06/05/17 20:35:54 WwhmW7If
ローゼンは原作自体が非常に三点リーダの多い漫画なので、(殆ど全てに近いページで使われている)
二次創作の方向性としては正しいんジャマイカ?
101:名無しさん@お腹いっぱい。
06/05/17 21:54:09 SxIHm2PK
>>99
貴方はとてつもなく軽率な発言をした
私も書きたくなってきた・・・
前のスレで質の悪いSS投下しちゃったからね
名誉挽回だ!まってろよ
102:名無しさん@お腹いっぱい。
06/05/17 22:00:40 afl+n5Gh
>>100
…ならどの漫画でも結構頻繁に使ってるよ
103:名無しさん@お腹いっぱい。
06/05/17 22:33:30 JiEuKaa2
>>99じゃないけど
マツテル
104:名無しさん@お腹いっぱい。
06/05/18 15:56:17 PzOJ/Err
>>97
三点リーダは「……」が一般的だと言われているだけ。正しいとかではないよ。
商業出版を目指すとかならともかく、楽しんで書くSSなら自由な使い方でいいでしょ。
漫画やゲームだと「…」一個だったり、「…………」何個も繋げたりするのも当たり前になってるから。
ただ、間を表現するのに三点リーダに頼りすぎると、文が雑に見えるのは確か。
漫画やゲームは絵や音楽で表現を補えるけど、小説では無理だから。
個人的に気になってしまうのは「…」と「・・・」が混在している文。
なんか気持ち悪い。
105:名無しさん@お腹いっぱい。
06/05/18 17:32:19 WTbi3bro
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
106:名無しさん@お腹いっぱい。
06/05/18 17:37:26 zMTqYKmN
やあ薔薇水晶
107:名無しさん@お腹いっぱい。
06/05/18 22:37:58 CQWi1t3f
たかがSSごときで…論争してんじゃないのだわ!
108:名無しさん@お腹いっぱい。
06/05/19 21:59:10 yIpVs7mo
保守
109:妄想のままに
06/05/20 19:12:54 unQY2s4E
タイトル「5月の結婚記念日」
110:妄想のままに
06/05/20 19:14:30 unQY2s4E
「ふわぁ~」
いつもと変わらない桜田家、そんな家からは眠りを誘うあくびが一つ
昼間の沢山遊んだせいで、ドール達の目はうとうと
時刻はすっかり夜の9時を指していて、もういつもの眠る時間である。
「おやすみなの~」
「おやすみなさい」
「なさいですぅ~」
「あぁ、おやすみ」
ドール達が順々に眠りの挨拶を済ませると、真紅と雛苺は鞄を閉じて、深い眠りに付いた
ジュンはと言えば机に体を向けたまま教科書と睨めっこ
そんな彼の背中を、鞄の中から眺めながら
「こんな夜中にまで実らない勉学なんて、よくやるですねぇ」
「う、うるさいな、お前には関係ないだろ」
別に本心なんかではないのだけれど、このちび人間と一緒にいる時は
何か小言を言わないと落ち着かない
「いいから、お前も早く寝ろよ」
「言われなくても寝るですー」
いつもの言い合いを済ませた後、彼女も鞄を閉めた
鞄の中で、翠星石は今日在った出来事を思い返していた
雛苺や蒼星石、幼馴染のドール達と一緒に過ごした思い出、夕飯に食べた花丸ハンバーグの美味しさ
そして、一際ジュンとの思い出が脳裏に強く思い浮かんだ
自然と顔が赤くなる、誰に恥じるわけでもないのに、鞄の中で両手で顔を隠す
彼を思い返す度、私の胸の中が熱くなる
妄想に耽る翠星石だが睡魔は徐々に彼女を覆い、上瞼も次第に重くなっていく
揺らいでいく意識の中で、彼女の心が囁く
ずっと、ジュンと一緒に居れたらいいのに・・・
無意識の内に声に呟いたが、次にはもう寝息しか聞こえてこない
胸いっぱいのまま、彼女も眠りに付いた。
111:妄想のままに
06/05/20 19:16:32 unQY2s4E
次に目を開けた翠星石は、辺りの光景に唖然とした
今まで鞄の中に居たはずなのに、見渡せば四角い大きな広間が広がっている
上を見上げると天井は三角に高く伸び、天井と天井とが先端で重なり合っている
左右の壁には様々な色ガラスが散りばめられた大きな縦長の窓が片方に、二枚ずつ貼られていて
目の前には赤い布が、一直線に敷かれている、その先には両開きの扉
赤い布は、扉の先まで伸びている
敷かれた布の両向かいには木で作られた椅子が左右に5、6席、横一列に並べられていて
その椅子が後ろに等間隔で並んでいる
左右のガラス窓からは柔らかな太陽の光が差込み、広間の中を光で包み込む
光は色ガラスを介し、七色の光が彼女を照らす
そんな光を浴びながら、翠星石は呆然としていた
突然の事で、何がどうなっているのか訳が解らない
なんですかここは、なんで鞄の中からこんな所にいるんですか?
突如の世界の変わり様に、辺りをキョロキョロしながら困惑していると
「おやおや、どうしたのですか?」
聞き覚えのある声、横から問い掛けられ、弾かれた様に振り向いく
そこには木で出来た机を境に、一寸高い台の上に男が一人立っている。白い毛並み、赤い目に鼻をヒクヒクとさせ、長い耳を立てた
「ラプラスの魔!さてはお前の仕業ですか!」
「はてさて、何を仰っているので?」
表情一つ変えず、首を傾げるだけのラプラスの魔に
熱い気持ちが次第に沸いてくる
「とぼけるなですっ!この悪戯の」
「悪戯?お嬢さん、こんな晴れ舞台でそんなに興奮しちゃいけませんよ、お気を沈めて」
興奮冷め止まぬ中、兎の言葉に今度は翠星石が傾げる
「・・・晴れ舞台?」
「はい、せっかくのドレスも乱れてしまいます」
淡々と答えるラプラスの魔に、釣られて着ている衣装に目線を落とす
それにまた唖然とした
「な、なんですかこれは・・・」
着ている衣類は白で統一され、さっきまでの着慣れたドレスはどこへやら
レースの生地で作られたドレスを纏っている
見知らぬ場所に、今度は着換えた覚えのないドレス
もう何が正しいのか解らない
「あぁ~、もう訳わかんないです~」
両手で頭を抱え、混乱を全身でアピールする翠星石に
「おやおや、」すまし顔でラプラスの魔が眺めている
112:妄想のままに
06/05/20 19:20:08 unQY2s4E
収集の付かない状況に、今度は後ろの方からも声が跳んできた
「おめでとーなのー」
「おめでとーかしらー」
突然の歓声、振り返ると椅子にはいつの間にか巴やのり、蒼星石達が座っていて
なぜかみんなして笑顔で見詰めている
「ちょ、ちょっとー、なんなんですかー?」
「おめでとう」
「幸せになってねぇ」
「姉さん、おめでとう」
「だ、だからなんなんですかー・・」
突然浴びせられる祝福の声に、ますます頭が混乱していく
パチパチパチパチ!
とどめとばかりに、客席からは拍手が鳴り響いた
もう目まで回ってくる
足もおぼつか無い、あぁ、もうダメ、倒れるです・・・
そう心の中で妥協を決意すると
ふっと力が抜け、頭の圧迫感が消えると同時に意識が遠退いていく
体が落ち葉の様に揺れる、ドレスもそれに合わせてレースのスカートをなびかせながら
ついにバランスを崩し、棒立ちのまま足元の赤い布の地面に背中から倒れこんだ。
ボフッ、
下に落ちて背中に衝撃が走る、が、不思議と痛くない
朦朧とする意識の中でゆっくりと瞼を開けると、体は地面に落ちる寸前に抱きかかえられていて
顔のすぐ目の前にはなぜかジュンが・・・
「ハニー、大丈夫かい?」
「ハ、ハハ・・・ハニー!?」
113:妄想のままに
06/05/20 19:23:02 unQY2s4E
「おい、あまり僕のフィアンセを苛めないでくれ」
ジュンは見ていた兎に振り向き、忠告を告げる
よく見ると、ジュンも服が少し違う、いつかの学校と言う所の制服を着込んでいた
「はぁ、その様なつもりはなかったのですが」
ジュンの忠告に対し、ラプラスの魔は私達に体を向け、謝罪の会釈を一つ
それを見届けたあと、または私に顔を振り向いた
もう顔と顔とがくっ付いてしまうのではと思うくらいの距離
同時に胸が一回大きく高鳴る
「大丈夫かい、痛い所は?」
「へ、平気ですよ」
お姫様だっこのまま、覚束ない口調で告げると
その言葉に彼の表情が安堵の笑顔に変わり、次に別人の様な甘い言葉を綴り出してきた
「そうか、良かった。もし君が痛みで悲しい想いをしたら、僕はどうしようかと」
「え、えーと」
「こんな小さな体で、そんなに頑張らなくてもいいんだよ?時間は沢山あるんだから、二人でゆっくり、頑張ろう・・ハニー」
そう言ったかと思うと、突然翠星石を抱えていた左腕が反対側に回り込り、その腕が背筋まで伸びてくる
背中でジュンの腕と腕とが交差し、お互いの体を抱き合わせてきた
頬と頬とが密着し合い、突然の事に瞬時に恥ずかしさがマックスを越える
「い、いきなりぃ!なんですかぁー!?」
「ハニー・・・」
お構いなしに耳元でその呼び名を囁かれ、ますます顔が赤くなる
「だぁー、だからぁ!ハニーってぇー!」
いきなり始まったラブラブ(一方的)な展開に、客席の観客達は
「大胆なのー」
「ジュン君ったら・・」
小恥ずかしそうに、けれども微笑ましくその光景を眺めている
そ、そんなのいきなり、色々と困るです!とりあえず離れるですー!
くっ付いてるジュンは、引っ張っても取れる気配がない
代わりにこの状況を何とか打開すべく、抱き付かれながらも部屋中を必死に見回す
武器は、――なさそうだ。
114:妄想のままに
06/05/20 19:25:32 unQY2s4E
あ、蒼星石!助けてですー!このおかしくなったチビ人間をぉ~~
・
・・
・・・フリフリ
ちぃー、違うですぅー!なんで笑顔で手なんか振ってやがるですか!そうじゃないですー!
このままじゃあーなってこーなって!あぁ、何想像してるですか翠星石はぁー!
されるがままのパニック状態は続き
そんな中、このピンチを救ってくれたのは意外にも兎だった
「困りますねお二方、誓いの儀は私を通していただかないと」
兎が忠告を促すと、我に返ったのかジュンの絡み付く腕がわずかに緩む
それを逃すまいと翠星石が緩んだ腕を振り解き、勢い良く後ろに蹴り跳んだ
ドレスが宙を舞い、レースのスカートが風で膨れ上がる
そのまま腕を左右に伸ばしてポーズを取り綺麗に着地。心の中で、初めてラプラスの魔に感謝を告げる
「ゆっくり過ごそうと言ったのは僕なのに、先に急がせてしまったね」
「きぃぃーー!」
態度を変えないジュンに、翠星石の気持ちが高ぶる
次に溜まりに溜まったイライラを、目の前の変態ミーディアムに言い放った
「や、やぁいチビ人間!いきなり抱きつくなですこの変態!
変な台詞をごたごたと言いやがりやがってぇ、です!
あ、あぁーと、さっきそこの兎にさりげなくフィアンセなんてぇ、ひゃ、100万年早いです!おととい来やがれですーぅ!」
指をビシッと突き刺し、この変な世界のうやむや感もまとめて言ってやった
ざまーみやがれですぅ、こぉーれでこのチビ人間も
何て勝ち誇ろうとしたが
事態は全く解決しなかった
「あぁ、いきなり抱きついて悪かった
けど、この愛は本当だ!お前は僕が幸せにする!
100万年か、じゃあその100万年、ずっと傍に居てくれるんだね?
僕はその君との時間の中で、フィアンセに相応しいミーディアムに、人間になるよ
これから二人で、100万年間、ずっと一緒に居ようねハニー」
愛たっぷりの返事が返ってきた
ひゃ、100万年って、そう言う意味じゃ・・・
呆然としたまま、突き刺した指も垂れ下がってしまった
115:妄想のままに
06/05/20 19:28:16 unQY2s4E
「大胆なのー」
「桜田君・・・」
場が静まった(?)所で
「コホン」ラプラスの魔がわざとらしく咳を一つ、周りの注目を煽る
辺りがしんと静まり、目の前のジュンも急に神妙な顔付きになる
場の状況に、翠星石も慌てて上げた腕を後ろに回した
「ではこれより、ローゼンメイデン第3ドール翠星石、桜田ジュンとの誓いの儀を執り行います」
広間全体に響き渡る様、高らかに儀の始まりを告げる
誓い?の儀?・・・なんです?
頭の中で考えを巡らす中、その答えはすぐに、嫌でも知る事となった
ラプラスの魔はジュンに首を傾け、一言一言間を置いて問い始めた
「なんじ桜田ジュンは、翠星石を妻とし
病める時も、健やかなる時も、共に支え合い、変わらぬ愛を誓いますか?」
兎の頭上には、金属の黄色く大きな十字架が掲げられている
こ、これって・・・
問い掛けられ、躊躇なくジュンが答える
「誓います!」
えぇー!
でもこれって、つまり・・結こ
考えが導き出される寸前、今度は私の方に問い掛けてきた
「なんじローゼンメイデン、第3ドール翠星石は
病める時も、健やかなる時も、共に」
「ちょ、ちょーっと待つですぅ!」
慌てて兎の口を制止させる
「す、翠星石はぁ・・その・・・」
「変わらぬ愛を、誓いますか?」
制止を無視し、ほんの少し間を置いてから続きを朗読し、問い掛けた
今彼女は、生まれてから一番に混乱している
えと、えーと、
翠星石とジュンはドールのミーディアムです!でも、別に嫌いってわけじゃ、ないですけど!
でも、えーといきなり色々言われても!でも、でもジュンがそこまで言うなやら・・・
でも、色々、えーと・・・・
周りの注目が、一斉に白ドレスのドールに注がれる
広間が静まってから数分、翠星石がついに決断を告げようと、口を開けたその時
「す、翠星石は、ジュンを・・・」
「ちょーっと待つのだわっ!」
116:妄想のままに
06/05/20 19:31:06 unQY2s4E
バターン!突然の衝撃音、聞き慣れた声、足元の赤い布を目で辿った先の両開きの扉が勢い良く開き
そこから差し込んだ光が、突如現れた黄色い髪の少女を眩しく照らしつける
「わ、し、真紅ー!?」
「はぁはぁ・・・翠星石!ジュンは渡さないわ!」
差し込んだ光が弱まり、真紅も同じ白のドレスを着込んでいる
走ってでも来たのだろうか、やや息を切らしている
「真紅!」
「えぇー・・・」
先ほどまでのジュンが、突然迷いだし表情を曇らせる
目の前のミーディアムの一変した態度に、翠星石も呆気に取られる
そこでラプラスの魔が動き出した
「今は誓いの儀の最中、例えお知り合いのドールであろうとも
その儀に割って入る事は神もお許しにはなりません、しばしのご退席を願いましょう!おのおの方!」
さっと兎が手を扉に差し向ける
すると、それまで椅子に座っていた蒼星石や巴達が一斉に席を立ち始めた
参列客らが、駆け足で間の赤い布に序列の陣形を組んで行く
突然の事態に真紅がわずかにたじろぎ
目の前の陣形が組み上がり、足踏みも止まる
「3、2、1・・・ファイア!」
指し示すラプラスの魔が一声を上げると
それを合図に、一斉に参列客らが人の波と化し、一直線に真紅にぶち当たった
「「「わ~~!!!」」」
「ジュン!ジューン!」
人波にもみくちゃになりながら、それでも懸命に振り抜けようとする
だが次第にドレスは埋もれ、真紅は人の塊に沈んで行く
あぁ、真紅、す、すまないですぅ・・・
「さぁ、今のうちに、誓いの口付けを」
ラプラスの魔が首を傾け、翠星石にそれを促す
えぇー!?、あの、えと
「ハニー、二人で幸せになろう」
ジュンが両手を広げ、腰を屈めて待っている
え、えーと!真紅!のり!それからぁ・・・、色々とすまんです!
よく解らない事だらけですけど、翠星石は今から一人の女になるです!
誰も恨むんじゃねーですよーー!
意を決して、ジュンに跳び付き口と口とを重ね合わせ、た
117:妄想のままに
06/05/20 19:35:51 unQY2s4E
鞄の上板に顔面から突っ込み、ドスンと音を発てて拍子に鞄が打ち開いた
真っ赤になった顔を両手で覆い懸命に痛みに耐える
「く、うぅ~~、ゆ、夢?」
「ん、おい、大丈夫か?」
見渡せばすぐ横にパソコン、申し訳ない程度の棚、いつもの狭い部屋である
「はぁ・・・元に戻ったです」
痛みもやっと引き、ベッドから持たれて自分を窺っているジュンがいる
寝ていたジュンは突然の衝撃音に起こされて、中からはもがく翠星石が出てきたものだから
事態がわからず、とりあえず訊いてみる
「おい、どうしたんだ?」
「・・・・」
返事が返ってこない、どこか悪いのか
すこし心配に
「おい、どうしたん」
「・・・チビ」
いきなり嫌味の一声が跳んでくる、この分だと大丈夫そうだ
「なんだよ、人がせっかく気遣ってやってるってのに
こんな夜中にいきなり起こされて、それでチビってどう言う事だよ!おい、聞いてるのか性悪人形」
「・・・・」
また黙ってしまった
今度はぼーっと翠星石が目を見詰めている。嫌味が返って来ないのでわずかにたじろぐ
何か企んでるのか?
「な、なんだよ」
「やっぱり、そっちの方がいいです」
「え?」
「おやすみです」
バタン
小言の一つも言わずに、また鞄を閉じてしまった
「・・・なんだあいつ」
鞄の中で、翠星石は寝ずにいた
外は夜明けを告げる太陽が顔を出し、ジュンの部屋の窓を通して
鞄の隙間からは淡い光が差し込んでくる
いつもの起きる時間には、まだ少し早い
瞼を閉じ、差し込む暖かな光の中で
少女はあと少しだけ、眠る事にした。
118:名無しさん@お腹いっぱい。
06/05/20 22:50:30 9Xz6Bpg8
>>117
GJ!!
花嫁(婿だけど)略奪は絶対くると思ったけど、失敗する真紅に笑ってしまったw
119:名無しさん@お腹いっぱい。
06/05/21 01:11:42 5Ige4G3j
まさに辛苦
120:名無しさん@お腹いっぱい。
06/05/21 21:12:53 CNfXxM80
なかなか、おもしろい。次もガンガッテクレ。
121:SPOON 1/7
06/05/22 06:46:00 s2zaLcVp
「ジュン、紅茶を淹れてきて頂戴。」
「ったく……なんでいつもいつも僕が……。 たまには自分で淹れてこいよ。」
「まぁ、口答えね。 えい。 絆パーンチ。」
ぺちり。 ジュンのほっぺに真紅の手が触れる。
悪戯っぽく笑う真紅。 苦笑を返すも、満更でもなさそうに立ち上がるジュン。
……。
面白くないです。 まったくもって面白くないです。
最近、ジュンは真紅に構ってばかり。 ツーと言えばカー。 山と言えば川。
何だか、二人の関係が出来上がっちゃってるような気さえします。
さらに癇に障るのがあの言葉。
きずな。
それは真紅とジュンの間にあって、私とジュンの間に無いもの。
ううん、きっと、私にもあるのかもしれないけれど。 真紅たちほど強くはないもの。
胸の内がモヤモヤする。 真紅の事は好き。 ジュンの事だって、嫌いじゃない。
なのにどうして、二人が仲良くしてるのを見ると、こんなにイヤな気持ちになるのだろう。
ジュンは。 真紅みたいな子が好きなのだろうか。
真紅は一見すると高慢ちきに見えるけれど、本当の所は誠実で、優しくて、おまけに女の子らしくて可愛い。
私はどうだろう。 ちっとも素直じゃなくて。 うるさくて。 おまけに意地悪だ。
これじゃあ、私に勝ち目なんて無いじゃない。
……勝ち目? ぶんぶんぶん。 何を考えているのか。 そういう話じゃないのに。
駄目。 この方向に考え続けては駄目。
ぺしん。 ほっぺたを引っぱたいて気合を入れる。
そうです! なんで私が悩まなくちゃいけないのですか。 ぜんぶあの唐変木が悪いのです。
ここらで一つ、翠星石の有り難味というものを、じっくり分からせてやるのです……!
122:SPOON 2/7
06/05/22 06:46:50 s2zaLcVp
「ふんふんふん~♪ 一本でも日本刀~♪ 二足でも三戦(サンチン)~♪ 三蔵でもフォー師ですぅ~♪」
かここここ。 ここは結菱家の台所。 軽やかなリズムに乗せて、泡立て器も歌う。
ふんわり白い生クリーム。 目にも柔らかなスポンジ。 徐々に形をなしていくそれは、専門店も顔負けの美しさ。
「なかなか出来が良さそうじゃないか、翠星石。 私もおこぼれに預からせて貰えるのかな?」
「心配しなくても、毒見はおじじの役目ですぅ! 変な所があったら、きっちりダメ出しして欲しいです!」
元気そうな笑顔に安堵する。 ケーキを作るから台所を貸してくれ。 窓を突き破って現れた小さな来客はそう言った。
唐突なのはいつもの事だが、今日はなんだか元気が無かった。
どうしたものかと思っていたが、瞳を覗き込んで分かった。 その悩み。 遠い昔に私も持っていた、その悩み。
車椅子の背にもたれて、昔日に思いを馳せる。 それは痛みを伴う記憶でもある。
だが、もう二度と目を背けるまい。 二葉も。 あの人も。 大切な私の一部なのだと。 憎ではなく、愛だったのだと。
蒼星石が教えてくれたのだから。
「うむ……品の良い味だ。 これなら桜田くんも唸らせる事ができるだろう。」
「べっ、別にジュンのために作ってるなんて、一言も言ってないですぅー! これは自分で食べるのです!」
下手な言い訳に、思わず笑ってしまう。 娘を持つ父親の心境とは、こういうものなのだろうか。
あの少年の事を思い出す。 蒼星石が倒れた事に憤激し、人の身でありながら黒いドールに立ち向かった少年。
ローゼンメイデンの背負った悲しき宿業。 あの時、彼なら、断ち切ってくれそうな気がしたものだった。
「で、なぜこうなるですか……。」
桜田家のリビング。 こっそりジュンだけ呼び出すはずだったのに。
「いやぁん、美味しそうな苺の生クリームケーキぃ。 翠星石ちゃんったら、いつの間にこんなにお料理が上手くなったのかしらぁ。」
「……ぅゅー……だぁー……」
「雛苺、そんなに物欲しそうな目で見ては駄目よ。 これは翠星石がジュンのために作ったものなのだわ。」
出来が良すぎたせいなのか。 こっそり運び込んだ甲斐もなく、雛苺のおやつセンサーをかいくぐる事が出来なかった。
こうなると、一人前しか作ってこなかったため、誰のためのケーキなのか、白状しない訳にはいかず。 全くもって晒し者だった。
そうこうしている内に、照れ臭そうにジュンがケーキを皿に移す。 運命の時が来たのだ。
123:SPOON 3/7
06/05/22 06:47:40 s2zaLcVp
「お~っ。 見た目は凄いな。 味は知らないけど。」
ふんっ、そんな失礼なセリフを吐けるのも今の内ですからね。
ジュンのスプーンが口に運ばれていく。 何だかローザミスティカがバクバク言ってます。 どきどきどき……。
ぴたっ。 ジュンの動きが止まった。 ……? なんで食べないんですか?
「お前……まさかとは思うけど、このケーキに何か仕込んであるんじゃ……?」
うぐっ。 ううぅ、我ながら信用が無い……。 無言のまま、怒ったように睨み返す。
ジュンは視線を逸らしつつ、ケーキを口に運んだ。 まったく……。 もくもくもく。 ごくん。
彼が感想を言うだろうと待ち構えている間が、私には永遠のように感じられた。
「……ふーん。」
でも、ジュンは一言そう言ったきり、また黙々とケーキを食べ始めた。
な、なんですかそれは。 それで終わりですか? お前はもうちょっと気の利いた事が言えないのですか、このチビ人間!
「美味しかったよ」とか、「嬉しいよ」とか、「翠星石は凄いな」とか……。
かたん。 突然に。 ジュンはスプーンを置いて席を立ち上がった。
「美味かったよ。 ごっそさん。」
え? 机の上のケーキはまだ半分以上残っている。 え? ごちそうさま。 って。
「じゅ、ジュンくぅん。 まだ結構残ってるわよぅ~? 雛ちゃんが食べちゃっても知らないわよぅ~。」
「……うーん。 その、味は悪くなかったんだけどさ。 ちょっと僕には甘すぎるんだよな。 とても全部は食べられないよ。」
ぽとり。
いつもみたいに。 怒り出して、ジュンを引っぱたいて。 笑い話にしてしまえば良かったのに。
ぽとり。 ぽとりぽとりぽとり。 あれ。
「え?」
あれ。 あれ、あれ、あれ。 ちがう。 ちがうの。 そんなつもりじゃ、ない、のに。
「翠……っ……?」
私の瞳からは。 涙の粒が、一つ、また一つと、零れ出していた。
124:SPOON 4/7
06/05/22 06:48:30 s2zaLcVp
「あっ……。」
ジュンの瞳に後悔が浮かぶのが見える。 やめて。 そんなつもりじゃ無いの。
のりも、真紅も、雛苺も。 そんな目で見ないで。
こういう結果だって予想してた。 笑ったり、怒ったり、違う結末を選べるはずだった。
なのに。 今、私の頭は少しも回らなくて。 涙だけが頬を伝っている。
何ですか、この涙。 止まって。 やめて。 これじゃ、同情されたくて泣いてるみたい。
止まって。 止まれですってば。 どうして止まらないの。
ちっとも泣きたくなんて無いのに。 堪えようとすればするほど、一層涙が溢れてくる。
私は今、どれだけ嫌な女に見える事だろう。
私は今、どれだけ幼稚で情けなく見える事だろう。
私は今、どれだけみっともなくて、みじめで、いたたまれなく見える事だろう。
「翠せ……」
ジュンの声。 いや。 慰めの言葉を言おうとしている。 聞きたくない。 聞きたくない。
ジュンのせいじゃないのに。 私が、泣いたせいで。 いや。 嫌。 嫌! 私は逃げるように部屋を飛び出した。
人に見られたって構うものか。 私は当てもなく外を走っていた。
自分で自分が嫌になる。 どんなに奇麗事を並べたところで。 どんなに言い繕ったところで。
私は見返りを期待していたのだ。 絆という言葉に、見返りを要求していたのだ。
真紅とジュンの「絆」に比べて、それは酷くちっぽけなような気がして。 それはそのまま、私自身のちっぽけさで。
いやだ。 また涙がこぼれてきた。 どこまで私は弱いのだろう。
ぽつり。 ぽつぽつ。 雨が降り出した。 こんな気持ちの時に、雨なんて。 嫌い。 みんな嫌い。
泣き疲れて、走り疲れて。 気付けば私は、結菱の庭園にいた。
帰りたくないな……。 このまま雨が、やまなければいいのに。 そんな事を考えていた、その時だった。
「また泣いているの? 翠星石。」
……そんな。 この声。 私が、聞き間違えるはずが、ない。 信じられない気持ちで声の方に振り向くと。
そこには、蒼星石が立っていた。
125:SPOON 5/7
06/05/22 06:49:20 s2zaLcVp
驚きのあまり声が出ない。 自分は夢でも見ているのではないだろうか。
「あじさい……綺麗に咲いたね。 雨が嫌な季節だけれど。 この花が慰めになってくれる。」
慈しむように庭を回る。 雨が彼女を避けるように降る。 不思議な事ばかりだ。
「蒼せ……嘘……どうして……?」
「君が泣いていたから。」
蒼星石は私にみなまで言わせなかった。 暖かい手が肩に回る。 それだけで、理屈はどうでも良くなった。
気付けば、私は蒼星石にもたれ掛かって、無心に泣いていた。
「どうして泣いているの? ジュンくんに酷い事を言われた?」
優しい声。 蒼星石の指が、私の髪を梳き上げる。 それだけで、暖かい気持ちになれた。
何もかも話した。 真紅とジュンを見ていて、胸が苦しかった事も。
ケーキ作りの顛末も。 自分が相手に見返りを求めていた、その心根の小ささも、何もかも。
うん。 うん。 蒼星石がひとつ相槌を打つ度に、心がひとつ軽くなっていった。
全部話し終えて。 後は何を言うでもなく寄り添って。 そんな時間がどれくらい続いただろう。 蒼星石が問い掛けてきた。
「翠星石はどうしたかったの? 真紅を蹴落としたい……なんて考えてた?」
えっ。 ぶんぶんと首を振る。 私がしたかった事? 言われて、初めて気付いた。
ああ、そうだ。 喜んでほしかった。 いつも、喧嘩してばかりのジュンに。 笑ってほしかった。 それだけだった。
「僕は、みんな同じだと思う。 真紅も、ジュンくんも。 自分のしたいようにしているだけだと思う。
相手に笑ってほしいから。 泣いている顔を見たくないから。 喜んでほしいから。 それは、翠星石と何も違わない。」
私は、答えなかった。 ただ黙って、蒼星石の言葉を聞いていた。
「相手に笑ってほしいと思う事を見返りと呼ぶなら。 僕は、見返りを求めてほしい。
あの人が喜んでくれて嬉しい。 あの人が喜んでくれなくて悲しい。 なんて素敵な事だろう。
だって、ほら。 僕は君からお返しを貰おうなんて思った事は無いけれど。 君が笑うと、こんなに嬉しい。」
そう言って。 蒼星石は綺麗な笑顔で笑ってくれた。 本当だ。 それはとっても素敵だった。
126:SPOON 6/7
06/05/22 06:50:10 s2zaLcVp
こっしゅんこっしゅん。 鍋で栗を加熱、加熱。
背中におじじの物問いたげな視線を感じるけれど、あえて無視。
「そう言えば……不思議なんだがね。 さっき、庭の方にあの子の姿が見えたような気がしたよ……ふふ。」
「蒼星石は雨女でしたからねぇ。 そういう事もあるかもですぅー。」
そう。 気が付けば蒼星石はいなくなっていて。 カバンを開ければ、そこにはいつも通りに眠る彼女。
当たり前。 ローザミスティカ無しに動ける筈が無いのだ。 じゃあ、さっきのあれは何?
分からない。 分からなくていい。 そう。 蒼星石は、いつだって私に勇気をくれる。 大事なのはその事実。
私は、覚悟を決めて、もう一勝負する事にしたのだった。
「はぁ……。」
駄目だ。 あちこち探し回ったけど、全然見つからない。 どこ行ったんだよ、まったく。
通り雨も上がって、空はすっかり夕焼けに染まっている。
下校する学生服もちらほら。 顔を隠すように歩く僕。 くそっ。 もう帰るぞ。
……と、もう何回思っただろう。 その都度、あいつの涙がちらついて。 結局、この時間まで帰れなかった。
仕方ない。 とりあえず、一度家に帰ろう。 ひょっとしたら、もう家の方に帰ってるかもしれない。
「遅いですよ! もうお夕飯の時間ですぅー!」
……。 本当に帰ってやがった。 人をこんだけ心配させといて。
そりゃあ、文句が百も二百も思い浮かんだけれど。 何だかホッとしたのも事実だった。
「それはこっちのセリフだっての。 今度からは行先言って出掛けろよな。 足にマメが出来るかと思った。」
「……ごめんなさい、です……。」
ポンと頭を叩いて、おしまい。 空元気出してるってのは、一目見て分かったから。
これでいいよ。 これで、ケーキ騒動は終わり。
と思っていたのだが。 そうではなかった。
時刻にして夜11:00。 桜田家の夜は早い。 姉ちゃんも真紅たちも、今はとっくに夢の中だ。
風呂上りにリビングでくつろいでいた僕の前に、翠星石が現れた。 手に、ケーキの皿を引っ提げて。
127:SPOON 7/7
06/05/22 06:51:00 s2zaLcVp
「翠星石は、ケンカとか嫌いですから。 絆パーンチ!とか、そういうのは無理です……けど。」
たどたどしく喋る翠星石は、いつになくしおらしくて。 僕は茶化す事ができなかった。
そして彼女が差し出したのは、手作りのモンブラン。 示す所は一つ。 これは昼間のリベンジなのだ。
「……き………絆モンブラン、です。 ありがたく噛み締めろ、です……。」
何かを怖がっているような、弱々しい瞳。 まるで出会った頃のようなその姿。
いつまでもそんな顔を見たくなかったからだろうか。 僕は、無意識の内にモンブランに手を伸ばしていた。
「ど……どうですか?」
「………甘ぁ。」
僕に合わせて、甘さ控えめに作ったのだろう。 それでも僕には、やっぱり鬼門の甘さだった。 ……けど。
「……でも悪く、ない。 うん。 ………………………美味いよ。 サンキュ。」
碧のゆらめき、緋のしずく。 彼女の瞳はみるみる潤み、破璃の涙が頬を伝った。 うん。 もう仲直り。 うん。
……れしい、です……。 え? 声が小さくてよく聞き取れない。 顔を近づけると、パタパタと手を振って慌しく彼女が言う。
「で、でも、本当に大丈夫だったですか? 本当は無理してるとか……。」
ったく。 泣き虫。 泣くなよ。 笑えって。 今、僕に出来る事。 膝の上にひょいと翠星石を抱き上げた。
「そんなに心配なら、自分でも食べてみろよ。 ほら、あーん。」
え。 え。 え。 いきなりのできごと。 にびに煌く優しいお誘い。 見つめる私はパンク寸前。
耳はガンガンうるさいし、私が薬缶なら今にも吹き零れてしまいそう。
だ、だって……このスプーンは今、ジュンが使ってて……コレで食べると言う事は……つまり…………。
私が私に押し問答。 頭の中は堂々巡り。 食べますか? 食べませんか? 今なら甘ぁいオマケが付いてくるかもです。
少しの沈黙。 ……おずおず。 はくり。 もくもくもく。 こくん。 モンブランが喉を通り過ぎてゆく。
「な? 美味いだろ?」
こくこくこく。 ほんとは、味なんて、全然分からなくて。 茹で上がったこの顔じゃ、とても彼の方は向けなくて。
あぁもぅまったくこの鈍感。 やられっぱなしじゃ収まらなくて。 彼の指からスプーンを取ると、私もケーキを一掬い。
はい、あーん。 湿り気を帯びた銀の輝き。 その煌きの意味する所に、ようやく彼も気付いたようで。
二人して、耳まで真っ赤になって。 ちょっと顔を見合わせて、すぐそっぽ。 あぁ。 もう確かめるまでもないくらい。
これは絆。
128:名無しさん@お腹いっぱい。
06/05/22 07:22:22 McNyA+3p
アンマァ~
129:名無しさん@お腹いっぱい。
06/05/22 07:39:28 c+tjhDVS
GJ!!
あま~~~い
けど、蒼い子ちょっとセツナス(´・ω・`)
130:名無しさん@お腹いっぱい。
06/05/22 12:53:50 +JnQ4UfB
角砂糖30個くらい混ぜ入れたコーヒー並に甘いですねw
GJ!
131:名無しさん@お腹いっぱい。
06/05/22 13:32:31 IfLvWI7A
「ザ・ワールドですぅ」
「絆絆絆絆絆絆絆絆絆絆絆絆絆絆絆絆絆絆絆絆絆絆絆ァァァァァァ!!!」
「GJSSが台無しなの~」
132:名無しさん@お腹いっぱい。
06/05/22 13:39:27 QSwjpsuT
佳作
133:名無しさん@お腹いっぱい。
06/05/22 16:11:00 IGsY+lUI
最近駄作多いんだよボケ
134:名無しさん@お腹いっぱい。
06/05/22 16:38:07 JucKhJT8
まったくこんなに甘いと糖尿になりそうだぜ!
なにがいいたいかっていうとGJってこと。
135:名無しさん@お腹いっぱい。
06/05/22 17:49:20 0JjolC5n
>>127
…の多様は避けたほうがいい。
なんかキャラが事切れる寸前に見える。
136:名無しさん@お腹いっぱい。
06/05/22 19:43:05 njKgqzup
ちょっと泣いた(ノ∀`)
良作GJです。
137:ケットシー
06/05/23 21:36:58 azsCo3+1
甘いの読んで触発された
ネタが被ってるけど勘弁してちょ
138:ケットシー
06/05/23 21:38:53 azsCo3+1
初めてのなっとー
平日お昼の番組に、健康に関する話題はつきもの。
有り余る時間をテレビ観賞で潰していた翠星石は、ほんの気まぐれだが、その番組で紹介されていた食品に興味を持った。
「納豆ですか。そういえば、食べたことがなかったですぅ」
翠星石の納豆への挑戦が始まった。
「今度、納豆を買ってきてほしいですぅ」
夕食の時、翠星石が唐突に話を切り出した。お昼の番組のことを忘れずに覚えていた。
「翠星石ちゃん、納豆が好きだったのぅ?」
家事全般を担当しているのりが尋ねた。納豆は人を選ぶ食べ物だ。確認しておいた方がいい。
「食べたことがないから食べたいだけです」
「そうなのぅ。それなら、明日買ってきてあげるね」
のりは納豆を明日の食事に出すことを約束した。初めての納豆にどんな反応をするのか楽しみでもあった。
これでこの話題は終わりになると思われたが、そうはならなかった。横で聞いていたジュンが口を挟む。
「やめとけ。絶対後悔するぞ」
「チビは納豆が嫌いですか?」
「ああ、大嫌いだ。あんなのを食えるやつの気が知れないよ」
「そんなに不味いですぅ?」
「あれは味以前の問題。不味さの次元が違う」
そこまで不味いと言われると、逆に食べてみたくなるもの。ひねくれ者の彼女なら尚更だ。
「そんな好き嫌いを言ってるから、ジュンはチビなんですよ。明日は翠星石と一緒に食べるですぅ」
「一人で食ってろ」
逆に納豆を勧められ、ジュンは黙って食事に戻った。
139:ケットシー
06/05/23 21:39:55 azsCo3+1
約束通り、翌日の夕食には納豆が用意されていた。
翠星石の席の前にだけ、スチロールの四角いパックが置いてある。
「これが納豆ですか?」
「そうよぅ。食べ方はわかる? まず蓋を開けて、たれとからしを出して」
翠星石は言われるように封を切り、たれとからし、薄いフィルムを取り出す。
その際、フィルムに付着した納豆が糸を引いた。糸を切ろうと手を振り回してもなかなか切れない。細くなった糸が風に揺れて手や顔に付く。
「すごい粘りですぅ。それに、なんだか臭うですぅ……」
想像してなかった臭いに少し顔を顰める。
「これ、腐ってないですか?」
素直な第一印象なのだが、のりは苦笑するしかなかった。あの臭いは、やはり悪臭に近いだろう。
そ知らぬ顔で食事をしていたジュンが、そら見たことかと口を出す。
「それが納豆だっての。そんなの食えないだろ?」
翠星石は勝ち誇ったようにニヤリと笑う彼を見てカチンときた。こうなったら意地でも食べてやる。
「これくらい平気です。のり、このたれを入れればいいですか?」
「あとは泡立つくらいよくかき混ぜて、ご飯と食べるそうよ」
たれを注ぎ、ひたすら箸でかき回す。炊きたてご飯の上からかけたら、納豆ご飯の完成だ。
「い、いただきますぅ」
茶碗を持ち、初めての納豆を恐る恐る口へ運ぶ。
見た目と臭いは最悪だが、普通に食されている食べ物だ。死ぬことはない。
そう自分に言い聞かせて勇気を出し、糸を引く納豆を口に放り込んだ。
「……あ、意外とおいしいですぅ」
食べてみれば、意外に旨味の多いご馳走だった。自然に箸も進む。
おいしそうに食べるのを見て、真紅と雛苺も食べてみたくなった。
「ヒナも食べたいのぉ」
「のり、私の分はないの?」
「はいはい」
微笑んで返事をしたのりは、冷蔵庫から納豆のパックを二つ持ってきた。用意のいい人だ。
140:ケットシー
06/05/23 21:42:16 azsCo3+1
薔薇乙女達が糸を引きながら納豆を食べるのを、ジュンは信じられないという顔で眺めていた。真紅と雛苺も納豆の味に順応できたのだ。
「お前ら、本当にうまいのか?」
人がせっかくおいしく食べているのだから放っておけばいいのに、気になって仕方がなかった。
「おいしいの」
「ジュンも食べる?」
「僕はいいけど、どんな味なんだ?」
ジュンが墓穴を掘った。あれだけ納豆を悪く言っていたのに、食べたことがなかったのだ。典型的な食わず嫌いである。
翠星石の目が怪しく光る。何かをする前兆だ。
「ちーびーにーんーげーん。もしかして、納豆の味を知らないですか?」
「あ、いや、知ってる。もちろん知ってるさっ」
焦った彼は勢いで嘘をついてしまう。当然、そこを追求される。
「どんな味ですぅ?」
「そんなの知るか!」
「はぁ?」
「いえ、違います。なんというか、おいしくない味です」
逆切れしたりと見苦しい言い逃れもここまで。翠星石が箸を置いて椅子の上に立った。
「そんな嘘が通用するかです。罰として、ジュンにも納豆を食べてもらうですよ」
そう言って、庭師の如雨露を手に持った。ドールズの力は色々と危険すぎる。ジュンは顔を青くした。
「お、おい、何をする気―」
「スィドリーム!」
席を立とうとした瞬間、植物の蔓がぐるぐると体に巻きついて椅子に固定された。
動きを封じた翠星石は如雨露を仕舞い、食べていた納豆ご飯と箸を持って椅子から飛び降りる。
そして、向かうはジュンの所。彼の膝に上った翠星石は、納豆を抓んだ箸を向ける。
「チビ人間、口を開けるですぅ」
ジュンは口を開けようとしない。この状況で抵抗できる彼は、意外と根性があるのかもしれない。
「口を開けないと、鼻から食べさせるですよ」
納豆を挟んだ箸を鼻へと向かわせる。ただでさえ微妙な臭いが、ダイレクトに鼻腔へと侵入する。翠星石は鬼だった。
執拗に鼻先に納豆を持ってこられ、ジュンは耐えかねて口を開く。
「いい加減にしろよ!」
「とくと味わえですぅ!」
怒って口を開けた隙に箸を滑り込ませた。翠星石の作戦勝ちだ。
口の中の納豆をどうしようかと、箸をくわえたままのジュン。
少しして、口がもごもごと動く。そして、ごくんと飲み込んだ。
「……意外とうまいな」
こうして、ジュンの納豆嫌いは克服されたのだった。
この後、翠星石がドキドキしながら箸を使ったのは秘密だ。
おわり
141:ケットシー
06/05/23 21:43:33 azsCo3+1
ケットシーは納豆が好きです。
ご飯と一緒に食べずに、そのまま納豆だけで食べてしまうくらい好きです。
だから何だと言われればそれまでですがw
142:名無しさん@お腹いっぱい。
06/05/23 21:51:32 Zf37GFNR
梅干とネギを刻んでマジェマジェしてもさっぱりしておいしい
>翠星石がドキドキしながら箸を使ったのは秘密だ。
モエスwww
143:名無しさん@お腹いっぱい。
06/05/23 21:55:38 TqGjgKb6
>翠星石がドキドキしながら箸を使ったのは秘密だ。
いやん、あま~いw
144:名無しさん@お腹いっぱい。
06/05/23 21:57:40 TqGjgKb6
そっちが実は本当の目的だったりねw
145:名無しさん@お腹いっぱい。
06/05/23 22:32:53 fkqD8QK5
良い仕事乙
146:名無しさん@お腹いっぱい。
06/05/24 00:42:47 Hq/VgxrG
えっと、薔薇乙女達が女子校生な感じで、百合っちいのってここに投下しても大丈夫?
147:名無しさん@お腹いっぱい。
06/05/24 00:50:24 pMqv9Q7x
>>146
VIPに専門のスレがある
投下するなら向こうの>>1をよく読んでね
【夢の】ローゼンメイデンが普通の女の子だったら 【導くままに】
スレリンク(news4vip板)
148:名無しさん@お腹いっぱい。
06/05/24 01:00:25 Hq/VgxrG
>>147
㌧
行ってみる
149:名無しさん@お腹いっぱい。
06/05/24 20:06:53 J5BS6Q8O
前スレきれいにオワタ
150:名無しさん@お腹いっぱい。
06/05/25 18:00:04 ISFDLYf6
保守
151:名無しさん@お腹いっぱい。
06/05/25 19:33:10 XMMo4z3E
>>299
URLリンク(www.youtube.com)
これとか?www
152:名無しさん@お腹いっぱい。
06/05/25 19:38:35 XMMo4z3E
べ、べつに誤爆なんかじゃないんだからねっ!!
153:名無しさん@お腹いっぱい。
06/05/26 13:40:40 qrGHMOii
>>151-152犯したい
154:名無しさん@お腹いっぱい。
06/05/26 17:42:10 UjkhUjYU
上げますよ
155:名無しさん@お腹いっぱい。
06/05/28 17:25:16 ZuKYdCf/
保守
156:名無しさん@お腹いっぱい。
06/05/28 17:27:18 IRmHYfGB
リダイヤル
157:名無しさん@お腹いっぱい。
06/05/28 22:55:08 0U30zehO
いちいち保守しなくても職人来るから
158:吝嗇 ◆G.VR4wY7XY
06/05/31 03:34:40 BubtvRN7
全11話のお話を投下します
タイトルはICEの曲より頂きました
159:BABY MAYBE(1) Doll
06/05/31 03:37:33 BubtvRN7
僕は桜田ジュン
あの時、僕は引きこもりだった
あの時、僕は「ローゼン・メイデン」という、生命を宿した奇妙な人形と出会った
あの時、僕は何ひとつ気づかなかった
あの時、僕のたったひとつの指輪から、運命が動き出した
あの時・・・・・
160:BABY MAYBE(2) Doll One(前編)
06/05/31 03:39:45 BubtvRN7
!
皆が寝静まった真夜中、いつも通りネットを眺めていた僕は、それが窓に当たる音に気づいた
黒い羽根、僕は窓を開けた、黒い翼、空からやってきた黒い天使が、静かに僕の部屋に入ってくる
ローゼン・メイデン第一ドール水銀燈、真紅の宿敵、ドールの破壊者、そして胴体の一部の無いドール
最初に彼女がこうして部屋に来たのも、やっぱりこんな、とても寒い、月の綺麗な夜だった
彼女はある夜、僕の部屋にやってきた、何の前触れもなく、閉めた窓を抜けて僕の部屋に入ってきた
「・・・何の用だ?」
「アリスになるため・・・真紅をジャンクにするため・・・そのミーディアムを殺しにきたの・・・
偵察は基本でしょぉ?、隙を見せた時、油断をした時・・・あなたたちのママゴト遊びを壊してあげる」
水銀燈は嘲るような笑みを浮かべると、何をするでもなく僕の部屋を漂い、長居することなく飛び去った
彼女はそれから夜になると僕の部屋を訪れ、窓の外や中で黙って僕を眺めてから飛び去るようになった
ある夜、僕は懸賞で当たった温蔵庫から熱いミルクティの缶を出し、窓枠の所に置いておいた
彼女が真紅を壊そうとしてるのも、僕を殺そうとしてるのも、その準備の行動も気に食わなかったが
毎晩のように僕の部屋に来る水銀燈がとても寒そうにしているのは、それとは別の問題だと思った
熱いお茶の缶を窓枠に置いては、彼女が目もくれなかった冷たい缶の中身を自分で飲む日々が続いた
水銀燈が暖かい缶を手に取るのには何日もの時間がかかった、缶を開けるのにはもっと時間がかかった
最初は匂いを嗅ぎ、すぐに中身を捨てていたミルクティに口をつけるまでにはさらに時間がかかった
彼女が窓枠の上で甘いお茶を飲み「ねぇ人間・・・」と話しかけるまでには、余り時間がかからなかった
水銀燈はそれから、真夜中に僕の部屋を訪れ、少しの時間を僕と一緒に過ごす事が多くなった
その時も彼女は、姉妹達から奪い合い、壊し合う熾烈なアリス・ゲームを続けていたが
真夜中を二人で過ごす時、彼女は誰も傷つけなかった、アリス・ゲームを忘れるのが暗黙の了解だった
いつか、別室で寝かせていた真紅が、くんくんの人形を取りに来たことがあった、半分寝ぼけている
見られちゃいけない気がした、とっさにに水銀燈を掴み、デスクの下、僕の膝の間に押し込め、隠した
水銀燈の天敵、最も強力なローザ・ミスティカを宿したアリス・ゲームの最大の障害が、今ここに居る
真紅は寝ぼけ眼のまま、とても無防備な姿で僕の部屋に少し居たが、ふらつく足のまま部屋を出た
水銀燈は僕の腿の間で、ただ僕に頬を当てながら目を閉じていた、水銀燈を疑った僕が恥ずかしかった
僕たち二人は、ただ、静かに過ごすのが好きだった、時折、二人の濃密な時間を過ごすのが好きだった
水銀燈の胴体の無い体は、とても美しく、とても敏感で、とても情熱的で、そしてとても軽かった
涙が出るほど、軽かった
彼女がぽつぽつと話してくれる自分のミーディアム、もう永くは生きられないミーディアム
歌が好きなミーディアム・・・水銀燈は、彼女の歌がとても好きだと言っていた
僕はその「メグ」のように歌が唄えない、替わりに、水銀燈が来た時はいつもラジオをつけてあげた
昭和の歌謡が好きだった、時折お気に入りの歌が流れると、体を揺らしながら静かに唄ってくれた
「うまくないけどね」と苦笑いする水銀燈に「そんなことないよ」と言った、そう・・・そんなことない
恋は 私の恋は 空を染めて燃えたよ
夜明けのコーヒー ふたりで飲もうと あの人が云った 恋の季節よ
161:BABY MAYBE (3)Doll One(後編)
06/05/31 03:42:53 BubtvRN7
「ねぇ・・・人間・・・・この部屋には、カレンダー・・・・無い・・・・・・の?」
カレンダーなら、デスクの端に腰掛ける水銀燈のすぐ隣の壁にある
水銀燈が嫌がるので、普段は消したままの部屋の灯りを薄く点けてあげた、カレンダーを指差す
「そう・・・あるの・・・あるの・・・・・ないの・・・・・あるの・・・・・ないの・・・こないの・・・こないの・・・」
水銀燈はかすかな声で呟きながらカレンダーを見つめている、空間の腹を撫で、数字を追いながら
指を折って日にちを数えている「・・・すこし・・・おくれてるだけ・・・・よ、ね・・・・?」
その時、僕は何も気づかなかった、それでも彼女の様子から、何かいつもと違う雰囲気を感じた
「水銀燈・・・どうした?」
「うん・・・何でもない・・・ねぇ・・・人間・・知ってる・・?・・私たちのお父さまが言ってたこと
私たちローゼン・メイデンは・・・命をもった人形・・・ヒトと同じように動き、考え、感じる事が出来る
ヒトと同じように・・・感じる事が出来るの・・・・人とだって、愛を交わす事が出来るの・・・・・」
「知ってる・・・よ」
それが愛ならば・・・僕と水銀燈の、あまりにも身勝手であまりにも不毛な二人の背徳が、愛と呼べるなら
「でもね、人とどんなに愛しあっても、人の子を宿す事は出来ないって・・・・それがドールの宿命だって」
「・・・・・・そうか」
Et Alors・・・それがどうかしたか?ただその一言が言える強さが欲しかった、あの頃の僕、無力な僕
「そうなのよ・・・・そう・・・言ってたの・・・・そう言ってた・・・・その・・・はずなのよ・・・・・
水銀燈は自分のドレスの腹、空っぽの胴体を撫で、また「ないの・・・あるの・・・ないの・・・こないの・・・」
「水銀燈、何か悩みがあるのか?話して欲しい・・・僕・・・・力に・・・・なるから・・・僕、何でもするよ!」
水銀燈はそれを聞くと、ほんの一瞬瞳を輝かせ、すぐに首を振り、目を伏せると、早口で僕に言った
「ん・・・ん~ん!私は何とも無いわぁ!ダメよ私となんて!もしなんともなくなくなくなかったとしても
ジュンには絶対、迷惑かけないからぁ!わたしは一人で・・・だから、もう、わたしのことは・・・・うううっ」
水銀燈の涙の意味、なぜ僕はその時わからなかったのか、なぜ僕はわからないふりをしたんだろうか
「ねぇジュン!何でわたしなんかに優しくしたの?何でわたしをこんな気持ちにさせたの?・・・何でよぉ・・・
何でわたしと・・・出会ったの?・・・何でわたしを抱いたの?・・・何でダメっていった日に・・・中に・・・」
水銀燈は両手で顔を覆い僕に背を向けると、泣き濡れた紫の瞳を一瞬こちらに向け、そのまま飛び去った
「さよならジュン、わたしはどこか遠くの町で、あなたによく似た子をあやしながら・・・生きていきます」
水銀燈は飛んで行ってしまった、いつもは黒い翼を力強く羽ばたかせ、凛とした姿で飛び去っていくが
その日の彼女はなぜか、ひどくぎこちない姿で飛び去っていた
まるで自分の体を、何か大切な物を、一人では抱えきれないほど重い重い物を胸に抱いて飛ぶかのように
異変が始まった
162:BABY MAYBE (4)Doll Five
06/05/31 03:44:51 BubtvRN7
水銀燈との奇妙な夜が明けた翌日、僕は真紅と二人で、部屋に居た
別にお互い部屋に居るのが好きだし、二人きりだからどうだというわけでもないが
その日の真紅は、なぜかいつもより無表情な、どうにも感情の読み取れない顔をしていた
「ジュン、ここに座りなさい」
「もう座ってるって」
「いいから!キチンと背筋を正して!ここにちゃんと鎮座しなさい!」
真紅はいつもよりも機嫌が悪そうだったので、大人しく彼女の前の床に正座した
「いいこと?男というものは、何かあった時、責任を取らなくてはいけません」
真紅は時々、僕にこんな教訓を垂れる、「下僕の教育は主人の努め」と言って、僕に説教をくれやがる
「うん」
僕は逆らっても仕方が無いと思い、さっさと終わらせようとして肯定の返事をした
「わかってるの?ジュン?男は!男なら責任を取りなさいって言ってるのだわ!」
「そうだね」
真紅は僕の同意の返事の何かが気に障ったのか、時々見せるヒステリックな声を上げた」
「男はぁ!責任を取らなきゃぁ!っダメなのよ!カイショ無しのアンタでもそれくらい出来るでしょ?」
「大変だね、それは」
真紅はもう手のつけられない有様で、拳で床を殴り、名前通りの紅い涙を流しながらわめき立てる
「大変って言った?ねぇ、ジュン?大変って言ったの?大変なのは!ツラいのは!
あなただけじゃないのよ!わたしだってねぇ、元は自分の身の不始末と思い、一生の不作と諦めて・・・・」
血涙を流して床を殴り続ける様に僕の腰が引けたのを感じたらしい真紅は、一転して猫なで声を出した
「ごめんなさいジュン、どうかしてたわ、わたしの生涯のマスターにこんなひどいことを言うなんて
・・・どうしてもこの時期は不安定になるの、ブルーになるの・・・・・わかるでしょ?・・・・・
ジュン、覚えてる?、昔あなたに言ったこと・・・あなたの指はまるで美しい旋律を奏でるようだって・・・
これなら・・・今にその魔法の指で、王女のウエディング・ドレスだって作れるって・・・・・・」
言ったっけ?聞いた気もするし聞いてない気もする、聞いたけど内容が少し異なるような気もする
「だから・・・急がないと・・・・ジュン・・・でも・・・おなかの所は少しゆったりと作らないと・・・ね
その姿で写真を撮って、いつか見せるの、これはあなたを授かった頃の私、とっても幸せだった私って・・・」
僕は、横座りのまま腹に手を添えてうっとりとする真紅を置いて、部屋から逃げ出した
「・・・もちろん・・・夜のアナタも、魔法の指だったわ・・・」
猫嫌いの真紅の猫なで声
血涙絶叫より怖い
163:BABY MAYBE (5)Doll Six
06/05/31 03:46:35 BubtvRN7
雛苺はいつもと変わらないように見えた
ヒナは上機嫌な時、よく子供がそうするように、自分で作詞作曲した歌を大きな声で唄う
その時も大きな声で自分の歌を唄っていた、子供はそういうものだ
「♪ヒ~ナのおなか、ぽんぽ~ん!♪ヒ~ナのおなか、ぱんぱ~ん!
♪ヒ~ナのお~なかで、コビトさんがどんど~ん!」
雛苺は大きな声で自分の歌を唄っていた、子供はそういうものだと思っていた
164:BABY MAYBE (6)Doll Four
06/05/31 03:48:14 BubtvRN7
何となく姉妹達の異変を感じていた僕から見ても、蒼星石は最初、平静を保っているように見えた
その日も、居間の窓の前に座り、庭を見つめながらぼんやりとしてた蒼星石の横に何気なく腰を下ろした
「ジュン君、この庭に・・・・木の苗を植えてもいいかい?・・・木を・・・桐の木を植えたいんだ・・・」
庭師の能力を持つ蒼星石、草木を愛する蒼星石、やっとまともな会話を交わせる奴が居た事が嬉しかった
「キリ・・・?いいよ、蒼星石ならきっと、大切に世話してくれるだろ、いつか大きい木になるよ」
蒼星石は僕の言葉に過剰反応したように震えた、カラダの方ももう少し過剰に反応して欲しかったのだが
「大切に育てて・・・いつかは大きい木に・・・うぅ・・・その頃には、その桐で・・・
立派な箪笥をひと棹作り、持たせてあげられたらいいねぇ・・・・うううぅ~・・・・・」
真紅や水銀燈よりさらにわかわからん状態になった蒼星石、僕は腰を浮かせた、危険だ、非常に危険だ
「ジュン君・・・ううっ・・・つまらないものだねぇ、手塩にかけて、蝶よ花よと育てても・・・・いつかは
どっかのウマの骨とやってきて・・・・『今まで長らくお世話になりました』なんて・・・つまらないねぇ・・・」
「蒼星石・・・大丈夫か?、お前本当に大丈夫か?せめてお前だけは大丈夫でいてくれよ~」
「ご、ごめんね、ジュン君、めでたい門出にしめっぽくなっちゃって、そうだ、桐はやめて栗を植えよう
栗の木を、大きい実がなるように、甘ぁい実がなるように・・・決して・・・戦争なんかでなくさないように
・・・・かなしいねぇ・・・南方で行方知れずになった息子が・・・せっかく帰ってきたのに・・・・うぅぅ~」
動物としての直感が僕に逃げろと言っている、尻を浮かせたまま後ずさりした、僕はエビになって逃げた
165:BABY MAYBE (7)Doll Two
06/05/31 03:50:22 BubtvRN7
金糸雀は特に変わった様子は見られなかった、暗い廊下で自分の腹に向け呟いていた謎の呪文を除けば
「ふふふ、ローゼンメイデン一の頭脳は受け継がれるかしら、策士の血は一子相伝、ふははは!」
こいつ、わけわかんねぇ
人形師ローゼンは生きた人形を七つ作って、わけわかんねぇ奴らを並べて何がしたかったんだろうか
166:BABY MAYBE (8)Doll Seven
06/05/31 03:51:59 BubtvRN7
薔薇水晶は、僕の部屋の入り口から半分だけ姿を現し、半分だけの顔で僕の部屋をのぞいていた
半分だけでは、眼帯で覆われた瞳では何も見えないのに気づいたらしく、彼女は全身を戸口に晒した
ただ僕の目を見つめ、不敵な笑みを浮かべながら、聞こえるか聞こえないかの声で僕に囁く
「疑ってはいけない、それは偽りのないもの・・・・・私から生まれ出ずるモノ・・・それは間違いなくあなたから
生を享ける者・・・疑ってはいけない・・・・それは偽りのないもの・・・・・それは決して間違いのないもの」
囁き声は次第に大きく、僕を煙に巻くかのような、暗示にかけるかのような、低く凄みのある声に変わる
「たとえ槐に似ていても、ウサギに瓜二つでも・・・・疑ってはいけない・・・・それは偽りのないもの・・・・
血液型が怪しくても、黒肌アフロでも、体毛のない緑色の体でも・・・それはあなたから生まれ出ずるもの」
「お、おい待て!」
薔薇水晶は部屋の入り口からシュっと消えた
彼女の言った事が何ひとつ理解出来なかった、理解しちゃいけないような気がした。それにしてもお前・・・
167:BABY MAYBE (9)Doll Three
06/05/31 03:54:07 BubtvRN7
馬鹿な奴ってのは困ったもんで、普段が馬鹿だからホントに馬鹿になった時にわからない
翠星石は歌い踊っていた、僕ら人間社会では廊下で一人歌い踊ってる奴は、一般的に言えば・・・アレだ
「るんたった♪出来ちゃったぁ、出来ちゃったぁ、最初はちょ~っと出遅れた~と~思ったけ~れど
さ~すがわたしは翠星石♪一発逆転大当たり♪既成事実っ♪こ~れでわたしも勝ち組~ですぅ~♪」
僕の部屋にくるくる回りながら入ってくる彼女を見た時、正直な話、馬鹿に磨きがかかったか?と思った
刺激しないように、目を合わせないようにおそるおそる聞いてみた「馬鹿に磨きがかかったか?」
「もゥ!チビ人間ったら舞い上がっちゃって!先走り過ぎですぅ!こっちが恥ずかしくなるですぅ!
チビ人間は・・・どっちがいいです?公立か・・・私立か・・・やっぱりお受験とかさせた方が・・・」
この馬鹿、禁句を言いやがったな、絞首刑にしてやりたかったがどうやら相手は心神耗弱状態のようだ
「悪かったな、僕は公立だよ、しかも行ってねぇよ!」
「だ・か・らぁ~、チビパパ・・・じゃなくチビ人間みたいにダメ人間にならないようにぃ~
翠星石もちゃんと将来を考えてあげてるですぅ~、わたしたちの老後だってみてもらわなきゃ~」
ついに馬鹿が孵化したか、馬鹿はいよいよ常人には理解できない妄想世界にご出陣の様子
「でもぉ~、チビ人間はこれから忙しくなるです~お風呂にいれてあげるのはチビ人間の仕事です~
♪おむつを替えるのもぉミルクをあげるのもぉ、炊事洗濯なぁ~んでも、チビ人間がしてくれるです~
でもチビ人間はきっとキミはただ笑っていてくれればいいんだよって言ってくれるに違いないですぅ~」
翠星石は、きっと男なら例外無く不快を催すであろう内容の歌を、耳障りな高音でうたい始めた
「♪真赤なバラと白いパンジー 子犬のよこには あなた~、あなたぁ~~ あなたがいてほしい~」
音痴
どんな花よりも気高く、どんな宝石よりも輝く、一点の穢れもない究極の馬鹿を置いて僕は部屋を出た
遠くで馬鹿の雄叫びが聞こえた
「ヒッヒッフー!、ヒッヒッフー!いきんで、いきんで、ヒッヒッフー!」
困ったもんだ
168:BABY MAYBE (10)Doll Seven By・・・
06/05/31 03:57:05 BubtvRN7
「婆さんや、水銀燈婆さんや、わしのズタ袋を知らんかな?アレは大事なんじゃ、指輪入っとるんじゃ」
「ジュン爺さん、あたしゃ薔薇水晶でございますよぉ~、今じゃすっかり枝垂れ薔薇ですがねぇ
ヒャッヒャッヒャッヒャッ・・・真紅さんや、入れ歯そろそろ出してもいいんじゃないかい」
「ふひひんほう・・・カポッ水銀燈婆ァは、メグ婆さんと一緒にみのさん観にいっちゃったんですわ」
「しょうがないでふぅ、メグ婆さんは白寿まで生きられないって医者に言われてるでふぅ」
「アノ婆ァとっくに過ぎとるわ、フガフガ、この庭師の鋏も今じゃ鼻毛切りにしか使うておらんて」
「ああああのカッカカッカラスババァ人形、いいいつまであああんなゴッゴッゴッゴスロリ着るつもりかしらぁ」
「ヒ、ヒ、ヒナもみのに嫁のグチでも垂れたいの・・・の・・・なの~!・・・っ・・・ゲホゲホ!」
「で、え~と・・・お嬢ちゃんたちは・・・」
「もぅ!大爺ちゃん!ひ孫の名前を忘れるなんて!しっかりしなきゃ、私達のマスターさん!
わたしはローゼン・メイデン第463ドールTD05Hで~す!夢はもちろん、アリス!」
「私はローゼン・メイデン第1933ドールОбъект、アリスは世界の同志に赤い革命を・・・」
僕は桜田ジュン、今では2401個の指輪を持つミーディアム、オマエラ7人も生むなや
169:BABY MAYBE (11)Doll Zero ALICE
06/05/31 04:01:24 BubtvRN7
ぼくは、さくらだジュン、しょうがっこう2ねんせい
じつは、ぼくにはにんぎょうのおともだちがいるんだ、ないしょだよ
ありすっていうこなんだ、とってもきれいで、かしこくて、やさしくて、きもちいいんだ
でも、ありすちゃんといっしょにあそぶと、なんだかおちんちんがいたくなっちゃうんだ
そんなとき、ぼくはありすちゃんといっしょに、おちんちんあそびをするんだよ
ぼくのおちんちんと、ありすちゃんのおんなのこのおちんちんでいろんなことをしてあそぶと
いろんなことがおきて、とてもたのしいんだ、とてもおちんちんがきもちいいんだ、ないしょだよ
ぼくとありすちゃんで、おにんぎょうあそびしたりおちんちんあそびしたりしたりして、たのしかったよ
でも、あるひありすちゃんはいなくなっちゃった、ありすちゃんはさいごにぼくにいった
「ローゼン・メイデンは7人の子を産む、いつかきっと私の娘達が、あなたの前に現れる」
ありすちゃん、またあいたいな、ありすちゃんのむすめにもあいたいな、おちんちんあそびがしたいな
「ひー爺ちゃん、どーしたの?ぼやっとしちゃって!」
「あ、ああ、何でもないよ、ちょっと昔のことを思い出してただけで・・・え~と?」
「第1984ドール、ウォーカーギャリアよ」「第1995ドール、エステバリスです」
「ん、そーだ君ら仏間行っといで、アリス婆ちゃんにお供えしたうにゅー、二人で食べちゃいなさい」
「「わ~~~い!」」
「婆ちゃん達にはないしょじゃぞ?真紅婆さんに知れたら白髪チョップじゃ」
「「ハ~~~イ!」」
ありすちゃん
きみにはもうあえないけど、きみのようなおにんぎょうがたくさんいて、ぼくはしあわせだよ
ほんとうに、しあわせだったよ
(完)
170:吝嗇 ◆G.VR4wY7XY
06/05/31 04:03:40 BubtvRN7
あとがき
地上の王として君臨していた恐竜は、新たに現れた小型哺乳類にあっという間に絶滅させられました
隕石、天変地異、説は様々ですが、それはほんのきっかけで実際は生殖能力の差で滅んだんでしょう
最近、リアルの女に萌える事が少し減りました、末期の恐竜も同様の悩みを抱えていたんでしょうか
人間がしあわせだった統治の時を終え、何者かに、あるいはドールにその霊長の座を委譲するか否かは
ジュンのような、ドールや二次、ょぅι゛ょに萌える奴らのリビドーにかかっているのかもしれません
ではまた
吝嗇
171:こがね
06/05/31 04:07:31 NiNpxZmv
じゃあ続いて投下↓
172:引き籠もれ
06/05/31 04:10:18 NiNpxZmv
雛苺 「あ~ん真紅ぅ!! 翠星石がヒナの絵に落書きしたの~~!!」
翠星石「落書きとは失礼です! ヘタクソな絵をちったぁマシにしてやったですのに」
真紅 「どっちもどっちだわ」
ジュン「あ~うるさい!!! 遊ぶなら下でやれよなチビ共!」
雛苺 「うりゅ……怒られたぁ」
翠星石「チビ人間は細かい事でいちいちウルサイですぅ。部屋の一つや二つ黙って貸すがいいです」
ジュン「ここは僕の部屋だ。お前らの居るべき場所は下」
翠星石「真紅ぅ~、学校サボリまくりのひきこもりが何か偉そうですぅ…」
ジュン「なっ……にぃ!? もういっぺんいってみろこの性悪人形!!」
翠星石「ジュンこそ、部屋で引きこもってないで、学生が居るべき場所に、学校行ったらどうですかぁ?」
ジュン「ぼ…僕には必要ないんだよ。わかったらさっさと部屋から出てけよ!」
翠星石「べ~~ですっ! さっさと学校いっちまって、部屋を翠星石に明け渡すがいいですぅ」
雛苺 「翠星石、ジュンが学校に行って欲しいのぉ?」
翠星石「あたりめーですぅ。口うるさいのが居なくなれば、きっと清々するですぅ」
雛苺 「ヒナはやだなぁ……ジュンが学校行っちゃったら、ジュンと遊ぶ時間無くなっちゃうもん…」
翠星石「ば、バカ言うなですぅ。たかが学校くらいで、そんな……」
真紅 「そうね、雛苺の言うとおりになるかも知れないわね」
翠星石「……ぇ」
真紅 「日本の学生というのは忙しいらしいわ。学校で勉強して、家でも勉強して、休む暇も無いって話だけど…」
真紅 「私達ドールを構う暇なんて、当然無くなるでしょうね」
雛苺 「ヒナそんなのやだあぁ~! 翠星石も、やだよねぇ?」
翠星石「え…す、翠星石は…………翠星石は…」
173:名無しさん@お腹いっぱい。
06/05/31 04:12:05 NiNpxZmv
雛苺 「ジュン~~! 学校なんか行っちゃやだああぁ~~~!!」
ジュン「うわっ!? お前ら、まだいたのか?」
真紅 「あらジュン、机に教科書なんか広げてお勉強? まだ学校へ多少の未練はあったようね」
翠星石「―っ!?」
ジュン「ち、違う! これはその……ただの暇潰しだ」
翠星石「…学校、行っちゃうですか?」
ジュン「行かないっていってるだろ」
翠星石「じゃあ、じゃあっ……こんなもの、いらないですぅ!!!」
ジュン「な―っ!? な、何捨ててるんだよバカ人形!!」
翠星石「学校行かないなら、こんなもの必要無いはずですぅ!」
翠星石「お、お前は、いつもみたいに…この部屋にずっと、ずっと居た方が………お似合いですぅ」
ジュン「な、何だよそれ…」
真紅 「……ふふ」
雛苺 「やっぱり翠星石もジュンと一緒がいいんだ―!」
翠星石「ななな何いってやがるですかこのバカチビ~~!!」
翠星石「す、翠星石は別に……お、おちょくる相手が居ないとサビし…じゃなくて! …張り合いが無いだけで……」
ジュン「……お前ら」
真紅 「居場所があるのは良いことだわ」
ジュン「……」
真紅 「いつでも迎えてくれる人がいるのだから、焦る事はないわ。一歩ずつ進んでいきなさいな」
ジュン「…そうだな」
一歩ずつ、ゆっくりいけばいい。
皆が迎えてくれる、この部屋から…。
ジュン「一歩ずつ、ゆっくり……よーし、まずは…」
ジュン「勉強は明日にして、今日は遊ぶぜ――っ!!」
桜田ジュン 欠席
174:名無しさん@お腹いっぱい。
06/05/31 09:56:54 xuwC6DBC
>>172
(・∀・)イイ!!
タイトルワロス
175:名無しさん@お腹いっぱい。
06/05/31 12:27:06 PpCg/GjQ
>>172 は
わざわざ誰かが書いた後を見計らって
投下してるのか?
176:名無しさん@お腹いっぱい。
06/05/31 13:44:38 m0W7CFgd
>>170
「俺たちは大変な思い違いをしていた・・・。ローゼンの真の目的。
それは人類を駆逐し、地球を人形だけの星にすることだったんだよ!!」
あなたの銀ちゃんへの愛は伝わりました。
177:名無しさん@お腹いっぱい。
06/05/31 18:12:48 BUVRrmqJ
な、なんだってー!
178:名無しさん@お腹いっぱい。
06/05/31 18:51:04 zLsZsTAM
壮大な作戦ですね
179:名無しさん@お腹いっぱい。
06/05/31 20:13:24 KROHz3GR
>>170問題は人形の子供にオトコノコがいたのかどうかだ。
180:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/01 01:08:02 8ZiWJGcB
_,,:-ー''" ̄ ̄ ̄ ̄`ヽ、
,r'" `ヽ.
/ ::. ヽ
. / :: ヽ
.| :: |
__,,__,|__,,____,,____,,____,,___,,____,,____,,____,,___,|____,,___,
====================================/
.| ヾミ,l _;;-==ェ;、 _;;-==ェ;、 ヒ-彡|
〉"l,_l||;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;)=f';;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;||゙レr-{
| ヽ"::ヾ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;i, iヾ;;;;;;;;;;;;;;;;;;/ r';' } ニカッ
. ゙N l ::.ヾ====イ;:' l 、====/ ,l,フ ノ
. |_i"ヽ;:...:::/ ゙'''=-='''´`ヽ. /i l"
.| :゙l.''(<T''T''T''T''T'T>)゛|'",il"|
.{ ::| 、 \工工工工/ , il |
/l :|. ゙l;:ヽ========ノ ,i' ,l' ト、
/ .| ゝ、゙l;: ,,/;;,ノ | \
'" | `'ー--─'" ,| \_
181:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/01 02:43:51 vxa/X/VW
>>170の凄まじいカオスと図ったように連投した>>172-173に吹いた
ひ孫の名前ににウォーカーギャリアとかアリエナスwww
182:うた
06/06/01 04:38:41 D+gOn6ij
ここに特別につくってあるの貼るよ。<a href="URLリンク(info.from.jp)薔薇乙女達のお屋敷</a>って名前で一時期結構楽しんだよ。
ちなみに、蒼星石の会話が結構萌えたかな。携帯の人はパケ死注意。
183:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/01 15:46:03 Z3nUU1gV
なにこのマルチ
184:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/01 19:13:10 CcPtRMP9
URLリンク(rozen.my.land.to)
趣旨はこんなの
暇ならどうぞ
185:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/01 19:35:09 L466ZcIg
>吝嗇 ◆G.VR4wY7XY
せめて「。」くらいつけろ
186:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/01 20:57:00 hOBNMxZO
俺は蒼の子とオチソチソアソビが出来れば滅んでも悔いなしw
187:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/01 21:34:15 k2jpaNFj
>>170
恐竜の絶滅と萌えを括るとは
やるなーにーちゃんw
188:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/01 23:14:40 Z3nUU1gV
>>185
吝嗇はそういったアドバイスや指摘はことごとくスルーするタイプっぽいから、言うだけ無駄。
気に入らないならあぼんすればいい。
189:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/01 23:49:38 L466ZcIg
>>188
嫌いじゃないがずっと前から見にくいと思っていてな。
190:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/01 23:53:41 k2jpaNFj
>>185
>>188
つけろ、とか
言うだけ無駄、気に入らないなら~、とか
何様だよあんたらw
191:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/02 00:01:49 i6aC60SF
>>185を見て「。」が無い事に初めてきずいた……orz
192:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/02 00:57:13 zrxvfZVy
>>190
いや、何様とかでなくてさ。
エロパロでも投下した後に「。」つけろっていってたヤツがいたから。
また変な論争呼ぶのも嫌だし。
>>191
きずいた、じゃないことには気付いてないのか?
193:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/02 02:20:40 hdF4/yHu
>>1を読むんだ。
194:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/02 13:01:59 i6aC60SF
>>192ごめん(´・ω・`)
195:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/02 19:44:39 m2+UtKT7
>>166
薔薇水晶…なんて恐ろしい子。
「本気のしるし」の浮世さんみたいだw
「ラジオ深夜便」が聞こえてくる、演歌の薫り漂う銀様にGJ!
196:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/02 20:53:17 bvGEJiwN
「。」くらいつけろって思うよ。
小学生の作文ばかりなんだしさ。
197:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/02 22:10:16 nRn8i3d3
まったく気にならなかった俺は小学生以下ですかそうですか
198:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/02 22:21:22 GlUE/4yV
気にも止めない俺は幼稚園児でいいや
199:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/02 23:39:57 i6aC60SF
きずいただと思った私は赤ちゃんでいいや(^_^;)
200:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/03 00:56:27 M0WJNg8H
はい雑談ストップ。
大人しく次の投下を待とうぜ。
201:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/03 12:42:51 x2c3x+fx
そもそも批判するなってのが無理だと思うんだが。
不特定多数の人間が見てる以上は尚更。
202:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/03 13:34:10 gZYy8Ocu
それがこのスレのルールだろ?
ルールを守るのは当然だと思うが。
203:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/03 16:56:28 RLPPzwCz
批判してもたいして技術向上に役立たない所か、モチュベーションまで下がる。
他のSS書きへの牽制にもなって投下数が減る。これが一番痛い
つまらない作品にはシカトで充分だと思うよ。
204:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/03 23:12:23 x2c3x+fx
>>202
俺の言ってる言葉もう少し理解しろよ。頭悪いやつだな。
205:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/03 23:23:12 gZYy8Ocu
なんでおまえの言葉なんて理解せにゃならんのだ?
>>1を読んでROMってろよ。
206:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/03 23:51:06 Yu55eo3u
どうでもイイヨ
207:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/04 00:53:48 VcpLuf3K
つまらない議論を読む為に覗いてる訳ではない
>>1を読んで欲しいね
208:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/04 03:50:37 C7o/QZik
あんたらの意見を聞くところでもない。
職人は黙って書けばいい。
209:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/04 07:21:46 bkIxgrk1
難燃性素材にアスベストを織り込んだ特殊繊維製のオムツに船舶用高粘度B重油を滴り落ちるほど
滲み込ませて、ドレスをビリビリに引き裂いて素っ裸にしたクソ雛苺に装着。
燃焼途中で脱落せぬよう鋼鉄製の超細型コイルにてしっかりと固定しガスバーナーで点火。
JR渋谷駅前にて拘禁を解き明治通りを走らせる。
オムツから不気味なオレンジ色の炎をメラメラ燃え上がらせ、激しい黒煙を振りまきながら短い足で
全力疾走するクソ雛苺。
「ああああ熱いのおおおおおおおおおお~」と白目を剥いて叫びながら、
「雛、なんにも悪いことしてないの~」
と、完全に誤った自己認識に基く主張を行なって恥じることのないクソ雛苺の醜悪な姿。
ゲラゲラ哂いながら携帯を向ける女子高生。クソ雛苺に向い指を指して子供を諭す若い母親。
空缶やペットボトルを投げつけるDQN中学生。更には「売国人形」を轢き潰そうと迫る街宣車。
尻に火の点いたクソ雛苺、表参道方面へ向かって走る、走る、走る。
なるほど弱いだけのことはある。逃げ足だけは天下無敵だ。
自らを励まそうとしてか或いはオムツの燃える熱さに耐えようとしてか、無意識に
「あいとっ、あいとっ」と泣きながら自らに掛け声をかけるクソ雛苺の姿は実に陳腐だ。
ところでクソ雛苺をはじめドールの体組織は堅固とは言い難い。
それ故オムツを装着されていた臀部付近が竹下通りに差し掛かった折に崩壊してしまう。
高熱と高速運動の負荷に耐えられなかったのだ。
脚を失い、松明(たいまつ)の如く燃えるオムツを回転させながらクレープ屋の前を転げまわる
クソ雛苺。
それでも一生懸命「あいとっ、あいとっ」
修学旅行の中学生に蹴飛ばされても「あいとっ、あいとっ」
佐川急便に轢き潰され、ぺしゃんこにされても「あいとっ、あいとっ」
雛ちゃんほんとに強情だねえ。
だから苛められるんだよ。
210:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/04 07:47:04 VPjreG6l
なんだ。向こうの批判厨がこっちに流れてきたのか?
211:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/04 08:56:45 1i6eVOzj
人に歴史あり
アルバムの中にはその人の去来が詰まってる、今となっては恥ずかしくも温かい、人の歴史
柴崎老人のアルバムでは安田講堂のバリケードで笑う赤ヘルメット姿の元治が笑ってる
槐のアルバムでは坊主頭に瓶底眼鏡の槐がボードレールを小脇に抱えてソルボンヌを歩いてる
そして、ラプラスの魔
幾多の時を跨いで生きるラプラスの分厚いアルバムには、白人の大男と写る白崎が居た
その後ろには、プールで濡れた白い水着もはちきれんばかりの豊満な美女達が並んでる
「あの頃は僕も若かったですから、新しい雑誌を興すのに燃えてたんですよ」
白崎と白人大男は、それまでの雑誌の常識を打ち破る新しい雑誌を作るべく青春を費やした
二人の助平男は絶世の美女を集め、世界の助平男のための雑誌を世に送り出す
その後白崎は病に倒れ世を去り、運命の悪戯でラプラスの魔としての命を与えられる事となる
白人の大男は若くして散った助平な雑誌編集者、白崎の墓の前に一冊の創刊誌を供えた
「お前は生きる、たとえお前の命は消えても、お前のエロはわたしの雑誌の中で永遠に生きる」
その白人の大男の名はヒュー・ヘフナー
雑誌「プレイボーイ」の創始者にして、稀代のスケベ男
今週も週刊プレイボーイをめくる白崎の顔は、寂しそうで、どこか照れ臭そうに見える
212:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/04 09:40:20 5Lr/YZ2M
何やってんだよ、ラプラスwwww
213:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/04 19:36:54 PNkMhHrk
それでは投下させていただきます。
相変わらず、おいらはトロイメントしか見てないので、
1期で一樹とじじーに起きた物語なんぞ知る由もなし。
なので、設定に間違いがあってもご愛嬌ってことでひとつ…
調べてから書きたかったけれど、それもこれもレンタル屋のせいなのさww
214:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/04 19:38:03 PNkMhHrk
その年の冬は訪れが早く、晩秋には雪が降り出した。
大地が霜に覆われる季節の訪れとともに、元治は体を壊し入院した。
老いは誰にも止められない。
そんな元治を心配そうに見舞う翠星石。
「おじじ、大丈夫ですか、どこか痛いですか?何かして欲しい事はないですか?」
元治とマツは、そんな翠星石の気遣いに感謝していた。
「大げさな事じゃないから、そんなに心配しないでおくれ」
老いぼれた夫婦を気にかけてくれるのは、世界で彼女だけになってしまった。
いや、もう一人彼女の妹がいるのだが、どこに行ってしまったのかさっぱり音沙汰がない。
夫婦にとっては、その安否だけが一番の気がかりになっていた。
お見舞いに来た翠星石に、それとなく尋ねた蒼星石の行方。
「きっともうすぐ帰って来るです…だからおじじは元気になって待ってるですよ」
そう言って彼女は寂しそうに困惑するだけだった。
「せめてもう一度、一樹に会いたいものだ」
元治はそう、誰に語るでもなく呟いた。
翠星石の気持は複雑だった。
いま、この瞬間に蒼星石に会わせてあげられたら、どんなに二人は喜ぶだろう。
しかし、誰よりも蒼星石に会いたいと願っていたのは彼女だったかも知れない。
彼等を喜ばせたい一心から、翠星石は悲しみを胸に押し込めて、ジュンに一つの計画を提案し、協力を求めた。
「寒い季節に心温まる話を持ってゆくのです。そうすればきっと体だって良くなるです」
「お前、僕に蒼星石の名前で手紙を書けって言うのかよ…」
「だーいじょーぶですぅ、妹の癖は姉である翠星石が一番良く知ってるですから絶対ばれねーですよ。
ジュンは大船に乗った気で協力するです」
「おい、そういう事じゃなくてだな……」
それは、ほんのちいさな思いやりだった。
『前略、マスターへ。……』
不器用なやさしさが込められた手紙は、元治たちの下に届けられ、彼らの慰めとなった。
この手紙によって、彼らの心はどれだけ癒されただろうか。
こうしてジュンと翠星石による、手紙の病気見舞いが始まった。
215:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/04 19:40:01 PNkMhHrk
「おじじ、蒼星石からの手紙を持ってきてやったです」
新しくしたためた手紙を持って、翠星石は元治の病室を訪れた。手紙はこれで何通目になるだろうか。
『前略、マスターへ。……』
元治は、手紙を一通り読み終えると、何度も最初から読み直す。
それを傍から見て微笑む翠星石。そんな光景が繰り返されて1ヶ月が過ぎようとしていた。
病床にて蒼星石安否を心配する元治の症状は一向に良くなる兆しを見せない。
「そうか、かずきは元気にしておるのか…」
そんな言葉を聞くたびに、本当のことを隠している翠星石の心は傷むのだった。と同時に羨ましいとも感じていた。
翠星石は蒼星石が帰って来ないことを知っている。
故に、素直に待ち続ける元治に、彼女は少し嫉妬していたのかもしれない。
『もう蒼星石は帰ってこないです』……その一言がどうしても言えなかった。
『おじじになにかあったら、蒼星石に申し訳が立たないです』
そう思って元治達の事をあれこれ心配してはいるものの、
本当は翠星石も、蒼星石がいない寂しさを紛らわせていたのかも知れない。
こうした彼女の思いとともに、もう一通、もう一通と蒼星石の便りは増え続けていった。
216:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/04 19:40:53 PNkMhHrk
「チビ人間見ぃつけたですぅ~!」
翠星石は下校途中のジュンを待ち伏せていた。
ジュンが巴と一緒だった事にムッとして、急いで彼女から引き離す。
少々ぷりぷりしながらも、早速ジュンに協力を強要する。
「チビ人間と翠星石は一蓮托生呉越同舟なのですぅ、さぁ、とっとと家に帰って手紙を書くですぅ」
「お前、言葉の意味を分かって言っているのか?」
「ジュンはあんな女とイチャイチャしてる暇なんかないのです!そんな暇があったら翠星石に付き合うです!」
「イチャイチャって…あのなぁ、お前……」
「おじじの病気はきっと治してみせるです。だからジュンも頑張って協力しやがれです!」
ぐいぐいとジュンの袖を掴んで家路を急ぐ。
はやる気持から赤信号に気付かずに、翠星石はジュンを交差点に引っ張り出す。
突如鳴り響く急ブレーキのけたたましい悲鳴。
「さ、桜田君、大丈夫!?」
驚いて駆けつけた巴に付き添われ、ジュンは救急車で病院に搬送された。
こんな時、翠星石は自分が無力だと痛感せざるを得ない。
巴が近くにいなければ、事故の対応さえする事が出来ずに、きっと呆然とするだけだっただろう。
どうしていいか解らずに蒼ざめる翠星石。
「だいじょうぶ、だいじょうぶだから…」
と言いながらも辛そうな表情を浮かべるジュンの右手は、血の気が失せて妙な方向にひしゃげていた。
217:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/04 19:41:48 PNkMhHrk
その夜、ジュンに謝りに行った翠星石は、それから元治の心の中を訪れた。
おじじの心の樹さえ治すことができれば、きっと元気になる。それが彼女にできる唯一のことだった。
だが、翠星石が元治の心を覗いた時、既に心の樹は枯れかけていた。
生い茂る枝葉とは裏腹に、根元はそれを維持するだけの能力を失っていたのだった。
庭師の彼女は、それがその樹の寿命だということを瞬時に悟った。
「そんな…そんなのダメです!」
ジョーロを取り出した彼女は、瀕死の樹に手当てを施し始める。
「おじじにはもっと幸せを見つけて欲しいです」
しかし、いくら努力しようとも、樹の生命力は快復することがなかった。
決められた時の中で生きる者に必ず訪れる生命の終焉。それは逃れられない運命なのだ。
懸命に樹を救おうとする翠星石、しかし、どうにもならない現実が彼女をひどく落胆させた。
「こんな時、蒼星石さえいてくれれば…救えるかもしれないのに…」
その時、翠星石は、何故か懐かしい手に抱かれた様な気がした。
ふり返る翠星石に『もういいんだよ』と誰かが語りかけた様な気がした。
明け方、ふと目を覚ました元治は、傍らに看病疲れで眠るマツを目に止めた。
「ばあさんや…夢をみたよ。明日、一樹が帰ってくると言っておったよ。
もう待たなくても良いと言ってくれたよ。ばあさんには面倒をかけたね…」
218:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/04 19:42:35 PNkMhHrk
「ジュンー!お願いです、あんなおじじ見てられねーです、後生ですから一通だけでも書いてくれですー!」
「無理言うなよ、それよりも、いつまでこんな事続けるつもりなんだよ」
翌日の午後、右腕を骨折したジュンがギブスを巻いて帰ってきた。
翠星石もジュンを酷い目にあわせてしまって申し訳ないとは思っていた。自分が酷い事を言っているとも理解していた。
でも、彼女が頼りにできるのはジュンしかいなかったのだ。
「いつまででもです、いつまでもいつまでも…おじじが良くなるまで続けるです!」
「ねーちゃんに書いてもらえよ、僕には無理だ」
「それじゃ代筆だってばれるです、チビ人間の字じゃないとダメなのです!」
ジュンだって書ける物なら書いてあげたいと思っていた。それは翠星石も重々承知してはいるのだが、
日に日に生気を失って行く元治を目のあたりにして、居ても立ってもいられなかった。
元治は病床で蒼星石の便りを、心の支えにして待っている。
だから彼女は、例え嘘でもその願いを叶えてあげたいと、必死だったのだ。
「もうチビ人間なんかに頼まねぇです、おじじに何かあったらチビ人間のせいです!」
ジュンの態度に業を煮やし、彼女は夕暮れの街に飛び去っていった。
「やっぱり、翠星石には蒼星石の代わりは無理なのかな…」
あても無く街をさ迷いながら、元治の事をぼんやり考えていた。
翠星石は途方に暮れていた。非力な自分が悔しかった。
どんなに頑張ってみたところで、容姿が似ているだけでは埋まらない溝の存在を、嫌と言う程感じさせられていた。
だけど、だからといって、諦める事など出来はしない。
「そんな事はねぇです、こうなったら自分で何とかしてみせるです!」
不安を払拭するように、そう自分に言い聞かせると、彼女はその夜遅くまで手紙を書き綴った。
219:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/04 19:43:26 PNkMhHrk
時が止まったかのような深夜の白い病室に、廊下から聞こえてくる足音だけがこだましていた。
やけにはっきりとした意識の中で、元治はその足音の主人を待っていた。
やがて病室の扉が音も無く開くと、扉の向こうに青年が現れた。
彼は元治を見つけ、静かに彼に語りかける。
「ただいま。おとうさん」
それは紛れも無い、元治の一人息子、一樹の姿だった。
記憶の中の一樹が、夢にまで見た自分の息子が今、目の前に立っている。
全ての重荷から解放された様な表情を青年に向けて、元治は目を細めた。
「おかえり、一樹……ようやくおまえに会う事ができたのか」
そして、青年の右腕に抱えられた人形の懐かしい笑顔が、元治の目に写る。
「そうか…蒼星石や、君が連れてきてくれたんだね」
蒼星石は照れた様に微笑んで元治を見つめている。
元治は久しく忘れかけていた笑顔の作り方を思い出していた。
「長い道のりだったよ…一樹、もっと良く顔を見せておくれ…」
眩しい青年の笑顔、ありのままに、あの頃の様に。
「帰りましょう…おとうさん。僕達の家へ」
一樹と蒼星石の手が、元治に向かって差し出される。その手を握る彼の頬に熱い涙が伝った。
万感の想いを込めて、彼はゆっくりと目を閉じた。
『そうじゃよかずき、わしはずっとお前達に会いたかったんじゃよ。わしは、わしは……』
220:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/04 19:44:15 PNkMhHrk
「とても安らかな寝顔でしたよ。いったいどんな夢を見ていたんでしょうかねぇ…」
翌朝早くにやって来た翠星石に、マツは元治の死を告げた。
遺体は既に運び出され、この部屋にもう彼はいない。
翠星石の手から手紙がはらりと落ちた。
彼女の努力は実らず、彼は蒼星石の思い出と一緒に去って行った。
元治を励すために翠星石が懸命に書い手紙は、もう永遠に届かない。
永遠の様な一瞬、朝の静寂の中で、昨日までの出来事が翠星石の脳裏をよぎって流れて行く。
やがて、いつか伝えようと思っていた本当の事を、彼女は告白した。
「おばあさん、聞いて欲しいです…じつは、蒼星石は…」
もう遅いかも知れないけれど、言わなければきっと後悔する。
その事実をただ黙って聞いていたマツは、謝りながら話し続ける翠星石をそっと抱き寄せる。
「本当は解っていたのよ、あの人も私も。でも、もしかしたら…って思っていなかった訳じゃないわ」
二人は嘘だと知りながら、それでもやはり、彼女が自分たちを思い、手紙を書いてくれた事が嬉しかったのだ。
「翠星石ちゃんだって妹を亡くして辛かったでしょうに…
あの人に夢を見せてくれてありがとう。だから、悲しまないでおくれ」
マツの腕の中で、黙って俯く翠星石の肩は悲しみに震えていた。
「そんな…そんな約束なんて、できねぇです…」
彼女の瞳から涙がこぼれだし、いたたまれなくなって病室から飛び出した。
翠星石の去ったがらんとした病室の中で、
マツは彼女の落としていった手紙を開き、元治の居ないべッドに向かって語りかける。
「おじいさん、私達の娘は本当に優しい子でしたねぇ…」
そして、翠星石の想いのこもった手紙を、シーツの畳まれたベッドの上にそっと乗せた。
『どうか、げんきになれますように』
お世辞にも上手いとは言えない文字の中に、彼女の飾らない心が綴られていた。
221:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/04 19:45:09 PNkMhHrk
いつしか外は雪が降り出していた。
ジュンは無言で戻ってきた翠星石を心配し、事の顛末を察して歩み寄る。
彼女は庭先に立ち尽くしながら、ずっと舞い落ちる雪を眺めていた。
「もう中に入れよ…さむいだろ」
翠星石は振り帰らずに、ただ、枯れ木を飾る雪を見続ける。
「冬は嫌いです、雪は植物達には無情すぎるです…」
ジュンは黙って彼女に降りかかった雪を払い落とし、自分の上着でそっと包む。
「チビ人間…恨むです」
翠星石は素直になれなかった。
今、ジュンに優しくされてしまったら、叶わなかった願いの全てを彼のせいにして、
思いっきり泣いてしまいそうだった。
ジュンになら、それは許される甘えだったかもしれない。でも、自分が抑えられなくなりそうで怖かったのだ。
「手紙、間に合わなかったです…」
「…ごめんよ、僕は…」
翠星石は寂しそうに振り向くと、小さな声で精一杯の言葉を口にした。
「ジュン…お願いです、翠星石を一人にして欲しいです…」
222:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/04 19:45:56 PNkMhHrk
「……恨んでなんかいないです。むしろ感謝してるです。でも…今は」
ジュンの去った後、舞い落ちる雪を両手に受けながら、翠星石は本当の気持ちをつぶやいた。
雪の結晶は、彼女の落とした涙の雫に混ざりあい、ちいさな手のひらで溶けて消えてゆく。
庭先に立ち尽くす翠星石をいたわるかのように、
雪は静かに、終る事の無いワルツを奏でながら降り積もってゆく。
「辛い…辛いですよぉ……蒼星石ぃ……」
記憶の中の愛する人たちを思い続けながら、ジュンの温もりが残る上着を引き寄せて、
込みあげてくるせつなさに耐え切れず、翠星石は暗い空に向かって号泣する。
溢れ出す思い出が、彼女の胸に傷みを刻んで、涙が止まらなかった。
その心を癒そうとするかのように、雪はゆっくり、ゆっくりと翠星石を包み込んで、世界を白く変えて行く。
悲しみは時を経て、いつか空へと昇って行くものだから…と。
凍った世界を風が吹き抜けてゆく。
春はまだ遠く、いまだ雪は降り止まない。
223:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/04 19:46:55 PNkMhHrk
えー夏コミケに受かってマンガが忙しくなってしまったので、おいらは当分SSから脱落します。ROMります。おいらのSSなんて大して面白くもないでしょうけどw
3期があったとしても、元治は多分登場しないでしょうねぇ…。
一緒に時を刻んだジュークセイコーの話とか、一樹の名前で届くダイレクトメールの話とか織り交ぜたかったけど、長くなりすぎるのでやめました。
1期見てれば話も変わっただろうけど。
それから、安西先生ごめんなさい。あきらめが肝心との教えを破りました。(わかる人だけ解ってくだちい)
224:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/04 19:54:51 1KjB+1VC
>>223
仮に蒼星石の復活があるならジジィも出番必須だと思った。
それはともかくお疲れさま、気が向いたら暇つぶしにでも
またSS書いてくれると読み手の方も楽しみが増えるというもの…。
では。
225:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/04 20:11:09 l8xGRauv
>>223
切ない話だけど、楽しませてもらったよ。
でだ、
はっはっは、何を言ってるんだ
蒼星石は帰って来るに決まってるじゃないか。
俯きながら「長い間留守にしてごめんなさい」って元治に言うんだ。
でもって、「お帰り、蒼星石」って温かく迎えるシーンがきっとある筈さ。
そんな訳でいつか、また気が向いたらSS書いてくれ。
待ってるから。
226:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/05 03:08:07 9GCCTPvZ
>>211
ラプラスよ、あのプレイメイトの蝶タイ姿のウサギはお前だったのかw
ところで白崎よ、週プレは平凡パンチの後継誌で、PLAYBOYとは何の関係も無いぞwww
>>223
夏コミでの活躍を期待してます。
227:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/06 12:45:17 7zaUP+88
良作SSの保管庫への収録が待ち遠しい。
2ちゃんねる小説保管庫も再開したみたいだし、いっちょお願いしてみるか。
保管の可否については、収録の時にスレで報告って形でいいよね。
228:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/06 19:53:38 jWsRln6f
良作じゃないやつはゴミ扱いか。
229:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/06 21:59:58 2FSCwdr9
>>227
ヨロ
230:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/07 22:17:28 vFUMtliO
アゲてみる
231:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/07 22:49:33 plII4jUJ
いちいちあげてるやつウザいよ。
焦らなくても職人来るんだから待て。
232: ◆vJEPoEPHsA
06/06/11 00:48:16 ETEFBj60
はじめまして。
エロパロ板の保管をさせていただいているものです。
さて、あちらの現行スレ(9)の146さんからこちらのSSの保管依頼があったのですが、
こちらの方々的には如何でしょうか?
233:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/11 00:53:04 wUj07WQB
是非お願いします。
234:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/11 02:38:05 5wU16yck
>>232
よろ
235:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/11 11:22:15 bhg8UfX0
>232
とてもありがたいです。
よろしくお願いします。
236:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/11 23:50:05 r1ETWZRY
できれば総合スレのも保管してくれれば。
237: ◆vJEPoEPHsA
06/06/13 05:02:37 Udxgw3Q+
作業終了しました。現行スレについては使い切るか落ちるかしてから保管という事でお願いします。
URLリンク(rinrin.saiin.net)
間違いとかがないかチェックをお願いします。
また掲載について不都合などがあれば削除しますので連絡を下さい。
>>236
総合スレは私もたまにROMっていますが、まとめサイトと保管庫の両方があったかと思います…
とりあえず近いうちに向こうのスレに確認に行きます。
238:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/13 18:42:35 /oYtCoMw
>>237
モツカレー&サンクス
239:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/14 16:19:41 97I5/SHY
>>237
乙ー
240:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/15 21:05:25 HCuR3m5T
>>104
居たねー、気色悪いリーダーの使いかたしてたキモい文章書いてたのがw
あんなのがまた出てきたら徹底的に叩いて潰すしか無いってモンよ。
241:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/15 21:58:01 hOqKlYvv
亀レスにも程がある
242:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/16 00:23:44 2Mb/M0BN
>>240必死だな
243:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/16 12:19:42 iKJLT2GE
どうでもいいから書けよ
244:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/16 18:08:18 FM9aJ6NF
>>240
たしかにあれは酷かった
変な間ばっかり空けて書いてたし内容のレベルが低杉
245:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/16 19:38:03 0XWD3x85
叩きなどどこ吹く風で何一つ作風を変えず淡々と投下を続けた職人と
投下の完結にしたがってファビョり出す叩きクンの必死さが笑えた。
職人叩きに孤軍奮闘しても徒労に終わるのはさぞ悔しかろうと思ったら
案の定スレ荒しをおっ始めたが、スレ自体の浄化作用がこのスレを生んだ。
結局、何も変わらなかったね。
246:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/16 23:05:50 gEgl9fny
リーダーを文章に使う香具師はレベルの低いクズ
つか 屍ねばいいと思うんだ
「・・・」 「…」 が少し入ってるのはまだ許せる
「......」 これは何だ?
こんなの文章に入れるのなんて初めて見たし聞いた事もない
文法のイロハすら無視し続けただけじゃなくて
リーダーの使い方で読者をことごとくナメてたのが洩れは許せなかったねw
247:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/17 00:08:10 zkzDpdkq
>>246
文法のイロハもわかってない糞野郎?
言うねーあんたw
そんなに好き勝手相手バカバカ言うなら、書いてくれよ
248:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/17 00:28:18 BkTBDU9S
何のために批判禁止スレにしたのよ?ルール守れない奴は完全スルーで行こうよ。レス返すのも馬鹿の思うツボだよ。言わなくても皆分かってるしさ。
249:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/17 00:43:11 l/M30WG3
直接指定して批判してるわけじゃない。
250:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/17 00:52:29 BkTBDU9S
批判禁止。直接でも間接でも批判禁止。
そんだけ。
251:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/17 01:29:46 mkwDE4TG
黙って読め。それだけ。
252:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/17 04:04:43 l/M30WG3
で、糞だったら批判と。
253:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/17 12:05:49 mkwDE4TG
これはもう批判厨に見せかけたアンチ薔薇だな
254:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/17 12:08:52 eYnhbAJL
何を今更……。
255:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/17 21:11:38 LJHtuy74
職人は黙って書いてればそれでいいんだよ。
読み手の批判訂正や駄目出しをしっかり受け止めて
いいもの書いて実力つければ、いつかは認められるんだし。
だが、クソだと即スルー対象にするから。
256:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/17 21:55:02 cWGKc87G
次からテンプレに批評禁止と明記キボン
257:~酒~
06/06/18 00:56:00 GmEy7zJd
流れを読まずに投下
258:~酒~
06/06/18 00:58:04 GmEy7zJd
「まずいな~、もうこんなもの送ってくるなよ」
ジュンは倉庫のずっと奥の方に『お中元』と書かれた木箱を仕舞った。
おそらく両親宛のものだろうがずっと不在の彼らに送ったところであまり意味がない。
かといって、その木箱に入った品物はジュンにものりにも無用のものだった。
とりあえずジュンとしてはここに仕舞っておく以外になかったのである。
「いつ渡せるか分かったものじゃないよな」
そう言って倉庫をあとにするジュンの影で怪しく光るオッドアイがあった。
「イッヒッヒ、見つけたですぅ、こんなところに隠すなんて所詮チビ人間の
浅知恵ですぅ」
倉庫の奥でニヤリと笑いながら翠星石は木箱を取り出し、両手に抱えて小走りに駆け出していく。当然なのかどうか、翠星石には木箱の中身が何かなど分かっていない。
ジュンには見つからないようにリビングの片隅でそっと木箱を開ける。
「さ~てご開帳ですう」
木箱の中から出てきたのは年代物らしい(?)赤と白の2本のワインだった。
「お酒、ワインのようですぅ」
翠星石が2本のワインをしげしげと見つめているとき、後ろから声がかかった。
「ねぇ、翠星石何してるの?」
「ヒィィィィッ?!な、何言ってるですチビ苺、す、す、翠星石はべ、べ、別にこの
ワインを独り占めしようなんて、ぜ、ぜんぜん思っていないですぅ!と、とりあえず
駆けつけ3杯ですぅ!チビ苺も飲みやがれですぅ!!!」
あせりまくりながらまくしたて、ワインのコルクを開けてグラスにワインを注ぐ、そして
そのグラスを雛苺に差し出した。
「うぃ?それお酒なの、飲んだらのりがめっめーなのよ」
差し出されたワインを雛苺は受け取らずに翠星石に答える。
翠星石は少しひるんだが、屁理屈をこねてさらに勧めた。
「それは人間の場合ですぅ、私たちローゼンメイデンにはまったく問題なしの
すっとこどっこいですぅ」
「うゆ~、そうなの~」
雛苺は差し出されたワインを受け取ると一気に飲み干してしまった。
「うゆ~、おいしいけど何か変なの~、頭がクラクラするの~」
いきなりの千鳥足、フラフラになった雛苺はそのまま倒れて眠ってしまった。
「ちょ、チビ苺!起きるですぅ!たった1杯で情けねえですぅ!」
雛苺の胸倉を掴んで無理やり起こそうとするが雛苺が起きる気配はない。
のりが帰ってくるまでに事態を収拾したい翠星石だった。
259:~酒~
06/06/18 00:58:50 GmEy7zJd
「騒々しいわね、何をしているの?」
くんくん探偵を見るためにリビングに下りてきた真紅が翠星石に詰問する。
「雛苺?これは、翠星石、貴女、雛苺に何をしたの?」
「え、あの、その違うです、チビ苺にワインを飲ませたなんてこと、あ、あ、
ありえねえですぅ!」
持っていたワインを後ろに隠したはいいが、思い切り自分の口からバラしてしまっている。
「雛苺にワインなんて100年早いのだわ、それぐらい貴女にだって分かるでしょう」
真紅に睨まれて翠星石は押し黙ってしまった。
「で、そのワインはどうしたの?」
「そ、そのチビ人間がコイツを隠すのを見たですぅ。べ、別にジュンの行動を監視していたわけではないですぅ。真紅とばかりいっしょでちょっとムカついたなんて思ってないですぅ」
後半部分を聞いたときに真紅のこめかみが疼いたのは気のせいだろうか。だがある程度の
事情は飲み込めた。
「とりあえず雛苺に飲ませてしまったことは仕方ないわね。まだワインは残っているのでしょう?」
「もちろんですぅ、でもどうするですか?」
困ったような表情で翠星石は真紅に尋ねる。
「せっかくなのだから私たちで頂きましょう。どうせジュンものりも飲まないのだから、
私たちで始末をつける以外にないでしょう」
そう言ってグラスを持つと翠星石にワインを注がせた。
「分かったですぅ~、さあ真紅、ガンガン飲むですよ~」
ワインをなみなみ注いで、さらに自分のグラスにも注いでいく。
「それじゃあ乾杯ですぅ~」
真紅と翠星石はワインを一飲みで干していく。1杯、2杯、3杯と続けて飲み干していった。
260:~酒~
06/06/18 01:00:13 GmEy7zJd
「さてとそろそろ中断するか」
ずっとネットを続けていたジュンがそう言って部屋を出てリビングに向かう。
ガチャ!
リビングに入ったジュンが見たものは!(←火曜サスペンスのテーマを想像して下さい)
酔っぱらった真紅と翠星石の姿でした。(だめだこりゃ)
翠星石はジュンを見るなり喚き散らす。
「おうおうおう!チビ人間!酒だ!酒!酒買ってこいですぅ!!!」
「な、なにやってんだお前ら!!」
「見て分からんですか!このトウヘンボクですぅ!!とにかく酒ですぅ!!」
喚きながらジュンの脛に低空ドロップキックをかます翠星石。その横では真紅が
ジュンをじっと見つめている。
「ジュン」
呼びかけると同時に真紅はジュンに抱きつき、ところ構わずキスしまくる。
「うわッ!わッ!わッ!うわわわッ!!!!」
ジュンは狼狽して慌てて真紅を突き放す。
「ジュン、なぜなの、なぜわたしを拒むの?」
半泣きで真紅はジュンに詰め寄る。ある意味で凄まじい迫力ではあった。
ジュンは半ば逃げるようにリビングを出て翠星石に命じられるまま酒屋へとダッシュした。
261:~酒~
06/06/18 01:01:23 GmEy7zJd
「翠星石に会うのも久しぶりだな」
蒼星石は鏡から現れるとリビングへと歩いていった。
「やあ、翠・・・星・・石・・・・?」
蒼星石はベロンベロンに酔っぱらっている姉の姿を見て絶句した。
「おう来たか!蒼の字!駆け付け3杯ですぅ!とっとと飲みやがれですぅ!!」
翠星石は台所にあった焼酎を持って蒼星石に迫る。
「ちょ、ちょっと翠星石、目が座ってるよ。うわ酒臭い!!」
翠星石は蒼星石を捕まえるとコップにも注がず、瓶のまま焼酎をラッパ飲みさせる。
「だ、だめだよ、翠星石、僕、お酒は無理・・・うぐ!」
「酒は飲んでも飲まれるなですぅ。蒼星石もしっかり飲むですよ~」
言葉とは真逆に完全に酒に飲まれている翠星石、蒼星石は半分残っていた焼酎を
一気飲みさせられ、頭がボーッとなっていった。
「蒼星石、どうしたですぅ?」
うずくまっている蒼星石に翠星石が問いかける。
ギラリ!
蒼星石の両目が光ったかと思うと、蒼星石は翠星石をいきなり正座させ説教を始めた。
「いいかい翠星石、僕たちローゼンメイデンはお父様の願いを叶えることが何よりの使命だ。君には呆れるくらいそうした意識が欠けているよ。そもそもこんなこと・・・」
「そ、蒼星石、酔っぱらってるですか?」
蒼星石の言葉を遮って翠星石が問いかける。
「ぼ、ぼ、僕は酔っぱらってなんかいない!!!ヒック」
完全に酔っぱらってます。ありがとうございました。
このあと蒼星石は酔いの醒めた翠星石に小一時間説教を食らわしました。合掌。
262:~酒~
06/06/18 01:02:53 GmEy7zJd
一方の真紅、翠星石に分けてもらった焼酎をちびちびと飲みながら泣いていた。
泣き上戸、キス魔だったらしい。しかも対象であるジュンは逃げてしまっていた。
「ジュン、ジュン、私といっしょにいたいのではないの・・・・」
半ばヤケ酒、ローゼンメイデンの誇りもどこへやら・・・・
その時、TVの画面から黒い羽根を舞わせ水銀燈が現れた。
「あらぁ、おマヌケさんの真紅ぅ、何を泣いているのぉ」
「・・・水銀燈」
「情けない顔、ブサイクだわぁ、でもそれがお似合いよ」
水銀燈にとっては今の真紅は泣きべそをかいたマヌケな人形にしか見えなかった。
アリスゲームを始めるため戦闘態勢に入ろうとする水銀燈にいきなり真紅は抱きついた。
「うわあ~~、水銀燈!!」
抱きつかれた水銀燈は虚を衝かれた。
「な、なによ!なんなのよ!!離しなさい!!」
しがみつく真紅に水銀燈は必死に振り払おうとする。
「ジュンは、ジュンは私のことが、ああ~!!」
「な、なに真紅、貴女酒臭い!!!」
「ジュン~~!!うぅ、うえぇぇぇぇぇ・・・・」
なおも振り解こうとする水銀燈だったが、それが思い切り裏目に出た。
目が回った真紅の気分は一気に悪くなった。
「ああああ!!!真紅~!!私のドレスに吐かないでぇぇぇぇぇ!!!!!」
すべてが遅かった。水銀燈のドレスはゲロまみれになり悪臭が鼻をついた。
今度は水銀燈が泣く番だった。
「し、真紅~、なんて、なんてことするのよ!うわ~ん!お父様!!めぐぅ!!!」
真紅は水銀燈を倒した。真紅、お前は鬼か。
「ふんふん♪ちょっと買いすぎちゃったかしら。みんな待っててね、おいしい
花丸ハンバーグを作ってあげるから」
のりは鼻歌を歌いながら上機嫌で家路についた。
「みんな~、ただいま~」
返事がないのを不審に思いながら台所へと向かう。そしてリビングで見たものは!!
転がる酒瓶、管を巻く蒼星石、迎え酒の翠星石、そして泣いて吐いてる真紅・・・・
のりを怒りは限界を超えた。
「なにしとんじゃあ!!おどれら!!!」
というわけで、この日の夕飯はもちろん、翌日の朝も飯抜きになりましたとさ。
めでたしめでたし。
263:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/18 01:05:33 HnA21Db3
GJ!!!
264:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/18 01:07:33 dBzLkrFC
GJ!
とても面白かったです。てか真紅の酒癖がwww
また書いてくれれば嬉しい限りです。
265:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/18 02:10:29 MhnzGfA9
面白かった、カナリアにも出番を!
266:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/18 03:08:38 zqkp6E29
GJ!
のり怖ぇーwww
267:名無しさん@お腹いっぱい。
06/06/18 03:39:08 MhnzGfA9
「JUN、くんくんがはじまる時間だわ、急いでちょうだい」
さっきまでおとなしく本を読んでいた真紅がJUNの膝の上に飛び乗る
「リビングくらい自分で歩いていけよ」
文句を言いながらも真紅を抱きかかえ、リビングへと向かうJUN
「あれ?こんなとこに鏡?」
廊下に落ちていた鏡を拾い上げ、覗き込んだその時
ピカーーーッ
鏡からあふれる光がJUNと真紅を包み込んだ
「いらっしゃ~い真紅、あらぁ、今日は情けないミーディアムも一緒なのぉ?」
例によって水銀燈のワナであった
「水銀燈、また貴方なのね、お茶の時間も・・・・・ハッ、くんくん!!」
なぜかソワソワしだす真紅
「真紅~、今日こそは決着をつけましょう、お父様も痺れを切らしているわぁ」
大きく羽を広げ臨戦態勢になる水銀燈
「待って!!今は貴方と戦うつもりはないの!大事な用があるの!」
「あらぁ、逃げるつもりかしらぁ?そこのミーディアムに笑われるわよぉ」
真紅の言葉を自信の無さと受け取った水銀燈が勝利を確信した時
「くんくんが!くんくんが終わるまで待って!!」
「へ???」
「このフィールドにJUNを置いていくわ、だから30分だけ待ってちょうだい!」
「おバカな真紅、アリスゲームにふさわしくないわぁ」
「私のホーリエも置いていくわ!だからお願い!」
「・・・・・・あきれたわ、薔薇乙女の誇りはどうしたのかしらぁ?」
あまりに必死な真紅に気圧されたのか、水銀燈も引き気味である
「水銀燈!キミたち姉妹は何十年も闘ってきたんだろ?今さら30分も待てないのか?」
JUNとて真紅と共に何度も戦いをくぐりぬけたミーディアムである
(真紅、時間を稼いでる間に雛苺と翠星石を連れてくるつもりなんだね)
これまでの真紅との闘いの思い出が水銀燈の胸を熱くさせた、最後に少しの情けくらいは・・・・・・
「いいわぁ、30分だけ待ってあげる、もし戻って来なかったら、あなたのミーディアムが死ぬだけのこと」
水銀燈の返事を半分も聞かないうちに真紅はnのフィールドから姿を消していた