奮闘しても徒労に終わるのはさぞ悔しかろうと思ったら
案の定スレ荒しをおっ始めたが、スレ自体の浄化作用がこのスレを生んだ。
結局、何も変わらなかったね。
246:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/16 23:05:50 gEgl9fny
リーダーを文章に使う香具師はレベルの低いクズ
つか 屍ねばいいと思うんだ
「・・・」 「…」 が少し入ってるのはまだ許せる
「......」 これは何だ?
こんなの文章に入れるのなんて初めて見たし聞いた事もない
文法のイロハすら無視し続けただけじゃなくて
リーダーの使い方で読者をことごとくナメてたのが洩れは許せなかったねw
247:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/17 00:08:10 zkzDpdkq
>>246
文法のイロハもわかってない糞野郎?
言うねーあんたw
そんなに好き勝手相手バカバカ言うなら、書いてくれよ
248:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/17 00:28:18 BkTBDU9S
何のために批判禁止スレにしたのよ?ルール守れない奴は完全スルーで行こうよ。レス返すのも馬鹿の思うツボだよ。言わなくても皆分かってるしさ。
249:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/17 00:43:11 l/M30WG3
直接指定して批判してるわけじゃない。
250:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/17 00:52:29 BkTBDU9S
批判禁止。直接でも間接でも批判禁止。
そんだけ。
251:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/17 01:29:46 mkwDE4TG
黙って読め。それだけ。
252:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/17 04:04:43 l/M30WG3
で、糞だったら批判と。
253:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/17 12:05:49 mkwDE4TG
これはもう批判厨に見せかけたアンチ薔薇だな
254:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/17 12:08:52 eYnhbAJL
何を今更……。
255:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/17 21:11:38 LJHtuy74
職人は黙って書いてればそれでいいんだよ。
読み手の批判訂正や駄目出しをしっかり受け止めて
いいもの書いて実力つければ、いつかは認められるんだし。
だが、クソだと即スルー対象にするから。
256:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/17 21:55:02 cWGKc87G
次からテンプレに批評禁止と明記キボン
257:~酒~
06/06/18 00:56:00 GmEy7zJd
流れを読まずに投下
258:~酒~
06/06/18 00:58:04 GmEy7zJd
「まずいな~、もうこんなもの送ってくるなよ」
ジュンは倉庫のずっと奥の方に『お中元』と書かれた木箱を仕舞った。
おそらく両親宛のものだろうがずっと不在の彼らに送ったところであまり意味がない。
かといって、その木箱に入った品物はジュンにものりにも無用のものだった。
とりあえずジュンとしてはここに仕舞っておく以外になかったのである。
「いつ渡せるか分かったものじゃないよな」
そう言って倉庫をあとにするジュンの影で怪しく光るオッドアイがあった。
「イッヒッヒ、見つけたですぅ、こんなところに隠すなんて所詮チビ人間の
浅知恵ですぅ」
倉庫の奥でニヤリと笑いながら翠星石は木箱を取り出し、両手に抱えて小走りに駆け出していく。当然なのかどうか、翠星石には木箱の中身が何かなど分かっていない。
ジュンには見つからないようにリビングの片隅でそっと木箱を開ける。
「さ~てご開帳ですう」
木箱の中から出てきたのは年代物らしい(?)赤と白の2本のワインだった。
「お酒、ワインのようですぅ」
翠星石が2本のワインをしげしげと見つめているとき、後ろから声がかかった。
「ねぇ、翠星石何してるの?」
「ヒィィィィッ?!な、何言ってるですチビ苺、す、す、翠星石はべ、べ、別にこの
ワインを独り占めしようなんて、ぜ、ぜんぜん思っていないですぅ!と、とりあえず
駆けつけ3杯ですぅ!チビ苺も飲みやがれですぅ!!!」
あせりまくりながらまくしたて、ワインのコルクを開けてグラスにワインを注ぐ、そして
そのグラスを雛苺に差し出した。
「うぃ?それお酒なの、飲んだらのりがめっめーなのよ」
差し出されたワインを雛苺は受け取らずに翠星石に答える。
翠星石は少しひるんだが、屁理屈をこねてさらに勧めた。
「それは人間の場合ですぅ、私たちローゼンメイデンにはまったく問題なしの
すっとこどっこいですぅ」
「うゆ~、そうなの~」
雛苺は差し出されたワインを受け取ると一気に飲み干してしまった。
「うゆ~、おいしいけど何か変なの~、頭がクラクラするの~」
いきなりの千鳥足、フラフラになった雛苺はそのまま倒れて眠ってしまった。
「ちょ、チビ苺!起きるですぅ!たった1杯で情けねえですぅ!」
雛苺の胸倉を掴んで無理やり起こそうとするが雛苺が起きる気配はない。
のりが帰ってくるまでに事態を収拾したい翠星石だった。
259:~酒~
06/06/18 00:58:50 GmEy7zJd
「騒々しいわね、何をしているの?」
くんくん探偵を見るためにリビングに下りてきた真紅が翠星石に詰問する。
「雛苺?これは、翠星石、貴女、雛苺に何をしたの?」
「え、あの、その違うです、チビ苺にワインを飲ませたなんてこと、あ、あ、
ありえねえですぅ!」
持っていたワインを後ろに隠したはいいが、思い切り自分の口からバラしてしまっている。
「雛苺にワインなんて100年早いのだわ、それぐらい貴女にだって分かるでしょう」
真紅に睨まれて翠星石は押し黙ってしまった。
「で、そのワインはどうしたの?」
「そ、そのチビ人間がコイツを隠すのを見たですぅ。べ、別にジュンの行動を監視していたわけではないですぅ。真紅とばかりいっしょでちょっとムカついたなんて思ってないですぅ」
後半部分を聞いたときに真紅のこめかみが疼いたのは気のせいだろうか。だがある程度の
事情は飲み込めた。
「とりあえず雛苺に飲ませてしまったことは仕方ないわね。まだワインは残っているのでしょう?」
「もちろんですぅ、でもどうするですか?」
困ったような表情で翠星石は真紅に尋ねる。
「せっかくなのだから私たちで頂きましょう。どうせジュンものりも飲まないのだから、
私たちで始末をつける以外にないでしょう」
そう言ってグラスを持つと翠星石にワインを注がせた。
「分かったですぅ~、さあ真紅、ガンガン飲むですよ~」
ワインをなみなみ注いで、さらに自分のグラスにも注いでいく。
「それじゃあ乾杯ですぅ~」
真紅と翠星石はワインを一飲みで干していく。1杯、2杯、3杯と続けて飲み干していった。
260:~酒~
06/06/18 01:00:13 GmEy7zJd
「さてとそろそろ中断するか」
ずっとネットを続けていたジュンがそう言って部屋を出てリビングに向かう。
ガチャ!
リビングに入ったジュンが見たものは!(←火曜サスペンスのテーマを想像して下さい)
酔っぱらった真紅と翠星石の姿でした。(だめだこりゃ)
翠星石はジュンを見るなり喚き散らす。
「おうおうおう!チビ人間!酒だ!酒!酒買ってこいですぅ!!!」
「な、なにやってんだお前ら!!」
「見て分からんですか!このトウヘンボクですぅ!!とにかく酒ですぅ!!」
喚きながらジュンの脛に低空ドロップキックをかます翠星石。その横では真紅が
ジュンをじっと見つめている。
「ジュン」
呼びかけると同時に真紅はジュンに抱きつき、ところ構わずキスしまくる。
「うわッ!わッ!わッ!うわわわッ!!!!」
ジュンは狼狽して慌てて真紅を突き放す。
「ジュン、なぜなの、なぜわたしを拒むの?」
半泣きで真紅はジュンに詰め寄る。ある意味で凄まじい迫力ではあった。
ジュンは半ば逃げるようにリビングを出て翠星石に命じられるまま酒屋へとダッシュした。
261:~酒~
06/06/18 01:01:23 GmEy7zJd
「翠星石に会うのも久しぶりだな」
蒼星石は鏡から現れるとリビングへと歩いていった。
「やあ、翠・・・星・・石・・・・?」
蒼星石はベロンベロンに酔っぱらっている姉の姿を見て絶句した。
「おう来たか!蒼の字!駆け付け3杯ですぅ!とっとと飲みやがれですぅ!!」
翠星石は台所にあった焼酎を持って蒼星石に迫る。
「ちょ、ちょっと翠星石、目が座ってるよ。うわ酒臭い!!」
翠星石は蒼星石を捕まえるとコップにも注がず、瓶のまま焼酎をラッパ飲みさせる。
「だ、だめだよ、翠星石、僕、お酒は無理・・・うぐ!」
「酒は飲んでも飲まれるなですぅ。蒼星石もしっかり飲むですよ~」
言葉とは真逆に完全に酒に飲まれている翠星石、蒼星石は半分残っていた焼酎を
一気飲みさせられ、頭がボーッとなっていった。
「蒼星石、どうしたですぅ?」
うずくまっている蒼星石に翠星石が問いかける。
ギラリ!
蒼星石の両目が光ったかと思うと、蒼星石は翠星石をいきなり正座させ説教を始めた。
「いいかい翠星石、僕たちローゼンメイデンはお父様の願いを叶えることが何よりの使命だ。君には呆れるくらいそうした意識が欠けているよ。そもそもこんなこと・・・」
「そ、蒼星石、酔っぱらってるですか?」
蒼星石の言葉を遮って翠星石が問いかける。
「ぼ、ぼ、僕は酔っぱらってなんかいない!!!ヒック」
完全に酔っぱらってます。ありがとうございました。
このあと蒼星石は酔いの醒めた翠星石に小一時間説教を食らわしました。合掌。
262:~酒~
06/06/18 01:02:53 GmEy7zJd
一方の真紅、翠星石に分けてもらった焼酎をちびちびと飲みながら泣いていた。
泣き上戸、キス魔だったらしい。しかも対象であるジュンは逃げてしまっていた。
「ジュン、ジュン、私といっしょにいたいのではないの・・・・」
半ばヤケ酒、ローゼンメイデンの誇りもどこへやら・・・・
その時、TVの画面から黒い羽根を舞わせ水銀燈が現れた。
「あらぁ、おマヌケさんの真紅ぅ、何を泣いているのぉ」
「・・・水銀燈」
「情けない顔、ブサイクだわぁ、でもそれがお似合いよ」
水銀燈にとっては今の真紅は泣きべそをかいたマヌケな人形にしか見えなかった。
アリスゲームを始めるため戦闘態勢に入ろうとする水銀燈にいきなり真紅は抱きついた。
「うわあ~~、水銀燈!!」
抱きつかれた水銀燈は虚を衝かれた。
「な、なによ!なんなのよ!!離しなさい!!」
しがみつく真紅に水銀燈は必死に振り払おうとする。
「ジュンは、ジュンは私のことが、ああ~!!」
「な、なに真紅、貴女酒臭い!!!」
「ジュン~~!!うぅ、うえぇぇぇぇぇ・・・・」
なおも振り解こうとする水銀燈だったが、それが思い切り裏目に出た。
目が回った真紅の気分は一気に悪くなった。
「ああああ!!!真紅~!!私のドレスに吐かないでぇぇぇぇぇ!!!!!」
すべてが遅かった。水銀燈のドレスはゲロまみれになり悪臭が鼻をついた。
今度は水銀燈が泣く番だった。
「し、真紅~、なんて、なんてことするのよ!うわ~ん!お父様!!めぐぅ!!!」
真紅は水銀燈を倒した。真紅、お前は鬼か。
「ふんふん♪ちょっと買いすぎちゃったかしら。みんな待っててね、おいしい
花丸ハンバーグを作ってあげるから」
のりは鼻歌を歌いながら上機嫌で家路についた。
「みんな~、ただいま~」
返事がないのを不審に思いながら台所へと向かう。そしてリビングで見たものは!!
転がる酒瓶、管を巻く蒼星石、迎え酒の翠星石、そして泣いて吐いてる真紅・・・・
のりを怒りは限界を超えた。
「なにしとんじゃあ!!おどれら!!!」
というわけで、この日の夕飯はもちろん、翌日の朝も飯抜きになりましたとさ。
めでたしめでたし。
263:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/18 01:05:33 HnA21Db3
GJ!!!
264:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/18 01:07:33 dBzLkrFC
GJ!
とても面白かったです。てか真紅の酒癖がwww
また書いてくれれば嬉しい限りです。
265:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/18 02:10:29 MhnzGfA9
面白かった、カナリアにも出番を!
266:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/18 03:08:38 zqkp6E29
GJ!
のり怖ぇーwww
267:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/18 03:39:08 MhnzGfA9
「JUN、くんくんがはじまる時間だわ、急いでちょうだい」
さっきまでおとなしく本を読んでいた真紅がJUNの膝の上に飛び乗る
「リビングくらい自分で歩いていけよ」
文句を言いながらも真紅を抱きかかえ、リビングへと向かうJUN
「あれ?こんなとこに鏡?」
廊下に落ちていた鏡を拾い上げ、覗き込んだその時
ピカーーーッ
鏡からあふれる光がJUNと真紅を包み込んだ
「いらっしゃ~い真紅、あらぁ、今日は情けないミーディアムも一緒なのぉ?」
例によって水銀燈のワナであった
「水銀燈、また貴方なのね、お茶の時間も・・・・・ハッ、くんくん!!」
なぜかソワソワしだす真紅
「真紅~、今日こそは決着をつけましょう、お父様も痺れを切らしているわぁ」
大きく羽を広げ臨戦態勢になる水銀燈
「待って!!今は貴方と戦うつもりはないの!大事な用があるの!」
「あらぁ、逃げるつもりかしらぁ?そこのミーディアムに笑われるわよぉ」
真紅の言葉を自信の無さと受け取った水銀燈が勝利を確信した時
「くんくんが!くんくんが終わるまで待って!!」
「へ???」
「このフィールドにJUNを置いていくわ、だから30分だけ待ってちょうだい!」
「おバカな真紅、アリスゲームにふさわしくないわぁ」
「私のホーリエも置いていくわ!だからお願い!」
「・・・・・・あきれたわ、薔薇乙女の誇りはどうしたのかしらぁ?」
あまりに必死な真紅に気圧されたのか、水銀燈も引き気味である
「水銀燈!キミたち姉妹は何十年も闘ってきたんだろ?今さら30分も待てないのか?」
JUNとて真紅と共に何度も戦いをくぐりぬけたミーディアムである
(真紅、時間を稼いでる間に雛苺と翠星石を連れてくるつもりなんだね)
これまでの真紅との闘いの思い出が水銀燈の胸を熱くさせた、最後に少しの情けくらいは・・・・・・
「いいわぁ、30分だけ待ってあげる、もし戻って来なかったら、あなたのミーディアムが死ぬだけのこと」
水銀燈の返事を半分も聞かないうちに真紅はnのフィールドから姿を消していた
268:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/18 03:49:25 MhnzGfA9
「ハァハァ・・・・くんくんはまだ始ってないわね?」
リビングにすごい勢いで飛び込む真紅
「真紅~、おそいよぅ~はじめの歌が終わっちゃった~」
ソファの上に座る雛苺がTVを指差しながら答える
「今週は解決編、見逃すわけにはいかないわ、ノリ!紅茶の用意を」
真紅はソファの上に正座し、くんくん視聴の態勢を整える
「真紅~、今週はね、くんくん2時間スペシャルだって~~!雛もワクワクしてるの~~」
269:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/18 06:13:04 oU9c4yom
・・・これが寝落ちか。
ハヤクオキテー
270:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/18 09:01:57 DVgOMqrR
>>258
グッジョブ!やっぱり酒グセの悪い薔薇乙女達にワラタ、変なエロパロよりエロい
>「おう来たか!蒼の字!」
ツボった、
インスパイヤってことで勝手に番外編書きました
271:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/18 09:02:58 DVgOMqrR
「う・・・・うっく・・・ひっく・・・もうやぁよぉ・・・・ぐすっ・・・ズルルッ・・・」チーン
水銀燈は泣いていた
真紅のゲロで汚れた自分に、あまりにも情けない妹達に、そして部屋に充満する酒の気に
あの冴えないミーディアムは泣きじゃくる水銀燈を気遣って色々と話しかけてくるが
水銀燈は泣きながら手と羽根を振り回し「ほっといてよぉ・・・・」と言ってまた泣いた
その時
「おひとつ・・・・・いかが?」
それまで水銀燈を無視して忙しく動き回り、真紅や翠や蒼の不始末を片付けていたのりが
いつのまにか水銀燈の横に座り、湯気をたてるお銚子の中身を、小ぶりな湯呑に注いだ
吐き気がする酒の匂いをたてる熱い湯呑をのりに投げつけてやろうと思ったが
のりはただ黙ってお銚子をそばに置き、自分を散々困らせる同居人達を優しい目で見ている
水銀燈は湯呑を手に取った 「頂く・・・わよぉ・・・」 人肌の温もりに燗した酒に口をつける
「最悪・・・・」湯呑になみなみ注がれた甘く口当たりのいい熱燗を、水銀燈は飲み下した
昔、ずっと昔のミーディアム、人形だけが友達の少女、病に冒された少女を思い出した
水銀燈が風邪をひいた時、少女はお湯で薄めた葡萄酒を飲ませてくれた・・・甘い味がした
「サケ・・・・わたしたちのふるさと、日本のお酒よ、お米で作ったワインなの・・・・」
のりは呟く・・・水銀燈は置いてあったお銚子を取り、近くに転がってた杯をのりの前に置いた
「あなたも・・・・飲みなさいよぉ・・・・」
水銀燈がのりの杯に少しこぼしながらぬるい燗酒を注ぐと、のりは杯を水銀燈に向けて差し上げ
にっこり笑うと粋な仕草で飲み干した、そして再びお銚子を摘み、燗冷ましを水銀燈の湯呑に注ぐ
注いで注がれて、薔薇乙女達が醜態を晒して眠る居間での酒盛りは、静かなまま・・・
水銀燈は桜色の頬に触れながら思った、あの時葡萄酒を口移しで飲ませてくれた少女はもう居ない
でも今の私にはアツカンを注いでくれる気のいい娘が居る、心許すには早いけど、アツカンは美味い
どこまでも不透明なアリスゲーム、幸福なのか不幸なのかわからない自分、今日の災難
後ろでは、床に座り込んだまま酔いの回ったのりが、肩をコキっと鳴らしてため息をついている
ドールの自分には辛いことも多いけど、それはきっと皆同じ、美味い酒が飲めれば、それでいい
水銀燈は立ち上がった、帰らなくちゃいけない、わたしには帰るべき所があるから
うつらうつらし始めるのりと、無防備に酔い潰れる薔薇乙女達、今日は何も奪わずに帰ろうと思った
それでいい、と思った
(完)
272:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/18 09:39:01 72iWHa3B
酒を勧める上に自分でも飲むのりに激しい違和感
ドールなんだから風邪なんてひくのもおかしいと思うが?
人のまわしで相撲をとるのは難しいね
まぁ一応乙
273:妄想のままに
06/06/18 14:03:23 JcK2K0wd
タイトル「翼と喜怒哀楽」
274:妄想のままに(前
06/06/18 14:04:32 JcK2K0wd
ジュン君!ジュン君!」
のりの呼びかけにも、彼の返事が返ってくる事はない
ベッドで寝込んでいるジュンは、荒い息を立て苦悶の表情を浮かべている
「はぁ、はぁ、」
のりの後ろで見ているドール達も、心配そうに様子を窺っていた
「ジュン~・・・」
「・・・チビ人間」
のりは頭の上の湿ったタオルを、ベッドの傍に用意した水の入った桶に浸して冷やし
しっかり絞って、また乗せ直す
病院で言われた事は、渡された錠剤とあとは様子を見る事だけ
のりは、医者の指示に従う事しか出来なかった
目の前に苦しんでいる弟がいるのに、こうして見ている事しか出来ない自分が情けない
一緒に様子を見ていた真紅は、他のドール達に退席を煽る
「私達が居ても邪魔よ、外で待ってましょう」
「・・・なの」
「・・・はいです」
2歩3歩、歩を進める度に雛苺はジュンに振り返る
真紅と雛苺に続き、翠星石も部屋を出る
ドアを閉める際に、翠星石もベッドのジュンに目を向ける
のりの瞳の下で、苦しそうにジュンが荒い息を立てている
何かジュンを助ける方法はないか、ただそれだけを考えていると
頭の中で、ふと何かがひらめいた
275:妄想のままに(前
06/06/18 14:05:35 JcK2K0wd
部屋を出た廊下で、雛苺は溜まっていた想いを真紅に問い掛けた
「ねぇ真紅~、ジュン、大丈夫だよね?」
それに真紅も躊躇なく答える
「大丈夫よ、あれくらいで死ぬ家来じゃないわ」
「でもでもー、ジュンとっても苦しそうだったのよー」
「のりだって付いてるんだもの、大丈夫よ、きっと」
口では言う物の、真紅も心の中で不安を抱えていた
ジュンの容態は、右腕の指輪からも感じ取れる
ジュンから流れてくる意識、それが今確実に弱まっている
ドアが開き、のりが部屋から出てきた
彼女の表情は曇ったままで、のりの口元にドール達の注目が一斉に注がれる
「ねぇーのりー、ジュンは大丈夫なのー?」
「お医者さんはただの風邪だって言ってたから、大丈夫だと思うんだけど・・・」
「ジュンは今どうしてるです?」
「渡された薬を飲んで、寝ているわ・・・ジュン君は、苦しそうなままだけど」
ジュンの容態は悪いまま、のりの瞳は不安げな色を浮かばせる
「私、どうしたらいいのかしら・・・」
誰に問い掛けるわけでもなく、その想いが声に漏れる
そんな彼女に、真紅はやさしく語り出した
「そうね、ジュンは今病気と戦ってるんだもの、それなのに貴方が
そんな辛い顔をしていては、ジュンも安心して病と戦えないわ
貴方はそっと、ジュンの傍に居てあげればいいのだわ」
次に壁にもたれ掛かるもう一人の彼女に振り向いた
「それに翠星石、何か思いついた事があるのではなくて?」
まるで心の中を見通された様で、翠星石が顔を上げる
「よくわかったですね」
「顔にそう書いてあるわ」
真紅に促され、翠星石も口を開いた
「ジュンの夢の中に入って、翠星石の如雨露で心の木に栄養を与えてやるです
心の木も、ジュンの体と関係している所があるですから
心の木を元気にしてあげれば、ジュンも元気になるはずですぅ」
みんなに考えを告げると、返事を待つために口を噤む
考えはまとまってる物の、これは翠星石の一存では決められない、ここに居る全員の承諾を必要とした
それから少しの沈黙のあと、のりが真っ先に返事を告げる
「お願いするわ、翠星石ちゃん、ジュン君の苦しみが少しでも、軽くなるなら」
「翠星石~、ジュンを元気にしてきてなのぉ」
「いい考えね」
みんなの賛同も得て
翠星石は拳をぎゅっと握る
276:妄想のままに(前
06/06/18 14:06:24 JcK2K0wd
「まっかせるです~」
握った拳をほどき、ドアに手を掛けようとした翠星石だが
後ろから真紅に呼び止められた
「待って、あと私も行くわ
ジュンはこの真紅の家来だもの、家来の体は主人である私も
見る必要があるのだわ」
真紅の同行に、翠星石も快く受け入れる
「了解ですぅ~
2人でチビ人間のへたれっぷりを叩き直してやるです~!」
ドール2人の役所も決まり、残りの雛苺に真紅が指示を言い渡す
「雛苺、貴方はのりと一緒にジュンを見守ってあげるのよ
のりが大変になったら、貴方が変わりに助けるのだわ」
「外は頼んだですよチビチビ~」
「了解なのー!ジュンものりもヒナが守ってあげるの~」
早速作戦開始とばかりに
のりの胸に跳び付き、素早くだっこしてもらう
それじゃどっちが守られてるか解ったものじゃないわね
真紅は心の中で呟いたが、口には出さない
のりは雛苺を抱き寄せて、2人で抱擁を交わしている
それに雛苺が笑顔で応え、曇っていたのりの表情も和らいだ
これでまた、彼女が不安に駆られる事はないだろう
みんなの決意も整い、改めて取っ手に手を掛け
真紅と翠星石は、ジュンの待つ部屋へと足を踏み入れた
部屋には、ベッドで頭にタオルを乗せたジュンが布団を被り寝ている
頬は赤くなっていて、その寝息さえもが苦しそうで、荒い
「ジュン・・・」
衰弱したミーディアムを前に、思わず翠星石の口から彼の名前が漏れる
隣にいる真紅も、声は出さないものの心配な目で見詰めている
そして一刻も早くジュンの病を取り払う、本題に体を戻す
まず部屋の端に置いてある自分の鞄を、ベッドの傍まで引きずり寄せる
「うんしょ、うんしょ」
鞄の上板を開くと、中から緑色の光、人工精霊が飛び出てきた
「スイドリーム!」
緑の光は宙を舞い、次の瞬間に鈍い音を響かせ、人工精霊が強く瞬き出す
光はジュンの部屋を緑色に照らし、寝ているジュンの前に
空間が水面の様に揺らいでいる、夢の扉が出来上がる
強い光を発した人工精霊は、小さな光を点滅させながら、まるで力を使い果たしたかの様に
ゆらりゆらりと滑空し、翠星石の両手の上に落ち着ついた
「さぁ、行くわよ」
「はいです」
真紅と翠星石は、互いに意志を確認し合う
「ジュン君をお願いね」
「真紅ぅ、翠星石ぃ~、あいとなのー」
真紅は意を決し、宙に浮かぶ水面に跳び込んだ
それに翠星石も後を追う
跳び込んだ2人は、水面の中へと吸い込まれていく
水面は波打ち、まるで異世界に何者かが入り込んだ事を知らせるかの様に
彼女らが旅立ったのを確認すると、波打つ水面は徐々に静まっていった。
277:妄想のままに(前
06/06/18 14:08:20 JcK2K0wd
ここは夢、ジュンの夢の中
真っ先に目に入るのはパソコンが積もった丘に、学校と言う所の本が敷かれた一本道
横を見渡せば、机が幾多にも連なった山々、その先には丘の上にある赤い屋根の小さな家
あの家は昔、ジュンが私を抱えて連れて行ってくれた、思い出の場所
前に来た時は、空も雲の隙間から日差しが差し込み
歪な世界ではあるけれども、光に満ち溢れていた
今2人は、ジュンの夢の中でもひときは綺麗な
木々の中にぽっかり出来た泉の真ん中の、小さな陸地に立っている
「これはひどいです・・」
翠星石が悲しい目で、足元に生えた小さな木を見詰めている
その木はジュン、ジュンの心その物
前に来た時はヘンテコリンな形ではあったけど、陽を浴び、水を浴びて
葉っぱは青々と、地面にしっかり根を生やし、元気な姿を見せていたのだ
しかし、今は葉っぱが萎れ、幹は茶色く瑞々しさを失っている
「これはどう言う事なの?」
真紅の中でも大体察しは付いていたが、あえて訊ねた
心の木に関しては、庭師である翠星石の方がより深く知っている
「今このチビ木は、病気のせいで地面とを繋ぐ根がとても弱ってるですぅ
だから心にも上手く栄養が入らなくて、今とても、チビ木も苦しんでるです・・・
その影響で、空もこんなに真っ暗だと思うです」
空は黒い雲に覆われ、差し込む光もなく、ジュンの夢の中を暗く覆っている
心がこれだけ暗い物に支配されていると言う事は
今ジュンが、それ程までに病に侵されている事を意味している
空を見詰める翠星石は
ジュンを助ける
心の中でそう決意を表すと、再び瞳を心の木に戻す
次にゆっくりと膝を屈め、両手でボールを抱える様に手の平で丸を描く
その上から先程の人工精霊が円を描くと
目の前の空間が揺らぎ、そこから瞬く間に如雨露が具現化する
如雨露は構えていた翠星石の手の中に落ち着き
次に心の中で念じると、中から水が湧き出してきた
これが庭師である翠星石の力、湧き出した水は、如雨露の中を一杯に満たして行く
「これで、元気になるはずです」
抱えていた如雨露を傾けると、先からいっぱいの水が溢れ出してきた
水は如雨露を伝い雨となって、滞りなく心の木に降り注ぐ
雨はやや緑掛かっていて、人の心に栄養を与える事が出来る特別な水
その水を浴びて、枯れ掛けていた心の木がわずかに緑の光を煌かせた、だが
傾けていた如雨露を戻し、水やりを止める
「どうしたの?」
真紅は思わず声を掛けた
「・・・ダメです、心の木はとても弱っていて、翠星石の力じゃ」
そこで口を閉ざす
水をあげた事で、木は一瞬だけ光を発したものの
その光はまたすぐに消え去り、萎びれた葉も、痩せ細った幹も
何一つ、元気な姿を取り戻す事はなかった
278:妄想のままに(前
06/06/18 14:09:36 JcK2K0wd
「どうすれば・・・」
「他に方法はないの?」
如雨露だけでは、心の木は救えない
しかし、庭師である彼女以外に心の木を救える事は出来ない
翠星石は、ジュンを助け出すための方法を必死に考えていた
考えは浮かんでは消えて、ローゼンメイデンとして生まれてから今日に至る迄の様々な記憶の中で
心の木を救う方法を、手探りで探していた
記憶の奥底、光さえも届かぬ暗い中で小さい何かが光っている
手が、その光の粒を掴もうと腕が伸びる
あと少し、もうちょっと
やっと光に手が届き、それを握り締めると、光った拳を胸元に手繰り寄せた
真紅が問い掛けてから、しばらくの沈黙が流れていた
翠星石は、弱っている心の木を見詰めたまま、地にしゃがみ込んだまま口を開こうとしない
庭師でない真紅には、ただ翠星石を待つ事しか出来ない
もし、彼女が諦めれば
それはつまり、ジュンの心の木はもう治らないと言う事
そして、こうしてる間にもジュンは病に苦しんでいる
悪い事が頭を過ぎり、真紅の顔にも不安の色が見せ始めたその時
「あれなら、もしかしたら・・・」
背を向けたまま、翠星石が呟いた
「翠星石?」
次にすっと立ち上がり、体を浮き上らせる
夢の中では、飛ぼうと思えば誰だって飛ぶ事ができる
「着いて来てほしいです」
こちらに振り返り、それだけを言って口を噤む
真剣な顔付きの彼女、そんな翠星石に、真紅もそれ以上咎めなかった
「えぇ、わかったわ」
279:妄想のままに(前
06/06/18 14:11:29 JcK2K0wd
翠星石を先頭に、真紅の2人は森の中を飛んでいる
暗いジュンの夢の中を、木々の間を掻き分けて行くと
突然目の前が光だし、その光が瞬く間に広がり、翠星石と真紅の2人を包み込んだ
光の中を臆する事なく進んでいくと
正面の光が晴れて行き、広がる光景が一変する
何もない空間に、大きな"枝"が一本だけ先の方にずっと伸びている
2人はジュンの夢の中から、別の世界に入り込んだ事を確認すると
「これを辿るです」
その枝を辿って、2人はさらに飛び続ける
しばらく辿っていると、何もなかった目の前に一面を覆う壁が見えてきた
その壁は、近づいていく度にどんどん目の前に立ち塞がり
どうやらこの枝は、その壁から生えている物の様だ
2人は壁の前まで飛び進めると、辿っていた枝の上に足を付き、一端そこに降り立った
ここで少しの休憩、真紅はその壁のすべすべとした表面に手を当て、辺りを見回す
この世界には、風は全く吹かない様だ
その壁は、隣を見渡せばどこまでも続いていて、上を見上げればどこまでも高く聳えている
まるでこの世界が、ここで終わりを示しているかの様にそれはずっと聳えている
「これが、世界樹ね・・・」
真紅が手を付いているこの壁は、その樹を成す巨大な幹
世界樹とは、現実世界を構成している一本の巨木の事である
「チビ人間のチビの木も、これだけ大きいと心配はいらないんですけどね」
この巨木の幹を辿れば、やがて世界の根幹に辿り着くと言うが
今だそれを成し遂げた者は居らず、もっとも今回は、世界の根幹探しに来たわけではない
また少し上の方では、巨大な幹から別の枝が生え、それがどこまでも伸びている
真紅はこの巨大な樹の存在を知ってはいたが
間近で見たのは初めてだったので、しばしその大きさに圧倒される
こんな物が一本の樹だなんて言うのだから、驚きだ
翠星石はこれだけ大きな樹が、目の前にあると言うのに顔色一つ変えず
見慣れているのか、さすが夢の庭師と言った所である
休憩も済み、また翠星石は体を浮き上らせる
「そろそろ行くですかね」
「そうね」
真紅も見上げていた目線を戻し、枝を後に、2人は樹の世界の奥へと再び体を動かした
280:妄想のままに(前
06/06/18 14:13:11 JcK2K0wd
何もない、静寂とした世界に、巨大な木が一本聳え立っている
翠星石と真紅の2人は、世界樹の幹を辿って下へ下へと飛び進んでいた
幹からは大きな枝が何箇所からも伸びていて、そんな景色がずっと続いている
世界樹とは、現実世界を構成している巨木
この樹から伸びている枝の数だけ、人の夢、心が存在している
数え切れない程の枝の中に、もしかしたら、お父様に続く枝もあるのだろうか
しかし、アリスでない私達に、今それを探す事は適わない
それにしても、幹を頼りにあれからずっと飛び続けていると言うのに、世界樹の付け根にあたる場所は全く見えず
この世界の終わりとも錯覚させる巨大な幹は、一体どこまで続いてるのだろう
先頭を行く翠星石は立ち止らず、ひたすらに下を目指し続けている
一応道は合っている様だ、真紅もそれに従い後を追う
2人は、そんな代わり映えのしない景色の中をずっと降りていった
それからしばらく、幹と言う名の壁と、無数の枝だけが続く景色を降りていると
翠星石が突然飛ぶスピードを緩め、宙で体を静止させる
そこにジュンの病を治す方法があるのだろうか
真紅もそこ迄飛ぶと、彼女の後ろで一端動きを留める
「ここです」
翠星石は世界樹の幹に正面を向けたまま、真紅に到着した事を伝える
しかし、後ろの真紅から見えるのは巨大な幹、その木肌が前を塞いでいるだけ
「ここって、何かあるの?」
「着いて来るです」
そう答えると、翠星石は突然正面に向かって顔から突っ込んでいった
しかし、前にあるのは巨大な幹が正面を塞いでいるだけ
それなのに翠星石は、何の躊躇もせず壁に飛び込んで行く
彼女の突然の行動に、真紅は思わず目を塞ぐ
あぶない、ぶつかる!
しかし、なぜか壁に当たる衝撃音が聞こえてこない
不思議に真紅が目を開けると、今度は翠星石まで姿が消えている
「翠星石?」
突然一人取り残され、真紅は翠星石を探し辺りを窺うと
「こっちですよ~」
彼女の声が返って来た、しかし解らない事に、その声はなぜか世界樹から響いて来る
声は丁度、先ほど翠星石が突っ込んでいった幹の部分から聞こえている
「どうすればいいの?」
「中に入ってくるです」
翠星石は、幹の中に入る様に真紅を促す
とすると、彼女は今世界樹の中にいるらしい
真紅は少し信じられなかったが、この状況で冗談を言う子ではない、それに、ここを越えなければジュンを病から救えない
心の中で意を決し、真紅も幹に向かって突っ込む
壁はどんどん目の前に迫ってくる
そのまま目を瞑り、怖いけど、それを堪え、真紅は壁に向かって飛び込んだ
281:妄想のままに(前
06/06/18 14:14:20 JcK2K0wd
パタン、足が地面に降り立ち、念のためおでこに手を当てる、幸い痛みもなく、ぶち当たると言う落ちは免れた様だ
目を開けると、辺りは一面の霧が覆っていた、その霧はとても深く、少しの先も窺い知る事が出来ない
視界は全く利かないがとりあえず、ここは別の世界、世界樹の中に入り込んだ事を理解する
「翠星石、ついたわよ、どこなの?」
深い霧の中で、真紅は声を上げて翠星石を探す
視界が利かない以上、頼れるのは音だけだ
「こっちですよー」
返事が返ってきた
真紅は声のした方へと、霧の中を掻き分けながら歩いて行く
左右に目を配りながら、翠星石を見逃さない様に足を進めていると
目の前に緑色に揺らめく陽炎が見えてきた
こう言うときだけ、彼女の着ているドレスはとても役に立つ
真紅は翠星石の傍まで歩み寄り、とりあえず安堵の息を付こうしたが
今度は突然、翠星石とは違う鈍い声が響いてきた
(こんな辺境の地に客人とは・・・1人は、いつかの緑の娘であるな)
声はとても大きく、それなのに、辺りを見渡してもどこから聞こえているのか解らない
「久しぶりですね」
真紅を他所に、翠星石は何の躊躇いもなく言葉を返す
翠星石はなぜか頭上を見上げたまま、頭を下げようとしない
そして、また声が聞こえてくる
(前に言っていた、お父様にはもう会えたのか?)
「・・・まだですね」
(そうか)
淡々と、聞こえてくる声と会話を続けている
お父様の事を知ってるなんて、相手は一体何者だろうか
真紅は現状を把握すべく、見上げている翠星石に問い掛けた
「貴方、誰と話しているの?」
呼び掛けに、翠星石が真紅に振り返る
それに一つ言葉を告げて、再び後ろに向き直し、指を上へと突き刺した
「まだ話してなかったですね、上ですよ、上」
翠星石の指が示す方に、真紅は釣られて目線を上げる
すると、真紅の頭上、霧の中に、緑色の先ほどのドレスとは比べ物にならない程の巨大な陽炎が浮かんでいる
突然の謎の物体に、真紅は目を疑っていると
自然と辺りの霧が晴れ、徐々にその全容が露わになっていく
282:妄想のままに(前
06/06/18 14:15:55 JcK2K0wd
まず頭上の霧が晴れていく
それは、その物体の顔にあたる部分
その顔は太く胴長で、大木を四本束ねた幹の太さくらいはあるだろうか
顔の後ろには、真紅の頭ほどの大きな黄色い瞳が二つ、真紅と翠星石を見下ろしている
目の後ろには高く硬そうな角が生えていて
頭から辿って首は太く、蛇の様に長く伸びて、頭上でその大きな頭を支えている
さらに胴体はもっと大きい、ジュンの家の二つ分くらいはあるだろうか
首から辿って、その背中にあたる所からは
その胴体に劣らない大きな布が張って出来た様な翼が二枚、高く聳えて生えている
下半身からは尻尾が生えていて、それが見えなくなる迄続いている
体全体は緑色、凹凸のないすらっとした皮膚に覆われていて、小さい山一つ分はあろうかと言うその姿は
丁度昔読んだ本の中に出て来る、竜と言う生き物に良く似ていた
真紅はその巨大な姿を前に、頭上の竜を見上げたまま圧倒される
竜は両腕を組んで地面に寝そべっていて
その腕の指から生やした爪、指は三本、その内の一本だけで真紅達の体を裕に越えていた
(驚かせてしまって、すまないね)
竜は瞳を瞼で覆い
目を瞑り、真紅に謝罪の意を告げる
しかし竜は口を開く事なく、想いが真紅の体に響いてくる
恐らく、テレパシーと言う物なのだろうか
目の前の巨大な物体に謝られて、真紅の頭の中に思考が戻って来る
「こちらこそ・・・、少し取り乱してしまったわ、私は真紅、貴方の名前は?」
(私に名前はない、好きに呼んでくれても構わないよ)
それに翠星石が言葉を付け足す
「翠星石はトカゲって呼んでるですよ」
真紅は目の前の竜の姿をもう一度見直す
トカゲにしては、ちょっと大きさに無理がある様な気もするが
名前に関しては、少し保留にして置く事にした
「えぇ、わかったわ、それで、ここはどこなの?」
これが一番重要なのだ
翠星石は知っている様だが、真紅にはまだ世界樹の中、と言うだけしかわからない
それから少し間を置いてから、竜の意識が体に流れ込んできた
(ここは心の泉、人の心から生み出される、想いが溜まる世界樹の空間)
「心の泉?」
真紅は言葉に釣られて、霧が晴れた周りの光景に振り返る
生えている植物は青々とした緑の芝生が隙間なく生い茂り、地面を緑色に染め上げている、
その緑の地面には背丈の低い黄色の小さな花が、芝生のキャンバスの上に点々と咲き乱れている
そしてその地面に、ぽっかりと丸く切り取られた、大小様々な穴が幾つも出来ている
穴には水が満々と湛え、不思議な事にその水は、穴に寄って一つ一つ色が違っていた
赤い水、青い水、黄色い水
そんな色取り取りの水が泉となっていて、地面に幾つも湧いている
他に山や、視界を妨げる様な木々は一本もなく、見渡す限り、そんな平坦な世界がどこまでも続いていた
283:妄想のままに(前
06/06/18 14:17:12 JcK2K0wd
(心の泉とは、人が心の中で抱く想い、その想いが己の領海から溢れ出し、世界樹の枝へと注がれる、想いは枝を介して、世界樹の幹を通り
この世界に注がれ、想いは水と言う凝縮体に変わる、その水が溜まり泉を形成した物が、この世界に広がる泉、心の泉なんだよ)
「色んな色があるのね」
(あぁ、人の喜び、悲しみ、怒り、憎しみ、それらが水の色に現れている
ここには様々な泉があるからね、あの桃色をした泉は、人が抱いた恋心と言う物かな)
(私はこの世界樹から生を受け、この泉を管理し、人の心を見守る者)
ここは人の感情の溜まり場、ある程度の事は把握できた
しかし、真紅がここに来たのは初めて、その存在さえ知らなかったというのに
「翠星石、貴方もよくこんな場所を知っていたわね」
「昔のミーディアムの家に居た頃、紅茶と間違ってワインを飲んじゃいましてね
それで夢の中をふらふらしながら彷徨ってる内に、たまたま入っちゃったですよ」
「・・・貴方らしいわね」
「そしたら、目の前にこんなおっきなお前がいるんですから
その時は翠星石も仰天しちゃったですよ、まったくー」
それまで淡々と話を続けていた翠星石だが、急に腕を組み考え込み始める
「・・・でもなぜか、トカゲとは初めて会った気がしなかったんですよねぇ」
(あぁ、私もそうだった、あの時は不思議と、何か近い物を感じたよ)
竜もそれに頷きを返す
「翠星石もそうでしたそうでした、不思議ですねぇ」
(私もずっと長く生きているが、不可思議と言うのは尽きない物だ)
小さい緑と大きい緑が、その難問に苦闘している中
真紅は頭の中で小さく呟いた
「・・・同色の輪は偉大ね」
一通り話も済んだ所で、あれに関しては結局答えが出ないまま、また次に話し合う事にした
(それで、今日は何用なのかね、私に会いに来てくれたのなら嬉しいが
そうではないのだろう?)
トカゲに促され、翠星石の表情にも力が入る
少し後ろに振り向き、真紅が頷くのを確認すると、トカゲに本題を告げる
「あの時の、紫の水を分けて欲しいんです」
(あれを?)
「はいです、今私達と住んでいる人間が、病気で大変なんです
あれがあれば、病気も治せるはずです」
(確かに、あれならあらゆる病を直す事が出来るかもしれん、だが、それはならん)
トカゲの言葉に、翠星石は落胆する
「な、なぜですか、お願いです!」
(ここにある泉は、世界樹の幹より運ばれた神聖な物を、それを外界に出す事は許されないのだよ
・・・それに)
「でも、あれがないと!」
それがジュンを救える唯一の方法、翠星石も諦めない
竜はそう告げると、今まで寝そべっていた体を起き上がらせた
巨大な体が空に向けて衝き上がり、竜の腕の3倍、4倍はあろうかと言う大きな足が2本その巨体を支え、重みに地面が唸り声を発てる
(着いてくるかね?)
284:妄想のままに(後
06/06/18 14:18:08 JcK2K0wd
どこまでも平坦な地面と、様々な色の泉が続く地上を見下ろしながら、大きな竜の頭の上に乗り、2人は空を飛んでいた
巨大な左右の翼を羽ばたかせながら、一定の速度で飛んでいる
この翼と言う物を見ていると、思わず水銀燈を思い出してしまうのだが
今はそんな事を考えている場合じゃない、真紅は頭の中で考えを揉み消す
(ここは様々な想いが泉となり、混在している場所と言ったが)
竜の意識が、また流れ込んでくる
(ここ一体は、見てごらん、黒い泉が多く見えるだろう)
真紅達は釣られて下に目を移す、すると竜の言うとおり、他の色の泉も見えるが、黒い泉の方が比較的多く地上を覆っている
「本当ね、何かとても、悲しい色だわ」
(あれは人の憎しみ、憎悪が溜まった泉でね、最近は人の争いばかりで、前はここももっと様々な色の泉があったのだが
今じゃそれが全部、黒い水に覆われてしまった、ここだけじゃない、この世界の至る所で黒い泉が増え続けている
やがてあの黒い水が、この世界を埋め尽くすのかもしれない)
竜の悲痛な想いが、体の中に響いてくる
少し先の方では、今頭の上に乗っているこの竜より何倍も大きな泉が、全て黒い水で埋まっている
人が辛い想いをする度に、この黒い水はどんどん増えていく
今私達が目指しているお父様は、どんな気持ちを抱えているのだろうか
(さて、そろそろ降りるぞ)
竜は体制を屈めて、地上へと降り始める
翼を羽ばたかせ、ゆっくりと高度をさげながら、地面に足を踏み締め
真紅達も竜の頭から飛び降りると、とある泉の前に降り立った
「これは・・・」
翠星石が唖然と目の前の泉を見詰めている
その彼女の反応をしばらく見届けた後、竜は相槌を打つ様に言葉を告げる
(そう、これが紫の、幸福の泉)
(紫の水は、人が幸せを感じ、その想いが水となった物
前はこの泉も、もっと世界の至る所で湧いていたんだが)
目の前の泉は、水かさは極端に下がり、枯れ果てた土肌が剥き出しになっている
しかし、底の方にはわずかに紫の水が残っているが
(この穴も、またすぐ黒い泉と化してしまう)
底の方からは、土肌の隙間から黒い水が湧き出していて
わずかに残っていた紫も、黒く濁らせてしまっていた
(これでここ一体は、もう完全に黒い泉で覆われてしまったよ)
辺りの泉一体は、どれもこれもが黒い水を湛えている
地面の芝生も、その影響で茶色く萎びれ、花は枯れ、ここから見回すも、鮮やかな黄色は一欠片も目にする事が出来ない
285:妄想のままに(後
06/06/18 14:19:45 JcK2K0wd
「まだ、まだ他にも泉はあるはずです!」
(最後に残っていた泉は、ここだけだがね、他の紫の泉はもう、私が監視のために空を徘徊した時には、どこも既に黒い水に侵食されていたよ)
例え、辺りが黒い泉で覆われていたとしても、翠星石には諦める事は出来ない、これを諦めたら、ジュンの病を治せない
しかし、竜の言葉は容赦なく続く
(人は争いばかりを繰り返し、憎しみと言う名の黒い水が、絶え間なくこの世界に注がれている
もう人の心には、幸せと言う気持ちは、無くなってしまったのかもしれない)
「そんなはずないです、紫の泉は・・・翠星石は探すですよ!」
「私もよ、そのために来たのだし、それがないと、ジュンを治す事ができないのでしょ?」
翠星石は頷く
下の娘達の動かぬ意志に、竜も少し言葉を変える
(そのジュンと言う人間、よほど君たちに想われている様だな)
(そこまで君たちの意志が強いと言うのなら・・・よかろう、もしこの世界に、まだ人の喜びが残っていたのなら、その水を外界に持ち出す事を許そう)
「ありがとうです!」
(・・・あればの話だが)
「絶対あるですよ」
根拠はないが翠星石は強く念を押す、真紅の表情も決して揺るがない
そんな彼女達に、トカゲもそれ以上何も言わなかった
(私もお供するよ、そこまできみ達が言うのなら、私も少し信じてみたいからね、構わないかな)
「もちろんです!」
(ありがとう、では少し待っていてくれ、私もやる事があるのでね)
トカゲはそう告げると、突然首を上げ、天上に向かって尖った口を突き立てた
そのままのゆっくりと大きな口を開ける、口の中には尖った歯がびっしりと生え揃っていて、トカゲはその牙を露わにする
翠星石達はトカゲを見上げていると、突然周りの黒い泉の水が、大きな飛沫を上げ出した
黒い水は水柱となって、空に向けて伸び出し、他の泉も、周りの全ての黒い泉から水が空へ向けて伸び出している
翠星石達は突然の事に、空に伸びる無数の水柱を驚きながら見上げていると
無数の水柱が今度は向きを変え、竜の口に向かって一斉に跳んで来た
幾つもの空を翔る黒い水の槍が、竜の口元に突き刺さる!
水と水が口の中でぶつかり合い、ごぉぉぉぉと言う衝撃音を上げながら渦を巻き
竜の腹の中へと流れ込んでいく
翠星石達の見上げる空は、幾つもの黒い水柱が頭上を翔け、中心の竜の口へと一直線に流れ込んでいる
そしてその光景がしばらく続くと、その伸びていた頭上の水柱が徐々に太さを失い、周りが徐々に静まっていく
そして最後の一本が竜の口の中へと消えて行くと
ごくんっ!
大きな音が竜の喉元から響びいて、黒い水を全て飲み込んだ
「だ、大丈夫ですか?」
突然の事に、翠星石は場を把握出来ないでいるが
まずトカゲの容態をいち早く訊ねる、あれだけ膨大な黒い水を飲んで、何ともないで居られるはずがないのだ
(・・・あぁ、大丈夫だ、慣れているからね
この黒い水がこの世界を埋め尽くせば、やがては世界樹の幹自体を腐らせ、現実世界を崩壊させてしまう事になる
だからこれが・・・世界樹の泉を管理する私の役目なんだよ)
286:妄想のままに(後
06/06/18 14:21:04 JcK2K0wd
そうは言う物の、竜の瞳はかすんでいる、鼻息もやや荒い
翠星石達は、トカゲの体調が落ち着くまで休憩を取る事にした
(すまないね・・・)
「いいんですよ」
「それにしても、それだけ恐ろしい水なのね・・・」
真紅はふと地面に目を傾けると、すぐ先に黒い水の小さな水溜りが出来ている
おそらく水柱の中からこぼれた物だろう、真紅は無意識の内に体が前に、黒い水溜りへと足が動いていく
足元の前まで水溜りに近付くと、手を伸ばし、指先が水面を付こうとしたその時
殺してやる…、よくも…、やめて…、
助けて…、酷い…、殺さないで…、死にたくない…、
擦れた幾つもの声が、真紅の指先から頭に響いてきた
体中に寒気が走り、咄嗟に手を胸の中に引き戻す
(それに、触れてはいけないよ)
後ろから竜に呼び止められた
(それはとても危険なんだ、触れた体は溶けて、触れた者の心は、人の憎悪に埋め尽くされてしまう
悲しい物だろう、今も人の憎しみが水となって、この世界に滞りなく流れ込んでいるんだ)
「・・・そうね、でも、それでも、人の全てが憎しみばかりを抱いているのではないわ
私達と一緒に住んでいる人間もそうね、もっとそんな人間が、世界に増えてくれればいいのに」
(そうだな)
竜の体調も整い、翠星石達は再び竜の頭の上に乗り、竜は畳んでいた背中の翼をいっぱいに広げ、地面を後に空へと飛び上がる
空へどんどん上がっていく度に、先ほどの一幕の後の地上が露わになって行く
地面に点在していた周りの泉は、全てただの"穴"に変わっている、穴は数えれるだけでも20個、21個程はあろうか
これは元あった周りの黒い泉を、トカゲが全て飲みつくした事を意味している
翠星石は改めて関心し、少しトカゲが心配になる
さっきは大丈夫と言っていたけれど、あれだけの黒い水を体に入れたら・・・
(さて、どこからいこうか)
「あっちに行くです」
翠星石は、右に向かって指を指し示す
示された景色には、今までと変わらない、地面に無数の泉を湛えた地上がずっと広がっていて
黒い泉も所々に見えるが、まだ赤や黄色など、他の泉も点在している
まずこの方向から、紫の泉を探す事にした
(承知した、では、しっかり掴まっていてくれ)
広げた翼を羽ばたかせ、示された空に向けて飛び立つ
2人と一匹は、泉の世界の奥へと飛び立った
287:妄想のままに(後
06/06/18 14:22:37 JcK2K0wd
それから2人と一匹は、宛もなく、空の先へとひたすらに進んでいた
翠星石達は地上を見下ろし、必死に辺りを見回すが
行けども行けども紫の泉は見当たらず、代わりに黒い泉は所々で湧いている
竜はその度に黒い水を口に引き寄せて飲み干し、示された方向へ飛び始めてから、しばらく経った時だ
「ないわねぇ・・・」
「絶対諦めないですよ」
飛んでいる竜の頭の上に乗りながら、翠星石達は紫色をした泉を必死に探す
過ぎ去っていく地上の景色は、平坦な地面と、そこに湧いている幾つもの泉
赤や青、他の色なら見当たるのだけれど、肝心の紫の泉が一向に見つからない
(ふむ、またか・・・)
竜の意識が流れ込んでくると、右に迂回し地面が黒く濁った場所へと向かう
また黒い泉だ、泉には大小様々な物があるのだが、今度のはかなり大きい
竜は黒い泉の真上迄来ると、口を開き、舞い上がってくる黒い水柱を飲み始める
大きな黒い泉は水を抜かれ、途端に水嵩も下がり、あっと言う間にただの穴へと変わり果てる
竜は黒い水を飲み干すと、再び翼を羽ばたかせ飛び始める
「それ以上は危ないですよ、もうやめるです」
頭の上に乗りながら、翠星石が堪り兼ねて言い放つ
(これが私の泉を管理する者の役目、使命なんだよ
それに慣れているから、大丈夫だ)
しかし、また鼻息を荒くさせ、羽ばたいてる翼もどこか動きが鈍くなっている
明らかに今トカゲは弱っている、真紅にもそれが垣間見れた
そうこうしてる内に、また前方に黒い泉が湧いている、竜は翠星石の止めるのも聞かずに、泉から水を吸い上げた
黒い水は水柱となって、宙に浮かぶ竜のその口へと注がれた、その時
ぐらり、突然翠星石達の乗っていた竜の頭が揺らぎ、宙へと2人は振り落とされた
咄嗟に宙に体を浮かし、何とか地面に落とされるのは免れた物の
竜はそのまま地上へと落ちて行き、その巨体が地面に叩き付けられた
大きな衝撃音が上がり、砂煙が空に舞い上がる
重みに地上は地響きを立て、その揺れが宙にいる翠星石達にも伝わってくる
一瞬の出来事だった、砂煙が晴れると、竜がだらりと地上に倒れこんでいる
2人は急いでトカゲの顔の前まで近付くと、トカゲの容態を気掛かった
「トカゲ、大丈夫ですかっ?」
翠星石は大声で叫び、トカゲの口元に手を触れようと腕を伸ばす
彼女の呼び掛けに、竜の瞳が開いた、だが
「翠星石、一端ここから離れるのよ!」
「え?」
「いいから、早く!」
突然真紅が焦り出し、翠星石は訳が解らないまま、2人はトカゲから離れ反対方向に飛び出す
一定の距離を取った所で、真紅と翠星石は後ろに振り返った
「ギャァァァァア」
突然、竜はけたたましい叫び声を上げ、翼を広げ、巨体が空へと飛び上がった
288:妄想のままに(後
06/06/18 14:23:46 JcK2K0wd
良く見ると片方の瞳が黒く染まっていて、竜は宙に浮かびながら、荒い息を立てまた怒号を上げ出す
耳が痛くなる程の叫び声を何度も発し、二人は堪らず耳を塞ぐ
翠星石はトカゲの突然の豹変に、それでもトカゲに叫び掛ける
「ギャァァァアア」
「やめるです~~、トカゲー!」
何度も唸る怒号の間に、力いっぱい叫ぶ、その声が届いたのか、トカゲが翠星石達に振り向いた
竜は叫ぶのをやめ、翠星石が一つ安堵の息を付こうとしたのもつかの間
黒い瞳がこちらを睨み付け、次に物凄い勢いでこちらに突っ込んできた
「避けるのよ!」
真紅は翠星石の腕を引っ張り、横に向かって飛び進む
2人の間を風が斬り間一髪、突っ込んできた竜の横に逸れる、首から続く長い巨体が、翠星石達のすぐ横を翔け抜ける
こんなのに当たったら、間違いなく即死だ
何とか避け切れたかと思った瞬間
しなった尻尾が跳んで来きた、避けきれない!
尻尾が2人にぶち当たり、真紅と翠星石は突き飛ばされる
全身に痛みが走る、それでも何とか堪え、ブレーキを掛けて宙に体を留める
「でも、一体どうしたの、急に」
「きっと、黒い水をいっぱい飲んだせいです・・・」
スピードを緩め振り返った竜は、的を外した事に再び怒号を上げる
すると、今度は片方の黒い瞳の周りも黒く染まり出した
周りの皮膚から黒い点が幾つもにじみ出し、それがどんどん広がり緑色の肌を真っ黒に染まって行く
かと思った瞬間、今度は二枚の翼を大きく後ろに引き出した
「何かする気よ!」
「は、はいです」
2人は慌てて引き下がろうとしたが、もう遅かった
竜はいっぱいに引き付けた翼を、前に思いっ切り打ち付けた
翼は団扇の要領で風を起こし、その巨大な翼から繰り出された突風が、翠星石達に吹き付ける
必死にその突風に逆らおうとするも、圧倒的な力の前に翠星石達は木の葉の様に飛ばされる
真紅はそれでも必死に堪え、かなり飛ばされた後にやっと体を留めるが
朦朧としながら正面を向くと、前からまた竜が突っ込んでくる
今のままでは横に逸れても、避け切れない!
咄嗟に考えた真紅は、竜に目掛けて手を前に、無数の花びらを飛ばし出した
どんどん竜が迫ってくる、正面からまともに真紅の攻撃を受けているのに、全くスピードが落ちる気配がない
せめて、竜の目に当たれば!
真紅は祈りながら花びらを飛ばし続ける、巨大な竜が、どんどん目の前に迫ってくる
!
わずかに竜のスピードが緩んだ、真紅はその隙に突っ込んでくる竜を避け、巨大な体の後ろ側へと回り込む
竜は真紅の狙い通り、瞳に花びらが当たり痛みにもがいている
真紅はその隙に、もう一人飛ばされた翠星石を探し辺りを窺うと
下の方で翠星石が地面に倒れこんでいる、彼女も相当飛ばされたらしい
「翠星石ー」
「う・・ん・・・だ、大丈夫ですよ」
翠星石は立ち上がり再び体を浮き上らせる、幸い、地面に叩き付けられる事はなかった様だ