06/04/25 00:19:55 DLzHsNc9
「誇り高き我が名前、真紅にかけて誓う。 貴方をここで。 処刑するわ。」
「ヒナねぇ、こんな気持ちになったの初めて。 これからすっごくすごく酷い事するつもりなのに。
……ちっとも可哀想に思えないの。」
「お前のボキャブラリーなんてタカが知れてますけどぉ、命乞いするだけしてみたらどうですかぁ?
ひょっとしたら気が変わっちゃうかもしれないですよぉ。 に・ん・げ・ん。」
クスクスと笑う声に総毛立つ。 愛らしい声。 だが、その双眸には情なんて一かけらも見当たらない。
憎悪。 そうだ。 人形達の瞳が秘めたもの。 それは、憎悪と……殺意だった。
恐ろしい。 心の底から恐ろしい。
もし人間だったら、これほどまでの憎悪を抱えていても、なお笑えるものなのだろうか。
少なくとも僕にとっては、笑いは喜びの発露だった。
これは何なんだ? 夢なら、夢なら今すぐ覚めてくれ。
いつもと同じように起きて、いつもと同じように過ごした日。 いつもお馴染みの桜田家で。
僕はいま、命を落とそうとしている。
何なんだ、この状況は。 本当にここは、あの憩いの桜田家なのか。
逃げる。 動かないに等しい頭に、その単語が浮かんだ。
そうだ、逃げなくては。 ここから、この状況から、逃げなくては。
「はっ……ひは……」
なのに。 走ろうとすると膝に力が入らない。 何か言おうとすると言葉にならない。
ただただ怖い。 恐怖という感情がこれほどのものだなんて、知らなかった。
それでも、生きてこれたのだ。 今日までは。
シンクが静かに動いた。 瞳がそれを認識した瞬間。 僕は弾かれたように走り出した。
でも、それでは遅く。
明確な殺意を持った拳が、僕の顔面に叩き込まれた。