【ノーマル】ローゼンメイデンのSSスレ【一般】at ANICHARA
【ノーマル】ローゼンメイデンのSSスレ【一般】 - 暇つぶし2ch400:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/17 01:23:06 aR5DKgqZ
カップ麺てwww此処はグロ禁止だぞwwwwww

401:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/17 02:36:58 UPrtBg/T
>>375
良かったけど一気に投稿せず何日かに分けてやればよかったのに
あまり集中するとまた過疎る

402:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/17 02:50:12 NN8ePPVw
こんにちは、蒼星石です

んー、ジュン君はまだ僕のアドバイスを聞いていないようだね
勉強をやるにしても、あの暗い部屋での勉強は大きなマイナスなんだ
小さなライト、睡魔を押し殺しての勉強、多くの面でマイナスになっているね
僕の見たいジュン君に一日でも早く戻ってくれる事を望んでいるよ

そうそう、図書館での勉強は欠かさないでくれ
沢山勉強して復学してほしいな

403:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/17 08:19:50 FweTYxpj
>>396
あまりのカオスっぷりにGJがとまらないwwww

404:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/17 14:54:30 4r0FV2Ca
>>390-396
最高wwwwwwwwwwww

405:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/17 17:26:55 Q61Sxj12
ちょっと質問なんですが
こちらのスレでは性的な意味を含まなければ
夜ネタのSSを投下してもよろしいのでしょうか?

406:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/17 17:42:09 NN8ePPVw
別に性的=夜じゃないだろ

407:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/17 19:55:09 TyyTEOTW
>>401
俺は一気投稿支持派、読みやすくレスしやすく、スレへの負担も少ないと思う。
連載形式での投稿も、続きを楽しみに待つ気分でスレを開くのが楽しくなる。

投下のスタイルは職人諸氏の好みや都合に合わせて、好きな方法で投下して欲しい。
直後投下とか途中投げ出しとか、やらないほうが望ましい投下方法もあるけど
そういうマナーに反しない範囲で、複数の投下方法が許容されるスレでありたい。

408:ケットシー
06/04/17 20:37:52 1a7WfB+T
>>345

 ジュンはめぐを振り切るために家の中を走り回っていた。いや、家よりも屋敷と言った方がしっくりくる。余裕で人がすれ違いできる幅の通路が何十メートルと続き、部屋数も相応にある。
 真紅は大邸宅に住まうお嬢様だったのだ。彼女の硬い口調や、値段の張りそうな本のコレクションを見れば、それも頷ける。

 しかし、今のジュンにとって真紅の素性がどうなどという話は二の次だ。背後から迫るめぐを巻けなければ、身の安全は守れないのだ。
 通路の壁に掛けられた絵画や脇に置かれた調度品には目もくれず、逃げ道だけを探してひた走る。
 だが悲しいかな、ジュンの逃走はめぐには通用しそうになかった。彼女にはジュンには無い優れた移動方法がある。それは、翼を使った飛行だ。
 全力で走るジュンの後ろを、余裕を持って追うめぐ。黒い翼を広げて飛ぶ姿は優雅にさえ見える。追う目的を知っていれば、そんなふうには断じて見えないだろうが……。

「―行き止まりッ!?」

 慣れない屋敷内で、いつまでも走り回っているのは不可能だった。
 ジュンが何度目かに曲がった角の奥は、ドアが一つだけある薄暗い行き止まりだった。
 このドアの向こうは用具置き場か何かだろう。この日当たりの悪さといい、埃臭さといい、人が住んでいるような環境には見えない。
 立ち止まった彼のすぐ後ろで、着地しためぐが翼を畳む。
 ジュン、絶体絶命のピンチだった。



409:ケットシー
06/04/17 20:38:51 1a7WfB+T
 真紅は自室で本を広げていた。
 しかし、手元の本は同じページのままで、一向に先に進まない。それもそのはずで、真紅の視線は本の文字を追ってはなかった。
 彼女の目は開いているだけで、何も見えてない。頭の中は、人形の男の子の事でいっぱいだった。もう一体の人形に襲われてないか気掛りで何も手に付かない。
 ジュンを追い出したのは真紅だが、だからこそ気になってしまう。彼女は負い目に近い感情を抱いていた。

「ジュンが悪いのよっ。私は悪くないわ」

 読書を妨げる余分な思考を振り払おうと、真紅は独り呟く。もう一度、紙に並ぶ文字に視線を落とし、読書を敢行しようとする。
 しかし、感情は荒れるばかりで、文字を強引に目で追っても内容が全く頭に入らなかった。
 落ち着いて本を読むために独りになったのに、これでは逆効果だ。

「ほんっと、手間の掛かる子なのだわ……!」

 ついに真紅が音を上げた。文句を言いながら席を立つと、本をテーブルに放って部屋を出て行った。



410:ケットシー
06/04/17 20:39:38 1a7WfB+T
 袋小路に捕まったジュンの背後から、黒い翼の悪魔が忍び寄る。その殺気を背中に感じた彼は、恐る恐る振り向く。

「もう逃げないの?」

 そこにいたのは、嬉しそうに笑みを浮かべるめぐだった。今の彼の目には、その笑みも邪悪なものにしか映らない。
 ジュンは体を敵の正面に向けて後ずさる。後が無いと判っていても、怯える身体が彼女から距離を取りたがった。

「こんな暗い所に逃げるなんて……。もしかして、私を誘ってる?」

 めぐの冗談か本気か区別のつかない発言に、ジュンは大きく首を振って否定する。
 その必死な様子が可愛く見えたのか、彼女はクスクスと笑いながら足を前に踏み出す。こうなっためぐは、ちょっとやそっとでは止まらない。
 後退するジュンの踵が閉ざされたドアに突き当たり、めぐがじりじりと距離を詰める。
 息をする音さえ聞こえそうな距離に近付いためぐは、ジュンのメガネを外して瞳を覗き込む。その目は、恐怖で大きく開かれていた。

「怖がらないで。これは、お父様の望みでもあるのだから」

 めぐはそう囁いてジュンの肩に手を置く。触れられたジュンは、悲鳴に近い声を上げた。

「めっ、めぐ―」

 めぐはこれ以上騒がれる前に強引に声を奪った。口を口で塞ぐという強引な方法で。言ってしまえば、キスである。
 途端にジュンの頭は真っ白になる。極限まで張り詰めていた彼の心は、キスだけで流されてしまったのだ。
 ショックで放心状態の彼をめぐが見逃すはずがない。その隙に、舌を彼の口に送り込む。
 腰の抜けたジュンは、背中をドアに預けたまま、ズルズルと尻餅をつく。その間も、めぐは唇を逃がさなかった。

411:ケットシー
06/04/17 20:40:35 1a7WfB+T
 長い長い口付けがようやく終わり、めぐがジュンの唇を解放する。その必要が無くなったからだ。ジュンの瞳は虚空を見たまま動かず、心ここにあらずといった様子だった。完全に陥落していた。

「可愛い子……」

 めぐはうっとりとした表情で、ジュンの頬の形を指でなぞる。顎の先までなぞり、行き場をなくした指先は、そのまま学生服のボタンへと移る。第一ボタン、第二ボタンと素通りした指先は、彼のズボンへと向かう。
 チャックに到達しようとした時、その救世主は現れた。それも、いきなり飛び蹴りで。

「桜田君、危ないッ!!」
「ほげっ!!」

 もろに両足を側頭部にもらっためぐは、頭から壁に突っ込んで倒れた。人間なら頭が割れて流血の惨事になっていただろう。
 その救世主は、セーラー服を着た少女の人形だった。髪型は健康的なショートカットで、左目の泣き黒子がチャームポイントになっている。
 新たに現れた人形は、ジュンの様子を見て慌てふためく。彼は未だに放心の真っ只中だったのだ。
 めぐに何をされたのかは知らないが、どうにかしないと……。
 そう思ったセーラー服の人形は、ジュンの前に膝を着いた。

「こういう時は、人工呼吸が基本です」

 意味の解らないことを言った彼女は、ごくりと生唾を呑む。この先の行動は、誰でも想像できる。
 そして、彼女は期待を裏切らなかった。ゆっくりと唇を寄せ、瞼を閉じる。

412:ケットシー
06/04/17 20:41:21 1a7WfB+T
 だが、唇が触れ合うことは無かった。隣で復活しためぐが、飛び蹴りをお返ししたのだ。

「ジュン、危な~いッ!!」
「はぶううぅっ!!」

 セーラー服の少女は、めぐとは反対の壁に頭を打ち付けて沈黙した。だが、めぐの蹴りは助走が少なかったせいか、すぐに立ち上がる。

「何するの!」
「何するのじゃないわよ! それはこっちのセリフ」

 初めてまともに顔を合わせた二人は、敵意を剥き出しにして大喧嘩を始めた。この二人の間には、何やら因縁めいたものがあるようだ。
 髪を掴み合って子供みたいな喧嘩を繰り広げる横で、ジュンが正気を取り戻す。

「あ……柏葉も起きてたんだ」

 二人の動きがピタリと止まる。惚れてもらわないといけない相手の前で、幼稚な姿は見せられない。利害が一致した二人は、素早く離れて笑顔を作る。

「三日前に目覚めたの。桜田君は?」
「昨日起こされたばかりだよ」

 ジュンは自分の足で立ち、お尻の埃を払う。
 これが、第六ドール柏葉巴とジュンの運命の再開だった。



つづく

413:ケットシー
06/04/17 20:43:01 1a7WfB+T
上にもありますが、考えなしで連載物を書き始めるものじゃないですねぇ。反省しております
この話でかなり苦労してます。

突然ですまないですが、スレ住人に聞いてみる。
総合スレで途中になっていた欝話の続きをここに投下してもいい?(死にまくりのあれです)
独断で投下しちゃうのもまずいかと思いまして、意見を聞いてみた次第です。
(今やってる話がつまったりはしてませんよ!つまっていませんとも!多分……)

414:にんじん
06/04/17 21:27:38 fZOMSH2z
                /  ///    / //
              ′ ///   / //
              | r'/:::::\/ ィ /
               | |'ヘ::::/ /
              ∠! へ\</´
           /  \  ヾ
           /     ヽ |!|
          /        }ヽ  〉
        { ̄ ̄  ‐-  `′ i     トリビャルですぞー!!
        ヾ- ―-     〉                 .:o:.
          \       (__,.. ソ
        _r―  ー;.,.,. '´
       _/マ==|ヽ{、
    -‐ .:::.:::.::\::\└勺!                        ,. ---,
  //.:::.:ヽヽ:::.:::.:ヽ:::.\ ゞヽ、                    / ∠二/ノ_
 |l:::.:::.:::.:i i:::.:::.:::.:i l:::.:ヽ ヾヽト、                / ´ ̄ _∠二ニ'
 |l:::.:::.:::.:j l:::.:::.:::.::|ヽ:::.::ヘ `i! l:::ヽ           ヘヽ ,.  ´
 亅L. イ /.:::.:::.:::.\\:::.:Y i! l::.::|         /:::.:::.:::i丿
 f―::: /:::.::l:.:::.:::.:::.:::.\`:::Yi! |:V|        /::.::.::.::.:/
 ヾ ∠:::.:::.:::j.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.∧i!|/::ト       /.::.::.:::/
  |   /:::.:::.:/:.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.\il!|::;ハ    /::.::.//
  |  i:::.:::.::∧:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::レ/!:\ヽ  /::/ /
  |  l:::.:::.∧ ヽ:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::/:::.:::.ヽ了/:/   /

415:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/17 21:49:14 xdjKgb/6
>>413
虐待でないからいいんじゃないかな。
個人的には続きが気になっていたんで書いて欲しいな。


416:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/17 22:02:13 lLV0yvlk
>>413是非書いてほしいです。
もうあの続きは見れないのかと軽く凹んでましたからね。

417:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/17 23:24:26 rv+8MUZN
>>413
私もあの話の続きはすごいみたいですが、最近ローゼンSS関係の板
全部荒れ気味だし一応反対な人は少ないと思いますけどちょっと長めに
2,3日意見聞く時間取ったほうがいいかなと思ったりしました

話かわる上に微妙に書いてた板もちがうけど双剣さんのSSもよみたいよ・・・・

418:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/18 00:11:26 miAkhli3
>>413
翠がお亡くなりになって俺を。・゚・(ノД`)・゚・。とさせたやつですか?
それならwktkwktk('A`)

419:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/18 00:28:08 P8ZUoFsi
>>413
欝話が来るのは一向に構わんが今のが楽しみで楽しみで仕方ないので打ち切りだけは勘弁してくれ

420:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/18 01:13:02 ZsLqHUyo
今日は私たちローゼンメイデンをケロロ軍曹に当てはめてみたのだわ
いつも通り姉妹順で水銀燈から
3「武闘派ですぅ」
2「ツンデレかしら」
ギロロ伍長がぴったりなのだわ
1「いつになったらペコポン侵略をするのぉ?お馬鹿さん」

2「次は金糸雀かしらー」
6「黄色いのー」
4「いつも変なこと考えてるよね」
クルル曹長に決定なのだわ
2「ローゼン小隊1の頭脳派かしらクーックックック」

3「翠星石の番ですぅ」
4「甘いもの大好きだよね」
1「あら、真紅がJUMと一緒に居るわぁ」
3「しぃ~んく~、真紅ばっかりJUMと一緒でずるいですぅ~・・・!!」
6「語尾も一緒なのー」
あらタママ2等兵、なにかしら?

4「次は僕の番だけど・・・」
1「影薄い」
2「影薄いかしら」
3「青いですぅ」
影が薄いのだわ
6「ドロロ兵長なのー」
4「ひどいやみんな、僕だけ僕だけ・・・」

421:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/18 01:14:54 ZsLqHUyo
私の番のようね、くんプラを作っている時が無常の幸せを感じるでありますのだわ
3「そうやってすぐに仕切ろうとしたがるですぅ」
2「でもそれぐらいしか役がないかしら」

6「最後は雛の番だけど、っていうか役者不足なのー」
1「全然女子高生でも恐怖の大王でもないじゃないの」
仕方がないわね、アンゴル・モアに決定でありますのだわ
6「おば様ありがとうなのー、っていうか感謝感激なのー」

さて、最後はみんなで共鳴するでありますのだわ
メイメイメイメイメイメイメイメイメイメイメイメイ
ピチピチピチピチピチピチピチピチピチピチピチ
スイスイスイスイスイスイスイスイスイスイスイ
ホリホリホリホリホリホリホリホリホリホリホリホリ
ベリベリベリベリベリベリベリベリベリベリベリベリ
偽7「マタ忘レラレタ」
1「宇宙探偵864(バラシー)」
2「宇宙探偵864かしら」
3「宇宙探偵864ですぅ」
宇宙探偵864でありますのだわ
6「宇宙探偵864なのー」
偽7「ハーッハッハッハッハッ・・・」
7「すみませんすみません、姉が本当にすみません」

4「ううう、僕なんか・・・僕なんか・・・・・・」

422:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/18 01:37:29 kTFlkbSF
>>413
>>419に同意
自分も欝話が来るのは一向に構わないから、今の話は続けてください。
楽しみにしてるんで・・・

423:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/18 02:00:56 l+XbjjGt
>>413
水銀燈は死に際さえ何も語られないあの話か

424:妄想のままに
06/04/18 03:17:35 F48kqBOe
今日も一日楽しかったです
蒼星石と一緒に遊んだですし、チビ苺や金糸雀を苛めて気分壮快でした
真紅とはくんくんの推理合戦で盛り上がったです。
結局は真紅に言い負かされちゃいましたけど・・・
けど、あの事件の犯人は絶対あの猫の小娘だと思うのです。翠星石が言うんだから絶対そうです。
のりの作ってくれたハンバーグも美味しかったですし
どうしようもないチビ人間も・・・・この翠星石が構ってやってるおかげで
引篭りとしては真っ当な日々を送ってるです。
とにかく、今日も楽しかったです。

425:妄想のままに
06/04/18 03:20:38 F48kqBOe
そんな風に、何気なく一日を振り返る緑のドレスに頭巾を被ったドールが一人
明日はどんな楽しい事が始まるのだろうか・・
太陽はすっかり沈んでいて、空には数多の星とまん丸のお月様が浮んでいる
時計の針は9時を指していて、もう寝床に着く時間である
「おやすみなさい」
「おやすみなのー」
「あぁ、おやすみ」
そう眠りの挨拶をすると、2人は鞄を閉め深い眠りに着く
ドールにとって、睡眠の時間は過去と今を繋ぐ大切な時間なのだ
机で勉強に勤しむジュンは、私達がせっかく声を掛けたのに
本人ときたら教科書とばかり睨めっこして
まぁったく、翠星石達が声を掛けてるんですから少しはこっちに振向いたらどうなんですー?
大体チビ人間はですね~・・・
何て頭の中で一人説教をごねていると
「おい」
「ひっ!」
「ん・・・寝ないのか?」
「い、いきなり振向くなですぅ!」
突然のジュンからの声にあわてて部屋から出る
「なんだよ・・まったく・・・」
バタン、そのまま背中に腕を組みドアにもたれ掛かる
何だろう、この胸のドキドキは・・ちょっとジュンに声を掛けられただけなのに
「こんなんじゃ、眠れないです・・」
「あら、どうしたの翠星石ちゃん」
振り向くと寝間着を着たのりが心配そうにこちらを窺っている
彼女はいつも私達を気遣ってくれて、引篭りの弟もいるのに大変な野郎ですぅ
そんな人柄から、この娘には何でも相談したくなるのだが
今回ばかりは打ち明けるわけにもいかないので、頭の中でストッパーがそれを押し止める。
「な、なんでもないですーのりはもう寝るですか?」
「うん、翠星石ちゃんも早く寝なきゃダメよ」
翠星石のその言葉を聞くと、のりの曇っていた顔が途端に晴れ渡る
この女の前じゃおちおちあくびも出来ないですねぇ
お節介にも等しい心配性の彼女だが
でも、そんな所がみんなから好かれていると翠星石はいつも思っている
「それじゃあ私もそろそろ寝るね」
そう言い残し、のりが自分の部屋に戻ろうとしていたその時
そんなのりの背中を見詰めながら、翠星石の頭の中で1つの考えが過ぎった。
そして、その考えが口に伝わり声に漏れてしまう
あわてて頭の中で揉み消そうとしたがもう遅かった
「ちょ、ちょっと待つです」
「え、何かしら」
案の定、のりの歩が留まりこちらを振り向いてしまった
思わず頭の中で後悔と混乱が渦を巻く
何で引き止めちゃったんだろう、こんな事したらどうなるか・・・
ええーい、落ち着くです翠星石!言っちゃった物は仕方ないです!こうなったらとことん貫いてやるです!
「えーと、ですねーー・・・」

426:妄想のままに
06/04/18 03:24:19 F48kqBOe
「・・・・」
翠星石が部屋を出てからもう30分くらい経つだろうか
あれからすっかり気が滅入り、一応机に座ってはいるが勉強に気合いが入らない。
「・・・僕が何したって言うんだよ」
誰もいない部屋で(2体のドールはいるが)答えの帰って来ない疑問が宙を舞う
僕が何したって言うんだよ、悪いのはあいつだろ?勝手に出てって・・・
なんでこんなに気にしているんだ僕は・・
「・・・トイレに行くだけだからな、あいつの事はついでだからな・・」
そんな言い訳をしながら、何一人で喋ってるんだろう僕は・・・
席を立ちトイレへ、もとい翠星石を探しに部屋を出ようとする
ジュンがドアの前まで歩を進め、取っ手に手を掛けようとしたその時
ガシャ、
「うわっ」
ドアが開き翠星石が戻ってきた、しかし
ジュン「なんだ、人がせっかくトイレ・・・いや、・・ん?」
「えーと・・・」
ドアが半開きで、翠星石は頬を赤らめ顔だけ出している
何と言うか、全部出てこない。
「どうしたんだよ、さっきの事気にしてるのか?
・・・えーと、何か気に障る事したんなら謝るけど」 
「そんなんじゃないです、べ、別にあれは何でもないです・・・」
どうやら自分のせいじゃないらしい。そうと解ると、少しおちょくって見たくなった
・・・が
「そうなのか、あーじゃーわかったぞ、おねsッグハッ!」
"おねしょ"と言う前に消しゴムが飛んできた、どこに隠し持っていたのやら
顎に当たってそのまま後ろのベッドに倒れ込む
「だ、だぁ~れが!ドールはチビ人間みたいに汚い老廃物なんか出さないのですー!
乙女の前でそんな汚い事吐きやがるんじゃねーです!この老廃チビ人間!」
頭を抑えながら、・・・倒れた拍子に打ったらしい。必死に言い返す
「いってて・・・、消しゴム投げる乙女何て聞いた事ないぞ!じゃーなんなんだよ」
「そ、それは・・・・」
この反論に翠星石がわずかにたじろぐ、効いたのか?
「わ・・・笑うなですよぉ・・・・」

427:妄想のままに
06/04/18 03:26:22 F48kqBOe
そう一言告げると、頬を赤らめたままドアを開き全貌を露わにする
次はどう言い負かしてやろうか、そんな事を考えていたジュンだが
翠星石の姿に途端に思考が止まってしまった
目の前にいる翠星石は、いつもの緑のドレスに頭巾を被った服装ではなく
長袖に長ズボンで首の付け根に留め具のボタンが二つ付いた、布は緑色の柄に水玉模様の
言わいるパジャマ姿の翠星石がそこに立っていた。
「ど、どうしたんだよ・・・その格好」
あまりの予想外の展開に戸惑うジュン
いや、別に服装が変わる事はおかしい事じゃないんだが、こいつらがいつもと違う服を着ている所何て
金糸雀のミーディアムの家でコスプレ何て事をしたらしいけど・・・
この目で見たのは初めてだったので、尚更なのかもしれない
「え、えーと・・・」
戸惑うジュンとはまた別に、翠星石の頭の中もてんてこ舞いになっていた
のりにお下がりのパジャマを貸して貰って、それを着たまではいい物のそこから何も考えてなかった
困り顔でちらちら自分を覗うジュン
それが更に彼女の顔を赤くさせる、もう少しで真っ赤なリンゴになってしまいそうだ。
そして、そんな時間がしばらく流れた。そして、この空気を断ち切ろうとジュンが口を開ける
「とりあえず、寝たらどうだ・・?その、ドールにとって眠りの時間は大切なんだろ?
ほら、もう9時も過ぎてるし」
ジュンは目線を時計に向ける。時刻はもう10時半だ
本来9時になると寝ているドール達、翠星石にとっては結構な夜更しだろう
「・・・いやです」
「え?」
「・・・せっかくパジャマを着たですのに、このまま鞄で寝る何て
それじゃ着た意味がないです。翠星石はごめんです」
これまた予想外の事態に困り果てるジュン
そして翠星石は顔を赤らめ俯きながら、・・・腕を揚げ、ベッドで頭を抱えて座るジュンに指を指した
「・・そこで、寝たいです・・・」

428:妄想のままに
06/04/18 03:28:16 F48kqBOe
・・・どうした物か、僕はただいつもの様に
翠星石達が鞄で寝て、机で教科書の問題を解いて、その後僕も寝て、起きて・・
そんな普通の日常を、いや、動いて喋る人形がいる何て普通じゃないか、いや、今はそんな事じゃなくて

どうしてこんな事になったんだ?

どうしてこんな成り行きになったのか、そんな多くの不確定要素が頭の中を渦巻きながら
今僕はベッドで寝ている
そして、その傍でパジャマ姿の翠星石が一緒に寝ている、同じ布団でだぞ!?
もちろん、こんな状態で易々と寝れるはずもなく
2人して目がギンギンに開いている。
お互いに背を向けて、何を喋っていいやら、この場をどうすればいいやら
1つのベッドの下で激しい心理戦が繰り広げられている
そしてそんな中、最初に口を開いたのは翠星石だった
「ジュ、ジュン・・、は・・・」
後ろから聞こえてくる声
掠れた声で、一言一言言葉に迷いながら綴られていく
「真紅の、事・・どう思ってるん・・・ですぅ?」
「え?」
これまた予想外の、これで何度目だろうか
「僕は、別に・・真紅の事は何とも、思ってないぞ・・・」
そう言葉を告げて、またしばらく沈黙が続いた

429:妄想のままに
06/04/18 03:30:01 F48kqBOe
そして、また翠星石の声が背中から聴こえてくる
「嘘です。・・・いつも真紅とばっかり、・・翠星石は解ってるんですよ?」
「別に・・そんなつもりは・・・・」
何でそんな事を聞いてくるんだろう・・・そんな事が頭を過ぎったその時
「・・・!?」
背中に衝撃が走る、けどさっきの消しゴムをぶつけられた時の様な感覚とは違う
そう、何かに抱き付かれている様な、・・・え?
「す、翠星石・・・?」
「え・・えぐっ・・・・」
背中から返って来た声は、とても掠れていて、・・泣いてるのか?
思わず振り返ろうとしたが、後ろから抱き付かれているので下手に振り向くわけにもいかず
仕方なくそのまま彼女に声を掛ける
「ど、どうしたんだよ・・また僕が何か・・・」
「ジュンは翠星石と契約したんです!もう、真紅だけのジュンじゃないんです!なのに、なのに・・・」
背中を掴む手が次第に強くなる
「でも、ジュンは真紅の事が好きなんです!翠星石はわかってるです!でも、・・・翠星石はっ!」
「泣くな!」
気付くと、自分が翠星石を抱きしめていた
何をしているのか自分でも解らない、けど
彼女が泣いてる姿をこれ以上見たくない!
「僕は、僕が真紅の事が好きかどうかは解らない、けど、僕にとって大切な人なのは本当だ」
「え・・えぐ・・・」
泣き続ける彼女を、僕は強く抱きしめ続ける
「けど、それは翠星石、お前も一緒だ!お前も僕にとって、とても・・・大切なんだ」
「お前が居なかったら、僕はここまで強くなれなかったと思う、いや、なれなかった」
「だから、そんなお前が僕の前で泣かないでくれ。お前は、僕にとって大切・・・だから・・・・」
そう一人で叫んでいると、いつの間にか胸元の彼女の泣く声はやんでいた
泣き止んでくれた事に安心するが、それから声が返ってこない
「翠星石・・・?」
あまりに何も喋らないので、心配になり声を掛ける
「ッグハ!」
胸元に顔を覗き込もうと下を向いたその時、勢い良くヘッドバットが顔面に飛んできて、そのまま倒れ込んだ。
「やぁーれやれ、チビ人間はとんだ語り野郎ですねぇ~
ちょっとの事で熱くなり過ぎなのですー」
あまりの態度の変貌ぶりに面を食らうジュン
「いきなり抱きつかれて、チビ人間の体臭が服に付いちゃったじゃないですかぁ
あーぁ、こんなチビ人間の臭いが付着した服を他の人間が着たら
その人間も引篭りに変身しちゃいますねぇー
恐ろしい呪いの引篭り増幅マシーンになっちゃったもんですぅ~」
「な、なんだとー」
「さぁーて、茶番も済んだ事ですし、翠星石はもう鞄で寝るですよー
おやすみです~~」
ジュンが反論する間もなく、瞬く間に翠星石は鞄の中に入ってしまった。
残ったのは、やり場の無くなった想いと、顎と後頭部、顔面の打撃痕が計三ヵ所
「・・・まるで僕がバカみたいじゃないか・・・・」

430:妄想のままに
06/04/18 03:31:05 F48kqBOe
鞄の中で、翠星石は寝ずにいた
まだ少し目が潤むが、手で擦り取る
だって、哀しむ事何てないのだから・・・
ジュンにはあぁ言った物の服に付いたジュンの臭いをかぎくと、自然と顔が和らぐ
ジュンに想われている実感、それがとても嬉しかった。今まで悩んでた自分がバカみたい
それから一通り妄想にふけ、翠星石は一言ぼやき、眠りついた。
「真紅には負けないですよっ!」

431:妄想のままに
06/04/18 03:32:34 F48kqBOe


ただパジャマ翠が見たかっただけ何ですが
いざ出来上がってみると予想とは大きく違う出来となってしまいましたw
本当にありがとうございました

432:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/18 09:01:33 PmRxoUJV
今にも萌え死にそうです
一体どうしてくれるんですか

433:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/18 14:20:05 r9FQiVx9
>>424-431
翠星石が実に翠星石らしくて良かった


434:熊のブーさん
06/04/18 22:41:34 LwpP9Iv9
世間では新学期が始まってはや一週間。皆様いかがお過ごしでしょうか。

……忙しすぎてSS全く書けません。だってもう(以下略)
遅くなりました。ターミネーター翠完結させておきます



435:熊のブーさん
06/04/18 22:42:39 LwpP9Iv9
《ターミネーター翠~第三部~》

ジュンが目を覚ましたときにはもうお昼頃だった。
「おはようですぅ。寝ぼすけチビ人間」

朝食を兼ねた昼食を食べて、今日も始まるバイクの旅。
ジュンは唐突にとある文庫のことを思い出し、
(旅って大変だなぁ)
と、いまいち覚醒してない頭で悟ったのはまた別の話。
「今日はどこまで行くんだ」
「とりあえず元の町まで戻るですぅ。うまくすれば入れ違いになって化け物を撒けるですぅ」
……あれ?
「もーしもーし翠星石さーん。姉ちゃんらを巻き込まないために町を出たんじゃなかったっけ?」
「そんなこと一言も言った覚えはねぇですぅ。未来から来た存在が過去に干渉したら何が起こるかわからんから極力「標的」のみに危害を加えるはずですぅ」
「今までの苦労は一体……」
「不特定多数とは接触、会話、物をあげる等もってのほかですぅ。殺害なんて論外ですぅ」
「僕を普通に殺そうとしてるじゃないか」
「ほんとはNGですけどね。平たく言えば“殺した後の歴史が変化するなら利益があるかも”と思われるから狙われるのですぅ」
「かもって……なんともいいかげんだなオイ」
「まだはっきりしないのですぅ。たとえ何か重要な発明をする過去の人間を殺しても別の人間が発明するだけで歴史は絶対に変わらないという説もあるのですぅ」
「ある意味僕はモニターだな」
「モニターと言うよりはモルモットと言ったほうがしっくりくるですぅ」
ジュンはとりあえず翠星石の髪を引っ張った。


436:熊のブーさん
06/04/18 22:43:25 LwpP9Iv9
しばらくすると町が見えた。
「なんかすごい早く付いたような気がするのは気のせい?」
「行きは遠回りに回り道に行っては帰っての連続だったのですぅ。直線距離で見ればそんなに進んでいないのですぅ。気が付かなかったのですか?」
まったく分かりませんでいた。はい。
「人がたくさんいそうなところで身を隠すですぅ。人を隠すには人の中ですぅ」
「そんなとこあるか?」
「市街地なら人がいるはずですぅ!」

今日は月曜日の真っ昼間。人通りなど無いに等しい状態だった。
「そうか……世間では今の時間帯は学校なのか」
ジュンはしみじみと思った。
「まぁ僕には関係ないけど」
「チビ人間。携帯を貸すのですぅ」
「何に使うんだ?」
「チビ人間は知らなくてもいいのですぅ」
ジュンの額に一瞬「怒りマーク」が浮かんだがすぐに消える。
護衛してもらっている手前、携帯ぐらい貸すべきだろう……ジュンはそう考えた。
「ほら」
「どーもですぅ」
「携帯使えるのか?」
「愚問ですね。翠星石をなめるんじゃねぇですぅ」
翠星石は携帯を受け取るやいなやすごい速さでキー操作をしている。さすが未来のロボット。
「もしもし?」
電話のようだ。自分の携帯を使われているので何を話しているか聞きたいところだがそんなことをするのは野暮だろう。
ジュンは手持ち無沙汰に周りを見回していると見知った顔を見つけた。
向こうもこちらへ気が付いたようで手を振って近づいてくる。
蒼星石だ。


437:熊のブーさん
06/04/18 22:45:01 LwpP9Iv9
「探したよジュン君。いきなり失踪なんてどういう事だい?」
―ちとやばい。未来の翠星石と蒼星石が出会ったらとんでもないことになるかも知れん。
「こんにちは。小さなお嬢さん」
「なッ!?」
何話しかけてんだ翠星石ぃーーー……ありゃ?
そこにいたのは翠星石では無かった。レースの付いたスカーフは何処へやら、髪はゴムで無造作に縛り、瞳の色は両方とも澄み渡るような青に変わっていた。心なしか声も違う気がする。
「……変装?」
ジュンは小声で呟いた。
「この子の知り合い?私、警察官でね」
翠星石は何処からか警察手帳らしきものを取り出し、蒼星石に見せた。お前それ、偽造だろ。
「パトロール中に駅前で浮浪少年見つけたから保護してたのよ」
「あぁ、これはどうもありがとうございました」
「いえいえ~」
なんかとんでもない設定を組まれてジュンは憤った。
その時、ジュンの五感に何かが走った。得体の知れない嫌なヨカンにジュンは戦慄する。またUMEOKAが近くにいるのだろうか?
「じゃあ連れて帰ってね。もう家出なんてさせちゃダメよ?」
翠星石はジュンの背中を押した。そっと囁く。
―向こうにUMEOKAがいたですぅ。撃退するのでこの子と共にいてください―
勘も当たるようになってきたか。
「さて、お別れよぅ。浮浪少年!」
さっと踵を返して翠星石は通りの角に姿を消した。
「いい人もいるんだね。さ、帰ろうか」
「……そうだな」
ジュンはいまいち釈然としないものを感じながらも蒼星石に手を引かれていった。そういえば携帯持ってかれたじゃないか。
「会いたかったよ……ジュン君」


438:熊のブーさん
06/04/18 22:46:51 LwpP9Iv9

「待つですぅ!!」
一方で翠星石はUMEOKAと交戦中だった。
入り組んだ市街地で屋根から屋根へ、路地から路地へとUMEOKAは移動を繰り返しつつ時折鉤爪で攻撃してくる。ヒット・アンド・アウェーだ。
―昨夜襲撃してこなかったのは地理を確かめておくためか……行動を読まれていたことに翠星石は舌打ちした。
「なめるんじゃねぇですぅ!!」
隙を見てショットガンで銃撃する。避けられた。弾かれた。なかなか当たらない。
「こんな戦い方が出来るなんて……やっぱり進化してやがるのですぅ!」
ジュンの方も気がかりだった。かなり離れてしまった。早めに合流しないと何が起こるかわからない。
しばらくして、翠星石はUMEOKAを狭い路地に追い詰めた。
「もう逃げ場は無いですぅ」
ショットガンを構える。
唐突に対峙していたUMEOKAが溶けた。
「なっ!?」
そのままUMEOKAは再生することなく液状化した。
「…………やられたですぅ」
完全に出し抜かれた。UMEOKAの目的はジュンと翠星石を離すことだったのだ。
「すると本体は何処に……あ……大ピンチですぅ!!」

やっぱり悪寒がする。ジュンはいまだに抜けない悪寒に首をかしげていた。
「寄りたいところがあるんだ。一緒に来て?」
「ん。わかったよ」
のろのろと歩いていくとそこは図書館までの道。
「図書館に行きたいのか?」
「……そうだよ」
エンジュのドールショップの脇を通ると、白崎がいた。
「あれ、こんな時間に通りかがるとは珍しいじゃないか?」
「あぁ、どーも」
蒼星石ともども、足を止める。
世間話でもして行こうかと思ったら白崎の眉根に一瞬しわが寄った。見間違いだろうか。
すると一転して玩具を見つけた子供のような目でこちらを見てくる。
「なにか僕の顔に付いてますか?」
「いやいや……ジュン君」
もったいぶるような口調で告げる。早く言えよ。
「とりあえず鏡を見てみたらどうだい?」
一言だけ告げると店の中に引っ込んでいった。


439:熊のブーさん
06/04/18 22:47:47 LwpP9Iv9
「鏡なんて……これで見てみるか」
店のショウウィンドウを覗き込んでみた。別に何もおかしいところは―
冷や汗が出た。脇にいる蒼星石のオッドアイがおかしい。
振り返ってしっかり見てみる。左右逆だった。
「ジュン君……どうしたの?……」
(冷静になれ冷静になれ冷麺になれ桜田ジュン!! 落ち着いていつも通りしていれば…っ!)
蒼星石がショウウィンドウを覗き込んだ。そのときの驚愕した表情はジュンのトラウマ確定だろう。
偽蒼星石が溶けて瞬時にUMEOKAの姿に戻った。ジュンは一目散に逃げようとしたが一足遅い。気が付いたら地面に組み伏せられていた。
「現地時間で現在時刻十五:四十二分。これより桜田ジュンの抹殺を決行」
笑顔で死刑宣告が下った。
ジュンは抵抗してみたが全く動けない。もう諦めてこれまでの人生をざっと回想してみた。
―死んでも死にきれん。
ジュンはまた暴れまくった。
「離せ変態液体教師!! この×××××な×××! ××××!! ×××××!!」
放送禁止用語の雨あられを浴びせたが全く効果が無いようだ。
「抹殺」
鉤爪が振り下ろされた。ジュンは思わず目をつぶる。
鋭い金属音がした。
ジュンは恐る恐る目を開けた。首はまだ繋がっている。
首だけ何とか動かして様子を見た。鋏が脇から鉤爪を受け止めている。


440:熊のブーさん
06/04/18 22:48:46 LwpP9Iv9
「蒼星石ぃ!!」
UMEOKAは面食らったようだったが、もう片方の手も鉤爪にしてジュンを殺そうとする。
今度は脇からステッキが鉤爪を受け止めている。
「真紅ぅ!!」
「翠星石、雛苺! 今よ!!」
店のショウウィンドウのガラスの表面がぐにゃりと歪んだ。
瞬時に無数の蔓がUMEOKAをガラスの中に引きずり込む。
「桜田ぁぁぁ……―     」
UMEOKAはガラスの中に完全に引きずりこまれ、かわりに二体の人形が出てきた。
「翠星石……雛苺……た、たすかったぁ~~~」
「で、何が起こっていたのか説明してもらおうかしら、ジュン」
「昨日の夜電話があってね。ジュンの声で“殺人鬼に追われているぅ!!”とかかかってきたんだよ」
電話をかけたのは未来版翠星石だろう。変声機かなにか使ったようだ。
「ジュンが家出した挙句壊れちゃったかと皆心配したんですよぅ」
「そしたらさっきまた電話がかかってきたのー。今度は“ドールショップ・エンジュの前でジュンが襲われている”っていってたのー」
「「「「説明しなさい」」」」
異口同音に問い詰められた。
「実はな……」
「はいーみなさんちょっとお待ちくださいー」

四体の人形が声の主を見ようと顔を上げた途端、カメラのフラッシュのような光が辺りを包み込んだ。一瞬遅れてジュンも顔を上げる。
サングラスをした未来版翠星石が立っていた。
「良いですか?」
頭の奥に響く不思議な声色だった。ドールズは虚ろな目つきで首を縦に振る。
「貴方達は殺人鬼のこと等全く分かりません。電話の内容は全て忘れます。これより一週間はnのフィールドは立ち入り禁止です。そして貴方達はこれから真っ直ぐ家に帰ります。良いですか?」
ドールズがまた首を振ると未来版翠星石がパチンと指を鳴らした。
ドールズはぞろぞろと桜田低に向かって歩いていく。
「簡単な暗示ですぅ。これで事後処理は完璧ですぅ」
「襲われそうになった時どうして店の前だって分かったんだ?」
「?そんな電話かけてないですよう?」

441:熊のブーさん
06/04/18 22:49:41 LwpP9Iv9
「え?」
「何はともあれ、ミッションコンプリートですぅ」
ジュンはようやく肩の荷が下りたような気がした。
「お別れですぅ桜田ジュン。もし、次会うときには兵器としてではなく……いや、なんでもないですぅ」
「短い間だったけど、ありがとな」
ジュンは恥ずかしさから顔を伏せた。
「縁があったらまた会いましょう。貴方の人生が良いものでありますように……」

     ふいに、ジュンの目の前が閃光で満ちた。

「……くん……ジュンくん……」
「んあ?」
「ジュン! いつまで寝てるつもりなの!!」
真紅のツインテールが唸りを上げる。
「いってぇーーーー!!」
気が付いたらリビングで寝ていた。DVDが付けっぱなしになっている。
タイトルは「ターミネーター」
―夢、だったのかな―
「ジュン。さっそく仕事よ。お茶を沸かして頂戴」
「いきなりかよ」

擦り切れたジーンズにワイシャツが玄関に置いてあったのだがのりが片付けてしまっていた。
ジュンの記憶からこの二日間の出来事がおぼろげな思い出となる日まではそう遠くないだろう。

          おわり

442:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/18 23:01:33 0dccl3si
感動した!!GJ!


443:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/18 23:28:10 6mHpIgBP
早い展開がアクション映画っぽかった。GJ!

444:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/19 23:28:33 IwahMVgg
そろそろ新作wktk

445:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/21 09:29:59 tk0qswRY
ちょっと質問。
契約の破棄って、ミーディアム側から出来たっけ?
あとnのフィールドの出入り口は鏡とかパソコン画面だけ?

446:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/21 10:17:46 a7A+HO60
>445
基本的にほぼ不可能。無理に剥がそうとすると指の肉ごと指輪が
剥がれ落ちると真紅が言ってました。
唯一例外的なのはミーディアムの心が閉じてドールとの絆が極端に薄くなると
指輪にヒビが入る。消滅するかまでは謎(第一期最終話付近ジュン参照)

出口は鏡、パソコン画面、ショーウインドウのガラス、水溜りなど、ある程度
ものを映せるものならば結構アバウト。
入り口は命の欠片が宿っているもので上記のものなら可能。アニメでは水溜り、
ショーウインドウのガラス、鏡などから入る事が出来た。けど水溜りに命の欠片が
宿っているかは謎・・・きっと製作サイドのミs・・・

447:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/21 17:38:54 XBwtP0Bv
原作もそんなこと定められてない。

448:ケットシー
06/04/21 23:11:29 YxDWa/GC
続き投下についての意見どうもです。
どうやら大丈夫そうですね。
今日は鬱話じゃない方の投下いきます。

449:あべこべろーぜんめいでん
06/04/21 23:12:27 YxDWa/GC
>>412

 真紅は屋敷内を速い足取りで歩き回っていた。ジュンを探しているのだ。
「どこまで行ったのかしら……」
 なかなかジュンが見つからないので、真紅の顔に焦りの色が出始める。
 走って探そうかと考えた時、真紅は自分と同じように屋敷を歩き回っている少女を見つけた。
 大きな瞳の幼い顔立ちが可愛らしい雛苺だ。彼女は真紅の一つ下の妹で、同じ中学生だ。だが、その童顔のために、よく小学生と間違われる。
 雛苺はあっちこっちと見ながら真紅の先を歩く。何かを探しているようだ。
 少しして、彼女は後ろを歩く真紅に気付く。すると、走って向かってきた。

「お願い、真紅。手伝ってほしいのお」
「ごめんなさい。私も忙しいの」

 何のためらいもなく断る真紅。助けが欲しいのは真紅も同じだ。それにしても、このあっさりとした対応はさすがだ。
 しかし、雛苺も負けてはなかった。目に涙を溜めて食い下がる。
「そんなこと言わないでぇ。ヒナのお友達が迷子なの。一緒に捜してほしいの」
「知らないわ。他を当たってちょうだい」
 しつこいので真紅の口調もきつくなる。それでも、雛苺は諦めずに見つめてくる。急いでいる真紅は、脇を通り抜けようとした。
「お願いなのぉ。大事なお友達なのっ」
「雛苺っ、離しなさい……!」
 雛苺が真紅の腰に抱きついて追い縋る。それほどまでに大事な友達らしい。
 しかし、真紅にも大事な用事がある。腰に回された腕を振り解こうと無理にでも足を前に出す。それに、雛苺が必死にしがみつく。

「イヤなの。今は真紅しかいないの。お友達はお人形さんなのよ!」
「なんですって!」


450:あべこべろーぜんめいでん
06/04/21 23:13:27 YxDWa/GC
 真紅の態度が一変する。このタイミングで「人形の友達」と聞けば、あの生きている人形しか思い浮かばない。
 真紅は後ろに振り向き、雛苺の両肩に手を置いて尋ねる。

「貴女もローゼンメイデンを所持しているの?」
「うん、真紅は聞いてないの? ヒナは水銀燈から聞いたのよ。真紅もお人形さんとお友達になったって」
「聞いてないわ……」

 雛苺は真紅がマスターになったことを聞かされていた。何も聞かされてなかった真紅は、のけ者にされたようで気分が悪かった。だが、これは自業自得と言える。一日中、部屋に篭って家族とのコミュニケーションを疎かにしていれば、こうなっても仕方がない。
 真紅はしがみつく雛苺を引き剥がし、まさかと思って聞いてみる。
「他にもあの人形を所持している人はいないでしょうね」
「多分、いないと思う。それより、早く捜すの」
「そうね」
 二人は協力してドールの捜索を再開した。



451:あべこべろーぜんめいでん
06/04/21 23:14:14 YxDWa/GC
 廊下の真ん中を三体の人形が歩く。子供より小さい人形が歩くと、広い廊下が更に広く見える。ジュンの両隣にはめぐと巴が陣取っている。まさに両手に花の状態だ。
 だが、二人に挟まれたジュンは生きた心地がしなかった。度々、めぐと巴は互いを牽制し合って視線で火花を散らす。先程、ドロップキックの応酬をしたばかりなのもあり、二人の仲は最悪だった。
 そんな中、我慢を知らないめぐが、さりげなく手を繋ごうとする。当然のように、目を光らせていた巴は見逃さなかった。彼女はジュンの後ろを回ってめぐを突き飛ばした。

「桜田君に触らないで」

 めぐは倒れそうになるのを堪えて、キッと睨み返す。二人の間の険悪度が一気に増す。
 一触即発の空気の中、ジュンは声を震わせて仲裁に入る。見た目によらず、勇気のある男だ。

「仲良くしようよ。久しぶりに会ったばかりだし。ね?」
「ジュンが言うならそうする~。私っていい子でしょ? そう思うでしょ?」
「あ、ああ」

 急に明るく振舞うめぐに気圧され、ジュンは仕方なく頷く。返答に満足しためぐは、子供のような屈託の無い笑顔を見せる。本当に喜んでいるようだ。
 時々、ジュンはめぐのことが解らなくなる。このような笑顔を見せる子が、真顔で襲い掛かってくるのだ。それがアリスゲームのためだとしたら、彼はやめさせたかった。そんなのは悲しすぎるからだ。
 複雑な表情でめぐを見つめるジュンを、巴は心配そうに見ていた。



452:あべこべろーぜんめいでん
06/04/21 23:15:05 YxDWa/GC
「トモエーっ」
 大きな声で呼ばれ、人形達が一斉にそちらに振り向く。声の先には、駆けてくる雛苺と、その後ろを歩く真紅の姿があった。
「捜したのよ。突然いなくなるから……」
「ごめんなさい」
 やはり、雛苺は巴のマスターだった。巴を抱き上げて軽く叱る。
 遅れてきた真紅は、何も言えずにそれを眺めていた。そして、ジュンと目が合う。

「僕を捜しにきてくれたの?」

 真紅は返答に詰まる。彼の言う通りなのだが、それを認めると負けなような気がしてならない。
「違うわ。そこの雛苺に頼まれただけなのだわ」
 ジュンが落ち込んで俯く。その分かりやすい反応が、真紅をじわじわと責め立てる。真紅は彼に背を向けながら言う。
「ジュン、部屋に戻るわよ」
「いいの?」
 ジュンはまだ部屋を追い出されたことを気に病んでいた。黙ってついてこればいいのに、と真紅は心の中で髪の毛を掻き回す。
「人形に家の中を歩き回られても困るのよ。誰かに見られたらどうするの」
「わかったよ」
 真紅は適当な言い訳を考えてジュンを連れ帰った。彼女は本当に強情なマスターだった。



つづく

453:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/22 00:53:18 bVv+uK97
続きを期待。

でも次の投下は鬱話の方?

454:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/22 03:55:25 lt9GwWFe
コンセプトは『14行縛り』。



「ねぇ水銀燈。あなたの姉妹にも、羽はあるの?」
 不意に、めぐが尋ねてきた。姉妹と聞いて、思い出したくもないあの子の顔が、私の
頭の中をよぎった。
「―ないわ。私だけよ」
「そう……あなたは『お父様』から愛されているのね。羨ましいな」
 そう言うと、めぐは寂しそうに笑った。愛されている? 私が?
「他の子にはないものを、あなたは持っているのよ? 愛されている証拠だと思うよ?」
「私は愛されてなんかいない。愛されようとも愛そうとも思わないわ」
 私にだけ羽をくれたお父様は大好き。白い羽をくれなかったお父様なんか大嫌い。
 でもお父様に会いたい。会って、どうして黒い羽なのかを確かめたい。
 フフッと、めぐが悪戯っぽく笑った。私の胸の内を見透かしたように。
「……二度と馬鹿な質問をしないで頂戴」
「水銀燈って、ホント屈折してるよね♪」
 あなたほどじゃないわ。めぐの言葉を聞いて、私は心の中でそう反論した。



終わりです。

455:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/23 06:53:40 /3xE337k
ツンデレデレw

456:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/23 17:44:29 JodXDikc
ちゃんとお話が成立して14行。すごいですね

457:ケットシー
06/04/23 20:02:26 BvhBhrN0
総合スレの続きいきます。
陰鬱な話ですので、苦手な方はご注意ください。

458:薔薇乙女戦争
06/04/23 20:03:56 BvhBhrN0
>>総合スレ5の782

 夜が明けて、今度は翠星石と雛苺が帰らなくなったのをのりが知る。真紅から聞いた彼女は、用意した朝食を見て悲嘆に暮れた。
 そして、自分の事以上に弟の心配をした。立ち直りを見せていた所なのに、これが原因で再びひきこもってしまうかもしれない。のりは様子を聞いてみた。

「それで、ジュン君は……?」
「ジュンなら心配ないわ。今、自分にできる事をしようとしている。強くなったものだわ」


 二階のジュンのベッドはすでに空だった。いや、昨晩からベッドは使われていない。寝床の主は朝になってもカーテンも開けず、机で一心に針を操る。手には深緑の鮮やかなドレス。彼のために命を落とした者のドレス。彼には一つの想いがあった。



459:薔薇乙女戦争
06/04/23 20:04:44 BvhBhrN0
 ある日の午後、裁縫道具を片付けたジュンは、大きな鞄を片手に外へ出た。薔薇の金細工が施されたその鞄は、ローゼンメイデンの持ち物だ。
 向かう先は人形の専門店。そこは巴に教えてもらった人形工房で、ジュンは足繁く通っていた。彼が通うのには理由がある。そこの人形師は得体の知れない技術を持っているようなのだ。
 一度、人形に生命を吹き込む所を見せてもらったが、その光景が薔薇乙女と重なって見えたのだ。無論、彼女達のように自在に動いたわけではないが、その神業には恐怖すら覚えた。


「桜田君、いらっしゃい」
 人形売り場に入ってすぐ、店員の白崎が声を掛ける。ジュンとは人形制作の手伝いをする仲なので、客相手のよそよそしさはない。棚の埃を掃っていた白崎は、ジュンの鞄を見て手を止めた。

「随分と大きな鞄だねぇ。それにとても古そうだ。何が入ってるんだい?」
「人形です。先生に見てもらおうと思って……」
「それは君の人形かい?」
「そうです」

 はっきりと持ち主だと主張するジュン。少し前までの彼なら「男が人形なんて」といった感じで恥ずかしがっただろう。だが、今の彼にそんな思いは微塵も無い。人形である彼女のあの生き様を見たら、恥ずかしいとはとても言えない。
「彼ならいるよ。行こうか」
 変化を感じた白崎は、ジュンの顔を確かめるように眺めてから奥の工房へ招き入れた。


460:薔薇乙女戦争
06/04/23 20:05:50 BvhBhrN0
 店内から仕切りのカーテンを潜れば、そこは職人の領域だ。一般人は見慣れない素材や機材が並ぶ。
 そして、その先に彼は居た。奥の作業机で人形の制作に打ち込んでいた。職人気質な彼は、人の気配に気付いても構わず作業を続ける。
 終わるのを待っても仕方がないので、白崎が無遠慮に声を掛ける。

「桜田君が来たよ。何か見せたい物があるんだって」

 槐は手を休め、のっそりした動作で振り向く。別に機嫌が悪いわけではないのだが、どことなく怖い。そして、彼の目も鞄で留まる。視線に気付いたジュンは改めてお願いする。
「僕の人形なんです。見てくれませんか」
「持って来て」
 ジュンは言われてすぐ、鞄を手渡しに奥に行く。槐は作業中だった机の上を片付け、受け取った鞄を置いた。
 鞄の留め具を外して開ける。中から光が溢れ、薄暗かった工房を照らす。その光を見た槐は、鞄の蓋を持ったまま動かなくなった。驚いているのを見てジュンが説明を始める。

「生きている人形ローゼンメイデン―人形師ローゼンの傑作と名高いあれです。でも、壊れてしまって……。それで、先生なら直せるんじゃないかと」
「美しい……」

 今の槐の耳には何も入らない。この光に魅入ってしまっているのだ。白崎はそんな彼の様子に驚き、鼻眼鏡を掛け直す。

「光っているのはローザミスティカと言って、人形の命みたいなものらしいです」

 説明は続けられるが、槐は歓喜の笑みを浮かべてローザミスティカを手にする。そして、静かに眠る翠星石を見て涙した。その涙には喜びと悲しみが入り混じっていた。

「この子は素敵な主人と巡り逢えたんだね。この命の輝きを見れば判る。今はゆっくりおやすみ。愛しい私の娘よ……」


461:薔薇乙女戦争
06/04/23 20:06:50 BvhBhrN0
 ジュンはそれを聞き逃さなかった。私の娘―彼は確かにそう言った。前からもしかしてとは思っていたが、今は驚きよりも期待が先を行く。生みの親なら生き返らせることも可能なはずだ。あの水銀燈のように。

「あなたがローゼンだったんですね。お願いです。翠星石を直してください」
「残念だけど、それはできない」

 返事は無情なものだった。娘に命の奪い合いをさせているのは彼なのだから、この返事は想像できた。だが、あと一歩の所まで来たジュンに、そんな考えはできない。いや、したくない。

「どうしてッ! あなたの娘なんだろ。今だって泣いてるじゃないか!」

 槐は今も流れる涙を隠そうともしない。彼も悲しいのは同じだった。しかし、考えは変わらない。憤るジュンを諭すように話す。

「君もこのローザミスティカを見るんだ。この輝きはアリスに相応しいと思わないか? 彼女はドールとして生をまっとうしたんだよ。そんな彼女を認めてあげないでどうする」

 話を聞いてジュンは愕然とした。価値観があまりにも違いすぎる。アリスゲームを強いた彼を以前から疑問に思っていたが、これは決定的だった。ジュンは肩を震わせて咆える。

「翠星石はアリスに拘ってなかった。もっと生きたいと言っていた。勝手に決めるなよ! 離れていたあなたに翠星石の何が分かるッ!!」

 言うだけ言ったジュンは肩で息を切らす。それをじっと聞いていた槐は、悪いと思いながらも微笑んだ。

「今のだけでも君の愛情の深さが分かるよ。君になら娘を嫁がせてもいいとさえ思った。娘達が揃って成長する訳だ……」
「真面目に聞けよ!」
「私は至って真面目だよ。だから忠告しておく。ローザミスティカは有効に使うんだ。でないと、君のもう一人のパートナーも無事では済まない」

 そう言った槐は、ジュンの薬指の指輪を見やる。真紅のことを思い出したジュンは言葉に詰まる。最近の彼は翠星石のことしか頭に無かった。姉妹を亡くした真紅はもっと辛いはず。
 そのまま勢いを失くしたジュンは、槐ことローゼンを説得できず、工房を出る羽目になった。



つづく

462:ケットシー
06/04/23 20:08:57 BvhBhrN0
設定の違いで混乱すると思ったので、ここで言っておきます。
アニメと違って槐をローゼンにしました。したがって、薔薇水晶も本物の第七ドールです。
偽者だと話がややこしくなるので、アニメのひねりをなくしました。(単にめんどくさかったとも言う)
当分の間は、こっちの投下がメインになると思います。
もう片方は話が煮詰まってからにしようかと……。すみません。

463:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/23 21:47:02 rqcIEhPh
まあ気長にやってください。
続きを楽しむのは読者の特権ですw

464:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/23 21:54:38 L0X5w6k+
蒼星石「アッー!」

465:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/23 22:00:16 LO8x75h3
・・・・グッジョブ

466:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/24 01:28:07 3rl8RoWD
槐の「ローザミスティカは有効に使うんだ」という台詞が気になりますね。
今後の展開に期待してますw




467:放蕩作家
06/04/24 03:07:48 3rl8RoWD
>>298の続きです。
書くのが遅すぎですね、すみません。
それと作者は原作をほとんど読んだことがありません。
原作をろくに読んでないパットでがssなんて書くんじゃねぇ、という方は
スルーしてくださってかまいません。
それではどうぞ。



468:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/24 03:07:54 AK2XMAko
翠星石。・゚・(ノД`)・゚・。



469:放蕩作家
06/04/24 03:10:33 3rl8RoWD
図書館で日ごろ溜まった熱いパトスを開放したジュン(違
その後あらゆる苦労をして、なんとか図書館の奥で見つけた本を借りることができた。が、その途中経過は本編と
なんの関係もないし、書くのもたるいので省略(J ひどっ!!  
とにもかくにも、ジュンは本を家に持ち帰った。
自分の部屋に上がる時、居間にいた真紅たちに「ただいま」と声をかけたが、誰一人としてジュンの方を見ず、上
の空に「お帰り」というだけだった。全員『人形探偵くんくん』に夢中になっているからだ。「あんな子供騙しな番
組のどこがいいんだ?」とぼやきつつも、この本を見られずにすんだので、少なからずほっとしていた。
 ジュンは人形劇に夢中になる真紅たちを横目に階段を登っていった。テレビではくんくんが「犯人はあなたです!
こうもり伯爵!!」と決め台詞を決めているところだった。



「まず目次から見てみるか。えーと、なになに」
 目次は次のようになっていた。

P4~P95   第一章 製作記  
P96~P170  第二章 ローゼンメイデン  
P171~P190 第三章 アリスゲーム  
P191~P224 第五章 ローザミスティカ  
P225~P256 こ  を  だ ー    へ

「最後のところだけ字が消えかかって読めないな・・・。とりあえず『製作記』のところを・・・」
パラパラと流し読みするジュン。
「十二月二日 どんな宝石よりも輝かしい乙女、アリス。ああ、彼女のバラのような、いやそれ以上の微笑みを早く
見たい。・・・製作記、ね。ようは性悪人形どもの製作日記ってとこか」
 関心したように呟くジュン。
「・・・ってそういえば何でこんな本、存在するんだ?」
 かなり大きな謎だったが、今考えるべきではないと思い、とりあえず保留にしておくことにしたジュン。

470:ローゼンメイデンの秘密
06/04/24 03:19:14 3rl8RoWD
 しばらくの間ジュンは、ローゼンメイデン製作日記ともいえる物を読んでいった。
最初の方はなにか重要なことが載っているかも、と思い、一日一日を丁寧に読んでいったが、案外どう
でもいいと思われる事が書かれていることが多く、だんだんと流し読みしていた。
 それでもこれを書いたと思われる人形師、ローゼンの薔薇乙女への、いやアリスへの執着を感じずに
はいられなかった。
 最初は「どんな宝石よりも輝かしい」とかそのくらいだったアリスの表現が、次第に「夜空に輝く満
天の星々や、女神のように煌く月ですら、彼女に比べればガラス玉でしかないだろう・・・」というよ
うにアリスを(ジュンからしてみれば)大げさ過ぎる美麗美句でかざっているのだ。
 ジュンはさらに読み進めていった。本の右ページ、右下の数字がどんどんと増えていく。数字が74ま
でいった時、ジュンの手が止まった。気になる単語と文章を幾つか読み取ったからだ。
「一月二十三日 錬金術最高の奥義、『夜空のかけら』から作られし生命石『ローザミスティカ』。
 私はこの奇跡の石をさまざまな文献や研究書を読みながら作ったが、できたこと自体、奇跡だろう。
 ただでさえ製作するのが困難、いやほぼ無理といっていい『夜空のかけら』を作り、生命を創り出す
 という神の所業を可能とする『ローザミスティカ』を作ったのだ。奇跡といわずなんといおう。
 ・・・古来から『夜空のかけら』を求める者は後を絶たない。なにせこれがあるだけで、錬金術の夢
 (例えば不老不死、銅を金に変える、等々)全てが叶うのだから。
 ・・・『夜空のかけら』、ね。今度ネットで調べてみるか。怪しげなグッズに混じって、あるかも」
 いや、ないだろ。
 さらに数ページめくる。
「一月二十七日 だめだ!だめだ!!だめだ!!!どうしてもだめだ!私の創った娘たちは誰一人とし
 てアリスには程遠い。彼女たちには何かが足りない。それが埋まらない限り私の理想の乙女、アリスは
 誕生しないのだろう。一体なにが足りない? その答えはまだ出ない。
 ・・・あいつらはアリスを目指すためにアリスゲームをしている、っていってたよな。ということは、
 アリスゲームの勝者はその『足りないもの』が埋まるといことなのか?」
 疑問を口にするジュン。無論それに答える者はいない。
 ジュンはまたページをめくり、ローゼンメイデンのさらなる謎を解き明かしてくれるだろう、正体不
明の本を読み進めていった・・・。



471:454
06/04/24 03:29:26 Qs65RrRK
>>456
長文を書くと、まとまりがなかなかつかなくて。逆転の発想で、短い文で何が
どれだけ書けるかにチャレンジしてみました。
とはいえ、残り行数を気にするあまりに、あちこちいじりまわし、結局ラスト
1行はケツカッチン気味。
すごい、と言われると、面映ゆい限りですが、感想ありがとうございます。

472:放蕩作家
06/04/24 04:31:34 3rl8RoWD
>>470
とりあえずここまでで。
続きます。
そういえばローゼンメイデンが一人も出でない・・・。

473:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/24 12:40:54 hn4XSSE7
それなんてラヴクラフト??

474:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/24 15:35:42 3fOWnXC1
謎が謎を生み、どんどん深まっていくんですね
続きwktk

475:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/24 22:14:27 hn4XSSE7
では、以前リク貰った水銀燈と金糸雀が入れ替わる話しを投下。

476:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/24 22:18:09 hn4XSSE7
「第1楽章ぉぉっ、攻撃のワルツゥーッ!!」
金糸雀のバイオリンが衝撃波を打つ。
nのフィールド中の空気が水銀燈の攻撃を阻む。
攻撃の性質上、金糸雀は接近戦を得意としない。特に格闘に至っては水銀燈にかなり遅れをとっている。
それを知る水銀燈は、このゲームを自分の有利に進めるべく、何度となく接近を試みてはいるものの、
音波の攻撃に阻まれて思うような戦いを仕掛けられないでいた。
決定打に欠ける金糸雀は、攻防を繰り返しながら充分な距離を稼ぎつつ、既に退散の機会を伺っている。
埒があかないと判断した水銀燈は、一時体制を整えるために、攻撃の手を緩め、上空高く舞い上がる。
「しめた、その間にカナは逃っげるかしら~」
しかし、それは水銀燈の予想した行動であった。
「ふっ、あなたの思考なんてお見通しよぉ!」
そそくさと逃走に入る金糸雀を見計らったように水銀燈が攻勢をかける。
いっきに勝負を決しようと、上空から金糸雀に急接近し一撃を加えようとする。
「と、見せかけて…最終楽章!破壊のシンフォニィィィ!!」
金糸雀もそれを読んでいた。きびすを返し楽章飛ばしの攻撃を仕掛けてきたのだ。
「ああっ、ずるいわよ金糸雀!次は追撃のカノンとやらじゃない!!」
その攻撃を避け切れないと判断した水銀燈は、衝撃波の中にモロに突っ込んだ。
そのまま金糸雀を仕留めようとの魂胆だったが、思いのほか厚い金糸雀の放つ空気の壁に目測を誤り、
また金糸雀も水銀燈が肉を切らせて骨を絶つような真似をするとはおもいもよらず、
両者は急接近の末、激突して気を失った。


水銀燈が目を覚ました時、静けさを取り戻したnのフィールド内にはもはや金糸雀の姿は無かった。
「くっ、逃がしたか……」
しかし、体を起こした水銀燈が上を見ると、ピチカートがくるくる回っている。
「は?ピチカート??」
水銀燈に緊張が走る。
金糸雀がまだ近くに潜んでいる、そう考えた水銀燈は安全圏である上空に避難しようとしたが、飛ぶ事が出来ない。
「あれ…?」
ようやく体の変化に気付いた水銀燈は、自分の状況を客観的に理解して愕然とした。
水銀燈は金糸雀の体と入れ替わっていたのだ。
「な、何これぇぇぇぇ!!」
右手で素早くピチカートを捕まえた水銀カナは、人工精霊を脅迫するかのように説明を求めた。
「これはいったいどういう事よぉ!!」


477:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/24 22:19:14 hn4XSSE7
「カナ―おかえりー!」
金糸雀と入れ替わった水銀燈をみっちゃんが出迎える。
ピチカートの話から状況を理解した水銀カナは、とりあえず金糸雀を見つけるために、金糸雀のミーディアムの家で網を張ることにしたのだ。
とりあえず、他のドールが尋ねてこなかったかを聞くために、声のした方向に目をやると、みっちゃんはバスルームで粘土作業をしていた。
「あんた、なにやってるのよ?」
「見て、見てぇ!カナが一度入りたいって言った露天風呂みたいにしてみたのよ、どう?」
それは昨日のTV番組の影響だった。温泉旅行に興味を示し、「一度行ってみたいかしら~」
などと言ったものだから、みっちゃんがバスルームを1日がかりで改造したのだった。
壁一面に紅葉の風景写真を貼り、無骨な蛇口には石膏でライオンを模ったり、岩のオブジェが配置されていたりした。
石膏は水に弱い事がたまに傷なのだが、そんな事は気にしない。金糸雀のためなら何でもやるのがみっちゃんスピリットである。
「さー、私も汚れちゃった、カナ一、一緒に温泉しましょー」
そう言ってみっちゃんは水銀カナの目の前で服を脱ぎはじめた。
『なんなの?この人間…』
唖然としながらみっちゃんの裸を見ていた水銀カナだったが、はっと一つの結論が脳裏をよぎった。
『こ、このままじゃ、私、剥がされる!!』
案の定、普段の着せ替えで鍛えたみっちゃんの早業に抵抗虚しく脱がされて行く水銀カナ。
「ち…ちょっとぉ…」
神業的な手捌きが水銀カナを襲い、気付いた時にはもう下着を残すのみ。しかも、みっちゃんは既にバスタオル姿。
逃げるにしても攻撃するにしても、金糸雀のボディでは勝手が解らず、あたふたとするだけで好い様にあしらわれてしまう。
「カナ~、温泉の元は何がいいカナ~なんちゃって……カナ?」
恥ずかしさと憤りで水銀カナが切れた。
「いいかげんにしなさいよー!」
ガブリ!とみっちゃんの手をかじり、そのままぷらーんと垂れ下がり状態。
事態が飲み込めずにしばらく固まっていたみっちゃんだったが、やがて手の痛さが彼女を現実にひき戻した。
「イャ――!カナが家庭内暴力を――!!」
パニック状態で手をブンブン振り回すが、そのままスッポンの様に放さない。
ようやくみっちゃんの魔の手を逃れた水銀カナは、近くの窓のカーテンで自分の体を隠しながら、真っ赤になってみっちゃんを睨む。
「あ、あんたばっかじゃないの、そんなブサイクなお風呂なんて聞いたことないわ!」
打ちひしがれるみっちゃんを後に、そのままカーテンを引きちぎった水銀カナは外に飛び出したのだった。
『こ…こんな所になんかいられないわよ!』
みっちゃん轟沈。


478:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/24 22:20:28 hn4XSSE7
その頃、カナ水銀は上機嫌で夜空の散歩を楽しんでいた。
「うっはぁ~最高の気分かしら~、一時はどうなっちゃうのかと思ったけど、これはこれで良いってことかしら。
でもおなかがスースーする…なんでお父様はおなかを作らなかったのかしら…」
月齢14.7の月が街を明るく照らし出している。月の光りを受けた夜間飛行はカナ水銀の一つの疑問を解決した。
「そうよ、この体におなかが無いって事=軽量化ってことよ。飛ぶ事に特化した体には最適の設計だったのよ!
さすがお父様…でもカナは遠慮したいかしら……」
そんなこんなで暫く月光浴を楽しんだカナ水銀だったが、一人でいても楽しくない。
そこでちょっとした妙案をおもいついた。
「そうよ、この体で真紅たちをぎゃふんと言わせに行こうかしら。
しかも何やっても水銀燈に責任をなすりつけられるじゃないかしら~ふっふっふ!」
これといってやる事もないので、とりあえず桜田家にちょっかいをだしにむかったのだった。

「たーのーもー!」
夕食を楽しんでいた桜田家のドールズは、その声を無視しておかずの争奪戦を繰り広げている。
「あー!だめなの!これはヒナのソーセージなの!」
「そんなの知らないですぅ!隙あらばいっただきですぅ!」
「おまえら、いいかげんにしろよな!いっつもいっつもおかずの取り合いばっかしやがって!!」
見事に無視を決め込まれたカナ水銀。怒りに任せてトイレの窓から室内に進入しドアを開けて食卓に乱入する。
「って、あんた達!!こっち向きなさいよ!!」
迷惑な奴が来た…という視線が一斉にカナ水銀に注がれる。
「な、なにかしらその目は…」
たじろぐカナ水銀に雛苺のソーセージをぱくつきながら、翠星石が食卓代表として質問する。
「一体、何しにきやがったのです?」
何しにきたのかと言われても、何しに来たわけではないのだが、何かしなくてはやっぱりいけないと考えたカナ水銀は、
食卓にたまごやきを見つけて、つい、こう口走ってしまった。
「たまごやき…おいしそ~」
瞬時におかずの皿を抱え、一目散に庭へ逃げ出すドールズ。
「ああっ、ちょ、待っ、たまごやきぃー!」
カナ水銀もドールズを追って外に出る。
やれやれ…とばかりにのりとジュンは食事を済ませて後片付けを始め出す。


479:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/24 22:21:40 hn4XSSE7
上空からドールズめがけて黒い羽が降り注ぐ。
3体のドール達はこれを巧みにかわしながら、カナ水銀の攻撃から逃げ回っている。
「くう~っ、おかず如きを本気になって横取りしようとは、薔薇乙女の風上にもおけねーです!!」
おかずを死守しながら叫ぶ翠星石は、いつもの自分の行いを棚にあげておく。
当のカナ水銀は、ドールズが自分の攻撃に手も足も出ない事に恍惚を感じていたのだった。
「うはっ!これは良い気分かしらぁ~!一度でいいから真紅たちをギャフンと言わせてやりたかったのよ!」
恍に浸るカナ水銀に、真紅が訝しげに問う。
「水銀燈…あなた、キャラ変わった?」

カナ水銀はこの戦いに感動しまくっていた。勝利の気分に酔いながら、高らかに自分の強さを宣言する。
「ふっふっふーあなたたちって、やーっぱりローゼンメイデン一の策士、金糸雀がいないと何にもできないのかしら~!」
「はぁ?金糸雀…?なんであんなのがローゼンメイデン一の策士って事になるのですぅ?」
「金糸雀はヒナのお友達なのー」
「まぁ、ドジっ子であることは確実なのだわ。雛苺といい勝負ね、本人の前では言えないけど」
好き勝手言うものである。
そんな言葉に、さっきまでの爽快感が一転し、金糸雀の自尊心が音を立てて崩れて行く。
「あ、あなた達!私を何だと思ってるのかしら!!あームカムカするかしら!!」
「何で水銀燈が反応するです?あなたには関係ない事です!」
「水銀燈…もしかして金糸雀に遅れをとった事でもある訳?」
「ヒナは金糸雀怖くないもん」
ドールズの会話は、徐々に金糸雀にたいする暴露大会の様相を呈してゆく。
「そう言えばこの前、nのフィールドからの帰りに、金糸雀ったらおしりが大きすぎてつまっちゃったのよね」
「うわ!トロイですぅ。静岡県は丸子名物むぎとろろ汁ですぅ」
「ヒナねー、かにみそが隣の家の屋根から落っこちる所を何度も見たのー」
ドールズの会話を聞いていたカナ水銀は、恥ずかしさの余りぷるぷると体を痙攣さながら、
顔を真っ赤にして3人の井戸端会議を力ずくで遮った。
「ええいうるさーい、みんなこれでも喰らうかしらーっ、まっくろなビーム!!」
カナ水銀の放つ漆黒の龍が襲い掛かる…が、何ともセンスの無いネーミングである。
目からナントカと同じセンスが伺えるような気がするのは気のせいだろうか?
「あなたたちなんか!あなたたちなんか――!!!」
半泣きでわめきながらめちゃくちゃに乱射する。
土はほじくり返され、庭木は折れ、塀が半壊する。
「わぁぁぁぁあ、止めるです水銀燈!ていうか、なぁんであんたが一々反応しやがるのです?!」
逃げ回るドールズ。収拾が付かなくなって、もう家のそこら中が穴だらけである。


480:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/24 22:23:01 hn4XSSE7
ボロロン!!
カナ水銀の後方から、弦を爪弾く音が夜空にひびきわたる。
「いいかげんにしときなさいよ」
静かな怒気を含んだその声に、カナ水銀が弾かれた様にふり返る。
「誰!かしら?!」
そこにはバイオリンをアコースティックギターの様に演奏しながら、満月をバックにした水銀カナが、
電柱の上からドールズを見下ろして立っていた。羽織ったマントが月明かりに翻る。
中は当然肌着だけ状態。ちょっと間違うとストリーキング。
彼女の肩が怒りに震えていた。水銀カナはみっちゃんの所から逃走した後、めぐの病院に向かったのだが、
そこで見た光景は悶え苦しみながら運ばれて行くめぐの姿だった。
どうやら調子に乗って力を使いすぎ、金糸雀はミーディアムを疲弊させてしまったらしい。
「あなたのせいで…あなたのせいで、めぐが集中治療室に入っちゃったじゃないのよぉ!!」
しかし、そんな事言われても、金糸雀はめぐなんて誰なのか知らない。
復讐の決意を胸に秘めて白いマントをなびかせながら、といってもみっちゃん家のカーテンなのだが、
カルメンの第3幕への前奏曲を情熱的に掻き鳴らす。
ジャン ジャジャ ジャンジャンジャンジャン!ジャン ジャジャ ジャンジャンジャンジャン!
ジャン ジャジャ ジャンジャンジャンジャン!!!
薔薇が宙を舞い、ドールズたちは一斉に掛け声を上げる。
「オ・レ!!」
…マンボだったら「ウ!!」とでも返したに違いない。
だがカナ水銀だけは、演奏の超絶技巧を見抜いて動揺していた。デキル!心の中でそう思ったけれど言葉には出さない。
「おほ、おほほ、おほほほほほ、何かしらぁ?どっかの渡り鳥にでもなったつもりなのかしら~ぁ?」
そのネタは古いぞ、カナ水銀。


481:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/24 22:24:09 hn4XSSE7
各々外野がエールになっていないエールを飛ばす。
「カナガワーがんばるですぅ!」
「かにみそーがんばるのー!」
「将軍さまーまんせーなのだわー!」
顔を真っ赤にしたカナ水銀のヒステリーじみた声が響き渡る。
「そこっ!!今喋ったの誰かしら!!?」
全員です。
「だから、なーんで水銀燈が反応するです?」
カナ水銀が気をとられたその一瞬を衝いて、水銀カナが素早く攻撃を仕掛けた。
「いっくわよぉ、序曲!背徳の不協和音!!!」
遅れをとったカナ水銀の顔に緊張が走る。
『わわっ!一体どんな演奏が奏でられるって言うのかしら!?』
しかし、思わず身構えたカナ水銀の予想とは裏腹に、バイオリンの弓を空中に投げ捨てた水銀カナは、
爪で弦を直につまんでそのままゆっくりと上下にしごきだした。
ギャキキキィィィイイ!!!!
そこから放たれる音は黒板を引っ掻く様な強烈に不快な音。
桜田家の窓が粉々に割れて吹き飛ぶ。屋根がビリビリと共鳴しだす。
「わあぁぁぁぁ!!これはたまらないですぅぅぅ!!!」
「くぅぅぅ、金糸雀、止めるのだわ!!」
この攻撃にはカナ水銀も耐え切れずに、失速して地面に突っ伏しのたうち回る。
「ひいいいいぃ、何てハイレベルの演奏なのかしらー!!ジョン・ケージも真っ青かしらぁ!!」
いや、これを演奏とは言わないぞ。
予想外の攻撃にカナ水銀は這いずりながら逃げに入る。逃げ足だけはローゼンメイデン一。
「ちょっと、待ちなさい!」
水銀カナが追撃に移行する。だが、金糸雀の体では水銀燈に追いつく筈が無い。
遠く逃げゆくカナ水銀を見ながら、水銀カナは攻撃の手段を変えることにした。
「…金糸雀、めぐの仕返しはあなたのミーディアムにさせてもらうわよぉ」

2体が去った後、ドールズは穴だらけの庭に呆然と佇んでいた。
「金糸雀…おそるべき嫌がらせ攻撃ですぅ…」
「…水銀燈の攻撃の名前って『まっくろなビーム』って言うのね…」
「ダッサイ名前ですぅ」
「ほんと、最低のセンスだわ」
「うにゅー、たまごやきがじゃりじゃりなのー」
こうして水銀燈の黒龍波は、まっくろなビームと呼ばれることになった。


後編へつづく。

482:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/24 22:26:52 hn4XSSE7
ついカッとなって前後分割をやってしまいました。今は反省している。

後半の場面はみっちゃん家の御風呂シーン再び。1週間後位に予定。

483:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/24 22:40:47 lz9Scdsa
笑わせていただきましたw

484:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/24 22:55:14 j2FPrOJW
笑ったwww
期待して待ってます

485:DOLL HOUSE  1/8
06/04/25 00:19:55 DLzHsNc9
「誇り高き我が名前、真紅にかけて誓う。 貴方をここで。 処刑するわ。」

「ヒナねぇ、こんな気持ちになったの初めて。 これからすっごくすごく酷い事するつもりなのに。
 ……ちっとも可哀想に思えないの。」

「お前のボキャブラリーなんてタカが知れてますけどぉ、命乞いするだけしてみたらどうですかぁ?
 ひょっとしたら気が変わっちゃうかもしれないですよぉ。 に・ん・げ・ん。」

クスクスと笑う声に総毛立つ。 愛らしい声。 だが、その双眸には情なんて一かけらも見当たらない。
憎悪。 そうだ。 人形達の瞳が秘めたもの。 それは、憎悪と……殺意だった。

恐ろしい。 心の底から恐ろしい。
もし人間だったら、これほどまでの憎悪を抱えていても、なお笑えるものなのだろうか。
少なくとも僕にとっては、笑いは喜びの発露だった。

これは何なんだ? 夢なら、夢なら今すぐ覚めてくれ。
いつもと同じように起きて、いつもと同じように過ごした日。 いつもお馴染みの桜田家で。

僕はいま、命を落とそうとしている。


何なんだ、この状況は。 本当にここは、あの憩いの桜田家なのか。
逃げる。 動かないに等しい頭に、その単語が浮かんだ。
そうだ、逃げなくては。 ここから、この状況から、逃げなくては。

「はっ……ひは……」

なのに。 走ろうとすると膝に力が入らない。 何か言おうとすると言葉にならない。
ただただ怖い。 恐怖という感情がこれほどのものだなんて、知らなかった。
それでも、生きてこれたのだ。 今日までは。

シンクが静かに動いた。 瞳がそれを認識した瞬間。 僕は弾かれたように走り出した。

でも、それでは遅く。
明確な殺意を持った拳が、僕の顔面に叩き込まれた。

486:DOLL HOUSE  2/8
06/04/25 00:20:54 DLzHsNc9
「えふぁ……!」

顔面を襲う衝撃。 僕は「痛い」という単語が浮かぶ間もなく吹き飛んだ。
あっけなく床に転がる僕。 慌てて立ち上がろうともがく。
だが、焦れば焦るほど、直ぐに立てない。 早く! 早くしないと!

痛いっ。 手に何か刺さった。 何かの破片だ。
横を見ると、僕がぶつかったせいなのか、花瓶が割れて辺りが水浸しだ。

……化物だ。 改めて思い知った。 理性で考えまいとしても、絶望感が押し寄せる。
人は殴られたくらいじゃ、何メートルも吹き飛んだりしない。
それを、あんな小さな人形が。

喋る。 動く。   人を…殺す。
あいつらは、あの人形は紛れも無く化け物なのだ。


周りを見回す。 ここはリビングを出て直ぐの場所だ。
そしてまだ、人形たちはリビングから出て来ない。
生存本能がなんとか僕を立たせた。 …玄関はすぐそこだ。 外に出さえすれば…!

一歩。 二歩。 三歩。 駆け出すと、体に力が湧いてきたような気がする。
やった、追いつかれてない! 何とかなる……!


はずだった。

「え……?」

玄関など無かった。
いや、あったはずなのだ。 あったはずのものが 消 え た 。

「ジュン……」
背中から声。 正しいかどうか、考えもしなかった。 そんな余裕は無かったのだ。
僕は立ち止まって、後ろを振り返ってしまった。

487:DOLL HOUSE  3/8
06/04/25 00:22:14 DLzHsNc9
シンクがいた。
近い。 5メートルも離れてない。 死ぬ。 殺される。
死を予感する自暴自棄な気持ちと、最後まで生を諦めきれない気持ち。

感情が僕の口をついて出た。

「なんでこんな事するんだ!? 一体、僕が何をしたって言うんだ!!」
「理由なんて無いわ。」

シンクはさらりと即答した。


は?
僕の頭の中が真っ白になる。 無い。 理由なんて無いって言ったのか。
怪奇現象には理由がある。 その原因を解消すれば、命は助かる。 恐怖映画でお馴染みのパターン。

その可能性にすがっていた。 助かりたかった。
でも。 一縷の望みは、今、ゼロになったと宣告されたのだ。

「理由が無くてはこんな事をしてはいけない?
 あなたがいるのが気に入らないの。 同じ空気を吸うなんて耐えられないの。 ただ、それだけ。」

「痛くないわ。」
一歩、近付かれた。

「それは、とても甘美な眠り。 起こす者も無く。 もう誰も貴方を傷つけない。」
そしてまた一歩。

動けない。 すくんだままの僕に、最期の時が迫る。 助けて……助けて…!
前後も分からない、この奇妙な空間。 それを見つけたのは偶然だった。
学校の上履き。 頼りない筆跡で書かれた「JUM」。 学校。 そうだ。 こんな所で、終われない…!

瞬間、金縛りが解ける。 僕は弾かれたように体を翻し、この場から遠ざかろうと走り出した。

「翠星石。 そちらに行ったわ。 始末して頂戴。」
背中から聞こえてきた言葉は最悪なものだったが、止まる訳にはいかなかった。

488:DOLL HOUSE  4/8
06/04/25 00:23:12 DLzHsNc9
鼻の周りが腫れぼったい。
感覚が鈍くなっていて、痛いのかどうかも、鼻があるのかすら分からない。

おかげで口だけで息をしなければならない。 それがどうにも辛い。 肺に余計な負担が掛かっている。
喉が痛い。 服が重い。 こんな事なら、もっとラフな格好をしておくんだった。

「止まるです。」
正面に小さな影。 スイセイセキだ。 誰が止まるか!

ガクッ。 !? 心とは裏腹に、僕はもんどりうって倒れた。
あ、足が! 足が誰かに掴まれてる! ……いや、これは……草?

「うふふふ……ヒナもいるのよ♪ ふ、ふ。 ふふふ。 ヒナがやったの。 ヒナがやったのぉ~♪」
やられた! 正面は囮だったのだ。 無邪気に、楽しそうに笑いながら。 ヒナが暗がりから、僕の顔を覗きこんでいた。
神経を直接掴まれたような足の痛み。 元凶である彼女の笑みは、怖いくらいに無垢。

狂っている。 この人形達は狂っている。

「無様な成りですねぇ。 n のフィールドで私達から逃げきるなんて、最初から不可能なのです。」
止まってしまった事で、走り続けてきた疲労が一気に押し寄せて来る。
あぁ……もう駄目だ。 恐怖、後悔、悲しみ。 絶望感に、僕は怨嗟を吐き出さずにはいられなかった。

「……どうして。 どうしてこんな事するんだ。 ……理由も、無いなん、て。 じゃあなんで。 なんで僕なんだ……」
溢れてきた嗚咽が、視覚と直結して引っ込んだ。 スイセイセキ。 彼女の顔が、憤怒で、歪んでいた。
恐怖と……美。 動けない。 動く人形と、動けない人間。 なんという悪夢だろう。

「どうして? 理由が無い? ……お前が、言うですか。 …………よくも、抜け抜けと……!」
「……おやめなさいな。 言って聞かせたって駄目。 自分で気付かせなければ、なんの意味も無いのよ。」
理由? 理由がある、のか。 理由って何だ? どんな理由か知らないけれど、こんなの非道いじゃないか。
私刑。 自分の尺度で善悪を決めて。 それを僕に押し付けてるだけじゃないか……。

でも、もうどうでもいい。 もうどうしようもないのだ。 真紅の手が迫り、激痛。 僕の意識が失われていく。


「何してるんだ君たちは!!」
闇を払い。 失われた僕の意識を呼び戻した、その声。 なぜだか僕はその声を酷く懐かしいと思った……。

489:DOLL HOUSE  5/8
06/04/25 00:24:24 DLzHsNc9
「あっとゆーま♪ あっとゆーま♪」

うるさいな、まったく……日曜日くらいゆっくり寝させてくれよ。
まぁ、日曜日以外もゆっくり寝てるけど。
ふわぁ~と伸びをして眼鏡をかける。 んむ、09:20。 ……そう早くもないか。

「ジューン! 凄いのよー! 今日は朝からプリンなのー!」
失われた僕の意識を呼び戻した、その声。 苺の奴はいつも通りエンジン全開だ。
子供って、何でこんなにエネルギーが余ってるんだろう。

「にっちようびー♪ にっちようびー♪ きょうはいっしょぉー♪
 ジュンものりもずっといっしょぉー♪ にちようび、だぁ~いすき!」
……ったく。 何だよその歌は。 ……僕は顔を赤くなんてしないぞ。 しないったらしない。


「ほらほらチビチビ! くんくんが始まっちゃうですよ! ダッシュダッシュですぅー。」
性悪人形ご登場。 くんくんと聞いて、雛苺はスーパーダッシュで部屋から出て行った。

それを目で追った後、こちらに目をやってくる翠星石。 悪戯っぽく微笑むと、いつもの軽口を叩いてきた。

「んー、相変わらずジュンは寝坊助ですねぇー。 このまま永眠しちまうかと思ったですぅー。」
言葉は相変わらずだけど、いつもみたいな含みのある笑顔ではなくて。
なんだか純粋に……。 まだ半分寝惚けた頭で、そんな事を考えながらぼんやり彼女を見つめていると。

「な、何ですか、ジュン……そんなにじっと見て。 言いたい事があるなら、男らしくハッキリ言いやがれですぅ!」
「え? いや、なんか可愛いなって。」

っておい!! 何言ってんだ僕!! 思わず返答してしまったが、もう遅い。
あぁあ、赤い。 翠星石は今や完全にユデダコと化していた。 やばいやばいやばいヤバイやばい!

「と、突然何を言うですか! こ、心の準備ってものが…じゃなくて! ま、真っ赤な顔して、いきなり変なこと言うなですぅー!」
「こ、言葉のアヤって奴だよ! いつもと比べたらっつぅか……そもそもお前の顔の方が絶対に赤い!」
「ジュンの方が赤いですぅー! もうにんじん同然です! トマトです! パプリカです! 真紅よりも真紅ですぅー!」
「真紅って言う奴が真紅だ! アイデンティティの崩壊だ! 人気投票を怖れてももう遅いわ!」

「誰が私ですって?」

490:DOLL HOUSE  6/8
06/04/25 00:25:17 DLzHsNc9
戸口を見ると、そこには仁王立ちの真紅。 顔は笑っているが、目はマジだ。

「誰の人気が何ですって?」
「い……いえ……真紅様のミリキを得票数で計ろうとする馬鹿どもの愚を力説していた所で……」
「そう……良かったわ、ジュン。 惨劇には似つかわしくない朝だものね……。」

どうやら生存ルートに入れたようだ。
朝っぱらから人生を綱渡りしてしまった。 たぶん残機も1機減った。

「す、翠星石はもう行くですぅー。」
う。 翠星石が顔を伏せたまま、小走りに立ち去った。
まだビミョーに気まずい気はするが、なんとか有耶無耶になってくれたか。
なんか危ないムードだったよな、さっきのは……。

くいくい。 ん? 気付けば真紅が服の裾を引っ張っている。
……心なしか、顔がムスッとしている…ような?

「いつまでボケッとしているの、気の利かない下僕ね。
 ……下まで抱っこして頂戴。 それで、先刻の無礼は忘れてあげるから。」

苦笑する僕。 かなわないな、こいつには。

「はいはい。 これでいいですか、お姫様。」
「はい、は一回よ。 ……よろしい。」

真紅を抱き上げると、甘えるように頭をもたせ掛けてきた。
こいつのこういう仕草には、いつまでたってもドキッとさせられる。

それに、なんだろう、今日はみんな……やけに、優しい、ような気がする。
何だか恥ずかしくって、取り繕うように言葉を紡ぐ。

「まったく……ひょっとして僕は自分から憑り殺されようとしてるんじゃないだろうな。」
それに対する真紅の返答には……なぜだろう。 妙に真剣な響きがあった。

「馬鹿な事を言わないで。 私達が貴方を傷つける事なんて無いわ。 絶対に。」

491:DOLL HOUSE  7/8
06/04/25 00:26:56 DLzHsNc9
「貴方はもう、私達にとってかけがえの無い人間なのよ。
 私も、雛苺も、翠星石も、みんな貴方のことを大切に思ってる。」
 
「貴方がミーディアムだから、なんて理由ではないわ。
 知っているから。 貴方の強さを。 包みたいから。 貴方の弱さも。
 寄り添っていたいから。 貴方の優しさに。 …桜田ジュンを知ったから。 いま、私達は此処にいる。」

「貴方の喜びは私達の喜び。 貴方を喜ばせるもの全てに接吻て回りたいくらい。
 貴方の敵は私達の敵。 百の夜を越えて必ず償いをさせるわ。
 貴方の未来は私達の未来。 できるなら……これからも共にありたい。」

「ねぇ、ジュン。 こんな事を言うのは恥ずかしいけれど、私達は当世の常識に欠けているわよね。
 だから、たまにやり過ぎる事があると思う。 でも、それは真心の裏返し。

 それだけは、分かってほしいのだわ。 …………せめて、貴方には。」

……真紅は、真剣だ。 罪のない嘘をつく事はあっても。 冗談でこんな事を言うような奴じゃない。
胸が熱くなる。 こんな気持ち、言葉なんかで表せるはずがない。
それなら。 言葉になんか、しなくてもいい。 僕と真紅。 言葉が無くても、きっと。 「伝わる」気がするから。


だから居間に入った時、僕は何度も目をこすった。 ごし、ごし。  ごしごしごしごしごし!!
……梅岡。 うん、梅岡先生だ。 パンツ一丁で手足を縛られ、ボコボコにされてる点を除けば、不審な点は全く無い。
そう言えば昨日来るとかなんとか、柏葉が教えてくれてたし。

教師の癖に約束破ってんじゃねーよとか思ってたけど、来なかったんじゃなくて来れなかったんだね、先生。
あぁ、なるほどね。 さっきの熱弁はこれの予防線だったのね。 凄い力説だったよね。 うんうん。

真紅、これはアウト。

「……分かってほしいのだわ。 …………だめなの?」
真紅がどんなにかわいこぶった所で、目の前の梅岡が無かった事になるわけでもなく。
僕はあらん限りの声で叫んだ。

「何してるんだキミタチはぁァァァーーーーーーー!!!」

492:DOLL HOUSE  8/8
06/04/25 00:28:16 DLzHsNc9
「うっうぅぅ……本当なんだよ、桜田さん……。 人形が僕を襲ってきたんだよ……」
「きっと疲れて悪夢でも見たんですよぅ~。 先生、いつも一所懸命でいらっしゃるからぁ…。」
苦しい言い訳をしながら、姉ちゃんが梅岡を送りに行った。 苦手極まりない人だが、こうなると哀れだ。

「だって泥棒さんかと思ったの……」
スーツ姿で堂々と玄関から入ってくる泥棒などいない。

「気絶させてひっ捕えたんですけど、そしたら丁度おやつの時間になって……てへ☆ 今朝まで忘れてたですぅ~。」
含みのありすぎる笑顔が炸裂した。 おやつ>>>梅岡なのか。

「何より、対・水銀燈用に編み出した新必殺技『絆クロー』の威力を試したかったのだわ……」
そう言いながらアイアンクローでリンゴを軽々粉砕する真紅。 試すまでもないだろ、それ!

「…でも、お前らはこういう事しないと思ってた。 いくらなんでも、やり過ぎ…だろ?」
「…………だって。」
だっても何もあるかよ、と言おうとした刹那。

「だって、あの男。 以前ジュンを苦しめた人間に、似ていた、から。」

とか言うもんだから。 僕は二の句が継げなくなった。
似ていたも何も、本人なのだが……だから、許せなかった? …………僕の、ため?
見回して、気付く。 ………あぁ、そうなんだ。 雛苺も、翠星石も。 真紅と同じ理由なんだ。
薔薇乙女の矜持に触れても。 ……僕を、守ってくれようとしたんだ。 ……僕の心を、風がひとつ吹き抜けた。

「……分かったよ。 別に、責めたりしない。 ……って言うか、その……」

僕はくるりと背を向けて、小さな声で呟いた。 ありがとう。
恥ずかしくて、顔なんて見られたくない。 今、真紅たちがどんな顔をしてるかなんて知りたくもない。
でも、言葉には。 カタチにはしておきたかった。 だって分かったんだ。

真紅達が僕を想ってくれるように、僕も真紅達を想いたいから。

いつだって彼女達には曇りの無い笑顔でいてほしいから。


梅岡とかどうでもいいから。
                                         おわり

493:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/25 00:36:43 A2Q2prEt
GJ

梅岡哀れwwww

494:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/25 00:48:00 pC8QA9/A
GJ!

UMEOKAが~w
冒頭の夢はこれの伏線だったのか!

495:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/25 01:01:51 jXtajDIo
梅岡センセイご愁傷さまです。というか、最後の一行で吹きました。



懲りずに14行縛り。


「おはようです、蒼星石お姉ちゃん♪ 朝ご飯の準備が出来たですよ♪」
 いささか唐突な翠星石の言葉に、蒼星石は目が点になった。
「後から生まれた方が双子の兄、または姉なのです。だから、蒼星石は翠星石のお姉ちゃ
んですぅ♪」
 その日、翠星石は蒼星石の事を「お姉ちゃん」と呼び続けた。蒼星石の当惑なぞどこ吹
く風といった具合に。その夜、翠星石が寝付いたのを見計らって、蒼星石はジュンに事の
子細を説明した。
「―という訳なんだよ。すっかり調子が狂っちゃった」
「あ、ごめん。それを教えたのは僕」
「……頼むから、翠星石に余計な事を吹き込まないでよ」
「あくまでも、人間の場合として教えたんだけどなぁ……」
 蒼星石が刺した釘の穴を、少しでも広げるようにジュンは呟いた。蒼星石はキレた。
「それが余計な事なの! 被害を受けた僕の身にもなってよ!」
 それからしばらくの間、蒼星石がジュンと口を利かなかったのは言うまでも無い。


終わりです。

496:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/25 01:32:57 RZOneD4c
>>485
GJ!
まったく、真紅たちの想いとは裏腹に
JUMはひどいなw

>>495
まぁ、一生もんの失態だからねw

497:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/25 02:27:56 FpwZm5Yg
>>492
> 梅岡とかどうでもいいから。
声だしてワロタw

498:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/25 08:35:07 AItfTDBU
水銀燈「真紅ぅ~、今日こそジャンクししてあげるわぁ」
金糸雀「アリスゲームなんて下らねぇ!俺の歌を聞け!かしら」
真紅 「ヤック、デカルチャ~」


499:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/25 12:45:46 qCCg9Xf1
>>476
まっくろビーム、物の形を即座に表現し
命名された大変無駄のないネーミングですねw

続きwktk

500:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/25 13:39:06 95GlSkRk
>>492
アップルクラッシュは握力100㌔以上ないと出来ない荒技・・・恐ろしい

501:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/25 13:46:55 TNUsQMqB
ローゼンメイデンのエッチぃ漫画貼ったよ
女性管理人が趣味でやってる掲示板だから只だし安心
18歳以上の人~覗きに来てください(*´・ω・)(・ω・`*)ネー
URLリンク(bbs7.fc2.com)

502:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/25 16:14:50 UcvuU5iP
・・・の多様は避けた方がいい。
文章が安っぽく見えるし、点だけで何がしたいのか伝わりにくい。

503:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/25 17:40:02 AItfTDBU
俺は・・・を多用した文章を書くのも読むのも好きだったりする。
過去に感動を受けた神作品や、二次やエロだけでなく好きな商業作品を読んだ結果。
普通にドバっと使ってるし読んで面白いし、使うべき調味料はドバっと使うのがうまい料理。

もちろん・・・の多用を控えた文章にもいいのがあるよ、
そういうのが共存できるのがこのスレのいいところ。

504:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/25 17:56:08 0SOz2XSc
>>492
シリアスシーンとギャグシーンの使い分けが絶妙ですw
>>495
14行という限られた行数で巧妙に物語を展開していて、見事です。
>>502>>503
ようするに、職人が・・・をうまく使い分けれるかどうか、ってことかな。
この前投下した自分の作品は出来ているかどうか不安だけど・・・。

505:アルテマ
06/04/25 18:46:17 voDgzcuJ
薄暗い世界、空もなく、雲もなく、ただ殺風景な景色だけが広がる空虚な世界。
そんな空っぽな世界には凡そ不似合いな轟音が鳴り響く・・・・

ビシュン!ガキィィン!

nのフィールドと呼ばれる異次元空間で日夜繰り広げられる血で血を洗う戦い、
アリスゲーム

人形師ローゼンが作り上げし7体の薔薇乙女達によるローザミスティカを賭けた戦い。

六つのローザミスティカを得た者だけがなれる完璧なる乙女、アリス。
そのアリスになる為、この虚無の世界で今宵も2体の薔薇乙女が死闘を繰り広げていた・・・・・・・・



506:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/25 19:03:48 4h2Urafu
>>505
え、終り?w

507:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/25 19:09:21 O4wM2z9V
ジャームーオージーサーン
ハーーーーーーーーーイ

508:薔薇乙女戦争
06/04/25 19:40:49 rbUz2kmo
>>461

 薔薇乙女の父に会った。そう聞いた真紅は初め、何かの冗談かと笑い飛ばした。
 アリスにならなければ会えないとされるドールズの創造主。その偉大な存在とジュンがとうに出会っている。近所の店で「槐」と名を変えて人形師をしていると彼は言うのだ。
 話をするジュンの顔は、真剣そのものだった。もしかしたら、と彼女が思い始めるのに、そうは時間は掛からなかった。
 薔薇乙女の誰もが恋焦がれた「お父様」がすぐ手の届く所にいる。真紅はいても立ってもいられなくなり、帰ったばかりのジュンを連れて外へと飛び出した。


「ジュン、本当にここなの?」
「ああ、そうなんだけど……」
 道路上で佇むジュンと、それに抱っこされている真紅。二人が見ている先はただの空き地。
 それも普通の空き地ではなく、土地はアスファルトで舗装され、街路樹や小さな花壇で整備されている。まるで、ここには最初から建物など無かったかのようだ。
 ジュンは狐につままれた顔で突っ立っていた。今さっきあった店が消えているのだ。ここに店が建っていた痕跡が微塵も無い。魔法でも使ったのか、そうでなければ、本当に店があったのか。ジュンは記憶に自信が持てなくなりそうだった。
 この怪奇現象を確かめたかったジュンは、通行人を捕まえて尋ねてみることにした。彼はちょうど通りかかった地元の人らしい私服の青年を捕まえた。
「すいません、ここに人形の店ってありましたよね?」

509:薔薇乙女戦争
06/04/25 19:41:47 rbUz2kmo
 青年は抱いている真紅を見て奇異な視線を向けたが、質問に答えてくれた。

「そういえば、あったな。あれ? でも、いつの間になくなったんだ……?」

 青年は店があった場所を見て首を捻る。やはり、ジュンの思い違いなどではなかったのだ。
「それは確かなの?」
「おう、確かに―」
 青年の動作が固まる。
 やたらと目立っていた人形が喋ったのだ。そして、その人形と目が合う。

「何? 私の顔に何か付いてる?」

 異様に自然な動作で頬に手をやる真紅。青年の顔は真っ青になる。まずいと思ったジュンは慌てて取り繕おうと苦笑する。

「ぼ、僕の腹話術、上手いでしょ? 将来は芸人を目指してるんです」
「ジュン、何を言ってるの?」
「いいから、黙って合わせろ」
「私に命令する気?」
「そんなんじゃないって!」
「じゃあなんなのよ」

 喧嘩を始めた二人を見て後退する青年。数歩下がって距離を取り、一気に背を向けて走り去った。真紅のことがばれてなくても、危ない人だと思われたのは確実だ。ジュンは髪を掻き毟った。



510:薔薇乙女戦争
06/04/25 19:43:00 rbUz2kmo
 真紅はジュンの言っていた事が信じるに値するものだと確信した。確かに人形店は存在し、ローゼンはそこにいたのだ。真紅が出向くなり消えた店が、それを裏付けているようなものだ。 
 自室に帰宅した真紅はもう一度、槐について詳しく聞いた。そして、ジュンはその事について苦々しく語った。

「あの人は壊れた翠星石を見て「自分の娘だ」って泣いたんだ。それで、翠星石を直してもらおうとした。だけど、駄目だった。どうしてだと思う?」

 真紅には辛い質問だった。お父様はアリスの誕生を望んでいる。それを考えれば、答えは明確だった。

「翠星石は……今のままの私達は、お父様に望まれていないから……」

 最終的に求められているのは完璧な少女。不完全な命の欠片を持つ薔薇乙女などは、そこへ行き着くまでの過程でしかない。それは、真紅が生まれた時から承知していた事だった。
 それでも彼女が父親を愛せたのは、確かな愛情を受けて生まれたからだった。ローゼンは、いずれはアリスになる娘達に等しく愛情を注いだ。例え道具として創られたとしても、その愛情は本物だった。

「そうだよ。ローゼンは翠星石のローザミスティカを見て「アリスに相応しい」なんて言ったんだ。ふざけるなッ。翠星石は翠星石だ!」

 思い出して熱くなるジュン。ふと、真紅は彼女が羨ましく思えた。傍にいられなくなっても、想い続けてくれる人がいる。私が遠くへ行ってしまっても、この人は同じように想ってくれるのだろうか。

「翠星石はジュンの心の中で生きている。あの子もきっと喜んでいるわ」
「まだ僕は諦めてない」

 翠星石が死んだように言われ、ジュンは気分を悪くした。だが、絶望的なのは彼も解っていた。頼みの綱の槐には断られ、しかも、その槐がローゼン本人だったのだ。他に薔薇乙女を修理できそうな当ては無かった。

「わかってるわ。でも、これだけは言わせて」
「何だよ」
「もし、私が倒れても、ジュンの心の中に居させてくれる? 居場所はほんの小さなスペースでいいの……」


511:薔薇乙女戦争
06/04/25 19:43:50 rbUz2kmo
 ジュンは言葉を失った。激情に駆られて、またも真紅のことを忘れてしまっていたのだ。忘れていたばかりか、彼女を追い込むような質問さえしている。
 目の前の真紅は怯えているのか、いつもより小さく見えた。それに、あの真紅が負けを考えるような弱気になっているのだ。その心情は察して余りある。ジュンは不甲斐ない己に腹を立たせ、拳をぎゅっと固くした。

「そんなスペースはない」

 真紅は呆然と目を見開いて放心した。そして、俯いて肩を落とす。最後の居場所まで無くなったのだ、と……。
 だが、ジュンにそんなつもりはなかった。

「真紅は倒れない。僕が倒れさせない。だから、そんなスペースは用意してない」
「ジュン……!」

 感極まった真紅は、目頭が熱くなるのを感じた。しかし、気丈な彼女は涙は見せない。彼女は誇り高い薔薇乙女なのだから。
 そして、ジュンはその彼女に相応しい男に育ちつつあった。出逢ったばかりの頃の彼の暗さは影を潜めている。自暴自棄の彼に励ましの手を差し伸べ続けた成果が表れ始めたのだ。
 真紅は己のマスターを誇らしく思えた。同時に、不甲斐ないドールで申し訳なく思えた。いつしか戦いを恐れるようになり、蒼星石との戦いではマスターの負担を顧みない愚を犯してしまったのだ。
 ドールはマスターの期待に応えなければならない。真紅はジュンの想いに応えるべく、新たに決意を固める。
 二度と情けない姿は見せない。
 ゆっくりとだが、彼女の闘志は戻りつつあった。





512:薔薇乙女戦争
06/04/25 19:44:52 rbUz2kmo
 金糸雀は日傘を片手にnのフィールドを彷徨っていた。と言っても、当ても無くぶらついている訳ではない。彼女には目的があった。
 そして間も無く、彼女は目的の人物と遭遇する。

「アリスゲームを、始めましょう」

 白い髪の少女の開口一番は宣戦布告だった。
 それでも、金糸雀は驚かない。一斉に脱落者が出た今、これは至極当然の成り行きなのだ。

「まずは話を聞いて。ゲームはその後でもできるのかしら」

 日傘を差したまま、彼女は落ち着いて不戦の意志を告げる。薔薇水晶は何も言わずに静止する。それを了解と受け止め、金糸雀が話を始める。

「私は雛苺のローザミスティカを手に入れたわ。だから、持ってるのは二つかしら。あなたは?」
「答える必要がありません」
「そうね。でも、多くて三つかしら。真紅が少なくとも二つは持ってるもの」

 金糸雀は頭脳派と自称するだけあり、情報の収集に余念が無かった。住居が特定されている真紅の監視は比較的やりやすい。これを見逃すのは愚かだ。
 彼女は人工精霊のピチカートを偵察に連日送り、翠星石の脱落を知ったのだ。隙を突いて雛苺を襲えたのも、その努力があっての事だった。

513:アルテマ
06/04/25 19:45:22 voDgzcuJ
翠星石「ハァ・・ハァ・・・・」

息を切らす一体の人形、エメラルドとルビーの左右で色の違うオッドアイ、草原をイメージさせる様な緑のドレスに自身の背丈以上に長いブラウンの髪・・・・・・
 彼女の名は翠星石。人形師ローゼンが作り上げし第3ドール、人の夢の扉を開き、心を育て、癒す夢の庭師。
彼女もまた、自身の宿命に従い、アリスを目指して戦う者の一人である。

この日は自身の双子の妹である第4ドール・蒼星石に会いに行くため、nのフィールドを通って蒼星石が世話になっている家え迎う所だった。

普段は鞄に乗って空を飛んで移動しているのだが、生憎この日は大雨で、空を飛んで行くの不可能だった。そのため、普段は戦いの時ぐらいしか入らないnのフィールドを通って向かおうと考えたのだ。だが・・・

それが全ての間違いだった
―――
――




翠星石「ハァハァ・・・・・クッ!」

ジャキィィン!ズオォォン!

満身創痍の翠星石に水晶の巨槍が襲う。

ヒュンッ!

足元から不規則に出現する巨槍を紙一重で躱す翠星石。その表情からは余裕は感じられず、動くだけで精一杯だった。

514:薔薇乙女戦争
06/04/25 19:45:49 rbUz2kmo

「あちらはローザミスティカ二つに加えて、ミーディアムのジュンまで居る。正直、カナの勝ち目は薄いかしら」

 マスターを殺された金糸雀の戦力は、大幅にダウンしていた。ローザミスティカを一つ奪ったが、相手も同じように強くなっていては戦いが有利にはならない。真紅が翠星石のローザミスティカを使えば、金糸雀と同じ数になる。
 彼女はこの差を埋めるために薔薇水晶と接触したのだ。今から、そのための交渉に入る。

「もしもあなたにマスターがいないとしたら、やっぱり真紅には勝てないと思うわ」

 仮定が当たっていても、薔薇水晶の表情は変わらない。彼女も指輪の契約はまだだった。ローザミスティカも蒼星石から奪っただけなので、真紅とぶつかれば苦戦を強いられるのは確実だろう。
 だが、彼女はどんな状況でも真紅に負けるつもりはなかった。分が悪いのなら、目の前の少女の力を奪うまでだ。自然と瞳に殺気が宿る。
 敏感に危うい空気を感じ取った金糸雀は、事が起こる前に本題を述べた。

「そこで提案だけど、私と手を組んで欲しいのかしら」

 それは、同盟の提案だった。アリスゲームに明確なルールは無い。これも立派な作戦だ。

「もちろん、真紅を黙らせるまでの一時的なものよ。ダメなら、ここで命の取り合いをするしかないのかしら」

 共闘の誘いを受け、薔薇水晶は熟考する。
 ここで金糸雀を潰すのも悪くない。しかし、万が一にも手傷を負わされでもしたら、その後の強敵真紅に勝てる見込みは無くなる。
 アリスに選ばれるのは一人だけ。最後まで生き延びなければ意味がないのだ。最も優位な立場の者を蹴落としたいなら、下位で無用な争いをするべきではない。益々、上位が楽になるだけだ。
 それに、ここで誘いを蹴っても損をするだけだ。下手をすれば、金糸雀が他のドールと組む事もありえる。金糸雀があくまで最終的な勝ちを狙うなら、真紅を誘っても何ら不思議ではない。
 結論は出た。

「いいでしょう」

 その返事に満足し、金糸雀は不敵な笑みを浮かべる。薔薇水晶も同じ笑みでそれに返した。



つづく

515:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/25 20:11:51 HgjdDmIt
おまえら総合スレのほうも見てやれよ

516:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/25 20:37:37 AItfTDBU
当然、関連のスレは一通り拝読させて頂いている。
各々のスレがいい書き手を抱え、良質なSSを輩出している。
極めて良好な状態に見えるが?


517:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/25 20:43:09 4h2Urafu
>>514
まってました!
翠星石の死すは翠派としてつらい物がありますが
物語が整っていて大変、自然と感情投入してしまいます
もうGJとしか言い様がありませんね

次回作wktk!

518:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/25 21:01:18 HgjdDmIt
>516
コンディションなんて誰が聞いたよ?

519:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/25 21:07:48 voDgzcuJ
薔薇水晶「・・・・・・。」

翠星石から数メートル先、金色の瞳、左目には薔薇のアイガード、紫電の髪を靡かせ、紫のドレスを纏うその姿はまさに悠然の二文字。

自身の手掌から繰り出される攻撃を必死に回避する翠星石を無表情で見つめ、一切手加減する事なく、非情なまでに攻撃を加え続ける・・・・・

薔薇水晶―――

ローゼンメイデン第7ドールにして薔薇乙女最強の戦士。冷酷にして非情・・・・・勝つの為なら手段を選ばない戦いぶりに畏怖する者も多い。

ドドドドッ!ガシュゥン!

翠星石「クッ!」

薔薇水晶の攻撃を躱し続ける翠星石。そしてそれを尚も冷徹な面持ちで見つめる薔薇水晶。

翠星石「ハァ・・・ハァ・・・・何なんですかアイツは!?しつこい野郎ですぅ!」

薔薇水晶の猛攻に曝され、満身創痍になりながらも自身の苛立ちを吐き捨てるように翠星石が叫んだ。

事の発端は一時間前、蒼星石の元へ向かうべくnのフィールドを一人意気揚揚と歩いている所を突如薔薇水晶に強襲され、有無も言わさず戦闘になったのだ。
 序盤こそ善戦していたが、その実力差故に徐々に押され始め、今では首を落とされる寸前にまで追い詰められている。

翠星石「(こんな事なら黙って家に入れば良かったですぅ~)」

自分の愚行に対して今更ながらに後悔する翠星石。
そもそもnのフィールドというのはドール達にとっては庭の様なものであり、自分の力を最大限まで引き出して戦える場所である。

そんな世界に一歩でも足を踏み入れれば、それを自身に戦う意志があるという証明であり、例え襲われても文句は言えない。それはドールである翠星石自身もよく知っている筈だったが、桜田家での平穏な生活がそれを忘れさせていた・・・・



520:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/25 21:59:54 FpwZm5Yg
書きながら貼るより、一度メモ帳に纏めて(携帯なら下書き保存して)完成してから貼った方がいいよ。

521:名無しさん@お腹いっぱい。
06/04/26 01:06:57 aoOQLIPO
>>514
続きwktk

522:吝嗇 ◆G.VR4wY7XY
06/04/26 03:14:19 F8Nq2vig
良作投下のラッシュ、嬉しい悲鳴を上げながらこのスレを読んでます
ボクも微力ながら向こうを張る気持ちで、一本書き上げました

では、SS「されざる者たち」、投下します

523:されざる者たち
06/04/26 03:16:45 F8Nq2vig

ある日

ニュースでもネットでも、不自然なほどの平穏が保たれた、とても平和なように思えた日
僕は真紅に呼ばれた、神妙で無表情な顔、僕は知っていた、真紅のその顔の意味、青く冷たい瞳の意味
とても辛く悲しい事を封じ込めた顔、ローゼン・メイデン達がその永い営みの中で数多く経験した悲しみ
どうにもならない別れ、忍従、諦念、無力感、そして怒り、それらを湛えた青い瞳が僕を見つめる

背を向けたまま何も話そうとしないまま歩く真紅の導きで、僕は階段の下、僕の家の玄関に降りていった
開け放された玄関には既に他のローゼン・メイデン達が集結していた、揃って無言で僕を見つめる
真紅を加えて7体、七人のドール達が黙って僕を見つめる、そして真紅がやっと重い口を開いた

「ジュン、私達、貴方に言わなきゃならないことがあるの」
それだけ言って口篭もる真紅に、何故か今日は大人しく他のドール達と一緒にいた水銀燈が割り込んだ
「人間・・・私達、あんたらとおさらばするって事よぉ・・・丁度いい厄介払いでしょお?」
水銀燈の瞳は微かに泣き腫らされていた、ここに来る前にあの病床のマスターに別れを告げて来たのか
「う・・・うぅ~、ツライですぅ~・・・・翠星石はせっかくチビ人間を真人間にしてやろうと・・・」
翠星石はいつもの意地っ張りが嘘のように泣きじゃくってる、僕らはいつだって、手遅れの繰り返し
「仕方ないんだよ・・・これが歴史の必然・・・もう僕たちは、明るいおもてを歩けないんだ・・・」
なぜか最も冷静を保っている蒼星石の姿から、一番大きい泣き声が聞こえた気がした・・・泣きたくなった
「ヒナはこんなのいやなのー!ヒナわかんないもん!なにもわるいことしてないのに!おわかれなんて!」
怒りと悲しみに地団駄を踏みながら涙を流す雛苺、それが彼女だけでなく皆の本当の姿なんだろう
「命は・・・大事なのよ・・・みんな自分の命が大事・・・・愛する者の命ならどうかしら?」
薔薇水晶の無感動な顔、彼女は目の前の僕じゃなく、もっと大きい物と戦っている、そして嘆いてる
「皆気づかないのかしら!誰の為にお別れしなきゃいけないの?私やマスターじゃない奴等の為かしら!」
みんな気づいてる、「奴等」の正体も意図も、それに何も出来ない僕らの無力さも・・・正義は、死んだ

僕は立ち尽くした、僕は無力、僕は正しくない、僕は異端、でも、奪われていいものなんて何もない
「そんな・・・そんな突然・・・何でだよ!何とかならないのか?何か方法が・・・せめてもう少し時間を・・・」




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